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審決分類 審判 全部申し立て 特174条1項  C22C
審判 全部申し立て 2項進歩性  C22C
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C22C
管理番号 1339186
異議申立番号 異議2017-700935  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-05-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-10-02 
確定日 2018-03-30 
異議申立件数
事件の表示 特許第6107702号発明「鋳鋼、およびスラグ収容器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6107702号の請求項1?2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6107702号(以下「本件特許」という。)の請求項1?2に係る特許についての出願(特願2014-31970)は、平成26年 2月21日に出願したものであって、平成29年 3月17日にその特許権の設定登録がされ、同年 4月 5日付け特許掲載公報が発行されたものである。
その後、同年10月 2日に、本件特許について、特許異議申立人中西恒裕(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審において同年12月20日付けで取消理由が通知され、これに対し、その指定期間内である同年 2月19日に特許権者より意見書及び乙第1号証?乙第2号証が提出されたものである。

第2 本件発明
本件特許の請求項1?2に係る発明(以下、「本件発明1?2」という。)は、特許請求の範囲の請求項1?2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
質量%で、C:0.1?0.16、Si:0.3?0.5、Mn:1.0以下、P:0.02以下、S:0.020以下、Cr:0.05以上0.1以下、Mo:0.02以上0.05以下、Cu:0.24以下、Al:0.75以下、残部がFe及び不可避的不純物からなり、下記(1)式で示される炭素当量CEが0.40以下であることを特徴とする鋳鋼。
CE=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14
・・・(1)
【請求項2】
請求項1に記載の鋳鋼からなることを特徴とするスラグ収容器。 」

第3 特許異議申立理由の概要
申立人は、証拠として甲第1号証?甲第4号証を提出し、以下の理由により、請求項1?2に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

(1)申立理由1(進歩性)
請求項1?2に係る発明は、甲第1号証?甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?2に係る本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

(2)申立理由2(新規事項)
平成28年10月12日付け手続補正書での請求項1?2の補正は、願書に最初に添付した明細書等に記載した事項の範囲内ではないから、請求項1?2に係る本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定に違反してなされたものである。

(3)申立理由3(実施可能要件)
本件特許の発明の詳細な説明は、請求項1?2に係る発明を、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、請求項1?2に係る本件特許は、特許法第36条第4項第1号の規定に違反してなされたものである。

[証拠方法]
甲第1号証:特開2006-241581号公報
甲第2号証:特開平8-209235号公報
甲第3号証:特開昭55-34619号公報
甲第4号証:K.Takai,Fracture 1977,International Congress on Fracture, Volume.3, ICF4, Waterloo, Canada, June19-24, 1977, p.675-682
以下、それぞれ「甲1」?「甲4」という。

第4 取消理由通知書に記載した取消理由の概要
(1)請求項1?2に係る特許に対して、平成29年12月20日付けで通知した取消理由の要旨は、上記申立理由3に基き、次のとおりである。

取消理由1:本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、本件発明1?2を、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえないから、請求項1?2に係る本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるので、取り消されるべきものである。


発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1、2を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。
その理由は、特許異議申立書第13頁第1行から第12行の記載のとおりである。

(2)申立人は、上記特許異議申立書第13頁第1行から第12行において、以下の旨、主張している。
「鋳鋼の機械的性質は、化学成分だけで決定されるものではなく、熱処理条件にも依存して決定されることは当業者にとって技術常識である。すなわち、熱処理条件等が異なれば、化学成分を同一としても、異なる機械的性質を持つ鋳鋼が製造されることが技術常識であって、鋳鋼の機械的性質を決定するためには熱処理条件等の製造方法の開示が必須であると認められる。
一方、本件の特許明細書の発明の詳細な説明には、鋳鋼及び鋳鋼加工品を製造するための熱処理条件等が何ら記載されておらず、当初明細書の段落0033及び表3等に記載された機械的性質を持つ鋳鋼がどのようにして製造されるのか全く不明である。
したがって、発明の詳細な説明は、特許発明1及び特許発明2について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。」

第4 当審の判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由について
ア 特許権者は、平成30年 2月19日提出の意見書において、以下の主張をしている。なお、下線は当審が付与した。以下同様。
「本件特許発明(以降、『本発明』ともいう。)に係る鋳鋼及びスラグ収容器は、焼準し焼戻し及び応力除去焼鈍を行う、一般的な熱処理で行われるものであり、その詳細は下記の一例のとおりになる。なお、下記の一例では、(A)?(C)の処理を順に行うものとし、応力除去焼鈍については、後述する条件から必要に応じて行われるものとする。
(A)製品(鋳鋼またはスラグ収容器)に対して、焼準しをする。この際、昇温速度は100℃/hr未満とする。また、920℃±15℃に8時間以上保持する。なお、この一例では、製作管理上、8時間以上とするが、一般的に同様なスラグ収容器の焼準しにおける保持時間は、肉厚25mmにつき、0.5時間?1時間であることから、この条件と製品の肉厚から保持時間が決定されてもよい。
(B)焼準その後に冷却し、その後焼戻しをする。焼戻しでは、焼準しと同様な昇温速度制約のもとで昇温し、600℃±150℃の8時間以上保持する。なお、保持時間については、(A)のものと同様である。その後、100℃未満の降温速度で、製品が400℃以下となるまで降温速度を管理しながら冷却する。
(C)焼戻しの後、溶接補修を行っている場合には、応力除去焼鈍をする。応力除去焼鈍では、100℃/hr未満の昇温速度で昇温を行い、560℃±150℃に5時間以上保持する。
上記の(A)?(C)の処理における条件について、技術的な根拠を説明する。
鋳物製作においては、上記の(A)及び(B)の焼準し及び焼戻しは、組織全体で成分を均一化させ結晶粒を微細化するための一般的な製作方法である。また、上記の(A)及び(B)の焼準し及び焼戻しの処理において、昇温速度、保持温度及び保持時間は、乙第2号証のP.649の表20・5『炭素鋼鋳鋼品の主要熱処理作業工程』に沿っている。
また、(A)及び(B)の保持温度の物理的な意味は次の通りである。上記(A)の焼準しにおいて、920℃±15℃の焼準し温度は、乙第1号証のP.96の図5.1に示すように、焼準し温度の範囲内(最高焼ならし温度以下で、最高焼きなまし温度よりも高い温度)である。
上記(B)の焼戻しにおいて、600℃±150℃の焼戻し温度は、乙第1号証のP.109の図5.14に示すように、有溝衝撃値が極端に低くなる定温焼戻し脆性(『300℃脆性』ともいう。)が生じる、凡そ250℃?450℃の領域を高温側に回避した温度である。
乙第2号証のP.634の表19・1『各種鋼材の応力除去焼きなましにおける保持温度と保持時間の目安』のは、C鋼(炭素鋼)で保持温度が600?680℃とあり、さらに表19・3の説明として『ところで、炭素鋼を600℃以上で応力除去焼きなましをすることが実用的でない場合には、表19・3のように、加熱温度を低くしその代わりに保持時間を長くすることが認められている』とあり、これは上記(C)の応力除去焼鈍における560℃±15℃に該当するものである。
これにより、耐熱亀裂性および耐熱衝撃性に優れた鋳鋼が、特別な熱処理等を要することなく本件発明の目的とする技術的効果を奏することが特定される。」
そして、特許権者は、証拠方法として、以下の乙第1号証?乙第2号証を提出した。
乙第1号証:田村今男、泉久司、伊佐重輝、「朝倉金属工学シリーズ 鉄鋼材料学」、朝倉書店、日本、1981年刊行、P.96、109
乙第2号証:日本鉄鋼協会編、「改訂5版 鋼の熱処理」、丸善株式会社、日本、1969年刊行、P.634、649
以下、それぞれ「乙1」、「乙2」という。

イ 乙1には、以下の記載がある。

「図5.14は焼入れ焼もどし鋼の衝撃値の変化である。硬化曲線は連続的変化を示すが、衝撃値は約573K(300℃)焼もどしによって著しく低下し、不連続的変化を示す。この現象を低温焼もどし脆性または300℃脆性(500°F)という。図から明らかなように鋼のC%のいかんにかかわらず脆化する。」(第109頁下?第5行?下から第2行)

ウ 乙2には、以下の記載がある。


「ところで、炭素鋼を600℃以上で応力除去焼なましをすることが実用的でない場合は表19・3のように、加熱温度を低くしその代わりに保持時間を長くすることが認められている。」(第634頁右欄表19・3の上4行)


エ 乙1、乙2に記載されるように、上記アの特許権者の主張のとおり、(A)?(C)の焼準し、焼戻し、応力除去焼鈍を行うことは、鋳鋼の製造方法として、一般的な熱処理であることは、当業者の技術常識である。

オ 本件特許明細書等には、鋳鋼及びスラグ収容器を製造する際の熱処理について明記はないものの、上記技術常識を勘案すれば、当業者であれば、本件発明1の鋳鋼及び本件発明2のスラグ収容器は、従来から通常行われている、通常の製造方法及び熱処理によって製造することを前提として、鋳鋼の組成を特定することにより、耐熱亀裂性および耐熱衝撃性に優れるという課題を解決しようとするものであることを理解できる。

カ 以上ア?オより、発明の詳細な説明は、本件発明1、本件発明2を、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。

(2)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
ア 申立理由1 特許法第29条第2項(進歩性)について
(ア)本件発明1について
甲1には以下の記載がある。下線部は当審が付与した。以下、同様。
「【実施例】
【0014】
[実施例1]
本発明の請求項1に示す化学成分の重量比内とした図1に示すような角形中空断面の角型柱状体からなる鋳鋼製柱梁接合金物を鋳造により15ロット製作した。その際、焼ならし910℃を3時間、焼戻し630℃を3時間の熱処理を加えた。表3に含まれる化学成分の重量比における最大値と最小値および平均値を示す。溶接割れ感受性組成(PCM)の平均値は0.24である。PCME=Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5Bの平均値は0.013である。
製作した鋳鋼製柱梁接合金物から JIS Z 2201及びJIS Z 2202に基づき試験片を切り出し、JIS Z 2241及びJIS Z 2242に定められた引張試験及び衝撃試験方法に基づき、機械的性質、シャルピー衝撃エネルギーを測定した。その結果を表6に示す。
【0015】
【表3】



上記表3の最大値を、本願発明1のCEの式にあてはめて計算すると、0.4329となり、表3の最小値を、本願発明1のCEの式にあてはめて計算すると、0.34175となる。

以上より、甲1には、
「重量%で、
C:0.14?0.17、
Si:0.39?0.55、
Mn:0.98?1.16、
P:0.014?0.020、
S:0.004?0.008、
Cr:0.11?0.20、
Mo:0?0.02、
Cu:0.01?0.12、
残部がFe及び不可避的不純物からなり、
炭素当量CE:0.34175?0.4329である鋳鋼製柱梁接合金物」(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。

本件発明1と甲1発明とを対比すると、
「重量%で、
C:0.14?0.16
Si:0.39?0.5、
Mn:0.98?1.0、
P:0.014?0.020、
S:0.004?0.008、
Mo:0.02、
Cu:0.01?0.12、
を含有し、
炭素当量CE:0.34175?0.4である鋳鋼」との点で一致し、以下の点で相違している。

(相違点1)
本願発明1では、「質量%で」「Cr:0.05以上0.1以下」であるのに対し、甲1発明では、「重量%で」「Cr:0.11?0.20」である点。
(相違点2)
本願発明1では、「質量%で」「Al:0.75以下」であるのに対し、甲1発明では、Alについて何ら特定がない点。

(相違点1について)
甲2には、以下の記載がある。「・・・」は省略を表す。以下同様。
「【0016】
【実施例】
〔実施例1〕
〔1〕供試材
下記の低合金鋼からなる遠心力鋳造管(管径550,肉厚60, mm) に熱処理を施して供試材を得る。
化学組成(Wt%) :C 0.10, Si 0.23, Mn 0.84, P 0.013, S 0.011,Ni 0.06, Cr 0.10, Mo 0.50, V 0.09, Cu 0.14 。
Ac1点:730℃,Ac3点:890℃。
・・・
【0019】〔実施例2〕
〔1〕供試材
下記の低合金鋼からなる遠心力鋳造管(管径800,肉厚80, mm) に熱処理を施して供試材を得る。
化学組成(Wt%) :C 0.10, Si 0.29, Mn 1.05, P 0.013, S 0.011,Ni 0.68, Cr 0.08, Mo 0.30, V 0.09, Cu 0.05 。
A_(c1)点:735℃,A_(c3)点:875℃。」

ここで、甲2には、「鋳鋼」において、Crの含量を、0.10重量%又は0.08%にすることの記載があるものの、甲1発明は「鋳鋼製柱梁接合金物」の発明であるのに対し、甲2に記載された発明は、遠心力鋳造管であり、その用途が異なっている。
さらに、甲2に記載された鋳鋼の組成は、Cr以外の組成が甲1と一致しているわけではなく、C、Si、Mo、Ni等の含有割合が甲1の鋳鋼と異なっているから、用途も組成も異なる甲1と甲2の鋳鋼において、甲2のCrの組成のみを、甲1発明の鋳鋼に適用する動機付けがあるとはいえない。
よって、甲1発明において、上記相違点1に係る特定事項を備えるとすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

(相違点2について)
甲3には、以下の記載がある。
「2.特許請求の範囲
C:0.1?0.2%、Mn:0.8?2.0%、Mn/C≧7、Al=0.03?0.10、残部鉄および不可避的不純物からなる耐熱亀裂性の優れた鋳鋼。
3.発明の詳細な説明
本発明は、高炉・転炉・電気炉等の金属製錬炉から排出される溶融鉱滓を受ける溶滓鍋等の製造用として好適な耐熱亀裂性の優れた鋳鋼に関する。」(第91頁左欄)

「シャルピー衝撃値は、フェライト結晶粒度にも影響されることは既に知られており、細粒鋼ほど、シャルピー衝撃値は向上する。フェライト結晶粒を細粒にする方法として本発明では、経済的で、しかも、作業性のよいAl添加による方法を用いた。Alはまた強力な脱酸剤としての作用もしピンホールの発生防止にも役だつた。本発明でAl添加によるフェライト結晶粒度の調整で、・・・」(第93頁下から第10行?下から第2行)

甲1発明は、「鋳鋼製柱梁接合金物」の発明であるのに対し、甲3に記載された発明は「溶滓鍋」であり、その用途、課題が異なっている。
また、甲3に記載された発明では、溶滓鍋のシャルピー衝撃値を向上させるために、積極的にAlを添加しているところ、甲1発明は甲3に記載された発明と全く用途が異なり、甲1にはAlについて何ら記載がないから、甲1発明において、甲3に記載されたAlを添加する動機付けがあるとはいえない。
よって、甲1発明において、上記相違点2に係る特定事項を備えるとすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

また、甲4にも、上記相違点1、相違点2に係る特定事項について記載も示唆もされていない。

さらに、もし仮に、甲1?甲3を組み合わせたとしても、甲1、甲2、甲3に記載された発明は、それぞれ用途や目的が異なるものであるから、本件発明の耐熱亀裂性および耐熱衝撃性に優れるという効果を、甲1?甲3に記載された事項から、予測することはできない。

(イ)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1に係る鋳鋼からなるスラグ収容器であるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、甲1?甲4に記載された発明から、当業者が容易になし得るものであるということはできない。

(ウ)以上のとおり、本件発明1、2は、甲1?甲4に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 申立理由2 特許法第17条の2第3項(新規事項)について
(ア)申立人は、特許異議申立書第12頁第9行?最終行において、平成28年10月12日付け手続補正書での請求項1、2の補正は、当初明細書等に記載した事項を超える内容が含まれており、新たな技術的事項を導入するものであり、請求項1、2に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、請求項1、2に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

(イ)平成28年10月12日付けの補正について
平成28年10月12日付けの補正によって、請求項1に係る発明は、
「【請求項1】
質量%で、C:0.1?0.16、Si:0.3?0.5、Mn:1.0以下、P:0.02以下、S:0.020以下、Cr:0.1以下、Mo:0.05以下、Cu:0.24以下、Al:0.75以下、残部がFe及び不可避的不純物からなり、下記(1)式で示される炭素当量CEが0.40以下であることを特徴とする鋳鋼。
CE=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14
・・・(1)」から、
「【請求項1】
質量%で、C:0.1?0.16、Si:0.3?0.5、Mn:1.0以下、P:0.02以下、S:0.020以下、Cr:0.05以上0.1以下、Mo:0.02以上0.05以下、Cu:0.24以下、Al:0.75以下、残部がFe及び不可避的不純物からなり、下記(1)式で示される炭素当量CEが0.40以下であることを特徴とする鋳鋼。
CE=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14
・・・(1)」に補正された。(下線部は補正箇所を表す。)

当該補正によって、CrとMoの含有割合の下限値が特定された。
当初明細書には、以下の記載がある。
【表3】


上記表3のNo.6とNo.7の記載から、補正後のCrとMoの下限値の数値自体は、当初明細書等に記載されていたものであるといえる。
そして、補正前の下限値が特定されていなかったCrとMoについて、当初明細書等に記載されていた数値を下限値として特定する上記補正は、単に数値の範囲を限定し、請求項1に係る発明の範囲を限定する補正であって、該特定範囲であることに基づく新たな作用効果を主張するものないことから、新たな技術思想を導入する補正とはいえない。
よって、上記申立人の主張は採用できない。

第5 むすび
したがって、請求項1?請求項2に係る特許は、取消理由に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1?請求項2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-03-20 
出願番号 特願2014-31970(P2014-31970)
審決分類 P 1 651・ 536- Y (C22C)
P 1 651・ 121- Y (C22C)
P 1 651・ 55- Y (C22C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 本多 仁松本 要  
特許庁審判長 板谷 一弘
特許庁審判官 長谷山 健
結城 佐織
登録日 2017-03-17 
登録番号 特許第6107702号(P6107702)
権利者 JFEスチール株式会社
発明の名称 鋳鋼、およびスラグ収容器  
代理人 廣瀬 一  
代理人 宮坂 徹  
代理人 田中 秀▲てつ▼  
代理人 森 哲也  

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