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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A47B
管理番号 1339216
異議申立番号 異議2017-701015  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-05-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-10-25 
確定日 2018-04-16 
異議申立件数
事件の表示 特許第6119179号発明「フラップ天板付家具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6119179号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6119179号の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、平成24年10月18日に特許出願され、平成29年4月7日にその特許権の設定登録がされ、その後、平成29年10月25日付けで山崎浩一郎(「崎」は原文はたつさき。以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成30年1月16日付けで取消理由を通知し、平成30年3月14日に意見書が提出されたものである。


第2 本件特許発明
特許第6119179号の請求項1ないし8の特許に係る発明(以下それぞれ「本件特許発明1」等という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものである。


第3 取消理由の概要
当審において、請求項1及ないし8に係る特許に対して通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

1 本件特許発明1について
本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2、3号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

2 本件特許発明2について
本件特許発明2は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2ないし第4号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

3 本件特許発明3について
本件特許発明3は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2ないし第4号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

4 本件特許発明4について
本件特許発明4は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2ないし第4号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、請求項4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

5 本件特許発明5について
本件特許発明5は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2、3号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
加えて、請求項5は、請求項2、3、又は4を引用するものでもあるから、上記甲第1号証に記載された発明及び甲第2ないし第4号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもある。 よって、請求項5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

6 本件特許発明6について
本件特許発明6は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2ないし第5号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、請求項6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

7 本件特許発明7について
本件特許発明7は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2、3号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
加えて、請求項7は、請求項2、3、又は4を引用する請求項5を引用するものでもあるから、上記甲第1号証に記載された発明及び甲第2ないし第4号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもある。さらに、請求項6を引用するものでもあるから、上記甲第1号証に記載された発明及び甲第2ないし第5号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもある。
よって、請求項7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

8 本件特許発明8について
本件特許発明8は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2ないし第5号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、請求項8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

甲第1号証:特許第4583620号公報
甲第2号証:特開2009-148367号公報
甲第3号証:特開2006-6574号公報
甲第4号証:特開2009-61265号公報
甲第5号証:特許第4471440号公報


第4 甲各号証の記載
1 甲第1号証
甲第1号証には、次の事項が記載されている(決定で下線を付加。以下同様。)。

(1) 「【特許請求の範囲】【請求項1】天板の裏面に下枠を取り付け、該下枠を支柱部材または支柱の上端部に回動可能に連結した折畳みテーブルにおいて、前記下枠を内外枠の二重構造に構成し、これら内外枠を天板に一体的に取り付け、前記内枠の一部を有底構造に形成し、前記有底部を介し前記外枠の内部を隠蔽可能にしたことを特徴とする折畳みテーブル。」

(2) 「【0007】・・・本発明を大形の会議用テーブルに適用した図示の実施形態について説明すると、図1乃至図9において1は略楕円形の天板で、その下面に一対の補強枠2が長軸側に沿って平行に取り付けられている。・・・」

(3) 「【0014】前記支持ブロック27は・・・、その下端部を支柱28の上部に固定し、上端部を前記内枠11内に介挿し、かつこれらに枢支ピン29を挿通して、内外枠5,11を回動可能に連結している。なお、枢支ピン29の他端はナット(図示略)で抜け止めされている。
【0015】図中、30は前記支柱28内にビス31,32を介して取り付けたコ字形断面の補強片、33は支持ブロック27の下端部に設けたビス孔で、該孔33に挿入したビス34を前記補強片30にねじ込んでいる。」

(4) 「【0020】前記ロックリンク45と補強ビード25の斜状の延設部25aに、捩りバネ46の両端部が掛け止められ、該バネ46の弾性を介してロックリンク45を支持ブロック27側に回動可能に付勢し、該リンク45の先端に突設したロックピン47を前記段部40に係合可能にしている。
【0021】この他、図中48,48は支柱28の下端部に略ハ字形状に取り付けた脚で、その先端部にキャスター49を回動自在に取り付けている。50は支柱28,28の下端部間を連結する連結枠、51は床面である。
【0022】・・・また、内外枠5,11は、屈曲片5a,11aの互いに対称位置に軸孔21,23を形成し、またピン孔9,10の左右および対称位置にビス孔10,52を形成して、それらの左右共用化を図っている。」

(5) 「【0025】そして、これらに外枠5の外側から枢支ピン29を差し込み、該ピン29の外端部の螺軸にナット(図示略)をねじ込んで、これらを一体かつ回動可能に連結するとともに、外枠5の外側からビス37を前記ロータリーダンパ36の一方の取付フランジにねじ込み、該ダンパ36を取り付ける。」

(6) 「【0027】・・・凹孔15?18の外側からビス8を挿入し、これを外枠5のビス孔7を介して天板1中の埋込ナット(図示略)にねじ込み、内外枠5,11を天板1の下面に取り付け、更に前記ブラケット41を天板1の下面に固定する。この状況は図2,3のようである。
【0028】そして、支持ブラケット27のビス孔33にビス34を挿入し、これを支柱28の内部に取り付けた補強片30にねじ込み、支持ブラケット27と支柱28とを連結する。この後、支柱28,28の下端部間を連結枠50で連結し、また支柱28の下端部に一対の脚48を取り付ければ、一連の組み立て作業が終了する。」

(7) 「【0031】このような状態からテーブルを使用する場合は、天板1の上端部を保持し、これを図9の矢視のように支柱28側へ引き下げる。
このようにすると、天板1が前記ロックリンク45の圧接力に抗し、その自重によって枢支ピン29を中心に回動し、これが略90°回動したところで、ロックピン47が段部40に係合し、また補強ビード25の凸部26が滑動部39の終端部に係合して、天板1を水平に保持する。この状況は図4,8のようで、この後テーブルが使用される。
【0032】このようなテーブルの使用時は、前記凸部26が天板1の自重によって滑動部39に圧接され、その弾性によって両者が緊密に係合し、隣接部品の加工および組み付け誤差によるクリアランスやガタの発生を防止し、天板1を安定して支持する。
また、天板1は裏面を複数の補強枠2で補強され、かつその両端部を内外枠5,11に係合して支持されるから、単に補強枠2を取り付けたものに比べて、天板の支持強度が増強され、大形テーブルに好適になる。
【0033】次にテーブル使用後、天板1を折り畳む場合は、レバーハンドル43の把持部44を保持し、これを図4の矢視方向へ押し下げ、レバーハンドル43を固定した連結軸42を前記ハンドル43と同方向へ回動する。
このようにすると、連結軸42に固定したロックリンク45が、捩りバネ46の弾性に抗して連結軸42と同動し、ロックピン47が段部40から避退して、それらの係合を解除する。
【0034】このため、天板1は重量バランスを失ない、枢支ピン29を支点に上向き回動を促される。そこで、天板1の一端部を保持し、これを図4の矢視方向へ回動し、これを略90°回動したところで、前記延設部25aの基端が段部40に係合し、ロックピン47が滑動部38の周面に係合して、天板1の折り畳み状況を維持する。」

(8) 「【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す部分断面図で、折畳みテーブルの略半分を示している
【図2】本発明の要部を拡大して示す横断面図である。
・・・
【図5】図1の要部を拡大して示す断面図で、内外枠と支持ブロックと支柱との組み立て状況を示している。
・・・
【図8】・・・折畳みテーブル使用時の内外枠と支持ブロックとロックリンクの関係を示している。」

(9) 図1は次のものである。



(10) 図2は次のものである。



(11) 図5は次のものである。



(12) 図8は次のものである。



(13) 図1、図2、図5及び図8から、支持ブロック27の下端の面が支柱28の側面に当接されていることが看て取れる。
また図5から、ビス34の頭部はビス孔33内に収まっており支持ブロック27から突出していないことが看て取れる。

(14) 上記(1)ないし(13)を踏まえると、甲第1号証には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。

「下端部にキャスター49付きの脚48を取り付けた支柱28の上端部と天板1とを、テーブルを使用する場合と折り畳む場合との間で天板1が回動するように回動可能に連結してなり、
該天板1と支柱28の上端部との連結部には、
下端部を支柱28の上部に固定した支持ブロック27と、
天板1の裏面に取り付けられ、支持ブロック27に枢支ピン29で回動可能に連結された内外枠5、11と、
テーブルを使用する場合は天板1を水平に保持し、折り畳む場合は天板1を折り畳み状況に維持するように係合するロックピン47が配され、
支持ブロック27の下端の面が支柱28の側面に当接され、ビス34が支持ブロック27下端のビス孔33に挿入され支柱28にねじ込まれて支持ブロック27と支柱28とが連結されており、
ビス34の頭部はビス孔33内に収まっており支持ブロック27から突出していない、
折畳みテーブル。」


2 甲第2号証
甲第2号証には、次の事項が記載されている。

(1) 「【0019】・・・本例の折畳みテーブル1は、図1?図3に示すごとく、テーブル部2とテーブル部2を支える脚部3とを有し、テーブル部2を、使用時の水平な姿勢であるテーブル姿勢201と、収納時の起立する姿勢に折り畳んだ収納姿勢202とに変更可能である。図4?図6に示すごとく、脚部3は、テーブル部2と連結する部分に連結部材4を有しており、テーブル部2は、連結部材4に設けた回動支点部41を中心に回動して、テーブル姿勢201及び収納姿勢202に変更可能であると共に、テーブル姿勢201と収納姿勢202との中間の姿勢である仮置き姿勢203に保持可能である。」

(2) 「【0026】・・・本例においては、図8に示すごとく、左右の脚部3と、連結部材4を接合した補強部材42との組付作業性を向上させるための工夫を行っている。すなわち、脚部3における左右方向の内側部分には、脚部3補強用の当て板33を設け、この当て板33に設けた凹凸331と、連結部材4に設けた凹凸44とを嵌合させて、脚部3と補強部材42との位置決めを行い、脚部3における左右方向の外側部分から連結部材4に対して、ボルト34を螺合することにより、左右の脚部3と連結部材4を接合した補強部材42とを組み付けている。これにより、組付作業を行う作業者は、脚部3の左右方向における外側からボルト34の締付けを行うことができ、広いスペースを利用して容易に締付け作業を行うことができる。」

(3) 図8は次のものである。



3 甲第3号証
甲第3号証には、次の事項が記載されている。

(1) 「【0021】以下、本発明を平行スタッキング可能な折り畳みテ-ブルに適用した図示の実施形態について説明すると、図1乃至図18において1は矩形の天板で、その下面に補強フレ-ム2が取り付けられている。
前記補強フレ-ム2は鋼板を略U字形断面に折曲して形成され、その一対の屈曲片2a,2a間に、管状の連結軸3が回動可能に架設されている。図中、4は連結軸3の端部に形成した透孔である。」

(2) 「【0057】次に、前記組み付けアセンブリを使用してテ-ブルを組み立てる場合は、一組の天板および脚アセンブリを用意し、これらを組み付ける。
すなわち、天板アセンブリ側の支持フレ-ム47の端部に取り付けた脚継手48の凸部71を、脚アセンブリの第1脚柱50の前部側脚柱57の内周面の透孔73に挿入し、これらを位置決め後、脚柱57の外側からボルト52を通孔59に挿入し、これを脚継手48の通孔54に貫通し、その螺軸端にナット53をねじ込んで緊締し、前記脚継手48を脚柱57に取り付ける。」

(3) 「【図面の簡単な説明】【0076】・・・【図5】本発明を適用した折り畳みテ-ブルの折り畳み状態の要部を示す斜視図で、天板を省略して図示している。・・・
【0077】【図7】前記折り畳みテ-ブルに適用した脚継手とブラケットを組み付け状況を拡大して示す斜視図である。
【図8】前記折り畳みテ-ブルに適用した脚アセンブリ(脚モジュ-ル)を分解して示して示す斜視図で、片側の第2脚柱と脚杆のみを示している。」

(4) 図5は次のものである。


(5) 図7は次のものである。


(6) 図8は次のものである。




4 甲第4号証
甲第4号証には、次の事項が記載されている。

(1) 「【0019】本実施形態の折畳み式テーブルは、左右の脚体1,1の上端部に、天板2の下面両側部を上下回動可能に連結し、該天板2を略水平な使用姿勢(図1参照)と天板2の前部を上方へ回動させた折畳み姿勢(図2参照)とに変更することができるとともに、前記天板2の後部下方に配した幕板3を、天板2後部下方に接近して垂下した使用姿勢と両脚体1,1の後縁に沿った折畳み姿勢との間を移動可能に前記天板2と連動させてリンク連結したものであり、使用姿勢と折畳み姿勢になったときロック可能な構造となっている。折畳み姿勢では前後にスタッキング可能となっている。」

(2) 「【0021】先ず、前記脚体1は、前後方向を向いた接地脚6の後部から斜め前上方へ延びた支持脚7を有する正面視略倒L字形であり、アルミダイカスト製で一体形成したものである。しかし、本発明では脚体1の構造には限定されない。そして、両側の脚体1,1の上端部間を脚連結部材8を介して連結管9で連結して一体化している。尚、前記脚連結部材8は、後述のように前記天板2の回転軸を兼ねている。」

(3) 「【0024】・・・天板固定金具16に第1係合部19と第2係合部20を形成し、・・・使用姿勢と折畳み姿勢では、・・・前記ロックピン22は・・・前記天板固定金具16の第1係合部19又は第2係合部20に係合してロックがかかるのである。・・・」

(4) 「【0031】・・・尚、前記連結管9の両端部には、前記天板固定金具16を溶接して固定するが、該天板固定金具16の側面を連結管9の端面に当接した状態で溶接できるので、簡単に精度を出すことができる。」

(5) 「【0033】そして、前記ブラケット13の両側板15,15に、前述のように前記脚連結部材8の支持部37と前記連結管9の端部を回動可能に装着し、該ブラケット13の内部で、前記脚連結部材8の嵌合部42を前記天板固定金具16の嵌合孔46に嵌入するとともに、突起43,43を孔47,47に嵌入した状態で、前記連結管9の側面の通孔50,50から螺孔45,45にネジ(図示せず)を螺合するとともに、側方から支持部37の貫通孔44に挿通したボルト51を連結板48の螺孔49に螺合し、前記脚連結部材8の支持部37と前記連結管9の端部を引き付け合って強固に連結する。」

(6) 「【図面の簡単な説明】【0042】・・・【図12】脚連結部材と連結管を連結した状態の縦断面図である。」

(7) 図12は次のものである。



5 甲第5号証
甲第5号証には、次の事項が記載されている。

(1) 「【0009】前記上側支柱5は図4のように、アルミニウムダイカストによって肉厚の略縦長矩形板状に成形され、その周面は後述の枢軸方向に突出成形され、かつその外側部は周壁および補強リブ(図示略)を残して外側に開口されていて、その上部にカムプレート部6と掛止部7とが一体に成形されている。
【0010】このうち、カムプレート部6は、その一側周面に緩やかな湾曲面状のカム部8が形成され、該カム部8の上下位置に係合溝9,10が上向きおよび下向きに成形され、これらに後述のロックピン(図示略)を係合可能にしている。
【0011】また、前記掛止部7はカムプレート部6の外側に突設され、これはカムプレート部6と同厚の略縦長矩形板状に成形され、かつその上面はカムプレート部6と同高面に形成されていて、前記カムプレート部6の上面と共に幅広な平面状の係止部11を形成し、前記補強凸部4と係合可能にされている。」

(2) 「【0026】次に左右一対の上側支柱5を用意し、それらの連結突起42に連結枠44を差し込み、これをビス45で固定する。
また、上側支柱5の上部と、ロックリンク20と、捩りバネ23とロックレバー19とを下枠2の屈曲片2a,2a間に位置付け、それらにピン孔17,17を介してピン18を差し込み、その枢支部をピン18にビス止めするとともに、屈曲片2aの内側に突出したピン18,18に回動軸28をビス止めする。」


第5 当審の判断
1 本件特許発明1について
(1) 対比
本件特許発明1と、甲1発明を対比すると、少なくとも以下の相違点で相違する。

<相違点1>
本件特許発明1は、軸プレートの取付面に突設した「位置決めピン」を脚体の起立面に開口させた「位置決め孔」に嵌合させるのに対し、
甲1発明はそのような特定がなされていない点。

(2) 判断
相違点1に関して、甲第2号証には、上記第4の2(2)に摘記したように、「脚部3における左右方向の内側部分には、脚部3補強用の当て板33を設け、この当て板33に設けた凹凸331と、連結部材4に設けた凹凸44とを嵌合させて、脚部3と補強部材42との位置決めを行い、脚部3における左右方向の外側部分から連結部材4に対して、ボルト34を螺合することにより、左右の脚部3と連結部材4を接合した補強部材42とを組み付けている。」という記載があり、また甲第3号証には、上記第4の3(2)に摘記したように、「天板アセンブリ側の支持フレ-ム47の端部に取り付けた脚継手48の凸部71を、脚アセンブリの第1脚柱50の前部側脚柱57の内周面の透孔73に挿入し、これらを位置決め後、脚柱57の外側からボルト52を通孔59に挿入し、これを脚継手48の通孔54に貫通し、その螺軸端にナット53をねじ込んで緊締し、前記脚継手48を脚柱57に取り付ける」という記載がある。また、甲第2号証について上記第4の2(3)に示した図8、甲第3号証について上記第4の3(4)ないし(6)に示した図5、図7及び図8に示されているように、甲第2号証及び甲第3号証記載の構成は、いずれも、2つのボルトを用い2箇所の孔に挿入してとめるもので、位置決め部材となる凹凸あるいは凸部と透孔も各2つ設けられている。すなわち、これらのことから、甲第2号証、甲第3号証に記載された取付構造は、2ヶ所で固定するものであり、取付作業時に位置決め部材によって相互に位置決めすることにより取付作業を簡便にすることができるものである。
これに対し甲第1号証には位置決めについて何ら示唆する記載はなく、甲1発明は、ビス34により1ヶ所で固定されるものであり、支持ブロック27のビス孔33にビス34を挿入し、これを支柱28にねじ込めばいわば位置決めは完了するものであるから、取付作業を簡便にするために別途、位置決め部材を設ける必要性はないというべきである。したがって、そのような構成である甲1発明に、甲第2号証あるいは甲第3号証記載の位置決め構成を採用する動機付けはない。
加えて、甲第1号証の支持ブロック27下端の支柱28側面に当接する面は、上記第4の1(11)、(12)の図5、図8をみると、外周とビス孔33周囲以外の多くは中実ではなく空間であると解され、そのような観点からも、甲第1号証においては位置決め部材を設けることは想定されていないと解され、甲第2号証あるいは甲第3号証記載の、板状の部材の面上に凸あるいは凸部を設ける構成を直ちに採用できるものではない。
また甲第4号証及び甲第5号証をみても、相違点1に係る本件特許発明1の構成は記載されていない。
よって、相違点1に係る本件特許発明1の構成は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第5号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到することができたものではない。

(3) 小括
以上より、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第5号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本件特許発明2について
(1) 対比
本件特許発明2と、甲1発明を対比すると、少なくとも以下の相違点で相違する。

<相違点2>
本件特許発明2は、「左右の前記天板支持機構の軸プレートが連結ビームにより連結されるものであり」、「前記天板支持機構の前記軸プレートの内側面に前記連結ビームの端面を当接させ、前記軸プレートの外側面側から該軸プレートのボルト挿通孔に挿入したボルトを前記連結ビームに形成したネジ孔に締着することにより前記軸プレートと前記連結ビームとを結合するようにしている」のに対し、
甲1発明はそのような特定がなされていない点。

(2) 判断
甲第1号証には、上記第4の1(4)で摘記したとおり、連結枠50で支柱28、28の下端部間を連結すること、及び、上記第4の1(2)及び(7)で摘記したとおり、その両端部が内外枠5,11に係合して支持される複数の補強枠2で天板の支持強度を増強することが記載されており、既にテーブルとしての強度は確保されていることから、さらに、左右の支持ブロック27を連結する必要はなく、支持ブロック27同士を連結するといった相違点2に係る本件特許発明2の構成とする動機付けがないというべきである。したがって、甲第4号証に、脚連結部材8を介して連結管9で連結していることが開示されていたとしても、当該事項を甲1発明に適用する動機付けはない。
加えて、甲第4号証に記載された連結管9が連結する脚連結部材8は、上記第4の4の(2)で摘記したとおり、「脚連結部材8は・・・前記天板2の回転軸を兼ね」るものであり、そのような脚連結部材8に係る構成を、内外枠5、11を回動可能に連結する枢支ピン29とは別部材である支持ブロック27という、基本的な構成が異なる甲1発明に適用し、相違点2に係る本件特許発明2の構成とすることは、当業者が容易に想到できることではない。さらに、甲第4号証の「連結管9」は、上記第4の4の(7)の図12に示されるように、「連結管9」の端面と「脚連結部材8」の内側面との間に、天板の使用姿勢と折畳み姿勢のロックに関わる天板固定金具16(上記第4の4の(3)参照)が位置する構成であって、相違点2に係る本件特許発明2の構成の、軸プレートの内側面が連結ビームの端面に当接する構成とも異なるものである。
さらに、甲第2号証、甲第3号証及び甲第5号証をみても、上記第4でそれぞれ摘記したように、相違点2に係る本件特許発明2の構成は記載されていない。
よって、相違点2に係る本件特許発明2の構成は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第5号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到することができたものではない。

(3) 小括
以上より、本件特許発明2は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第5号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 本件特許発明3ないし8について
本件特許発明3ないし8は、それぞれ、本件特許発明1又は2の構成をすべて含み、更に減縮したものであるから、上記1、2と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 まとめ
したがって、本件特許発明1ないし8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、取消理由により特許を取り消すことはできない。


第6 むすび
したがって、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、請求項1ないし8に係る特許を取り消すことができない。
また、他に請求項1ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-04-03 
出願番号 特願2012-231243(P2012-231243)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A47B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 蔵野 いづみ  
特許庁審判長 井上 博之
特許庁審判官 西田 秀彦
前川 慎喜
登録日 2017-04-07 
登録番号 特許第6119179号(P6119179)
権利者 コクヨ株式会社
発明の名称 フラップ天板付家具  
代理人 宮澤 岳志  
代理人 赤澤 一博  

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