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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60R 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60R 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60R |
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管理番号 | 1339404 |
審判番号 | 不服2016-19005 |
総通号数 | 222 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-06-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-12-19 |
確定日 | 2018-04-12 |
事件の表示 | 特願2015- 95103号「建設機械管理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月17日出願公開、特開2015-164847号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成23年5月2日に出願された特願2011-103060号(以下「原出願」という。)の一部を平成27年5月7日に新たな特許出願としたものであって、平成28年3月17日付けで拒絶理由が通知され、同年5月23日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月13日付けで拒絶査定がされ、同年12月19日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、その後、当審において平成29年9月12日付けで拒絶理由が通知され、同年11月20日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 当審の判断 1 本願発明 本願の請求項1?7に係る発明は、平成29年11月20日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。 「走行体と、 前記走行体に接続された作業機と、 前記走行体に設けられた操縦領域と、 前記作業機および前記走行体の動作を制御する駆動制御部と、 前記操縦領域に配置され作業機を操作する操作部と、 前記操縦領域に配置され操縦者が着座する操縦席と、 前記操縦領域に配置され携帯端末と接続する接続端子と、 前記携帯端末と通信を行い、各部を制御する車体制御部と、 認証情報を記憶する記憶部と、を有した建設機械と、 通信部および位置検出部を有した前記携帯端末と、 前記携帯端末と無線で通信する管理端末と、を有し、 前記車体制御部は、前記携帯端末から送信される認証情報と前記記憶部に記憶している認証情報とを照合し、両者が一致した場合、入力された操作に対する動作を実行可能とし、両者が異なる場合、前記作業機および前記走行体を動作禁止とし、 前記携帯端末は、前記建設機械に関する情報を前記管理端末に送信し、 前記情報は、撮影機構で撮影した画像を含むことを特徴とする建設機械管理システム。」 2 刊行物の記載事項及び刊行物に記載された発明 (1)刊行物1の記載事項 当審の拒絶の理由に「刊行物1」として示され、原出願の出願日前に頒布された特開2003-85267号公報には、次の事項が記載されている。(下線は当審で付加した。以下同様。) ア 「【請求項1】 作業機械の機体を制御する通信可能な機体コントローラと、 この機体コントローラと通信可能で機体コントローラと通信することにより識別コードの照合による盗難防止機能、運行管理データを入手する運行管理機能、機体状態をモニタリング表示する機体モニタリング表示機能を少なくとも備えた情報携帯端末とを具備したことを特徴とする作業機械の機体管理システム。 」 イ 「【0015】請求項8に記載された発明は、請求項1乃至7のいずれか記載の作業機械の機体管理システムにおける作業機械には、作業の種類により交換可能の油圧制御されるツールが装着され、・・・」 ウ 「【0018】図1は、油圧ショベルなどの作業機械の機体11に設けられた油圧回路および電気回路の一部を示し、これらの回路は、機体コントローラ12により制御される。この機体コントローラ12は、中央処理装置(すなわちCPU)、メモリなどを備えている。 【0019】機体コントローラ12には、機体11の各部から、油圧回路などの圧力、作動油および冷却水などの温度、オイルおよび燃料などの液面レベル、エンジンなどの回転速度、可動部分の変位量などの機体情報を検出、収集するための各種センサ13が設けられ、また、機体11の稼働時間を集計する機能が設けられている。 【0020】機体コントローラ12は通信可能であり、この機体コントローラ12に対向させて、この機体コントローラ12と通信可能のコンパクトな情報携帯端末(すなわちパーソナル・ディジタル・アシスタンツ、以下この情報携帯端末を「PDA」という)14が設置される。 【0021】このPDA14は、識別コード照合手段、運行管理データ入手手段、機体稼働情報モニタリング表示装置として、オペレータの胸ポケットなどに入れたまま作業機械の運転室としてのキャブ内に持ち込まれる形態で設置され、あるいはキャブ内でオペレータの視界を妨げない位置に装着される。 【0022】機体コントローラ12とPDA14との間の通信媒体は、赤外線または電波などを用いた非接触型の通信媒体15であり、機体コントローラ12とPDA14とを非接触型の通信媒体15で結ぶことにより、配線上の制約を受けることなく、PDA14の取付および取外を容易にできるようにする。 【0023】このPDA14は、機体コントローラ12と通信することにより、識別コードの照合による盗難防止機能、運行管理データを入手する運行管理機能、機体状態をモニタリング表示する機体モニタリング表示機能を備えている。」 エ 「【0026】PDA14は、赤外線または電波などで機体コントローラ12と通信可能であるとともに、ユーザの基地局21のコンピュータ22と接続された情報携帯端末持ち帰り先の送受信器が組込まれた送受信台18にセットすることで、この基地局21のコンピュータ22とも通信可能であり、さらには、例えばインターネット19または通信衛星(図示せず)などを経て、遠隔地のサービスセンタ21aのコンピュータ22aとも情報をやり取りできるようにする。 【0027】機体コントローラ12の出力部には、エンジン始動回路や、油圧制御系のソレノイド励磁回路などが接続され、これらに、作業機械の盗難を防止するための盗難防止手段が設けられている。 【0028】盗難防止手段としては、エンジン始動制御手段23と、油圧ロック制御手段30とがあり、機体コントローラ12は、これらの盗難防止手段が解除された時点で、機体11を始動させる機能を備えている。 【0029】エンジン始動制御手段23は、バッテリ24からキースイッチ25、リレー26を経てスタータモータ27に至るエンジン始動回路において、リレー26のコイル28への通電を機体コントローラ12で制御するようにしたもので、盗難防止機能が働いたときは、キースイッチ25がスタート位置に切替えられても、機体コントローラ12からリレー26のコイル28に励磁電流を供給しないことで、スタータモータ27を始動させないようにする。 【0030】油圧ロック制御手段30は、例えばエンジン31により駆動される可変容量形ポンプ32を最小吐出流量に制限する機構であり、機体コントローラ12に接続された電磁弁33を制御して、この電磁弁33に接続されたポンプレギュレータなどのポンプ容量可変手段34を作動し、可変容量形ポンプ32を最小吐出流量に制限することで、機体11を作動する油圧回路の走行系油圧モータや作業機系油圧モータおよび油圧シリンダなどの油圧アクチュエータの動作を抑制または停止させる。 【0031】さらに、油圧ロック制御手段30は、パイロットポンプ35から吐出されてリモコン弁36に供給されるパイロット元圧を、パイロットポンプ吐出管路中に設けられたセーフティロック弁37を閉じて遮断することにより、リモコン弁36をレバー操作してもパイロット油圧が発生しないので、パイロット油圧によりストローク変位されるコントロール弁38がパイロット作動することなく中立位置に保たれ、走行系油圧モータや作業機系油圧モータなどの油圧アクチュエータ39を作動できなくする。」 オ 「【0032】図2に示されるように、PDA14は、本体ケース41内に、演算処理をする中央処理装置(いわゆるCPU)、制御プログラムおよびデータを記憶する各種メモリ、通信用インタフェース、電源部、外部機器とのインタフェースなどが内蔵され、また、本体ケース41の正面に、表示部42および操作パネル部43が設けられている。」 カ 「【0035】図3に示されるように、作業機械としての油圧ショベルの機体11は、下部走行体51に対し上部旋回体52が旋回自在に設けられ、この上部旋回52にフロント作業機53とともに運転室としてのキャブ54が設置されており、このキャブ54の内部において、PDA14は、必ずしも機体11に固定する必要はなく、例えば、オペレータ55の作業服のポケットの中に入れたままでも良く、このようにすると、PDA14を着脱する手間がかからないとともに、PDA14の表示を見たいときは、ポケットから取出して、手元で容易に見ることができる。 【0036】なお、PDA14は、キャブ54内でオペレータ55の視界を妨げない場所に着脱自在に設置しても良い。 【0037】図4は、ユーザの基地局21のコンピュータ22とPDA14との間の情報交換例を示し、キャブ54内で機体コントローラ12から機体11の運行管理データを入手したPDA14を、情報携帯端末持ち帰り先の送受信台18にセットし、この送受信台18を通じて、PDA14と基地局21のコンピュータ22との間で通信をし、情報をやり取りする。 【0038】また、図1に示されるように、ユーザの基地局21のコンピュータ22とサービスセンタ21aのコンピュータ22aとの間では、インターネット19または通信衛星などを経由して通信をし、情報をやり取りする。 【0039】PDA14は、基地局21のコンピュータ22から送信された毎日変更される新しいオペレータ識別コードを送受信台18上で受信する際に、前日に機体コントローラ12から受信した機体11の運行管理データを、送受信台18から基地局21のコンピュータ22に送信する。オペレータ識別コードは、機体コントローラ12が有するコントローラ識別コードとの照合に用いられる。」 キ 「【0043】図6は、キャブ54内において、赤外線や電波などの非接触型の通信媒体15を用いたPDA14と機体コントローラ12との間の通信例を示し、送受信台18上で基地局21のコンピュータ22からPDA14に入力されたオペレータ識別コードは、キャブ54内に持ち込まれたPDA14から非接触型の通信媒体15により機体コントローラ12に送信され、機体コントローラ12が記憶しているコントローラ識別コードと一致したときのみ、盗難防止機能が解除されて、エンジンが始動されるとともに油圧ロックが解除される。 【0044】また、ツール16の識別手段(バーコード)17を読取り記憶したPDA14を、オペレータ55の作業服のポケットに入れたままキャブ54内に持ち込み、あるいは運転席の近傍の所定位置に装着することで、このPDA14に記憶されているツール情報を、非接触型の通信媒体15で機体コントローラ12に入力すると、機体コントローラ12のツール識別機能により、ツール種類を識別して機体コントローラ12に予め設定されたツール毎の対応制御モードの中から最適なものを選択し、フロント作業機53に装着されたツール16に適合するツール制御に切替わり、例えば油圧回路のポンプ流量などをツール16の種類に応じた最適なものに制御する。」 ク 「【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明に係る作業機械の機体管理システムを示す概要図である。 【図2】 同上機体管理システムに用いられる情報携帯端末の正面図である。 【図3】 同上機体管理システムに用いられる作業機械の斜視図である。 ・・・」 (2)刊行物1に記載された発明 ここで、上記(1)キの段落【0044】に記載の「運転席」は、上記(1)カの段落【0035】及び【図3】の記載からみて、「キャブ54」に配置されオペレータ55が着座するものといえる。また、油圧ショベルの技術常識を考慮すると、「キャブ54」には、フロント作業機53を操作する操作部が配置されていることは明らかといえる。さらに、上記(1)イ、クの記載からみて、「作業機械」は「作業機械の機体管理システム」の一部をなすといえる。 以上のことと、上記(1)の各摘示事項及び【図1】?【図4】の記載からみて、本願発明の発明特定事項に倣って整理すると、刊行物1には以下の発明(以下「引用発明」という。なお、符号は全角文字で表記した。)が記載されているものと認める。 「下部走行体51と、 前記下部走行体51に対し上部旋回体52が旋回自在に設けられ、この上部旋回体52に設置されたフロント作業機53と、 前記下部走行体51に設置されたキャブ54と、 前記キャブ54に配置されフロント作業機53を操作する操作部と、 前記キャブ54に配置されオペレータ55が着座する運転席と、 前記キャブ54内でオペレータ55の視界を妨げない運転席の近傍の所定位置に着脱自在に設置されたPDA14は非接触型の通信媒体15により通信可能とされ、 前記PDA14と通信を行い、油圧回路及び電気回路を制御し、コントローラ識別コードを記憶する機体コントローラ12と、を有した作業機械としての油圧ショベルと、 通信用インターフェースが内蔵されたPDA14と、 前記PDA14を送受信台18にセットすることで通信可能な基地局21のコンピュータ22と、を有し、 前記機体コントローラ12の出力部には、エンジン始動制御回路23と油圧ロック制御手段30からなる盗難防止手段が設けられ、前記PDA14から送信されるオペレータ識別コードと前記機体コントローラ12が記憶しているコントローラ識別コードが一致したときのみ、盗難防止装置が解除されて、エンジンが始動されるとともに油圧ロックが解除され、 前記PDA14は、前記油圧ショベルの機体11の運行管理データを送受信台18から基地局21のコンピュータ22に送信する作業機械としての油圧ショベルの機体管理システム。」 3 対比 (1)本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「下部走行体51」は前者の「走行体」に相当し、以下同様に、「フロント作業機53」は「作業機」に、「操作部」は「操作部」に、「運転席」は「操縦席」に、「作業機械としての油圧ショベル」は「建設機械」に、「PDA14」は「携帯端末」に、「通信用インターフェース」は「通信部」に、「オペレータ識別コード」は携帯端末から送信される「認証情報」に、「運行管理データ」は「建設機械に関する情報」に、「基地局21のコンピュータ22」は「管理端末」に、「作業機械としての油圧ショベルの機体管理システム」は「建設機械管理システム」にそれぞれ相当する。 (2)前者の「前記走行体に接続された作業機と」という事項について、本願明細書の段落【0024】に具体的に記載されるのは、「建設機械2は、図2および図3に示すように、走行体12の上側に車体102が配置されている。また、車体102には、作業機14が取り付けられており」というものであり、「作業機」を直接走行体に接続するものではないから、後者の「前記下部走行体51に対し上部旋回体52が旋回自在に設けられ、この上部旋回体52に設置されたフロント作業機53と」という事項は、前者の上記事項に相当するといえる。 (3)前者の「操縦領域」について、本願明細書の段落【0024】に具体的に記載されるのは「作業機14の近傍でかつ車体102の中央部に操縦領域29が設けられている。この操縦領域29は、建設機械2の操作時に作業者が乗る領域であり、操作部18と、操縦席28とが配置されている。」というものである。そして、後者の「キャブ54」も操作部や運転席が配置されるものであるから、実質的に前者の「操縦領域」に相当する領域を有しているといえる。 そうすると、後者の「前記下部走行体51に設置されたキャブ54と、前記キャブ54に配置されフロント作業機53を操作する操作部と、前記キャブ54に配置されオペレータ55が着座する運転席と」という事項は、前者の「前記走行体に設けられた操縦領域と」、「前記操縦領域に配置され作業機を操作する操作部と、前記操縦領域に配置され操縦者が着座する操縦席と」という事項に相当するといえる。 (4)後者の「機体コントローラ12」は、CPUやメモリなどを有するものであるところ(上記2(1)ウの段落【0018】)、油圧回路及び電気回路を制御し、コントローラ識別コードを記憶するものであるから、前者の「駆動制御部」、「車体制御部」及び「記憶部」に相当する事項を実質的に有しているといえ、さらに、後者の「コントローラ識別コード」は、前者の記憶部に記憶している「認証情報」に相当するといえる。 そうすると、後者の「PDA14と通信を行い、油圧回路及び電気回路を制御し、コントローラ識別コードを記憶する機体コントローラ12と」という事項は、前者の「前記作業機および前記走行体の動作を制御する駆動制御部と」、「前記携帯端末と通信を行い、各部を制御する車体制御部と」、「認証情報を記憶する記憶部と」という事項に相当するといえる。 (5)後者の「通信用インターフェースを備えたPDA14」と、前者の「通信部および位置検出部を有した前記携帯端末」とは、「通信部を有した前記携帯端末」の限度で一致するといえる。 (6)後者の「前記PDA14から送信されるオペレータ識別コードと前記機体コントローラ12が記憶しているコントローラ識別コードが一致したときのみ、盗難防止装置が解除されて」という事項について、両コードが異なる場合には盗難防止装置は解除されないということであり、「フロント作業機53」と「下部走行体51」が動作禁止とされているといえるものである。また、解除された場合には、入力された操作に対する動作を実行可能としているといえるものである。また、後者の「油圧ショベルの機体11の運行管理データ」は、油圧ショベルの機体11に関する情報であるので、前者の「建設機械に関する情報」に相当するといえる。 そうすると、後者の 「前記PDA14を送受信台18にセットすることで通信可能な基地局21のコンピュータ22と、を有し、前記機体コントローラ12の出力部には、エンジン始動制御回路23と油圧ロック制御手段30からなる盗難防止手段が設けられ、前記PDA14から送信されるオペレータ識別コードと前記機体コントローラ12が記憶しているコントローラ識別コードが一致したときのみ、盗難防止装置が解除されて、エンジンが始動されるとともに油圧ロックが解除され、前記PDA14は、前記油圧ショベルの機体11の運行管理データを送受信台18から基地局21のコンピュータ22に送信する」 という事項と、前者の 「前記携帯端末と無線で通信する管理端末と、を有し、前記車体制御部は、前記携帯端末から送信される認証情報と前記記憶部に記憶している認証情報とを照合し、両者が一致した場合、入力された操作に対する動作を実行可能とし、両者が異なる場合、前記作業機および前記走行体を動作禁止とし、前記携帯端末は、前記建設機械に関する情報を前記管理端末に送信し」 という事項とは、 「前記携帯端末と通信する管理端末と、を有し、前記車体制御部は、前記携帯端末から送信される認証情報と前記記憶部に記憶している認証情報とを照合し、両者が一致した場合、入力された操作に対する動作を実行可能とし、両者が異なる場合、前記作業機および前記走行体を動作禁止とし、前記携帯端末は、前記建設機械に関する情報を前記管理端末に送信し」 の限度で一致するといえる。 (7)以上のことより、両者の一致点、相違点は次のとおりと認める。 [一致点] 「走行体と、 前記走行体に接続された作業機と、 前記走行体に設けられた操縦領域と、 前記作業機および前記走行体の動作を制御する駆動制御部と、 前記操縦領域に配置され作業機を操作する操作部と、 前記操縦領域に配置され操縦者が着座する操縦席と、 前記携帯端末と通信を行い、各部を制御する車体制御部と、 認証情報を記憶する記憶部と、を有した建設機械と、 通信部および位置検出部を有した前記携帯端末と、 前記携帯端末と通信する管理端末と、を有し、 前記車体制御部は、前記携帯端末から送信される認証情報と前記記憶部に記憶している認証情報とを照合し、両者が一致した場合、入力された操作に対する動作を実行可能とし、両者が異なる場合、前記作業機および前記走行体を動作禁止とし、 前記携帯端末は、前記建設機械に関する情報を前記管理端末に送信する建設機械管理システム。」 [相違点1] 本願発明が、「前記操縦領域に配置され携帯端末と接続する接続端子と」を有するのに対し、引用発明は、「前記キャブ54内でオペレータ55の視界を妨げない運転席の近傍の所定位置に着脱自在に設置されたPDA14は非接触型の通信媒体15により通信可能とされ」たものであって、当該接続端子を有していない点。 [相違点2] 本願発明が、携帯端末は「位置検出部」を有するものであるのに対し、引用発明は、PDA14が位置検出部を含むことの特定がない点。 [相違点3] 「携帯端末」と「管理端末」の通信に関し、本願発明が、「無線で」行うのに対し、引用発明は、「送受信台18から」行っている点。 [相違点4] 「建設機械に関する情報」に関し、本願発明が、「撮影機構で撮影した画像を含む」のに対し、引用発明は、「油圧ショベルの機体11の運行管理データ」であって、当該画像を含むことの特定がない点。 4 判断 上記相違点について検討する。 (1)[相違点1]について 引用発明は、非接触型の通信媒体を用いているが、PDA14は、キャブ54内でオペレータ55の視界を妨げない運転席の近傍の所定位置に着脱自在に設置するものであり、本願発明の「操縦領域」とは具体的には上記3(3)に示したとおりのものであるから、結局のところ油圧シャベルの作業時には操縦領域に相当する領域内に設置されているといえるものである。そして、通信媒体として非接触型を用いるか接続端子を有するものとするかは、両者のメリットデメリットを考慮して適宜選択できる事項であり、引用発明において接続端子を有するものとすることは、当業者であれば所望により適宜なし得たことである。そして、上述したPDA14の設置場所を考慮すれば、接続端子は当然操縦領域に相当する領域に配置されるものとなる。 仮に、PDA14が操縦領域に相当する領域内に設置されているとまでいえないとしても、刊行物1の「例えば、オペレータ55の作業服のポケットの中に入れたままでも良く、このようにすると、PDA14を着脱する手間がかからないとともに、PDA14の表示を見たいときは、ポケットから取出して、手元で容易に見ることができる。」(上記2(1)カの段落【0035】)という記載に示されるように、キャブ54内においてPDA14の表示を視認する等の状況もあり得るものであるから、引用発明においても、そのようなことを容易に実施できるように、PDA14の設置位置を操縦領域に相当する領域内とすることは、当業者であれば所望により適宜なし得た設計的事項にすぎない。 したがって、引用発明において上記相違点1に係る本願発明の事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得たことである。 (2)[相違点2]について PDAのような携帯端末において、通信部に加えて位置検出部を有するものは原出願の出願日前の周知技術(例えば、特開2004-266636号公報(特に段落【0030】参照。)、特開2004-309835号公報(特に段落【0006】参照。)等。)といえるものであり、引用発明のPDA14においても、位置検出部を有するものとすることは、当業者であれば所望により適宜なし得たことである。 したがって、引用発明において相違点2に係る本願発明の事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得たことである。 (3)[相違点3]について 建設機械管理システムにおいて、建設機械側から管理端末側への情報の送信を無線によって行うことは原出願の出願日前の周知技術(例えば、特開2008-191825号公報(特に段落【0010】、【0019】参照。)、特開2002-322679号公報(特に段落【0012】参照。)等。)といえるものであり、引用発明の送受信台18から行う手段に代えて採用することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 したがって、引用発明において相違点3に係る本願発明の事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得たことである。 なお、刊行物1の段落【0041】に「なお、持運び可能のPDA14は、機体コントローラ12から入手した機体11の運行管理データを、通信によらず基地局21に持ち帰れるので、衛星通信などの手続きなしでも運行管理が可能である。」との記載があるが、衛星通信などの通信によるデータ取得とPDAの持ち運びによるデータ取得のそれぞれのメリットデメリットを考慮して適宜選択できる程度のことであり、阻害要因となるようなものではない。 (4)[相違点4]について 建設に係る通信を用いたシステムにおいて、作業現場の写真や建設機械の故障の情報を送るため、撮影機構で撮影した画像を携帯端末から送信することは、原出願の出願日前の周知技術(例えば、特開2006-338561号公報(特に段落【0046】、【0067】及び【図2】参照。)、特開2011-76312号公報(特に段落【0001】、【0033】、【0039】及び【図5】参照。)等。)といえるものであり、引用発明においても上記のような画像のデータがあれば工程管理や作業機械の修理等の点からより好ましいことは自明のことであるから、引用発明の「油圧ショベルの機体11の運行管理データ」に加えて、撮影機構で撮影した画像を管理端末に送る情報に付加させるようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 したがって、引用発明において相違点4に係る本願発明の事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得たことである。 また、本願発明が奏する作用効果についても、引用発明及び周知技術から予測し得る範囲内のものであって、格別でない。 よって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-02-08 |
結審通知日 | 2018-02-13 |
審決日 | 2018-03-01 |
出願番号 | 特願2015-95103(P2015-95103) |
審決分類 |
P
1
8・
55-
WZ
(B60R)
P 1 8・ 537- WZ (B60R) P 1 8・ 121- WZ (B60R) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 神田 泰貴 |
特許庁審判長 |
島田 信一 |
特許庁審判官 |
尾崎 和寛 一ノ瀬 覚 |
発明の名称 | 建設機械管理システム |
代理人 | 特許業務法人酒井国際特許事務所 |