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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1339412
審判番号 不服2017-9225  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-23 
確定日 2018-04-12 
事件の表示 特願2012-244493号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成26年5月19日出願公開、特開2014-90961号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年11月6日の出願であって、平成28年8月25日付けの拒絶理由の通知に対し、同年10月25日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成29年3月17日付け(発送日:同年3月28日)で拒絶査定がなされ、これに対して平成29年6月23日に審判の請求がなされると同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
本件補正は特許請求の範囲の請求項1の記載の補正を含むものであり、本件補正前の平成28年10月25日にされた手続補正の特許請求の範囲の請求項1の記載と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、それぞれ以下のとおりである(下線部は補正箇所を示す。また、A?Hについては発明を分説するため当審で付与した。)。

(平成28年10月25日の手続補正)
「【請求項1】
識別情報の可変表示を行い、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
遊技者に所定の遊技価値を付与する遊技価値付与手段と、
識別情報の可変表示が開始されてから表示結果が導出表示されるまでに仮停止させた後に可変表示を再度実行する再可変表示を実行可能な再可変表示実行手段とを備え、
導出表示される識別情報の候補の画像と所定演出を示唆する所定演出示唆画像とが表示される特別演出を含み、
前記特別演出が実行された後、導出表示される前に前記所定演出を実行する所定演出実行手段をさらに備え、
前記遊技価値付与手段は、前記所定演出実行手段により前記所定演出が実行されてから前記有利状態に制御されたときと、前記特別演出が実行された後前記所定演出が実行されずに前記有利状態に制御されたときとで、異なる割合により遊技価値を付与可能であり、
前記特別演出において、前記所定演出示唆画像を複数表示可能であるとともに、
前記特別演出において表示される前記所定演出示唆画像には、再可変表示を示唆する画像が含まれる
ことを特徴とする遊技機。」

(本件補正)
「【請求項1】
A 識別情報の可変表示を行い、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 遊技者に所定の遊技価値を付与する遊技価値付与手段と、
C 識別情報の可変表示が開始されてから表示結果が導出表示されるまでに仮停止させた後に可変表示を再度実行する再可変表示を実行可能な再可変表示実行手段とを備え、
D 導出表示される識別情報の候補の画像と所定演出を示唆する所定演出示唆画像とが表示される特別演出を含み、
E 前記特別演出が実行された後、導出表示される前に前記所定演出を実行する所定演出実行手段をさらに備え、
F 前記遊技価値付与手段は、前記所定演出実行手段により前記所定演出が実行されてから前記有利状態に制御されたときと、前記特別演出が実行された後前記所定演出が実行されずに前記有利状態に制御されたときとで、異なる割合により遊技価値を付与可能であり、
G 前記特別演出において、前記所定演出示唆画像を複数表示可能であるとともに、
H 前記特別演出において表示される前記所定演出示唆画像には、特定リーチ演出を示唆する第1画像と、該第1画像とは異なり再可変表示を示唆する第2画像とが含まれる
ことを特徴とする遊技機。」

2 補正の適否
本件補正後の請求項1は、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「再可変表示を示唆する画像が含まれる」「前記特別演出において表示される前記所定演出示唆画像」に関して、「特定リーチ演出を示唆する第1画像と、該第1画像とは異なり再可変表示を示唆する第2画像とが含まれる」という限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、明細書の段落【0302】、【0399】?【0400】、図40(C)、図60の記載に基づいており、新規事項を追加するものではない。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、前記1に記載したとおりのものである。

(2)引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-210158号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、通常の当り可能性よりも高い当り可能性のリーチ状態であるスーパーリーチ状態になり得る遊技機に係わり、特にパチンコ機やパチスロ機に適用して好適な遊技機の表示制御技術の改良に関する。」

「【0011】図1は遊技盤10の模式的な説明図である。遊技盤10の略中央部には、3つ(左、中、右)の表示エリアを有していて、各表示エリアにおいて、独立して数字やキャラクタによる図柄で構成される識別情報が変動表示可能であり、またキャラクタや背景画像を表示可能な特別図柄表示装置100が配設されており、その真下には特別図柄始動口104が配設されていて、この特別図柄始動口104の両側には普通図柄作動ゲート102、102が配設されている。また、一対の開閉部材120、120が特別図柄始動口104を形成するように離間して開閉可能に設けられている。なお、特別図柄表示装置100は特別図柄の当選確率を向上させるか否かを報知する表示や特別図柄の当選確率を向上させるか否かをキャラクタの組合わせ表示により予告報知する機能も有する。」

「【0013】そして、特別図柄始動口104に遊技玉が入賞されて乱数抽選が行われ、この抽選された乱数が大当り値である時には、各表示エリアにおいて少なくとも1つの識別情報の変動表示が開始されその後、所定パターン(例えば「7、7、7」)の表示が特別図柄表示装置100によって行われ、大入賞口106が所定パターンで開閉制御されて遊技者にとって有利な大当り遊技状態となる。また、前述した乱数抽選によって大当り値が選択される確率(前記所定パターンが表示させる確率)は低確率時(例えば確率300分の1)と高確率時(例えば確率50分の1)と複数存在する。この高確率時は確率変動状態や確変状態と称される。」

「【0044】図16のテーブル1600は主制御部200が、大当り状態となる場合の図柄変動パターンを選択する時に用いるものであり、外れ状態となった場合にはこれとは別の図示しないテーブル(このテーブルではスーパーリーチの選択確率が低い)を用いる。主制御部200は、大当りとなった場合にはカウンタ値が「0」から「24」まで循環的にカウントする図示しないカウンタのカウンタ値を求め(図17のステップS1700)、このテーブル1500においてこの求めたカウンタ値に対応する変動パターンと、図示しない停止図柄選択テーブルより最終的に停止表示する図柄を選択して(図17のステップS1710)、第1のコマンドの変動パターンとするとともに第1?第3コマンドをCPU1020に送信する(図17のステップS1720)。
【0045】例えば、カウンタ値「1」から「5」までの夫々に対しては変動パターン「1」から「5」までが選択されてノーマルリーチ演出をCPU1020に行わせることになる。一方、求めたカウンタ値が「6」から「15」の場合には変動パターン6が選択され、後に説明するようにノーマルリーチ演出に連続してスーパーリーチ演出が行われる。そして、求めたカウンタ値が「16」?「24」の場合には変動パターン17が選択されて、ノーマルリーチ演出を経ないでチャンス図柄1510が停止表示されてスーパーリーチ突入を通知するようになっている。」

「【0047】図19は変動パターン6が選択された場合には、CPU1020は先ず図19(a)に示すように左図柄、中図柄を7で停止表示させてノーマルリーチ演出を行う。この際、右図柄を1つずつ数字が変化するように図柄をスライドさせていく。なお、一般的な縦スクロール表示を採用しても良いことは言うまでもない。このノーマルリーチを経て右図柄を停止する場合は、当りとなる可能性が低くなるように設定してある。
【0048】次に、CPU11020は、図19(b)に示すように、右図柄が順次スライドされていく中でチャンス図柄1510を出現させ、ノーマルリーチ演出に連続させてチャンス図柄1510での表示演出を行う。そして、CPU11020は、図19(c)に示すように、チャンス図柄1510を右図柄として停止表示させて、スーパーリーチ状態への突入を通知する。この際、CPU11020は表示エリア1121の下部に「スーパーリーチ突入です!!」なるメッセージ1900を表示して一層突入を把握容易にしている。そして、その後、スーパーリーチ用の変動パターンとして、キャラクタが登場して特異な図柄変動等を行なう。」

「【0052】以上本発明の実施の形態について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で上記実施形態に種々の変形や変更を施すことが可能となる。例えば、チャンス図柄1510の模様を図示したもの以外とすること、チャンス図柄を複数表示するようにすること、チャンス図柄の出現に際して効果音を発生させるようにすること、図16のテーブル1600の内容を適宜変更してカウンタ値と変動パターンとの関係を適宜変更すること、カウンタ値総数を適宜変更すること、乱数抽選等をCPU1020側で行なうようにさせること、等の種々の変形が挙げられる。
【0053】また、本実施形態ではスーパーリーチ状態突入以降の動作説明を詳細に行っていないが、この突入後例えば特別図柄とチャンス図柄1510を縮小して表示エリア1121の隅に表示し更に2つのキャラクタを登場、格闘させて特定のキャラクタが勝利した場合には大当りとすること、図19(c)の状態から再度、左、中、右の3図柄を変動表示させて最終的な当り図柄(または外れ図柄)を表示すること、等種々の動作制御を行い得る。」

上記記載事項を総合すれば、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる(a?gについては本願補正発明のA?Gに対応させて付与した。)。

「a 数字やキャラクタによる図柄で構成される識別情報の変動表示が開始されその後、所定パターン(例えば「7、7、7」)の表示が特別図柄表示装置100によって行われ、大入賞口106が所定パターンで開閉制御されて遊技者にとって有利な大当り遊技状態となる(【0011】、【0013】)遊技機(【0001】)であって、
b 乱数抽選によって大当り値が選択される確率(前記所定パターンが表示させる確率)が低確率時(例えば確率300分の1)と確率変動状態や確変状態と称される高確率時(例えば確率50分の1)と複数存在し(【0013】)、
c 左図柄、中図柄を7で停止表示させてノーマルリーチ演出を行い(【0047】)、チャンス図柄1510を右図柄として停止表示させて、スーパーリーチ状態への突入を通知し(【0048】)、その状態から再度、左、中、右の3図柄を変動表示させて最終的な当り図柄(または外れ図柄)を表示することができ(【0053】)、
d 左図柄、中図柄を7で停止表示させてノーマルリーチ演出を行う際、右図柄を停止表示させる前に、右図柄を1つずつ数字が変化するように図柄をスライドさせていき(【0047】)、次に、右図柄が順次スライドされていく中でチャンス図柄1510を出現させ、ノーマルリーチ演出に連続させてチャンス図柄1510での表示演出を行うものであり(【0048】)、
e チャンス図柄1510を右図柄として停止表示させて、スーパーリーチ状態への突入を通知し(【0048】)、スーパーリーチ状態突入後、特別図柄とチャンス図柄1510を縮小して表示エリア1121の隅に表示し更に2つのキャラクタを登場、格闘させて特定のキャラクタが勝利した場合には大当りとすることができ(【0053】)、
f 大当り状態となる場合には(【0044】)、変動パターン1から5までが選択されるとノーマルリーチ演出が行われ、変動パターン6が選択されるとノーマルリーチ演出に連続してスーパーリーチ演出が行われ(【0045】)、また、外れ状態となった場合には、スーパーリーチの選択確率が低いテーブルを用いて図柄変動パターンが選択され(【0044】)、
g チャンス図柄1510での表示演出において(【0048】)、チャンス図柄1510を複数表示する(【0052】)、
遊技機。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。なお、見出し(a)?(h)は、本願補正発明のA?Hに対応させている。

(a)引用発明の「a 数字やキャラクタによる図柄で構成される識別情報の変動表示が開始されその後、所定パターン(例えば「7、7、7」)の表示が特別図柄表示装置100によって行われ、大入賞口106が所定パターンで開閉制御されて遊技者にとって有利な大当り遊技状態となる遊技機」は、本願補正発明の「A 識別情報の可変表示を行い、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機」に相当する。

(b)引用発明は、「b 乱数抽選によって大当り値が選択される確率(前記所定パターンが表示させる確率)が低確率時(例えば確率300分の1)と確率変動状態や確変状態と称される高確率時(例えば確率50分の1)と複数存在し」、この確変状態を付与する付与手段を備えることは明らかであるから、本願補正発明の「B 遊技者に所定の遊技価値を付与する遊技価値付与手段」に相当するものを備えるといえる。

(c)引用発明は、「c 左図柄、中図柄を7で停止表示させてノーマルリーチ演出を行い、チャンス図柄1510を右図柄として停止表示させ」た後で「再度、左、中、右の3図柄を変動表示させて最終的な当り図柄(または外れ図柄)を表示することができ」るのであるから、本願補正発明の「C 識別情報の可変表示が開始されてから表示結果が導出表示されるまでに仮停止させた後に可変表示を再度実行する再可変表示を実行可能」なものといえる。また、引用発明において、そのような再度の変動表示を実行可能な手段を備えることは明らかであるから、本願補正発明のCの「再可変表示実行手段」に相当するものを備えるといえる。

(d)引用発明のdの「1つずつ数字が変化するように」「スライドさせ」られる「図柄」は、本願補正発明のDの「導出表示される識別情報の候補の画像」に相当する。
また、引用発明のeの「スーパーリーチ」は、本願補正発明のDの「所定演出」に相当するから、引用発明のeの「スーパーリーチ状態への突入を通知」する「チャンス図柄15」は、本願補正発明のDの「所定演出を示唆する所定演出示唆画像」に相当する。
したがって、引用発明のdの「右図柄を1つずつ数字が変化するように図柄をスライドさせていき、次に、右図柄が順次スライドされていく中でチャンス図柄1510を出現させ」る「チャンス図柄1510での表示演出」は、本願補正発明の「D 導出表示される識別情報の候補の画像と所定演出を示唆する所定演出示唆画像とが表示される特別演出」に相当する。

(e)引用発明は、dの「右図柄を停止表示させる前に、右図柄を1つずつ数字が変化するように図柄をスライドさせていき、次に、右図柄が順次スライドされていく中でチャンス図柄1510を出現させ」た後、「e チャンス図柄1510を右図柄として停止表示させて、スーパーリーチ状態への突入を通知し、スーパーリーチ状態突入後、特別図柄とチャンス図柄1510を縮小して表示エリア1121の隅に表示し更に2つのキャラクタを登場、格闘させて特定のキャラクタが勝利した場合には大当りとすることができ」るものであり、そのための演出実行手段を備えることは明らかであるから、本願補正発明の「E 前記特別演出が実行された後、導出表示される前に前記所定演出を実行する所定演出実行手段」に相当するものを備えるといえる。

(g)引用発明の「g チャンス図柄1510での表示演出において、チャンス図柄1510を複数表示する」ことは、本願補正発明の「G 前記特別演出において、前記所定演出示唆画像を複数表示可能である」ことに相当する。

(h)引用発明の「e チャンス図柄1510を右図柄として停止表示させて、スーパーリーチ状態への突入を通知し、スーパーリーチ状態突入後、特別図柄とチャンス図柄1510を縮小して表示エリア1121の隅に表示し更に2つのキャラクタを登場、格闘させて特定のキャラクタが勝利した場合には大当りとする」前に、dの「チャンス図柄1510での表示演出」において「右図柄を1つずつ数字が変化するように図柄をスライドさせていき、次に、右図柄が順次スライドされていく中で」「出現」する「チャンス図柄15」は、「2つのキャラクタを登場、格闘させて特定のキャラクタが勝利した場合には大当りとする」「スーパーリーチ」演出を示唆する第1画像といえる。
また、引用発明の「c 左図柄、中図柄を7で停止表示させてノーマルリーチ演出を行い、チャンス図柄1510を右図柄として停止表示させた状態から再度、左、中、右の3図柄を変動表示させて最終的な当り図柄(または外れ図柄)を表示する」前に、dの「チャンス図柄1510での表示演出」において「右図柄を1つずつ数字が変化するように図柄をスライドさせていき、次に、右図柄が順次スライドされていく中で」「出現」する「チャンス図柄15」は、「再度、左、中、右の3図柄を変動表示」することを示唆する第2画像といえる。
したがって、これら引用発明の構成と、本願補正発明の「H 前記特別演出において表示される前記所定演出示唆画像には、特定リーチ演出を示唆する第1画像と、該第1画像とは異なり再可変表示を示唆する第2画像とが含まれる」とは、「H’前記特別演出において表示される前記所定演出示唆画像には、特定リーチ演出を示唆する第1画像と、再可変表示を示唆する第2画像とが含まれる」点で共通する。

そうすると、両者は、
「A 識別情報の可変表示を行い、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 遊技者に所定の遊技価値を付与する遊技価値付与手段と、
C 識別情報の可変表示が開始されてから表示結果が導出表示されるまでに仮停止させた後に可変表示を再度実行する再可変表示を実行可能な再可変表示実行手段とを備え、
D 導出表示される識別情報の候補の画像と所定演出を示唆する所定演出示唆画像とが表示される特別演出を含み、
E 前記特別演出が実行された後、導出表示される前に前記所定演出を実行する所定演出実行手段をさらに備え、
G 前記特別演出において、前記所定演出示唆画像を複数表示可能であるとともに、
H’前記特別演出において表示される前記所定演出示唆画像には、特定リーチ演出を示唆する第1画像と、再可変表示を示唆する第2画像とが含まれる
遊技機。」
である点で一致し、以下の相違点で相違する。

(相違点1)
本願補正発明は「F 前記遊技価値付与手段は、前記所定演出実行手段により前記所定演出が実行されてから前記有利状態に制御されたときと、前記特別演出が実行された後前記所定演出が実行されずに前記有利状態に制御されたときとで、異なる割合により遊技価値を付与可能であ」るのに対し、引用発明はそのようなものか否か不明な点。

(相違点2)
「H’前記特別演出において表示される前記所定演出示唆画像」に「含まれる」「特定リーチ演出を示唆する第1画像と、再可変表示を示唆する第2画像」について、本願補正発明は両者が「異な」るものであるのに対し、引用発明はそのようなものか否か不明な点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。
(相違点1について)
引用発明は、dの「右図柄が順次スライドされていく中でチャンス図柄1510を出現させ」る「チャンス図柄1510での表示演出」が、「e チャンス図柄1510を右図柄として停止表示させて、スーパーリーチ状態への突入を通知」するときにのみ行われるのか、チャンス図柄1510を停止表示させずにすぐに数字の図柄を停止表示させて大当りとする場合にも行われるのか不明である。
しかしながら、予告演出の後にそれに対応する演出を行ったり行わなかったりすることはパチンコ遊技機の演出における常套手段であることは技術常識であり、また、図柄変動中にスーパーリーチを含む変動表示結果を示唆しておきながら、スーパーリーチ状態へ突入せずにいきなり大当りとすることも、例えば、

ア 原査定の拒絶の理由で先行技術文献として提示された特開2002-331108号公報(下線は当審で付した。)
(「【0017】一方、左右の図柄が一致した場合は、ノーマルリーチを動作開始する(ステップS7)。このノーマルリーチは、それまでの「1」から「9」までの9つの数字からなる中図柄列を、ノーマルリーチから発展可能なスーパーリーチに関連した図柄(関連図柄又は発展用図柄という。)を追加した中図柄列へ変化させ、この変化後の中図柄列を変動させることによって行われる。図3(B)は、ノーマルリーチ後の中図柄列の一例を示し、この例は、左右の図柄が「7」でノーマルリーチとなったときの中図柄の変化例であり、「1」から「9」までの数字に、関連図柄として馬、プール、TV局及び椰子の各図柄が追加されている。なお、関連図柄は、「1」から「9」までの数字と同様、予めはずれ停止図柄として追加しておいてもよいが、ノーマルリーチとなった図柄に応じた関連図柄に設定する方がゲーム性に富むため、上記のようにノーマルリーチ発生後に追加(挿入)することが望ましい。」
「【0020】一方、スーパーリーチが発生しなかった場合は、再リーチかどうかを判定し(ステップS18)、再リーチと判定した場合はステップS8へ戻り、スーパーリーチに発展するかどうかの判定を再び行う。なお、再リーチの回数は、ノーマルリーチが発生するたびに設定され、第1回目よりも第2回目の方が、第2回目よりも第3回目の方がスーパーリーチへの発展割合が多くなる傾向をもつ。そして、再リーチでないと判定した場合は、中図柄列を停止させ(ステップS5)、全ての図柄を最終停止処理した後(ステップS6)、大当たり図柄かどうかを判定し(ステップS16)、大当たり図柄と判定した場合は大当たり処理を行い(ステップS17)、一方大当たり図柄でないと判定した場合はステップS1へ戻る。」)

イ 原査定の拒絶の理由で先行技術文献として提示された特開2011-234755号公報(下線は当審で付した。)
(「【1093】
なお、図291に示すように、周辺基板4010は、開始領域1153bASに、図柄(停止図柄の候補)に加えて、この変動表示の後に実現され得る演出(以下、「発展演出」とも呼ぶ)を表す演出示唆画像ZACを、新たに表示する。周辺基板4010は、この演出示唆画像ZACを、図柄と同様に、拡大し、そして、移動させる。この演出示唆画像ZACは、図柄とは異なり、他の図柄列表示領域に停止表示された図柄と組み合わせて特別抽選結果を報知するものではない。後述するように、この演出示唆画像ZACが停止表示されると、特別抽選結果の報知の前に、発展演出が実現される。遊技者は、このように図柄とは異なる画像(演出示唆画像ZAC)を視認することによって、図柄の代わりに演出示唆画像ZACが停止表示されたらどうなるのかという期待を抱くことになる。なお、図柄(停止図柄の候補)に加えて、演出示唆画像ZACを利用した変動表示(図289?図292)を、以下、「複合変動表示」とも呼ぶ。」
「【1108】
なお、本演出例のような複合変動表示が実現される演出パターンとしては、以下の4つの演出パターンがある。
パターンA)複合変動表示に続けて、演出示唆画像は停止表示されずに、大当たり図柄が停止表示されるパターン(図293)
パターンB)複合変動表示に続けて、演出示唆画像は停止表示されずに、ハズレ図柄が停止表示されるパターン(図294)
パターンC)複合変動表示に続けて、演出示唆画像ZACが停止表示され(図295)、発展演出が実現された後に、大当たり図柄が停止表示されるパターン
パターンD)複合変動表示に続けて、演出示唆画像ZACが停止表示され(図295)、発展演出が実現された後に、ハズレ図柄が停止表示されるパターン)

に記載されているように周知技術であることに鑑みれば、引用発明において、dの「右図柄を1つずつ数字が変化するように図柄をスライドさせていき、次に、右図柄が順次スライドされていく中でチャンス図柄1510を出現させ」る「チャンス図柄1510での表示演出」を、「e チャンス図柄1510を右図柄として停止表示させて、スーパーリーチ状態への突入を通知」するときだけでなく、チャンス図柄1510を停止表示させずに数字の図柄を停止表示させて大当りとする場合にも行うようにすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項といえる。

また、遊技機において、スーパーリーチが実行されてから大当りになる場合と、スーパーリーチが実行されずに大当りになる場合とで、確変状態を付与する割合を異ならせることは、例えば、

ウ 原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2011-103968号公報(以下「引用文献2」という。下線は当審で付した。)
(「【0022】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、遊技機の一例としてパチンコ遊技機およびスロットマシンを示すが、本実施の形態に示す遊技機は、遊技者にとって有利な状態に制御する遊技機であれば、どのような遊技機であってもよい。」
「【0136】
変動パターン種別判定テーブルについて、判定結果が通常当り時であるときには、40%の割合でノーマルリーチにすると判定され、60%の割合でスーパーリーチにすると判定されるように、判定値数が振り分けられている。判定値数が振り分けられているとは、具体的にたとえば、「0?999」が判定値数として設定され得る場合、ノーマルリーチにすると判定される判定値数として「0?399」が定められており、スーパーリーチにすると判定される判定値数として「400?999」が定められていることなどをいう。
【0137】
また、変動パターン種別判定テーブルについて、判定結果が確変当り時であるときには、15%の割合でノーマルリーチにすると判定され、85%の割合でスーパーリーチにすると判定されるように、判定値数が振り分けられている。このように、15R大当りとなるときには、変動パターン種別としてノーマルリーチよりも高い割合でスーパーリーチが決定されるように構成されている。」)

エ 原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2005-287873号公報(以下「引用文献3」という。下線は当審で付した。)
(「【0135】
なお、星空スーパーリーチ、噴水リーチ及びいきなり噴水リーチは、大当たりの発生確率が高いスーパーリーチに分類される。本実施の形態のパチンコ機10では、大物口33への遊技球の入球に基づく抽選によって大当たりを付与する抽選結果が導出された場合には、スーパーリーチを選択し易いように構成する一方、大物口33への遊技球の入球の基づく抽選によって大当たりを付与しない抽選結果が導出された場合にはハズレ又はノーマルリーチを選択し易いように構成されている。また、通常大当たり(即ち、顔図柄を含んだ大当たり)は、スーパーリーチでは発生しないように構成されている。このように構成することによって、例えば、変動表示の実行時にスーパーリーチが現出した場合に、通常大当たりより遊技価値が高い確変大当たり発生の期待感を向上させることができるので、抑揚のある遊技を実現することができる。」
「【0173】
なお、本実施の形態では、図示していないが、通常大当たり(顔図柄を含む大当たり)が発生した場合には、通常大当たりから確変大当たり(ライン上に同一図柄が3つ並ぶ大当たり)が発生する再抽選機能が搭載されている。具体的には、リーチ表示を形成しているライン上に顔図柄が一旦停留表示された後、その顔図柄の口に相当する部分が広がってリーチ表示を形成する図柄と同一の図柄が見え隠れする演出が実行される。リーチ表示を形成する図柄が顔図柄の口の中から出てくれば確変大当たりを遊技者に付与するように構成されている一方、リーチ表示を形成する図柄が顔図柄の口の中に隠れてしまった場合には通常大当たりを遊技者に付与するように構成されている。また、通常大当たり(顔図柄を含む大当たり)は、ノーマルリーチ又はノーマルロングリーチでのみ発生するように構成されており、後述するスーパーリーチのいずれかが発生した場合には通常大当たりが発生しないように構成されている。」)

に記載されるように周知技術であるから、スーパーリーチが現出した場合に確変状態に対する期待感を向上させて遊技の興趣を向上させるために、引用発明に上記周知技術を適用して、スーパーリーチが実行されてから大当りになる場合と、スーパーリーチが実行されずに大当りになる場合とで、確変状態を付与する割合を異ならせるようにすることに格別の困難性はない。

したがって、引用発明及び周知技術に基づいて相違点1に係る本願補正発明の構成に想到することは当業者が容易になし得るものである。

(相違点2について)
引用発明は、eの「2つのキャラクタを登場、格闘させて特定のキャラクタが勝利した場合には大当りとする」「スーパーリーチ」演出と、「再度、左、中、右の3図柄を変動表示」する演出とが行われるものであり、「g チャンス図柄1510での表示演出において、チャンス図柄1510を複数表示する」ものであるから、「2つのキャラクタを登場、格闘させて特定のキャラクタが勝利した場合には大当りとする」「スーパーリーチ」演出と、「再度、左、中、右の3図柄を変動表示」する演出とのいずれが行われるかを遊技者に示唆できるようしようとすることは当業者であればあれば容易に想起でき、そのためにそれぞれの演出に合わせて「チャンス図柄15」を異ならせるようにすることに格別の困難性はなく、そのようにして相違点2に係る本願補正発明の構成に想到することは当業者が容易になし得るものである。

(効果について)
そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(まとめ)
したがって、本願補正発明は、引用発明及周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(請求人の主張について)
請求人は、審判請求書において、引用文献1に記載されている「チャンス図柄」とは、あくまでも「スーパーリーチ状態突入を通知するもの」であり、すなわち、引用文献1の段落[0053]には、スーパーリーチ状態突入以降の動作例として、(1)特別図柄とチャンス図柄を縮小して表示エリアの隅に表示すること、および(2)左、中、右の3図柄を変動表示させることが開示されているにすぎず、(2)の「3図柄を変動表示させること」は一般的な擬似連の再変動ではなく、あくまでスーパーリーチ中の図柄の態様であり、チャンス図柄が一般的な擬似連における再変動を示唆することは何ら開示されていない旨主張する。
しかしながら、上記(h)で記載したように、引用発明の「c 左図柄、中図柄を7で停止表示させてノーマルリーチ演出を行い、チャンス図柄1510を右図柄として停止表示させた状態から再度、左、中、右の3図柄を変動表示させて最終的な当り図柄(または外れ図柄)を表示する」前に、dの「チャンス図柄1510での表示演出」において「右図柄を1つずつ数字が変化するように図柄をスライドさせていき、次に、右図柄が順次スライドされていく中で」「出現」する「チャンス図柄15」は、「再度、左、中、右の3図柄を変動表示」することを示唆する第2画像といえるから、請求人の主張に理由はなく、その主張を採用することができない。

また、請求人は、審判請求書において、引用文献1?3には、いずれも、特別演出において表示される所定演出示唆画像には、特定リーチ演出を示唆する第1画像と、該第1画像とは異なり再可変表示を示唆する第2画像とが含まれるようにするように構成することは記載も示唆もなく、特に、引用文献1に記載された発明を適用したとしても、チャンス図柄が表示されても、スーパーリーチに対する期待感をもたせることができるだけであり、少なくとも再可変表示が実行される可能性が示唆されることによって信頼度が上がることに対する期待感をもたせることができるという本願発明の効果を得ることはできず、従って、引用文献1?3に記載された発明にもとづいて本願発明の構成に想到することはできない旨主張する。
しかしながら、上記(相違点2について)で記載したように、引用発明は、eの「2つのキャラクタを登場、格闘させて特定のキャラクタが勝利した場合には大当りとする」「スーパーリーチ」演出と、「再度、左、中、右の3図柄を変動表示」する演出とが行われるものであり、「g チャンス図柄1510での表示演出において、チャンス図柄1510を複数表示する」ものであるから、「2つのキャラクタを登場、格闘させて特定のキャラクタが勝利した場合には大当りとする」「スーパーリーチ」演出と、「再度、左、中、右の3図柄を変動表示」する演出とのいずれが行われるかを遊技者に示唆できるようしようとすることは当業者であれば容易に想起でき、そのためにそれぞれの演出に合わせて「チャンス図柄15」を異ならせるようにすることに格別の困難性はなく、そのようにして相違点2に係る本願補正発明の構成に想到することは当業者が容易になし得るものであるから、請求人の主張に理由はなく、これを採用することができない。

したがって、請求人の主張に理由はなく、その主張を採用することができない。

3 本件補正についてのむすび
以上より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成28年10月25日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶理由
原査定の拒絶の理由は、
(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に頒布された以下の引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、
というものである。

引用文献1:特開2002-210158号公報
引用文献2:特開2011-103968号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:特開2005-287873号公報(周知技術を示す文献)

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、前記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本願補正発明の発明特定事項である「再可変表示を示唆する画像が含まれる」「前記特別演出において表示される前記所定演出示唆画像」に関して、「特定リーチ演出を示唆する第1画像と、該第1画像とは異なり再可変表示を示唆する第2画像とが含まれる」という限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-02-08 
結審通知日 2018-02-13 
審決日 2018-02-27 
出願番号 特願2012-244493(P2012-244493)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 眞壁 隆一  
特許庁審判長 服部 和男
特許庁審判官 藤田 年彦
樋口 宗彦
発明の名称 遊技機  
代理人 塩川 誠人  
代理人 岩壁 冬樹  
代理人 井伊 正幸  
代理人 眞野 修二  

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