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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1339484
審判番号 不服2017-5813  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-24 
確定日 2018-05-08 
事件の表示 特願2012- 24607「使用パターン分析およびシミュレーションのためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月 6日出願公開、特開2012-168945、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成24年2月8日(パリ条約による優先権主張2011年2月9日(以下,「優先日」という。);米国)を出願日とする出願であって,平成27年8月21日付けで審査官により拒絶理由通知(同年同月25日発送)がされ,同年11月19日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ,平成28年4月7日付けで審査官により最後の拒絶理由通知(同年同月12日発送)がされ,同年7月6日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ,同年12月27日付けで拒絶査定(平成29年1月10日謄本送達,以下,「原査定」という。)がされ,これに対し,平成29年4月24日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,同年12月6日付けで拒絶理由通知(同年同月12日発送。以下,「当審拒絶理由」という。)がされ,平成30年3月7日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。


第2 原査定の概要

原査定(平成28年12月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-10に係る発明は,以下の引用文献1-4に基づいて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>

1 特開平11-224214号公報
2 特開2010-003020号公報
3 国際公開第2004/104881号
4 特開平10-105440号公報


第3 当審拒絶理由の概要

当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

(1)本件出願は,明細書,特許請求の範囲及び図面の記載が不備のため,特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号,第2号に規定する要件を満たしていない。

(2)本願請求項1-4,6,8,10に係る発明は,引用例A,Bに記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>

A 特開2001-56771号公報
B 特開平10-3410号公報


第4 本願発明

本願請求項1-9に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明9」という。)は,平成30年3月7日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-9に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
ソフトウェアおよびハードウェアを有するシステム(12)上の複数のイベントに関するイベントデータを取得するように構成されたシナリオオブザーバ(26)であって,前記複数のイベントがユーザ入力を含む,シナリオオブザーバ(26)と,
前記イベントデータを複数のシナリオ(18)と関連付けるように構成されたシナリオアソシエータ(27)と,
前記システム(12)の使用パターンを識別するために前記複数のシナリオ(18)を分析するように構成されたシナリオアナライザ(30)と,
を備え,
前記複数のシナリオ(18)のそれぞれが,一意に識別される複数のイベントのサブセットを含み,
前記一意に識別される複数のイベントのサブセットの前記サブセットは,開始イベント,終了イベント,および1つ以上の中間イベントを含み,
前記シナリオアナライザ(30)が,前記使用パターンを識別して前記システムに対する変更の優先順位を付けるために前記複数のシナリオ(18)を分析するように構成される,
システム。
【請求項2】
前記シナリオオブザーバ(26)が,ユーザアクティビティオブザーバ(36)と,ソフトウェアコンポーネントオブザーバ(34)と,ハードウェアコンポーネントオブザーバ(32)とを備える,請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記シナリオオブザーバ(26)が,前記システムの複数のユーザ入力デバイス,ソフトウェアプロセス,ハードウェアアクティビティ,またはそれらの組合せをモニタリングして,前記イベントデータをモニタリング中に取得するように構成される,請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記シナリオアソシエータ(27)が,前記複数のシナリオ(18)のシナリオごとの前記開始イベント,前記終了イベント,または前記中間イベントのうちの少なくとも1つを識別するように構成される,請求項1から3のいずかに記載のシステム。
【請求項5】
前記シナリオアソシエータ(27)が,新規シナリオマトリクスを作成すること,既存のシナリオマトリクスを更新すること,または前記複数のシナリオ(18)を相関させることのうちの少なくとも1つを実行するように構成される,請求項1から4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
シナリオアナライザ(30)がメトリックを用いて前記使用パターンを識別するために前記複数のシナリオ(18)を分析するように構成され,前記メトリックが前記複数のシナリオ(18)における各シナリオ(18)の使用の頻度または数を示すシナリオ使用メトリックを備える,請求項1から5のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
前記シナリオアナライザ(30)がメトリックを用いて前記使用パターンを識別するために前記複数のシナリオ(18)を分析するように構成され,前記メトリックが,各シナリオ(18)と前記複数のシナリオ(18)における他のシナリオとの間の一致の程度を示すシナリオ一致メトリック(80,82)を備える,請求項1から6のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
前記シナリオアナライザ(30)がメトリックを用いて前記使用パターンを識別するために前記複数のシナリオ(18)を分析するように構成され,前記メトリックがハードウェア使用メトリックおよびソフトウェア使用メトリックを備え,前記ハードウェア使用メトリックが前記システムの1つまたは複数のハードウェアコンポーネントの使用の程度を示し,前記ソフトウェア使用メトリックが前記システムの1つまたは複数のソフトウェアコンポーネントの使用の程度を示す,請求項1から7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
前記使用パターンが低い使用から高い使用までの複数の異なる使用レベルを備える,請求項1から8のいずれかに記載のシステム。」


第5 引用文献,引用発明等

1.引用文献1について
本願の優先日前に頒布され,当審拒絶理由に引用された,特開2001-56771号公報(以下,これを「引用文献1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審により付与。以下同じ。)

A.「【0002】
【従来の技術】エンドユーザとしての一般消費者が使用する機器やシステム,例えばATM,発券売機,携帯電話等は,各機器によって定められた手順に従って操作することにより,エンドユーザにとって有用な機能を発揮する。このようなエンドユーザが操作すべき手順は,各機器のユーザインタフェースと呼ばれ,各機器の操作性すなわち使い勝手を決定する上で最も大きな要素となっている。このためエンドユーザがそのような機器を購入する際,あるいはその機器を使用してサービスを提供するサービス業者を選択する際,ユーザインターフェースの如何が主な選定基準となることも多い。
【0003】しかし,このようなユーザインタフェースの評価技術,操作性能の評価技術として必ずしも確立されたものはなかった。従来のこの種の評価方法は,定性的な評価方法と定量的な評価方法とに分類される。定性的な評価方法としては,評価対象となる機器ごとに特有のチェックリストを準備し,ユーザの操作を観察して問題点を摘出する方法やユーザとのインタビュー結果を収集するような方法が知られている。また,定量的な評価方法としては,操作のエラー率や特定の作業に対する達成時間を蓄積して達成効率を測定する方法等が知られている。
【0004】しかし,上記の定性的な評価方法では,機器の操作上の問題点を見いだすことは可能であるが,定量的なデータに裏付けられたものとはならないため,評価結果の信頼度と第三者に対する説得力とにおいて必ずしも十分な効果を得ることができなかった。
【0005】一方,上記定量的な評価方法は,操作効率の評価に有効と考えられているが,システムを操作する上での問題点の摘出には有効に活用されてはいなかった。また,機器の操作性能を定量的に分析するために,被験者として不特定多数のユーザからのデータを採取することが非常に困難であるという問題があった。
【0006】このような結果として,操作性能の評価結果を分析するためには特定の専門家による考察が必要とされていた。従って,一般的な製品開発の工程に導入可能であって,定量的な評価に基づいて簡易に操作性能上の問題点を摘出可能な評価技術は提供されていなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような従来の技術の問題点に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,機器の操作性能を評価するために簡易に評価データを収集し,短時間に評価データの分析を行う操作性能評価機能を提供することにある。さらに,データ収集およびデータ分析の効率化を図ることで被験者の数を実質的に無制限(すなわち分析時間を実質的に0,または分析時間を被験者数に依存しない一定値)とし,かつ一般の開発担当者でも操作性能上の問題点の摘出が可能な操作性能評価機能を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決するために,以下の手段を採用した。すなわち,本発明は,複数の操作を含むユーザからの指示手順に従って機能するシステムの操作性能を評価するための操作性能評価装置であって,システムを機能させるためにユーザが指示手順として操作した各操作の完了を検出するための操作検出部と,各操作が完了した完了時間を測定する完了時間測定部と,測定された完了時間を集計する集計部と,完了時間を表示する表示部とを備えたものである。
【0009】このような各操作の完了時間を複数ユーザについて測定し,集計することにより,各操作をすべき時期が訪れた後,実際に操作がなされるまでの時間(これを滞留時間という)を求める。さらに,どの操作において滞留時間が長くなるかを表示することにより,操作性能の評価結果が明示される。
【0010】本発明においては,システムに応じた操作の組み合わせとして指示手順を定義するための指示手順定義部をさらに備えてもよい。このような操作手順を定義することによって,操作手順の異なる複数のシステムに対しても各システムごとに固有の手順に従ってシステムを操作する際の評価が可能になる。
【0011】本発明においては,評価されるシステムに関する専門知識を有する専門家による各操作の完了時間としての専門家完了時間を保持する手段をさらに備え,ユーザによる各操作の完了時間の前記専門家完了時間に対する比率としての専門家時間比率を求めて,これに基づいて対象システムの操作性能を評価してもよい。この場合,専門家時間比率が特定値を越える操作と前記専門家時間比率が特定値を越ない操作とを識別可能に表示するようにしてもよい。」

B.「【0013】図1は,本発明の実施の形態に係る操作性能評価装置11の構成図であり,図2及び図3は操作手順の概念図であり,図4は本実施の形態に係る操作性能評価装置11による評価の対象の一例であるATM(現金自動預け払い機)の操作画面の例であり,図5は図1の構成図に示したCPU1が取り扱うデータ構造を示す図であり,図6はCPU1の制御プログラムの処理を示すフローチャートであり,図7及び図8は,操作性能評価結果の表示例である。
<構成>図1は,ATM10(これが評価対象となるので,以下対象システムという)の操作性能を評価するために,本発明の実施の形態に係る操作性能評価装置11とATM10とを組み合わせた構成を示す図である。図1のように,この操作性能評価装置11は,装置を制御するCPU1と,CPU1の入出力ポートに接続され,ユーザがATM10を操作するときの操作ステップを取り込む位置検出センサ2(操作検出部に相当)と,位置検出センサ2から取り込まれたユーザの操作ステップを記録するハードディスク装置3と,評価結果を表示する表示装置4と,キーボード5と,ユーザの操作を操作画像として撮影するビデオカメラ6と,撮影された操作画像を記録するVTR7と,記録された画像を表示する画像表示装置8とを備えている。
【0014】位置検出センサ2は,極細の導電線を縦方向に等間隔に並べた透明シートと極細の導電線を横方向に等間隔に並べた透明シートとをギャップを設けて対向させてマトリクススイッチを形成したものであり,ATM10の操作卓上のタッチパネル12と重ねられ,ユーザがこのタッチパネル12を押してATM10を操作すると,操作卓からATM10に指示信号が発せられるともに,その操作による押圧位置が位置検出センサ2の信号として検出され入出力ポートを通じてCPU1に送られる。
【0015】CPU1は,図示しないメモリ上に保持された制御プログラム1bを実行して装置を制御する。また,CPU1は,位置検出センサ2によって検出される押圧位置の信号から各操作の完了を検出するともに,内蔵するタイマ1a(完了時間測定部に相当)により,各操作の完了時間を測定する。CPU1で実行される制御プログラム1bは,これらの測定結果を集計し,その結果に基づき対象システムの操作性を評価し,評価の結果を表示装置4に表示する。この制御プログラム1bが集計部に相当する。」

C.「【0021】次に,図3に示すように一般被験者が対象システムを操作した際の各操作の完了時間を測定する。図3に示すように一般被験者操作が操作する場合には,操作の各段階で迷い,悩み,考え,誤操作を行い,その結果として対象システムの開発者等の専門家が操作した場合に比べて各操作ごとに特有の要因に依存して完了時間が延長される。本実施の形態では,各操作ごとに測定した完了時間から上記のように保持しておいた専門家完了時間に対する比率(専門家時間比率)を算出する。
<操作手順の定義>本実施の形態の操作性能評価装置では,予めCPU1の制御プログラム1bが表示装置4を通じて,オペレータ(対象システムの評価者)に入力を促し,キーボード5及び図示しないマウスにより,図5に示したような操作の組み合わせからなる操作手順を作成させる。本実施の形態では,制御プログラム1bが指示手順定義部の機能を提供する。
【0022】図5は対象システムの機能の構成を示すタスクテーブル13と各タスクにおける操作の構成を示す操作テーブルとを示している。タスクテーブル13は,ATM10の機能が,現金の引出し,現金の預け入れ,現金の振込等のタスクとして構成され,また操作テーブル14は,各タスクが操作1以下のような操作から構成されることを示している。
【0023】図5の操作テーブル14の各行(操作に対応)に示した検出座標は,位置検出センサ2上の押圧信号が検出されるべき座標を示している。したがって,CPU1で実行される制御プログラム1bは,位置検出センサ2からの押圧信号によって示される座標がその検出座標の範囲にあることを検知すると,該当する行に示された操作が完了したものとみなす。
【0024】このようにして指示手順が定義できるので,本操作性評価装置は,ATM10以外の操作手順の異なるATMや,ATM以外の装置の評価にも適用できる。
<動作例>操作性能の測定時にCPU1で実行される制御プログラム1bの処理を図6に示す。
【0025】キーボードからの指示の従い,制御プログラム1bが測定を開始する(S100)。まず,制御プログラム1bは,表示装置4にタスクの一覧を表示し,オペレータ(本実施の形態の操作性能評価装置の管理者)にタスクの選択を促す。これに対して,図示しないマウスまたはキーボード5からの指示により,タスクが選択される(S103)。
【0026】次に制御プログラム1bは,図5に示した操作テーブルのすべての操作を完了するまで以下の処理を繰り返す(S104)。すなわち,位置検出センサ2からの押圧信号を監視し,この押圧信号によって示される押圧位置の座標が操作テーブルの検出座標の範囲にあると判定されると,この操作を完了したものと判断し(S105),その完了時間を操作テーブルに記録する。また,その操作に要した時間(滞留時間)と,専門家完了時間に対するこの滞留時間の比率としての専門家時間比率とを算出し,操作テーブルに記録する。このようにして,操作テーブルに定義された各操作の完了を操作1から順に検出し,操作性能を評価していく。
【0027】すべての操作を完了すると,評価結果をハードディスク装置3に保存し(S108),最初のタスク一覧を表示する状態へもどる(S101)。以上の測定を複数の被験者を対象に繰返して,測定結果をハードディスク装置3に記録してゆき,オペレータからの終了指示があると(S102),測定を終了する(S110)。
【0028】図7に測定結果の例を示す。図7は,横軸に操作を明示し,縦軸に各操における滞留時間を専門家完了時間に対する比率として表示したものである。このように,対象システムの各操作ごとに評価がなされるので,どの操作において,滞留時間が長いか,すなわち,操作上の問題があるかが客観的に表示される。さらに,上述したように専門家完了時間に対する比率に換算された専門家時間比率が表示されるので,専門家としての開発者が開発段階で認識できず,一方,一般ユーザにとって問題となる操作が明確に表示される。
【0029】図8は,専門家時間比率が特定値としての平均値を越える場合と越えない場合とを強調して(専門家時間比率が平均値を越える操作の棒グラフを塗りつぶしパターンで,専門家時間比率が平均値越えない操作の棒グラフを白抜きのパターンで)表示したものである。このような表示をすることにより,タスクに含まれる操作の項目が多数の場合であっても,問題となる操作を容易に検出できる。
【0030】上述のように,本実施の形態では,対象システムに対する操作を位置検出センサ2が検出するので,対象システムの通常の運用に影響を与えたり,対象システムに改造を加えることなく,その操作性能を評価することができる。
<変形例>上記実施の形態に係る操作性能評価装置では,各操作の完了時間を検出した直後に専門家時間比率を算出するが,測定段階では,各操作の完了時間をハードディスク装置3に記録しておき,測定終了後,評価結果の表示前に専門家時間比率を算出して表示してもよい。
【0031】上記実施の形態に係る操作性能評価装置では,各被験者による測定結果をそのままハードディスク装置3に記録するが,被験者ごとの評価結果を加算し,平均等の統計処理した結果を記録するようにしてもよい。」

したがって,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「複数の操作を含むユーザからの指示手順に従って機能するシステムの操作性能を評価するための操作性能評価装置であって,
ATMと組み合わせた構成として,装置を制御するCPUと,CPUの入出力ポートに接続され,ユーザがATMを操作するときの操作ステップを取り込む位置検出センサと,位置検出センサから取り込まれたユーザの操作ステップを記録するハードディスク装置と,評価結果を表示する表示装置と,キーボードと,ユーザの操作を操作画像として撮影するビデオカメラと,撮影された操作画像を記録するVTRと,記録された画像を表示する画像表示装置とを備え,
上記位置検出センサは,ATMの操作卓上のタッチパネルと重ねられ,ユーザがこのタッチパネルを押してATMを操作すると,操作卓からATMに指示信号が発せられるともに,その操作による押圧位置が位置検出センサの信号として検出され入出力ポートを通じてCPUに送られるものであり,
上記CPUは,メモリ上に保持された制御プログラムを実行して装置を制御し,また,位置検出センサによって検出される押圧位置の信号から各操作の完了を検出するともに,内蔵するタイマより,各操作の完了時間を測定し,CPUで実行される上記制御プログラムは,これらの測定結果を集計し,その結果に基づき対象システムの操作性を評価し,評価の結果を表示装置に表示するものであり,
予めCPUの制御プログラムが表示装置を通じて,オペレータ(対象システムの評価者)に入力を促し,キーボード及びマウスにより,操作手順を作成させるものであって,上記操作手順は,対象システムの機能の構成を示すタスクテーブルと,各タスクにおける操作の構成を示す操作テーブルからなり,上記タスクテーブルは,ATMの機能が,現金の引出し,現金の預け入れ,現金の振込等のタスクとして構成され,また上記操作テーブルは,各タスクが操作1以下のような操作から構成されることを示しており,
操作性能の測定時の,CPUで実行される制御プログラムの処理として,
表示装置にタスクの一覧を表示し,オペレータにタスクの選択を促し,
位置検出センサからの押圧信号を監視し,この押圧信号によって示される押圧位置の座標が操作テーブルの検出座標の範囲にあると判定されると,この操作を完了したものと判断し,
その完了時間を操作テーブルに記録し,
その操作に要した時間(滞留時間)と,専門家完了時間に対するこの滞留時間の比率としての専門家時間比率とを算出し,操作テーブルに記録することで,操作テーブルに定義された各操作の完了を操作1から順に検出し,操作性能を評価し,
すべての操作を完了すると,評価結果をハードディスク装置に保存し,最初のタスク一覧を表示する状態へもどる,
との一連の処理を,操作テーブルのすべての操作を完了するまで繰り返す,
操作性能評価装置。」

2.引用文献2について
本願の優先日前に頒布され,当審拒絶理由に引用された,特開平10-3410号公報(以下,これを「引用文献2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

D.「【0003】さらに,ユーザが使用するシステムの操作性(使いやすさ)の評価を目的として,複数のユーザの操作履歴と1つの正解の操作履歴(正解の操作手順を記録した操作履歴)を用いて,システムが正解の状態にあるとき(正解操作履歴に含まれている状態のとき)にユーザが操作を行うまでに要した時間の平均を同じ正解の状態ごとに計算し,グラフ形式で表示する従来のユーザインタフェース評価装置として,文献2:第10回ヒューマンインタフェース・シンポジウム論文集(1994年10月18日?20日),335頁?340頁に記載されている技術が知られている。この文献2に記載の従来のユーザインタフェース評価装置は,正解の操作手順を1つに決めることが可能なシステムを評価対象としており,正解操作履歴とユーザ操作履歴を先頭から順番に比較して,システムが正解の状態にあるときに行われたユーザの操作を検出する。次に,同じ正解の状態ごとに,その状態で操作を行うのにユーザが要した時間の平均を計算し,その計算された平均のデータをグラフ形式で表示する。評価者は,表示されたグラフを見て,平均の値の大きい個所を見つけることで,ユーザが次の操作を行うまでに長く時間がかかりやすい個所を見つけることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし,文献1に記載のユーザインタフェース評価装置では,ユーザの操作履歴を1つずつグラフ表示し,分析しなければならないため,操作履歴の数が多ければ多いほど,それらをすべて分析するのに要する作業工数が大きくなってしまうという問題があった。
【0005】一方,文献2に記載のユーザインタフェース評価装置では,複数のユーザ操作履歴から平均を計算することが可能であるので,操作履歴を1つずつ分析する必要がなく,操作履歴の数が増加しても分析工数は増加しない。しかし,文献2に記載のユーザインタフェース評価装置は,正解の操作手順を1つに決めることができないシステムの場合(例えば,同じ機能を使用する操作手順が複数個ある場合や,操作の順番が任意な場合)は,ユーザ操作履歴を正解操作履歴と比較できないので,このようなシステムを評価できない。」

3.引用文献3について
本願の優先日前に頒布され,原査定の拒絶理由に引用された,特開平11-224214号公報(以下,これを「引用文献3」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

E.「【0020】イベント分類装置1は,例えば図1に示すように,CPUおよびメモリからなり,表示装置2,マウスやキーボード等の入力デバイス3,磁気ディスク装置等の外部記憶装置4の周辺機器を持つ。また,ソフトウェア・プログラムによって実現されるイベント系列収集部10と,イベント系列格納部20と,パターン抽出部30と,イベントパターンデータベース管理部40と,データベース利用部50とを備える。以下では,イベント分類装置1の構成要素について順に説明する。
【0021】(1)イベント系列収集部
図2は,イベント系列収集部10の構成例を示す。図2に示すように,イベント系列収集部10は,収集イベント選択手段11と,イベント収集手段12と,収集イベント表示手段13とから構成される。
【0022】イベント系列収集部10の構成要素を順に説明する。まず,収集イベント選択手段11は,ユーザがコンピュータを操作しているとき発生している多種多様なイベント系列のうち,ユーザが収集を希望するイベント系列の種類を選択する機能を堤供する。
【0023】次に,イベント収集手段12は,収集イベント選択手段11によって選択された種類のイベント系列を収集する機能を堤供する。最後に,収集イベント表示手段13は,イベント収集手段12によって収集されたイベント系列を望ましい形式でCRTや液晶ディスプレイ等の表示装置2に表示する。
【0024】図3は,イベント系列収集部10の動作説明図である。図3は,例えば,米国マイクロソフト社のオペレーティング・システム(OS)であるWindowsのような,GUI(Graphical User Interface)を備えたイベント駆動型OSにおいて,イベント系列収集部10によってイベント系列が収集される場合を示している。ただし,図3では簡単化のため,複数のスレッドは省略して,一つのスレッド18だけを表している。
【0025】図3に従って動作を説明する。まず,ユーザが入力デバイス3を操作することによって,ハードウェア・イベント発生部14からハードウェア・イベントが発生し,OSによってハードウェア・イベントに対応するメッセージが生成され,OSのメッセージキュー(Message queue)15に渡される。OSのメッセージキュー15に入っているメッセージは,順番に従ってスレッドに配達され,スレッドのメッセージキュー17に入れられる。スレッドのメッセージキュー17に入っているメッセージは順番に従って取り出され,スレッド18内でメッセージの種類に対応する処理が行われる。
【0026】ここで,すべてのメッセージがユーザ操作等のハードウェア・イベントに起因する訳ではなく,OSやスレッドで生成され,対応するメッセージキューに渡されるメッセージもある。すなわち,OSやスレッドのメッセージ16が,OSのメッセーキュー15やスレッドのメッセージキュー17につながれることもある。
【0027】上述のように,コンピュータ内でイベント・メッセージ系列が流れている状況で,収集イベント選択手段11は,収集するイベント・メッセージ系列の種類を選択する機能を堤供する。選択の基準として,例えばスレッドやプロセスの単位/集団で選択,イベント・メッセージの種類で選択,時間で選択などがある。また,イベント収集手段12は,指定されたイベント・メッセージ系列を実際に収集し,収集イベント表示手段13は,収集されたイベント・メッセージ系列をユーザが理解しやすい形式でディスプレー等の表示装置2に出力する。
【0028】(2)イベント系列格納部
図4は,イベント系列格納部20の構成例を示す。図4に示すように,イベント系列格納部20には,記録手段21と,取出手段22と,削除手段23とがある。
【0029】記録手段21は,イベント系列収集部10によって収集され,メモリ5上に一時保持されたイベント系列データを外部記憶装置4に転送し記録する。取出手段22は,外部記憶装置4に記録されているイベント系列データの中から指定されたデータを取り出す。削除手段23は,外部記憶装置4に記録されているイベント系列データのうち,設定された基準を満たしたものを自動的に削除する。これによって,イベント系列データを保持しておくための記憶容量を制限することができる。
【0030】(3)パターン抽出部
図5は,パターン抽出部30の構成例を示す。図5に示すように,パターン抽出部30は,手掛りイベント設定手段31と,エラー監視手段32と,抽出基準設定手段33と,候補データベース34と,候補削除手段35と,パターン抽出手段36とから構成される。
【0031】手掛りイベント設定手段31は,すべてのイベント・メッセージの中から特定イベントを選択し,手掛りイベントとして設定する処理手段である。設定される手掛りイベントとは,例えば,あるスレッドが所有しているダイアログボックスの「OK」ボタンや「CANCEL」ボタンが押されたことを意味するイベント・メッセージなどである。手掛りイベント設定手段31は,このような特定イベント・メッセージを手掛りイベントとして設定する。設定される手掛りイベントは一つとは限らず,複数であってもよい。
【0032】エラー監視手段32は,コンピュータでエラーが発生したかどうかを監視し,エラー発生を検知したならパターン抽出手段36に報告する。抽出基準設定手段33は,イベント系列から定型パターンを抽出する際の基準を設定する。設定される基準とは,抽出したいイベントパターンのサイズ(イベント数)やイベントパターン内の手掛りイベントの位置関係,および,パターンの出現回数などである。パターン抽出手段36では,抽出基準設定手段33によって設定された基準を満足するイベント列がパターンとして抽出される。
【0033】候補データベース34は,パターン抽出手段36によりパターンの候補として挙げられたパターンを記録しておくデータベースである。候補削除手段35は,候補データベース34に格納されている定型パターンの候補のうち,事前に指定された基準を満たした候補パターンを自動的に削除する。
【0034】パターン抽出手段36は,図6および図7で示したフローチャートに従って動作し,イベント系列から定型パターンを抽出する。まず,パターン抽出手段36の動作を,図6のフローチャートに従って説明する。パターン抽出手段36は,イベント系列格納部20にイベントがあるかどうかをチェックし(S1),イベント系列格納部20に格納されているイベント系列データからイベントを取り出す(S2)。このとき,イベントがなければ処理を終了する。
【0035】イベントが取り出せたならば,それが手掛りイベントかどうかを判定し(S3),手掛りイベントでなければ,次のイベントを取り出す処理(S1)に戻る。一方,手掛りイベントならば,抽出基準設定手段33であらかじめ指定されたイベントパターンの基準に従って,手掛りイベントの前後のイベント列を取り出す(S4)。
【0036】次に,取り出したイベント列が候補データベース34に既に存在するかどうかを調ベ(S5),存在しなければ候補データベース34に登録し(S6),次のイベントの処理(S1)へ移る。候補データベース34に存在していれば,そのイベント列の出現回数を1つ増加させる(S7)。次に,出現回数が抽出基準設定手段33によって設定された指定値を越えたかどうかを調べ(S8),指定値を越えていなければ,次のイベントの処理(S1)へ移る。出現回数が指定値よりも多くなれば,前記のイベント列を定型パターンとして抽出し,イベントパターンデータベース管理部40に登録を依頼し(S9),その後,次のイベントの処理(S1)へ移る。
【0037】さらに,パターン抽出手段36の動作を,図7のフローチャートに従って説明する。この場合は,手掛りイベントではなくエラーをトリガーとしてイベントパターンの抽出が行われる。図7のフローチャートを説明すると,まず,パターン抽出を継続するかどうかを判定し(S10),継続しない場合には処理を終了する。継続する場合には,エラー監視手段32によってコンピュータでエラーが発生したかどうかを監視し(S11),エラーが起こった場合には(S12),抽出基準設定手段33によって設定された基準に従って,エラー発生直前のイベント列を取り出す(S13)。
【0038】次に,取り出したイベント列が候補データベース34に既に存在するかどうかを調ベ(S14),存在しなければ候補データベース34に登録し(S15),ステップS10へ戻る。候補データベース34に存在していれば,そのイベント列の出現回数を1つ増加させる(S16)。次に,出現回数が抽出基準設定手段33によって設定された指定値を越えたかどうかを調べ(S17),指定値を越えていなければ,ステップS10へ戻る。出現回数が指定値よりも多くなれば,取り出したイベント列を定型パターンとして抽出し,イベントパターンデータベース管理部40に登録を依頼し(S18),その後,最初のステップS10へ戻って同様に処理を繰り返す。
【0039】図8は,図6のフローチャートで示した手掛りイベントを含む候補イベント列の例を示す。例えばk番目のイベント(k)が手掛りイベントの場合,抽出基準設定手段33で設定された抽出基準に応じて,その前後のイベント列を候補パターン列として取り出す。図8における候補パターン列の例1は,抽出基準が手掛りイベントの前2個となっている場合であり,候補パターン列の例2は,抽出基準が手掛りイベントの前3個となっている場合であり,候補パターン列の例3は,抽出基準が手掛りイベントの後3個となっている場合であり,候補パターン列の例4は,抽出基準が手掛りイベントの前後3個となっている場合である。これらの候補パターン列には,手掛りイベントも含まれる。」

4.引用文献4について
本願の優先日前に頒布され,原査定の拒絶理由に引用された,特開2010-003020号公報(以下,これを「引用文献4」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

F.「【0069】
図12のフローチャートの説明に戻る。
ステップS21-2(区切り位置設定部)において,前処理済み,かつ,統合済みの長期に渡る操作履歴コードを同目的の操作履歴の塊(一連の操作) にまとめる。例えばテレビジョンセットの場合,“明るさ設定” と“音量調節” を順に行ったとしたら,“明るさ設定” に関する一連の操作と“音量調節” に関する一連の操作の間に区切りを設定して,それぞれの一連の操作を同目的の操作履歴の塊としてまとめることに相当する。
【0070】
区切り位置の決定方法としては,例えば次のような規範を組み合わせるが,これらの候補位置に限られない。
(1) 操作履歴統合処理で統合されなかった隣接する操作履歴コードの間。図13を例に挙げると,波線で示した位置である。例えば各操作履歴情報,低レイヤーの画質設定メニュー表示状態42LL-1,42LL-2,42LL-3,高レイヤーの画質設定メニュー表示状態42HLの各境界部分が該当する。これに該当する候補位置の集合をSAとする。
(2) 時間間隔が閾値δよりも大きい隣接する操作履歴コードの間。閾値δは全部の操作履歴コードに共通の値をあらかじめ決定しておいたり,操作履歴コードの種類に応じて値を変えたりしてもよい。閾値をδとした場合,これに該当する候補位置の集合をSB(δ) とする。
(3) 規格で決められている(操作機器の取り扱い説明書に記載されている) 一連の操作の中で,初めにしか現れない操作履歴コードの直前や,最後にしか現れない操作履歴コードの直後。これに該当する候補位置の集合をSCとする。
(4) 操作機器の内部状態の利用。例えばテレビセットの場合,I2Cコード等を利用して実際に電源オフや電源オンの位置を調査し,その位置やその前後に区切り位置を設定する。これに該当する候補位置の集合をSDとする。」

5.引用文献5について
本願の優先日前に頒布され,原査定の拒絶理由に引用された,国際公開第2004/104881号(以下,これを「引用文献5」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

G.「このように分類されたグループは,それぞれ図6に示すような操作系列を含むことになる。このような1つのグループに属する操作系列群をエピソードと呼ぶ。なお,1つのエピソードにおける操作系列の発生順序は考慮してもしなくてもよいが,ここでは考慮しないものとして説明する。また,ここではグループの分類にあたり,隣接するデータ同士の時間間隔が所定時間以下の場合について説明したが,簡便な.方法として所定時間間隔でグループに分類する方法であっても構わない。例えば時間間隔は10分とし,毎正時から10分まで,10分から20分まで,20分から30分まで(以下同様)のようにグループ分けしていく方法である。
次に,パターン抽出部404は,上記のように分類したエピソード間で共起する操作系列が存在するか否かを確認する(ステップS202)。すなわち,パターン抽出部404は,エピソード間で同一な操作系列又は部分的に一致する操作系列がするか否かを確認する(ステップS203)。ここで,同一又は部分的に一致する操作系列が存在しない場合,パターン抽出部404は処理を終了する。
?方,同一又は部分的に一致する操作系列が存在すれば,パターン抽出部404は,その操作系列を頻出操作パターンとして抽出する(ステップS204)。例えば,図6に示す例ではエピソード1001およびエピソード1004は,両方とも「PowerOn,Opr1,Opr4」であり,エピソードは完全に一致する。また,エピソード1003とエピソード1005とは,「PowerOff,Opr2」の部分は一致する。したがって,一致する2つのエピソード又はエピソードの一部は,頻出する操作系列のパターンとしてパターンデータベース405に登録する候補となる。なお,ここでエピソード間の一致や部分一致を判定する条件として,少なくともエピソードを構成する要素の2つ以上の所定の数以上が一致するものとする。
次に,パターン抽出部404は,抽出した頻出操作パターンが既にパターンデータべース405に登録されているパターンであるか否かを確認する(ステップS205)。登録済みの場合,パターン抽出部404は処理を終了する。一方,未登録の場合,パターン抽出部404は抽出した頻出操作パターンをパターンデータべース405に登録する(ステップS206)。このようにパターンデータベース405には,例えば図7に示すような頻出操作パターンが登録される。
例えば,図7に示すNo.1のデータは,「機器の電源を入れたら,操作1と操作4を行う」という行為が定型化したパターンであることを示しており,同様にNo.2のデータは「操作2の後には電源を消す」というパターンであることを示している。また,No.3からNo.5についても上記同様の手順で抽出され,パターンデータベース405に登録される。」(第13頁16行?第15頁3行)

6.引用文献6について
本願の優先日前に頒布され,原査定の拒絶理由に引用された,特開平10-105440号公報(以下,これを「引用文献6」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

H.「【0019】記録情報取得部11は,入力装置21に入力された操作(入力されたキーの種類,入力対象となったアプリケーションの機能等)を取得する。そして,取得した操作を,取得した時間と共に記録情報ファイル12に記録する。また,記録情報取得部11は,計算機22の内部情報(メモリの使用率,レジスタに格納されている値等)を,所定時間毎に取得する。そして,取得した内部情報を,取得した時間と共に記録情報ファイル12に記録する。これにより,記録情報ファイル12には,入力装置21に入力された操作と,計算機22の内部情報とが時系列的に記録されることになる。ここで,図2に,監視情報ファイル14に格納された記録情報の内容の一例を示す。」

J.「【0045】ステップ1009では,監視情報作成部133により,他の障害と識別するための適当な識別番号と,ステップ1003?1005で究明した障害操作列と,記録情報ファイル12に記録された障害発生時の計算機22の内部情報と,ステップ1006で解析者が選択した障害に対する対応策と,からなる監視情報を作成する。その後,この監視情報は,監視情報提供部134により,監視情報ファイル14に記録される。
【0046】次に,計算機システム2に発生する障害を未然に検出する際の動作について図5を参照して説明する。
【0047】図5は本実施形態装置が,計算機システム2に発生する障害を未然に検出する際の動作を説明するためのフロー図である。このフローは,図4のフローと同様に,計算機システム2が起動されると開始される。
【0048】先ず,障害監視部16により,入力操作取得部161が,入力装置21に入力された操作を取得したか否かを判断する(ステップ2001)。取得した場合にはステップ2002に移行し,取得していない場合には,入力操作取得部161が,入力装置21に入力された操作を取得するまで待つ。
【0049】ステップ2002では,障害監視部16により,記録情報ファイル12に格納された操作履歴を取得する。この場合,取得した操作履歴は,計算機システム2が起動されてからステップ2001で取得が検知された操作までの操作履歴となる。また,障害監視部16は,記録情報ファイル12に格納された操作履歴の中から,最も新しく記録された内部情報を取得する。
【0050】ステップ2003では,障害監視部16により,監視情報ファイル14に格納された監視情報の中から,ある識別番号に対応する障害操作列と,当該障害操作列に対応する障害発生時の内部情報とを取得する。
【0051】次に,障害監視部16は,ステップ2002で取得した操作履歴のうち,最新の操作(即ち,現在,入力操作取得部161で取得されている操作)を含むある操作列が,ステップ2003で取得した障害操作列に該当するか否かを判断する(ステップ2004)。該当する場合,計算機22の内部情報の状態によっては,現在,入力操作取得部161で取得されている操作を計算機22で実行すると,計算機22に障害が発生するおそれがある。この場合はステップ2005に移行する。一方,該当しない場合はステップ2006に移行する。
【0052】ステップ2005では,障害監視部16により,ステップ2002で取得した,記録情報ファイル12に記録されている最新の内部情報が,ステップ2003で取得した障害発生時の内部情報よりも,計算機22に対する負荷が重いか否かを判断する。負荷が重い場合,現在,入力操作取得部161で取得されている操作を計算機22で実行すると,計算機22に障害が発生するおそれがある。この場合は,現在,入力操作取得部161で取得されている操作を計算機22に渡すことなくステップ2008に移行する。一方,負荷が重くない場合はステップ2006に移行する。」


第6 対比・判断

1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 本願発明1と引用発明とを対比すると,引用発明の評価対象である「ATM」などの「システム」が,ATMにおける様々な処理を行うため,何らかのコンピュータ・プログラム(ソフトウェア)を有することは明らかであるから,引用発明の「ATM」などの「システム」が,本願発明1の「ソフトウェアおよびハードウェアを有するシステム(12)」に相当する。

イ 引用発明の「CPUの入出力ポートに接続され,ユーザがATMを操作するときの操作ステップを取り込む位置検出センサ」は,「その操作による押圧位置が位置検出センサの信号として検出され入出力ポートを通じてCPUに送られる」ことから,ユーザの操作という“イベント”に関して,押圧位置という“イベント”の“データ”を取得するといえるから,引用発明の「ユーザ」の「操作」,「押圧位置」,「位置検出センサ」は,それぞれ,本願発明1の「複数のイベント」,「イベントデータ」,「シナリオオブザーバ(26)」に相当する。

ウ 上記ア及びイから,引用発明における,「ATM」上での「ユーザ」の「操作」に関して,押圧位置というデータを取得する,「CPUの入出力ポートに接続され,ユーザがATMを操作するときの操作ステップを取り込む位置検出センサ」は,本願発明1における,「ソフトウェアおよびハードウェアを有するシステム(12)上の複数のイベントに関するイベントデータを取得するように構成されたシナリオオブザーバ(26)であって,前記複数のイベントがユーザ入力を含む,シナリオオブザーバ(26)」に相当する。

エ 引用発明は,「予めCPUの制御プログラムが表示装置を通じて,オペレータ(対象システムの評価者)に入力を促し,キーボード及びマウスにより,操作手順を作成させるものであ」り,「上記操作手順は,対象システムの機能の構成を示すタスクテーブルと,各タスクにおける操作の構成を示す操作テーブルからなり,上記タスクテーブルは,ATMの機能が,現金の引出し,現金の預け入れ,現金の振込等のタスクとして構成され,また上記操作テーブルは,各タスクが操作1以下のような操作から構成されることを示して」いるところ,上記「操作手順」とは,「各タスクが操作1以下のような操作から構成され」る「操作テーブル」を含み,かつ,そのテーブル上の「操作」が複数あることは明らかであるから,それら「操作」の集合についてのデータであるといえる。
一方,本願発明1の「シナリオ」は,「イベントデータ」に「関連付け」られるデータであり,「前記システム(12)の使用パターンを識別するため」に「分析」されるものであるところ,本願明細書の段落【0030】の,

『図4は,2つのシナリオ「A」および「B」を格納しているシナリオマトリクス72の一実施形態を例示する。一実施形態では,シナリオアナライザ30(図2に示す)は図3の論理および図5のデータベースを使用してシナリオマトリクス72を得ることができる。さらに,1つまたは複数のシナリオを比較する,またはそうでなければ分析するのに適したレポートを生成するために,シナリオマトリクス72を使用することができる。・・・シナリオ「A」は,7つの捕捉されたイベントを有するように示され,一方,シナリオ「B」は,10の捕捉されたイベントを有するように示されている。シナリオと関連付けられたイベントごとのイベント識別子も示されている。シナリオ「A」は,イベント「0」,「445」,「456」,「502」,「432」,「555」,および「516」を有する。同様に,シナリオ「B」は,イベント「0」,「54」,「216」,「343」,「445」,「456」,「502」,「432」,「555」,および「516」を有する。・・・』

との記載,及び,【図4】の2つのシナリオ「A」および「B」を格納する「シナリオマトリクス」の構成によれば,複数のイベントの集合に係るデータであるといえるから,本願発明1の当該「シナリオ」と,引用発明の「操作手順」とは,“イベントの集合に係るデータ”である点で共通するといえる。

オ 引用発明の「操作性能評価装置」は,「メモリ上に保持された制御プログラムを実行して装置を制御し,また,位置検出センサによって検出される押圧位置の信号から各操作の完了を検出する」ものであり,「位置検出センサからの押圧信号を監視し,この押圧信号によって示される押圧位置の座標が操作テーブルの検出座標の範囲にあると判定されると,この操作を完了したものと判断」するものであるから,「位置検出センサ」によって検出される「押圧位置」と,「操作テーブル」を含む「操作手順」とは関連付けられているといえ,また,当該関連付けは,「制御プログラム」の実行によりなされているから,上記関連付けを行う引用発明の上記「制御プログラム」は,本願発明1の「シナリオアソシエータ(27)」に相当するといえる。
そうすると,上記エの検討も踏まえると,本願発明1の「前記イベントデータを複数のシナリオ(18)と関連付けるように構成されたシナリオアソシエータ(27)」と,引用発明の「位置検出センサによって検出される押圧位置の信号から各操作の完了を検出」し,「位置検出センサからの押圧信号を監視し,この押圧信号によって示される押圧位置の座標が操作テーブルの検出座標の範囲にあると判定されると,この操作を完了したものと判断」する「制御プログラム」とは,“前記イベントデータを複数のイベントの集合に係るデータと関連付けるように構成されたシナリオアソシエータ”である点で共通する。

カ 引用発明は,「内蔵するタイマより,各操作の完了時間を測定し,CPUで実行される上記制御プログラムは,これらの測定結果を集計し,その結果に基づき対象システムの操作性を評価し,評価の結果を表示装置に表示する」ものであり,「その操作に要した時間(滞留時間)と,専門家完了時間に対するこの滞留時間の比率としての専門家時間比率とを算出し,操作テーブルに記録することで,操作テーブルに定義された各操作の完了を操作1から順に検出し,操作性能を評価」するものであるところ,上記「操作に要した時間(滞留時間)」は対象システムにおける使用パターンであるといえ,また,当該「操作に要した時間(滞留時間)」に対し,「専門家完了時間に対するこの滞留時間の比率としての専門家時間比率とを算出」し操作性を評価することは,評価基準に照らして問題がある操作パターンを識別しているといえる。
そして,上記「その操作に要した時間(滞留時間)と,専門家完了時間に対するこの滞留時間の比率としての専門家時間比率とを算出し,操作テーブルに記録することで,操作テーブルに定義された各操作の完了を操作1から順に検出し,操作性能を評価」する引用発明の上記「制御プログラム」は,本願発明1の「シナリオアナライザ(30)」に相当するといえる。
そうすると,本願発明1の「前記システム(12)の使用パターンを識別するために前記複数のシナリオ(18)を分析するように構成されたシナリオアナライザ(30)」と,引用発明の「その操作に要した時間(滞留時間)と,専門家完了時間に対するこの滞留時間の比率としての専門家時間比率とを算出し,操作テーブルに記録することで,操作テーブルに定義された各操作の完了を操作1から順に検出し,操作性能を評価」する「制御プログラム」とは,“前記システムの使用パターンを識別するために前記複数のイベントの集合に係るデータを分析するように構成されたシナリオアナライザ”である点で共通する。

キ そうすると,本願発明1と引用発明とは次の点で一致し,そして相違する。

[一致点]
ソフトウェアおよびハードウェアを有するシステム上の複数のイベントに関するイベントデータを取得するように構成されたシナリオオブザーバであって,前記複数のイベントがユーザ入力を含む,シナリオオブザーバと,
前記イベントデータを複数のイベントの集合に係るデータと関連付けるように構成されたシナリオアソシエータと,
前記システムの使用パターンを識別するために前記複数のイベントの集合に係るデータを分析するように構成されたシナリオアナライザと,
を備える,
システム。

[相違点1]
イベントの集合に係るデータに関し,
本願発明1では,「シナリオ」であり,「前記複数のシナリオ(18)のそれぞれが,一意に識別される複数のイベントのサブセットを含み」,「前記一意に識別される複数のイベントのサブセットの前記サブセットは,開始イベント,終了イベント,および1つ以上の中間イベントを含」むのに対して,
引用発明では,操作手順が「シナリオ」であるとは言及されておらず,また,操作手順が複数の押圧操作を含むことは記載されているものの,複数の押圧操作が,開始の操作,終了の操作,および1つ以上の中間の操作からなる,一意に識別されるサブセットを構成することは言及されていない点。

[相違点2]
本願発明1は,「前記シナリオアナライザ(30)が,前記使用パターンを識別して前記システムに対する変更の優先順位を付けるために前記複数のシナリオ(18)を分析するように構成される」のに対して,
引用発明では,そのように特定されていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて,上記相違点2について先に検討する。

[相違点2]に係る本願発明1における「前記シナリオアナライザ(30)が,前記使用パターンを識別して前記システムに対する変更の優先順位を付けるために前記複数のシナリオ(18)を分析するように構成される」という構成は,上記引用文献1ないし6には記載されておらず,本願優先日前において周知技術であるともいえない。
そうすると,引用発明に基づいて,相違点2に係る本願発明1の構成とすることは,当業者が容易になし得ることであるとはいえない。

したがって,本願発明1は,相違点1を検討するまでもなく,当業者であっても引用発明,引用文献2ないし6に記載された技術的事項,及び,周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-9について
本願発明2-9は,本願発明1を更に限定したものであるので,同様に,当業者であっても引用発明,引用文献2ないし6に記載された技術的事項,及び,周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。


第7.原査定についての判断

平成30年3月7日付けの手続補正により,補正後の請求項1-9は,上記相違点2に係る構成を有するものとなった。上記相違点2に係る構成は,原査定における引用文献1ないし4(上記第5.の3.ないし6.で引用した引用文献3ないし6)には記載されておらず,本願優先日前における周知技術でもない。よって,本願発明1-9は,当業者であっても,原査定における引用文献1ないし4に基づいて容易に発明できたものではない。

したがって,原査定を維持することはできない。


第8.当審拒絶理由について

1.特許法第36条第6項第2号について

当審では,請求項1の「シナリオオブザーバ(26)」が得る「イベントデータ」と,請求項3の「ユーザ入力デバイス,ソフトウェアプロセス,ハードウェアアクティビティ,またはそれらの組合せ」の「モニタリング」の結果は,同じものを意味するのか不明である,との拒絶の理由を通知しているが,平成30年3月7日付けの手続補正により,請求項3が,「ユーザ入力デバイス,ソフトウェアプロセス,ハードウェアアクティビティ,またはそれらの組合せをモニタリングして,前記イベントデータをモニタリング中に取得」と補正された結果,この拒絶の理由は解消した。
また,当審では,「イベント」が「ユーザ入力を備える」とは,どのような構成を表現しているのか,日本語として不明瞭である,との拒絶の理由を通知しているが,平成30年3月7日付けの手続補正により,請求項1が,「前記複数のイベントがユーザ入力を含む」と補正された結果,この拒絶の理由は解消した。

2.特許法第36条第4項第1号,及び,同第6項第1号について

当審では,請求項5の「シナリオアソシエータ(27)が,新規シナリオ(18)を作成すること,既存のシナリオ(18)を更新すること,または前記複数のシナリオ(18)を相関させることのうちの少なくとも1つを実行するように構成される」との記載が,本願明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではなく,本願明細書の発明の詳細な説明は,経済産業省令で定めるところにより,その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記述したものでないとの拒絶理由を通知しているが,平成30年3月7日付けの手続補正により,請求項5が,「シナリオアソシエータ(27)が,新規シナリオマトリクスを作成すること,既存のシナリオマトリクスを更新すること,または前記複数のシナリオ(18)を相関させることのうちの少なくとも1つを実行するように構成される」と補正された結果,この拒絶の理由は解消した。

3.特許法第29条第2項について

当審では,本願請求項1-4,6,8,10に係る発明は,引用文献A,Bに記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである,との拒絶理由を通知しているが,平成30年3月7日付けの手続補正により,本願発明1-9に上記相違点2に係る構成を補正された結果,この拒絶の理由は解消した。


第9 むすび

以上のとおり,本願発明1-9は,当業者が引用発明,引用文献2ないし6に記載された技術的事項,及び,周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
したがって,原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-04-23 
出願番号 特願2012-24607(P2012-24607)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 536- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 多賀 実  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 須田 勝巳
仲間 晃
発明の名称 使用パターン分析およびシミュレーションのためのシステムおよび方法  
代理人 黒川 俊久  
代理人 小倉 博  
代理人 田中 拓人  
代理人 荒川 聡志  

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