• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1339562
審判番号 不服2017-2919  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-28 
確定日 2018-04-19 
事件の表示 特願2015-184549「太陽電池モジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 1月28日出願公開、特開2016- 15515〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年5月29日に特許出願された特願2007-142467号の一部を新たな特許出願とした特願2014-55926号の一部を新たな特許出願とした特願2015-184549号であって、平成28年6月24日付けで拒絶理由が通知され、同年8月29日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正がなされ、平成29年1月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年2月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされ、その後、当審において、同年12月4日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年12月18日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成29年12月18日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「光を受光する受光面と前記受光面の反対側の裏面とを有し、複数の太陽電池を配列することにより形成され受光により電力を発生する発電領域と、前記発電領域の外側に形成された非発電領域と、を備え、
バイパスダイオードを有する端子ボックスが前記裏面側に設けられた太陽電池モジュールであって、
前記発電領域に設けられ、第1方向に従って配列された複数の太陽電池を有する第1の太陽電池群と、
前記発電領域に設けられ、前記第1方向に略直交する第2方向において前記第1の太陽電池群と並んで配列された第2の太陽電池群と、
前記第1の太陽電池群に電気的に接続され前記第1方向に沿って前記非発電領域に延びる第1導電部と、前記第2方向において前記第1導電部と並んで配置されるとともに前記第1の太陽電池群に電気的に接続され前記第1方向に沿って前記非発電領域に延びる第2導電部と、前記非発電領域において前記第1導電部と前記第2導電部とを電気的に接続し前記第2方向に沿って設けられる第3導電部と、を備えた導電材と、
前記第3導電部に前記非発電領域内で接続され前記第1方向に沿って設けられて前記発電領域に延びる第1取出し配線部と、前記発電領域内で前記第1取出し配線部に連なって前記第2方向に沿って設けられた第2取出し配線部と、を有し、前記発電領域によって発生される電力を前記端子ボックスに導いて前記太陽電池モジュールの外部に取出す取出し配線と、
前記第2の太陽電池群に電気的に接続され前記第1方向に沿って前記非発電領域に延びる配線材と、
前記第2の太陽電池群に隣接する第3の太陽電池群に電気的に接続され前記第1方向に沿って前記非発電領域に延びる第2の配線材と、
前記非発電領域において前記配線材と前記第2の配線材とを接続し前記第2方向に沿って設けられる太陽電池群接続部材と、
前記非発電領域において前記太陽電池群接続部材に接続されるとともに前記第1方向に沿って設けられた第1バイパスダイオード接続用配線と、前記発電領域内で前記第1バイパスダイオード接続用配線に連なり前記第2方向に沿って設けられ、かつ、前記第1方向において前記第2取出し配線部と並んで配置されている第2バイパスダイオード接続用配線と、を備えたバイパスダイオード接続用配線と、
前記発電領域において、前記第1方向に沿って設けられており複数の太陽電池を電気的に接続する太陽電池接続部材と、
を備え、
太陽電池モジュールの裏面に平行な投影面上において、
前記取出し配線と前記バイパスダイオード接続用配線が交わらず、
前記発電領域と前記非発電領域の境界に位置する太陽電池の端部で、前記第1導電部及び前記第2導電部と前記第1取出し配線部とは離間して配置され、
前記発電領域と前記非発電領域の境界に位置する太陽電池の端部で、前記配線材及び前記第2の配線材と前記第1バイパスダイオード接続用配線とは離間して配置され、
前記発電領域で、前記配線材と前記第2の配線材の少なくとも一方と前記取出し配線とが交わり、かつ、前記配線材と前記第2の配線材の少なくとも一方と前記バイパスダイオード接続用配線とが交わり、
前記発電領域に位置する太陽電池の端部で、前記太陽電池接続部材と前記取出し配線とが交わらず、かつ、前記太陽電池接続部材と前記バイパスダイオード接続用配線とが交わらず、
前記第2取出し配線部の厚みは前記太陽電池群接続部材の厚みよりも小さい、
ことを特徴とする太陽電池モジュール。」

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2000-101122号公報
引用文献2:特開2007-103537号公報
引用文献3:特開2004-263544号公報
引用文献4:特開2005-209985号公報

第4 引用文献の記載事項
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
当審が通知した拒絶の理由に引用され、本願の遡及出願前に頒布された引用文献1(特開2000-101122号公報)には次の事項が記載されている。(下線は当審において付されたものである。)

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は太陽電池モジュールに係り、特に表面部材及び裏面部材が透光性を有することにより、表裏両側からの光入射を可能とした両面入射型の太陽電池モジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】クリーンで無尽蔵のエネルギー源である太陽から入射する光のエネルギーを直接電気に変換することのできる太陽電池は、石油・石炭等の化石エネルギーに代わる新しいエネルギー源として期待され、実用化が進められている。斯かる太陽電池を実際のエネルギー源として用いるにあたっては、通常複数枚の太陽電池を電気的に直列、或いは並列接続することによりその出力を高めた太陽電池モジュールが使用されている。
【0003】図6乃至9を参照して従来の太陽電池モジュールを説明する。ここで、図6は平面図、図7は図6におけるB-B’線の断面図、図8は背面図であり、後述する裏面部材を省略して示している。また、図9は、端子ボックスの内部構造を示す拡大図である。
【0004】これらの図において、1はガラス、プラスチック等の透光性を有する材料からなる表面部材であり、2は裏面部材である。裏面部材2としては通常Al箔を樹脂フィルムでサンドイッチした構造を有する3層構造の部材が用いられる。
【0005】3…は太陽電池であり、例えば内部にpn接合を有する単結晶Siからなる太陽電池を用いることができる。ここでは、これら太陽電池3…が72枚、8列×9行のマトリクス状に配列され、銅薄板等の金属薄板よりなる接続部材4…にて電気的に直列接続されている。そして、これらの太陽電池3…はEVA等の透光性且つ絶縁性を有する封止材5により表面部材1と裏面部材2との間に封止され、その周囲にはアルミニウム等の加工し易い金属からなる枠体6が取り付けられる。
【0006】太陽電池3…にて発生した電力は、電力引き出し線11、11により裏面部材2の背面に設けられた端子ボックス10,10へ引き出され、そしてこの端子ボックス10,10から電力ケーブル(不図示)により外部に出力される。
【0007】ところで、このように複数の太陽電池を直列接続して動作させる形態では、建物の影や降雪等の影響により一部の太陽電池への太陽光の入射が遮られた場合、正常に発電している他の太陽電池からの総発生電圧が逆方向電圧という形で上記一部の太陽電池に印加される。そしてこの逆方向電圧が太陽電池の耐圧を越えると、太陽電池が破壊されてしまう。或いは、上記一部の太陽電池が発熱し、EVAの変色、発泡又は太陽電池が割れる等の不具合が生じる。
【0008】このような問題を解決するため、通常は太陽電池を複数枚毎の太陽電池群に分割し、これらの太陽電池群と並列で且つ逆方向にバイパスダイオードを設けている。
【0009】例えば、上述した太陽電池モジュールでは72枚の太陽電池3…を18枚毎の太陽電池群の4組に分割し、そしてこれらの太陽電池群にバイパスダイオード21を接続用配線12により電気的に並列接続している。このバイパスダイオード21は通常図9に示す如く端子ボックス10内に配置されており、このため、端子ボックス10の形状は比較的大きなものとなる。」
イ「【図6】


ウ「【図7】


エ「【図8】


オ「【図9】



(2)引用文献1に記載された発明
ア 上記「(1)」の「ア」の記載を踏まえて、「イ」?「オ」の図6?9から次の事項が見て取れる。
(ア)8列×9行のマトリクス状に配列された各太陽電池は、列毎に、2本の平行な接続部材4により直列接続されていること。
(イ)8列×9行のマトリクス状に配列された太陽電池のうち、1行目に位置する各太陽電池は、『太陽電池3…が72枚、8列×9行のマトリクス状に配列されている領域と枠体6との間の領域』において、2本の平行な接続部材4が枠体6の方向に引き出されて互いに接続されていること(以下、接続されている部分を「接続部材接続部」という。)。
(ウ)前記1行目に位置する太陽電池のうち、2列目と3列目、4列目と5列目、6列目と7列目の太陽電池の接続部材接続部は、『太陽電池3…が72枚、8列×9行のマトリクス状に配列されている領域と枠体6との間の領域』において、太陽電池の列の間を接続する部材(以下、「太陽電池列間接続部材」という。)によって互いに接続されていること。
(エ)電力引き出し線11は、前記1行目に位置する太陽電池のうち、1列目と8列目の太陽電池の接続部材接続部から、接続部材4と平行に延び、前記マトリクス状に配列された太陽電池上で接続部材4と直交する方向に折曲し、さらに、接続部材4と平行な方向に折曲して端子ボックス10まで配設されていること。
(オ)接続用配線12は、前記1行目に位置する太陽電池のうち、3列目と6列目の太陽電池の接続線接続部から、端子ボックス10まで接続部材4と平行に直線状に配設され、4列目と5列目の太陽電池の接続線接続部から、接続部材4と平行に延び、前記マトリクス状に配列された領域上で接続部材4と直交する方向に折曲し、さらに、接続部材4と平行な方向に折曲して端子ボックス10まで配設されていること。
(カ)前記電力引き出し線11と前記接続用配線12が交わらず、離間して配設されていること。
(キ)接続部材4と電力引き出し線11は太陽電池3上で交わり、接続部材4と接続用配線12も太陽電池3上で交わること。
(ク)接続部材4のうち、太陽電池3…が72枚、8列×9行のマトリクス状に配列されている領域にあるものは、太陽電池の端部においては、前記電力引き出し線11とも前記接続用配線12とも交わらないこと。

イ よって、上記「(1)」の「ア」?「オ」に摘記した記載事項を総合すると、引用文献1には、
「内部にpn接合を有する単結晶Siからなる太陽電池3…が72枚、8列×9行のマトリクス状に配列され、銅薄板等の金属薄板よりなる接続部材4…にて電気的に直列接続され、EVA等の透光性且つ絶縁性を有する封止材5により表面部材1と裏面部材2との間に封止され、その周囲にはアルミニウム等の加工し易い金属からなる枠体6が取り付けられた太陽電池モジュールであって、
太陽電池3…にて発生した電力は、電力引き出し線11、11により裏面部材2の背面に設けられた端子ボックス10,10へ引き出され、そしてこの端子ボックス10,10から電力ケーブルにより外部に出力され、
72枚の太陽電池3…を18枚毎の太陽電池群の4組に分割し、そしてこれらの太陽電池群にバイパスダイオード21を接続用配線12により電気的に並列接続し、
バイパスダイオード21は端子ボックス10内に配置されており、
更に、下記(ア)?(ク)を備える太陽電池モジュール。
(ア)8列×9行のマトリクス状に配列された各太陽電池は、列毎に、2本の平行な接続部材4により直列接続されていること。
(イ)8列×9行のマトリクス状に配列された太陽電池のうち、1行目に位置する各太陽電池は、『太陽電池3…が72枚、8列×9行のマトリクス状に配列されている領域と枠体6との間の領域』において、2本の平行な接続部材4が枠体6の方向に引き出されて接続部材接続部により互いに接続されていること。
(ウ)前記1行目に位置する太陽電池のうち、2列目と3列目、4列目と5列目、6列目と7列目の太陽電池の接続部材接続部は、『太陽電池3…が72枚、8列×9行のマトリクス状に配列されている領域と枠体6との間の領域』において、太陽電池列間接続部材によって互いに接続されていること。
(エ)電力引き出し線11は、前記1行目に位置する太陽電池のうち、1列目と8列目の太陽電池の接続部材接続部から、接続部材4と平行に延び、前記マトリクス状に配列された太陽電池上で接続部材4と直交する方向に折曲し、さらに、接続部材4と平行な方向に折曲して端子ボックス10まで配設されていること。
(オ)接続用配線12は、前記1行目に位置する太陽電池のうち、3列目と6列目の太陽電池の接続線接続部から、端子ボックス10まで接続部材4と平行に直線状に配設され、4列目と5列目の太陽電池の接続線接続部から、接続部材4と平行に延び、前記マトリクス状に配列された領域上で接続部材4と直交する方向に折曲し、さらに、接続部材4と平行な方向に折曲して端子ボックス10まで配設されていること。
(カ)前記電力引き出し線11と前記接続用配線12が交わらず、離間して配設されていること。
(キ)接続部材4と電力引き出し線11は太陽電池3上で交わり、接続部材4と接続用配線12も太陽電池3上で交わること。
(ク)接続部材4のうち、『太陽電池3…が72枚、8列×9行のマトリクス状に配列されている領域』にあるものは、太陽電池の端部においては、前記電力引き出し線11とも前記接続用配線12とも交わらないこと。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

2 引用文献2の記載事項
(1)当審が通知した拒絶の理由に引用され、本願の遡及出願前に頒布された引用文献2(特開2007-103537号公報)には次の事項が記載されている。
ア 「【0095】
(2)第2の実施の形態
(a)太陽電池モジュールの全体の構成
図11は本発明の第2の実施の形態に係る太陽電池モジュールの模式的平面図である。12(a),(b)はそれぞれ第2の実施の形態に係る太陽電池モジュールの一部の模式的平面図および模式的側面図である。図13は図12(a)のF-F線断面図である。
【0096】
第2の実施の形態に係る太陽電池モジュールが第1の実施の形態に係る太陽電池モジュールと異なるのは次の点である。
【0097】
第2の実施の形態に係る太陽電池モジュールにおいては、図11?図13に示すように、各第1組の2つの太陽電池1の表面と一方側に隣接する第2組の2つの太陽電池1aの表面とを電気的に接続するように2本の表面側接続タブ2が形成されている。2本の表面側接続タブ2は、太陽電池1,1aの表面全体をほぼ2等分することにより得られる領域のそれぞれ略中央の位置で列方向に沿って互いに平行に延びている。
【0098】
また、各第1組の2つの太陽電池1の裏面と他方側に隣接する第2組の2つの太陽電池1aの裏面とを電気的に接続するように2本の裏面側接続タブ3が形成されている。2本の裏面側接続タブ3は、太陽電池1,1aの裏面全体をほぼ2等分することにより得られる領域のそれぞれ略中央の位置で列方向に沿って互いに平行に延びている。
【0099】
このように、表面側接続タブ2の本数は裏面側接続タブ3の本数と等しい。また、表面側接続タブ2の幅方向の中心位置は裏面側接続タブ3の幅方向の中心位置と等しい。」
イ「【図11】



(2)引用文献2から、「2本の平行な接続部材の端部において、その延伸方向と直交する方向に導電部材で接続すること」は周知技術であるといえる。

3 引用文献3及び4の記載事項
(1)当審が通知した拒絶の理由に引用され、本願の遡及出願前に頒布された引用文献3(特開2004-263544号公報)には次の事項が記載されている。
ア 「【0002】
図15は太陽電池モジュールにモジュール枠が取り付けられた従来のモジュールユニットを示す概略斜視図であり、図16は同従来のモジュールユニットの分解斜視図であり、図17は同従来のモジュールユニットを屋根上に取り付ける従来の取り付け方法を説明する概略斜視図である。太陽電池モジュールMは、マトリックス状に配置された複数の太陽電池セル100がインターコネクタ等によって電気的に直列又は並列に接続されてなるスーパーストレート構造である。この太陽電池セル100の表面側には、透明樹脂等によって薄い平板状に構成された充填材101を介して白色強化ガラス板102が積層されている。また、太陽電池セル100の裏面側には、透明樹脂によって薄い平板状に構成された充填材103を介してバックフィルム104が積層されている。このように、太陽電池セル100は、白色強化ガラス板102とバックフィルム104とによって充填材101、103を介して挟持され、全体として長方形平板状の太陽電池モジュールMが構成されている。また、図15に示すように、太陽電池モジュールMの左右一方の側端部の裏面には、端子ボックス105が設けられており、この端子ボックス105には一対の電気ケーブル106が接続されている。そして、このような太陽電池モジュールMの周辺部に枠体110が取り付けられてモジュールユニットU1が構成されている。」
イ「【図15】



(2)当審が通知した拒絶の理由に引用され、本願の遡及出願前に頒布された引用文献4(特開2005-209985号公報)には次の事項が記載されている。
ア 「【0022】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。図1及び図2は、太陽光を利用して発電を行う太陽光発電モジュール1を示している。この太陽光発電モジュール1は、太陽電池パネル10をフレーム30に装着したものであり、太陽電池パネル10は、その裏面側に取り付けられた端子ボックス15を有している。」

イ「【図2】



(3)引用文献3,4から、「太陽電池の端子ボックスを、発電領域(太陽電池が存在する領域)における複数の太陽電池群列(いずれも8列)の中央(4列目と5列目の間)の位置に配置すること」は周知の技術である。

第5 本願発明と引用発明の対比
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「太陽電池3…が72枚、8列×9行のマトリクス状に配列され」ている領域が、本願発明の「受光により電力を発生する発電領域」に相当し、また、引用発明の「太陽電池3…が72枚、8列×9行のマトリクス状に配列され」ている領域と「その周囲に」取り付けられた「アルミニウム等の加工し易い金属からなる枠体6」との間の領域が、本願発明の「前記発電領域の外側に形成された非発電領域」に相当するといえるから、引用発明の「内部にpn接合を有する単結晶Siからなる太陽電池3…が72枚、8列×9行のマトリクス状に配列され、銅薄板等の金属薄板よりなる接続部材4…にて電気的に直列接続され、EVA等の透光性且つ絶縁性を有する封止材5により表面部材1と裏面部材2との間に封止され、その周囲にはアルミニウム等の加工し易い金属からなる枠体6が取り付けられ」ていることが、本願発明の「光を受光する受光面と前記受光面の反対側の裏面とを有し、複数の太陽電池を配列することにより形成され受光により電力を発生する発電領域と、前記発電領域の外側に形成された非発電領域と、を備え」ていることに相当する。

(2)引用発明の「太陽電池3…にて発生した電力は、電力引き出し線11、11により裏面部材2の背面に設けられた端子ボックス10,10へ引き出され、そしてこの端子ボックス10,10から電力ケーブルにより外部に出力され、72枚の太陽電池3…を18枚毎の太陽電池群の4組に分割し、そしてこれらの太陽電池群にバイパスダイオード21を接続用配線12により電気的に並列接続し、バイパスダイオード21は端子ボックス10内に配置されて」いる「太陽電池モジュール」が、本願発明の「バイパスダイオードを有する端子ボックスが前記裏面側に設けられた太陽電池モジュール」に相当する。

(3)引用発明の「8列×9行のマトリクス状に配列された太陽電池のうち」の「1列目に位置する各太陽電池」(9個)が、本願発明の「前記発電領域に設けられ、第1方向に従って配列された複数の太陽電池を有する第1の太陽電池群」に相当する。

(4)引用発明の「8列×9行のマトリクス状に配列された太陽電池のうち」の2列目に位置する各太陽電池(9個)が、本願発明の「前記発電領域に設けられ、前記第1方向に略直交する第2方向において前記第1の太陽電池群と並んで配列された第2の太陽電池群」に相当する。

(5)引用発明の「8列×9行のマトリクス状に配列された太陽電池のうち」の「1列目に位置する各太陽電池」を「直列接続」している「2本の平行な接続部材4」が、本願発明の「前記第1の太陽電池群に電気的に接続され前記第1方向に沿って前記非発電領域に延びる第1導電部と、前記第2方向において前記第1導電部と並んで配置されるとともに前記第1の太陽電池群に電気的に接続され前記第1方向に沿って前記非発電領域に延びる第2導電部」を備えた「導電材」に相当する。

(6)引用発明の「8列×9行のマトリクス状に配列された太陽電池のうち」の「1行目に位置する各太陽電池」につき、「太陽電池3…が72枚、8列×9行のマトリクス状に配列されている領域と枠体6との間の領域」において、「2本の平行な接続部材4」を「互いに接続」する「接続部材接続部」と、本願発明の「前記非発電領域において前記第1導電部と前記第2導電部とを電気的に接続し前記第2方向に沿って設けられる第3導電部」とは、「前記非発電領域において前記第1導電部と前記第2導電部とを電気的に接続し前記第2方向に沿って設けられる接続部」である点で一致する。

(7)引用発明の「前記1行目に位置する太陽電池のうち、1列目と8列目の太陽電池の接続部材接続部から、接続部材4と平行に延び、前記マトリクス状に配列された太陽電池上で接続部材4と直交する方向に折曲し、さらに、接続部材4と平行な方向に折曲して端子ボックス10まで配設されている」「電力引き出し線11」と、本願発明の「前記第3導電部に前記非発電領域内で接続され前記第1方向に沿って設けられて前記発電領域に延びる第1取出し配線部と、前記発電領域内で前記第1取出し配線部に連なって前記第2方向に沿って設けられた第2取出し配線部と、を有し、前記発電領域によって発生される電力を前記端子ボックスに導いて前記太陽電池モジュールの外部に取出す取出し配線」とは、「『前記第1導電部と前記第2導電部とを電気的に接続し前記第2方向に沿って設けられる接続部』に前記非発電領域内で接続され前記第1方向に沿って設けられて前記発電領域に延びる第1取出し配線部と、前記発電領域内で前記第1取出し配線部に連なって前記第2方向に沿って設けられた第2取出し配線部と、を有し、前記発電領域によって発生される電力を前記端子ボックスに導いて前記太陽電池モジュールの外部に取出す取出し配線」である点で一致する。

(8)引用発明の「8列×9行のマトリクス状に配列された太陽電池のうち」の2列目及び3列目の太陽電池(それぞれ9個)の「1行目に位置する各太陽電池」につき「太陽電池3…が72枚、8列×9行のマトリクス状に配列されている領域と枠体6との間の領域において」、「枠体6の方向に引き出され」る「2本の平行な接続部材4」が、本願発明の「前記第2の太陽電池群に電気的に接続され前記第1方向に沿って前記非発電領域に延びる配線材と、前記第2の太陽電池群に隣接する第3の太陽電池群に電気的に接続され前記第1方向に沿って前記非発電領域に延びる第2の配線材」に相当する。

(9)引用発明の「前記1行目に位置する太陽電池のうち」、「2列目と3列目、4列目と5列目、6列目と7列目の太陽電池の接続部材接続部」を、「太陽電池3…が72枚、8列×9行のマトリクス状に配列されている領域と枠体6との間の領域」において、「互いに接続」する「太陽電池列間接続部材」が、本願発明の「前記非発電領域において前記配線材と前記第2の配線材とを接続し前記第2方向に沿って設けられる太陽電池群接続部材」に相当する。

(10)引用発明の「8列×9行のマトリクス状に配列された太陽電池」を列方向に「直列接続」している「2本の平行な接続部材4」において「太陽電池3…が72枚、8列×9行のマトリクス状に配列されている領域」にあるものが、本願発明の「前記発電領域において、前記第1方向に沿って設けられており複数の太陽電池を電気的に接続する太陽電池接続部材」に相当する。

(11)引用発明の「前記1行目に位置する太陽電池のうち、3列目と6列目の太陽電池の接続線接続部から、端子ボックス10まで接続部材4と平行に直線状に配設され、4列目と5列目の太陽電池の接続線接続部から、接続部材4と平行に延び、前記マトリクス状に配列された領域上で接続部材4と直交する方向に折曲し、さらに、接続部材4と平行な方向に折曲して端子ボックス10まで配設されている」「接続用配線12」と、本願発明の「前記非発電領域において前記太陽電池群接続部材に接続されるとともに前記第1方向に沿って設けられた第1バイパスダイオード接続用配線と、前記発電領域内で前記第1バイパスダイオード接続用配線に連なり前記第2方向に沿って設けられ、かつ、前記第1方向において前記第2取出し配線部と並んで配置されている第2バイパスダイオード接続用配線と、を備えたバイパスダイオード接続用配線」とは、「前記非発電領域において前記太陽電池群接続部材に接続されるバイパスダイオード接続用配線」である点で一致する。

(12)引用発明の「前記電力引き出し線11と前記接続用配線12が交わらず、離間して配設されていること」が、本願発明の「太陽電池モジュールの裏面に平行な投影面上において、前記取出し配線と前記バイパスダイオード接続用配線が交わら」ないことに相当する。

(13)引用発明の「接続部材4のうち、太陽電池3…が72枚、8列×9行のマトリクス状に配列されている領域にあるものは、太陽電池の端部においては、前記電力引き出し線11とも前記接続用配線12とも交わらないこと」が、本願発明の「前記発電領域に位置する太陽電池の端部で、前記太陽電池接続部材と前記取出し配線とが交わらず、かつ、前記太陽電池接続部材と前記バイパスダイオード接続用配線とが交わら」ないことに相当する。

(14)引用発明の「接続部材4と電力引き出し線11は太陽電池3上で交わり、接続部材4と接続用配線12も太陽電池3上で交わること」が、本願発明の「前記発電領域で、前記配線材と前記第2の配線材の少なくとも一方と前記取出し配線とが交わり、かつ、前記配線材と前記第2の配線材の少なくとも一方と前記バイパスダイオード接続用配線とが交わ」ることに相当する。

2 一致点
したがって、本願発明と引用発明は、
「光を受光する受光面と前記受光面の反対側の裏面とを有し、複数の太陽電池を配列することにより形成され受光により電力を発生する発電領域と、前記発電領域の外側に形成された非発電領域と、を備え、
バイパスダイオードを有する端子ボックスが前記裏面側に設けられた太陽電池モジュールであって、
前記発電領域に設けられ、第1方向に従って配列された複数の太陽電池を有する第1の太陽電池群と、
前記発電領域に設けられ、前記第1方向に略直交する第2方向において前記第1の太陽電池群と並んで配列された第2の太陽電池群と、
前記第1の太陽電池群に電気的に接続され前記第1方向に沿って前記非発電領域に延びる第1導電部と、前記第2方向において前記第1導電部と並んで配置されるとともに前記第1の太陽電池群に電気的に接続され前記第1方向に沿って前記非発電領域に延びる第2導電部と、前記非発電領域において前記第1導電部と前記第2導電部とを電気的に接続し前記第2方向に沿って設けられる接続部と、を備えた導電材と、
前記第1導電部と前記第2導電部とを電気的に接続し前記第2方向に沿って設けられる接続部に前記非発電領域内で接続され前記第1方向に沿って設けられて前記発電領域に延びる第1取出し配線部と、前記発電領域内で前記第1取出し配線部に連なって前記第2方向に沿って設けられた第2取出し配線部と、を有し、前記発電領域によって発生される電力を前記端子ボックスに導いて前記太陽電池モジュールの外部に取出す取出し配線と、
前記第2の太陽電池群に電気的に接続され前記第1方向に沿って前記非発電領域に延びる配線材と、
前記第2の太陽電池群に隣接する第3の太陽電池群に電気的に接続され前記第1方向に沿って前記非発電領域に延びる第2の配線材と、
前記非発電領域において前記配線材と前記第2の配線材とを接続し前記第2方向に沿って設けられる太陽電池群接続部材と、
前記非発電領域において前記太陽電池群接続部材に接続されるバイパスダイオード接続用配線と、
前記発電領域において、前記第1方向に沿って設けられており複数の太陽電池を電気的に接続する太陽電池接続部材と、
を備え、
太陽電池モジュールの裏面に平行な投影面上において、
前記取出し配線と前記バイパスダイオード接続用配線が交わらず、
前記発電領域で、前記配線材と前記第2の配線材の少なくとも一方と前記取出し配線とが交わり、かつ、前記配線材と前記第2の配線材の少なくとも一方と前記バイパスダイオード接続用配線とが交わり、
前記発電領域に位置する太陽電池の端部で、前記太陽電池接続部材と前記取出し配線とが交わらず、かつ、前記太陽電池接続部材と前記バイパスダイオード接続用配線とが交わらない、
太陽電池モジュール。」
の発明である点で一致し、次の各点で相違する。

3 相違点
(1)相違点1
「第1導電部と第2導電部とを電気的に接続し第2方向に沿って設けられる接続部」が、本願発明では「第3導電部」であるのに対し、引用発明ではそのようなものであるか否かが不明である点。
(2)相違点2
「バイパスダイオード接続用配線」が、本願発明においては「前記第1方向に沿って設けられた第1バイパスダイオード接続用配線と、前記発電領域内で前記第1バイパスダイオード接続用配線に連なり前記第2方向に沿って設けられ、かつ、前記第1方向において前記第2取出し配線部と並んで配置されている第2バイパスダイオード接続用配線と、を備えた」ものであるのに対し、引用発明においては、その特定がない点。
(3)相違点3
本願発明においては「発電領域と非発電領域の境界に位置する太陽電池の端部で、第1導電部及び第2導電部と第1取出し配線部とは離間して配置され」、「発電領域と非発電領域の境界に位置する太陽電池の端部で、配線材及び第2の配線材と第1バイパスダイオード接続用配線とは離間して配置され」るのに対し、引用発明においては、その特定がない点。
(4)相違点4
本願発明においては「第2取出し配線部の厚みは太陽電池群接続部材の厚みよりも小さい」のに対し、引用発明においては、その特定がない点。

第6 当審の判断
1 相違点についての検討
上記の各相違点について検討する。
(1)相違点1について
引用発明に、引用文献2に記載された周知技術を採用し、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項の如く構成することは、当業者が容易になし得ることである。

(2)相違点2について
引用発明において、接続線接続部から端子ボックスまで、接続用配線として1本の直線状の配線のみを配設するか、あるいは、第1の方向に沿って設けられた直線部分とそれに連なる第2の方向に沿って設けられた部分を有する配線を配設するかは、接続線接続部と端子ボックスの位置関係等に応じて決まる設計事項にすぎないものと認められる。
そして、「太陽電池の端子ボックスを、発電領域(太陽電池が存在する領域)における複数の太陽電池群列(いずれも8列)の中央(4列目と5列目の間)の位置に配置すること」は引用文献3,4にも記載されているように周知の技術であるから、引用発明においても当該周知技術を採用し、端子ボックスを、発電領域(太陽電池が存在する領域)における複数の太陽電池群列(いずれも8列)の中央(4列目と5列目の間)の位置に配置することは当業者が容易に想到し得ることである。そしてその後、接続線接続部と端子ボックスの位置関係、及び上記の「端子ボックスを、発電領域(太陽電池が存在する領域)における複数の太陽電池群列(いずれも8列)の中央(4列目と5列目の間)の位置に配置」した構成に応じて、上記の「接続線接続部から端子ボックスまで」の「接続用配線」を、第1の方向に沿って設けられた直線部分とそれに連なる第2の方向に沿って設けられた部分を有する配線として、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項を得ることに格別の困難性は認められない。

(3)相違点3について
ア 一般に、太陽電池の接続部材、電力引き出し線、接続用配線の幅が太陽電池の幅に比べて十分に細いことは、技術常識である(例えば、太陽電池の一辺の長さは10cm程度であるのに対し、接続部材4、電力引き出し線11、接続用配線12の幅は数mm程度以下であること、また、2本の平行な接続部材4の間隔は、数cm程度であることが一般的である。)。
上記技術常識を踏まえると、引用発明においても、2本の平行な接続部材4の間隔を、当該接続部材4と電力引き出し線11や接続用配線12と重ならないように十分広く取り、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項の如く構成することは、当業者が容易になし得ることである。
イ(意見書の主張について)
なお、請求人は、平成29年12月18日付けの意見書において、引用文献1の【0011】段落の課題の記載から、引用発明には接続部材4と、引き出し配線11又は接続用配線12とを重ならないように形成する動機付けがない旨の主張をするが、引用発明は、引用文献1の【0001】?【0009】及び【図6】?【図9】の記載から認定した発明であり、上記【0011】の記載は引用発明の認定において用いられた記載ではない、すなわち、上記の【0011】段落の課題の記載は引用発明とは無関係の記載といえることから、上記の請求人の主張は採用できない。

(4)相違点4について
ア 相違点4の「第2取出し配線部の厚み」及び「太陽電池群接続部材の厚み」について、本願明細書の発明の詳細な説明及び図面には、次の事項が記載されている。
「【0038】
また、太陽電池モジュール100の主面に平行な投影面上において、第2取出し配線部10bと第2バイパスダイオード接続用配線部20bとは交わっておらず、両者は第2方向に沿って並んで配置されている。
図5は、図4のC-C切断面における断面図を示す。図4及び図5に示すように、取出し配線10の幅α1は太陽電池群接続部材1の幅β1よりも大きく、取出し配線10の厚みα2は太陽電池群接続部材1の厚みβ2よりも小さい。また、バイパスダイオード接続用配線20の幅γ1は太陽電池群接続部材1の幅β1よりも大きく、バイパスダイオード接続用配線20の厚みγ2は太陽電池群接続部材1の厚みβ2よりも小さい。」(下線は当審において付した。)
「【図4】


「【図5】


上記記載から、相違点4に係る本願発明の発明特定事項は、上記【図5】を参酌して、「取出し配線10の厚みα2は太陽電池群接続部材1の厚みβ2よりも小さい」ことを意味しているといえる。
イ そして、太陽電池モジュールの製造工程において、太陽電池上の接続配線(本願発明においては、例えば「第2取り出し配線」)の厚さ(【図5】のα2)が厚くなると、減圧下で押圧するラミネートの工程においては、太陽電池に応力集中が生じることにより割れやクラックが発生する恐れがあることから(例えば、特開2007-36005号公報【0030】参照)、太陽電池上の接続配線の厚さをできるだけ薄くすることが要請されている。
また、太陽電池モジュールの小型化のため、非発電領域を小さく形成することが求められ(例えば、特開平6-196739号公報【0057】参照)、非発電領域の接続配線(本願発明においては、例えば「太陽電池群接続部材」)の幅(【図5】のβ1)を小さくする要請があるといえる。そして、接続配線として電気抵抗の値を一定値以下に抑えるには、幅(β1)を小さくする一方で、厚さ(β2)を可能な範囲で大きくすることが要請されているといえる。
ウ 配線部材の幅や厚さをどの程度に設定するかは、当業者が必要に応じて適宜設定し得る設計的事項であるといえるところ、上記の「第2取り出し配線」の厚さ(【図5】のα2)及び「太陽電池群接続部材」)の幅(【図5】のβ1)それぞれに対する要請に応じて、相違点4の「第2取出し配線部の厚みは太陽電池群接続部材の厚みよりも小さい」とすることは当業者が容易になし得た事項である。

2 本願発明が奏する作用効果
本願発明が奏し得る作用効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる程度のものである。

3 小活
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 備考(予備的見解)
引用発明の認定において、引用文献1の【図8】の記載から、
「(ク)接続部材4のうち、太陽電池3…が72枚、8列×9行のマトリクス状に配列されている領域にあるものは、太陽電池の端部においては、前記電力引き出し線11とも前記接続用配線12とも交わらないこと」(以下「(ク)の構成」という。)
を発明特定事項として認定したが、図面は、発明を説明にするために必要な事項を記載した概念図であり、必ずしも、その大きさや位置関係が正確に記載されているとは限らないものであることから、引用文献1の記載から、引用発明に(ク)の構成を含めることができない可能性があるとも考えられる。
そして、その場合、本願発明と引用発明との対比において、(ク)の構成に相当する本願発明の「前記発電領域に位置する太陽電池の端部で、前記太陽電池接続部材と前記取出し配線とが交わらず、かつ、前記太陽電池接続部材と前記バイパスダイオード接続用配線とが交わら」い点は、一致点ではなく、本願発明が備えるのに対して引用発明が備えていない相違点(以下「相違点5」とする。)となる。
そこで、上記の相違点5について検討すると、上記の「1」の「(2)」において相違点2について検討したのと同様であり、引用発明において、接続線接続部から端子ボックスまで、電力引き出し線(本願発明の「取り出し配線」)や接続用配線(本願発明の「バイパスダイオード接続用配線」)をどのように配置するかは、接続線接続部と端子ボックスの位置関係に応じて適宜設定し得る事項であり、基板の割れや欠け、クラック等は、端部において発生し易いことを踏まえると、電力引き出し線(本願発明の「取り出し配線」)や接続用配線(本願発明の「バイパスダイオード接続用配線」)を、接続部材(本が発明の「太陽電池接続部材」)と、太陽電池の端部以外の場所で交わるように設定して(すなわち、太陽電池の端部では交わらないように設定して)、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項を得ることに格別の困難性は認められない。そして、それによって太陽電池の端部での割れや欠けの発生が生じにくくなるという作用効果は、当業者が予測し得る範囲内の事項にすぎない。

よって、仮に、引用文献1の記載から、引用発明に(ク)の構成を含めることができないとしても、結論に影響を与えない。

第7 結び
以上より、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-02-06 
結審通知日 2018-02-13 
審決日 2018-03-02 
出願番号 特願2015-184549(P2015-184549)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森江 健蔵  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 野村 伸雄
森林 克郎
発明の名称 太陽電池モジュール  
代理人 前田 浩夫  
代理人 鎌田 健司  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ