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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41F
管理番号 1339569
審判番号 不服2017-6304  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-01 
確定日 2018-04-19 
事件の表示 特願2014-262177「印刷機またはコーティング機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 5月21日出願公開、特開2015- 96335〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、本願は、平成22年2月2日に出願した特願2010-21339号の一部を平成26年12月25日に新たな特許出願としたものであって、平成28年2月15日付けで手続補正書が提出され、平成29年1月24日付けで拒絶の査定がなされ、これに対し、同年5月1日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年10月6日付けで当審より拒絶理由が通知され、同年12月14日付けで意見書が提出されたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1乃至5に係る発明は、上記平成28年2月15日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1は以下のとおりのものと認められる。(以下「本願発明」という。)

「版胴へインキまたはニスを供給する転写液体供給装置と版胴へ湿し水を供給する給水装置とを備え、被転写体へインキまたはニスを転写する印刷装置と、
前記被転写体に対して光を照射して前記印刷装置にて印刷されたインキまたはニスを硬化させる光照射装置とを備えた印刷機またはコーティング機において、
前記給水装置は、互いに接触して連結された少なくとも4本のローラを備え、これら4本のローラのうち互いに接触する一対のローラが逆スリップするように回転駆動され、
前記光照射装置から照射された光が印刷機またはコーティング機の外部に漏洩するのを遮光板により規制され、
前記光照射装置が照射する光は、オゾンを発生させない光であって、波長が270nm?400nmの範囲の全域に存在する光であることを特徴とする印刷機またはコーティング機。」


第3 引用刊行物
1 刊行物1
当審の拒絶理由通知で引用された、本願の原出願日前である平成20年12月25日に頒布された刊行物である特開2008-307891号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。(下線は審決で付した。以下同じ。)
(1)「「【特許請求の範囲】
【請求項1】
被転写体に紫外線で硬化する液体を転写する液体転写部と、
この液体転写部で転写された液体を硬化させる液体硬化装置とを備えた液体転写装置において、
前記液体硬化装置が、紫外線以外の波長の光を出さない紫外線発光ダイオードで、紫外線で硬化する液体を硬化することを特徴とする液体転写装置の液体硬化装置。
【請求項2】
前記液体がインキであり、
前記液体転写装置が印刷機であることを特徴とする請求項1記載の液体転写装置の液体硬化装置。
【請求項3】
前記液体がニスであり、
前記液体転写装置がニス・コーティング装置であることを特徴とする請求項1記載の液体転写装置の液体硬化装置。」
(2)「【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来の紫外線照射装置に採用されている水銀ランプから照射される照射光には、紫外線と同時に赤外線も同時に発生している(紫外線(UV)硬化スクリーンインキ(解説書)の6頁 東洋インキ製造株式会社発行2001年8月)ため、水銀ランプから発生する熱によって印刷物、特に、フィルム等の印刷物が変形してしまうというおそれがあった。これを解消するために、発生した熱を冷却するための冷却装置を備えることがあり、この場合は冷却装置を設置するためのスペースを確保しなければならなくなるとともに製造コストも嵩むという問題もあった。また、水銀ランプから発生する紫外線の発生効率が約20?25%と比較的低いために、UVインキを乾燥させるためには、水銀ランプに大量の電力を供給しなければならないという問題もあった。
【0004】
本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、省スペース、低価格、省電力化を図った液体転写装置の液体硬化装置を提供するところにある。」
(3)「【0019】
図1に示すように、液体転写装置としての枚葉輪転印刷機1は、被転写体としての印刷用紙2を1枚ずつ給紙する給紙装置3と、給紙装置3から給紙された印刷用紙2を紫外線で硬化する液体としてのUVインキを用いて印刷する4つの印刷ユニット4A?4Dからなる印刷部4と、印刷部4で印刷された印刷用紙2を排紙する排紙装置5と、印刷部4と排紙装置5との間に設けられた乾燥装置6とを備える。
【0020】
各印刷ユニット4A?4Dは、刷版が装着された版胴11と、刷版にUVインキを供給するインキ装置12と、刷版に水を供給する給水装置13と、UVインキおよび水の転移によって刷版上に形成された画像が転写されるゴム胴14と、ゴム胴14との間を通過する印刷用紙2をゴム胴14に圧着して画像を印刷する圧胴10とを備える。給紙装置3から1枚ずつ給紙された印刷用紙2は、差板7上をベルト8によって搬送された後、スィング装置9によって1色目の印刷ユニット4Aの圧胴10に受け渡される。なお、図1において、1色目の印刷ユニット4Aにのみインキ装置12および給水装置13を図示し、他の印刷ユニット4B?4Dにはそれらの図示を省略している。
【0021】
受渡し胴15は、各印刷ユニット4A?4Dの隣接する各圧胴10間に配設される。排紙装置5の排紙フレームに回転自在にスプロケット16が支持される。4色目の印刷ユニット4Dの圧胴10に対接する排紙胴17と同軸上にスプロケット18が設けられる。これらスプロケット16、18間には、一対の排紙チェーン19が張架される。排紙チェーン19上には、印刷後の印刷用紙2の前端部をくわえる爪20が一定の間隔をおいて取り付けられる。爪20によってくわえられた印刷用紙2は、図中矢印A方向に走行する排紙チェーン19によって排紙装置5に搬送される。
【0022】
乾燥装置6は、図2に示すように、印刷用紙の搬送方向(矢印A-B方向)と印刷用紙の幅方向(矢印C-D方向)とで格子状に形成された複数の正方形枠21を備える。全ての枠21内には、印刷用紙の面に対向配置された複数の紫外線発光ダイオード(以下、単に発光ダイオードという)22が個別に装填される。発光ダイオード22からは、図4に示すように、紫外線波長以外の光は発光されず、波長が350?400nm帯の紫外線のみを発光する。印刷用紙に転写された紫外線で硬化するインキ/ニスからなる液体は、発光ダイオードからの紫外線の照射により硬化する。」
(4)「【0048】
図10を参照して本発明の第3の実施の形態を説明する。本実施の形態による枚葉輪転印刷機201においては、印刷部4と排紙装置5との間にニスコーティング装置40が配設される。搬送側の排紙チェーン19を上下に挟むように乾燥装置6が配置される。ニスコーティング装置40は、印刷用紙2の表面に液体としてのUVニスをコーティングする表面ニスコーティング部41と、裏面にUVニスをコーティングする裏面ニスコーティング部42と、印刷ユニット4Dから受け渡し胴15を介して印刷用紙を受け取って排紙装置5の排紙装置5に受け渡す圧胴43とを備える。表面ニスコーティング部41および裏面ニスコーティング部42は、受渡し胴15の爪から圧胴43の爪にくわえ替えられ搬送される印刷用紙2の表面および裏面に液体としてのUVニスをコーティングする。
【0049】
このような構成において、印刷ユニット4で印刷されたUVインキおよびニスコーティング装置40でコーティングされたUVニスは、排紙チェーン19によって搬送されるときに乾燥装置6によって乾燥される。本実施の形態によれば、第1および第2の実施の形態と同様な作用効果が得られる。」
(5)上記(1)及び(3)の記載から、液体転写装置は「液体転写部」及び「液体硬化装置」を備え、液体転写装置としての枚葉輪転印刷機1は、給紙装置3から給紙された印刷用紙2を紫外線で硬化する液体としてのUVインキを用いて印刷する4つの印刷ユニット4A?4Dからなる印刷部4と、印刷部4と排紙装置5との間に設けられた乾燥装置6とを備えるものであるから、液体転写装置の「液体転写部」及び「液体硬化装置」は、それぞれ、枚葉輪転印刷機1の「印刷部4」及び「乾燥装置6」に相当する。
(6)上記(1)乃至(4)の記載から、「紫外線で硬化する液体」には、「UVインキ」及び「UVニス」が包含されることが明らかである。

そうすると、上記(1)乃至(6)の記載事項から、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「被転写体に紫外線で硬化するインキ/ニスからなる液体を転写する液体転写部と、この液体転写部で転写された液体を硬化させる液体硬化装置とを備えた液体転写装置において、
前記液体硬化装置が、紫外線以外の波長の光を出さない紫外線発光ダイオードで、紫外線で硬化する液体を硬化する液体転写装置の液体硬化装置であって、
液体転写装置としての枚葉輪転印刷機1は、被転写体としての印刷用紙2を1枚ずつ給紙する給紙装置3と、給紙装置3から給紙された印刷用紙2を紫外線で硬化する液体としてのUVインキを用いて印刷する4つの印刷ユニット4A?4Dからなる液体転写部と、液体転写部で印刷された印刷用紙2を排紙する排紙装置5と、液体転写部と排紙装置5との間に設けられた液体硬化装置とを備え、
各印刷ユニット4A?4Dは、刷版が装着された版胴11と、刷版にUVインキを供給するインキ装置12と、刷版に水を供給する給水装置13と、UVインキおよび水の転移によって刷版上に形成された画像が転写されるゴム胴14と、ゴム胴14との間を通過する印刷用紙2をゴム胴14に圧着して画像を印刷する圧胴10とを備え、
液体硬化装置は、複数の紫外線発光ダイオード(以下、単に発光ダイオードという)22が個別に装填され、発光ダイオード22からは、紫外線波長以外の光は発光されず、波長が350?400nm帯の紫外線のみを発光し、印刷用紙に転写された紫外線で硬化するインキ/ニスからなる液体は、発光ダイオードからの紫外線の照射により硬化する、液体転写装置。」

2 刊行物2
当審の拒絶理由通知で引用された、本願の原出願日前である昭和57年2月27日に頒布された刊行物である特開昭57-36660号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1)「2.特許請求の範囲
版胴上の版に対接して回転自在に支持された弾性表面を有する水着ローラと、この水着ローラに対接し版胴と同周速で回転駆動された親水性表面を有する移しローラと、この移しローラに対接し対接面が移しローラの対接面に対して反対方向へ向う方向に回転駆動された弾性表面を有する調量ローラと、この調量ローラに対接してこれとの接触圧を調節可能に支持された親水性表面を有する水元ローラとを備え、前記調量ローラと水元ローラとのいずれかを水中に浸すとともに、前記水着ローラをインキローラ群と対接しない位置に配設したことを特徴とする印刷機の給水装置。」(1頁左下欄4?16行)
(2)「また、インキローラ群に混入した多量の水によつてインキの乳化が過度となり、種々の印刷障害が発生して印刷物の品質を著しく低下させ、はなはだしいときには印刷が不可能になることがあつた。
本発明は以上のような点に鑑みなされたもので、給水ローラ群中に、相対するローラ周面が互に逆方向へ向う方向に回転する一対のローラを設け、かつ水着ローラをインキローラ群から離して配設することにより、必要最小限の水を安定した状態で版へ供給することを可能ならしめ、給水量の調節を確実かつ容易にして調節時間の短縮と損紙の減少を計るとともに、インキの過度な乳化を防止して印刷物の品質向上を計つた印刷機の給水装置を提供するものである。」(2頁左下欄3?17行)
(3)「第2図ないし第5図は本発明に係る印刷機の給水装置を示し、…印刷機に設けられた印刷ユニットのフレーム11には、図に矢印Aで示す方向に回転する版胴12が軸支されており、…図示しないインキ壺から多数のローラ群を経て振りローラ13に転移されたインキは、インキ着ローラ14によつて版胴12上の版へ供給される。
このようにしてインキが供給される版胴12の側方には、親水性表面を有する移しローラ15が軸受16を介してフレーム10こ軸支されており、…図に矢印Bで示すごとく版胴12と同方向に同周速で回転するように構成されている。…弾性表面を有し移しローラ15に対接して図に矢印Cで示すごとくこれと逆方向へ回転する水着ローラ24が軸支されている。…
…図に矢印Dで示すごとく水着ローラ24と同方向でこれとほゞ同周速で回転する水元ローラ53が、水舟54内の水55に浸つて軸支されている。…図に矢印Eで示す方向に回転する調量ローラ58が軸支されている。…
このようにして行なわれる給水動作においては、移しローラ15と調量ローラ58とが接触点において互に対接局面が反対方向へ向うように回転しているので、この接触点へ入る水、すなわち厚さと速度が調節された調量ローラ58上の水膜72aは、その大部分が版胴12と同周速で回転する水移しローラ15上に転移され、一方、移しローラ15へ戻つてきた水膜77は、その大部分が調量ローラ58へ転位して水舟54へ戻される。このように調節された水のみが版胴12への供給量となるので、確実な給水量の調節が可能となるとともに、余つた水が供給側とは別の径路を通つて速かに水舟54へ戻されるので、調節の応答速度が早く調節が容易である。また、このように余つた水が速かに回収されることにより、例えば印刷をいつたん中断したのち再開するようなときに、インキとの不均衡を短時間で均衡させることができる。
さらに、給水装置がインキ着ローラ14等のインキローラ群と離れた位置に配設されて直接、版に接触しており、版から水着ローラ24上に戻つた水がインキローラ群に入らずに水移しローラ15に転移されるので、余分な水の回収効果がきわめて大きくて前記効果が助長され、ことに水着ローラ24が版胴12の切欠き部にあるときに水の供給が遮断されるので、インキローラ群中に余分な水が入り込まず、水とインキとの攪拌作用による過度な乳化を避けることができる。また、水着ローラ24上のインキ膜厚がインキ着ローラ14上のインキ膜厚と比較して小さいので、水着ローラ24上で乳化が発生することがない。」(2頁左下欄末行?5頁左下欄13行)
(4)上記(1)乃至(3)の記載事項及び第2図乃至第5図より、給水装置は4本のローラから構成されることが看取できる。

上記(1)乃至(4)の記載事項及び図面から、刊行物2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「版胴上の版に対接して回転自在に支持された弾性表面を有する水着ローラと、この水着ローラに対接し版胴と同周速で回転駆動された親水性表面を有する移しローラと、この移しローラに対接し対接面が移しローラの対接面に対して反対方向へ向う方向に回転駆動された弾性表面を有する調量ローラと、この調量ローラに対接してこれとの接触圧を調節可能に支持された親水性表面を有する水元ローラとを備え、移しローラと調量ローラとが接触点において互に対接局面が反対方向へ向うように回転しているので、この接触点へ入る水、すなわち厚さと速度が調節され、確実な給水量の調節を可能となし、前記調量ローラと水元ローラとのいずれかを水中に浸すとともに、前記水着ローラをインキローラ群と対接しない位置に配設した4本のローラから構成される印刷機の給水装置。」

3 刊行物3
当審の拒絶理由通知で引用された、本願の原出願日前である平成14年10月29日に頒布された刊行物である特開2002-316402号公報(以下「刊行物3」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1)「【0002】
【従来の技術】例えば、表面多色裏面単色オフセット印刷機においては、裏面印刷後、直ちに印刷面を乾燥させる必要があるため、裏面印刷ユニットの圧胴に対向するようにして乾燥機が備えられ、この乾燥機から熱、光、送風等が圧胴面に供給される。この乾燥機が紫外線の場合には、乾燥機から照射された紫外線が圧胴の表面で反射し、この反射光がゴム胴のブランケットや版胴の版に照射されると、これらに転移されているUVインキを乾燥してしまう。このため、これを防止するために、ゴム胴や圧胴の周囲には遮光部材が設けられ、この遮光部材によって紫外線が漏れないような構造としている。」

上記(1)の記載事項から、刊行物3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。
「裏面印刷ユニットの圧胴に対向するようにして乾燥機が備えられ、乾燥機が紫外線の場合には、ゴム胴や圧胴の周囲には遮光部材が設けられ、この遮光部材によって紫外線が漏れないような構造とした、表面多色裏面単色オフセット印刷機。」

4 刊行物4
当審の拒絶理由通知で引用された、本願の原出願日前である平成9年7月15日に頒布された刊行物である特開平9-184903号公報(以下「刊行物4」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1)「【0001】
【産業上の利用分野】石英ガラスを代表とするSiO2含有率の高いガラスは、高耐熱性と高透過性を併せ持つ優れた光学材料として多岐にわたって利用されている。特に高出力ランプでは石英ガラスが管材として多用されている。しかし、そのランプの用途によって、その石英ガラスの短波長UV高透過性で却って支障を来すことがあり、その解決のために、ある特定波長から短波長のUV域を遮蔽する必要が生じる場合がある。例えば、250nm付近の透過率を下げないで、オゾン発生の原因となる200nm以下の光を極力遮蔽する必要がある場合;オゾンの発生とオゾン分解による有害な活性酸素の発生を両方抑制するために260nm以下を極力遮蔽した上で、必要な300nm以上の透過性を確保する必要がある場合などである。」
(2)「【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者は、相当数の金属元素の有機化合物等を単一状態で、もしくは複合された状態で合成石英ガラスにコーティングして、分光透過特性、耐熱性、耐熱衝撃性などを詳細に調べた。…また、Nb酸化物を50WT%添加して1回コーティングした場合、250nm以下をほぼ完全に遮蔽し、かつ50%カット波長も長波長になることなく300nmであり、その上、350nmで85%の透過率を確保できる(図6参照)。しかも、可視域も全体的に透過性が高い。…本発明になるコーティングを施した通常の石英ガラスを管材として用いれば、高価なオゾンレス石英ガラスを用いた場合と比較して、低コストで、性能的に安定したオゾンレスHIDランプが実現することになる。」

5 刊行物5
当審の拒絶理由通知で引用された、本願の原出願日前である平成5年5月14日に頒布された刊行物である特開平5-116489号公報(以下「刊行物5」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1)「【0006】
【課題を解決するための手段】上述した目的を達成するために本発明は、シートの所定部分に、印刷あるいは印字が可能で、かつ、通常では接着せず、一定条件を付与されると接着可能となり、接着後剥離可能な接着剤が設けられ、この接着剤上には紫外線硬化インキで所定の印刷が施されるとともに、前記紫外線硬化インキにオゾン発生量の少ない紫外線を照射して硬化させた重ね合わせ用シートである。ここで、オゾンは100nm?210nmの波長で生成されるので、365nmを主波長とし、250nm以下の波長をほとんど有さず、230nm以下の波長を測定できない程の紫外線を発光する高圧水銀ランプ等のオゾンレスランプを使用すれば、オゾンの発生を0.009ppm程度に抑制することができる。本願発明におけるオゾン発生量の少ない紫外線を照射するオゾンレスタイプの紫外線ランプは、スタンダードタイプの紫外線ランプと比較して、同一出力のランプではそのエネルギーが、波長200nm?250nmの範囲でオゾンレスタイプがスタンダードタイプの1/16以下であり、同様に波長250nm?300nmの範囲でオゾンレスタイプ、スタンダードタイプともに波長200nm?250nm時のオゾンレスタイプの90倍以上のエネルギーの割合のものであり、300nm?350nmの範囲においてもオゾンレスタイプ、スタンダードタイプともに上記同様に90倍以上である。しかも、オゾンレスタイプにおいては、波長200nm?230nmにおいての波長を測定できないのに対し、スタンダードタイプにおいては上記同波長において、オゾンレスタイプの波長200?250nmにおける3?5倍のエネルギーを有している。したがって、オゾンレスタイプのランプは、250nm以下の波長をほとんど有しない紫外線を発光するランプであり、これに対し、スタンダードタイプのランプは、250nm以下の波長の発光は少ないとはいえ、オゾンレスタイプに比して極めて大きいものである。」

6 刊行物6
当審の拒絶理由通知で引用された、本願の原出願日前である平成16年1月15日に頒布された刊行物である特開2004-9359号公報(以下「刊行物6」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェット画像形成方法に関し、特に紫外線で硬化するインクを用いたインクジェット画像形成方法に関する。」
(2)「【0004】
ところで画像の硬化には一般に高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等、大出力の紫外線照射ランプが用いられるが、これらは200nm以下の短波の紫外線も放射するためオゾンを発生することが知られている。オゾンは作業環境に有害なガスであるため、排気設備を設け作業環境が汚染しないようにする必要がある。」

7 刊行物7
当審の拒絶理由通知で引用された、本願の原出願日前である平成19年10月15日に発行された刊行物である「麻田隆志、UV照射装置の現状、『印刷雑誌』、2007年10月号、株式会社印刷学会出版部」(以下「刊行物7」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1)「印刷におけるUVの利用」(21頁左欄2行)
(2)「メタルハライドランプ
…また、発光管の材質によりオゾンタイプとオゾンレスタイプに分けられる。…しかし、オゾンレスタイプではランプ発光管に特殊な石英を用いて230nm以下の短波長をカットするのでオゾンの発生を抑制できる。」(21頁右欄9?26行)
(3)「反射板の種類
…コールドフィルター方式
ガラス上に金属薄膜を多層蒸着し、赤外線および可視光をカットし、UVを透過するフィルターを照射器具下面に搭載し被照射物の温度上昇を抑える方式。」(24頁左欄1?21行)
(4)図2から、「250nmの波長範囲から400nmの波長範囲までの全波長領域にわたる広範囲の波長の光を照射するオゾンレスタイプのメタルハライドランプ」が看取できる。(22頁左欄)

8 刊行物8
当審の拒絶理由通知で引用された、本願の原出願日前である平成22年1月15日に発行された刊行物である「中村裕一、UV印刷の今後、『印刷雑誌』、2010年1月号、株式会社印刷学会出版部」(以下「刊行物8」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1)「UV印刷の今後」(9頁2行)
(2)「LED-UV方式と比較した場合、低出力UVシステムは熱とオゾンが出てしまうため、給排気ダクト設備が必要となり、イメージ面で劣ってしまう。そこで、UVランプメーカーのアイグラフィックスとランプを共同開発し、熱およびオゾンを出さない方式を商品化した。これは、光電管で使用されているガラスの技術とフィルターの技術を組み合わせたもので、結果として、印刷紙面温度は印刷室プラス4?5℃、オゾン測定でもオゾンは検出されなかった。」(10頁右欄15?24行)

9 刊行物9
当審の拒絶理由通知で引用された、本願の原出願日前である平成18年6月15日に発行された刊行物である「松原陽一、UV硬化技術と印刷分野への応用、『印刷雑誌』、2006年6月号、株式会社印刷学会出版部」(以下「刊行物9」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1)「UV硬化技術と印刷分野への応用」(17頁2行)
(2)「UVランプに与えられる電力を100とすると実際にUVに変換されるのは約30%、可視光が10%、赤外線(IR)が40%、ロス分が20%となる。ここで問題となるのがIR成分でそのまま照射されると被照射体の温度上昇の原因となるので、できるだけ取り除きたい。」(19頁左欄4?9行)
(3)「IR成分の除去に用いられているのが…IRカットフィルターである。」(19頁左欄22?23行)

10 刊行物10
当審の拒絶理由通知で引用された、本願の原出願日前である平成20年12月31日に発行された刊行物である「折笠輝雄、UVインクジェット用光源の技術動向、『日本印刷学会誌』、第45巻第6号、社団法人日本印刷学会」(以下「刊行物10」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1)「UV硬化技術とインクジェット(以下IJと表す)技術の特性を組み合わせたUVIJ技術は、ドロップオンデマンド(DOD)技術の理想形として注目を浴びている。」(9頁左欄2?4行)
(2)「UV光源を分類する上で、その分類のしかたは様々ある。本稿では、光開始剤励起種を生成させる観点からUV光源をポリクロマチック発光光源とモノクロマチック発光光源に大別し、それぞれについて概説する。」(13頁左欄2?5行)
(3)「ポリクロマチック光源の発光スペクトルはUV領域のみならず、可視から赤外線領域まで含まれるため、楕円集光リフレクターで2次焦点に集まるエネルギーは、UVスペクトル領域だけでなく、赤外領域まで照射され、熱による基材のダメージが生じる場合がある。
非照射物への熱の影響を防ぐ場合、…発光バルブから直接のIR光をカットするために、UVランプと非照射物の間にIRカットフィルターを配す工夫がされている。」(15頁左欄1?11行)

11 刊行物11
当審の拒絶理由通知で引用された、本願の原出願日前である平成15年6月30日に発行された刊行物である「木下忍、UV/EB硬化装置、『日本印刷学会誌』、第40巻第3号、社団法人日本印刷学会」(以下「刊行物11」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1)「表1に示したとおり、UV硬化技術は利用しやすいなどの特長も多く、表2に挙げたとおり身近なところの印刷に使用されている。
それに使用されるUV硬化装置はランプ、照射器、電源および冷却装置で構成される。特に装置選定には、…UV以外に可視光線や赤外線(IR)も同時に発光されるので、基材の温度上昇による基材変化も十分注意する必要がある。」(8頁左欄3行?右欄2行)
(2)「コールドミラーと熱線カットフィルター(必要な紫外線を透過させ可視光線及び赤外線を反射する。)を併用し、さらに低温化が必要なワークに使用する。」(11頁表4)
(3)表3から、「約230nmの波長範囲から400nmの波長範囲までの全波長領域にわたる広範囲の波長の光を照射するオゾンレスタイプのメタルハライドランプ」が看取できる。(9頁)

12 刊行物12
当審の拒絶理由通知で引用された、本願の原出願日前である昭和61年7月18日に頒布された刊行物である特開昭61-158451号公報(以下「刊行物12」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1)「プリント合板、プリント配線基板あるいは新聞印刷などの印刷工程において、紫外線硬化性の塗料、インク等を塗布した基体に紫外線を照射してこの塗料、インク等を硬化させる方法がある。しかし、このような方法において、紫外線を照射する例えば高圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどの高圧放電ランプは、紫外線とともに可視光線および赤外線も照射するため、塗料、インク等や基体に熱を加えることになり、時によっては、その紫外線硬化の光化学反応を阻害したり、基体を熱損させたりすることがあり、そのため、一般に被照射面の加熱作用を除く手段が採用されている。」(1頁右欄1?13行)

13 刊行物13
当審の拒絶理由通知で引用された、本願の原出願日前である平成20年10月15日に発行された刊行物である「田中治夫、LED硬化型インキの原理と特徴、『印刷雑誌』、2008年10月号、株式会社印刷学会出版部」(以下「刊行物13」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1)「「LED硬化型インキの原理と特徴」(11頁2行)
(2)「UV印刷システムでは、照射装置の能力(高出力化、多灯化など)に依存するものの、周速約300m/分での高速印刷も実用となっている。」(13頁左欄16行?右欄3行)
(3)「また、メタルハライドランプは、…254nmから436nmまで連続した発光スペクトル分布となり、」(13頁右欄13?17行)

14 刊行物14
当審の拒絶理由通知で引用された、本願の原出願日前である平成16年7月8日に頒布された刊行物である特開2004-188864号公報(以下「刊行物14」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1)「【0011】
請求項1に記載の発明によれば、発光波長ピークが異なる複数の紫外線光源が設けられているため、記録媒体に着弾したインクに対して、複数の波長の紫外線が照射される。これにより、異なる波長の紫外線に感度を持つインクのそれぞれに対して、硬化するのに最適な波長の紫外線が照射されることになる。」

15 刊行物15
当審の拒絶理由通知で引用された、本願の原出願日前である平成21年3月26日に頒布された刊行物である特開2009-61776号公報(以下「刊行物15」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が転写された被液体転写体を搬送する搬送胴と、
この搬送胴の周面に対向して配置され、被液体転写体に転写された液体を前記搬送胴上で乾燥させる乾燥装置と、
前記搬送胴の周面に選択的に装着される汚れ防止部材と、
前記搬送胴の周面上における前記汚れ防止部材の装着/非装着を検出するセンサ手段と、
このセンサ手段の前記汚れ防止部材の装着の検出に基づいて前記乾燥装置を動作させないように制御する制御装置とを備えたことを特徴とする液体転写装置。
…【請求項4】
前記乾燥装置は、紫外線ランプであり、
前記液体は、前記紫外線ランプにより乾燥する紫外線インキまたは紫外線ニスであることを特徴とする請求項1記載の液体転写装置。

【請求項7】
前記被液体転写体に前記液体を転写する上流側液体転写装置と、
前記被液体転写体に前記液体を転写する下流側液体転写装置と、
前記上流側液体転写装置と前記下流側液体転写装置との間に設けられ、前記被液体転写体の反転を選択的に行う反転装置とをさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の液体転写装置。

【請求項19】
前記上流側液体転写装置は、紫外線インキまたは油性インキを被液体転写体に転写する第1の印刷部と、紫外線ニス、水性ニス、オーバープリントニスのいずれか一つを前記被液体転写体に転写する第1のニスコーティングとからなり、
前記下流側液体転写装置は、紫外線インキまたは付勢インキを被転写体に転写する第2の印刷部と、紫外線ニス、水性ニス、オーバープリントニスのいずれか一つを前記被液体転写体に転写する第2のニスコーティングとからなることを特徴とする請求項7記載の液体転写装置。」


第4 対比
そこで、本願発明と引用発明1とを対比すると、
1 後者の「刷版が装着された版胴11」、「刷版にUVインキを供給するインキ装置12」、「刷版に水を供給する給水装置13」、「被転写体」、及び、「被転写体に紫外線で硬化するインキ/ニスからなる液体を転写する液体転写部」は、それぞれ、前者の「版胴」、「版胴へインキまたはニスを供給する転写液体供給装置」、「版胴へ湿し水を供給する給水装置」、「被転写体」、及び、「被転写体へインキまたはニスを転写する印刷装置」に相当する。
2 後者の「『インキ/ニスからなる液体』及び『液体としてのUVインキ』」と、前者の「『インキ』または『ニス』」に相当する。
3 後者の「液体転写装置」は、「版胴11」、「刷版にUVインキを供給するインキ装置12」、「刷版に水を供給する給水装置13」を備えた「被転写体に紫外線で硬化するインキ/ニスからなる液体を転写する液体転写部」と「液体硬化装置」とを備えたものであるから、前者の「印刷機またはコーティング機」に相当しする。
4 後者の「液体硬化装置」は、「液体転写部で転写された液体を硬化させ」、「紫外線で硬化する液体を硬化する」ものであるから、「被転写体に対して光を照射して印刷装置にて印刷されたインキまたはニスを硬化させる光照射装置」といえる。
5 後者の「液体硬化装置」は、「紫外線波長以外の光は発光されず、波長が350?400nm帯の紫外線のみを発光」するものであるから、「被転写体の転写面に照射する光」が、「波長が350?400nmの範囲の光」である点で前者と共通し、また、オゾン発生領域の波長が270nm以下の光を発光するものではないから、「オゾンを発生させることなく」といえる。

したがって、両者は、
「版胴へインキまたはニスを供給する転写液体供給装置と版胴へ湿し水を供給する給水装置とを備え、被転写体へインキまたはニスを転写する印刷装置と、
前記被転写体に対して光を照射して前記印刷装置にて印刷されたインキまたはニスを硬化させる光照射装置とを備えた印刷機またはコーティング機において、
前記光照射装置がオゾンを発生させることなく、波長が350nm?400nmの範囲に存在する光を前記被転写体の転写面に照射する印刷機またはコーティング機。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明の「給水装置」が、「互いに接触して連結された少なくとも4本のローラを備え、これら4本のローラのうち互いに接触する一対のローラが逆スリップするように回転駆動され」るものであるのに対し、引用発明1では、その点につき明らかでない点。

[相違点2]
本願発明が、「光照射装置から照射された光が印刷機またはコーティング機の外部に漏洩するのを遮光板により規制」するものであるのに対し、引用発明1では、その点につき明らかでない点。

[相違点3]
本願発明が、「波長が270nm?400nmの範囲の全域に存在する」光を被転写体の転写面に照射するものであるのに対し、引用発明1では、その点につき明らかでない点。


第5 判断
上記相違点について以下検討する。
1 相違点1について
引用発明2の「印刷機の給水装置」の、「水着ローラ」、「移しローラ」、「調量ローラ」及び「水元ローラ」からなる「4本のローラ」は、本願発明の「互いに接触して連結された少なくとも4本のローラ」に相当する。
そして、引用発明2の、「移しローラ」と「調量ローラ」とは、「対接面に対して反対方向へ向う方向に回転駆動され」るものであるから、互いに接触する一対のローラが逆スリップするように回転駆動されるといえる。さらに、引用発明2は、「移しローラと調量ローラとが接触点において互に対接局面が反対方向へ向うように回転しているので、この接触点へ入る水、すなわち厚さと速度が調節され」るものであって、確実な給水量の調節を可能とするものであるから、インキローラ群に多量の水が混入することよるインキの乳化が過度となることを防止するものであって、インキを確実に定着、すなわち、硬化させるものである。
そうすると、引用発明2は、相違点1に係る本願発明の発明特定事項を備えているものである。
そして、引用発明1も引用発明2も、印刷機を構成する装置である点で技術分野が共通する。
また、引用発明2の印刷物の品質向上を計るという課題は、印刷機の技術分野における自明の課題といえるから、引用発明1においても内在するものである。
してみると、引用発明1において、引用発明2を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
したがって、引用発明1に、引用発明2を適用することにより、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

2 相違点2について
引用発明3の「『紫外線の場合』の『乾燥機』」、及び「遮光部材」は、本願発明の「光照射装置」、及び「遮光板」に相当する。
そして、引用発明3の、「遮光部材」によって、紫外線が外部に漏れないような構造としているから、「光照射装置から照射された光」が、「外部に漏洩するのを遮光板により規制され」といえる。
そうすると、引用発明3は、相違点2に係る本願発明の発明特定事項を備えているものである。
そして、引用発明1も引用発明3も、印刷機を構成する装置である点で技術分野が共通する。
また、引用発明3の紫外線の漏れを防止し、以てUVインキの乾燥を防止することは、印刷物の品質向上を計ることの一環であり、印刷機の技術分野における自明の課題といえるから、引用発明1においても内在するものである。
してみると、引用発明1において、引用発明3を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
したがって、引用発明1に、引用発明3を適用することにより、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

3 相違点3について
紫外線照射ランプを有する光照射装置を備える印刷機において、200nm程度以下の波長で有害なオゾンが発生するため、オゾンの発生を防止するという課題を解決するために、オゾン発生領域の波長をほぼ含まない250nm程度以下の波長を遮蔽して発光するオゾンレスタイプのメタルハライドランプは、周知の技術事項(例えば、上記「第3 4、6、7」参照。以下「周知の技術事項1」という。)である。
そうすると、上記周知の技術事項1には、上記相違点3に係る本願発明の「波長が270nm?の範囲に存在する」光を被転写体の転写面に照射するとの発明特定事項を備える。
また、紫外線照射ランプを有する光照射装置を備える印刷機において、270nm程度の波長範囲から400nm程度の波長範囲までの全波長領域にわたる広範囲の波長の光を照射するオゾンレスタイプのメタルハライドランプは、周知の技術事項(例えば、上記「第3 7、11、13」参照。以下「周知の技術事項2」という。)である。
してみると、上記周知の技術事項2には、上記相違点3に係る本願発明の「波長が(270nm程度?400nm程度の)範囲の全域に存在する」光を被転写体の転写面に照射するとの発明特定事項を備える。
ここで、上記周知の技術事項1のとおり、紫外線照射ランプを有する光照射装置を備える印刷機において、270nm程度以下の波長で有害なオゾンが発生するため、オゾンの発生を防止を防止するという課題は、周知であることを踏まえれば、本願発明において、これらの課題は内在する自明の課題といえる。
そうすると、引用発明1、上記周知の技術事項1、及び上記周知の技術事項2は、いずれも、UV印刷という技術分野に属し、上記のとおり、共通の課題を有するものであるから、引用発明1に、上記周知の技術事項1、及び上記周知の技術事項2を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
そして、本願明細書には、「オゾン発生波長である254nmを含むオゾン発生領域(波長が270nm以下)の波長は含まれていない。」(【0028】)としか記載されておらず、本願発明において、オゾンの発生を防止するため、及び被照射体が赤外線の熱によりダメージを生じることを防止するために、オゾンレスランプの光の波長の下限、及び上限をどの程度とするかは、当業者が本願発明を実施する際に適宜定めるべき設計的事項であるところ、本願明細書をみても、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項である「270nmの波長範囲の下限」、及び「400nmの波長範囲の上限」とした点に格別の臨界的意義があるものではない。
よって、引用発明1に、上記周知の技術事項1、及び上記周知の技術事項2を適用して、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

そして、本願発明の発明特定事項によって奏される効果も、引用発明1、引用発明2、引用発明3及び上記周知の技術事項1乃至3から、当業者が予測しうる範囲内のものである。

よって、本願発明は、引用発明1、引用発明2、引用発明3、及び上記周知の技術事項1乃至3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1、引用発明2、引用発明3、及び上記周知の技術事項1乃至3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-01-31 
結審通知日 2018-02-13 
審決日 2018-02-26 
出願番号 特願2014-262177(P2014-262177)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B41F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 亀田 宏之  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 藤本 義仁
森次 顕
発明の名称 印刷機またはコーティング機  
代理人 山川 政樹  
代理人 山川 茂樹  

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