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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1339588
審判番号 不服2017-9502  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-28 
確定日 2018-05-08 
事件の表示 特願2012-219896「反射材の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月21日出願公開、特開2014- 71430、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年10月1日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年7月29日付け :拒絶理由通知書
平成28年10月10日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年3月27日付け :拒絶査定(以下、「原査定」とする。)
平成29年6月28日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定の拒絶の理由は、概略、本願の請求項1ないし7に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし4に記載の技術事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:国際公開第2010/150880号
引用文献2:特開2011-129901号公報
引用文献3:特開2010-195932号公報
引用文献4:特開2000-180643号公報

第3 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1ないし6」という。)は、平成29年6月28日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
紫外線の照射により硬化するシリコーン樹脂形成成分25?67質量%と、酸化チタン粒子33?75質量%とを含有する反射材用樹脂組成物を支持体上に塗布して塗膜を形成する第1工程と、
前記塗膜を330?450nmの範囲及び500?600nmの範囲のそれぞれにスペクトルを有する光源により露光(但し、50℃以上に加熱しながら露光させる場合を除く)させて該塗膜を硬化させて反射材を形成する第2工程と、を備え、
前記反射材は波長600nmの光に対する反射率が70%以上であることを特徴とする反射材の製造方法。
【請求項2】
前記シリコーン樹脂形成成分は、カチオン重合性シリコーン化合物とカチオン重合開始剤と増感剤とを含み、330?450nmの範囲に吸収ピークを有する請求項1に記載の反射材の製造方法。
【請求項3】
前記酸化チタン粒子がルチル型酸化チタンの粒子である請求項1または2に記載の反射材の製造方法。
【請求項4】
前記シリコーン樹脂形成成分の硬化物の屈折率が1.7以下である請求項1?3の何れか1項に記載の反射材の製造方法。
【請求項5】
前記塗膜が20?200μmの厚みを有する請求項1?4の何れか1項に記載の反射材の製造方法。
【請求項6】
前記第2工程が、前記塗膜を選択的に露光させて該塗膜の露光部のみを硬化させる工程であり、
前記第2工程において硬化されなかった塗膜を除去する工程をさらに備える請求項1?5の何れか1項に記載の反射材の製造方法。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(国際公開第2010/150880号)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当合議体が付した。)

(1)「発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0012] 本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、メッキ処理による反射層などの面倒な表面加工を施さなくとも、380nm以上の波長領域の近紫外線光や近赤外線光を光漏れなく十分に反射でき近紫外線光が照射されても黄変したり劣化したりせず、耐光性、耐熱性、耐候性に優れ、高い機械的強度と優れた化学的安定性とを有し、高い白色度を維持できるうえ、簡便に成形できて生産性が高く安価に製造できる汎用性の白色反射材及び白色反射材の製造方法、更には白色反射材を膜状に成形するためのインキ組成物として用いられる白色反射材を提供することを目的とする。」

(2)「発明の効果
[0032] 本発明の酸化チタンを含有するシリコーン製の白色反射材は、アナターゼ型又はルチル型の酸化チタンの粒子、中でも、特にアナターゼ型酸化チタン粒子をシリコーン樹脂又はシリコーンゴムに分散することによって、380?400nmの近紫外線波長領域のみならずそれ以上の可視領域の光、更にはそれより長波長領域の780nm以上の赤外線のような熱線を、高い反射率で、光漏れすることなく、十分に反射できる。
[0033] しかもこの反射材は、隠蔽性に優れた白色を呈しており、光や熱や化学的作用によって変質し難い硬質のシリコーン樹脂や軟質のシリコーンゴムを用いているから、高輝度発光ダイオードや紫外線発光ダイオードからの光、直射日光や高温に曝されても、また、高い光触媒活性を有するアナターゼ型酸化チタンを含有していても、黄変・褐変したり劣化したりすることが無いため、耐光性、耐熱性、耐候性に優れている。しかも、高い機械的強度を示し、優れた化学的安定性を有し、高い白色度を維持でき耐久性に優れているため、半導体光学素子を用いる半導体発光装置や太陽電池装置の用途に用いられる材料として優れている。」

(3)「図面の簡単な説明
[0039]
・・・略・・・
[図6]本発明を適用する、塗膜状タイプの白色反射材製基材と、本発明適用外のビスマレイミド・トリアジン樹脂製基材及びガラスエポキシ樹脂製基材とにおける照射波長と反射率との相関関係を示す図である。
・・・略・・・
[図8]本発明を適用する、ビスマレイミド・トリアジン樹脂製基材に白色反射材塗膜を形成した基板における照射波長と反射率との相関関係を示す図である。」

(4)「[0051](1) 銅箔が積層された白色反射基材16の作製:
・・・略・・・
シリコーン組成物の調製:
次いで、ヒドロシリル基含有シリル基を有する未架橋のシリコーン樹脂成分又はシリコーンゴム成分とアナターゼ型又はルチル型の酸化チタン粉末とが含まれているシリコーン組成物を準備する。詳しくは後に記述する。
前記の表面処理した銅箔の面に前記シリコーン組成物を、流下塗布し、加熱成形とともに架橋すると、ビニルシリル基含有シリル基のビニルと、ヒドロシリル基含有シリル基のヒドロシリルとが付加型反応し、銅箔が積層された酸化チタン含有シリコーン製の白色反射材(基材16)が作製される。」

(5)「[0053](3) パッケージ成形体部材の作製:
一方、前記と同様の未架橋のシリコーン樹脂成分とアナターゼ型又はルチル型の酸化チタン粉末と必要に応じシランカップリング剤とを含有するシリコーン組成物を下金型に注入し、上金型を閉じて加熱架橋させることによって、酸化チタン含有シリコーン製の白色反射材であるパッケージ成形体部材10を、成形する。
なお、酸化チタンにシランカップリング剤をコーティング処理してから、シロキサン化合物に加え、加熱、又は光照射によりシランカップリング剤とシロキサン化合物とを架橋させてバインダーの分子間にフィラーを内包させたシリコーン樹脂を金型内で成形すると一層強度の強い基板20やパッケージ成形体部材10が得られる。」

(6)「[0069] 本発明の白色反射材に用いられる各素材について、以下に説明する。この白色反射膜又は所望の形状の白色反射材を形成するための未架橋のシリコーン樹脂成分又はシリコーンゴム成分にアナターゼ型又はルチル型の酸化チタンが分散されているシリコーン組成物は、熱硬化性であり、優れた耐熱性、耐久性、耐光性を示すものである。また、このシリコーン組成物は、適宜、溶剤や添加剤を加えて、その粘度を調整することができ、液だれを生じることがなく、所望の膜厚である塗膜を形成することや所望の形状の成形物を成形することができる。この酸化チタン含有シリコーン組成物は、未架橋のシリコーン樹脂成分又はシリコーンゴム成分を用いているので、従来の光硬化性であって使い切りであるレジストに比べて、使い切らなくても希釈剤などの溶媒を追加しつつ使用することができ保存性に優れている。希釈剤として、商品名ゼオローラ(旭硝子社製フッ素系溶剤)、キシレン、トルエン、エーテル、シンナー、1-ブロモプロパン等が挙げられる。また、反応してシリコーン硬化物となる低粘度のシリコーンシンナーを用いても良い。なかでも、シンナーは入手し易く、粘度が上がらないため加工性に優れ好ましい。
[0070] 本発明におけるシリコーン組成物は、未架橋のシリコーン樹脂成分又はシリコーンゴム成分100質量部に対し、アナターゼ型又はルチル型の酸化チタンが5?400質量部含まれていることが好ましい。このシリコーン組成物を用いて形成された本発明の白色反射材は、5質量部より少ないと十分な反射が得られず、特に長波長領域において反射率の低下が生じ、一方、400質量部を超えると酸化チタンの分散が困難になる。
[0071] 本発明におけるアナターゼ型又はルチル型の酸化チタンは、小さな粒径と大きな粒径を組み合わせることにより、添加部数を増やせる最密充填ができ、大きな粒径の酸化チタンを使用することにより、隠蔽力を上げることができる。その平均粒径が、0.05?50μmであることが好ましい。0.05μmより小さいと隠蔽力が低下しやすい。また、50μmより大きいと組成物の塗布条件が不安定になり塗布後の表面品質が安定しない。酸化チタンは、形状に制限がなく任意の粒形状のもの、例えばフレーク状、不定形状、又は球状の粒子が使用できるが、その粒径が0.1?10μmであることが好ましく、Al_(2)O_(3)、ZrO_(2)、SiO_(2)などで表面処理した酸化チタンであってもよい。アナターゼ型酸化チタンは光触媒作用が強いため、前記表面処理を行うのが好ましい。
[0072] さらに、可視領域の光を反射させる場合には、ルチル型が好ましく、380?400nmの波長領域の光を反射させる場合には、アナターゼ型が好ましい。特に、アナターゼ型酸化チタンは、380?400nmの波長領域のみならずそれ以上の可視領域の光とそれより長波長領域の赤外線のような780nm以上の熱線とを、十分に反射させることができ、好ましい。」

(7)「[0078] 本発明の白色反射材に用いられるシリコーン樹脂又はシリコーンゴムとしては、特に限定されず、硬質シリコーン樹脂、軟質シリコーン樹脂、硬質シリコーンゴム、軟質シリコーンゴムが用いられる。一例としてポリ(ジメチルシロキサン)のようなポリ(ジアルキルシロキサン)やポリ(ジフェニルシロキサン)のようなポリ(ジアリールシロキサン)で例示されるポリシロキサン化合物が挙げられる。
[0079] これらのシリコーンのなかでも、低屈折率であるジメチルシリコーンであると好ましく、反射率を向上させることができる。ジメチルシリコーンは、黄変の原因となるフェニル基を含有しない又はフェニル基の含有が極めて少ないため、耐熱性や耐紫外線性も向上させることができる。
[0080] 一方、フェニル基を含有するフェニルシリコーンは、材料の硬度を高くすることが出来ることから硬質の白色反射材を作成する場合は好適に用いられる。
[0081] このようなシリコーンは、三次元架橋するシリコーンであり、この三次元架橋するポリシロキサン化合物は、その途中のSi基が、アルキルオキシシリル基やジアルキルオキシシリル基、ビニルシリル基やジビニルシリル基、ヒドロシリル基やジヒドロシリル基であったり、それらの基が複数存在したりすることにより、網目状に三次元的に架橋するというものである。シロキサン化合物同士や、シロキサン化合物と必要により添加されるシランカップリング剤とは、夫々のアルキルオキシシリル基又はジアルキルオキシシリル基同士が脱アルコール化反応により縮合して架橋したり、ビニルシリル基やジビニルシリル基とヒドロシリル基やジヒドロシリル基とが白金錯体等の白金触媒存在下で、無溶媒中、加熱や光照射によって付加して架橋したりする。シロキサン化合物はその中でも、付加して架橋するポリシロキサン化合物が好ましい。ジフェニルシロキシ基(-Si(C_(6)H_(5))_(2)-O-)やジメチルシロキシ基(-Si(CH_(3))_(2)-O-)のような繰り返し単位を有するシロキサン化合物であってもよい。シロキサン化合物は、ジメチルシロキシ基の繰り返し単位を有し、アルキルオキシシリル基、ジアルキルオキシシリル基、ビニルシリル基、ジビニルシリル基、ヒドロシリル基、ジヒドロシリル基を有しているポリシロキサン化合物であると、変色が少ないことから一層好ましい。」

(8)「実施例
[0099] 以下に、本発明の酸化チタン含有シリコーン製の白色反射材を試作し、半導体発光装置に組み込んだ例を示す。
[0100](実施例1)
シリコーンレジン(商品名SR-7010:東レ・ダウコーニング株式会社)100質量部にアナターゼ型酸化チタン(商品名SA-1:堺化学工業株式会社)を10質量部添加分散し、加熱プレスにて、170℃で5分間の硬化条件によって、縦70mm、横70mm、厚さ1mmの白色反射板を作製した。その後170℃で90分間アニールし測定サンプルとした。150℃で1000時間経過後の反射率を、分光光度計UV-3150(SHIMADZU製)を用いて測定した。なお、反射率の測定は、3種類の波長(380nm、550nm及び780nm)の光について実施した。その測定結果を、下記表1にまとめて示す。
[0101]
[表1]

[0102]《高温での経時後の反射率評価》
表1から明らかな通り、1000時間経過後でも大きな反射率の低下は見られず、黄変したり劣化したりすることが無いため、耐光性、耐熱性に優れており、有用な反射材料であることがわかった。
[0103](実施例2及び比較例1)
ビスマレイミド・トリアジン樹脂(BT樹脂)、ガラスエポキシ樹脂(GE樹脂)100質量部夫々にルチル型酸化チタン(商品名SR-1:堺化学工業株式会社)を100質量部添加分散し膜厚が50μmである基板を1枚ずつ作成した。
一方、前記と同様にして厚さ25μmのビスマレイミド・トリアジン樹脂基材及びガラスエポキシ樹脂基材を得た。
この25μm厚の各々の基材(BT樹脂製基材、GE樹脂製基材)上にバーコーターで、実施例1で用いたシリコーン樹脂にルチル型酸化チタン(商品名SR-1:堺化学工業株式会社)を100質量部添加したシリコーン組成物を塗布し膜厚25μmのシリコーン樹脂組成物塗膜を有する積層体し厚さ50μmの白色反射板を得た。
これら4種類の白色反射板を実施例1と同様に評価した。測定波長については、200nm?1000nmの範囲で反射率を測定した。
加熱前の反射率の結果を図6に示し、加熱経過後の反射率の結果を図7に示す。」

(9)「[図6]



(10)「[0105](実施例3)
実施例2と同様に作成した厚さ25μmのBT樹脂基材上に、シリコーンレジン100質量部に対して、ルチル型酸化チタンの配合部数を10質量部(phr)、25phr、50phr、250phrとした酸化チタン含有シリコーン組成物を膜厚が25μmになるようにそれぞれ塗布し、厚さ50μmの積層タイプの白色反射材を得た。実施例2と同様の反射率測定を行い、その照射波長と反射率との相関関係を図8に示す。また、実施例2と同様の熱処理及び反射率測定を行い、その照射波長と反射率との相関関係を図9に示す。」

(11)「[図8]


図8より、BT樹脂基材上に、シリコーンレジン100質量部に対して、ルチル型酸化チタンの配合部数を250phrとした酸化チタン含有シリコーン組成物を膜厚が25μmになるように塗布して得た、厚さ50μmの積層タイプの白色反射材の照射波長600nmにおける反射率は、70%以上であることが見てとれる。

(12)「[0107](実施例4)
実施例2と同様に作成した厚さ25μmのGE樹脂基材上に、シリコーンレジン100質量部に対して、ルチル型酸化チタンの配合部数を10質量部(phr)、25phr、50phr、250phrとした酸化チタン含有シリコーン組成物を膜厚が25μmになるようにそれぞれ塗布し、厚さ50μmの積層タイプの白色反射材を得た。実施例2と同様の反射率測定を行い、その照射波長と反射率との相関関係を図10に示す。また、実施例2と同様の熱処理及び反射率測定を行い、その照射波長と反射率との相関関係を図11に示す。
[0108] 図10に、ルチル型酸化チタンの配合部数を10phr、25phr、50phr、250phrとした酸化チタン含有シリコーン製白色反射膜形成組成物をそれぞれGE樹脂製基材上に塗布し、その膜厚が25μmである基板における、照射波長と反射率との相関関係を示す。また、図11に、ルチル型酸化チタンの配合部数を10phr、25phr、50phr、250phrとした酸化チタン含有シリコーン製白色反射膜形成組成物をそれぞれGE樹脂製基材上に塗布し、その膜厚が25μmである基板の熱処理後における、照射波長と反射率との相関関係を示す。」

(13)「[請求項1] シリコーン樹脂又はシリコーンゴムにアナターゼ型又はルチル型の酸化チタン粒子が分散されて成形されており、酸化チタン含有シリコーン組成物からなることを特徴とする白色反射材。」

(14)「[請求項2] 前記酸化チタン粒子は、平均粒径0.05?50μmであり、前記シリコーン樹脂又はシリコーンゴム100質量部に対し、5?400質量部含有し反射率が少なくとも80%以上であることを特徴とする請求項1に記載の白色反射材。」

2.引用発明
上記引用文献1には、実施例3において、ルチル型酸化チタンの配合部数を250phr(質量部)とした白色反射材の製造方法に関する以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ビスマレイミド・トリアジン樹脂(BT樹脂)100質量部にルチル型酸化チタン(商品名SR-1:堺化学工業株式会社)を100質量部添加分散し厚さ25μmのBT樹脂基材を得て、
厚さ25μmのBT樹脂基材上に、シリコーンレジン100質量部に対して、ルチル型酸化チタンの配合部数を250phr(質量部)とした酸化チタン含有シリコーン組成物を膜厚が25μmになるように塗布し、厚さ50μmである積層タイプの白色反射材を得て、
前記白色反射材は波長600nmの光に対する反射率が70%以上である
白色反射材の製造方法。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「BT樹脂基材」は、本願発明1の「支持体」に相当する。引用発明の「レジン」は樹脂を表すことは技術常識であるから、引用発明の「シリコーンレジン」は、本願発明1の「シリコーン樹脂形成成分」に相当する。引用発明の「ルチル型酸化チタン」は、樹脂に添加分散して層を形成するため、細かい粒子状であるといえるから、本願発明1の「酸化チタン粒子」に相当する。そして、引用発明の「シリコーンレジン100質量部に対して、ルチル型酸化チタンの配合部数を250phr(質量部)とした酸化チタン含有シリコーン組成物」は、支持体上に塗布して白色反射材を得るための組成物であるから、本願発明1の「反射材用樹脂組成物」に相当する。そして、引用発明は、「シリコーンレジン100質量部に対して、ルチル型酸化チタンの配合部数を250phr(質量部)と」しており、「酸化チタン含有シリコーン組成物」の組成は、シリコーンレジンが約29質量%、ルチル型酸化チタンが約71質量%となるから、引用発明の「酸化チタン含有シリコーン組成物」は、本願発明1の「反射材用樹脂組成物」の「シリコーン樹脂形成成分25?67質量%と、酸化チタン粒子33?75質量%とを含有する」との要件を満たす。そして、引用発明は、「BT樹脂基材上に、シリコーンレジン100質量部に対して、ルチル型酸化チタンの配合部数を250phr(質量部)とした酸化チタン含有シリコーン組成物を膜厚が25μmになるように塗布」しており、その工程は、本願発明1の「反射材用樹脂組成物を支持体上に塗布して塗膜を形成する第1工程」に相当する。
そして、引用発明は「酸化チタン含有シリコーン組成物」を「塗布」することによって、「積層タイプの白色反射材を得て」いるのであるから、シリコンレジンは最終的には反射材として「硬化」しているといえ、引用発明の「シリコーンレジン」は、本願発明1の「シリコーン樹脂形成成分」の「硬化する」との要件を満たす。そして、引用発明の硬化により「積層タイプの白色反射材を得」る工程は、本願発明1の「塗膜を硬化させて反射材を形成する第2工程」に相当する。
引用発明の「白色反射材」は、本願発明1の「反射材」に相当する。引用発明の「白色反射材」は、「前記白色反射材は波長600nmの光に対する反射率が70%以上であ」り、引用発明の「反射材」の「波長600nmの光に対する反射率が70%以上」の要件を満たす。
引用発明と本願発明は、上記の点で共通点を有する「反射材の製造方法」といえる。

(2)一致点、相違点
以上の対比結果を踏まえると、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

一致点
「硬化するシリコーン樹脂形成成分25?67質量%と、酸化チタン粒子33?75質量%とを含有する反射材用樹脂組成物を支持体上に塗布して塗膜を形成する第1工程と、
該塗膜を硬化させて反射材を形成する第2工程と、を備え、
前記反射材は波長600nmの光に対する反射率が70%以上である、
反射材の製造方法。」

相違点
本願発明1は、「シリコーン樹脂形成成分」を「紫外線の照射により硬化する」ものとして、第2工程で「前記塗膜を330?450nmの範囲及び500?600nmの範囲のそれぞれにスペクトルを有する光源により露光(但し、50℃以上に加熱しながら露光させる場合を除く)させて」硬化しているのに対し、引用発明は、そのような硬化を行っているか不明な点。

(3)相違点についての判断
上記相違点について検討する。
引用文献1には、「この白色反射膜又は所望の形状の白色反射材を形成するための未架橋のシリコーン樹脂成分又はシリコーンゴム成分にアナターゼ型又はルチル型の酸化チタンが分散されているシリコーン組成物は、熱硬化性であり、優れた耐熱性、耐久性、耐光性を示すものである。」と記載されており([0069])、実施例1においても「加熱プレスにて、170℃で5分間の硬化条件によって、・・・白色反射板を作製し」ている([0100])とおり、引用文献1において、シリコーン樹脂成分は熱硬化性のものが用いられている。
そして、引用文献1において「優れた耐熱性、耐久性、耐光性を示すものである」として用いている引用発明のシリコーンレジンについて、「紫外線の照射により硬化する」ものとした上で、「330?450nmの範囲及び500?600nmの範囲のそれぞれにスペクトルを有する光源により露光(但し、50℃以上に加熱しながら露光させる場合を除く)」して硬化するものに変更を行うことについて、引用文献1は想定するものではなく、そのような変更を行う合理的な理由がない。
引用文献1には、「酸化チタンにシランカップリング剤をコーティング処理してから、シロキサン化合物に加え、加熱、又は光照射によりシランカップリング剤とシロキサン化合物とを架橋させてバインダーの分子間にフィラーを内包させたシリコーン樹脂を金型内で成形する」([0053])との記載があり、光硬化性のシリコーン樹脂は周知であるとしても、あくまで熱硬化性のものとしての課題の認識のない引用発明について、「シリコーン樹脂形成成分」を「紫外線の照射により硬化する」ものとしたうえで、「330?450nmの範囲及び500?600nmの範囲のそれぞれにスペクトルを有する光源により露光(但し、50℃以上に加熱しながら露光させる場合を除く)」して硬化することについて、動機付けがあるとはいえない。
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2011-129901号公報)には、紫外線硬化性の組成物を紫外線照射光源として高圧水銀ランプ等を用いて硬化させることについての記載はあるが(【0017】、【0099】等)、紫外線照射を50℃以上100℃以下の環境下で行うものである(請求項1、【0018】等)。そして、引用文献2にも、引用発明のシリコーンレジンについて、「紫外線の照射により硬化する」ものとした上で、「330?450nmの範囲及び500?600nmの範囲のそれぞれにスペクトルを有する光源により露光(但し、50℃以上に加熱しながら露光させる場合を除く)」して硬化するものに変更を行う動機付けが示されているとはいえない。更に、その他の引用文献を参照しても、同様である。
他方で、本願発明1は、「熱硬化性のシリコーン樹脂組成物を用いる場合のような、耐熱性の低い支持体を用いることが出来なかったり、寸法精度の高い精密なパターニングが出来なかったり、大きな加熱装置が必要であったりするといった、問題を解消できる。」(【0011】)という効果を有する。また、本願発明1は、「酸化チタンを高濃度で充填した場合であっても、より厚い硬化膜を形成することが可能である」(【0012】)という、引用文献1に記載された効果とは異質な効果を奏しており、この効果は当業者といえども、引用文献1の記載全体や技術常識を勘案しても、容易に想到し得たものともいえない。
したがって、本願発明1は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
そして、引用文献1の他の実施例等の記載、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2及びその他の引用文献を検討しても、本願発明1は、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2.本願発明2ないし6について
本願発明2ないし6は、本願発明1の「反射材の製造方法」にさらなる限定を付加するものである。
したがって、本願発明2ないし6も、本願発明1と同様に、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-04-16 
出願番号 特願2012-219896(P2012-219896)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤岡 善行  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 宮澤 浩
多田 達也
発明の名称 反射材の製造方法  
代理人 江川 勝  

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