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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1339704
審判番号 不服2016-15794  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-21 
確定日 2018-04-25 
事件の表示 特願2015-524259「無線ネットワークにおけるユーザ機器支援情報の信号伝達」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月 6日国際公開、WO2014/021979、平成27年 8月 6日国内公表、特表2015-523041〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2013年(平成25年)5月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年8月3日 米国、2012年12月27日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成27年11月30日付けで拒絶理由が通知され、平成28年2月19日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年6月24日付けで拒絶査定されたところ、同年10月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。


第2 補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成28年10月21日に提出された手続補正書による手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
平成28年10月21日付けでなされた手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成28年2月19日付けで提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項7に記載された、

「 【請求項7】
ユーザ機器(UE)であって、
無線ネットワークを用いた接続モードにある前記UEに対する所望の電力消費状態を特定する電力プリファレンス指標(PPI)を含むUE支援情報エレメントを生成する処理回路と、
UE支援情報エレメントを含む無線リソース制御メッセージ(RRCメッセージ)を生成する信号生成モジュールと、
前記UEに関連する無線ネットワークの進化型ノードB(eNB)に前記RRCメッセージを送信する送信回路と、
前記RRCメッセージの連続的な送信の間の期間が最小経過時間閾値を超過するように前記RRCメッセージの送信を遅延させるタイマ回路と
を備え、前記RRCメッセージは、上りリンク専用制御チャネル(UL-DCCH)上で送信される、UE。」

という発明(以下、「本願発明」という。)を、本件補正に係る手続補正書の特許請求の範囲の請求項7に記載された、

「 【請求項7】
ユーザ機器(UE)であって、
無線ネットワークを用いた接続モードにある前記UEに対する所望の電力消費状態を特定する電力プリファレンス指標(PPI)を含むUE支援情報エレメントを生成する処理回路と、
UE支援情報エレメントを含む無線リソース制御メッセージ(RRCメッセージ)を生成する信号生成モジュールと、
前記UEに関連する無線ネットワークの進化型ノードB(eNB)に前記RRCメッセージを送信し、前記eNBからの応答が受信されるまで前記RRCメッセージを前記eNBに再送信する送信回路と、
前記RRCメッセージの連続的な再送信の間の期間が最小経過時間閾値を超過するように前記RRCメッセージの再送信を遅延させるタイマ回路と
を備え、前記RRCメッセージは、上りリンク専用制御チャネル(UL-DCCH)上で送信される、UE。」(下線は、補正箇所を示す。)

という発明(以下、「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。


2.補正の適否
(1)新規事項の有無、補正の目的要件、シフト補正の有無
上記補正の内容は、「送信回路」による「RRCメッセージ」の送信には、「前記eNBからの応答が受信されるまで前記RRCメッセージを前記eNBに再送信する」送信が含まれることを限定し、更に「タイマ回路」によって遅延させられる連続的な「送信」が「再送信」であることを特定する補正であるから、上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
また、上記補正の内容は、国際出願日における国際特許出願の明細書の翻訳文の【0014】に記載された事項であるから、上記補正は、国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面の翻訳文,同請求の範囲の翻訳文又は同図面の記載に記載された事項の範囲内においてなされた補正である。
したがって、上記補正は、特許法第17条の2第3項(新規事項)、及び同法第17条の2第5項第2号(補正の目的)の規定に適合している。また、特許法第17条の2第4項(シフト補正)の規定に違反しないことも明らかである。
請求項1及び15についての補正も同様である。


(2)独立特許要件
上記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、補正後の発明が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて、以下に検討する。

[補正後の発明]
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項において、「補正後の発明」として認定したとおりである。

[引用発明]
原査定の拒絶理由に引用された
「Nokia Corporation, Research in Motion UK Ltd., ZTE, Intel Corporation, Renesas Mobile Europe Ltd., Qualcomm Incorporated, Ericsson, Deutsche Telekom, Nokia Siemens Networks, CATT, MediaTek, IPWireless, China Unicom, Motorola Mobility, ST-Ericsson, Stage 2 CR on eDDA UE assistance information[online], 3GPP TSG-RAN WG2 Meeting #78 R2-123160,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_78/Docs/R2-123160.zip>,2012年6月1日(アップデート日)」(以下、「引用例」という。)には、「UE assistance information for RRM and UE power optimisations」(RRM及びUE電力最適化のためのUE支援情報)に関して以下の事項が記載されている。

「16.3 UE assistance information for RRM and UE power optimisations
In order to optimise the user experience and (for instance) to assist the eNB in configuring connected mode parameters and connection release handling, the UE may be configured to send assistance information to the eNB comprising:

- UE preference for power optimised configuration (1 bit):
- When this bit is sent by the UE, the UE shall set the bit (to true or false) in accordance with its preference for a configuration that is primarily optimised for power saving (e.g. a long value for the long DRX cycle or RRC connection release) or not
- The details regarding how the UE sets the indicator are left to UE implementation
Note: Mechanisms to avoid excessive signalling of this information from the UE shall be provided during the stage 3 work
・・・・・・・」
(当審訳: 16.3 RRM及びUE電力最適化のためのUE支援情報
ユーザ経験を最適化し、(例えば)接続モードパラメータ及び接続解放処理を構成する際にeNBを支援するために、UEは、支援情報をeNBに送信するように構成されてもよい。
- 電力最適化構成のためのUEプリファレンス(1ビット):
- このビットがUEによって送信されるとき、主に省電力のために最適化されるか(例えば、長いDRXサイクル又はRRC接続解放のロング値)否かという設定に対するプリファレンスにしたがって、UEはそのビット(正否を示す)をセットする
- UEがインジケータをどのように設定するかに関する詳細は、UE実装に委ねられる
注:UEからのこの情報の過剰なシグナリングを回避するためのメカニズムは、ステージ3の作業中に提供されなければならない
・・・・・・)

上記摘記事項並びにこの分野における技術常識を考慮すると、

a.上記摘記事項はUEについて記載されているということができ、そして、UEはeNBに支援情報を送信しているから、UEは、当該UEに関連するeNBに支援情報を送信する送信手段を有しているということができる。

b.上記摘記事項によれば、UEがeNBに送信する支援情報には、電力最適化構成のためのUEプリファレンスが含まれているといえる。そうしてみると、UEは、電力最適化構成のためのUEプリファレンスを含む支援情報を生成する手段を有していると考えるのが自然である。

したがって、引用例には以下のような発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

(引用発明)
「 UEであって、
電力最適化構成のためのUEプリファレンスを含む支援情報を生成する手段と、
UEに関連するeNBに支援情報を送信する送信手段と、
を有するUE。」


[公知技術]
原査定の拒絶理由に引用された
「Research In Motion UK Limited,A Framework for Management of Background Traffic UEs[online], 3GPP TSG-RAN WG2 Meeting #77bis R2-121609,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_77bis/Docs/R2-121609.zip>,2012年3月19日」(以下、「公知文献」という。)には「Figure 2」として以下の図が記載されている。


図中、UEからeNBへ向けた矢印に「UE assistance information(RRC or MAC CE)」(当審訳:UE支援情報(RRC又はMAC CE))と付記されている。
したがって、「UE支援情報をUEからeNBへRRCで伝送すること。」は本願の優先日前に公知の技術であると認められる。(以下、「公知技術」という。)


[周知技術]
国際公開第2008/023791号(国際公開日2008年2月28日。以下、「周知文献1」という。)には以下の記載がある。
「[0012] ・・・RRC (Radio Resou rce Control)で再送処理を行うことが考えられる。具体的には、図3に示すように、送信側RRC(図中Tx RRC)は、メッセージ送信時にタイマー(Timer)を開始し、受信側 RRC (図中Rx RRC)は、メッセージ受信時に応答メッセージ(Response message)を返送する。そして、送信側 RRCは、応答メッセージ受信時にタイマーを停止する。
[0013]・・・・
[0014]そこで、ここでのポイントとしては、送信側RRCは、タイマー満了時にRRCメッセージを再送し、再送時は RRC内でメッセージの順番を管理するために定義されているRRC SNとして新たな値を使う必要がある。・・・・」

特表2011-509049号公報(公表日平成23年3月17日。以下、「周知文献2」という。)には以下の記載がある。
「【0041】
送信されたメッセージが、RRCメッセージである場合、RRCエンティティ140は、Cell_FACH状態において送信されたすべてのRRCメッセージを格納し、これらの格納されたRRCメッセージを再送することができる。RRCメッセージ再送は、HARQエンティティからの通知(HARQ失敗の通知)、またはRRCタイマの満了によってトリガされることが可能である。HARQエンティティは、HARQエンティティが最大回数の試みを行った後に、失敗したHARQプロセスについてRRCエンティティ140に通知する。HARQ失敗の通知が受信された場合、RRCタイマは、停止され、RRC140が、RRCメッセージを再送する。オプションとして、HARQ成功の通知が、RRCエンティティ140に送られることも可能であり、このことは、RRCエンティティ140にRRCタイマを停止させる。」

上記周知文献1,2の記載によれば、以下の事項は周知技術と認められる。
(周知技術)
「タイマを使って再送信時間間隔を規定し、メッセージの再送信をすること。」


[対比]
補正後の発明を引用発明と対比すると、

a.引用発明の「UE」、「eNB」は、補正後の発明の「ユーザ機器(UE)」、「進化型ノードB(eNB)」にそれぞれ相当する。

b.引用発明は、UEからeNBへの送信を行っているから、無線ネットワークを用いてUEはeNBと接続していることは明らかであり、また「UEプリファレンス」により「電力最適化」しようとしていることから、「UEプリファレンス」はUEの電力消費状態を所望の値に特定しようとするものと考えるのが自然である。
また、引用発明は、引用例に「(例えば)接続モードパラメータ及び接続解放処理を構成する際にeNBを支援するために・・・」と記載されているように、接続モードを前提としているものである。
そうしてみると、引用発明の「電力最適化構成のためのUEプリファレンス」は、補正後の発明の「無線ネットワークを用いた接続モードにある前記UEに対する所望の電力消費状態を特定する電力プリファレンス指標(PPI)」に相当する。
そして、引用発明の「UEプリファレンス」を含む「支援情報」は、補正後の発明の「電力プリファレンス指標(PPI)」を含む「UE支援情報」に対応し、引用発明において「支援情報を生成する手段」が、補正後の発明の「UE支援情報」を「生成する処理回路」に対応する。

c.引用発明の「送信手段」は支援情報を送信するのに対し、補正後の発明の「送信回路」は、UE支援情報エレメントを含む無線リソース制御メッセージ(RRCメッセージ)を送信及び再送信しているが、「UE支援情報」に関する情報を送信するという点で、引用発明の「送信手段」と補正後の発明の「送信回路」は共通する。

したがって、両者は以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
「 ユーザ機器(UE)であって、
無線ネットワークを用いた接続モードにある前記UEに対する所望の電力消費状態を特定する電力プリファレンス指標(PPI)を含むUE支援情報を生成する処理回路と、
前記UEに関連する無線ネットワークの進化型ノードB(eNB)に前記UE支援情報に関する情報を送信する送信回路と、
を備える、UE。」

(相違点1)
補正後の発明では送信されるのが「UE支援情報エレメント」であるのに対して、引用発明では「UE支援情報」であり、そして、補正後の発明は、「UE支援情報エレメントを含む無線リソース制御メッセージ(RRCメッセージ)を生成する信号生成モジュール」を有するのに対して、引用発明が同様の構成を有するのか明らかではない点。

(相違点2)
一致点とした「送信回路」に関し、補正後の発明は「前記RRCメッセージを送信し」、「前記eNBからの応答が受信されるまで前記RRCメッセージを前記eNBに再送信する」のに対して、引用発明は当該事項が明らかでない点。

(相違点3)
補正後の発明は、「前記RRCメッセージの連続的な再送信の間の期間が最小経過時間閾値を超過するように前記RRCメッセージの再送信を遅延させるタイマ回路」を有するのに対して、引用発明にはタイマ回路を有することについて記載されていない点。

(相違点4)
補正後の発明では「前記RRCメッセージは、上りリンク専用制御チャネル(UL-DCCH)上で送信される」のに対して、引用発明では支援情報がどのように送信されるのか明らかではない点。


[判断]
上記相違点1について検討する。
上述したように、「UE支援情報をUEからeNBへRRCで伝送すること」は公知技術である。そうしてみると、UEからeNBへUE支援情報を送信する引用発明においても、上記公知技術に触れた当業者であれば、UE支援情報をRRCメッセージとして伝送しようとすることは格別の困難性を伴うことなく、容易に想到できる事項にすぎない。そして、RRCメッセージとして伝送するにあたり、UE支援情報をRRCメッセージのエレメントとすることは、RRCメッセージの信号の形式に合わせて適宜なし得る事項であり、また、RRCメッセージを用いるためにRRCメッセージを生成する信号生成モジュールを設けることも適宜に成し得た程度の事項にすぎない。
ここで、RRCメッセージを伝送するに際して、上りリンク専用制御チャネル(UL-DCCH)を用いることは、引用発明が検討されている3GPPにおいて技術常識にすぎないから、相違点4とした構成を採用することはRRCメッセージを採用するに伴い自ずと導出されることにすぎない。
したがって、相違点1、4とした補正後の発明の構成は、引用発明に公知技術を適用することにより、当業者が容易に構成できた事項である。

次に、上記相違点2、3について併せて検討する。
確認応答が受信されるまでメッセージを再送信することは通信一般における常套手段であるところ、上述したように「タイマを使って再送信時間間隔を規定し、メッセージの再送信をすること。」は周知の技術である。そうしてみると、引用発明においても上記相違点1で検討したようにRRCメッセージを送信する構成とするにあたり、応答が受信されないときに、タイマを使い、タイマにより規定される時間間隔である最小経過時間閾値を超過するような間隔で、RRCメッセージの再送信を行う構成とすることは適宜成し得た程度の事項にすぎない。そして再送信する構成とするに伴い、再送信を行う送信回路を採用することも、自ずと導出される事項にすぎない。
したがって、相違点2、3とした補正後の発明の構成とすることは、当業者が引用発明及び周知技術から容易に想到できた事項である。

そして、補正後の発明が奏する効果も、引用発明、公知技術、及び周知技術から、容易に予測できる範囲内のものである。

よって、補正後の発明は、引用発明、公知技術、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定によって、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。


3.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合していない。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。



第3 本願発明について

1.本願発明
平成28年10月21日に提出された手続補正書による手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は上記「第2 補正却下の決定」の項中の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりのものである。


2.引用発明及び技術事項
引用発明、公知技術、及び周知技術は、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「(2)独立特許要件」の項で引用発明、公知技術、及び周知技術としてそれぞれ認定したとおりである。


3.対比・判断
本願発明は補正後の発明から本件補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に本件補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「(2)独立特許要件」の項で検討したとおり、引用発明、公知技術、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。


4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、公知技術、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-11-22 
結審通知日 2017-11-28 
審決日 2017-12-12 
出願番号 特願2015-524259(P2015-524259)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 575- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉村 真治▲郎▼土居 仁士  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 山本 章裕
中木 努
発明の名称 無線ネットワークにおけるユーザ機器支援情報の信号伝達  
代理人 龍華国際特許業務法人  

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