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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1339965
審判番号 不服2017-6369  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-02 
確定日 2018-05-10 
事件の表示 特願2013-522917「薬剤検査装置及び薬剤検査方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月 3日国際公開、WO2013/002291〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2012年(平成24年)6月27日(優先権主張 2012年6月28日)を国際出願日とする出願であって、平成28年5月11日付けで拒絶理由が通知され、同年7月13日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成28年8月19日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年10月20日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年12月26日付けで同年10月20日付けの手続補正についての補正の却下の決定がなされ、同日付けで拒絶査定されたところ、平成29年5月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成29年5月2日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

平成29年5月2日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について

本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲、すなわち平成28年7月13日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載を、以下のとおり、補正後の特許請求の範囲の請求項1のものに補正する事項を含むものである(下線は補正箇所を示す。)。

(補正前)
「【請求項1】
複数の錠剤がそれぞれのポケットに収容されて並ぶ列が、複数列に亘って搬送され、一列ごとに、或いはポケット毎に、異なる薬剤成分の量を含有する錠剤の包装工程において、錠剤の種類を判別する薬剤検査装置であって、
前記錠剤に近赤外線を含む光線を照射する照射部と、
前記錠剤からの反射光が入射される分光器と、
前記分光器によって分光されたスペクトルを撮像し、撮像データを生成する近赤外線撮像部と、
前記撮像データを処理し、錠剤の種類を判別する演算を行う制御部と、
を備え、
前記近赤外線撮像部は、一回の撮像で、前記列において錠剤が並ぶ方向の所定長さに割り付けられた所定数の画素における各スペクトルを撮像し、
前記制御部は、
前記近赤外線撮像部が、前記一列に含まれる錠剤に対して、少なくとも一回の撮像を行うように制御し、
各錠剤に対して割り当てられた複数の画素から、1つの錠剤に対して複数のスペクトルを取得し、
ポケット毎に、各錠剤表面上の前記複数の画素から取得した前記複数のスペクトルを平均化することで、錠剤一錠あたりの平均スペクトルデータを算出し、
前記平均スペクトルデータに基づいて、錠剤の種類を判別する、薬剤検査装置。」

(補正後)
「【請求項1】
複数の錠剤がそれぞれのポケットに収容されて並ぶ列が、複数列に亘って搬送され、一列ごとに、或いはポケット毎に、異なる薬剤成分の量を含有する錠剤の包装工程において、錠剤の種類を判別する薬剤検査装置であって、
前記錠剤に近赤外線を含む光線を照射する照射部と、
前記錠剤からの反射光が入射される分光器と、
前記分光器によって分光されたスペクトルを撮像し、撮像データを生成する近赤外線撮像部と、
前記撮像データを処理し、錠剤の種類を判別する演算を行う制御部と、
を備え、
前記近赤外線撮像部は、一回の撮像で、前記列において錠剤が並ぶ方向の所定長さに割り付けられた所定数の画素における各スペクトルを撮像し、
前記制御部は、
前記近赤外線撮像部が、前記一列に含まれる錠剤に対して、少なくとも一回の撮像を行うように制御し、
各錠剤に対して割り当てられた複数の画素から、1つの錠剤に対して複数のスペクトルを取得し、
ポケット毎に、以下の(1)又は(2)の処理によって、錠剤一錠あたりの平均スペクトルデータを算出し、
(1)前記各錠剤上に割り付けられた複数の画素を予め特定し、当該特定された複数の画素のスペクトルを平均化する、
(2)前記各画素における各スペクトルに基づいて、前記各錠剤上に割り付けられた複数の画素を特定し、当該特定された複数の画素のスペクトルを平均化する、
前記平均スペクトルデータに基づいて、錠剤の種類を判別する、薬剤検査装置。」

上記補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ポケット毎に、」「錠剤一錠あたりの平均スペクトルデータを算出」するための処理が、「(1)前記各錠剤上に割り付けられた複数の画素を予め特定し、当該特定された複数の画素のスペクトルを平均化する」「処理」又は「(2)前記各画素における各スペクトルに基づいて、前記各錠剤上に割り付けられた複数の画素を特定し、当該特定された複数の画素のスペクトルを平均化する」「処理」であることを限定する補正事項を含むものである。
この補正事項は、補正前の請求項1に係る発明のいわゆる限定的減縮を目的としており、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものである。

2 補正の適否

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)本願補正発明

本願補正発明は、平成29年5月2日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのもの(上記「1」の「(補正後)」の記載を参照。)であり、分説し、A)ないしJ)の符号を付与すると、以下のとおりである。

「A) 複数の錠剤がそれぞれのポケットに収容されて並ぶ列が、複数列に亘って搬送され、一列ごとに、或いはポケット毎に、異なる薬剤成分の量を含有する錠剤の包装工程において、錠剤の種類を判別する薬剤検査装置であって、
B) 前記錠剤に近赤外線を含む光線を照射する照射部と、
C) 前記錠剤からの反射光が入射される分光器と、
D) 前記分光器によって分光されたスペクトルを撮像し、撮像データを生成する近赤外線撮像部と、
E) 前記撮像データを処理し、錠剤の種類を判別する演算を行う制御部と、
を備え、
F) 前記近赤外線撮像部は、一回の撮像で、前記列において錠剤が並ぶ方向の所定長さに割り付けられた所定数の画素における各スペクトルを撮像し、
G) 前記制御部は、
前記近赤外線撮像部が、前記一列に含まれる錠剤に対して、少なくとも一回の撮像を行うように制御し、
H) 各錠剤に対して割り当てられた複数の画素から、1つの錠剤に対して複数のスペクトルを取得し、
I) ポケット毎に、以下の(1)又は(2)の処理によって、錠剤一錠あたりの平均スペクトルデータを算出し、
(1)前記各錠剤上に割り付けられた複数の画素を予め特定し、当該特定された複数の画素のスペクトルを平均化する、
(2)前記各画素における各スペクトルに基づいて、前記各錠剤上に割り付けられた複数の画素を特定し、当該特定された複数の画素のスペクトルを平均化する、
J) 前記平均スペクトルデータに基づいて、錠剤の種類を判別する、
A) 薬剤検査装置。」

(2)引用文献とそれに記載された事項

ア 引用文献1

(ア) 引用文献1の記載事項
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された、特開2010-175528号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審において付加したものである。以下同様。)。

a 「【0001】
本発明は、薬品や食品の包装状態を検査するための装置に関し、より特定的には、臨床試験(以下、治験という)や特定保健食品のための試験など、効能を確認するための比較試験に使用する固形製剤の包装状態を検査するための装置に関する。」

b 「【0056】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る固形製剤包装装置100の概略構成を示す模式図である。図1において、固形製剤包装装置100は、加熱部1と、ポケット成形部2と、固形製剤投入部3と、圧着部7と、検査装置101とを備える。検査装置101は、近赤外線照射部9a,9bと、光学レンズ10と、分光器11と、近赤外線カメラ12と、検査部13と、光源14とを含む。」

c 「【0058】
第1の実施形態は、後述の図7に示すように、一列全てが被験薬で、かつ、一列全てが偽薬である場合に、適切に配列されているか否かを検査する。
【0059】
樹脂フィルム15は、ポリプロピレン(PP)やポリ塩化ビニル(PVC)などの熱可塑性樹脂材料からなるフィルムである。固形製剤包装装置100は、樹脂フィルム15を間欠的に搬送する。加熱部1は、樹脂フィルム15を加熱する。ポケット成形部2は、ポケット4を形成するための型を有する。ポケット成形部2は、加熱部1によって加熱されて軟化している樹脂フィルム15に対して、当該型を用いて、ポケット4を形成する。なお、図1上、ポケット4は、説明に必要な要所にのみ記載されている。固形製剤投入部3は、ポケット4に、固形製剤5を投入する。固形製剤包装装置100は、固形製剤5が投入された状態で、樹脂フィルム15を搬送する。アルミ箔6には、たとえば、加熱圧着剤が塗布されている。圧着部7は、樹脂フィルム15とアルミ箔6とを圧着する。これにより、固形製剤5は、ポケット4に収容された状態で包装されることになる。なお、ポケット4への圧着部材として、アルミ箔6以外の箔状物が用いられても良い。」

d 「【0063】
図3は、図1における検査装置101の機能的構成を示すブロック図である。図3において、図1と同様の機能を有する部分については、同一の参照符号を付す。近赤外線照射部9a,9bは、鉛直方向に対して上側から、固形製剤5に対して、直接、近赤外線を照射する。光学レンズ10は、近赤外線の反射光を集光する。集光された反射光は、スリット(図示せず)及びレンズ(図示せず)を介して、帯状の平行光となる。当該平行光は、分光器11によって、波長毎に分光される。分光器11によって分光された反射光は、近赤外線カメラ12に投射される。光学レンズ10,分光器11,及び近赤外線カメラ12は、近赤外線の反射光を適切に撮像できる位置に配置されている。
【0064】
図2の画像16は、近赤外線カメラ12に反射光が投射され、近赤外線カメラ12が得た画像の一例である。図2に示すように、画像16は、横軸が検査対象物の位置関係を示し、縦軸が波長を示す。また、波長毎の画素の濃淡が、波長毎の光の強度を示す。図2に示す例では、検査対象物の固形製剤5が5つ並んでいる。よって、画像16において、固形製剤5が存在する位置の光の強度が波長毎に変化している。近赤外線カメラ12で撮影された画像のデータは、検査部13に送信される。」

e 「【0065】
図4は、検査部13の機能的構成を示すブロック図である。図4において、検査部13は、スペクトル取得部131と、前処理部132と、ローディングベクトル算出部133と、ローディングベクトル記憶部134と、主成分得点算出部135と、判定範囲設定部136と、入力部137と、判定範囲記憶部138と、検査タイミング設定部139と、検査タイミング発生部140と、認識判定部141(認識手段及び判定手段)と、出力部142とを含む。
【0066】
スペクトル取得部131は、近赤外線カメラ12から送信されてくる画像データを受信し、位置及び波長毎の光の強度に関するデータを取得する。スペクトル取得部131が取得する波長毎の強度は、数nm毎でも良い。前処理部132は、スペクトル取得部131が取得した波長毎の光の強度に対して、補間処理や平均化処理、標準化処理などを行って、波長毎の光の強度を補正する。なお、前処理部132は無くても良い。
【0067】
ローディングベクトル算出部133は、前処理部132から得られた波長の強度に基づいて、ローディングベクトルを算出する。たとえば、近赤外線カメラ12から送られてくる画像データに基づいて、n個の波長に関する光の強度(x1,x2,…,xn)が得られる場合を想定する。このとき、ローディングベクトル算出部133は、予め複数の固形製剤のサンプルを用いて、第1主成分(z1=a11・x1+a21・x2+…+az1・xn)から第n主成分(zn=an1・x1+an1・x2+…+an1・xn)までの主成分を求める。このとき、第1主成分を列データ(a11,a21,…,az1)によって表すことができる。同様に、他の主成分についても列データによって表すことができる。この各列データをローディングベクトルで用いる列データとして、ローディングベクトルを算出する。なお、有効な主成分分析の結果を得ることができるのであれば、ローディングベクトル算出部133は、第1主成分だけを算出しても良いし、第2主成分までだけ算出しても良い。ローディングベクトル記憶部134は、ローディングベクトル算出部133によって算出されたローディングベクトルを記憶する。
【0068】
主成分得点算出部135は、前処理部132から得られるn個の波長毎に関する光の強度(x1,x2,…,xn)について、ローディングベクトル記憶部134に記憶されているローディングベクトルを用いて、第1?第nの主成分に関する主成分得点を算出する。
【0069】
入力部137は、ユーザの操作に応じて、判定範囲設定部136に判定範囲を指示する。判定範囲設定部136は、入力部137からの指示に応じて、予め複数のサンプルに関して得られた主成分得点に基づいて、良否判定の基準(たとえば、PCA(Principal Component Analysis)図における一定の範囲に属するかといった基準。以下、判定範囲という)を設定している。判定範囲記憶部138は、判定範囲設定部136によって設定された判定範囲を記憶する。
【0070】
入力部137は、ユーザの操作に応じて、被験薬を検査すべき列のタイミング及び偽薬を検査すべき列のタイミングを検査タイミング設定部139に入力する。検査タイミング設定部139は、入力部137からの指示に応じて、被験薬を検査すべき列のタイミング及び偽薬を検査すべき列のタイミングを設定する。具体的には、固形製剤包装装置100は樹脂フィルムを間欠的に搬送しているので、検査タイミング設定部139は、どのような搬送タイミングで、被験薬又は偽薬の検査を行うかを設定しておく。検査タイミング発生部140は、検査タイミング設定部139に設定されているタイミングに従って、認識判定部141に対して、現在の検査対象が何であるかを示す信号を入力する。
【0071】
認識判定部141は、検査タイミング発生部140から入力される検査タイミング毎に、主成分得点算出部135が算出した検査対象の固形製剤の主成分得点を入手する。認識判定部141は、検査タイミング発生部140から入力される信号に基づいて、現在の検査タイミングにおいて被験薬であることを検査すべきか偽薬であることを検査すべきかを認識する。認識判定部141は、主成分得点算出部135から得られる主成分得点が、判定範囲記憶部138に記憶されている判定範囲(被験薬に関する判定範囲又は偽薬に関する判定範囲)に属するか否かを判定する。これにより、認識判定部141は、検査対象の列が被験薬だけであるか、偽薬だけであるかを判定する。認識判定部141は、判定結果を出力部142に入力する。
【0072】
出力部142は、認識判定部141から入力される判定結果を外部に出力する。出力部142が出力した情報は、不良品であったPTPシートの廃棄などの制御に利用される。当該情報の利用方法は、本発明を限定するものではない。」

f 「図1



g 「図2



h 「図3



i 「図4



j 「図5



k 「図7



(イ) 引用文献1の記載より認定できる事項

a 上記(ア)bの記載、及び、上記(ア)f、g及びkに示した図1、図2及び図7の記載を参照すると、検査装置が、加熱部と、ポケット成形部と、固形製剤投入部と、圧着部とを備える固形製剤包装装置に用いられるものであり、検査装置が、固形製剤が複数列に亘って搬送される包装工程において用いられ、上記(ア)cに摘記した段落【0058】の記載、及び、上記(ア)kに示した図7の記載を参照すると、検査装置が、一列全てが被験薬で、かつ、一列全てが偽薬である場合に、適切に配列されているか否かを検査するために用いられるものである点が見て取れる。

b 上記(ア)dに摘記した段落【0063】及び【0064】の記載を参照すると、近赤外線照射部9a,9bは、鉛直方向に対して上側から、固形製剤5に対して、近赤外線を照射し、近赤外線の反射光は、分光器11によって分光され、分光器11によって波長毎に分光された反射光は、近赤外線カメラ12に投射され、近赤外線カメラ12で撮影された画像のデータは、検査部13に送信される点が理解できる。

c 上記(ア)dに示した段落【0064】の記載及び上記(ア)gに示した図2の記載を参照すると、各固形錠剤ごとに波長毎の光の強度のデータが得られていることから、そのデータの取得のためには、各列において近赤外線カメラ12によって少なくとも一回の撮影が行われるとともに、各固形錠剤ごとのデータを得るために、各列における各固形錠剤が並ぶ方向に、固形錠剤1個(錠)あたり少なくとも1つの撮影点が存在することは明らかである。

d 上記(ア)eに摘記した段落【0065】ないし【0072】の記載、及びiに示した図4の記載を参照すると、以下の事項が読み取れる。

(a)検査部13は、スペクトル取得部131と、前処理部132と、ローディングベクトル算出部133と、ローディングベクトル記憶部134と、主成分得点算出部135と、判定範囲設定部136と、入力部137と、判定範囲記憶部138と、検査タイミング設定部139と、検査タイミング発生部140と、認識判定部141(認識手段及び判定手段)と、出力部142とを含む点。
(b)スペクトル取得部131は、近赤外線カメラ12から送信されてくる画像データを受信し、位置及び波長毎の光の強度に関するデータを取得する点。
(c)ローディングベクトル算出部133は、前処理部132から得られた波長の強度に基づいて、ローディングベクトルを算出する点。
(d)ローディングベクトル記憶部134は、ローディングベクトル算出部133によって算出されたローディングベクトルを記憶する点。
(e)主成分得点算出部135は、ローディングベクトル記憶部134に記憶されているローディングベクトルを用いて、第1?第nの主成分に関する主成分得点を算出する点。
(f)入力部137は、ユーザの操作に応じて、判定範囲設定部136に判定範囲を指示する点。
(g)認識判定部141は、主成分得点算出部135から得られる主成分得点が、判定範囲(被験薬に関する判定範囲又は偽薬に関する判定範囲)に属するか否かを判定する点。

e 上記dの(a)ないし(g)より、検査部13は、「近赤外線カメラ12から送信されてくる画像データ」である「位置及び波長毎の光の強度に関するデータ」に基づいてローディングベクトルを算出し、判定範囲(被験薬に関する判定範囲又は偽薬に関する判定範囲)に属するか否かを判定していることから、検査部13が演算を行っていることは明らかである。
したがって、検査部13は、該近赤外線カメラから送信されてくる画像データを受信し、位置及び波長毎の光の強度に関するデータを取得し、取得した位置及び波長毎の光の強度に関するデータに基づいて、演算を行うことにより、固形製剤が被験薬であるか偽薬であるかを判定するものである。

(ウ) 引用発明

上記(ア)aないしkに摘記した引用文献1の記載事項、及び、(イ)aないしeにおいて認定した事項を含む引用文献1全体の記載を総合すると、引用文献1には、

「加熱部と、ポケット成形部と、固形製剤投入部と、圧着部とを備える固形製剤包装装置に用いられる検査装置であって、
固形製剤包装装置により樹脂フィルムに形成されたポケットに固形製剤が投入され、固形製剤が投入された状態で、樹脂フィルムが搬送され、
該検査装置が、固形製剤が複数列に亘って搬送される包装工程において用いられ、
一列全てが被験薬で、かつ、一列全てが偽薬である場合に、適切に配列されているか否かを検査するためのものであり、
該検査装置は、近赤外線照射部と、光学レンズと、分光器と、近赤外線カメラと、検査部と、光源とを含み、
前記近赤外線照射部は、鉛直方向に対して上側から、固形製剤に対して、近赤外線を照射し、近赤外線の反射光は、分光器によって、波長毎に分光され、分光器によって分光された反射光は、近赤外線カメラに投射され、近赤外線カメラで撮影された画像のデータは、検査部に送信され、
該検査部は、該近赤外線カメラから送信されてくる画像データを受信し、位置及び波長毎の光の強度に関するデータを取得し、取得した位置及び波長毎の光の強度に関するデータに基づいて、演算を行うことにより、固形製剤が被験薬であるか偽薬であるかを判定するものであり、
各列において近赤外線カメラによって少なくとも一回の撮影が行われるとともに、各列における固形錠剤が並ぶ方向に、固形錠剤1個(錠)あたり少なくとも1つの撮影点が存在し、各固形錠剤毎に波長毎の光の強度のデータを得る、
検査装置。」

の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

イ 引用文献2

(ア) 引用文献2の記載事項
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された、再公表特許第2005/038443号(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。

a 「【請求項1】
複数の対象物を搬送する搬送手段と、
該搬送手段によって搬送される前記複数の対象物に近赤外線を照射する照射手段と、
該照射手段によって近赤外線が照射される前記複数の対象物から反射される近赤外線の反射光を平面分光する平面分光器と、
該平面分光器にて平面分光された反射光を近赤外線カメラで電気信号に変換する撮像手段と、
該撮像手段にて得られる前記電気信号を解析して前記反射光のスペクトルデータを得て主成分分析手法を用いて前記複数の対象物の中から異種品を検出する解析手段と
を備えていることを特徴とする平面分光器を用いた異種品検出装置。
【請求項2】
前記解析手段は、
スペクトルデータを波長軸方向に平均化する波長軸平均化処理、
スペクトルデータをラグランジェの2次補間を用いて補間する補間処理、
スペクトルデータを空間軸方向に積算して対象物のエッジを検出して対象物の中心位置を検出する測定位置最適化処理、
前記測定位置最適化処理によって検出された対象物の中心位置の近傍の複数ポイントにおける各波長毎の平均値を求める空間軸平均化処理、
スペクトルデータを一次微分もしくは二次微分する微分処理、
予め取得したローディングベクトルデータと、以上の処理によって得られたスペクトルデータとを演算することによって主成分得点を算出する主成分得点算出処理、及び、
算出された前記主成分得点に基づいて異種品もしくは同種品の判定を行う判定処理
を行うように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の平面分光器を用いた異種品検出装置。」

b 「【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品(錠剤、カプセル剤等)、ゴム栓等のように、ある一つの固定した形を持つ検査対象物(以下、「対象物」という。)に、同じ形の異種品が混入していないかどうかを検査する技術に関し、特には、搬送される対象物をインラインで全数検査する装置に関するものである。
なお、錠剤とは、素錠(または裸錠)、糖衣錠、フィルムコート錠(腸溶錠等)を含むものであり、カプセル剤としては、硬カプセル剤、軟カプセル剤を含むものである。」

c 「【0027】
次に、前記吸着ドラム式の搬送手段に代えて、コンベア式の搬送手段を用いた場合の構成を図14に示して説明する。
・・・(略)・・・
13はコンベア式の搬送手段であり、対象物収納部が形成された樹脂シート(PTPシート)の前記対象物収納部に収納されて多列搬送される例えば錠剤等の対象物Tを、送り出しロールから受け取りロールへ搬送するように構成されている。図15の正面図に示したように、前記PTPシートによって、搬送方向に直角な方向に複数の前記対象物Tが配列された状態で多列搬送されるように構成されている。
【0028】
なお、6は光量補正板であり、前記ライトガイド4によって近赤外線が照射される位置であって、且つ、前記近赤外線カメラ3の視野内に、前記ライトガイド4と同様に固定されている。
7は、バタツキ防止板であり、前記ライトガイド4によって近赤外線が照射される位置に、前記ライトガイド4や光量補正板6等と同様に固定されている。
・・・(略)・・・」

d 「【0030】
前記コンピュータ5における解析手段としてのアルゴリズムは以下の処理を含んでいる。
1)前記スペクトルデータを平均化および標準化する前処理、
2)前記スペクトルデータを波長軸方向に対して移動平均する波長軸平均化処理、
3)前記スペクトルデータをラグランジェの2次補間を用いて補間する補間処理、
4)前記スペクトルデータを空間軸方向に積算して対象物のエッジを検出して対象物の中心位置を検出する測定位置最適化処理、
5)前記測定位置最適化処理によって検出された対象物の中心位置の近傍の複数ポイントにおける各波長毎の平均値を求める空間軸平均化処理、
6)前記スペクトルデータを一次微分もしくは二次微分する微分処理、
7)前記スペクトルデータを平滑化し、MSC手法によって補正する処理、
8)予め取得したローディングベクトルデータと、以上の処理によって得られたスペクトルデータとを演算することによって主成分得点を算出する主成分得点算出処理、
9)算出された主成分得点に基づいて異種品もしくは同種品の判定を行う判定処理、
10)測定位置最適化処理を利用して欠品の検出を行う欠品検出処理、
11)条件分岐処理。
なお、処理順番は上記順番に限定されるものではない。
【0031】
次に、前記各処理の計算手法の詳細を説明する。
1)前処理(平均化、標準化)
前記スペクトルデータに以下のような平均化、比率標準化、差分標準化の少なくとも何れかの処理をかける。(後述する空間軸平均化処理の後でもよい。)
平均化と差分標準化を併用することが効果的である。
平均化:スペクトルデータの平均値を各波長のデータより引いて正負のデータに変換する処理。
比率標準化:スペクトルデータを所定値との比に基づいて標準化する処理、具体的には、スペクトルデータの標準偏差で各波長のデータを割って標準化して、各スペクトルデータ間のバラツキの影響を除外する処理。
差分標準化:スペクトルデータを所定値との差分に基づいて標準化する処理、具体的には、スペクトルデータの標準偏差と各波長のデータとの差分を求めて標準化して、各スペクトルデータ間のバラツキの影響を除外する処理。
2)波長軸平均化処理
縦軸に反射率、横軸に波長を示したグラフの波長軸方向に対し、3?20点の移動平均をとり、波形に乗った微小なノイズの影響を減少させる。
3)ラグランジェ補間処理
約4 nm間隔で得られたスペクトルデータをラグランジェの2次以上の補間を用いて2 nm間隔のより緻密なデータに補間する。
4)測定位置最適化処理
空間軸方向のポイント毎に反射率を積算して積算値を計算し、縦軸に積算値、横軸に空間軸ポイント数を示したプロファイル(図4の(A)参照)に対し一次微分をかけ、その極大値と極小値を対象物の縁(即ち「エッジ」)として認識させ(図4の(B)参照)、両エッジの中点から中心位置と半径とを得る。(図4の(C)参照)
【0032】
5)空間軸平均化処理
前記4)の測定位置最適化処理により求めた対象物の中心より対象物のエッジまでの間の任意のポイント数分において各波長毎の反射率の平均値を求める。この処理によって、対象物の一点のみの反射光ではなく、対象物の複数個所における反射光の平均値に基づいたスペクトルデータを得ることができる。」

e 「図3



f 「図4



g 「図14



h 「図15



(イ) 引用文献2の記載より認定できる事項

a 上記(ア)a、b、eの記載より、引用文献2には、錠剤等の固定した形を持つ検査対象物に対して、異種品の混入を検査する技術に関するものであり、搬送手段によって搬送される複数の検査対象物に対して近赤外線を照射し、前記複数の検査対象物から反射される反射光を平面分光器にて分光し近赤外線カメラにより電気信号に変換し、前記電気信号を解析して前記反射光のスペクトルデータを得、主成分分析手法を用いて異種品を検出する異種品検出装置が記載されていることが理解できる。

b 上記(ア)aに示す【請求項2】の「スペクトルデータを空間軸方向に積算して対象物のエッジを検出して対象物の中心位置を検出する測定位置最適化処理」の記載、上記(ア)dに示す段落【0030】の「4)前記スペクトルデータを空間軸方向に積算して対象物のエッジを検出して対象物の中心位置を検出する測定位置最適化処理」の記載、段落【0031】の「4)測定位置最適化処理 空間軸方向のポイント毎に反射率を積算して積算値を計算し、縦軸に積算値、横軸に空間軸ポイント数を示したプロファイル(図4の(A)参照)に対し一次微分をかけ、その極大値と極小値を対象物の縁(即ち「エッジ」)として認識させ(図4の(B)参照)、両エッジの中点から中心位置と半径とを得る。(図4の(C)参照)」の記載、及び、上記(ア)fの図4の記載を参酌すると、引用文献2には、スペクトルデータを空間軸方向に積算して対象物のエッジを検出して対象物の中心位置を検出していることが記載されていることが理解できる。

c 上記(ア)aに示す【請求項2】の「前記測定位置最適化処理によって検出された対象物の中心位置の近傍の複数ポイントにおける各波長毎の平均値を求める空間軸平均化処理」の記載、上記(ア)dに示す段落【0030】の「5)前記測定位置最適化処理によって検出された対象物の中心位置の近傍の複数ポイントにおける各波長毎の平均値を求める空間軸平均化処理」の記載、段落【0032】の「5)空間軸平均化処理 前記4)の測定位置最適化処理により求めた対象物の中心より対象物のエッジまでの間の任意のポイント数分において各波長毎の反射率の平均値を求める。この処理によって、対象物の一点のみの反射光ではなく、対象物の複数個所における反射光の平均値に基づいたスペクトルデータを得ることができる。」の記載を参酌すると、引用文献2には、対象物の中心位置の近傍の複数ポイントにおける各波長毎の平均値を求めることにより、対象物の複数個所における反射光の平均値に基づいたスペクトルデータを得るものであることが記載されていることが理解できる。

d 上記(ア)cに示す段落【0027】、【0028】の記載、及び、上記(ア)gに示す図14の記載、上記(ア)hに示す図15の記載を参酌すると、引用文献2には、錠剤等を樹脂シート(PTPシート)で形成された対象物収納部に収納された状態で搬送される点が記載されている。

e 上記aないしdより、引用文献2には、以下の事項が記載されていると認められる。

「錠剤等の固定した形を持つ検査対象物に対して、異種品の混入を検査する技術であって、樹脂シート(PTPシート)で形成された対象物収納部に収納された状態で搬送手段によって搬送される複数の検査対象物に対して近赤外線を照射し、前記複数の検査対象物から反射される反射光を平面分光器にて分光し近赤外線カメラにより電気信号に変換し、前記電気信号を解析して前記反射光のスペクトルデータを得るものであり、前記スペクトルデータを空間軸方向に積算して対象物のエッジを検出して対象物の中心位置を検出し、対象物の中心位置の近傍の複数ポイントにおける各波長毎の平均値を求めることにより、対象物の複数個所における反射光の平均値に基づいたスペクトルデータを得、主成分分析手法を用いて異種品を検出する技術。」

(3)本願補正発明と引用発明との対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。

ア 本願補正発明のA)の特定事項について
(ア) 引用発明の「固形錠剤」が「樹脂フィルムに形成されたポケットに」「投入された状態」で「複数列に亘って搬送される包装工程」は、本願補正発明の「複数の錠剤がそれぞれのポケットに収容されて並ぶ列が、複数列に亘って搬送され」る「錠剤の包装工程」に相当する。
(イ) 引用発明の「一列全てが被験薬で、かつ、一列全てが偽薬である場合」は、本願補正発明の「一列ごとに、或いはポケット毎に、異なる薬剤成分の量を含有する錠剤」とすることに相当する。
(ウ) 引用発明の「固形製剤が複数列に亘って搬送される包装工程において」「固形製剤が被験薬であるか偽薬であるかを判定する」ことは、本願補正発明の「錠剤の包装工程において、錠剤の種類を判別する」ことに相当する。
(エ) 引用発明の「検査装置」は、本願補正発明の「薬剤検査装置」に相当する。
(オ) 以上のことから、引用発明の「固形錠剤」が「樹脂フィルムに形成されたポケットに」「投入された状態」で「複数列に亘って搬送される包装工程において」、「一列全てが被験薬で、かつ、一列全てが偽薬である場合」に「固形製剤が被験薬であるか偽薬であるかを判定する」「検査装置」は、本願補正発明の「複数の錠剤がそれぞれのポケットに収容されて並ぶ列が、複数列に亘って搬送され、一列ごとに、或いはポケット毎に、異なる薬剤成分の量を含有する錠剤の包装工程において、錠剤の種類を判別する薬剤検査装置」に相当する。

イ 本願補正発明のB)の特定事項について
引用発明の「固形製剤に対して、」「近赤外線を照射」する「近赤外線照射部」は、本願補正発明の「前記錠剤に近赤外線を含む光線を照射する照射部」に相当する。

ウ 本願補正発明のC)の特定事項について
引用発明の「近赤外線の反射光」を「波長毎に分光」する「分光器」は、本願補正発明の「前記錠剤からの反射光が入射される分光器」に相当する。

エ 本願補正発明のD)の特定事項について
引用発明の「分光器によって、波長毎に分光された反射光」が「投射され」、「画像のデータ」を「撮影」する「近赤外線カメラ」は、本願補正発明の「前記分光器によって分光されたスペクトルを撮像し、撮像データを生成する近赤外線撮像部」に相当する。

オ 本願補正発明のE)の特定事項について
引用発明の「近赤外線カメラから送信されてくる画像データを受信」し「取得した」「位置及び波長毎の光の強度に関するデータに基づいて」「演算を行うことにより」「固形製剤が被験薬であるか偽薬であるかを判定する」「検査部」は、本願補正発明の「前記撮像データを処理し、錠剤の種類を判別する演算を行う制御部」に相当する。

カ 本願補正発明のF)の特定事項について
(ア) 引用発明において「撮影点」は、画素の位置を特定することによって決められることは明らかであるから、引用発明の「各列における固形錠剤が並ぶ方向に、固形錠剤1個(錠)あたり少なくとも1つの撮影点が存在」することは、本願補正発明の「前記列において錠剤が並ぶ方向の所定長さに割り付けられた所定数の画素」が存在することに相当する。
(イ) 引用発明の「近赤外線カメラによって」「波長毎の光の強度のデータを得る」ことは、本願補正発明の「前記近赤外線撮像部」が「各スペクトルを撮像」することに相当する。
(ウ) 引用発明の「近赤外線カメラ」が、複数の「撮影点」の「波長毎の光の強度のデータ」の取得を一回の撮影で行っていることは、当業者にとって明らかである。
(エ) よって、引用発明の「近赤外線カメラによって」「各列における固形錠剤が並ぶ方向に、固形錠剤の個数以上の撮影点」の「波長毎の光の強度のデータを得る」ことは、本願補正発明の「前記近赤外線撮像部は、一回の撮像で、前記列において錠剤が並ぶ方向の所定長さに割り付けられた所定数の画素における各スペクトルを撮像」することに相当する。


キ 本願補正発明のG)の特定事項について
引用発明の「各列において近赤外線カメラによって少なくとも一回の撮影が行われる」ことは、本願補正発明の「制御部」が「前記近赤外線撮像部が、前記一列に含まれる錠剤に対して、少なくとも一回の撮像を行うように制御」することに相当する。

ク 本願補正発明のH)ないしJ)の特定事項について
上記カ(ア)で検討したとおり、引用発明における「撮影点」は、本願補正発明の「画素」に対応する。

ケ 以上のことから、本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「複数の錠剤がそれぞれのポケットに収容されて並ぶ列が、複数列に亘って搬送され、一列ごとに、或いはポケット毎に、異なる薬剤成分の量を含有する錠剤の包装工程において、錠剤の種類を判別する薬剤検査装置であって、
前記錠剤に近赤外線を含む光線を照射する照射部と、
前記錠剤からの反射光が入射される分光器と、
前記分光器によって分光されたスペクトルを撮像し、撮像データを生成する近赤外線撮像部と、
前記撮像データを処理し、錠剤の種類を判別する演算を行う制御部と、
を備え、
前記近赤外線撮像部は、一回の撮像で、前記列において錠剤が並ぶ方向の所定長さに割り付けられた所定数の画素における各スペクトルを撮像し、
前記制御部が、
前記近赤外線撮像部が、前記一列に含まれる錠剤に対して、少なくとも一回の撮像を行うように制御する、
薬剤検査装置。」

<相違点>
錠剤の種類を判別するに際して、本願補正発明は、各錠剤に対して割り当てられた複数の画素から、1つの錠剤に対して複数のスペクトルを取得し、ポケット毎に、以下の(1)又は(2)の処理によって、錠剤一錠あたりの平均スペクトルデータを算出し、
(1)前記各錠剤上に割り付けられた複数の画素を予め特定し、当該特定された複数の画素のスペクトルを平均化する、
(2)前記各画素における各スペクトルに基づいて、前記各錠剤上に割り付けられた複数の画素を特定し、当該特定された複数の画素のスペクトルを平均化する、
前記平均スペクトルデータに基づいて、錠剤の種類を判別するのに対して、引用発明は、「撮影点」が各錠剤に複数あるか否か不明であり、さらに、複数の「撮影点」のデータを平均化処理することも特定されていない点。

(4)当審の判断

ア 相違点についての検討

相違点に係る構成と、上記(2)イ(イ)eに記載された引用文献2に記載された事項とを以下に対比する。

(ア) 引用文献2に記載された事項は、「反射光のスペクトルデータ」を得るにあたって「平面分光器にて分光し近赤外線カメラにより電気信号に変換し、前記電気信号を解析して前記反射光のスペクトルデータを得」ていることから、「ポイント」単位でスペクトルデータを得ていることは明らかである。また、引用文献2に記載された事項の「ポイント」は、本願補正発明の「画素」に相当するものといえる。そして、引用文献2に記載された事項の「反射光のスペクトルデータを空間軸方向に積算して対象物のエッジを検出して対象物の中心位置を検出し、対象物の中心位置の近傍の複数ポイント」を特定することは、相違点に係る構成の「各画素における各スペクトルに基づいて、」「各錠剤上に割り付けられた複数の画素を特定」することに相当するといえる。

(イ) 引用文献2に記載された事項の「対象物の中心位置の近傍の複数ポイントにおける各波長毎の平均値を求めることにより、対象物の複数個所における反射光の平均値に基づいたスペクトルデータを得、主成分分析手法を用いて異種品を検出する」ことは、相違点に係る構成の「各錠剤に対して割り当てられた複数の画素から、1つの錠剤に対して複数のスペクトルを取得し、」「特定された複数の画素のスペクトルを平均化する処理によって、錠剤一錠あたりの平均スペクトルデータを算出し、前記平均スペクトルデータに基づいて、錠剤の種類を判別する」ことに相当する。

(ウ) 引用文献2に記載された事項の「対象物収納部」は、相違点に係る構成の「ポケット」に相当し、引用文献2に記載された事項の「対象物の中心位置の近傍の複数ポイントにおける各波長毎の平均値を求めること」が、「対象物収納部」毎に行われることは明らかである。

(エ) 以上のことから、引用文献2に記載された事項は、本願補正発明の相違点に係る「各錠剤に対して割り当てられた複数の画素から、1つの錠剤に対して複数のスペクトルを取得し、」「ポケット毎に、」「(2)前記各画素における各スペクトルに基づいて、前記各錠剤上に割り付けられた複数の画素を特定し、当該特定された複数の画素のスペクトルを平均化」する「処理によって、錠剤一錠あたりの平均スペクトルデータを算出し、前記平均スペクトルデータに基づいて、錠剤の種類を判別する」構成を備えており、本願補正発明の相違点における「以下の(1)又は(2)の処理」とされた、「(2)」によって特定される構成をすべて備えていると認められる。

イ 引用文献2に記載された事項を引用発明に適用する動機付けについて

引用発明と引用文献2に記載された事項は、近赤外線の反射光のスペクトル分析を利用した錠剤等の搬送経路上における検査装置という同一の技術分野に属するものである。
そして、誤差が含まれることによるリスクを低減するために、対象物の一点のみの反射光のスペクトルデータではなく、複数個所における反射光の平均値に基づくスペクトルデータを採用することは、検査結果をより信頼性の高いものとする検査装置における一般的な目的において、当業者であれば容易に想到し得ることであり、引用発明に、引用文献2に記載された事項を適用し、本願補正発明の相違点に係る構成を成すことには十分な動機が存在すると認められる。

ウ 本願補正発明の奏する作用効果

本願補正発明によってもたらされる効果は、引用文献1に記載された事項、及び、引用文献2に記載された事項から、当業者が予測し得る程度のものである。

(5)審判請求書における審判請求人の主張への反論

審判請求人は、審判請求書において、「引用文献3(当審注:本審決における引用文献2に対応する。)では、対象物の複数個所における反射光の平均値に基づいたスペクトルデータを得ることは開示されている。しかしながら、その前処理として、測定位置最適化処理を行うために、対象物のエッジを検出している。したがって、引用文献3では、エッジ検出が可能な搬送幅方向に連続的なスペクトルデータを取得しており、本願請求項1に係る発明のような、一つの錠剤に割り当てられた複数の画素それぞれからスペクトルデータを得る、すなわち、画素単位でスペクトルデータを得るようなものは前提にはなっていない。よって、引用文献3では、錠剤一錠あたりの平均スペクトルデータの算出を、『(1)前記各錠剤上に割り付けられた複数の画素を予め特定し、当該特定された複数の画素のスペクトルを平均化する』又は『(2)前記各画素における各スペクトルに基づいて、前記各錠剤上に割り付けられた複数の画素を特定し、当該特定された複数の画素のスペクトルを平均化する』のいずれかの処理で行うという上記特徴を開示していない。」と主張している。
上記の主張において、「エッジ検出が可能な搬送幅方向に連続的なスペクトルデータ」が何であるのか不明であるが、引用文献2に記載された事項は、複数の検査対象物から反射される反射光を平面分光器にて分光し近赤外線カメラにより電気信号に変換し、前記電気信号を解析して前記反射光のスペクトルデータを得るものであるから、搬送幅方向において、「ポイント」単位でスペクトルデータを得ていることは明らかであり、請求人の上記主張は採用できない。

また、審判請求人は「本願請求項1に係る発明が、上記特徴のように平均スペクトルデータを取得しているのは、『データの容量を小さくすることができ、錠剤の判別を迅速に行うことができる。』という作用効果を得るためである。これに対して、引用文献3では、高い分解能で異種品を検出可能にすることを目的としているに過ぎず(段落0006等)、本願請求項1に係る発明のような技術的思想は開示も示唆もなされていない。そのため、本願請求項1に係る発明の上記特徴は、引用文献1?3のいずれを主引用発明と採用したとしても、当業者が通常の創作能力を発揮して、技術の具体的適用に伴う設計変更を行うことで、想到し得るものではない。」と主張している。
しかしながら、「平均スペクトルデータ」を取得することにより「データの容量を小さくする」ためには、平均値を求めた後、平均値を求めるために用いた各点のデータを「不要なデータ」としてすべて削除することにより初めて全体のデータの容量が小さくなると認められるが、本願明細書には、その点については何ら記載されていない。
そして、仮に、単に平均値を採用することによって「データの容量を小さくする」ことが見込まれるのであれば、引用文献2に記載された事項により、同様の作用効果が得られると認められ、上記(4)ウでの判断を左右するものではない。

(6)小括

よって、本願補正発明は、引用発明、及び、引用文献2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明

平成29年5月2日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成28年7月13日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1の(補正前)に記載のとおりものである。

2 引用文献とそれに記載された事項

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、引用文献2、及び、その記載事項は、上記第2[理由]2(2)ア及びイに記載したとおりである。

3 本願発明と引用発明の対比と当審の判断

上記第2[理由]1に記載したとおり、本願補正発明は、本願発明の「ポケット毎に、」「錠剤一錠あたりの平均スペクトルデータを算出」するための処理が、「(1)前記各錠剤上に割り付けられた複数の画素を予め特定し、当該特定された複数の画素のスペクトルを平均化する」「処理」又は「(2)前記各画素における各スペクトルに基づいて、前記各錠剤上に割り付けられた複数の画素を特定し、当該特定された複数の画素のスペクトルを平均化する」「処理」であることの限定を行ったものであるから、本願発明は、本願補正発明から上記の限定事項を省いた発明といえる。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2[理由]2(3)及び(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-03-06 
結審通知日 2018-03-13 
審決日 2018-03-27 
出願番号 特願2013-522917(P2013-522917)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01N)
P 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森口 正治  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 信田 昌男
▲高▼橋 祐介
発明の名称 薬剤検査装置及び薬剤検査方法  
代理人 山下 未知子  
代理人 山田 威一郎  
代理人 立花 顕治  
代理人 桝田 剛  
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