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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1340002
審判番号 不服2017-1352  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-31 
確定日 2018-05-09 
事件の表示 特願2013-533848「ユニバーサルキャップ」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 4月19日国際公開、WO2012/050643、平成25年10月28日国内公表、特表2013-539707〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年(平成23年)6月20日(パリ条約による優先権主張 2010年10月14日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成27年3月25日付けで拒絶理由が通知され、同年6月29日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月25日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成28年4月12日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月28日付けで補正の却下の決定がなされ、同日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされたところ、平成29年1月31日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成29年1月31日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の結論]
平成29年1月31日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線は、請求人が付与したものであり、補正箇所を示す。以下、本件補正後の請求項1に記載された発明を「本件補正発明」という。)。

「 【請求項1】
キャップの内面上のネジ山と、
少なくとも1本のチューブが挿通可能な少なくとも1つの開口部を備える前記キャップの上端部と、
前記キャップと別体で、複数の表面上で封止できる前記キャップの内側のフレキシブルなライナーと、を備え、
前記ライナーは、前記チューブが挿通可能な少なくとも1つのライナー側開口部を有するとともに、前記上端部の内面から前記キャップの側部の内面側で前記ネジ山の上端に近接するまで延び、
前記キャップの上端部の前記内面と、この内面に対向する前記ライナーの天面側の部分との間には、間隙が形成されている、
キャップ。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成27年6月29日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「 【請求項1】
キャップの内面上のネジ山と、
少なくとも1本のチューブが挿通可能な少なくとも1つの開口部を備える前記キャップの上端部と、
複数の表面上で封止できる前記キャップの内側のライナーと、を備え、
前記ライナーは、前記チューブが挿通可能な少なくとも1つのライナー側開口部を有するとともに、前記上端部の内面から前記キャップの側部の内面側へ延び、
前記キャップの上端部の前記内面と、この内面に対向する前記ライナーの部分との間には、間隙が形成されている、
キャップ。」

2 補正の適否
本件補正は、補正前に請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ライナー」及び「間隙」の位置について、上記のとおり限定を付加するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものであり、以下のとおり、当審にて分節しA)?E)の見出しを付けた。

「 【請求項1】
A)キャップの内面上のネジ山と、
B)少なくとも1本のチューブが挿通可能な少なくとも1つの開口部を備える前記キャップの上端部と、
C)前記キャップと別体で、複数の表面上で封止できる前記キャップの内側のフレキシブルなライナーと、を備え、
D)前記ライナーは、前記チューブが挿通可能な少なくとも1つのライナー側開口部を有するとともに、前記上端部の内面から前記キャップの側部の内面側で前記ネジ山の上端に近接するまで延び、
E)前記キャップの上端部の前記内面と、この内面に対向する前記ライナーの天面側の部分との間には、間隙が形成されている、
F)キャップ。」

(2)引用例の記載事項
ア 引用文献1
(ア)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献1(特開平2-41133号公報)には、以下の記載がある(下線は、当審で付した。以下同様。)。

(引1a)「(産業上の利用分野)
本発明は内視鏡のスコープ先端の端面に露出される対物レンズ,ライトガイドなどの光学系部材の表面を洗浄するための内視鏡用洗浄液の作成装置および作成用容器に関し、さらに詳しくは、界面活性剤などの薬剤を原水と混合して内視鏡用洗浄液を作成するための装置に関する。」(第1頁右下欄4-10行目)

(引1b)「(実施例)
以下本発明の実施例について、第2図ないし第4図を参照にしながら説明する。
本発明に係る内視鏡用洗浄液作成装置の一実施例を示す第2図において、この内視鏡用洗浄液作成装置は大まかに、内視鏡用洗浄液を貯蔵するための送水タンク11と、この送水タンク11の全体の重量を測定するための送水タンク重量センサ12と、界面活性剤13が貯蔵される界面活性剤タンク14と、この界面活性剤タンク14の全体の重量を測定するための界面活性剤タンク重量センサ15と、界面活性剤タンク14内の界面活性剤13を薬剤輸送管16を介して送水タンク11へ輸送するポンプ17と、このポンプ17を駆動制御する制御部18とからなる。なお、これらは内視鏡装置本体内の所定位置に配設されるものである。
前記送水タンク11は、こぼれ止め21,側部開口22,ネジ切り23aなどを有するボトル24と、内側に前記ネジ切り23aに噛合するネジ切り23bを有するとともにパッキン26が施されたキャップ27とからなる。このキャップ27上面に設けられた2つの開口からは、薬剤輸送管16およびスコープ送水管28が内部に挿入されている。これらの管16,28はそれぞれ、ポンプ17を介して界面活性剤タンク14へ、また図示しない内視鏡スコープの先端部まで連通されているものである。
前記界面活性剤タンク14は、ショ糖脂肪酸エステルなどの界面活性剤を貯蔵するためのタンクで、ボトル31とキャップ32からなり、キャップ32に設けられた開口から薬剤注入管16が挿入されている。
また、前記送水タンク重量センサ12および界面活性剤タンク重量センサ15は、加えられる重量に応じた信号を制御部18に送出する。なお、送水タンク11に所定量の注水がなされていること、および界面活性剤タンク14に所定量以上の界面活性剤13が存在することを検出できるものであれば、重量測定に限らず、水位を検出するセンサなどを用いたりしてもよい。」(第2頁右下欄9行目-第3頁右上欄9行目)

(引1c)第2図は、以下のようなものである。


第2図から、パッキン26は、ボトル24の外周面及び上端面の2つの面でボトルと接触して封止するものであること、パッキン26は、キャップ27の上端部の内面から側部の内面側でネジ切り23bの上端に近接するまで延びていること、及び、薬剤輸送管16およびスコープ送水管28がパッキン26を貫通していることが読み取れる。


(イ)引用文献1に記載された発明
上記(引1b)-(引1c)の下線部の事項を整理すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。

「内側にネジ切り23bを有するとともにパッキン26が施されたキャップ27であって(引1b)、
このキャップ27上面に設けられた2つの開口からは、薬剤輸送管16およびスコープ送水管28が内部に挿入されており(引1b)、
パッキン26は、ボトル24の外周面及び上端面の2つの面でボトルと接触して封止し(引1c)、
パッキン26は、キャップ27の上端部の内面から側部の内面側でネジ切り23bの上端に近接するまで延びており、薬剤輸送管16およびスコープ送水管28がパッキン26を貫通している(引1c)、
キャップ27」

イ 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用文献3として引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献2(特開2008-137710号公報)には、以下の記載がある。

(引2a)「【技術分野】
【0001】
本発明は容器のキャップとこれに用いるパッキンに関し、詳しくは、ペットボトルで代表されるプラスチック製の容器に広く利用されているようなピルファープルーフ機能を有した合成樹脂製の容器のキャップとこれに用いるパッキンに関するものである。」

(引2b)「【0013】
本発明の容器のキャップは、また、天板とこの天板の外周に筒状に連続し内周に容器の口の外周に螺子嵌合する雌ねじを持つ胴部とを有したキャップ本体と、このキャップ本体の胴部にキャップ本体の開栓に伴い切り離しを図る部分接続部で繋がるピルファープルーフバンドと、キャップ本体の天板の内側に配した別体のパッキンとを備え、パッキンは、それが形成している内天板から下方に延びて容器の口の内周に密嵌合する内環状壁および容器の口の外周における少なくとも肩部に対して少なくとも対向する外環状壁を有し、パッキンの容器の口との対向環状域の外面側に、前記外環状壁の外回りから前記内環状壁側へ径方向に延びた外面側からの肉抜き部を周方向に配設したことを他の特徴としている。
・・・
【0017】
キャップ本体の天板とパッキンの内天板との間にはエアギャップが設けられている、さらなる構成では、
キャップ本体の開栓、閉栓に際して、パッキンが供回りするのを防止することができ、パッキンの外環状壁が容器の口の外周に粗面ないしはシボ加工面が圧接し、また平坦な内面が密着するタイプのものであっても、パッキンと容器の口との間の摩擦を軽減して双方間の密封性能に悪影響するようなことを防止することができ、特に開栓時に容器の口に吸着させられているパッキンに供回り力が及んで開栓抵抗や早期開封の原因になるようことを防止することができる。」

(引2c)「【0039】
図1に示す例について、さらに詳述する。キャップ本体1の天板5aとパッキン11の内天板5bとの間には粗面接触部や凹部による空隙などで形成するエアギャップ16を設けてある。これにより、キャップ本体1の開栓、閉栓に際して、パッキン11が供回りするのを防止することができ、図1に示す例のパッキン11の外環状壁9が容器2の口2aの外周に粗面ないしはシボ加工面21が圧接し、パッキン11と容器2の口2aとの間の摩擦を軽減して双方間の密封性能に悪影響するようなことを防止することができ、特に開栓時に容器2の口2aに吸着させられているパッキン11に供回り力が及んで開栓抵抗や早期開封の原因になるようことを防止することができる。」

(引2d)図1は、以下のようなものである。


ウ 引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用文献4として引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献3(特開2006-76575号公報)には、以下の記載がある。

(引3a)「【0003】
ところで、シートタイプのライナーにおいては、該ライナーが弾力性を有するためにボトル缶口金部と前記ライナーが強く密着しており、その間の摩擦抵抗が大きいため、キャップとともに前記ライナーを回転して開栓する場合に、開栓に必要なトルク(以下、開栓トルクと称す)が大きくなり、開栓操作が困難になる問題があった。
そこで、特許文献1では、前記ライナーを天板部内面に接合せず、ナール部分などで保持することにより、キャップを回転させる際に、前記ライナーをキャップとともに回転させずに開栓可能とすることで、開栓トルクの低減を図る方法が提案されている。
【特許文献1】特開2004-217295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のキャップにおいては、天板部内面とライナーとが接合されていないものの、これらの間の摩擦抵抗により該キャップと前記ライナーの相対移動ができず、該キャップを回転する際に前記ライナーを前記キャップとともに回転させる必要が生じ、開栓トルクを十分に低減できない場合があった。特に、市場においてキャップ付ボトル缶を40?70℃くらいに加熱して販売する場合などには、ボトル缶の内圧が高くなり、前記ライナーが前記天板部の内面に押し付けられるため、その摩擦抵抗はさらに増加し、開栓トルクが上昇して開栓が困難となる問題があった。この問題は、キャップ付ボトル缶に内容物を入れてレトルト処理を行った際にボトル缶の内圧が上昇し、これが十分低下しない状態で市場におかれた場合にも、同様に生じるものである。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、開栓トルクを低減させ、開栓が容易なキャップ材、キャップ及びキャップ付ボトル缶を提供することを目的とする。」

(引3b)「【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のキャップ材の第一の実施形態について説明する。
図1(a)、(b)に、本発明の第一の実施形態であるキャップ材を示す。キャップ材30は、キャップ本体31とキャップ本体31に装着されるライナー25とから構成されている。
キャップ本体31は、円板状の天板部10と、天板部10の周縁から略垂下してなる周壁部20を有する。周壁部20の上方には、凹部と凸部とを周方向に繰り返したナール部15が形成されている。
ライナー25は、エラストマーからなる第一層32と、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのプラスチック層からなる第二層33の二層で構成されている。
ライナー25は、プラスチック層からなる第二層33を天板部10の内面に対向する側として、天板部10内面に配置されている。ライナー25は天板部25内面に接合されず、ナール部15の内面側の凸部15aにて保持されている。
図2(a)、(b)に、天板部10の詳細図を示す。この天板部10には、その内面側から外側に向けて複数の凹所35が設けられている。この凹所35は、後述するように天板部10とライナー25との間の摩擦抵抗軽減手段を構成している。
【0019】
キャップ材30は、ボトル缶の口金部に被着されて使用される。すなわち、キャップ材30は、ボトル缶口金部に被せられ、キャッピング装置のネジ形成ローラーがキャップ材の周壁部に押し当てられた状態でボトル缶口金部の周囲を回転し、口金部の雄ネジ部に沿って転動することにより、キャップ材30の周壁部20に雌ネジを形成しつつ、ボトル缶の口金部に被着され、キャップとして使用される。
なお、以下の説明においては、キャップ材30をボトル缶に被着させ、キャップ材30の周壁部20に雌ネジ部を形成させたものをキャップという。
【0020】
キャップが被着されたボトル缶を開栓する際には、ボトル缶を一定位置に保持した状態で、当該キャップを回転させる。この回転により、ボトル缶口金部と係合しているピルファープルーフ部がブリッジ部にて分離され、キャップのピルファープルーフ部以外の部分は、口金部の雄ネジ部に沿って上方に移動し、これに伴い、ナール部15の内側面の凸部15aにて保持されているライナー25も上方に移動し、ライナー25と口金部が離間され、開栓される。
この開栓動作において、上記の構成のキャップは、凹所35ではライナー25と天板部10が接触しないため、凹所35が設けられていない従来のキャップと比較して、ライナー25と天板部10との実質的な接触面積が減少し、ライナー25と天板部10との間の摩擦抵抗が軽減され、前記キャップとライナー25との相対移動が可能となる。したがって、前記キャップを回転させる際に、前記キャップとともにライナー25を回転させることなく、キャップを回転させることが可能となり、開栓トルクが軽減され、ボトル缶の開栓が容易にできる。」

(引3c)図1は、以下のようなものである。


(3)引用発明との対比
ア A)、F)について
引用発明の「キャップ27」は、本件補正発明の「キャップ」に相当し、引用発明の「キャップ27」「内側に」ある「ネジ切り23b」は、本件補正発明の「キャップの内面上のネジ山」に相当する。

イ B)について
引用発明の「薬剤輸送管16およびスコープ送水管28」は、本件補正発明の「少なくとも1本のチューブ」に相当するから、引用発明の「薬剤輸送管16およびスコープ送水管28が内部に挿入されて」いる「2つの開口」が「設けられた」「このキャップ27上面」は、本件補正発明の「少なくとも1本のチューブが挿通可能な少なくとも1つの開口部を備える前記キャップの上端部」に相当する。

ウ C)について
引用発明の「パッキン26」と「キャップ27」とが、別の部材であることは明らかである。
また、引用発明の「パッキン26」は「キャップ27」「内側に」「施された」ものであるから、キャップの内張材、すなわち、本件補正発明における「ライナー」であるといえる。
また、引用発明の「ボトル24の外周面及び上端面の2つの面でボトルと接触して封止」している「パッキン26」は、本件補正発明における「複数の表面上で封止できる」ものであるといえる。
また、引用発明の「パッキン26」がある程度の弾力性を有していること、すなわち、本件補正発明における「フレキシブルな」ものであることは、明らかである。
したがって、引用発明の「キャップ27」「内側に」「施された」、「ボトル24の外周面及び上端面の2つの面でボトルと接触して封止」している「パッキン26」は、本件補正発明の「前記キャップと別体で、複数の表面上で封止できる前記キャップの内側のフレキシブルなライナー」に相当する。

エ D)について
引用発明の「パッキン26」は、「薬剤輸送管16およびスコープ送水管28がパッキン26を貫通している」ものであるから、「薬剤輸送管16およびスコープ送水管28」が挿通可能な開口を有することは、明らかである。
したがって、引用発明の「パッキン26は、キャップ27の上端部の内面から側部の内面側でネジ切り23bの上端に近接するまで延びており、薬剤輸送管16およびスコープ送水管28がパッキン26を貫通している」ことは、本件補正発明の「前記ライナーは、前記チューブが挿通可能な少なくとも1つのライナー側開口部を有するとともに、前記上端部の内面から前記キャップの側部の内面側で前記ネジ山の上端に近接するまで延び」ていることに相当する。

オ 上記ア-エから、引用発明は、本件補正発明に対して、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。

<一致点>
「キャップの内面上のネジ山と、
少なくとも1本のチューブが挿通可能な少なくとも1つの開口部を備える前記キャップの上端部と、
前記キャップと別体で、複数の表面上で封止できる前記キャップの内側のフレキシブルなライナーと、を備え、
前記ライナーは、前記チューブが挿通可能な少なくとも1つのライナー側開口部を有するとともに、前記上端部の内面から前記キャップの側部の内面側で前記ネジ山の上端に近接するまで延びている、
キャップ。」

<相違点>
本件補正発明は、「前記キャップの上端部の前記内面と、この内面に対向する前記ライナーの天面側の部分との間には、間隙が形成されている」のに対して、引用発明には、「間隙」に関する特定がない点。

(4)判断
ア 相違点について
引用文献2-3にみられるように、内面にパッキンが配置され、ねじ山に沿って回転させて開栓するキャップにおいて、開栓トルクを低減させるために、キャップ上端部の内面とパッキンの天面側の部分との間に間隙を形成して、パッキンとキャップとが供回りすることを防止することは、当業者にとって周知の技術的事項である。
引用発明も、内面にパッキンが配置され、ねじ山に沿って回転させて開栓するキャップであって、開栓トルクの低減という課題を有することは明らかである。
したがって、引用発明において、開栓トルクを低減させるために、上記周知の技術的事項を採用して、上記相違点に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到しうることである。

イ 本件補正発明の効果について
本件補正発明の効果は,引用発明,及び周知の技術的事項から当業者が予測しうる範囲内のものにすぎず、格別顕著なものではない。

ウ 小括
上記ア-イから,本件補正発明は,引用発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)むすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年1月31日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1-47に係る発明は、平成27年6月29日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-47に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 引用刊行物
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、3-4、その記載事項及び引用発明は、上記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。

3 判断
本願発明は、前記第2[理由]2で検討した本件補正発明から、「ライナー」に係る限定事項である「前記キャップと別体で」「フレキシブルな」ものであること及び前記キャップの側部の内面側「で前記ネジ山の上端に近接するまで」延びること、並びに「間隙」の位置に係る限定事項である「天面側」を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記理由2[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-11-22 
結審通知日 2017-11-28 
審決日 2017-12-11 
出願番号 特願2013-533848(P2013-533848)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 樋熊 政一  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 信田 昌男
松岡 智也
発明の名称 ユニバーサルキャップ  
代理人 藤田 和子  

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