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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02C
管理番号 1340012
審判番号 不服2017-7275  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-22 
確定日 2018-05-28 
事件の表示 特願2014-106965「メガネフレーム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月10日出願公開、特開2015-222352、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
平成26年 5月23日 出願
平成28年11月14日 拒絶理由通知(同年12月13日発送)
平成29年 1月16日 意見書、手続補正書
平成29年 1月26日 拒絶査定(同年2月21日発送)
平成29年 5月22日 審判請求書、手続補正書

第2 本願発明
本願の請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」という。)は、平成29年5月22日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
フロントフレームのリムにクッション材を介在してレンズを嵌めたメガネフレームにおいて、該クッション材はその断面を概略十字状として中片の上方に上片を突出すると共に下方には下片を突出し、上記リムには内周から外周に貫通した細いスリット溝を長手方向に設け、そしてレンズ外周には凹溝を形成し、上記クッション材の上片をリムに設けた上記スリット溝に嵌め、下片をレンズ外周に形成した凹溝に嵌入し、幅寸法をレンズ厚さ以上とした中片をリム内周とレンズ外周の間に介在し、正面からはリム内周とレンズ外周に介在する上記中片が露出し、リムに設けたスリット溝からは上片が見えるようにしたことを特徴とするメガネフレーム。
【請求項2】
上記リムをハーフリムとし、該ハーフリムに嵌ったレンズをハーフリムの両端に連結した水糸などの高張力糸にて保持した請求項1記載のメガネフレーム。」

第3 原査定の概要
原査定(平成29年1月26日付け拒絶査定)の拒絶の理由は、概略、以下のとおりである。

この出願の請求項1、2に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明及び周知技術(引用文献5参照)、引用文献2に記載された発明及び周知技術(引用文献5参照)、又は引用文献3に記載された発明及び周知技術(引用文献5参照)に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.実願昭54-33954号(実開昭55-133418号)のマイクロ フィルム
2.特開2000-241771号公報
3.特開2011-81191号公報
5.特開平10-206799号公報(周知技術を示す文献)

第4 当審の判断
1 引用文献の記載
(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1(実願昭54-33954号(実開昭55-133418号)のマイクロフィルム)には、以下の事項が記載されている(下線は当審にて付した。以下同じ。)。

ア 「リム1とレンズ2および該リムに嵌合固着しレンズを保持するプラスチックまたはゴムからなるレンズ保持部材3からなり、該レンズ保持部材3にレンズ端面を受けるツバ部6を設けたことを特徴とするレンズ保持構造。」(実用新案登録請求の範囲)

イ 「本考案は眼鏡フレーム、サングラスフレームに関し、レンズに歪を与えないためのレンズ保持構造を提供するものである。」(明細書第1頁第10行-第12行)

ウ 「第1図において、1はフレーム(図示せず)のリムに相当し、2はレンズ、3はレンズ保持部材である。リム1の内面には凹部が配設され該凹部にレンズ保持部材3の凸部4が嵌合固着している。またレンズ2の端面側にも凹部が配設されレンズ保持部材3の凸部5が嵌合しレンズを保持している。さらにレンズ保持部材3はリム1の内面とレンズ2の端面の間にツバ部6を有しており、リムにレンズが取付けられた状態で該ツバ部6においてレンズ端面を受けた状態でレンズ2を支えている。
レンズ保持部材3は軟かい弾力性に富んだプラスチック、例えばポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂あるいはゴムからなり、保持されたレンズは直接金属製のリムに接触せずに上記のプラスチックあるいはゴムに接触しているためリムへの取付による圧力に対してもレンズ保持部材が緩衝材となつて作用レンズに歪みを与えることを防止している。」(明細書第2頁第4行-第3頁第2行)




オ 上記アないしエ(特にアないしウ)によると、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「引用発明1」という。)。

「リム1とレンズ2および該リムに嵌合固着しレンズを保持する軟かい弾力性に富んだプラスチックまたはゴムからなり、緩衝材となるレンズ保持部材3からなり、該レンズ保持部材3にレンズ端面を受けるツバ部6を設けたレンズ保持構造を備える眼鏡フレームであって、リム1の内面には凹部が配設され該凹部にレンズ保持部材3の凸部4が嵌合固着し、レンズ2の端面側にも凹部が配設されレンズ保持部材3の凸部5が嵌合しレンズ2を保持し、レンズ保持部材3のツバ部6はリム1の内面とレンズ2の端面の間にある、眼鏡フレーム。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2(特開2000-241771号公報)には、以下の事項が記載されている。

ア 「【請求項1】 眼鏡レンズの上部をクッション材を介して覆う内壁面に溝が形成されたリムバーと、このリムバーの両端部に両端部が取付けられた該リムバーによって上部が覆われた眼鏡レンズの下部外周部に形成された係止溝に張着状態で係止されるバンドとを備えるナイロールフレームにおいて、前記バンドを超弾性の形状記憶合金で眼鏡レンズの張着に最適な伸縮性を有する0.2?0.5ミリメートルの極細のワイヤーであることを特徴とするナイロールフレーム。」

イ 「【0009】前記左右のリムバー3、3は図2および図5に示すように、内壁面に開口部8よりも内側が広幅となるほぼC字状の溝9が形成された金属材製のリムバー本体10と、このリムバー本体10の両端部寄りの部位にそれぞれ形成された前記バンド7の両端部を張着状態で取付けることができる2個の貫通孔11、11および11、11とで構成されている。
【0010】前記バンド7、7はニッケルチタン合金や銅系合金等で形成された超弾性の形状記憶合金で前記眼鏡レンズ6、6の張着に最適な伸縮性を有する0.2?0.5ミリメートルの極細のワイヤーで形成されている。
【0011】上記構成のナイロールフレーム1は左右のリムバー3、3の両端部寄りの部位の2個の貫通孔11、11および11、11にバンド7、7の両端部を図4に示すように挿入するとともに、内壁面に合成プラスチックのクッション材12、12を介して眼鏡レンズ6、6の上部を位置させた後、該眼鏡レンズ6、6の下部外周部に形成されている係止溝13、13内にバンド7、7をそれぞれ挿入し、該バンド7、7の一端部側を眼鏡レンズ6、6を左右のリムバー3、3に押し圧しながら引張り2個の貫通孔11、11および11、11にスライド挿入して、バンド7、7により左右の眼鏡レンズ6、6を左右のリムバー3、3に張着状態で固定する。」




エ 上記アないしウ(特にア)によると、引用文献2には、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「引用発明2」という。)。

「眼鏡レンズの上部をクッション材を介して覆う内壁面に溝が形成されたリムバーと、このリムバーの両端部に両端部が取付けられた該リムバーによって上部が覆われた眼鏡レンズの下部外周部に形成された係止溝に張着状態で係止されるバンドとを備えるナイロールフレーム。」

(3)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3(特開2011-81191号公報)には、以下の事項が記載されている。

ア 「【0015】
以下、本発明の眼鏡レンズ保持用バンドについて、図面に従って具体的に説明する。
【0016】
図1に示すように、本発明の眼鏡レンズ保持用バンド1aあるいは1bは、バンドの長さ方向に対する垂直断面の形状が、水平方向に細長い扁平部20と、この扁平部20から上下方向の少なくとも1方向に1つ以上突出した突起部30とからなっている。
【0017】
前記突起部30は、扁平部20の中間位置から上下垂直方向に突出した形状1bのほか、扁平部20の中間位置から上下垂直方向の1方向にのみ突出した形状1aに形成されている。
【0018】
また、レンズを保持するために突起部の数は1つ以上必要であるが、使用するレンズおよびリムの形態に応じて適宜選択できる。
【0019】
本発明の眼鏡レンズ保持用バンド1aにおいては、図1に示した突起部30の水平方向の幅w、突起部の垂直方向の高さh、扁平部の水平方向の幅L、扁平部の垂直方向の厚さDの各部寸法、特に突起部の水平方向の幅wおよび突起部の垂直方向の高さhを特定の範囲に制御することが重要な要件である。
【0020】
すなわち、突起部の垂直方向の高さhが0.3?1mm、突起部の垂直方向の高さhと水平方向の幅wが、0.4≦h/w≦2.5の関係を満たすことによりレンズ保持性と耐久性に優れた眼鏡レンズ保持用バンドを得ることができる。
【0021】
ここで、h/wが0.4より小さい場合には、眼鏡レンズ保持用バンドの剛性が低くなり、曲がり癖が付きやすくなるため装着作業性が悪化するばかりか、レンズ保持性が低下するため好ましくない。また、h/wが2.5を超える場合には、眼鏡レンズを保持するために設けられたバンド突起部を嵌合するレンズ外周側面の凹型の溝を深くする必要があり、眼鏡レンズ加工の難易度が上がり手間がかかることに加え、バンド突起部の強度が低下し耐久性に劣る傾向となる。したがって、h/wの値は0.4≦h/w≦2.5、更には0.8≦h/w2.2であることが好ましい。
【0022】
また、扁平部の水平方向の幅Lと垂直方向の厚さDとの関係において、L/Dの値をある範囲に既定することにより、眼鏡レンズ保持性と耐久性を一層向上することができる。すなわち、眼鏡レンズ保持用バンドは、扁平部が眼鏡レンズを支えることで優れた眼鏡レンズ保持性を示すため、L/Dの値が5より小さいと、つまり扁平部が厚いと、剛性が増し扁平部と眼鏡レンズ側面との密着性が低下する傾向となる。逆に、L/Dの値が60より大きいと、つまり扁平部が薄いと、扁平部が切れやすくなり耐久性に劣る傾向となる。また、扁平部の水平方向の幅Lが3mmを超えると、視野拡大の効果が小さくなるため不適であり、幅が1mmを下回る場合にはレンズ保持性が低下するため好ましくない。したがって、扁平部の水平方向の幅Lが1?3mm、かつL/Dの値は5≦L/D≦60、更には10≦L/D≦40であることが好ましい。
(略)
【0025】
本発明の眼鏡レンズ保持用バンドとは、図2、図3にそれぞれ示すようなハーフリム眼鏡2やリムレス眼鏡3におけるレンズ6を保持するためのバンド1a、1bであって、これら形態の眼鏡はレンズ外周側面に凹型の溝を彫り、この外周の凹溝にバンド1a、1bを嵌合し、バンド端部をリム4、山5a、5b、ヨロイ7の内部でネジ等を用いて押さえ、レンズを吊って固定している。
【0026】
ハーフリム眼鏡に本発明の眼鏡レンズ保持用バンドを使用してレンズを保持した状態の一例を示すレンズ部断面構造の概略図が図4である。本発明のレンズ保持用バンド1aの突起部をレンズ外周側面の凹溝11およびリム凹溝10に嵌合することでレンズ6を保持している。
【0027】
また、図5はリムレス眼鏡に本発明の眼鏡レンズ保持用バンドを使用してレンズを保持した状態の一例を示すレンズ部断面構造の概略図である。本発明のレンズ保持用バンド1aの突起部をレンズ外周側面の凹溝11に嵌合することでレンズ6を保持している。
【0028】
本発明のレンズ保持用バンドを構成する熱可塑性モノフィラメントに用いる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、6ナイロン、66ナイロン、610ナイロン、612ナイロン、6/66ナイロン共重合体、6/12ナイロン共重合体およびナイロン三元共重合体などのポリアミド樹脂、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、生分解性樹脂として、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリグリコール酸、ポリアルキレンアルカノエードおよびポリβヒドロキシアルカノエートなどの脂肪族ポリエステル、同じく生分解性を有する脂肪族ポリエステルと芳香族ポリエステルとの共重合体、さらには、ポリフッ化ビニリデン、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・フッ化ビニリデン共重合体などのフッ素樹脂などが挙げられる。これらは単独あるいは混合物を用いても良い。中でも、高い引張強度と適度な伸びを有し、伸長弾性回復特性に優れている点でポリアミド樹脂およびフッ素樹脂を好ましく使用することができる。」







ウ 上記アないしイによると、引用文献3には、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「引用発明3」という。)。

「長さ方向に対する垂直断面の形状が、水平方向に細長い扁平部20と、扁平部20から上下方向の少なくとも1方向に1つ以上突出した突起部30とからなり、突起部30は、扁平部20の中間位置から上下垂直方向に突出した形状のほか、扁平部20の中間位置から上下垂直方向の1方向にのみ突出した形状に形成されているレンズ保持用バンドの突起部をレンズ外周側面の凹溝11およびリム凹溝10に嵌合することでレンズ6を保持するハーフリム眼鏡。」

(4)原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用された上記引用文献5(特開平10-206799号公報)には、以下の事項が記載されている。

ア 「【0038】図3には、緩衝部材7をブローバー2とレンズ3との間に介在させた場合の図1におけるA断面部が示されており、ブローバー2、レンズ3および緩衝部材7それぞれの接触部の形状について様々な態様が示されている。
【0039】(A)は、ブローバー2と緩衝部材7、および、緩衝部材7とレンズ3が、それぞれ平面形状である場合を示している。この場合にはブローバー2、レンズ3および緩衝部材7の加工は容易であるが固定パーツ6Aおよび6Bによる弾性力(保持力)によってのみ位置決めする必要がある。
【0040】(B)?(D)はブローバー2、レンズ3および緩衝部材7のうち少なくともいずれか一つに溝を設けてそれぞれ嵌め込む構成となっており、嵌め込みによって位置決めがされるので、固定パーツ6Aおよび6Bによって確実に保持することが可能な構成となっている。
【0041】(B)は、レンズ3に溝部31を設けて、溝部31に沿って緩衝部材7を嵌め込み、緩衝部材7にも溝部71を設けて、溝部71に沿ってブローバー2が嵌め込まれている場合を示している。
【0042】(C)は、レンズ3と緩衝部材7とは平面形状で接触させて、緩衝部材7には溝部71を設けて、溝部71に沿ってブローバー2が嵌め込まれている場合を示している。
【0043】(D)は、ブローバー2に溝部21を設けて、溝部21に沿って緩衝部材7を嵌め込み、緩衝部材7にも溝部71を設けて、レンズ3の上部に沿って溝部71を嵌め込んでいる場合を示している。
【0044】なお、各溝部21、31、71の形状については、図示の形状に限らず、方形状、円形状、三角形状など自由である。
【0045】以上のような構成とすることによって、レンズ3等にはねじ機構を必要とせず、レンズ3には単に孔部を設ければ良く、加工性が向上し、固定パーツ6Aおよび6Bを孔部3aおよび3bに挿入するだけで、ブローバー2とレンズ3とを固定(保持)できるので組み立て性も向上する。
【0046】また、溝部21、31、71等を設けることで、位置決め精度が向上し、ブローバー2とレンズ3とを確実に固定(保持)できるので品質性が向上する。
【0047】さらに、緩衝部材7を備えることで、振動などが吸収されて、レンズ3の割れ、損傷が防止されるので、より一層品質性が向上する。
【0048】またさらに、ねじ機構を必要とせず、固定パーツ6Aおよび6Bと、これらに対応する孔部3aおよび3bを、自由な形状、模様にすることが可能となるのでファッション性(装飾性)も幅広くなる。なお、緩衝部材7も自由な形状、模様にすることが可能である。」

イ 【図3】(D)



ウ 上記アないしイによると、引用文献5には、以下の技術的事項が記載されていると認められる。

「ブローバーに溝部を設けて、溝部に沿って緩衝部材を嵌め込み、緩衝部材にも溝部を設けて、レンズの上部に沿って溝部を嵌め込むこと。」

2 本願発明1について
(1)引用文献1を主引用例とした場合
ア 本願発明1と引用発明1とを対比する。

(ア)引用発明1の「レンズ保持部材3」は、軟かい弾力性に富んだプラスチックまたはゴムからなり、緩衝材となるから、クッション材であるといえる。また、引用発明1の「レンズ保持部材3」は、リム1の内面に配設された凹部に嵌合固着する「凸部4」とレンズ2の端面側に配設された凹部に嵌合する「凸部5」とリム1の内面とレンズ2の端面の間にある「ツバ部6」とを有するから、その断面は概略十字状であるといえる。
そうすると、引用発明1の「レンズ保持部材3」、「凸部4」、「凸部5」、「ツバ部6」は、それぞれ、本願発明1の「クッション材」、「上片」、「下片」、「中片」に相当する。

(イ)引用発明1において、レンズ保持部材3の凸部4が嵌合固着するリム1の内面に配設された「凹部」は、溝であるといえる。また、レンズ保持部材3の凸部5が嵌合するレンズ2の端面側に配設された「凹部」は、溝であるといえる。
そうすると、引用発明1の「レンズ保持部材3の凸部4が嵌合固着」する「リム1の内面に」「配設され」た「凹部」と、本願発明1の「リム」の「長手方向に設け」られた「内周から外周に貫通した細いスリット溝」とは、「リム」の「長手方向に設け」られた「溝」である点で共通する。また、引用発明1の「レンズ保持部材3の凸部5が嵌合」する「レンズ2の端面側に」「配設され」た「凹部」は、本願発明1の「レンズ外周に形成した凹溝」に相当する。

(ウ)上記(ア)及び(イ)を踏まえると、引用発明1の「リム1の内面には凹部が配設され該凹部にレンズ保持部材3の凸部4が嵌合固着し、レンズ2の端面側にも凹部が配設されレンズ保持部材3の凸部5が嵌合しレンズ2を保持し、レンズ保持部材3のツバ部6はリム1の内面とレンズ2の端面の間にある」ことと、本願発明1の「上記クッション材の上片をリムに設けた上記スリット溝に嵌め、下片をレンズ外周に形成した凹溝に嵌入し、幅寸法をレンズ厚さ以上とした中片をリム内周とレンズ外周の間に介在」させることとは、「上記クッション材の上片をリムに設けた上記溝に嵌め、下片をレンズ外周に形成した凹溝に嵌入し、中片をリム内周とレンズ外周の間に介在」させる点で共通する。

(エ)引用発明1においては、ツバ部6はリム1の内面とレンズ2の端面の間にあるから、正面からはツバ部6が露出しているといえる。

(オ)引用発明1の「眼鏡フレーム」は、下記相違点1ないし3を除いて、本願発明1の「フロントフレームのリムにクッション材を介在してレンズを嵌めたメガネフレーム」に相当する。

(カ)上記(ア)ないし(オ)によれば、両者は以下の点で一致する。
<一致点>
「フロントフレームのリムにクッション材を介在してレンズを嵌めたメガネフレームにおいて、該クッション材はその断面を概略十字状として中片の上方に上片を突出すると共に下方には下片を突出し、上記リムには溝を長手方向に設け、そしてレンズ外周には凹溝を形成し、上記クッション材の上片をリムに設けた上記溝に嵌め、下片をレンズ外周に形成した凹溝に嵌入し、中片をリム内周とレンズ外周の間に介在し、正面からはリム内周とレンズ外周に介在する上記中片が露出したことを特徴とするメガネフレーム。」

(キ)他方、両者は以下の点で相違する。
<相違点1>
本願発明1においては、「リムには内周から外周に貫通した細いスリット溝を長手方向に設け」、「上記クッション材の上片をリムに設けた上記スリット溝に嵌め」るのに対し、引用発明1においては、リム1の内面には凹部が配設され、該凹部にレンズ保持部材3の凸部4が嵌合固着している点。

<相違点2>
本願発明1においては、「中片」の「幅寸法をレンズ厚さ以上とした」のに対し、引用発明1においては、ツバ部6の幅寸法がレンズ2の厚さ以上ではない点。

<相違点3>
本願発明1においては、「リムに設けたスリット溝からは上片が見えるようにした」のに対し、引用発明1においては、リム1の上方から凸部4が見えない点。

イ 判断
(ア)相違点1について
リムに内周から外周に貫通した細いスリット溝を長手方向に設けること及びクッション材の上片をリムに設けたスリット溝に嵌めることは、上記引用文献2、3及び5に記載されておらず、また、この出願前に公知又は周知の技術であるとはいえない。
そして、本願発明1は、上記相違点1に係る構成を備えることにより、「中片から上方へ突出する上片はリムに貫通したスリット溝に嵌入することで位置ズレすることなく該リムに止着される。すなわち、接着剤を塗布してクッション材をリムに固定する必要はない」(本願明細書段落【0011】)という効果を奏するものである。
そうすると、上記相違点1に係る本願発明1の構成を得ることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

(イ)相違点2について
断面が概略十字状のクッション材の(リム内周とレンズ外周の間に介在する)中片の幅寸法をレンズ厚さ以上とすることは、上記引用文献2、3及び5に記載されておらず、また、この出願前に公知又は周知の技術であるとはいえない。なお、引用文献3において、レンズ厚さが明らかでない以上、(本願発明1の中片の幅に相当する)扁平部の水平方向の幅をレンズ厚さ以上にすることが記載又は示唆されているとはいえない。
また、引用文献5に記載された「ブローバーに溝部を設けて、溝部に沿って緩衝部材を嵌め込み、緩衝部材にも溝部を設けて、レンズの上部に沿って溝部を嵌め込むこと」という技術的事項(上記1(4)ウ)が周知技術であるとしても、当該技術的事項における「緩衝部材」は、リム内周とレンズ外周の間に介在する中片を有する概略十字状のクッション材ではないから、当該技術的事項における「緩衝部材」の幅寸法に関する技術事項だけを抽出して引用発明1のレンズ保持部材3に適用することはできない。
そして、本願発明1は、上記相違点2に係る構成を備えることにより、「中片の幅寸法をレンズ厚さと同じか又は大きくするならば、レンズ外周全面がクッション材に接するために作用する応力を低く抑えることが出来る。」(本願明細書段落【0012】)という効果を奏するものである。
そうすると、上記相違点2に係る本願発明1の構成を得ることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

(ウ)したがって、上記相違点3について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明1並びに引用文献2、3及び5に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)引用文献2を主引用例とした場合
本願発明1と引用発明2を対比すると、両者には、少なくとも上記相違点1及び2と同様の相違点がある。
そうすると、上記相違点1及び2についての判断と同様の理由により、本願発明1は、引用発明2並びに引用文献1、3及び5に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)引用文献3を主引用例とした場合
本願発明1と引用発明3を対比すると、両者には、少なくとも、上記相違点1及び2と同様の相違点がある。
そうすると、上記相違点1及び2についての判断と同様の理由により、本願発明1は、引用発明3並びに引用文献1、2及び5に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本願発明2について
請求項2は、請求項1を引用するから、本願発明2は、上記本願発明1についての判断と同様の理由により、引用発明1並びに引用文献2、3及び5に記載された技術的事項、引用発明2並びに引用文献1、3及び5に記載された技術的事項、又は引用文献3並びに引用文献1、2及び5に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-04-17 
出願番号 特願2014-106965(P2014-106965)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 吉川 陽吾  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 佐藤 秀樹
関根 洋之
発明の名称 メガネフレーム  
代理人 平崎 彦治  

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