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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1340029
審判番号 不服2017-53  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-04 
確定日 2018-05-07 
事件の表示 特願2012-145245「端末装置、基地局装置、通信システム、通信方法および集積回路」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 1月20日出願公開、特開2014- 11539〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年6月28日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成27年 6月29日 手続補正書の提出
平成28年 4月11日付け 拒絶理由の通知
平成28年 6月20日 意見書及び手続補正書の提出
平成28年 7月 6日付け 拒絶理由(最後の拒絶理由)の通知
平成28年 9月12日 意見書及び手続補正書の提出
平成28年 9月29日付け 平成28年9月12日の手続補正について
の補正の却下の決定及び拒絶査定
平成29年 1月 4日 拒絶査定不服審判の請求及び手続補正書の
提出
平成29年11月 8日付け 平成29年1月4日の手続補正についての
補正の却下の決定及び拒絶理由の通知
平成30年 1月12日 意見書及び手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1?6に係る発明は平成30年1月12日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項5に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものと認める。
「 端末装置と基地局装置とを備える通信システムにおける端末装置の通信方法であって、
前記端末装置は、
自装置のアクセスクラスに関連する制限とセル状態とを示す第1の情報と、セル選択の候補として適切なセルであるか否かの判断に用いるための追加の制限情報である第2の情報とを前記基地局装置から受信するステップと、
RRC接続についての所定の障害を検出した場合に、前記第1の情報に加えて、前記第2の情報に基づいてセル選択を行うステップと、
を少なくとも具備することを特徴とする端末装置の通信方法。」

第3 拒絶の理由
平成29年11月8日付けで当審が通知した拒絶理由のうちの理由4は、次のとおりのものである。

(理由4)
本件出願の請求項1-10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
(本願発明は上記本件出願の請求項7に係る発明に対応する。)

引用例1:国際公開第2009/150943号

第4 引用例の記載事項及び引用発明
平成29年11月8日付けで当審が通知した拒絶理由に引用された国際公開第2009/150943号(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

1.「[0011] 本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、優先呼のように、通常呼よりも優先すべき種別の通信が発生した場合に適したCSGセルの測定方法を実現することができる移動局装置、基地局装置および移動通信システムを提供することを目的とする。」(3?4ページ)

2.「[0023] 次に、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら説明する。EUTRAおよびAdvanced EUTRAで使用される物理チャネルは、報知情報チャネル、上りデータチャネル、下りデータチャネル、下り共用制御チャネル、上り共用制御チャネル、ランダムアクセスチャネル、同期シグナル、下りリファレンスシグナルなどがある。物理チャネルは、今後追加、または、チャネル構造が変更される可能性もあるが、本発明の各実施形態の説明には影響しないため、その説明を省略する。また、リファレンスシグナルとしては、下りリファレンスシグナルと上りリファレンスシグナルがある。本発明の各実施形態に関わる物理チャネルは、同期シグナルと報知情報チャネル、下りリファレンスシグナルであるため、それ以外の物理チャネルの詳細な説明は省略する。」(7ページ)

3.「[0040] 図4は、本発明の第1の実施形態に係る基地局装置の送信装置の一例を示すブロック図である。送信装置400は、CGSセル情報生成部401、アクセス制限情報管理部402、送信信号処理部403、送信部404、およびアンテナ405から構成される。CSGセル情報生成部401には、セル種別情報が入力される。セル種別情報とは、基地局装置がCSGセルか通常のセルかを判断するための情報である。CSGセル情報生成部401は、セル種別情報がCSGセルであった場合、CSGセル情報を生成し、送信信号処理部403へ出力する。CSGセルで無い場合(通常のセルの場合)は何もしない。
[0041] ここで、CSGセル情報とは、移動局装置が当該基地局装置をCSGセルであると判断可能な情報であれば良く、その内容は任意でよい。例えば、同期シグナルを生成するためのセルID情報でも良く、報知情報に含めるCSGセル識別子情報でもよく、また、送信周波数帯域の情報でもよい。」(11?12ページ)

4.「[0049] 次に、図5における移動局装置の発呼処理(優先呼)、周辺セル測定の手順の詳細を図6?図7にそれぞれ示す。図6は、移動局装置における発呼処理(優先呼)の処理手順の一例を示したフローチャートである。移動局装置は、優先呼の発呼を行なう場合に、事前に定義されている優先呼用のアクセスクラス設定を行なう(ステップS601)。また、キャンプしている基地局装置(ソースセル)において、設定したアクセスクラスが禁止されているかどうかを、ソースセルの報知情報に設定されているアクセス制限情報から確認する。」(14ページ)

5.「[0058] 図8は、本発明の第2の実施形態に係る移動局装置の受信装置の一例を示すブロック図である。受信装置800は、受信部801、受信信号処理部802、セル情報管理部803、測定情報管理部804、再接続セル選択部805、およびアンテナ806から構成される。図1との違いは、報知情報から取得されるアクセス制限情報が再接続セル選択部805に入力され、また、受信信号処理部802より出力される測定情報が測定情報管理部804と再接続セル選択部805の両方に入力される点である。それ以外のブロックについては、図1と同じであるため説明を省略する。
[0059] 再接続セル選択部805に入力されるアクセス制限情報とは、基地局装置の報知情報に含まれており、所定のアクセスクラス以外の移動局装置は、キャンプまたは通信を禁止したり、逆に所定のアクセスクラスの移動局装置のみキャンプまたは通信を許可したりするために使用される情報であり、制限されるアクセスクラスの情報と、制限時間で構成される。
[0060] 受信信号処理部802は、移動局装置アクセスクラス情報、セル情報、セル種別判定情報を基に、再接続セルを選択するために必要な測定情報を再接続セル選択部805へ出力する。再接続セル選択部805は、測定情報で示されたセルのアクセス制限情報に基づいて最良の再接続セルを選択し、再接続セル情報を出力する。」(16?17ページ)

6.「[0067] 優先呼の通信の終了には、正常に通信が終了する場合の他に、無線品質の劣化による下り同期外れに伴い通信が終了する場合が考えられる。このとき、移動局装置は無線接続を再確立するために、再接続セル選択と再接続要求から成る再接続手順を開始する。図11は、優先呼での通信中状態で、同期外れが発生した場合における再接続セル選択の処理手順と再接続要求手順について示したシーケンスチャートである。ここでは、移動局装置は、基地局装置(ソースセルcell_A)に属しており、優先呼で通信中状態であるとする(ステップS1101)。
[0068] 図11において、無線環境の劣化により同期外れが発生したとする(ステップS1102)。このとき、移動局装置は、全ての周辺セル(ソースセル含む)からの信号を受信し、最良の受信品質のセルに対して再接続を試みる。すなわち、図11に示すように、ソースセルcell_A、CSGセルcell_B、周辺セルcell_Cが存在する場合、移動局装置は、ソースセルcell_Aより、同期シグナルs(ステップS1103)、下りリファレンスシグナルs(ステップS1104)、報知情報s(ステップS1105)を受信する。CSGセル(cell_B)より、同期シグナルcsg(ステップS1106)、下りリファレンスシグナルcsg(ステップS1107)、報知情報csg(ステップS1108)を受信する。
[0069] また、周辺セルcell_Cより、同期シグナルn(ステップS1109)、下りリファレンスシグナルn(ステップS1110)、報知情報n(ステップS1111)を受信する。このとき、移動局装置は、CSGセル情報を取得した場合であっても、同期外れ前の呼種別が優先呼であれば、CSGセルからの信号を受信し、下りリファレンスシグナルcsgに対して測定処理を行なう。そして、再接続セル選択処理に基づき、下り測定品質が最良のセルを選択し(ステップS1112)、選択されたセルに対して再接続要求メッセージを送信する(ステップS1113)。
[0070] なお、図11は、CSGセルcell_Bを最良セルとした場合の例を示している。また、実際には再接続要求メッセージの前にランダムアクセス手順が必要であるが、図11では、簡略化のために省略している。また、cell_A?Cはそれぞれ別の周波数に配置されていても、別の通信方式であっても良い。
[0071] 図12は、図11における移動局装置の再接続セル選択の処理手順の一例を示したフローチャートである。移動局装置は、任意の基地局装置(ソースセル)と優先呼による通信中に下り同期外れが発生したことを検出すると、まず、下り同期外れが発生した時点での最良セルを選択し、再接続を行なうために周辺セル(ソースセル含む)からの信号を受信する(ステップS1201)。次に、セル情報の読み出しの可否を判断する(ステップS1202)。セル情報が読み出せた場合は、続いて再接続の直前に通信していた呼の優先度に基づく呼種別の判定を行なう(ステップS1203)。直前の呼種別が通常呼であった場合、CSGセルが周辺セルに配置されており、かつ受信信号に未登録のCSGセルの信号が含まれているか否かを、CSGセル情報を基に判定する(ステップS1204)。
[0072] ステップS1204において、未登録のCSGセルが周辺セルに配置されている場合、測定処理としては、検出したセルのうち、CSG情報によって識別された未登録のCSGセル以外の周辺セルの下りリファレンスシグナルに基づく測定処理を行なう(ステップS1205)。
[0073] 一方、ステップS1202において、セル情報を読み出せない場合、例えばSIMカードが移動局装置に挿入されていない場合などは、登録されたCSGセルであるかのどうかの判断ができず、かつ、このとき移動局装置が許可される通信は優先呼のみであるため、検出した全てのセルの下りリファレンスシグナルに基づく測定処理を行なう(ステップS1206)。同様に、ステップS1203において、直前の呼種別が優先呼であった場合、または、ステップS1204において、未登録のCSGセルが周辺セルに配置されていない場合、CSGセル情報に関係なく検出した全てのセルの下りリファレンスシグナルに基づく測定処理を行なう(ステップS1206)。次に、上記いずれかの測定処理で得られた結果を基に、最良セル選択において、最良のセルを一つ選択する(ステップS1207)。次に、選択された最良セルのアクセス制限情報と移動局装置アクセスクラス情報とを比較し(ステップS1208)、当該アクセスクラスでの通信が禁止されている場合は、次に良好なセルを最良セルとして選択しなおし(ステップS1209)、禁止セルかどうかの確認処理を繰り返す。一方、ステップS1208において、当該アクセスクラスでの通信が最良セルで禁止されていない場合は、選択したセルを再接続セルとして確定し、処理を終了する。
[0074] なお、図12に示すフローチャートは、移動局装置の処理手順の一例であって、移動局装置がCSGセル情報と呼種別によって測定処理を切り替えるための判断を行ない、前記判断に基づいて、測定対象とするセルにCSGセルを含むか否かを決定し、さらに、測定した結果最良セルと判断したセルがアクセス禁止かどうかを判断可能な方法であれば、これ以外の処理手順が用いられても良い。更に、移動局装置の移動速度に基づいて、未登録のCSGセルを測定対象に含めるかどうかを判断することも可能である。例えば、ステップS1206の直前に、移動局装置が停止または低速移動中かどうかを判断し、停止または低速移動中であれば、未登録のCSGセルを含む全ての周辺セルの下りリファレンスシグナルに基づく測定処理を行なうステップを加えることも可能である。また、逆に高速移動中であれば、登録済みであってもCSGセルの測定処理を行わないというステップを加えることも可能である。また、基地局装置より周辺セルとして再接続先として不適切なセルのリスト(ブラックリストとも呼ばれる)が通知されている場合は、前記不適切なセルに対する測定処理を停止してもよい。また、更に優先呼で通信中に、ネットワーク指示のハンドオーバー手順や回線交換網への切り替え制御手順を行なう場合においても、図12と同様の手順を適用することが可能である。」(18?21ページ)

7.図12は以下のとおりである。


上記1?7の記載及び当業者における技術常識を考慮すると、

a 「1」の記載及び「2」の「EUTRA」という記載によれば、引用例では「移動局装置と基地局装置とを備えるEUTRAの移動通信システム」であることは明らかである。

b 「6」の段落71の記載によれば、図12は移動局装置の再接続セル選択の処理手順であるから、「移動局装置の通信方法」といえる。

c 「4」及び「5」の記載によれば、「アクセス制限情報」とは、所定のアクセスクラス以外の移動局装置を、キャンプまたは通信を禁止したり、逆に所定のアクセスクラスの移動局装置のみキャンプまたは通信を許可したりするために使用される情報である。また、基地局装置の報知情報に含まれ、「6」の段落73のステップ1208で移動局装置がアクセス制限情報を使用しているので、移動局装置がアクセス制限情報を「基地局装置から受信している」ことは明らかである。したがって、移動局装置において「所定のアクセスクラス以外の移動局装置を、キャンプまたは通信を禁止したり、逆に所定のアクセスクラスの移動局装置のみキャンプまたは通信を許可したりするために使用されるアクセス制限情報を基地局装置から受信する」ことが行われていることは明らかである。

d 「3」の記載によれば、CSGセルであるか否かの情報であるCSGセル情報は基地局装置から送信されていることは明らかである。また、「6」の段落72の記載によれば、ステップS1204とステップS1205においてCSGセル情報が移動局装置で利用されていることから、移動局装置がCSGセル情報を基地局装置から受信していることは明らかである。したがって、移動局装置において「CSGセルであるか否かの情報であるCSGセル情報を基地局装置から受信する」ことが行われていることは明らかである。

e 「6」の段落71には「図12は、図11における移動局装置の再接続セル選択の処理手順の一例を示したフローチャートである。移動局装置は、任意の基地局装置(ソースセル)と優先呼による通信中に下り同期外れが発生したことを検出すると、」と記載されていることから、図12は「無線接続中の無線環境の劣化による同期外れの障害を検出した場合」といえる。
また、段落71のステップ1204でCSGセル情報を使用し、段落73のステップ1208でアクセス制限情報を使用して、再接続セル選択処理を行っている。
そして、「6」の段落74の記載によれば、周辺セルとして再接続先として不適切なセルのリスト(ブラックリスト)が基地局装置より通知されている場合には、不適切なセルに対する測定処理を停止してもよいことが示唆されており、この場合、移動局装置は、アクセス制限情報、CSGセル情報に加えてブラックリストも使用して、移動局装置で再接続セル選択処理を行うといえるから、上記ブラックリストは、「周辺セルとして再接続先として不適切なセルのリストである追加のブラックリスト」といえる。また、移動局装置は、上記ブラックリストを「基地局装置から受信する」といえる。

f c?eによれば、移動局装置では「アクセスクラスに関連する情報であるアクセス制限情報、CSGセルであるか否かの情報であるCSGセル情報と周辺セルとして再接続先として不適切なセルのリストである追加のブラックリストとを基地局装置から受信するステップ」が行われているといえる。

g eによれば、移動局装置では「無線接続中の無線環境の劣化による同期外れの障害を検出した場合に、アクセス制限情報とCSGセル情報とに基づいてセル選択を行うステップであって、追加のブラックリストも使用してセル選択を行ってもよいステップ」が行われているといえる。

以上を総合すると、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「 移動局装置と基地局装置とを備えるEUTRAの移動通信システムにおける移動局装置の通信方法であって、
前記移動局装置は、
所定のアクセスクラス以外の移動局装置を、キャンプまたは通信を禁止したり、逆に所定のアクセスクラスの移動局装置のみキャンプまたは通信を許可したりするために使用されるアクセス制限情報とCSGセルであるか否かの情報であるCSGセル情報と周辺セルとして再接続先として不適切なセルのリストである追加のブラックリストとを基地局装置から受信するステップ
無線接続中の無線環境の劣化による同期外れの障害を検出した場合に、アクセス制限情報とCSGセル情報とに基づいてセル選択を行うステップであって、追加のブラックリストも使用してセル選択を行ってもよいステップと、
を少なくとも具備する移動局装置の通信方法。」

第5 対比・判断
本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。

1.引用発明の「移動局装置」、「基地局装置」、「移動通信システム」は、それぞれ本願発明の「端末装置」、「基地局装置」、「通信システム」に相当する。

2.引用発明の「所定のアクセスクラス以外の移動局装置を、キャンプまたは通信を禁止したり、逆に所定のアクセスクラスの移動局装置のみキャンプまたは通信を許可したりするために使用されるアクセス制限情報」は、移動局装置自体のアクセスクラスに関連してアクセスできるかの制限を表す情報であるといえるから、本願発明にいう「自装置のアクセスクラスに関連する制限」を示す情報といえる。また、引用発明の「CSGセルであるか否かの情報であるCSGセル情報」はセルがCSGセルという状態であるか否かを示しているといえることから、本願発明にいう「セル状態」を示す情報といえる。そして、「自装置のアクセスクラスに関連する制限」と「セル状態を示す情報」とを合わせて「自装置のアクセスクラスに関連する制限とセル状態とを示す第1の情報」ということは任意である。

3.引用発明の「周辺セルとして再接続先として不適切なセルのリストである追加のブラックリスト」は適切なセルであるか否かの判断に用いるための情報であり、セルへのアクセスを制限するための情報であることから、本願発明の「セル選択の候補として適切なセルであるか否かの判断に用いるための追加の制限情報」に対応し、この情報を「第2の情報」ということも任意である。

4.2?3によれば、引用発明の「アクセスクラスに関連する情報であるアクセス制限情報とCSGセルであるか否かの情報であるCSGセル情報と周辺セルとして再接続先として不適切なセルのリストであるブラックリストとを基地局装置から受信するステップ」は、本願発明の「自装置のアクセスクラスに関連する制限とセル状態とを示す第1の情報と、セル選択の候補として適切なセルであるか否かの判断に用いるための追加の制限情報である第2の情報とを前記基地局装置から受信するステップ」に相当するといえる。

5.引用発明の「無線接続中の無線環境の劣化による同期外れの障害」と本願発明の「RRC接続についての所定の障害」とは、下記の相違点1は別として、「無線接続についての所定の障害」という点で共通する。

6.まず、本願明細書段落121において「基地局装置2は、RRC接続再確立手順において適用される第1の拡張セル制限と、RRC接続再確立手順以外において適用される第2の拡張セル制限とを移動局装置1に対して設定し、移動局装置1は、RRC接続再確立手順の際に第1の拡張セル制限を適用し、RRC接続再確立手順以外において第2の拡張セル制限を適用してセル選択手順を実行する。」と記載され、同段落122において「第1の拡張セル制限と第2の拡張セル制限が実際には同じ情報であっても構わない。」と記載されていることから、本願発明にいう「RRC接続についての所定の障害を検出した場合に、前記第1の情報に加えて、前記第2の情報に基づいてセル選択を行う」は「RRC接続についての所定の障害を検出した場合」以外にも「前記第1の情報に加えて、前記第2の情報に基づいてセル選択を行う」ことを排除するものでない。したがって、本願発明は少なくとも「RRC接続についての所定の障害を検出した場合」に「前記第1の情報に加えて、前記第2の情報に基づいてセル選択を行う」ものである。
また、5によれば、引用発明と本願発明は「無線接続についての所定の障害」という点で共通することから、両者は「無線接続についての所定の障害の場合」という点で共通する。
そうすると、引用発明は「無線接続中の無線環境の劣化による同期外れの障害を検出した場合に、アクセス制限情報とCSGセル情報とに基づいてセル選択を行うステップであって、追加のブラックリストも使用してセル選択を行ってもよいステップ」であるから、下記相違点2は別として、両者は「無線接続についての所定の障害を検出した場合に、第1の情報と第2の情報に基づいてセル選択を行う」点で共通するといえる。

(一致点)
「 端末装置と基地局装置とを備える通信システムにおける端末装置の通信方法であって、
前記端末装置は、
自装置のアクセスクラスに関連する制限とセル状態とを示す第1の情報と、セル選択の候補として適切なセルであるか否かの判断に用いるための追加の制限情報である第2の情報とを前記基地局装置から受信するステップと、
無線接続についての所定の障害を検出した場合に、第1の情報と第2の情報に基づいてセル選択を行うステップと、
を少なくとも具備する端末装置の通信方法。」

(相違点1)
一致点の「無線接続についての所定の障害」について、本願発明では「RRC接続についての所定の障害」であるのに対し、引用発明では「無線接続中の無線環境の劣化による同期外れの障害」ではあるが、無線接続がRRC接続であるとは特定されていない点。

(相違点2)
一致点の「無線接続についての所定の障害を検出した場合に、第1の情報と第2の情報に基づいてセル選択を行うステップ」について、無線接続についての所定の障害を検出した場合に、本願発明では「第1の情報に加えて、第2の情報に基づいてセル選択を行う」のに対し、引用発明では「追加のブラックリストも使用してセル選択を行ってもよい」として「第2の情報」を加えることが選択的に特定されている点。

上記相違点について検討する。
(相違点1)
移動局装置と基地局装置とを備えるEUTRAの通信システムにおいて移動局装置が無線接続中にRRC接続をすることは技術常識であるから、引用発明の移動局装置が無線接続中にRRC接続をしていることは明らかである。そして、引用発明においてRRC接続を行っている場合の「無線接続中の無線環境の劣化による同期外れの障害」は、「RRC接続についての所定の障害」であるといえることから、上記相違点1は、実質的差異とはいえない。また、引用発明及び技術常識から当業者が容易に想到しうる障害にすぎない。

(相違点2)
引用発明では「第2の情報」といえるブラックリストを使用してもよいとしているところ、無線接続についての所定の障害を検出した場合におけるセル選択の際に、再接続先として不適切なセルは測定処理を行わないために、「第2の情報」であるブラックリストを「第1の情報」に加えることは当業者が容易になし得る。

よって、本願発明は、引用発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-02-27 
結審通知日 2018-03-06 
審決日 2018-03-19 
出願番号 特願2012-145245(P2012-145245)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 深津 始  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 中木 努
松永 稔
発明の名称 端末装置、基地局装置、通信システム、通信方法および集積回路  
代理人 三木 雅夫  
代理人 覚田 功二  
代理人 西澤 和純  
代理人 野村 進  

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