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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C03C
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C03C
審判 全部申し立て 2項進歩性  C03C
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C03C
管理番号 1340066
異議申立番号 異議2016-700526  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-06-08 
確定日 2018-02-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5829379号発明「光学ガラス、プリフォーム、及び光学素子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5829379号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?12〕について訂正することを認める。 特許第5829379号の請求項8、9、11、12に係る特許を取り消す。 特許第5829379号の請求項1?7、10に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5829379号の請求項1?12に係る特許についての出願は、平成22年1月13日を出願日とする出願であって、平成27年10月30日に設定登録がされたものであり、その後、その特許について、特許異議申立人 古川 京子 により特許異議の申立てがされたものであり、その後の手続の経緯は以下のとおりである。

平成28年 8月30日付け 取消理由通知
同年11月 1日付け 訂正の請求、意見書の提出
同年12月22日付け 特許異議申立人による意見書の提出
平成29年 3月28日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年 5月30日付け 訂正の請求、意見書の提出
同年 7月 7日付け 特許異議申立人による意見書の提出
同年 9月28日付け 取消理由通知(決定の予告)

なお、平成29年9月28日付けの取消理由通知に対しては、指定した期間内に特許権者からの応答はなかった。


第2 訂正請求について
1 訂正の内容
平成29年 5月30日付けの訂正請求による訂正の内容は、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求に係る訂正請求書に添付の訂正特許請求の範囲のとおり訂正するもので、以下の訂正事項(1)?(5)からなるものである(下線部は訂正箇所)。
なお、平成28年11月 1日付けの訂正請求は、取り下げられたものとみなされる。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
Nb_(2)O_(5)成分を10.0%以上75.0%未満、
P_(2)O_(5)成分を5.0%以上27.509%以下、
Rn_(2)O成分(式中、RnはLi、Na、K及びCsからなる群より選択される1種以上)を0.1%以上30.0%以下、及び、
TiO_(2)成分を2.0?40.0%
含有し、
B_(2)O_(3)成分の含有量が0?1.653%
Ta_(2)O_(5)成分の含有量が0?5.0%
SiO_(2)成分の含有量が0?2.311%であり、」
とあるのを、
「酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
Nb_(2)O_(5)成分を37.999%以上65.0%以下、
P_(2)O_(5)成分を22.799%以上27.509%以下、
Rn_(2)O成分(式中、RnはLi、Na、K及びCsからなる群より選択される1種以上)を5.0%以上20.0%以下、及び、
TiO_(2)成分を2.0?13.447%
含有し、
B_(2)O_(3)成分の含有量が0?1.653%、
SiO_(2)成分の含有量が0?2.311%、
WO_(3)成分の含有量が0?5.0%
であり、
Ta_(2)O_(5)成分、ZnO成分、Bi_(2)O_(3)成分、Al_(2)O_(3)成分、ZrO_(2)成分及びGeO_(2)成分を含有せず、 」
に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項7に
「WO_(3)成分の含有量が13.0%以下である」
とあるのを、
「酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
TiO_(2)成分の含有量が9.908%以下、
WO_(3)成分の含有量が3.325%以下
である」
に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項8に
「Bi_(2)O_(3)成分 0?20.0%」
とある記載を削除する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項10に、
「酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
Al_(2)O_(3)成分 0?10.0%、
ZrO_(2)成分 0?15.0%、
GeO_(2)成分 0?15.0%
の各成分をさらに含有する請求項1から9のいずれか記載の光学ガラス。」
とあるのを、
「酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
Nb_(2)O_(5)成分を37.999?65.0%、
P_(2)O_(5)成分を22.799%以上27.509%以下、
Rn_(2)O成分(式中、RnはLi、Na、K及びCsからなる群より選択される1種以上)を5.0%以上20.0%以下、
TiO_(2)成分を2.0?13.447%
含有し、
B_(2)O_(3)成分の含有量が0?1.653%、
SiO_(2)成分の含有量が0?2.311%、
WO_(3)成分の含有量が0?5.0%
であり、
Ta_(2)O_(5)成分、ZnO成分、Bi_(2)O_(3)成分、Al_(2)O_(3)成分、ZrO_(2)成分及びGeO_(2)成分を含有せず、
酸化物換算組成のガラス全質量に対する質量和(P_(2)O_(5)+SiO_(2)+B_(2)O_(3))が28.896%以下であり、
酸化物換算組成のガラス全質量に対するRO成分(式中、RはMg、Ca、Sr、Ba及びZnからなる群より選択される1種以上)の質量和が6.797%以下であり、
酸化物換算組成のガラス全質量に対するLn_(2)O_(3)成分(式中、LnはY、La、Gd及びYbからなる群より選択される1種以上)の質量和が1.571%以下であり、
0.6307以上0.69以下の部分分散比[θg,F]を有し、15以上27以下のアッベ数(ν_(d))を有し、
分光透過率が70%を示す波長(λ_(70))が437nm以下である光学ガラス。」
に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項11に
「請求項1から10のいずれか記載の光学ガラス」
とあるのを、
「請求項1から9のいずれか記載の光学ガラス」
に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項12に
「請求項1から11のいずれか記載の光学ガラス」
とあるのを、
「請求項1から9のいずれか記載の光学ガラス」
に訂正する。

2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の請求項1は「Nb_(2)O_(5)成分を10.0%以上75.0%未満、P_(2)O_(5)成分を5.0%以上27.509%以下、Rn_(2)O成分(式中、RnはLi、Na、K及びCsからなる群より選択される1種以上)を0.1%以上30.0%以下、及び、TiO_(2)成分を2.0?40.0%含有し・・・Ta_(2)O_(5)成分の含有量が0?5.0%・・・である」ことを特定し、WO_(3)成分、ZnO成分、Bi_(2)O_(3)成分、Al_(2)O_(3)成分、ZrO_(2)成分及びGeO_(2)成分の含有量については特定していなかったところ、訂正後の請求項1は、「Nb_(2)O_(5)成分を37.999%以上65.0%以下、P_(2)O_(5)成分を22.799%以上27.509%以下、Rn_(2)O成分(式中、RnはLi、Na、K及びCsからなる群より選択される1種以上)を5.0%以上20.0%以下、及び、TiO_(2)成分を2.0?13.447%含有し・・・WO_(3)成分の含有量が0?5.0%であり、Ta_(2)O_(5)成分、ZnO成分、Bi_(2)O_(3)成分、Al_(2)O_(3)成分、ZrO_(2)成分及びGeO_(2)成分を含有せず、」との記載により、各成分の含有量を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

訂正事項1のうち、Nb_(2)O_(5)成分を37.999%以上65.0%以下含有する点は、本件明細書【0039】及び実施例10の記載、P_(2)O_(5)成分を22.799%以上含有する点は、実施例10の記載、Rn_(2)O成分を5.0%以上20.0%以下含有する点は、本件明細書【0045】の記載、TiO_(2)成分を13.447%以下含有する点は、実施例6の記載、WO_(3)成分を5.00%以下含有する点は、本件明細書【0058】の記載にそれぞれ基づくものである。また、Ta_(2)O_(5)成分、ZnO成分、Bi_(2)O_(3)成分、Al_(2)O_(3)成分、ZrO_(2)成分及びGeO_(2)成分を含有しない点は、実施例において各成分を含有していないことに基づくものである。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

また、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項7は「WO_(3)成分の含有量が13.0%以下」であることを特定し、TiO_(2)成分の含有量については特定していなかったところ、訂正後の請求項7は「TiO_(2)成分の含有量が9.908%以下、WO_(3)成分の含有量が3.325%以下」であることを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

また、訂正事項2は、訂正前の請求項7はガラス組成の単位が記載されていなかったところ、「酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で」と記載することにより、酸化物基準の質量%単位であることを明らかにするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。

TiO_(2)成分の含有量が9.908%以下である点は、本件明細書【0057】及び実施例32?34の記載、WO_(3)成分の含有量が3.325%以下である点は、本件明細書【0058】及び実施例24の記載にそれぞれ基づくものである。
さらに、ガラス組成が、酸化物換算組成のガラス全質量に対する質量%で表される点は、本件明細書【0038】の記載に基づくものである。
よって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

そして、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3
訂正事項3は、請求項8の「Bi_(2)O_(3)成分 0?20.0%」の記載を削除するものであって、訂正事項1において、引用する請求項1の「Bi_(2)O_(3)成分・・・を含有せず」と特定することとの整合を図るためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

Bi_(2)O_(3)成分を含有しない点は、本件明細書の実施例の記載に基づくものであるから、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

そして、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項4
訂正事項4は、訂正前の請求項10が請求項1?9を引用するものであるところ、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して独立形式とするものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。

また、訂正事項4は、訂正前の請求項1を引用して「質量%でNb_(2)O_(5)成分を10.0%以上75.0%未満、P_(2)O_(5)成分を5.0%以上27.509%以下、Rn_(2)O成分(式中、RnはLi、Na、K及びCsからなる群より選択される1種以上)を0.1%以上30.0%以下、及び、TiO_(2)成分を2.0?40.0%含有し・・・Ta_(2)O_(5)成分の含有量が0?5.0%・・・である」、「Ln_(2)O_(3)成分(式中、LnはY、La、Gd及びYbからなる群より選択される1種以上)の質量和が3.704%以下」、及び「分光透過率が70%を示す波長(λ_(70))が439nm以下である」と特定していたところ、訂正後の請求項10は「質量%でNb_(2)O_(5)成分を37.999%?65.0%、P_(2)O_(5)成分を22.799%以上27.509%以下、Rn_(2)O成分(式中、RnはLi、Na、K及びCsからなる群より選択される1種以上)を5.0%以上20.0%以下、TiO_(2)成分を2.0?13.447%含有し・・・Ta_(2)O_(5)成分・・・を含有せず」、「Ln_(2)O_(3)成分(式中、LnはY、La、Gd及びYbからなる群より選択される1種以上)の質量和が1.571%以下」及び「分光透過率が70%を示す波長(λ_(70))が437nm以下である」とそれぞれ特定するものである。
さらに、訂正事項4は、訂正前の請求項10では「Al_(2)O_(3)成分 0?10.0%、ZrO_(2)成分 0?15.0%、GeO_(2)成分 0?15.0%」と特定し、ZnO成分、及びBi_(2)O_(3)成分の含有量について特定していなかったところ、訂正後の請求項10では「ZnO成分、Bi_(2)O_(3)成分、Al_(2)O_(3)成分、ZrO_(2)成分及びGeO_(2)成分を含有しない」ものに特定するものである。

よって、訂正事項4は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものにも該当する。

訂正事項4のうち、Nb_(2)O_(5)成分を37.999%以上65.0%以下含有する点は、本件明細書【0039】及び実施例10の記載、P_(2)O_(5)成分を22.799%以上含有する点は、実施例10の記載、Rn_(2)O成分を5.0%以上20.0%以下含有する点は、本件明細書【0045】の記載、TiO_(2)成分を13.447%以下含有する点は、実施例6の記載、Ta_(2)O_(5)成分を含有しない点は、本件明細書【0068】の記載と実施例においてTa_(2)O_(5)成分を含有しない点、Ln_(2)O_(3)成分の質量和が1.571%以下である点は、実施例24の記載、及び分光透過率が70%を示す波長(λ_(70))が437nm以下である点は、実施例1の記載にそれぞれ基づくものである。 また、ZnO成分、Bi_(2)O_(3)成分、Al_(2)O_(3)成分、ZrO_(2)成分及びGeO_(2)成分を含有しない点は、実施例において各成分を含有していないことに基づくものである。

よって、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

そして、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)訂正事項5
訂正事項5は、請求項11の「請求項1?10のいずれか一項に記載のガラス」を、「請求項1?9のいずれか一項に記載のガラス」に訂正するものであり、請求項10の引用を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(6)訂正事項6
訂正事項6は、請求項12の「請求項1?11いずれか一項に記載のガラス」を、「請求項1?9のいずれか一項に記載のガラス」に訂正するものであり、請求項10、11の引用を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(7)一群の請求項について
訂正前の請求項2?12は、訂正事項1に係る請求項1を引用するものであるから、本件訂正請求は一群の請求項である請求項1?12について請求されたものであると認める。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書き第1号,第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?12〕について訂正を認める。


第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明の認定
本件訂正請求により訂正された請求項1?12に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明12」という。)は、次の事項により特定されるものである。

「【請求項1】
酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
Nb_(2)O_(5)成分を37.999%以上65.0%以下、
P_(2)O_(5)成分を22.799%以上27.509%以下、
Rn_(2)O成分(式中、RnはLi、Na、K及びCsからなる群より選択される1種以上)を5.0%以上20.0%以下、及び、
TiO_(2)成分を2.0?13.447%
含有し、
B_(2)O_(3)成分の含有量が0?1.653%、
SiO_(2)成分の含有量が0?2.311%、
WO_(3)成分の含有量が0?5.0%
であり、
Ta_(2)O_(5)成分、ZnO成分、Bi_(2)O_(3)成分、Al_(2)O_(3)成分、ZrO_(2)成分及びGeO_(2)成分を含有せず、
酸化物換算組成のガラス全質量に対する質量和(P_(2)O_(5)+SiO_(2)+B_(2)O_(3))が28.896%以下であり、
酸化物換算組成のガラス全質量に対するRO成分(式中、RはMg、Ca、Sr、Ba及びZnからなる群より選択される1種以上)の質量和が6.797%以下であり、
酸化物換算組成のガラス全質量に対するLn_(2)O_(3)成分(式中、LnはY、La、Gd及びYbからなる群より選択される1種以上)の質量和が3.704%以下であり、
0.6307以上0.69以下の部分分散比[θg,F]を有し、15以上27以下のアッベ数(ν_(d))を有し、
分光透過率が70%を示す波長(λ_(70))が439nm以下である光学ガラス。
【請求項2】
酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
Li_(2)O成分 0?10.0%、
Na_(2)O成分 0?20.0%、
K_(2)O成分 0?20.0%及び
Cs_(2)O成分 0?10.0%
の各成分を含有する請求項1記載の光学ガラス(但し、Rn_(2)O成分(式中、RnはLi、Na、K及びCsからなる群より選択される1種以上)の質量和が0.1%未満のものを除く)。
【請求項3】
酸化物換算組成のガラス全質量に対するRn_(2)O成分(式中、RnはLi、Na、K及びCsからなる群より選択される1種以上)の質量和が7%より多い請求項2記載の光学ガラス。
【請求項4】
酸化物換算組成のガラス全質量に対するSb_(2)O_(3)成分の含有量が1.0%以下である請求項1から3のいずれか記載の光学ガラス。
【請求項5】
酸化物換算組成のガラス全質量に対するSb_(2)O_(3)成分の含有量が0.1%未満である請求項4記載の光学ガラス。
【請求項6】
酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
CaO成分 0?5.436%、
SrO成分 0?5.436%及び
BaO成分 0?6.797%
の各成分をさらに含有する請求項1から5のいずれか記載の光学ガラス。
【請求項7】
酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
TiO_(2)成分の含有量が9.908%以下、
WO_(3)成分の含有量が3.325%以下
である請求項1から6のいずれか記載の光学ガラス。
【請求項8】
酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
TeO_(2)成分 0?15.0%
の各成分をさらに含有する請求項1から7のいずれか記載の光学ガラス。
【請求項9】
酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
La_(2)O_(3)成分 0?1.478%
さらに含有する請求項1から8のいずれか記載の光学ガラス。
【請求項10】
酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
Nb_(2)O_(5)成分を37.999?65.0%、
P_(2)O_(5)成分を22.799%以上27.509%以下、
Rn_(2)O成分(式中、RnはLi、Na、K及びCsからなる群より選択される1種以上)を5.0%以上25.0%以下、
TiO_(2)成分を2.0?13.447%
含有し、
B_(2)O_(3)成分の含有量が0?1.653%、
SiO_(2)成分の含有量が0?2.311%、
WO_(3)成分の含有量が0?5.0%
であり、
Ta_(2)O_(5)成分、ZnO成分、Bi_(2)O_(3)成分、Al_(2)O_(3)成分、ZrO_(2)成分及びGeO_(2)成分を含有せず、
酸化物換算組成のガラス全質量に対する質量和(P_(2)O_(5)+SiO_(2)+B_(2)O_(3))が28.896%以下であり、
酸化物換算組成のガラス全質量に対するRO成分(式中、RはMg、Ca、Sr、Ba及びZnからなる群より選択される1種以上)の質量和が6.797%以下であり、
酸化物換算組成のガラス全質量に対するLn_(2)O_(3)成分(式中、LnはY、La、Gd及びYbからなる群より選択される1種以上)の質量和が1.571%以下であり、
0.6307以上0.69以下の部分分散比[θg,F]を有し、15以上27以下のアッベ数(ν_(d))を有し、
分光透過率が70%を示す波長(λ_(70))が437nm以下である光学ガラス。
【請求項11】
部分分散比(θg,F)がアッベ数(ν_(d))との間で(-4.21×10^(-3)×ν_(d)+0.7207)≦(θg,F)≦(-4.21×10^(-3)×ν_(d)+0.7507)の関係を満たす請求項1から9のいずれか記載の光学ガラス。
【請求項12】
請求項1から9のいずれか記載の光学ガラスからなる研磨加工用及び/又は精密プレス成形用のプリフォーム。」


2 取消理由の概要
訂正前の請求項1?12に係る特許に対して、平成28年8月30日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

理由1.請求項1?12に係る発明は、下記甲第1号証の実施例2、6、7から認定される発明であり、また、請求項1、2、4?12に係る発明は、甲第1号証の実施例13から認定される発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

・甲第1号証 中国特許出願公開第101591142号明細書

理由2.請求項1?12に係る発明は、特定されたNb_(2)O_(5)成分、P_(2)O_(5)成分、Rn_(2)O成分及びTiO_(2)成分の組成の上限又は下限の近傍で目的とする光学特性を得られるのかは、発明の詳細な説明の記載から把握することができず、また、請求項1?12に係る発明は、実施例に開示されていないTa_(2)O_(5)成分などが特定されている。
したがって、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されておらず、また、特許請求の範囲は、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえないから、本件特許は、明細書及び特許請求の範囲の記載に不備があるため、特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

3 判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由について
ア 特許法第29条第1項第3号について
(ア)本件発明1について
本件発明1と甲第1号証の実施例2、6、7及び13の光学ガラスと比較すると、各実施例は、本件発明1で特定する部分分散比[θg,F]及びλ_(70)が不明である。
また、本件発明1と実施例2、7、13とは、本件発明1が「TiO_(2)成分を2.0?13.447%」含有するものであるのに対して、実施例2、7、13のTiO_(2)含有量はそれぞれ14.0%、15.5%、25.5%である点で相違し、本件発明1と実施例6とは、本件発明1が「WO_(3)成分の含有量が0?5.0%」であるのに対して、実施例6のWO_(3)含有量は6.6%である点で相違し、本件発明1と実施例13とは、本件発明1が「Rn_(2)O成分(式中、RnはLi、Na、K及びCsからなる群より選択される1種以上)を5.0%以上20.0%以下」含有するものであるのに対して、実施例13のNa_(2)OとK_(2)Oの含有量の合計が3.4%である点で相違している。
したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に対して相違点があるから、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。

(イ)本件発明2?12について
本件発明2?9、11、12は、本件発明1の特定事項を全て含み、本件発明10は、本件発明1とTiO_(2)成分、Rn_(2)O成分、及びWO_(3)成分の含有量に関する特定事項は共通している。
したがって、本件発明2?12は、本件発明1と同様に、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。

イ 特許法第36条第6項第1号及び第4項第1号について
●請求項1?7、10について
本件発明の解決しようとする課題は、「アッベ数(ν_(d))が所望の範囲内にありながら、レンズの色収差をより高精度に補正することができ、且つ着色の少ない光学ガラス、これを用いたプリフォーム及び光学素子を得ること」(本件明細書【0010】)である。
そして、本件発明の光学ガラスは、Nb_(2)O_(5)成分、P_(2)O_(5)成分、Rn_(2)O成分(RnはLi、Na、K及びCsからなる群より選択される1種以上)、及びTiO_(2)成分の必須成分を所定範囲内で含有することによって、所定の部分分散比、アッベ数を有し、さらに分光透過率が70%を示す波長(λ_(70))が439nm以下である特性要件を満たす光学ガラスを提供することにより、上記課題を解決しようとするものであると認められる。

そこで、上記各成分の含有量の範囲が、本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件特許の出願時の技術常識に基づき、当業者が上記特性要件を満足する光学ガラスを作製できるものであると認識できるものであるか否かについて検討する。

Nb_(2)O_(5)成分は、本件明細書【0039】に、ガラスの部分分散比[θg,F]を高め、可視光透過率を高めつつ、屈折率及び分散を高めることができる成分であることが記載されている。
そして、ガラスの屈折率及び分散を高める成分としては、Nb_(2)O_(5)成分の他に、BaO成分、TiO_(2)成分、WO_(3)成分(本件明細書【0054】、【0057】、【0058】)などが開示されているから、例えば、実施例17に基づいて、Nb_(2)O_(5)成分の含有量を45.431%から37.999%まで低減させた場合であっても、TiO_(2)成分、WO_(3)成分の含有量を本件発明で規定している範囲内で調整して、同様に部分分散比が高く、屈折率及び分散が高いガラスが得られることを当業者が認識できる。
また、ガラスの可視光透過率を高める成分としては、Nb_(2)O_(5)成分の他に、P_(2)O_(5)成分、Rn_(2)O成分、RO成分などが開示されているから(本件明細書【0040】、【0045】、【0056】)、例えば、実施例17に基づいて、Nb_(2)O_(5)成分の含有量を45.431%から37.999%まで低減させた場合であっても、P_(2)O_(5)成分、及びRn_(2)O成分などの含有量を本件発明で規定している範囲内で調整して、同様に可視光透過率の高いガラスが得られることを当業者が認識できる。
さらに、Nb_(2)O_(5)成分の含有量が多い場合には、「Nb_(2)O_(5)成分の含有量を75.0%未満に設定することで、ガラスの耐失透性を高めることができる」(本件明細書【0039】)とあるから、Nb_(2)O_(5)成分の含有量が多いとガラスが失透し易くなることが理解される。
ここで、含有量が多いとガラスを失透させる作用をもたらす成分としては、Nb_(2)O_(5)成分の他に、Rn_(2)O成分(Li_(2)O成分、Na_(2)O成分、K_(2)O成分、Cs_(2)O成分)、TiO_(2)成分、WO_(3)成分(本件明細書【0041】?【0044】、【0057】、【0058】)などが開示されているから、例えば、実施例26に基づいて、Nb_(2)O_(5)成分の含有量を49.493%から65.0%まで増加させた場合であっても、Rn_(2)O成分、TiO_(2)成分などを本件発明で規定している範囲内で調整することにより、同様に、耐失透性の高いガラスが得られることを当業者が認識できる。
そして、P_(2)O_(5)成分、TiO_(2)成分及びRn_(2)O成分、さらには本件発明1?7、10で規定する他のガラス成分についても、同様に、本件発明で規定する組成の範囲内において、実施例及び発明の詳細な説明の各ガラス成分が有する特性に関する記載に基づいて、同様な特性を有する他のガラス成分の含有量を本件発明で規定する範囲内で調整することにより同等の特性を有するガラスが得られることを当業者が認識できる。
そして、実施例に開示されていないTa_(2)O_(5)成分などは、本件発明1?7、10で含有しないことが特定された。

以上のことから、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1?7、10で規定する物性を有する光学ガラスを得られることができる程度に明確かつ十分に記載したものであり、また、本件発明1?7、10は、当業者が上記発明の課題を解決することができると認識できる範囲のものであるといえる。

●請求項8、9、11、12
本件発明8には、TeO_(2)成分を「0?15.0%」含有することが特定されている。
TeO_(2)成分について、発明の詳細な説明では、ガラスの屈折率を高める任意成分であり、特に、15.0%以下とすることで、ガラスの可視域での透過波長範囲を広げ、ガラス融液の清澄を促すことができることが記載されている(本件明細書【0060】)。
しかし、同様に屈折率を高める任意成分である Bi_(2)O_(3)成分、Ta_(2)O_(5)成分、GeO_(2)成分の実施例はなく、また、他の屈折率を高める任意成分であるBaOやLa_(2)O_(3)などの実施例は含有量が低く、TeO_(2)成分自体を含有する実施例もないことから、TeO_(2)成分を15.0%まで含有する場合に、本件発明の光学ガラスを得るためには、配合組成を決定するために過度の試行錯誤が必要であると認められる。
したがって、発明の詳細な説明の記載は、本件発明8で規定する光学ガラスを得られることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえず、また、本件発明8は、当業者が上記発明の課題を解決することができると認識できる範囲のものであるともいえない。
本件発明8を引用する本件発明9、11、12についても同様である。

(2)平成29年 7月 7日付け意見書における特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、平成29年 7月 7日付け意見書において、下記の主張をしている。

実施可能要件について
Rn_(2)O(Na_(2)O)はガラスの耐失透性を高める働きがあるから、Na_(2)OをNb_(2)O_(5)に置換する動機がなく、Nb_(2)O_(5)の上限65.0%は実施できない。

29条1項柱書及びサポート要件について
Nb_(2)O_(5)、P_(2)O_(5)、及びRn_(2)Oの上限及び下限は、発明の詳細な説明の好ましい範囲の記載、又は訂正により参考例となった「実施例」を根拠としているものであるから、出願時に発明が完成されていたとはいえず、また、サポート要件にも違反する。

29条について
甲第1号証の実施例2はTiO_(2):14.0%であるから、本件発明1及び10のTiO_(2)含有量「2.0?13.447%」を満たさない点(相違点1)、また、同実施例6はWO_(3):6.6%であるから、本件発明1及び10のWO_(3)含有量「0?5.0%」を満たさない点(相違点2)でそれぞれ相違するが、甲第1号証の記載から、本件発明1及び10で規定するガラス組成とすることは容易である。

上記主張について検討する。

アについて
例えば、本件明細書【0042】には、Na_(2)O成分について「Na_(2)O成分は・・・ガラスの耐失透性を高め・・・透明性を高める成分であり・・・」と記載される一方、「20.0%以下とすることで・・・Na_(2)O成分の過剰な含有によるガラスの耐失透性の低下を抑えることができる。従って、・・・最も好ましくは15.0%を上限とする。」と記載されているように、Rn_(2)O成分は、ガラスの耐失透性を高める性質があるが、過剰に含有させると耐失透性を低下させる性質もあることが開示されているといえる。 そうすると、Nb_(2)O_(5)成分の含有量を65.0%まで増加させると失透し易くなるところ、Rn_(2)O成分を低減させればよいことが理解でき、上記「(1)イ」に記載したとおりであるから、Nb_(2)O_(5)成分の含有量の上限65.0%について実施できないとはいえない。

イについて
上記「(1)イ」に記載したとおり、本件発明1?7、10は、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえるから、サポート要件に違反するとはいえない。
また、29条1項柱書に基づく主張は、新たな理由を追加するものであるから、これを採用することはできない。

ウについて
相違点1について検討すると、甲第1号証には、特許異議申立人が主張するように、Nb_(2)O_(5)は高屈折率及び高分散の性能を得るために必要な成分であり、ガラスの化学的耐久性を向上する成分でもあり、40-50%が望ましく、TiO_(2)は屈折率、分散及び化学的耐久性を向上する効果を有し、TiO_(2)の下限は10%であることがさらに望ましいことが記載されていると認められる。
しかし、甲第1号証には、表1をみても、TiO_(2)とNb_(2)O_(5)の含有量のみを増減した例はなく、また、甲第1号証に部分分散比及びλ_(70)の記載はないから、甲第1号証の実施例2のガラスのTiO_(2)の一部をNb_(2)O_(5)に置換して、本件発明が特定する部分分散比やλ_(70)を得ることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
また、相違点2について検討すると、甲第1号証には、特許異議申立人が主張するように、Bi_(2)O_(3)とWO_(3)は高屈折率及び高分散のガラスに必要ないくつかの光学定数を実現するための選択可能な成分であることが記載されていると認められるが、本件発明1及び10では、Bi_(2)O_(3)成分を含有しないことが特定されているから、甲第1号証の実施例6のガラスを基に、本件発明1及び10のガラス組成を構成することを当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張は採用できない。

(3)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について

ア 特許法第29条第1項第3号及び同法第29条第2項
訂正前の請求項1?12に係る発明は、下記甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(特許異議申立書12?16ページ、19?23ページ)

甲第2号証:特開平9-188540号公報

イ 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)及び第6項第1号(サポート要件)
甲第3号証の例9は、本件明細書に記載された、本件発明の好ましい含有量(【0039】?【0072】)をすべて満たすが、λ_(70)が488nmであるから、本件発明のλ_(70)を満たさない。そうすると、本件発明の組成を満たしたとしても、本件発明のλ_(70)を実施できないのだから、本件発明は実施可能要件に違反し、また、個々の組成が実施可能であることを裏付けているにすぎない実施例1?36を、本件特許発明にまで拡張ないし一般化することができず、サポート要件にも違反する。
(特許異議申立書23?26ページ)

ウ 特許法第36条第4項第1号(委任省令要件)
本件明細書には、本件発明の好ましい含有量((【0039】?【0072】)が記載されているが、上記「好ましい含有量」が実施可能といえるのか根拠が不明であり、境界値がなぜ「好ましい」といえるのかも根拠が不明である。
(特許異議申立書26、27ページ)

上記主張について検討する。

アについて
本件発明1は、「SiO_(2)の成分の含有量が0?2.311%」である点で、SiO_(2)の含有量が3.0%である甲第2号証の実施例4に記載された発明と少なくとも相違している。
ここで、特許異議申立人は、甲第2号証の【0030】には、SiO_(2)が0?30%の範囲であることが記載され、実施例1、2、7のSiO_(2)の含有量は、それぞれ1.5、2.0、1.0%であることから、実施例4のSiO_(2)の含有量を、本件発明で規定する範囲内である1.0?2.0%とすることは、容易であると主張している。
しかし、実施例1、2、7は、本件発明で規定する組成要件を満たさないものであり、甲第2号証には、70%透過率波長を維持しつつSiO_(2)の含有量のみを調整することは記載も示唆もされていない。
そうすると、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
本件発明2?12についても、同様であって、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ、ウについて
本件発明1?12は、ガラス成分の各含有量を規定した組成要件と、部分分散比、アッベ数、及びλ_(70)の物性要件を特定した光学ガラスの発明である。
光学ガラスにおいて、組成要件を満たしていても、各成分の含有量の組合せによっては所望の光学特性が得られない場合もあることは技術常識であり、そのために物性要件が特定されているのであるから、本件発明の組成要件を満たす甲第3号証の実施例9が、本件発明の光学特性を得られないとしても、これによって、ただちに本件発明が実施できないとはいえない。
そして、本件明細書には、本件発明の組成要件と物性要件を満たす「実施例1?36」が開示され、上記Nb_(2)O_(5)成分などと同様に、本件明細書には、各ガラス成分を増加又は低減することによってガラスに与える性質について明らかにされているから、当業者であれば、実施例の組成を参照し、目的とする光学特性が得られるように、各ガラス成分の含有量を増加又は低減することができる。
したがって、本件発明1?7、10は当業者が実施可能であり、また、本件発明の課題を解決できると認識できるものである。


第4 むすび
以上のとおりであるから、請求項8、9、11、12に係る特許は、特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
また、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、請求項1?7、10に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に請求項1?7、10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
Nb_(2)O_(5)成分を37.999%以上65.0%以下、
P_(2)O_(5)成分を22.799%以上27.509%以下、
Rn_(2)O成分(式中、RnはLi、Na、K及びCsからなる群より選択される1種以上)を5.0%以上20.0%以下、及び、
TiO_(2)成分を2.0?13.447%
含有し、
B_(2)O_(3)成分の含有量が0?1.653%、
SiO_(2)成分の含有量が0?2.311%、
WO_(3)成分の含有量が0?5.0%
であり、
Ta_(2)O_(5)成分、ZnO成分、Bi_(2)O_(3)成分、Al_(2)O_(3)成分、ZrO_(2)成分及びGeO_(2)成分を含有せず、
酸化物換算組成のガラス全質量に対する質量和(P_(2)O_(5)+SiO_(2)+B_(2)O_(3))が28.896%以下であり、
酸化物換算組成のガラス全質量に対するRO成分(式中、RはMg、Ca、Sr、Ba及びZnからなる群より選択される1種以上)の質量和が6.797%以下であり、
酸化物換算組成のガラス全質量に対するLn_(2)O_(3)成分(式中、LnはY、La、Gd及びYbからなる群より選択される1種以上)の質量和が3.704%以下であり、
0.6307以上0.69以下の部分分散比[θg,F]を有し、15以上27以下のアッベ数(ν_(d))を有し、
分光透過率が70%を示す波長(λ_(70))が439nm以下である光学ガラス。
【請求項2】
酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
Li_(2)O成分 0?10.0%、
Na_(2)O成分 0?20.0%、
K_(2)O成分 0?20.0%及び
Cs_(2)O成分 0?10.0%
の各成分を含有する請求項1記載の光学ガラス(但し、Rn_(2)O成分(式中、RnはLi、Na、K及びCsからなる群より選択される1種以上)の質量和が0.1%未満のものを除く)。
【請求項3】
酸化物換算組成のガラス全質量に対するRn_(2)O成分(式中、RnはLi、Na、K及びCsからなる群より選択される1種以上)の質量和が7%より多い請求項2記載の光学ガラス。
【請求項4】
酸化物換算組成のガラス全質量に対するSb_(2)O_(3)成分の含有量が1.0%以下である請求項1から3のいずれか記載の光学ガラス。
【請求項5】
酸化物換算組成のガラス全質量に対するSb_(2)O_(3)成分の含有量が0.1%未満である請求項4記載の光学ガラス。
【請求項6】
酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
CaO成分 0?5.436%、
SrO成分 0?5.436%及び
BaO成分 0?6.797%
の各成分をさらに含有する請求項1から5のいずれか記載の光学ガラス。
【請求項7】
酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
TiO_(2)成分の含有量が9.908%以下、
WO_(3)成分の含有量が3.325%以下
である請求項1から6のいずれか記載の光学ガラス。
【請求項8】
酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
TeO_(2)成分 0?15.0%
の各成分をさらに含有する請求項1から7のいずれか記載の光学ガラス。
【請求項9】
酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
La_(2)O_(3)成分 0?1.478%
さらに含有する請求項1から8のいずれか記載の光学ガラス。
【請求項10】
酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
Nb_(2)O_(5)成分を37.999?65.0%、
P_(2)O_(5)成分を22.799%以上27.509%以下、
Rn_(2)O成分(式中、RnはLi、Na、K及びCsからなる群より選択される1種以上)を5.0%以上20.0%以下、
TiO_(2)成分を2.0?13.447%
含有し、
B_(2)O_(3)成分の含有量が0?1.653%、
SiO_(2)成分の含有量が0?2.311%、
WO_(3)成分の含有量が0?5.0%
であり、
Ta_(2)O_(5)成分、ZnO成分、Bi_(2)O_(3)成分、Al_(2)O_(3)成分、ZrO_(2)成分及びGeO_(2)成分を含有せず、
酸化物換算組成のガラス全質量に対する質量和(P_(2)O_(5)+SiO_(2)+B_(2)O_(3))が28.896%以下であり、
酸化物換算組成のガラス全質量に対するRO成分(式中、RはMg、Ca、Sr、Ba及びZnからなる群より選択される1種以上)の質量和が6.797%以下であり、
酸化物換算組成のガラス全質量に対するLn_(2)O_(3)成分(式中、LnはY、La、Gd及びYbからなる群より選択される1種以上)の質量和が1.571%以下であり、
0.6307以上0.69以下の部分分散比[θg,F]を有し、15以上27以下のアッベ数(ν_(d))を有し、
分光透過率が70%を示す波長(λ_(70))が437nm以下である光学ガラス。
【請求項11】
部分分散比(θg,F)がアッベ数(ν_(d))との間で(-4.21×10^(-3)×ν_(d)+0.7207)≦(θg,F)≦(-4.21×10^(-3)×ν_(d)+0.7507)の関係を満たす請求項1から9のいずれか記載の光学ガラス。
【請求項12】
請求項1から9のいずれか記載の光学ガラスからなる研磨加工用及び/又は精密プレス成形用のプリフォーム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-01-16 
出願番号 特願2010-5332(P2010-5332)
審決分類 P 1 651・ 537- ZDA (C03C)
P 1 651・ 536- ZDA (C03C)
P 1 651・ 113- ZDA (C03C)
P 1 651・ 121- ZDA (C03C)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 相田 悟  
特許庁審判長 大橋 賢一
特許庁審判官 後藤 政博
瀧口 博史
登録日 2015-10-30 
登録番号 特許第5829379号(P5829379)
権利者 株式会社オハラ
発明の名称 光学ガラス、プリフォーム、及び光学素子  
代理人 正林 真之  
代理人 新山 雄一  
代理人 林 一好  
代理人 新山 雄一  
代理人 林 一好  
代理人 正林 真之  

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