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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B24B
審判 全部申し立て 2項進歩性  B24B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B24B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B24B
管理番号 1340068
異議申立番号 異議2017-700704  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-07-20 
確定日 2018-03-16 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6068025号発明「研磨布」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6068025号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第6068025号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6068025号の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成24年7月5日に特許出願され、平成29年1月6日にその特許権の設定登録がされ、平成29年1月25日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許について、平成29年7月20日に特許異議申立人 西田 勝一(以下、「特許異議申立人1」という。)により特許異議の申立てがされ、平成29年7月24日に特許異議申立人 久山 隆(以下、「特許異議申立人2」という。)により特許異議の申立てがされ、平成29年10月17日付けで取消理由が通知され、平成29年12月18日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人1から平成30年2月2日に意見書及び参考資料が提出され、特許異議申立人2から平成30年2月5日に意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断

1.訂正の内容

本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。

訂正事項1 請求項1の「前記研磨布の裏面側から前記研磨布に白色光を透過させたときに、前記研磨布の前記裏面とは反対側の主面において、」を、
「前記研磨布の裏面側から前記研磨布に白色光を透過させたときに、前記研磨布の前記裏面とは反対側の主面において、600箇所以上の10mm×10mm角の局所的な測定領域の明度を測定することができ、」に訂正する。

訂正事項2 請求項1の「100?200階調の範囲にある局所的な明度のうちの95%以上が、」を、
「100?200階調の範囲にある局所的な前記明度のうちの95%以上が、」に訂正する。

訂正事項3 請求項1の「前記研磨布全体での平均明度に対して±15階調以内になるよう、前記局所的な明度が分布している」を、
「前記研磨布全体での平均明度に対して±15階調以内になるよう、前記局所的な明度が分布しており、前記平均明度が140?160である」に訂正する。

2.訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

上記訂正事項1の訂正は、研磨布が、600箇所以上の10mm×10mm角の局所的な測定領域の明度で測定することができるものであることを特定するものであり、「第3 2.取り消し理由の概要」に示した取消理由を、「第3 3.判断」に示したとおり解消するためのものであるから、不明瞭な記載の釈明を目的とするものである。
そして、係る発明特定事項は、明細書の段落【0036】に記載された事項であるから、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

上記訂正事項2の訂正は、訂正前の請求項1における「明度」との記載を、「前記明度」に変更するものであって、訂正前の請求項1の「明度」とした記載が指すものが、訂正事項1によって請求項1に付加された「明度」であることを訂正により明らかとするものであるから、不明瞭な記載の釈明を目的とする訂正である。よって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

上記訂正事項3の訂正は、訂正前の研磨布全体での平均明度について、140?160であるという新たな発明特定事項を直列的に付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、係る発明特定事項は、明細書の段落【0033】に記載された事項であるから、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

そして、これら訂正は一群の請求項に対して請求されたものである。

3.小括

以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号または第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項1ないし6について訂正を認める。


第3 特許異議の申立てについて

1.本件発明

本件訂正請求により訂正された訂正請求項1を含む、特許請求の範囲の請求項1ないし6に係る発明(以下、各々「本件発明1」等という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された次のものである。

「【請求項1】
シート状の繊維基材と、その繊維基材に含浸された樹脂と、を備える研磨布であって、
前記研磨布の裏面側から前記研磨布に白色光を透過させたときに、前記研磨布の前記裏面とは反対側の主面において、600箇所以上の10mm×10mm角の局所的な測定領域の明度を測定することができ、100?200階調の範囲にある局所的な前記明度のうちの95%以上が、前記研磨布全体での平均明度に対して±15階調以内になるよう、前記局所的な明度が分布しており、前記平均明度が140?160である研磨布。
【請求項2】
A硬度が50°?90°、圧縮率が0.5%?10%、かつ、密度が0.25g/cm^(3)?0.50g/cm^(3)である、請求項1に記載の研磨布。
【請求項3】
前記繊維基材が、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン及び(メタ)アクリル樹脂からなる群より選ばれる1種以上の材料を含む不織布であり、かつ、前記含浸された樹脂が、ポリウレタン樹脂、ニトリル・ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ニトリルゴム、(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂及びエポキシ樹脂からなる群より選ばれる1種以上の樹脂を含む、請求項1又は2に記載の研磨布。
【請求項4】
厚さが5.0mm以下、かつ、目付けが125g/m^(2)?2500g/m^(2)である、請求項1?3のいずれか1項に記載の研磨布。
【請求項5】
通気度が、30cc/cm^(2)/秒以上である、請求項1?4のいずれか1項に記載の研磨布。
【請求項6】
通気度が、15cc/cm^(2)/秒以下である、請求項1?4のいずれか1項に記載の研磨布。」

2.取消理由の概要

訂正前の請求項1ないし6に係る特許に対して平成29年10月17日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

(1)特許法第36条第4項第1号

ア 取消理由1.(1)

発明の詳細な説明は、請求項1?6に係る発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとは言えない。
具体的には、請求項1は「100?200階調の範囲にある局所的な明度のうちの95%以上が、前記研磨布全体での平均明度に対して±15階調以内になるよう、前記局所的な明度が分布している」という光の透過性に関する特性によって、「研磨布」を特定しようとするものである。
そのため、当該請求項1に係る発明について実施可能に発明の詳細な説明を記載するには、その特性の定義を定量的に決定するための試験方法を示す必要があるところ、発明の詳細な説明の段落【0031】?【0039】には、上記した試験方法の具体的な態様が示されているものの、上記特性中の「局所的な明度」の「局所」の設定の仕方は何ら特定されていない。
すなわち、例えば、「研磨布」の「主面」における10mm四方の領域に、5mm四方の明度が0階調である領域と、5mm四方の明度が256階調である領域とが、2つずつ存在するものを想定した場合、「局所」を前記した10mm四方の領域に設定すると、「局所的な明度」は、明度0階調の領域と明度256階調の領域とが同面積であることから平均化され、128階調のものが1つになると認められるが、「局所」を前記した4つの5mm四方の領域それぞれとすると、0階調のものが2つで、256階調のものが2つとなる。
このように、同じ研磨布を対象としても、「局所」としてどのような領域を選択するかによって「100?200階調の範囲にある局所的な明度」の分布は様々存在し得、その分布に応じて、上記試験の結果の内容も異なり得ることは明らかであるから、発明の詳細な説明には、上記した特性の定義を定量的に決定するための試験方法が示されているとは言えず、発明の詳細な説明は、請求項1に係る発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとは言えない。

イ 取消理由1.(2)

発明の詳細な説明は、請求項1?6に係る発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとは言えない。
具体的には、発明の詳細な説明の段落【0035】?【0036】には、上記(1)に記した試験方法の具体的な態様として、100枚の研磨布を検査対象とし合計で600箇所以上の明度を測定するものが開示されており、その600箇所以上の局所的な測定領域の中で100?200階調の範囲にある局所的な測定領域のうち95%以上において、測定領域全体における明度に対して±15階調以内の明度であれば、請求項1に係る発明の範囲内になるとされている。
そうすると、これは必ず100枚それぞれがその「局所的な測定領域の中で100?200階調の範囲にある局所的な測定領域のうち95%以上において、測定領域全体における明度に対して±15階調以内の明度であ」ることを意味せず、100枚のうちの一部が「局所的な測定領域の中で100?200階調の範囲にある局所的な測定領域のうち95%以上において、測定領域全体における明度に対して±15階調以内の明度で」ない場合も含んでいることとなる。
すなわち、100枚のうち50枚が96%で、50枚が94%であったとすると、平均すれば95%以上となり、100枚がいわゆる合格と判断されることとなるが、94%の研磨布と96%の研磨布とでどのような差異があるのか、また、95%という数値の意味も不明であるし、さらに、50枚の94%の研磨布のみを検査すれば50枚が不合格となるわけで、何を実施すれば発明を実施したことになるのか理解することができない。
このように、上記した試験の要領によって特定される研磨布であっても、請求項1に係る発明の範囲内となるとは限らない場合が十分にあるから、発明の詳細な説明に記載された試験の要領は、請求項1に係る発明を実施するための試験とならないから、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとは言えない。
よって、請求項1、及び、これに従属する請求項2?6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

ウ 取消理由1.(3)

発明の詳細な説明は、請求項1?6に係る発明の「階調」で表現される「研磨布全体での平均明度」について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとは言えない。
具体的には、前記「階調」で表現される「研磨布全体での平均明度」に対応して、発明の詳細な説明の段落【0033】には、「上述の焦点の調節の際には併せて、測定領域40の全体における明度(後に詳述)が140?160となるように、照明装置120の照明出力及び/又は撮影装置130のシャッタースピードを調節する。」と記載されているが、当該記載は研磨布全体の平均明度を140?160階調とすべきことを内容としているのに対して、特許された請求項1に係る発明での「研磨布全体の平均明度」には140?160階調であるとの特定はされていないのであるから、当該【0033】の記載は請求項1に係る発明を実施する説明ではないと判断される。
また、段落【0033】には、「明度」について、「(後に詳述)」とされており、段落【0038】には、「平均明度が140階調±5階調になるよう」や「平均明度が140階調±5階調になるよう」との記載が見られるから、「(後に詳述)」に相当するのは段落【0037】?【0038】の記載であると一応の推測が成り立つものの、段落【0037】?【0038】に挙げられているのは、測定対象となる研磨布についての平均明度ではなく、特定のガラスエポキシテープからなる基準試料についての平均明度であり、測定対象となる研磨布と特定のガラスエポキシテープとの光の透過性に関する特性の関係は、いずれの段落にも何ら特定されていないから、段落【0033】の「明度」を理解する上で段落【0037】?【0038】に開示された事項も同様に、請求項1に係る発明を実施するための説明と扱うことができない。
このように、「階調」で表現される「研磨布全体での平均明度」であって、その程度が不明な状態のまま発明を実施することができる内容で記載された箇所が、発明の詳細な説明には見当たらないから、発明の詳細な説明は、請求項1に係る発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとは言えない。
よって、請求項1、及び、これに従属する請求項2?6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(2)特許法第36条第6項第1号

ア 取消理由2.(1)

請求項1には、研磨布を「前記研磨布の裏面側から前記研磨布に白色光を透過させたときに、前記研磨布の前記裏面とは反対側の主面において、100?200階調の範囲にある局所的な明度のうちの95%以上が、前記研磨布全体での平均明度に対して±15階調以内になるよう、前記局所的な明度が分布している」という光の透過性に関する特性によって特定する発明が記載されている。
一方、発明の詳細な説明には、上記特定が、全体的に構造の均一性が高い研磨布を得るという課題を解決するためのものであることが記載され、段落【0060】?【0061】、【0068】?【0069】、【0076】?【0077】、【0080】?【0081】に、本件発明の実施例1?4の研磨布を製造する方法が記載されている。
そして、本件発明の実施例である以上、これら研磨布は上記特性を満たすと認められ、各研磨布における、100?200階調の範囲にある局所的な明度のうちの、前記研磨布全体での平均明度に対して±15階調以内になる「95%」以上の具体的な割合が、【表1】や【表2】に「明度の分布」として示されている。
しかし、発明の詳細な説明における、上記特性値を得るために行う試験の結果は、試験を行うにあたっての「局所」の領域の設定の仕方(上記したアを参照。)、試験対象の研磨布を複数枚とした場合における各々の研磨布の構造の均一性の実際のばらつきの影響(上記したイを参照。)、「階調」で表現される「研磨布全体での平均明度」の定義付け(上記したウを参照。)に左右されるものであって、一意に導出されるものではないから、その試験方法で導出された各実施例の研磨布の「明度の分布」についても、値は一意ではなく【表1】や【表2】に示されたものとは異なる可能性があり、「95%」を下回り得ることから理解できるように、発明の詳細な説明における上記特性値を得るために行う試験では、上記した特性を満たす研磨布の特定を果たせないというのが出願時の技術常識である。
そうすると、請求項1に記載した事項は課題解決手段であるとは、必ずしも言えないはずである。
したがって、出願時の技術常識に照らしても、特許請求の範囲の記載にある、上記特性を満たせば、全体的に構造の均一性が高い研磨布を得るという課題を解決できるとは認められない。
よって、請求項1の記載は、課題を解決する手段が不十分であるから、解決手段を欠く状態で記載されたままで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとは言えず、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。(特許・実用新案審査基準 第II部第2章第2節 サポート要件 2.2(3)を参照。)。
このように、請求項1、及び、これに従属する請求項2?6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(3)特許法第36条第6項第2号

ア 取消理由3.(1)

請求項1の発明特定事項「前記研磨布の裏面側から前記研磨布に白色光を透過させたときに、前記研磨布の前記裏面とは反対側の主面において、100?200階調の範囲にある局所的な明度のうちの95%以上が、前記研磨布全体での平均明度に対して±15階調以内になるよう、前記局所的な明度が分布している」は不明確である。
具体的には、上記した(1)ウに示したように、階調で表現される明度の定義は発明の詳細な説明を参照しても特定できないものの、仮に、256階調という明度について、照明装置の相対的な明るさや暗さに関わらず、研磨布を介在させない状態での明度として256階調が割り当てられるものと解釈した場合、研磨布に照射される白色光の強度や、光量を調節するためのシャッタースピードが異なると、同じ研磨布であっても、例えば、「平均明度」が180階調である場合と、120階調である場合と、が有り得、この場合、「平均明度」のみならず、研磨布を透過する光の明度も2/3倍されると認められるが、「局所的な明度」としての対象範囲である「100?200階調」そのものは変化しないから、「平均明度」が180階調である場合と、120階調である場合とで、「100?200階調の範囲にある局所的な明度」の分布は異なり、ひいては、「研磨布全体での平均明度に対して±15階調以内」に含まれる明度の分布も異なると考えられる。
このように、同じ研磨布を対象としても、研磨布に照射される白色光の強度や、光量を調節するためのシャッタースピードをどのように設定するかによって、「100?200階調の範囲にある局所的な明度」の分布、ひいては、「研磨布全体での平均明度に対して±15階調以内」に含まれる明度の分布は様々存在し、一義的に決定することができないから、上記発明特定事項は対象を特定するに足るものではなく不明確である。
よって、請求項1、及び、これに従属する請求項2?6に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

イ 取消理由3.(2)

請求項1の「前記研磨布の裏面側から前記研磨布に白色光を透過させたときに、前記研磨布の前記裏面とは反対側の主面において、100?200階調の範囲にある局所的な明度のうちの95%以上が、前記研磨布全体での平均明度に対して±15階調以内になるよう、前記局所的な明度が分布している」は不明確である。
具体的には、「局所的な明度」の全てが「100?200階調の範囲」となるように白色光を研磨布に透過させた状態において、「局所的な明度のうちの95%以上が、前記研磨布全体での平均明度に対して±15階調以内となるよう、前記局所的な明度が分布していることを意味しているのか、それとも、白色光を研磨布に透過させた際に「100?200階調の範囲」にない「局所的な明度」は除いた上で、「局所的な明度のうち95%以上が、前記研磨布全体での平均明度に対して±15階調以内となるよう、前記局所的な明度が分布している」ことを意味しているのか明らかでない。
よって、請求項1、及び、これに従属する請求項2?6に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

3.判断

(1)取消理由通知に記載した取消理由について

ア 取消理由1(特許法第36条第4項第1号)について

(ア)上記2.(1)アに示した取消理由1.(1)の要点は、請求項1に係る発明について実施可能に発明の詳細な説明を記載するには、発明の詳細な説明に、その特性の定義を定量的に決定するための試験方法が示されている必要があるところ、その試験方法において、同じ研磨布を対象としても、「局所」としてどのような領域を選択するかによって「100?200階調の範囲にある局所的な明度」の分布は様々存在し得、その分布に応じて、上記試験の結果の内容も異なる得ることは明らかであるから、発明の詳細な説明には、上記した特性の定義を定量的に決定するための試験方法が示されているとは言えない点で、発明の詳細な説明は、請求項1に係る発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとは言えないとするものである。
これに対し、特許権者は、意見書の4(1)にて、明度を測定する局所として「10mm×10mm角の局所的な測定領域」を選択する訂正を行ったことで、取消理由1.(1)は解消した旨主張している。
そこで、前記取消理由1.(1)が解消したか否かについて検討すると、取消理由1.(1)は、「局所」の領域の大きさが一意に定まらないことに基づくものであるところ、上記訂正は、請求項1における「局所」の領域の大きさを「10mm×10mm角」に特定するものである。
したがって、「局所」の領域の大きさが一意に定まらないことに基づいて、「100?200階調の範囲にある局所的な明度」の分布が一意に特定されず、それ故、上記試験の結果の内容も一意に定まらなくなる、という事象が生じないのは明らかである。
よって、取消理由1.(1)は、訂正により解消したことが明らかである。

(イ)上記取消理由2.(1)イした取消理由1.(2)の要点は、発明の詳細な説明の段落【0035】?【0036】に挙げられた試験方法の具体的な態様は、測定対象の研磨布が複数枚であることを前提とすると、全ての枚数が「局所的な測定領域の中で100?200階調の範囲にある局所的な測定領域のうち95%以上において、測定領域全体における明度に対して±15階調以内の明度であ」ることを意味するものではないから、上記した試験方法の要領によって特定される研磨布であっても、請求項1に係る発明の範囲内となるとは限らない場合が十分にあるから、発明の詳細な説明に記載された試験の要領は、請求項1に係る発明を実施するための試験とならないから、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとは言えないとするものである。
これに対し、特許権者は、意見書の4(2)において、「以上のとおり、本件発明は1枚の研磨布に係るものであり、100枚の研磨布に係るものではない・・・」旨主張している。
そこで、前記取消理由1.(2)が解消したか否かについて検討すると、特許権者の係る主張は、発明の詳細な説明の段落【0036】の「測定対象となる研磨布は、例えば、寸法が20cm×30cm角の一枚の研磨布であってもよく」との記載に裏付けられたものと認められ、そうすると、測定対象の研磨布が複数枚であることを前提とした取消理由1.(2)が解消していることは明らかである。

(ウ)上記取消理由2.(1)ウに示した取消理由1.(3)の要点は、「階調」で表現される「研磨布全体での平均明度」であって、その程度が不明な状態のまま発明を実施することができる内容で記載された箇所が、発明の詳細な説明には見当たらないから、発明の詳細な説明は、請求項1に係る発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとは言えないとするものである。
これに対し、特許権者は、意見書の4(3)において、平均明度を「140?160」階調に特定する訂正を行った旨主張している。
そこで、前記取消理由1.(3)が解消したか否か検討する。
具体的には、発明の詳細な説明の段落【0033】の「測定領域240全体における明度(後に詳述)が140?160となるように、照明装置120の照明出力及び/又は撮影装置130のシャッタースピードを調節する。」との記載から、研磨布全体での平均明度は、140?160の間で調節可能なものであることが理解できるところ、同じ研磨布における、ある平均明度に対して±15階調の範囲に含まれる局所的な明度が、他の平均明度においてもその±15階調の範囲に含まれるか、すなわち、平均明度が140?160階調という範囲に特定されることで、発明を実施することができる否か検討する。
平均明度が160階調である場合、それに対する±15階調の範囲は145?175階調となるところ、同じ研磨布に対して平均明度を140まで低くした場合、前記範囲に相当する階調は、126?153階調程度となり、140階調に対して±15階調の範囲内に収まる。
したがって、研磨布全体での平均明度の程度が、140?160階調という範囲に特定されることで、同じ研磨布における平均明度に対して±15階調の範囲に含まれる局所的な明度を特定することができるのは明らかである。
そうすると、請求項1において、平均明度が「140?160」階調に特定されたので、研磨布全体での平均明度の程度が不明な状態のまま発明を実施することができる内容で記載された箇所が、発明の詳細な説明には見当たらないことに基づく取消理由1.(3)が解消していることは明らかである。

イ 取消理由2(特許法第36条第6項第1号)について

(ア)上記取消理由2.(2)アに示した取消理由2.(1)の要点は、発明の詳細な説明における試験の結果は、試験を行うにあたっての「局所」の領域の設定の仕方(上記したア(ア)を参照。)、試験対象の研磨布を複数枚とした場合における各々の研磨布の構造の均一性の実際のばらつきの影響(上記したア(イ)を参照。)、「階調」で表現される「研磨布全体での平均明度」の定義付け(上記したア(ウ)を参照。)に左右されるものであって、一意に導出されるものではないから、その試験方法で導出された各実施例の研磨布の「明度の分布」についても、値は一意ではなく、発明の詳細な説明の【表1】や【表2】に示されたものとは異なり、「95%」を下回り得る可能性があることから理解できるように、発明の詳細な説明における上記特性値を得るために行う試験では、上記した特性を満たす研磨布の特定を果たせないというのが出願時の技術常識であるから、請求項1に記載した事項は課題解決手段であるとは、必ずしも言えない、とするものである。
これに対し、特許権者は、意見書の5において、理由1-1?1-3のとおり、明度を測定する局所として「10mm×10mm角の局所的な測定領域」を選択すること、本件発明の対象である研磨布が「600箇所以上の10mm×10mm角の局所的な測定領域の明度を測定することができ」るものであること、及び、平均明度が「140?160」であることが特定されており、これによれば、明度の分布を一意に導出することができる旨主張している。
そこで、前記取消理由2.(1)が解消したか否か検討すると、理由1-1?1-3は、上記したように、いずれも解消するものであるから、それに伴い、取消理由2.(1)も解消するのは明らかである。

ウ 取消理由3(特許法第36条第6項第2号)について

(ア)上記取消理由2.(3)アに示した取消理由3.(1)の要点は、同じ研磨布を対象としても、研磨布に照射される白色光の強度や、光量を調節するためのシャッタースピードをどのように設定するかによって、「100?200階調の範囲にある局所的な明度」の分布、ひいては、「研磨布全体での平均明度に対して±15階調以内」に含まれる明度の分布は様々存在し、一義的に決定することができないから、請求項1の「前記研磨布の裏面側から前記研磨布に白色光を透過させたときに、前記研磨布の前記裏面とは反対側の主面において、100?200階調の範囲にある局所的な明度のうちの95%以上が、前記研磨布全体での平均明度に対して±15階調以内になるよう、前記局所的な明度が分布している」という発明特定事項は対象を特定するに足るものではなく不明確であるとするものである。
これに対し、特許権者は、意見書の6(1)において、平均明度を「140?160」に特定する訂正を行ったので、「100?200階調の範囲にある局所的な明度」の分布、ひいては、「研磨布全体での平均明度に対して±15階調以内」に含まれる明度の分布は一義的に決定される旨主張している。
そこで、前記取消理由3.(1)が解消したか否か検討すると、上記ア(ウ)で検討したように、研磨布全体での平均明度の程度が、140?160階調という範囲に特定されることで、同じ研磨布における平均明度に対して±15階調の範囲に含まれる局所的な明度を特定することができるのは明らかであるから、「研磨布全体での平均明度に対して±15階調以内」に含まれる明度の分布は、「研磨布全体での平均明度」によって、一義的に決定されると解される。
したがって、取消理由3.(1)が解消していることは明らかである。

(イ)上記取消理由2.(3)イに示した取消理由3.(2)の要点は、請求項1が、「局所的な明度」の全てが「100?200階調の範囲」となるように白色光を研磨布に透過させた状態において、「局所的な明度のうちの95%以上が、前記研磨布全体での平均明度に対して±15階調以内となるよう、前記局所的な明度が分布していることを意味しているのか、それとも、白色光を研磨布に透過させた際に「100?200階調の範囲」にない「局所的な明度」は除いた上で、「局所的な明度のうち95%以上が、前記研磨布全体での平均明度に対して±15階調以内となるよう、前記局所的な明度が分布している」ことを意味しているのか明らかでない、とするものである。
これに対し、特許権者は、意見書の6(2)において、白色光を研磨布に透過させた際に100?200階調の範囲にない局所的な明度を有するような研磨布は、本件特許の権利範囲外である旨主張している。
そこで、前記取消理由3.(2)が解消したか否か検討すると、発明の詳細な説明の段落【0032】ないし【0034】には、選定された測定対象となる研磨布に白色光を透過させて、研磨布の裏面とは反対側の主面における明度を判断する手段が記載されているところ、これらの段落には、白色光を研磨布に透過させた際に、100?200階調の範囲にない局所的な明度を除く、という事項は記載も示唆もされていない。
そうすると、訂正前の請求項1における「前記研磨布の裏面側から前記研磨布に白色光を透過させたときに、前記研磨布の前記裏面とは反対側の主面において、100?200階調の範囲にある局所的な明度のうちの95%以上が、前記研磨布全体での平均明度に対して±15階調以内になるよう、前記局所的な明度が分布している」との記載について、「局所的な明度」の全てが「100?200階調の範囲」となるように白色光を研磨布に透過させた状態において、「局所的な明度のうちの95%以上が、前記研磨布全体での平均明度に対して±15階調以内となるよう、前記局所的な明度が分布していることを意味していると解することは自然である。
したがって、取消理由3.(2)が解消していることは明らかである。

(2)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について

ア 特許異議申立人1は、証拠として下記(3)の刊行物1ないし3、5ないし7、9及び10を提出し、特許異議の申立ての理由として、概略、以下のとおり主張している。

(ア)特許法第36条第4項第1号

本件特許の請求項1ないし6に係る特許発明について、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、その特許は同法第113条第4号の規定に該当し、取り消すべきものである。

(イ)特許法第36条第6項第1号

本件特許の請求項1ないし6に係る各特許発明は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、その特許は同法第113条第4号の規定に該当し、取り消すべきものである。

(ウ)特許法第36条第6項第2号

本件特許の請求項1ないし6に係る各特許発明は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

(エ)特許法第29条第1項第3号

本件特許の請求項1ないし6に係る各特許発明は、刊行物1及び2それぞれに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、その特許は同法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。

(オ)特許法第29条第2項

本件特許の請求項1ないし6に係る各特許発明は、刊行物1及び2それぞれに記載された発明及び刊行物5ないし7、9及び10に記載された事項に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。

イ 特許異議申立人2は、証拠として下記(3)の刊行物1ないし5、8ないし10を提出し、特許異議の申立ての理由として、概略、以下のとおり主張している。

(ア)特許法第36条第4項第1号

本件特許の請求項1ないし6に係る特許発明について、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、その特許は同法第113条第4号の規定に該当し、取り消すべきものである。

(イ)特許法第36条第6項第1号

本件特許の請求項1ないし6に係る各特許発明は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、その特許は同法第113条第4号の規定に該当し、取り消すべきものである。

(ウ)特許法第36条第6項第2号

本件特許の請求項1ないし6に係る各特許発明は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

(エ)特許法第29条第1項第3号

本件特許の請求項1ないし6に係る各特許発明は、刊行物3及び4それぞれに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、その特許は同法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。

(オ)特許法第29条第2項

本件特許の請求項1ないし6に係る各特許発明は、刊行物3及び4それぞれに記載された発明及び刊行物1、2、5、8ないし10に記載された事項に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。

(3)特許異議申立人1および2提示の刊行物

刊行物1:特開平2-250776号公報
(特許異議申立人1が提出した特許異議申立書に添付された甲第1号証、特許異議申立人2が提出した特許異議申立書に添付された甲第2号証)

刊行物2:特開平10-128674号公報
(特許異議申立人1が提出した特許異議申立書に添付された甲第2号証、特許異議申立人2が提出した特許異議申立書に添付された甲第3号証)

刊行物3:特開2007-92252号公報
(特許異議申立人1が提出した特許異議申立書に添付された甲第4号証、特許異議申立人2が提出した特許異議申立書に添付された甲第1号証)

刊行物4:特開平5-102113号公報
(特許異議申立人2が提出した特許異議申立書に添付された甲第4号証)

刊行物5:特開2005-91264号公報
(特許異議申立人1が提出した特許異議申立書に添付された甲第3号証、特許異議申立人2が提出した特許異議申立書に添付された甲第5号証)

刊行物6:特開2009-90445号公報
(特許異議申立人1が提出した特許異議申立書に添付された甲第5号証)

刊行物7:特開平6-47219号公報
(特許異議申立人1が提出した特許異議申立書に添付された甲第6号証)

刊行物8:Grisselle Centeno 他5名,”Application of Statistical Design Models for the Characterization of CMP Pads Using Non-Destructive Ultrasonic Methodology and Laser Testing Methodology”,IIE annual Conference.Proceedings, Norcross,2002,P1-5
(特許異議申立人2が提出した特許異議申立書に添付された甲第6号証)

刊行物9:特開2005-59179号公報
(特許異議申立人1が提出した特許異議申立書に添付された甲第7号証、特許異議申立人2が提出した特許異議申立書に添付された甲第7号証)

刊行物10:特開2010-77547号公報
(特許異議申立人1が提出した特許異議申立書に添付された甲第8号証、特許異議申立人2が提出した特許異議申立書に添付された甲第8号証)

(4)取消理由通知において採用しなかった各特許異議申立理由についての判断

ア 特許法第36条第4項第1号

(ア)特許異議申立人1は、特許異議申立書の3(4)ウ(ア)のうち、第33ページ第1行から第9行において、同様に、特許異議申立人2は、特許異議申立書の3.(4)エ(イ)のうち、第55ページ第10行から第15行において、発明の詳細な説明の段落【0037】には、測定対象となる研磨布を選定するにあたり、「利昌工業社製のガラスエポキシテープ(厚さ:2.0mm)を3枚重ねた厚さ6.0mmのもの」を基準試料として用いて、白色光の照射の仕方を調整することが記載されているが、ガラスエポキシテープ(ガラス繊維にエポキシ樹脂を含浸させたもの)は、エポキシ樹脂とガラス繊維との配合割合、ガラス繊維の太さや長さや結晶状態、エポキシ樹脂を構成するモノマー種類や分子量分布などの様々な要因で、透過する白色光の明度が変わるため、明度を正確に測定することが困難である旨主張すると共に、特許異議申立人1は特許異議申立書の3(4)ウ(ア)のうち第34ページ第4行から第5行において、同様に、特許異議申立人2は特許異議申立書の3.(4)エ(イ)のうち第56ページ第3行から第4行において、「よって、請求項1及び請求項1を引用する請求項2?6に係る発明は、明確でない。」と主張している。
そこで、係る主張について検討する。なお、後半の主張は、前半の主張に基づいて特許法第36条第6項第2号違反を指摘するような記載ぶりであるものの、前半の主張は、特許法第36条第4項第1号違反(実施可能要件)違反を指摘することを意図したものであると解するのが自然であるから、後半の主張について、特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)違反を指摘する主張であると読み替えを行った。
ガラスエポキシテープは、一般に電気絶縁に用いられるテープであるところ、電気絶縁性及びテープとしての柔軟性を共に確保する必要があることからみて、エポキシ樹脂とガラス繊維との配合割合等の関係、エポキシ樹脂とガラス繊維それぞれの構造や性状は、所定の範囲に収まっていると認められ、それ故、透過する白色光の明度の変化の範囲も所定の範囲に収まっていると認められる。
そうすると、発明の詳細な説明に、基準試料としてのガラスエポキシテープについて、「利昌工業社製のガラスエポキシテープ(厚さ:2.0mm)を3枚重ねた厚さ6.0mmのもの」との特定しかないことは、基準試料としてそのようなガラスエポキシテープを用いれば、それ以上の特定をせずとも、ガラスエポキシテープを透過する白色光の明度の変化の範囲が、実用上支障のない範囲に留まるものであることを踏まえたものと認められる。
したがって、係る主張は採用することができない。

(イ)特許異議申立人1は、特許異議申立書の3(4)ウ(ア)のうち、第33ページ第10行から第25行において、同様に、特許異議申立人2は、特許異議申立書の3.(4)エ(イ)のうち、第55ページ第16行から第22行において、発明の詳細な説明の段落【0031】及び図1には、測定装置100を用いて研磨布における明度の分布を測定することが記載されているところ、測定対象となる研磨布よりも、研磨布の裏面110bの向かって照射される白色光の照射領域の方が大きいので、研磨布の周りから漏れる白色光も撮影装置130に入り込んでしまい、明度を正確に測定することが困難である旨主張すると共に、特許異議申立人1は特許異議申立書の3(4)ウ(ア)のうち第34ページ第4行から第5行において、同様に、特許異議申立人2は特許異議申立書の3.(4)エ(イ)のうち第56ページ第3行から第4行において、「よって、請求項1及び請求項1を引用する請求項2?6に係る発明は、明確でない。」と主張している。
そこで、係る主張について検討する。なお、(ア)で述べたのと同様の理由により、後半の主張について、特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)違反を指摘する主張であると読み替えを行った。
発明の詳細な説明の段落【0034】の「得られた画像について、測定領域240全体における明度・・・および各局所的な測定領域250における明度・・・を測定する。」との記載からみて、撮影装置が、測定領域を透過した白色光の明度を正確に画像として表示することを目的としたものであることが理解され、その目的のためには、測定領域を透過する白色光以外の光が、撮影装置に入り込まないようにする必要があるのは、同段落【0033】に「測定する室内」について「なるべく暗くした状態」とすると記載されていることからも明らかなように、当業者にとって当然の技術的事項である。
そうすると、発明の詳細な説明には明示がないものの、測定領域を透過する白色光以外のものである、研磨布の周りから漏れる白色光も、撮影装置に入り込まないようにされていると解するのが相当である。
したがって、係る主張は採用することができない。

(ウ)特許異議申立人1は、特許異議申立書の3(4)ウ(ケ)及び(コ)において、同様に、特許異議申立人2は、特許異議申立書の3.(4)エ(ウ)において、請求項1ないし6に係る発明に係る物に関し、実施例以外の物だけでなく、実施例の物についても、当業者が明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮して、どのように作るか理解できず、或いは、そのような物を作るために、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤、複雑高度な実験等をする必要がある旨主張している。
そこで、係る主張について検討する。
発明の詳細な説明の段落【0007】?【0008】からみて、本件発明は、高い研磨レート、長い研磨布の寿命と共に、十分に高い被研磨物の平坦性を確保できる研磨布、及びその抽出方法を提供することを目的としたものであり、そのために、新規な指標を用い、その指標が特定の範囲に収まるような研磨布であれば、目的とする性能を確保できる、としたものであり、段落【0035】の「100?200階調の範囲にある局所的な測定領域240のうち95%以上において、測定領域240全体における明度に対して±15階調以内の明度であれば、本発明の範囲内となる。」との記載によれば、前記指標とは、要するに、請求項1ないし6において、研磨布を特定している事項のことであると理解できる。
すなわち、本件発明1ないし6は、所定の指標が所定の範囲に収まるように抽出された研磨布、というものであるから、発明の詳細な説明に、係る抽出の方法が開示されている必要はあるものの、本件発明1ないし6に係る物をどのように作るかを開示することまでは要しないと解するのが相当である。
したがって、係る主張は採用することができない。

イ 特許法第36条第6項第1号

(ア)特許異議申立人1は、特許異議申立書の3(4)ウ(カ)において、同様に、特許異議申立人2は、特許異議申立書の3.(4)エ(ア)において、本件発明は、高い研磨レートの確保を課題の1つとしたものであり、発明の詳細な説明の段落【0040】には、局所的に高い圧力で加圧する部分が少ないほど研磨レートが高くなる旨記載されているところ、研磨布全体を均一化したからといって、研磨レートが高くなるとは一概に言えないこと、及び、発明の詳細な説明の段落【0062】の表1によると、実施例2は、比較例1に比べて研磨レートが劣ることを根拠に、本件発明1は、「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えており、また、本件発明2ないし6も、発明の詳細な説明に発明として記載されたものと、実質的に対応しているとは言えない旨主張している。
そこで、係る主張について検討する。
発明の詳細な説明の段落【0007】?【0008】からみて、本件発明は、高い研磨レート、長い研磨布の寿命と共に、十分に高い被研磨物の平坦性を確保できる研磨布、及びその抽出方法を提供することを目的としたものである。
このような、複数の観点での性能向上を目的としている場合、いずれかのみの性能を向上させ、残りの性能を犠牲することはせず、全体としての性能向上を図ろうとすることは往々にしてなされるところ、発明の詳細な説明の段落【0062】の表1の実施例2と比較例1とを比べると、確かに、研磨レートは実施例2の方がやや劣っているものの、平坦性及び寿命については、実施例2の方が明らかに高性能であり、全体としての性能向上という観点で見ると、実施例2が比較例1に対して劣っているとは必ずしも言えない。
同様に、研磨布全体を均一化したからといって、研磨レートが高くなるとは一概に言えないとしても、研磨布全体を均一化したことで、寿命や平坦性に関する性能が高まるのであれば、全体としての性能向上という観点で見ると、研磨布全体を均一化することによって性能が劣るとは必ずしも言えない。
したがって、係る主張は採用することができない。

(イ)特許異議申立人1は、特許異議申立書の3(4)ウ(キ)において、本件発明は、長い研磨布の寿命の確保を課題の1つとしたものであり、発明の詳細な説明の段落【0040】には、局所的に高い圧力が掛かる部分が少ないほど寿命が延びる旨記載されているところ、局所的に高い圧力が掛かる部分が少ないからといって、寿命が長くなるとは一概に言えないことを根拠に、本件発明1は、「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えており、また、本件発明2ないし6も、発明の詳細な説明に発明として記載されたものと、実質的に対応しているとは言えない旨主張している。
そこで、係る主張について検討する。
発明の詳細な説明の段落【0040】を参照すると、研磨布の寿命が延びる要因の1つとして、研磨布における繊維、樹脂、及び、空隙のそれぞれが、小さな大きさで、より均一に分散することで、局所的に高い圧力が掛かる部分が少なくなる点が挙げられており、一般に物質は、圧力が高い程より破壊され易くなるという技術常識に照らせば、特段、技術的に不自然な内容であるとは言えない。
また仮に、特許異議申立人1が主張するように、局所的に高い圧力が掛かる部分が少ないからといって、寿命が長くなるとは一概に言えないとしても、発明の詳細な説明には、発明の発明特定事項とその発明が発揮する効果との関係を超えて、さらに、その効果が生じる科学的なメカニズムまで解明し開示することまでは要しないと解するのが相当である。
そして、発明の詳細な説明の段落【0062】及び【0078】の各表の記載を参照すると、実施例の寿命は全て、比較例よりも長寿命であるとされており、このことから、本件発明に該当する研磨布が長寿命であること、すなわち、本件発明の発明特定事項で特定される研磨布は長寿命という効果を発揮している、と理解することができるものである。
よって、これらを踏まえれば、本件発明1ないし6について、「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えているものであると言うことはできない。
したがって、係る主張は採用することができない。

ウ 特許法第36条第6項第2号

(ア)特許異議申立人1は、特許異議申立書の3(4)ウ(オ)において、請求項2には「A硬度が50°?90°」であることが記載され、「A硬度」の測定方法には、JIS-A硬度計で測定する方法、ショアA硬度計で測定する方法などがあるが、発明の詳細な説明には、「A硬度」の測定方法について、段落【0023】に「A硬度は、バネを介して厚さ4.5mm以上の試験片(研磨布が4.5mm未満の厚さである場合は、厚さが4.5mm以上になるまで研磨布を重ねて試験片を得る。)表面に押針(測定子)を押し付け30秒後の押針の押し込み深さから求められる。これを3回行って相加平均からA硬度が求められる。」としか記載されておらず、当業者にとって不明瞭なパラメータとなっている旨主張している。
そこで、係る主張について検討する。
A硬度と言えば通常、JIS-A硬度とショア硬度の2タイプであるところ、発明の詳細な説明の段落【0023】によると、押圧による測定であることが分かるので、段落【0023】におけるA硬度が、落下後の跳ね返り距離で測定するショアAでないことが明らかである。
そうすると、段落【0023】におけるA硬度はJIS-A硬度なのだから、当業者にとって不明瞭なパラメータであるとは言えない。
したがって、係る主張は採用することができない。

エ 特許法第29条第1項第3号

(ア)刊行物の記載
特許法第29条第1項第3号についての取消理由は、上記した(2)ア(エ)及び(2)イ(エ)に示したとおり、刊行物1ないし4に記載された発明それぞれを主たる発明とした4つの取消理由に分かれているので、それらの主たる発明が記載された証拠について、以下に示す。

a 刊行物1

本件特許出願日前に頒布された刊行物1には、半導体ウェハー研磨用クロスについて、次の事項が記載されている。

(a)「【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
本発明は、半導体ウェハー、メモリーディスク、光学部品レンズ等を研磨する際に用いられる研磨クロスに関する。」(第2ページ上左欄第下から第3行から同ページ上右欄第2行)

(b)「(実施例1)
3.0デニール、繊維長50mmのポリエステル繊維で構成される、厚さ2mm、嵩密度0.13g/cm^(3)、目付重量260g/m^(2)のニードルパンチ不織布を基材とし、分子量200,000、100%モジュラス120kg/cm^(2)のポリエステル系ポリウレタン(商品名:クリスボン8867)の固型分13%のDMF溶液で、該基材を十分浸漬含浸した後、DMF対純水の比率が10対90で、且つ温度30℃の凝固液に20分間浸漬後、60分間純水中で水洗いし、ポリウレタン樹脂を湿式凝固させ、ポーラス状にフェルト基材を囲繞した後、DMFを完全に純水と置換し、更に120℃の熱風で乾燥し、厚さ2mm、高密度0.26g/cm^(3)、目付重量520g/m^(2)、ウレタン対繊維の重量比0.9対1の複合基材が得られた。該基材を60メッシュのバフロールで、表、裏面を研削し、密度の高いスキン層を除去した。このシート物の硬度はJISAで60度、圧縮率30%であった。該シート物を以下の配合の二次含浸液に浸漬含浸後、120℃の熱風で20分間乾燥、溶剤を完全に乾燥除去し、該熱硬化性ポリウレタンを上記複合基材中のポリウレタン多孔質相のセル壁を被覆しながら硬化させることにより、高硬度複合基材を得た。
この複合基材を更に表、裏面パフ処理した平坦な高硬度複合基材は、厚さ1.27mm、高密度0.36g/cm^(3)、硬度JISA85度、圧縮率6.0%、繊維対一次樹脂対二次樹脂の比率が1対0.9対0.9であった。この高硬度複合基材により研磨されたウェハーの平坦度は良好で、研磨クロスのライフは60時間であった。

二次含浸液の配合例:
ハイプレンL-315 100.0部
(三井東圧化学(株)商品名)
イハラキュアミンMT 26.9部
(イハラケミカル(株)商品名)
MEK 576.0部
計 702.9部
[ハイプレンL-315]
ポリオール成分 :ポリテトラメチレンエーテルグリコール
イソシアネート成分:2、4-トルエンジイソシアネート
[イハラキュアミンMT]
3、3’-ジクロロ-4、4’-ジアミノフェニルメタン」

上記摘記事項(a)ないし(b)からみて、刊行物1には以下の発明が記載されていると認められる。

刊行物1発明:「ニードルパンチ不織布と、その不織布に含浸されたポリウレタン樹脂とを備える不織布。」

b 刊行物2

本件特許出願日前に頒布された刊行物2には、研磨用パッドについて、次の事項が記載されている。

(a)「【0042】(C)以下の実施例で使用した配合物1および2の組成は次の通りであった。

(b)「【0043】
配合物1
クリスボン8867(大日本インキ化学工業(株)) 100.0phr
ジメチルホルムアミド(日東化学(株)) 200.0phr
上記クリスボン8867は、平均分子量200,000、硬化物の100%モジュラスが120kg/cm^(2)のポリエステル系ポリウレタンを主成分とする。」

(c)「【0044】
配合物2
ハイプレンL-315(三井東圧化学(株)) 100.0phr
イハラキュアミン(イハラケミカル(株)) 26.9phr
MEK 576.0phr
(実施例1)6.0デニール、繊維長60mmのポリエステル繊維で構成された厚さ2.0mm、嵩密度0.11g/cm^(3)、目付重量350g/cm^(2)のニードルパンチ不織布を基材として用いた。」

(d)「【0045】上記配合物1で基材を十分浸漬含浸した後、純水で且つ温度30℃の凝固液に20分間浸漬後、60分間純水中で水洗いし、熱可塑性ポリウレタン樹脂を湿式凝固させ、ポーラス状にフェルト基材を形成した後、DMFを完全に純水と置換し、さらに120℃熱風で乾燥し、厚さ1.7mm、嵩密度0.23g/cm^(3)、目付重量520g/cm^(2)、ウレタン対繊維の重量比0.5対1の複合基材を得た。該複合基材の表裏面を60メッシュのバフロールで研削し、密度の高いスキン層を除去した。このシート物の圧縮率は10%であった。」

(e)「【0046】さらに該シート物を上記配合物2の含浸液に含浸後、120℃熱風で20分間乾燥して溶剤を除去し、該配合物2の硬化性ポリウレタンを上記シート物中のポリウレタン多孔質相のセル壁を被覆しながら硬化させることにより、研磨用パッドを得た。」

(f)「【0047】この研磨用パッドの表裏面をさらにバフ処理して平坦な作用面を有する図1に示すような研磨用パッド1を得た。図中、2は研磨用パッド1の作用面、3はフェルト状繊維質シート、4はエラストマである。この研磨用パッドは、厚さ1.30mm、嵩密度0.38g/cm^(3)、圧縮率3.0%であった。」

上記摘記事項(a)ないし(f)からみて、刊行物2には以下の発明が記載されていると認められる。

刊行物2発明:「ニードルパンチ不織布と、その不織布に含浸されたポリウレタン樹脂とを備える研磨用パッド。」

c 刊行物3

本件特許出願日前に頒布された刊行物3には、研磨布について、次の事項が記載されている。

(a)「【0001】
本発明は研磨布に係り、特に、樹脂層で被覆された繊維によりシート状に形成された繊維集合体を有する研磨布に関する。」

(b)「【0049】
(実施例1)
下表1に示すように、実施例1では、不織布基材に、繊度2.5dのポリエステル繊維で形成された厚さ3.0mm、密度0.138g/cm^(3)、目付(単位面積あたり重量)414g/cm^(2)のニードルパンチ不織布を用いた。一次含浸工程では、100%モジュラスが9MPaの熱可塑性ポリウレタン(ポリウレタン純分35%のDMF溶液)と、架橋剤の3官能末端イソシアネート化合物(大日本インキ株式会社製、商品名:バーノックDN-950)(架橋剤純分75%の酢酸エチル溶液)とを溶解した樹脂溶液を用いた。樹脂溶液は、下表2に示すように、ポリウレタン樹脂の490重量部に対して、架橋剤のDN-950の25重量部、有機溶剤のDMFの485重量部を配合した。この樹脂溶液のポリウレタン樹脂固形分濃度は、樹脂分換算で19%である。樹脂溶液にニードルパンチ不織布を、不織布(ウェブ)に対する樹脂の含浸量が115%となるように含浸させ、乾燥後、105°Cで16時間熱処理した。一次含浸後のニードルパンチ不織布の両面をバフ処理し、不織布中間体を得た。二次含浸工程では、下表1に示すように、イソシアネート末端ウレタンプレポリマと、架橋剤のMOCAとを溶解した樹脂溶液を用いた。樹脂溶液は、下表3に示すように、プレポリマの426重量部に対して、架橋剤のMOCAの74重量部、有機溶媒のDMFの150重量部、メチルエチルケトン(以下、MEKと略記する。表3においても同じ。)の350重量部を配合した。この樹脂溶液のウレタン樹脂固形分は、樹脂分換算で50%である。樹脂溶液に不織布中間体を、樹脂の含浸量が67%となるように含浸させ、乾燥後、105°Cで24時間キュアリングした。」

上記摘記事項(a)ないし(b)からみて、刊行物3には以下の発明が記載されていると認められる。

刊行物3発明:「ニードルパンチ不織布と、その不織布に含浸されたポリウレタン樹脂とを備える研磨用パッド。」

d 刊行物4

本件特許出願日前に頒布された刊行物4には、Siウエハの鏡面加工方法について、次の事項が記載されている。

(a)「【0003】
あらさはポリシングの条件で決定されるが、研磨布の特性の内研磨布背面から光りを透過させた場合の濃淡(以下ムラという)は、Siウエハのあらさに影響を与える特性であるが目視の検査しかなく、また研磨布のムラとあらさの関係が明らかにされていなかったため、あらさを良好にする研磨布を選定できず、あらさのバラツキが大きく、安定して0.1mmの長さの内の平均あらさ(以下Raという)は0.2nm以下にできなかった。」

(b)「【0007】
このポリシングに用いる前記研磨布2には地合指数という特性がある。地合指数は繊維業界では一般的であるが、ポリシングの分野では一般的でないので以下地合指数について説明する。図2に示すように前記研磨布2は光源8から光を受け、CCDカメラ7に明るさが検出される。前記CCDカメラの画素数は例えば128×128である。各画素の透過率Tについて説明する。」

(c)「【0008】1 先ず各画素の透過率について述べる。
前記研磨布2が無い基準条件下で光源を点滅させて、光量100%及び0%の出力シグナルレベル(V_(100)及びV_(0))を、全画素について測定する。次いで前記研磨布2を乗せた測定条件下で、同様に光源を点滅させて、点灯時の光量(V_(T))及び消灯時の光量(V_(R))を、全画素について測定する。各画素の透過率Tは

【0009】
【数1】



(d)「【0010】2 次に吸光度Eを求める。
E=2-logT
吸光度とは光学密度とも呼ばれ、光吸収の強さを表わす量である。平均吸光度は、各画素の吸光度を平均したものである。
3 次に標準偏差σを計算する。σは濃淡のムラの大きさを示す。

【0011】
【数2】



(e)「【0012】更に地合指数αは下式のようになる。

【0013】
【数3】



(f)「【0014】
地合指数αは、標準偏差を平均吸光度で割ることにより、研磨布2の全体の濃淡を補正したムラになり、地合指数αは、最も目視の濃淡と一致する。ポリシング実験を行い、地合指数αとRaの関係を求めたのが図3である。地合指数αが35を越すとRaは0.2nmを越えてしまう。また地合指数αが5以下になるとポリシングの能率が低くなり、実用的ではない。従って地合指数αは5?35の時にRaが低く、あらさの良いSiウエハが得られることが分かる。」

(g)「【0015】
【実施例】平均粒径が0.02μmのシリカの微粉末をpH9のKOH溶液で荷重を面圧にして190g/cm^(2)加え、前記定盤1と前記Siウエハ4に相対速度を平均10m/minを与えて、研磨布の地合指数αを5で、ポリシングしたところ、Raで0.02nmを得た。また別の実施例では平均粒径が0.02μmのシリカの微粉末をpH9のKOH溶液で荷重を面圧にして350g/cm^(2)加え、前記定盤1と前記Siウエハ4に相対速度を平均3m/minを与えて、研磨布の地合指数αを35で、ポリシングしたところ、Raで0.2nmを得た。また更に別の実施例では平均粒径が0.02μmのシリカの微粉末をpH9のKOH溶液で荷重を面圧にして250g/cm^(2)加え、前記定盤1と前記Siウエハ4に相対速度を平均5m/minを与えて、研磨布の地合指数αを15で、ポリシングしたところ、Raで0.08nmを得た。」

上記摘記事項(a)ないし(g)からみて、刊行物4には以下の発明が記載されていると認められる。

刊行物4発明:「研磨布であって、
前記研磨布の背面側から前記研磨布に光を透過させたときに、前記研磨布の背面と反対側の面において、128×128箇所の局所的な測定領域の透過光の透過率を測定することができ、透過率に基づいて計算された地合指数αが5?35である研磨布。」

(イ)刊行物1を主引例とした取消理由について

特許異議申立人1は、特許異議申立書の3(4)エ(ア)、(オ)、(キ)、(ケ)、(サ)、(ソ)において、同様に、特許異議申立人2は、特許異議申立書の3.(4)ウ(ウ)、(ケ)、(セ)、(ツ)、(ヌ)、(ホ)において、本件発明1ないし6は、刊行物1に記載された発明と同一であるから、本件発明1ないし6に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当するため、取り消すべきものと主張している。
しかしながら、以下のとおりであるから、特許異議申立人1及び2の係る主張は理由がない。

a 本件発明1について

(a)本件発明1と刊行物1発明との対比

刊行物1発明の「ニードルパンチ不織布」は、本件発明1の「シート状の繊維基材」に相当する。
そうすると、刊行物1発明と本件発明1とは、以下の点で一致し、また、相違するものと認められる。

<一致点>
「シート状の繊維基材と、その繊維基材に含浸された樹脂とを備える研磨布。」

<相違点>
本件発明1では、研磨布が「前記研磨布の裏面側から前記研磨布に白色光を透過させたときに、前記研磨布の前記裏面とは反対側の主面において、600箇所以上の10mm×10mm角の局所的な測定領域の明度を測定することができ、100?200階調の範囲にある局所的な前記明度のうちの95%以上が、前記研磨布全体での平均明度に対して±15階調以内になるよう、前記局所的な明度が分布しており、前記平均明度が140?160である」のに対し、刊行物1発明では、研磨布がそのような明度の分布をするのか、特定されていない点。

(b)相違点について検討する。

刊行物1には、摘記事項(b)にあるように、刊行物1発明の研磨布の製造方法が記載されている。
一方、本件の発明の詳細な説明の段落【0053】には、研磨布の製造方法が開示されているところ、本件発明1は、上記したア(ウ)に示したように、「研磨布の裏面側から前記研磨布に白色光を透過させたときに、前記研磨布の前記裏面とは反対側の主面において、600箇所以上の10mm×10mm角の局所的な測定領域の明度を測定することができ、100?200階調の範囲にある局所的な前記明度のうちの95%以上が、前記研磨布全体での平均明度に対して±15階調以内になるよう、前記局所的な明度が分布しており、前記平均明度が140?160」となるよう抽出された研磨布、というものであるから、係る製造方法で製造される研磨布は、係る抽出の対象となる研磨布であると解される。
そして、この段落【0053】に記載された製造方法は、刊行物1の摘記事項(イ)に記載された刊行物1発明の研磨布の製造方法と、ポリウレタン樹脂の溶液に繊維基材を含浸させ、その後、水洗、乾燥し、バフにより表層のスキン層を除去した上で、再度、ウレタン樹脂を含浸させている点で共通しているので、その点で、これらの製造方法は同じものであると言える。
そうすると、刊行物1発明の研磨布の製造方法によって製造された研磨布の中に、本件発明1に該当する研磨布が含まれている蓋然性が高いと考えられる。
しかしながら、刊行物1には具体的な明度の分布は示されていない。
また、刊行物1には、刊行物1に記載の製造方法によって製造された研磨布の中から、上記相違点1に該当する研磨布のみを抽出するという思想は開示されていない。
よって、刊行物1発明は、相違点に係る本件発明1の発明特定事項を有さないので、本件発明1は刊行物1発明1と同一ではない。

b 本件発明2ないし6について

本件発明2ないし6は、いずれも本件発明1を引用しており、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに構成を限定するものであるから、本件発明1と同様の理由で、本件発明2ないし6は、刊行物1発明と同一ではない。

(ウ)刊行物2を主引例とした取消理由について

特許異議申立人1は、特許異議申立書の3(4)エ(ウ)、(カ)、(ク)、(コ)、(ス)、(チ)において、同様に、特許異議申立人2は、特許異議申立書の3.(4)ウ(オ)、(コ)、(ソ)、(テ)、(ノ)、(ミ)において、本件発明1ないし6は、刊行物2に記載された発明と同一であるから、本件発明1ないし6に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当するため、取り消すべきものと主張している。
しかしながら、以下のとおりであるから、特許異議申立人1及び2の係る主張は理由がない。

a 本件発明1について

(a)本件発明1と刊行物2発明との対比

刊行物2発明の「ニードルパンチ不織布」は、本件発明1の「シート状の繊維基材」に相当する。
そうすると、刊行物2発明と本件発明1とは、以下の点で一致し、また、相違するものと認められる。

<一致点>
「シート状の繊維基材と、その繊維基材に含浸された樹脂とを備える研磨布。」

<相違点>
本件発明1では、研磨布が「前記研磨布の裏面側から前記研磨布に白色光を透過させたときに、前記研磨布の前記裏面とは反対側の主面において、600箇所以上の10mm×10mm角の局所的な測定領域の明度を測定することができ、100?200階調の範囲にある局所的な前記明度のうちの95%以上が、前記研磨布全体での平均明度に対して±15階調以内になるよう、前記局所的な明度が分布しており、前記平均明度が140?160である」のに対し、刊行物2発明では、研磨布がそのような明度の分布をするのか、特定されていない点。

(b)相違点についての検討

上記(ア)で検討したのと同様の理由により、相違点に係る本件発明1の発明特定事項について、実質的な相違点ではないとは言えないので、本件発明1は刊行物2発明と同一ではない。

b 本件発明2ないし6について

本件発明2ないし6は、いずれも本件発明1を引用しており、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに構成を限定するものであるから、本件発明1と同様の理由で、本件発明2ないし6は、刊行物2発明と同一ではない。

(エ)刊行物3を主引例とした取消理由について

特許異議申立人2は、特許異議申立書の3.(4)ウ(ア)、(ク)、(ス)、(チ)、(ナ)、(フ)において、本件発明1ないし6は、刊行物3に記載された発明と同一であるから、本件発明1ないし6に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当するため、取り消すべきものと主張している。
しかしながら、以下のとおりであるから、特許異議申立人2の係る主張は理由がない。

a 本件発明1について

(a)本件発明1と刊行物3発明との対比

刊行物3発明の「ニードルパンチ不織布」は、本件発明1の「シート状の繊維基材」に相当する。
そうすると、刊行物3発明と本件発明1とは、以下の点で一致し、また、相違するものと認められる。

<一致点>
「シート状の繊維基材と、その繊維基材に含浸された樹脂とを備える研磨布。」

<相違点>
本件発明1では、研磨布が「前記研磨布の裏面側から前記研磨布に白色光を透過させたときに、前記研磨布の前記裏面とは反対側の主面において、600箇所以上の10mm×10mm角の局所的な測定領域の明度を測定することができ、100?200階調の範囲にある局所的な前記明度のうちの95%以上が、前記研磨布全体での平均明度に対して±15階調以内になるよう、前記局所的な明度が分布しており、前記平均明度が140?160である」のに対し、刊行物3発明では、研磨布がそのような明度の分布をするのか、特定されていない点。

(b)相違点についての検討

上記(ア)で検討したのと同様の理由により、相違点に係る本件発明1の発明特定事項について、実質的な相違点ではないとは言えないので、本件発明1は刊行物3発明と同一ではない。

b 本件発明2ないし6について

本件発明2ないし6は、いずれも本件発明1を引用しており、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに構成を限定するものであるから、本件発明1と同様の理由で、本件発明2ないし6は、刊行物3発明と同一ではない。

(オ)刊行物4を主引例とした取消理由について

a 本件発明1について

特許異議申立人2は、特許異議申立書の3.(4)ウ(キ)において、本件発明1は、刊行物4に記載された発明と同一であるから、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当するため、取り消すべきものと主張している。
しかしながら、以下のとおりであるから、特許異議申立人2の係る主張は理由がない。

(a)本件発明1と刊行物4発明との対比

刊行物4発明の「透過光の透過率」は、透過光がどの程度透過したのか、すなわち、どの程度明るく見えるかを意味するものだから、本件発明1の「明度」に相当する。
よって、刊行物4発明の「前記研磨布の背面側から前記研磨布に光を透過させたときに、前記研磨布の背面と反対側の面において、128×128箇所の測定領域の透過光の透過率を測定することができ、透過率に基づいて計算された地合指数αが5?35である」と、本件発明1の「前記研磨布の裏面側から前記研磨布に白色光を透過させたときに、前記研磨布の前記裏面とは反対側の主面において、600箇所以上の10mm×10mm角の局所的な測定領域の明度を測定することができ、100?200階調の範囲にある局所的な前記明度のうちの95%以上が、前記研磨布全体での平均明度に対して±15階調以内になるよう、前記局所的な明度が分布しており、前記平均明度が140?160である」とは、「前記研磨布の裏面側から前記研磨布に白色光を透過させたときに、前記研磨布の前記裏面とは反対側の主面において」、「600箇所以上の」「局所的な測定領域の明度を測定することができ」、前記明度が所定の値である点で一致する。
そうすると、刊行物4発明と本件発明1とは、以下の点で一致し、また、相違するものと認められる。

<一致点>
「研磨布であって、
前記研磨布の裏面側から前記研磨布に白色光を透過させたときに、前記研磨布の前記裏面とは反対側の主面において、局所的な測定領域の明度を測定することができ、前記明度が所定の値である研磨布。」

<相違点1>
本件発明1では、研磨布が「シート状の繊維基材と、その繊維基材に含浸された樹脂と、を備える」ものであるのに対し、刊行物4発明では、研磨布の構造が特定されていない点。

<相違点2>
本件発明1では、明度について、「10mm×10mm角の局所的な測定領域」のものであり、「100?200階調の範囲にある局所的な前記明度のうちの95%以上が、前記研磨布全体での平均明度に対して±15階調以内になるよう、前記局所的な明度が分布しており、前記平均明度が140?160である」ものであるのに対し、刊行物4発明では、明度について、測定領域の大きさは特定されておらず、また、地合指数αで5?35というものである点。

(b)相違点についての検討

相違点2について検討する。
刊行物4発明の研磨布は、本件発明1の研磨布と同様、透過光の透過率すなわち明度に基づいて抽出されるものであり、また、段落【0014】の「地合指数αは、最も目視の濃淡と一致する」との記載からみて、地合指数αは、研磨布全体の構造の均一性の程度とも関連するものと認められる。
しかしながら、地合指数αは、局所的な測定領域が「10mm×10mm角」ではなく、また、「100?200階調の範囲にある局所的な前記明度のうちの95%以上が、前記研磨布全体での平均明度に対して±15階調以内になるよう、前記局所的な明度が分布しており、前記平均明度が140?160である」か否かという観点で導出されたものでもないため、研磨布の地合指数αが5?35であれば、その研磨布は本件発明1の研磨布と同一である、と言うことができないのは明らかである。
よって、刊行物4発明は、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を有さないので、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は刊行物4発明と同一ではない。

オ 特許法第29条第2項

(ア)刊行物1を主引例とした取消理由について

特許異議申立人1は、特許異議申立書の3(4)エ(イ)、(オ)、(キ)、(ケ)、(シ)、(タ)において、本件発明1は、刊行物1に記載された発明と、刊行物3、5ないし7、9及び10に記載の技術常識とに基づいて、同様に、特許異議申立人2は、特許異議申立書の3.(4)ウ(エ)、(ケ)、(セ)、(ツ)、(ヌ)、(ホ)において、刊行物1に記載された発明と、刊行物4、5及び8に記載の事項とに基づいて、容易に想到し得たものである旨主張している。
しかしながら、以下のとおりであるから、特許異議申立人1及び2の係る主張は理由がない。

a 本件発明1について

(a)本件発明1と刊行物1発明との対比

上記エ(イ)bを参照。

(b)相違点についての検討

刊行物3ないし8のいずれにも、研磨布について、「前記研磨布の裏面側から前記研磨布に白色光を透過させたときに、前記研磨布の前記裏面とは反対側の主面において、600箇所以上の10mm×10mm角の局所的な測定領域の明度を測定することができ、100?200階調の範囲にある局所的な前記明度のうちの95%以上が、前記研磨布全体での平均明度に対して±15階調以内になるよう、前記局所的な明度が分布しており、前記平均明度が140?160」となるように抽出するという思想は開示されてない。
よって、刊行物1発明に、刊行物3ないし8のいずれに記載の事項を組み合わせたとしても、刊行物1発明の研磨布から、本件発明1の研磨布を抽出することを果たすことはできない。
したがって、本件発明1ないし6は、刊行物1発明及び刊行物3ないし8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。

b 本件発明2ないし6について

本件発明2ないし6は、いずれも本件発明1を引用しており、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに構成を限定するものであるから、本件発明1と同様の理由で、本件発明2ないし6は、刊行物1発明及び刊行物3ないし8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。

(イ)刊行物2を主引例とした取消理由について

特許異議申立人1は、特許異議申立書の3(4)エ(エ)、(カ)、(ク)、(コ)、(セ)、(ツ)において、本件発明1は、刊行物2に記載された発明と、刊行物3、5ないし7、9、10に記載の技術常識とに基づいて、同様に、特許異議申立人2は、特許異議申立書の3.(4)ウ(カ)、(サ)、(ソ)、(テ)、(ハ)、(ム)において、本件発明1は、刊行物2発明と、刊行物4、5、8ないし10に記載の事項とに基づいて、容易に想到し得たものである旨主張している。
しかしながら、以下のとおりであるから、特許異議申立人1及び2の係る主張は理由がない。

a 本件発明1について

(a)本件発明1と刊行物2発明との対比

上記エ(ウ)bを参照。

(b)相違点についての検討

刊行物3ないし10のいずれにも、研磨布について、「前記研磨布の裏面側から前記研磨布に白色光を透過させたときに、前記研磨布の前記裏面とは反対側の主面において、600箇所以上の10mm×10mm角の局所的な測定領域の明度を測定することができ、100?200階調の範囲にある局所的な前記明度のうちの95%以上が、前記研磨布全体での平均明度に対して±15階調以内になるよう、前記局所的な明度が分布しており、前記平均明度が140?160」となるように抽出するという思想は開示されてない。
よって、刊行物1発明に、刊行物3ないし10のいずれに記載の事項を組み合わせたとしても、刊行物1発明の研磨布から、本件発明1の研磨布を抽出することを果たすことはできない。
したがって、本件発明1ないし6は、刊行物1発明及び刊行物3ないし10に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。

b 本件発明2ないし6について

本件発明2ないし6は、いずれも本件発明1を引用しており、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに構成を限定するものであるから、本件発明1と同様の理由で、本件発明2ないし6は、刊行物2発明及び刊行物3ないし10に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。

(ウ)刊行物3を主引例とした取消理由について

特許異議申立人2は、特許異議申立書の3.(4)ウ(イ)、(ク)、(ス)、(チ)、(ニ)、(ヘ)において、本件発明1は、刊行物3発明と、刊行物4、5、8ないし10に記載の事項とに基づいて、容易に想到し得たものである旨主張している。
しかしながら、以下のとおりであるから、特許異議申立人2の係る主張は理由がない。

a 本件発明1について

(a)本件発明1と刊行物2発明との対比

上記エ(エ)bを参照。

(b)相違点についての検討

刊行物4、5、8ないし10のいずれにも、研磨布について、「前記研磨布の裏面側から前記研磨布に白色光を透過させたときに、前記研磨布の前記裏面とは反対側の主面において、600箇所以上の10mm×10mm角の局所的な測定領域の明度を測定することができ、100?200階調の範囲にある局所的な前記明度のうちの95%以上が、前記研磨布全体での平均明度に対して±15階調以内になるよう、前記局所的な明度が分布しており、前記平均明度が140?160」となるように抽出するという思想は開示されてない。
よって、刊行物1発明に、刊行物4、5、8ないし10のいずれに記載の事項を組み合わせたとしても、刊行物1発明の研磨布から、本件発明1の研磨布を抽出することを果たすことはできない。
したがって、本件発明1ないし6は、刊行物1発明及び刊行物4、5、8ないし10に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。

b 本件発明2ないし6について

本件発明2ないし6は、いずれも本件発明1を引用しており、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに構成を限定するものであるから、本件発明1と同様の理由で、本件発明2ないし6は、刊行物3発明及び刊行物4、5、8ないし10に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。

(エ)刊行物4を主引例とした取消理由について

特許異議申立人2は、特許異議申立書の3.(4)ウ(キ)、(シ)、(タ)、(ト)、(ヒ)、(メ)において、本件発明1は、刊行物4発明と、刊行物1ないし3、9及び10に基づいて、容易に想到し得たものである旨主張している。
しかしながら、以下のとおりであるから、特許異議申立人2の係る主張は理由がない。

a 本件発明1について

(a)本件発明1と刊行物4発明との対比

上記エ(オ)bを参照。

(b)相違点についての検討

刊行物1ないし3、9及び10には、研磨布について、「前記研磨布の裏面側から前記研磨布に白色光を透過させたときに、前記研磨布の前記裏面とは反対側の主面において、600箇所以上の10mm×10mm角の局所的な測定領域の明度を測定することができ、100?200階調の範囲にある局所的な前記明度のうちの95%以上が、前記研磨布全体での平均明度に対して±15階調以内になるよう、前記局所的な明度が分布しており、前記平均明度が140?160」となるよう抽出するという思想は開示されていない。
よって、刊行物4発明に、刊行物1ないし3、9及び10のいずれに記載の事項を組み合わせたとしても、刊行物4発明の研磨布から、本件発明1の研磨布を抽出することを果たすことはできない。
したがって、本件発明1は、刊行物4発明及び刊行物1ないし3、9及び10に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。

b 本件発明2ないし6について

本件発明2ないし6は、いずれも本件発明1を引用しており、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに構成を限定するものであるから、本件発明1と同様の理由で、本件発明2ないし6は、刊行物4発明及び刊行物1ないし3、9及び10に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。

第4 むすび

以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の繊維基材と、その繊維基材に含浸された樹脂と、を備える研磨布であって、
前記研磨布の裏面側から前記研磨布に白色光を透過させたときに、前記研磨布の前記裏面とは反対側の主面において、
600箇所以上の10mm×10mm角の局所的な測定領域の明度を測定することができ、
100?200階調の範囲にある局所的な前記明度のうちの95%以上が、前記研磨布全体での平均明度に対して±15階調以内になるよう、前記局所的な明度が分布しており、前記平均明度が140?160である研磨布。
【請求項2】
A硬度が50°?90°、圧縮率が0.5%?10%、かつ、密度が0.25g/cm^(3)?0.50g/cm^(3)である、請求項1に記載の研磨布。
【請求項3】
前記繊維基材が、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン及び(メタ)アクリル樹脂からなる群より選ばれる1種以上の材料を含む不織布であり、かつ、前記含浸された樹脂が、ポリウレタン樹脂、ニトリル・ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ニトリルゴム、(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂及びエポキシ樹脂からなる群より選ばれる1種以上の樹脂を含む、請求項1又は2に記載の研磨布。
【請求項4】
厚さが5.0mm以下、かつ、目付けが125g/m^(2)?2500g/m^(2)である、請求項1?3のいずれか1項に記載の研磨布。
【請求項5】
通気度が、30cc/cm^(2)/秒以上である、請求項1?4のいずれか1項に記載の研磨布。
【請求項6】
通気度が、15cc/cm^(2)/秒以下である、請求項1?4のいずれか1項に記載の研磨布。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-03-07 
出願番号 特願2012-151503(P2012-151503)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (B24B)
P 1 651・ 536- YAA (B24B)
P 1 651・ 113- YAA (B24B)
P 1 651・ 121- YAA (B24B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 亀田 貴志  
特許庁審判長 西村 泰英
特許庁審判官 柏原 郁昭
平岩 正一
登録日 2017-01-06 
登録番号 特許第6068025号(P6068025)
権利者 富士紡ホールディングス株式会社
発明の名称 研磨布  
代理人 稲葉 良幸  
復代理人 赤堀 龍吾  
代理人 赤堀 龍吾  
代理人 江口 昭彦  
復代理人 竹内 工  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 内藤 和彦  
代理人 大貫 敏史  
代理人 江口 昭彦  
代理人 竹内 工  
代理人 内藤 和彦  
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