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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B32B
審判 全部申し立て 2項進歩性  B32B
管理番号 1340093
異議申立番号 異議2017-700564  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-06-06 
確定日 2018-03-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6040835号発明「加飾シート及び加飾樹脂成形品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6040835号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-11、13〕、12について訂正することを認める。 特許第6040835号の請求項1ないし13に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6040835号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?13に係る特許についての出願は、平成25年3月28日に特許出願され、平成28年11月18日にその特許権の設定登録がされ、その後、平成29年6月6日にその請求項1?13に係る特許について、特許異議申立人山岸容子(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、平成29年9月19日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年11月17日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)がなされ、平成30年1月17日に申立人から意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正は、明細書及び特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付の訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正するもので、その内容は以下のとおりである(下線部は訂正個所を示す。)。
(1)訂正事項1
本件訂正前の請求項1に
「前記第1の保護層が、粒子径が5μm以下の無機粒子と、粒子径が8μm以上の粒子とを含む、」とあるのを、
「前記第1の保護層が、粒子径が5μm以下の無機粒子と、粒子径が8μm以上の粒子とを含み、
前記粒子径が8μm以上の粒子が、シリカ粒子及び樹脂粒子の少なくとも1種である、」に訂正する。
(2)訂正事項2
本件訂正前の請求項6に
「前記粒子径が8μm以上の粒子が、無機粒子及び樹脂粒子の少なくとも一方である、」とあるのを、
「前記粒子径が8μm以上の粒子が、樹脂粒子である、」に訂正する。
(3)訂正事項3
本件訂正前の明細書の段落【0028】に
「第1の保護層2における粒子径が8μm以上の無機粒子の含有量としては、特に制限されないが、加飾シートに表出されていた高い立体感が加飾樹脂成形品の成形時に劣化してしまうことを抑制する観点からは、第1の保護層2に含まれる後述の樹脂100質量部に対して、好ましくは1?200質量部程度、より好ましくは3?100質量部程度、さらに好ましくは5?50質量部程度が挙げられる。」とあるのを、
「第1の保護層2における粒子径が8μm以上の粒子の含有量としては、特に制限されないが、加飾シートに表出されていた高い立体感が加飾樹脂成形品の成形時に劣化してしまうことを抑制する観点からは、第1の保護層2に含まれる後述の樹脂100質量部に対して、好ましくは1?200質量部程度、より好ましくは3?100質量部程度、さらに好ましくは5?50質量部程度が挙げられる。」に訂正する。
(4)訂正事項4
本件訂正前の明細書の段落【0079】に
「(耐傷付き性評価試験)
実施例1?9及び比較例1?7の加飾シートの透明樹脂層側の表面を爪で5往復ひっかき、表面の状態を目視で観察し、以下の基準に従い評価した。結果を表1に示す。
○:表面に傷付きがなかった
△:表面に微細な傷が認められたが、削れや白化は無かった
×:表面に傷が認められ、傷付き部分の艶上がりが観察された
××:表面に著しい傷があり、表面が削られていた」とあるのを、
「(耐傷付き性評価試験)
実施例1?9及び比較例1?7の加飾シートの第2の保護層側の表面を爪で5往復ひっかき、表面の状態を目視で観察し、以下の基準に従い評価した。結果を表1に示す。
○:表面に傷付きがなかった
△:表面に微細な傷が認められたが、削れや白化は無かった
×:表面に傷が認められ、傷付き部分の艶上がりが観察された
××:表面に著しい傷があり、表面が削られていた」に訂正する。
(5)訂正事項5
本件訂正前の明細書の段落【0081】に
「表1に示す各成分としては、以下のものを用いた。
(透明樹脂層)
ウレタンビーズ:平均粒子径3.5μm
なお、実施例において、各種粒子の平均粒子径は、上記の方法で測定して得られた値である。
樹脂A:アクリルポリオール(重量平均分子量15000?20000)
樹脂B:2官能ポリカーボネートアクリレート
(保護層)
シリカα:平均粒子径4μm
シリカβ:平均粒子径1.3μm
シリカγ:平均粒子径10μm
ウレタンビーズA:平均粒子径3.5μm
ウレタンビーズB:平均粒子径10μm
ウレタンビーズC:平均粒子径14μm
アクリル1:アクリルポリオール(重量平均分子量15000?20000)
アクリル2:アクリルポリオール(重量平均分子量30000)
ウレタン:ポリウレタン」とあるのを、
「表1に示す各成分としては、以下のものを用いた。
(第2の保護層)
ウレタンビーズ:平均粒子径3.5μm
なお、実施例において、各種粒子の平均粒子径は、上記の方法で測定して得られた値である。
樹脂A:アクリルポリオール(重量平均分子量15000?20000)
樹脂B:2官能ポリカーボネートアクリレート
(第1の保護層)
シリカα:平均粒子径4μm
シリカβ:平均粒子径1.3μm
シリカγ:平均粒子径10μm
ウレタンビーズA:平均粒子径3.5μm
ウレタンビーズB:平均粒子径10μm
ウレタンビーズC:平均粒子径14μm
アクリル1:アクリルポリオール(重量平均分子量15000?20000)
アクリル2:アクリルポリオール(重量平均分子量30000)
ウレタン:ポリウレタン」に訂正する。
(6)訂正事項6
本件訂正前の請求項12に
「前記第1の保護層が、粒子径が5μm以下の無機粒子と、粒子径が8μm以上の粒子とを含む、」とあるのを、
「前記第1の保護層が、粒子径が5μm以下の無機粒子と、粒子径が8μm以上の粒子とを含み、
前記粒子径が8μm以上の粒子が、シリカ粒子及び樹脂粒子の少なくとも1種である、」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、一群の請求項
(1)訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「粒子径が8μm以上の粒子」を、「シリカ粒子及び樹脂粒子の少なくとも1種」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、同法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合する。
また、訂正事項1に関連して、本件特許の明細書の段落【0026】に「粒子径が8μm以上の粒子としては、特に制限されず、例えば、無機粒子、樹脂粒子などが挙げられる。無機粒子としては、上記の粒子径が5μm以下の無機粒子で例示したものと同じものが例示できる。」と記載され、段落【0021】に「粒子径が5μm以下の無機粒子としては、無機化合物により形成された粒子であれば、特に制限されず、例えば、シリカ粒子、炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、アルミナ粒子、ガラスバルーン粒子が挙げられ、これらの中でも好ましくはシリカ粒子が挙げられる。」と記載されているから、これらの記載に接した当業者であれば、「粒子径が8μm以上の粒子」として「樹脂粒子」及び「シリカ粒子」が本件特許の明細書に記載されていると理解し得る。よって、訂正事項1は、明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項6の「粒子径が8μm以上の粒子」が「無機粒子及び樹脂粒子の少なくとも一方」であったのを「樹脂粒子」のみに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、上記(1)と同様に同条第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項3
訂正前の段落【0028】では「第1の保護層2における粒子径が8μm以上の無機粒子の含有量としては、特に制限されないが、加飾シートに表出されていた高い立体感が加飾樹脂成形品の成形時に劣化してしまうことを抑制する観点からは、第1の保護層2に含まれる後述の樹脂100質量部に対して、好ましくは1?200質量部程度、より好ましくは3?100質量部程度、さらに好ましくは5?50質量部程度が挙げられる。」(下線は当審で付した。以下同じ。)と記載されて、所定の含有量の対象が無機粒子のみに制限されているが、請求項3や段落【0009】では「前記第1の保護層において、前記粒子径が8μm以上の粒子の含有量が、前記第1の保護層に含まれる樹脂100質量部に対して、1?200質量部である」と記載されて無機粒子に制限されておらず、訂正前の段落【0028】の「無機粒子」という記載は、特許請求の範囲や明細書の他の記載と整合していない。
また、段落【0028】では、「加飾シートに表出されていた高い立体感が加飾樹脂成形品の成形時に劣化してしまうことを抑制する観点」から含有量が説明されているところ、上記観点における成形時の劣化の抑制というのは、「第1の保護層2に粒子径が8μm以上の粒子(以下、「大きい粒子」ということがある。)が含まれていることにより、第1の保護層2の表面の第2の保護層3が形成されていない部分2bから、このような大きな粒子が突出し、当該大きな粒子の突出した部分が、第2の保護層3を横から支える効果を発揮する」(段落【0025】)ことで実現するのであって、このような作用を奏する「粒子径が8μm以上の粒子としては、特に制限されず、例えば、無機粒子、樹脂粒子などが挙げられる」(段落【0026】)から、上記観点から好ましい含有量を規定するにあたり、その対象が無機粒子のみに制限されるべき合理的な理由はない。
そうしてみると、他の記載と整合せず、合理的な理由もない訂正前の段落【0028】の「無機粒子」という記載は、単に「粒子」と記載すべきであったものの誤記であることが明らかであって、同じ観点で粒子径を規定している段落【0027】では無機粒子に制限されていないことや、段落【0028】の「さらに好ましくは5?50質量部程度」という含有量が実施例3?9の平均粒子径10μmのウレタンビーズBの5?50質量部という含有量と合致しており段落【0028】の含有量が無機粒子以外にも当てはまることと整合する。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものであり、また、同条第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合する。さらに、訂正事項3に係る請求項1?13の全てについて訂正が請求されているから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第4項の規定に適合する。

申立人は「無機粒子の含有量が明確に記載されている以上、当業者が、技術的側面から、そのような記載を誤記と考える余地はございません。」(意見書7頁2?3行)と主張する。しかし、段落【0028】だけ部分的に読んで記載が明確であるとしても、直ちに誤記ではないとはいえず、上記したとおり、特許請求の範囲や明細書の他の記載と整合していないのだから誤記であることは明らかである。したがって、申立人の上記主張は採用できない。

(4)訂正事項4、5
訂正前の段落【0081】には「表1に示す各成分としては、以下のものを用いた。
(透明樹脂層)
ウレタンビーズ:平均粒子径3.5μm
なお、実施例において、各種粒子の平均粒子径は、上記の方法で測定して得られた値である。
樹脂A:アクリルポリオール(重量平均分子量15000?20000)
樹脂B:2官能ポリカーボネートアクリレート」と記載されている。そして表1には、ウレタンビーズ、樹脂A、Bが、第2の保護層の成分であることが記載されているから、「透明樹脂層」は「第2の保護層」であることは明らかである。
また、段落【0081】には「表1に示す各成分としては、以下のものを用いた。…
(保護層)
シリカα:平均粒子径4μm
シリカβ:平均粒子径1.3μm
シリカγ:平均粒子径10μm
ウレタンビーズA:平均粒子径3.5μm
ウレタンビーズB:平均粒子径10μm
ウレタンビーズC:平均粒子径14μm
アクリル1:アクリルポリオール(重量平均分子量15000?20000)
アクリル2:アクリルポリオール(重量平均分子量30000)
ウレタン:ポリウレタン」と記載されている。そして表1には、シリカα?γ、ウレタンビーズA?C、アクリル1、2及びウレタンが、第1の保護層の成分であることが記載されているから、「保護層」は「第1の保護層」であることは明らかである。
したがって、訂正事項4、5は、本件訂正前において、異なる用語で示された同じ構成を同じ用語とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、また、同条第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合する。さらに、訂正事項4、5に係る請求項1?13の全てについて訂正が請求されているから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第4項の規定に適合する。

(5)訂正事項6
訂正事項6は、請求項12において、訂正事項1と実質的に同じ訂正をするものであるから、上記(1)と同様に、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、同条第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(6)一群の請求項
本件訂正前の請求項2?11、13は、直接的又は間接的に請求項1を引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1?11、13は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、本件訂正請求のうち、訂正事項1?5に係る訂正は、一群の請求項ごとに請求されたものである。

3 小括
よって、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とし、同条第4項並びに同条第9項で準用する第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、本件訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
上記第2のとおり本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1?13に係る発明(以下。「本件発明1?13」という。また、これらをまとめて「本件発明」ということもある。)は、本件訂正請求書に添付の訂正特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

【請求項1】
少なくとも、基材層と、第1の保護層と、前記第1の保護層の一部の上に設けられた第2の保護層とを有し、
前記第1の保護層が、粒子径が5μm以下の無機粒子と、粒子径が8μm以上の粒子とを含み、
前記粒子径が8μm以上の粒子が、シリカ粒子及び樹脂粒子の少なくとも1種である、加飾シート。
【請求項2】
前記第1の保護層において、前記粒子径が5μm以下の無機粒子の含有量が、前記第1の保護層に含まれる樹脂100質量部に対して、1?70質量部である、請求項1に記載の加飾シート。
【請求項3】
前記第1の保護層において、前記粒子径が8μm以上の粒子の含有量が、前記第1の保護層に含まれる樹脂100質量部に対して、1?200質量部である、請求項1または2に記載の加飾シート。
【請求項4】
前記第1の保護層において、前記粒子径が5μm以下の無機粒子と、前記粒子径が8μm以上の粒子との含有量の質量比(粒子径が5μm以下の無機粒子/粒子径が8μm以上の粒子)が、10/1?1/4である、請求項1?3のいずれかに記載の加飾シート。
【請求項5】
前記粒子径が5μm以下の無機粒子が、シリカ粒子である、請求項1?4のいずれかに記載の加飾シート。
【請求項6】
前記粒子径が8μm以上の粒子が、樹脂粒子である、請求項1?5のいずれかに記載の加飾シート。
【請求項7】
前記第1の保護層の厚さが、0.1?15μmである、請求項1?6のいずれかに記載の加飾シート。
【請求項8】
前記第2の保護層の厚さが、0.1?15μmである、請求項1?7のいずれかに記載の加飾シート。
【請求項9】
前記第2の保護層が、樹脂粒子を含む、請求項1?8のいずれかに記載の加飾シート。
【請求項10】
絵柄層をさらに有する、請求項1?9のいずれかに記載の加飾シート。
【請求項11】
前記第1の保護層上において、前記第2の保護層が設けられた部分と設けられていない部分とによって形成された凹部形状が、前記絵柄層の模様と同調している、請求項10に記載の加飾シート。
【請求項12】
少なくとも、射出樹脂層と、基材層と、第1の保護層と、前記第1の保護層の一部の上に設けられた第2の保護層とがこの順に積層された積層体からなり、
前記第1の保護層が、粒子径が5μm以下の無機粒子と、粒子径が8μm以上の粒子とを含み、
前記粒子径が8μm以上の粒子が、シリカ粒子及び樹脂粒子の少なくとも1種である、加飾樹脂成形品。
【請求項13】
請求項1?11のいずれかに記載の加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、
前記真空成形された加飾シートの余分な部分をトリミングして成形シートを得るトリミング工程、及び
前記成形シートを射出成形型に挿入し、前記射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を前記射出成形型内に射出して前記樹脂と前記成形シートとを一体化する一体化工程、
を備える、加飾樹脂成形品の製造方法。

2 取消理由の概要
平成29年9月19日付け取消理由通知の概要は、以下のとおりである。
理由1)
本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2)
本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

[刊行物]
刊行物1.特開2001-315286号公報
刊行物2.特開2013-14146号公報
刊行物3.特開2003-236994号公報
刊行物4.特開2009-113387号公報

理由1)について
本件特許の請求項1?8、10?11に係る発明は、刊行物1に記載された発明である。
理由2)について
本件特許の請求項1?8、10?11に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術(刊行物2、3)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許の請求項9、12?13に係る発明は、刊行物1に記載された発明、刊行物4の記載事項及び周知技術(刊行物2、3)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 引用発明
刊行物1には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】基材上に、無機耐摩剤及び艶消剤を含有する耐摩耗艶消樹脂層が全面に設けられ、該耐摩耗艶消樹脂層上に、模様状の艶出樹脂層が設けられてなることを特徴とする化粧材。」

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、住宅等の建築物における壁面や床面等の内装材や造作材、建具、家具、什器、家電製品等の表面化粧に使用するための化粧材に関するものである。」

「【0003】係る化粧材やそれを使用した化粧製品は通常、数年ないし数十年に亘って使用される耐久消費財であり、使用中における人体や器物との衝突や摩擦によって、傷が付いたり表面が削られたりして、意匠性が損なわれることが起こりにくいように、十分な耐傷付き性や耐摩耗性が要求される。」

「【0021】本発明の化粧材は、図1に示すように、基材1上に無機耐摩剤4を添加した耐摩耗樹脂層を設けた化粧材において、該耐摩耗樹脂層は無機耐摩剤4と共に艶消剤が添加されて表面が艶消状態とされた耐摩耗艶消樹脂層5であり、且つ、該耐摩耗艶消樹脂層5上に、所望の適宜の模様状の艶出樹脂層6が設けられてなるものである。」

「【0038】耐摩耗艶消樹脂層5に添加する無機耐摩剤4は、例えばアルミナ又は炭化珪素等の硬質の無機化合物の粉粒体で、平均粒径5?50μmのものが良い。添加量は、樹脂100重量部当たり2?30重量部程度とするのが良い。
【0039】無機耐摩剤4の粒子の形状は、不定形、鱗片形、球形、多面体形などのいずれでも良いが、不定形よりも鱗片形や球形、多面体形などの方が耐摩耗効果が高いので好ましい。
【0040】耐摩耗艶消樹脂層5に添加する艶消剤は、例えばシリカ又は炭酸カルシウム等の無機質粉体や、ガラスビーズ、合成樹脂ビーズなどが使用され、平均粒径0.5?5μm程度のものが通常使用される。添加量は意匠上所望の艶消感の程度に応じて任意であるが、通常は樹脂100重量部当たり1?20重量部程度とするのが良い。」

上記記載事項を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明A、B」という。)が記載されている。
「基材1と、耐摩耗艶消樹脂層5と、耐摩耗艶消樹脂層5上に設けられた所望の適宜の模様状の艶出樹脂層6とを有し、
耐摩耗艶消樹脂層5が、平均粒径0.5?5μm程度の例えばシリカ又は炭酸カルシウム等の無機質粉体の艶消剤、及び、平均粒径5?50μmの無機耐摩剤4の粒子を含有し、
平均粒径5?50μmの無機耐摩剤4の粒子が、例えばアルミナ又は炭化珪素等の硬質の無機化合物の粉粒体である、化粧材。」(引用発明A)
「基材1と、耐摩耗艶消樹脂層5と、耐摩耗艶消樹脂層5上に設けられた所望の適宜の模様状の艶出樹脂層6とを有し、
耐摩耗艶消樹脂層5が、平均粒径0.5?5μm程度の例えばシリカ又は炭酸カルシウム等の無機質粉体の艶消剤、及び、平均粒径5?50μmの無機耐摩剤4の粒子を含有し、
平均粒径5?50μmの無機耐摩剤4の粒子が、例えばアルミナ又は炭化珪素等の硬質の無機化合物の粉粒体である、化粧材を、
住宅等の建築物における壁面や床面等の内装材や造作材、建具、家具、什器、家電製品等の表面化粧に使用した化粧製品。」(引用発明B)

4 判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由について
ア 理由1(新規性)について
(ア)本件発明1について
本件発明1と引用発明Aとを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
相違点1.本件発明1は「少なくとも、基材層と、第1の保護層と、前記第1の保護層の一部の上に設けられた第2の保護層とを有し、前記第1の保護層が、粒子径が5μm以下の無機粒子と、粒子径が8μm以上の粒子とを含」む「加飾シート」であるのに対して、引用発明Aは「基材1と、耐摩耗艶消樹脂層5と、耐摩耗艶消樹脂層5上に設けられた所望の適宜の模様状の艶出樹脂層6とを有し、耐摩耗艶消樹脂層5が、平均粒径0.5?5μm程度の例えばシリカ又は炭酸カルシウム等の無機質粉体の艶消剤、及び、平均粒径5?50μmの無機耐摩剤4の粒子を含有」する「化粧材」である点。
相違点2.本件発明1の粒子径が8μm以上の粒子はシリカ粒子及び樹脂粒子の少なくとも1種であるのに対して、引用発明Aの平均粒径5?50μmの無機耐摩剤4の粒子は例えばアルミナ又は炭化珪素等の硬質の無機化合物の粉粒体である点。
そして、上記相違点2は素材自体が異なるという明らかに実質的な相違点であり、また、下記イに示すとおり引用発明Aの「化粧材」を本件発明1の「加飾シート」であるとはいえないから上記相違点1は実質的な相違点であり、本件発明1は引用発明Aではない。

(イ)本件発明2?8、10?11について
本件発明2?8、10?11は、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明1と同様に、引用発明Aではない。

イ 理由2(進歩性)について
(ア)本件発明1について
上記相違点1について検討する。
本件発明1は「高い成形性、耐傷付き性、さらに高い立体感を有する加飾シートに関する。」(段落【0001】)ものであって、「従来の加飾シートにおいては、インサート成形法などにおける射出成形時、またはこれに先立つ予備成形(真空成形)時の熱と圧力によって、透明樹脂層に形成されていた凹凸形状が、なだらかとなったり、小さくなったりすることにより、加飾シートに表出されていた高い立体感が損なわれるという問題がある。」(段落【0005】)のを、「第1の保護層2に粒子径が8μm以上の粒子(以下、「大きい粒子」ということがある。)が含まれていることにより、第1の保護層2の表面の第2の保護層3が形成されていない部分2bから、このような大きな粒子が突出し、当該大きな粒子の突出した部分が、第2の保護層3を横から支える効果を発揮する」(段落【0025】)ことで解決するという格別な効果を奏するものであるから、本件発明1の加飾シートとは、インサート成形法などにおける射出成形、またはこれに先立つ予備成形(真空成形)のように、熱と圧力によって成形して利用するものといえる。これに対して刊行物1には、熱と圧力によって化粧材を成形することの記載や示唆する記載はないから、引用発明Aの化粧材が、本件発明1の加飾シートであるということはできない。
そして、引用発明Aの化粧材を、熱と圧力によって成形して利用すること、及び、その際に上記格別な効果が奏されることを当業者が予測できたことの記載や示唆する記載は、刊行物2?4のいずれにもない。
そうすると、本件発明1は、上記相違点1に係る本件発明1の構成によって、当業者が予測し得ない上記格別な効果を奏するものであるから、引用発明A及び刊行物2?4記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(イ)本件発明2?11、13について
本件発明2?11、13は、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明1と同様に、引用発明A及び刊行物2?4記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(ウ)本件発明12について
本件発明12と引用発明Bとを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
相違点3.本件発明12は「少なくとも、射出樹脂層と、基材層と、第1の保護層と、前記第1の保護層の一部の上に設けられた第2の保護層とがこの順に積層された積層体からなり、前記第1の保護層が、粒子径が5μm以下の無機粒子と、粒子径が8μm以上の粒子とを含」む「加飾樹脂成形品」であるのに対して、引用発明Bは「基材1と、耐摩耗艶消樹脂層5と、耐摩耗艶消樹脂層5上に設けられた所望の適宜の模様状の艶出樹脂層6とを有し、耐摩耗艶消樹脂層5が、平均粒径0.5?5μm程度の例えばシリカ又は炭酸カルシウム等の無機質粉体の艶消剤、及び、平均粒径5?50μmの無機耐摩剤4の粒子を含有」する「化粧材を、住宅等の建築物における壁面や床面等の内装材や造作材、建具、家具、什器、家電製品等の表面化粧に使用した化粧製品」である点。
相違点4.本件発明12の粒子径が8μm以上の粒子はシリカ粒子及び樹脂粒子の少なくとも1種であるのに対して、引用発明Bの平均粒径5?50μmの無機耐摩剤4の粒子は例えばアルミナ又は炭化珪素等の硬質の無機化合物の粉粒体である点。
上記相違点3について検討する。
本件発明12は「加飾シートを利用した加飾樹脂成形品に関する。」(段落【0001】)ものであって、「加飾樹脂成形品の製造においては、予め意匠が付与された加飾シートを、射出成形によって樹脂と一体化させる成形法などが用いられている」(段落【0002】)が、「従来の加飾シートにおいては、インサート成形法などにおける射出成形時、またはこれに先立つ予備成形(真空成形)時の熱と圧力によって、透明樹脂層に形成されていた凹凸形状が、なだらかとなったり、小さくなったりすることにより、加飾シートに表出されていた高い立体感が損なわれるという問題がある。」(段落【0005】)のを、「第1の保護層2に粒子径が8μm以上の粒子(以下、「大きい粒子」ということがある。)が含まれていることにより、第1の保護層2の表面の第2の保護層3が形成されていない部分2bから、このような大きな粒子が突出し、当該大きな粒子の突出した部分が、第2の保護層3を横から支える効果を発揮する」(段落【0025】)ことで解決するという格別な効果を奏するものである。そして、本件発明12の加飾樹脂成形品が熱と圧力によって樹脂成形されたものであるのに対して、刊行物1には、熱と圧力によって化粧製品を樹脂成形することの記載や示唆する記載はないから、引用発明Bの化粧製品が、本件発明12の加飾樹脂成形品であるということはできない。
そして、引用発明Bの化粧製品を、熱と圧力によって樹脂成形すること、及び、その際に上記格別な効果が奏されることを当業者が予測できたことの記載や示唆する記載は、刊行物2?4のいずれにもない。
そうすると、本件発明12は、上記相違点3に係る本件発明12の構成によって、当業者が予測し得ない上記格別な効果を奏するものであるから、引用発明B及び刊行物2?4記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(2)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人は、訂正前の特許請求の範囲に関し、特許異議申立書において、「「第1の保護層」と、「第2の保護層」との構成差が明確でなく、…明細書を参酌したとしても、これら二つの保護層の技術的意味が理解されません。」(特許異議申立書29頁1?8行)と主張し、特許請求の範囲の記載は特許を受けようとする発明が不明確であり、特許法第36条第6項第2号の要件を満たさないと主張している。しかし、特許請求の範囲には、「第1の保護層」が「粒子径が5μm以下の無機粒子と、粒子径が8μm以上の粒子とを含」む層であり、「第2の保護層」が「第1の保護層」の一部の上に設けられている層であることが記載されているから、両者の構成差は明確であるといえる。また、明細書の段落【0020】、【0045】には、両層の技術的意味も記載されているから、申立人の上記主張は理由がない。

(3)小括
上記(1)アのとおり、本件発明1?8、10?11は、特許法第29条第1項第3号に該当しない。また、上記(1)イのとおり、本件発明1?13は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。したがって、本件発明1?13に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。
また、上記(2)のとおり、本件発明1?13に係る特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。したがって、本件発明1?13に係る特許は、特許法第113条第4号に該当しない。

第4 むすび
以上のとおり、上記取消理由及び特許異議申立理由によっては、本件発明1?13に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件発明1?13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
加飾シート及び加飾樹脂成形品
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い成形性、耐傷付き性、さらに高い立体感を有する加飾シートに関する。さらに、本発明は、当該加飾シートを利用した加飾樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両内外装部品、建材内装材、家電筐体等には、樹脂成形品の表面に加飾シートを積層させた加飾樹脂成形品が使用されている。このような加飾樹脂成形品の製造においては、予め意匠が付与された加飾シートを、射出成形によって樹脂と一体化させる成形法などが用いられている。このような加飾樹脂成形品の製造方法の代表的な例としては、例えばインサート成形法などが知られている。インサート成形法は、加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形しておき、当該加飾シートを射出成形型に挿入し、流動状態の樹脂を射出成形型内に射出することにより、樹脂と加飾シートとを一体化する方法である。
【0003】
加飾樹脂成形品には、三次元曲面などの複雑な表面形状を有するものもある。このため、加飾シートには、加飾樹脂成形品の形状に十分に追従し得る三次元成形性が求められている。また、加飾シートは、加飾樹脂成形品の表面材として使用されるため、耐傷付き性などの表面特性を備えていることも要求されている。さらに、近年の消費者の高級志向に伴って、加飾樹脂成形品には、外観を目視で観察した際に立体感が認識でき、高級感のある意匠の表出が求められている。
【0004】
これまで、加飾シートに、成形性や耐傷付き性に優れ、立体感が高く優れた意匠性を与える技術が報告されている。例えば、特許文献1には、基材上に少なくとも表面保護層と該表面保護層上に部分的に設けられた透明樹脂層を有する加飾シートが開示されており、部分的に設けられた透明樹脂層と表面保護層の間での艶差や凹凸形状によって、加飾シートに立体感を与える方法が開示されている。また、例えば、特許文献1は、絵柄層の木目柄の導管部と透明樹脂層が抜けた部分とを同調させることによって、木目柄にリアル感を持たせる方法なども開示している。
【0005】
しかしながら、従来の加飾シートにおいては、インサート成形法などにおける射出成形時、またはこれに先立つ予備成形(真空成形)時の熱と圧力によって、透明樹脂層に形成されていた凹凸形状が、なだらかとなったり、小さくなったりすることにより、加飾シートに表出されていた高い立体感が損なわれるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-113387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高い成形性及び耐傷付き性を有し、さらに加飾樹脂成形品に成形された際にも高い立体感を有する加飾シートを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記のような課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、少なくとも、基材層と、第1の保護層と、当該第1の保護層の一部の上に設けられた第2の保護層とを有し、当該第1の保護層が、粒子径が5μm以下の無機粒子と、粒子径が8μm以上の粒子とを含む場合、高い成形性及び耐傷付き性を有し、さらに加飾樹脂成形品に成形された際にも高い立体感を有する加飾シートが得られることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。
【0009】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 少なくとも、基材層と、第1の保護層と、前記第1の保護層の一部の上に設けられた第2の保護層とを有し、
前記第1の保護層が、粒子径が5μm以下の無機粒子と、粒子径が8μm以上の粒子とを含む、加飾シート。
項2. 前記第1の保護層において、前記粒子径が5μm以下の無機粒子の含有量が、前記第1の保護層に含まれる樹脂100質量部に対して、1?70質量部である、項1に記載の加飾シート。
項3. 前記第1の保護層において、前記粒子径が8μm以上の粒子の含有量が、前記保護層に含まれる樹脂100質量部に対して、1?200質量部である、項1または2に記載の加飾シート。
項4. 前記第1の保護層において、前記粒子径が5μm以下の無機粒子と、前記粒子径が8μm以上の粒子との含有量の質量比(粒子径が5μm以下の無機粒子/粒子径が8μm以上の粒子)が、10/1?1/4である、項1?3のいずれかに記載の加飾シート。
項5. 前記粒子径が5μm以下の無機粒子が、シリカ粒子である、項1?4のいずれかに記載の加飾シート。
項6. 前記粒子径が8μm以上の粒子が、無機粒子及び樹脂粒子の少なくとも一方である、項1?5のいずれかに記載の加飾シート。
項7. 前記第1の保護層の厚さが、0.1?15μmである、項1?6のいずれかに記載の加飾シート。
項8. 前記第2の保護層の厚さが、0.1?15μmである、項1?7のいずれかに記載の加飾シート。
項9. 前記第2の保護層が、樹脂粒子を含む、請求項1?8のいずれかに記載の加飾シート。
項10. 絵柄層をさらに有する、項1?9のいずれかに記載の加飾シート。
項11. 前記第1の保護層上において、前記第2の保護層が設けられた部分と設けられていない部分とによって形成された凹部形状が、前記絵柄層の模様と同調している、項10に記載の加飾シート。
項12. 少なくとも、射出樹脂層と、基材層と、第1の保護層と、前記第1の保護層の一部の上に設けられた第2の保護層とがこの順に積層された積層体からなり、
前記第1の保護層が、粒子径が5μm以下の無機粒子と、粒子径が8μm以上の粒子とを含む、加飾樹脂成形品。
項13. 項1?11のいずれかに記載の加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、
前記真空成形された加飾シートの余分な部分をトリミングして成形シートを得るトリミング工程、及び
前記成形シートを射出成形型に挿入し、前記射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を前記射出成形型内に射出して前記樹脂と前記成形シートとを一体化する一体化工程、
を備える、加飾樹脂成形品の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の加飾シートによれば、高い成形性及び耐傷付き性を有し、さらに加飾樹脂成形品に成形された後にも、外観を目視で観察した際に立体感が認識でき、高い意匠性を加飾樹脂成形品に付与できる加飾シート、及び当該加飾シートを利用した加飾樹脂成形品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の加飾シートの一例の略図的断面図である。
【図2】本発明の加飾シートの一例の略図的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.加飾シート
本発明の加飾シートは、少なくとも、基材層と、第1の保護層と、前記第1の保護層の一部の上に設けられた第2の保護層とを有し、第1の保護層が、粒子径が5μm以下の無機粒子と、粒子径が8μm以上の粒子とを含むことを特徴とする。本発明の加飾シートにおいては、第1の保護層が、粒子径が5μm以下の無機粒子と、粒子径が8μm以上の粒子とを含むことにより、加飾樹脂成形品に成形された後にも、外観を目視で観察した際に立体感が認識でき、高い意匠性を加飾樹脂成形品に付与できる加飾シートとすることができる。より具体的には、本発明の加飾シートは、第1の保護層に上記のような特定の無機粒子及び粒子を含むことにより、後述の射出成形時、またはこれに先立つ予備成形(真空成形)時の熱と圧力によっても、第1の保護層の一部の上に設けられた第2の保護層によって形成された凹凸形状が保持され、加飾シートに表出されていた高い立体感の劣化が効果的に抑制されている。以下、本発明の加飾シートについて詳述する。
【0013】
加飾シートの積層構造
本発明の加飾シートは、少なくとも、基材層1と、第1の保護層2と、第2の保護層3とが積層された積層構造を有する。第2の保護層は、第1の保護層2の表面の一部2aの上に設けられている。第1の保護層2の表面上においては、第2の保護層3が設けられた部分2aと、当該第2の保護層3が設けられていない部分2bとによって、凹凸形状が形成されている。
【0014】
本発明の加飾シートにおいて、樹脂成形品に装飾性を付与することなどを目的として、必要に応じて、絵柄層4を設けてもよい。また、基材層1の色の変化やバラツキを抑制する目的で、基材層1と第1の保護層2との間、絵柄層4を設ける場合であれば基材層1と絵柄層4との間などに、必要に応じて、隠蔽層5を設けてもよい。さらに、加飾シートの成形性を高めることなどを目的として、基材層1と第1の保護層2との間、絵柄層4を設ける場合であれば絵柄層4と第1の保護層2との間などに、必要に応じて、透明フィルム層6などを設けてもよい。さらに、基材層1の下に、接着層7などを設けてもよい。
【0015】
本発明の加飾シートの積層構造として、基材層/第1の保護層/第2の保護層がこの順に積層された積層構造;基材層/絵柄層/第1の保護層/第2の保護層がこの順に積層された積層構造;基材層/隠蔽層/絵柄層/第1の保護層/第2の保護層がこの順に積層された積層構造;基材層/隠蔽層/絵柄層/透明フィルム層/第1の保護層/第2の保護層がこの順に積層された積層構造;接着層/基材層/隠蔽層/絵柄層/第1の保護層/第2の保護層がこの順に積層された積層構造;接着層/基材層/隠蔽層/絵柄層/透明フィルム層/第1の保護層/第2の保護層がこの順に積層された積層構造などが挙げられる。図1に、本発明の加飾シートの積層構造の一態様として、基材層/第1の保護層/第2の保護層がこの順に積層された加飾シートの一例の略図的断面図を示す。図2に、本発明の加飾シートの積層構造の一態様として、接着層/基材層/隠蔽層/絵柄層/透明フィルム層/第1の保護層/第2の保護層がこの順に積層された加飾シートの一例の略図的断面図を示す。
【0016】
加飾シートを形成する各層の組成
[基材層1]
基材層1は、本発明の加飾シートにおいて支持体としての役割を果たす樹脂シート(樹脂フィルム)により形成されている。基材層1に使用される樹脂成分については、特に制限されず、三次元成形性や射出樹脂層との相性等に応じて適宜選定すればよいが、好ましくは、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、具体的には、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(以下「ABS樹脂」と表記することもある);アクリロニトリル-スチレン-アクリル酸エステル樹脂;アクリル樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;塩化ビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタラート(PET)等が挙げられる。これらの中でも、ABS樹脂が三次元成形性の観点から好ましい。基材層1を形成する樹脂成分としては、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。また、基材層1は、これら樹脂の単層シートで形成されていてもよく、また同種又は異種樹脂による複層シートで形成されていてもよい。
【0017】
基材層1は、後述の第1の保護層2などとの密着性を向上させるために、必要に応じて、片面又は両面に酸化法や凹凸化法等の物理的又は化学的表面処理が施されていてもよい。基材層1の表面処理として行われる酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン紫外線処理法等が挙げられる。また、基材層1の表面処理として行われる凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理は、基材層1を構成する樹脂成分の種類に応じて適宜選択されるが、効果及び操作性等の観点から、好ましくはコロナ放電処理法が挙げられる。
【0018】
また、基材層1には、着色剤などを配合した着色、色彩を整えるための塗装、デザイン性を付与するための模様の形成などがなされていてもよい。
【0019】
基材層1の厚さは、特に制限されず、加飾シートの用途等に応じて適宜設定されるが、通常50?800μm程度、好ましくは100?600μm程度、さらに好ましくは200?500μm程度が挙げられる。基材層1の厚さが上記範囲内であると、加飾シートに対してより一層優れた三次元成形性、意匠性などを備えさせることができる。
【0020】
[第1の保護層2]
第1の保護層2は、加飾シートの耐傷付き性、耐候性などを高め、さらに後述の第2の保護層3と共に加飾シートに高い立体感を付与するために設けられる層である。第1の保護層2は、粒子径が5μm以下の無機粒子と、粒子径が8μm以上の粒子とを含み、これらの無機粒子及び粒子は樹脂中に分散されている。本発明の加飾シートにおいては、第1の保護層2が、このような特定の粒子径を有する無機粒子と粒子とを含むことにより、後述の第2の保護層3と共に加飾シートに高い立体感を表出し、さらに後述の射出成形時、またはこれに先立つ予備成形(真空成形)時の熱と圧力によっても、第1の保護層2の一部の上に設けられた後述の第2の保護層3によって形成された凹凸形状が保持され、加飾シートに表出されていた高い立体感の劣化が効果的に抑制される。
【0021】
本発明において、粒子径が5μm以下の無機粒子は、主に、第1の保護層2の艶消剤として機能する。粒子径が5μm以下の無機粒子としては、無機化合物により形成された粒子であれば、特に制限されず、例えば、シリカ粒子、炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、アルミナ粒子、ガラスバルーン粒子が挙げられ、これらの中でも好ましくはシリカ粒子が挙げられる。粒子径が5μm以下の無機粒子は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
当該無機粒子の粒子径としては、第1の保護層2の艶消し効果をより高め、加飾シートに表出される立体感をより高める観点からは、好ましくは4μm以下、より好ましくは3μm以下が挙げられる。また、同様の観点から、当該無機粒子の粒子径の下限値としては、通常0.1μm程度が挙げられる。
【0023】
第1の保護層2における粒子径が5μm以下の無機粒子の含有量としては、特に制限されないが、加飾シートに表出される立体感をより高める観点からは、第1の保護層2に含まれる後述の樹脂100質量部に対して、好ましくは1?70質量部程度、より好ましくは10?60質量部程度、さらに好ましくは20?50質量部程度が挙げられる。
【0024】
本発明において、第1の保護層2に含まれる粒子径が8μm以上の粒子は、主に、第1の保護層2の一部の上に設けられた後述の第2の保護層3によって形成された凹凸形状が、例えば射出成形時や予備成形(真空成形)時の熱と圧力によって、なだらかとなったり小さくなったりすることにより、加飾シートに表出されていた高い立体感が劣化してしまうことを抑制する機能を発揮する。
【0025】
本発明において、第1の保護層2に上記の粒子径が8μm以上の粒子が含まれることにより、加飾シートに表出されていた高い立体感が加飾樹脂成形品の成形時に劣化することを効果的に抑制することができる機序の詳細は必ずしも明らかではないが、例えば次のように考えることができる。すなわち、第1の保護層2に粒子径が8μm以上の粒子(以下、「大きい粒子」ということがある。)が含まれていることにより、第1の保護層2の表面の第2の保護層3が形成されていない部分2bから、このような大きな粒子が突出し、当該大きな粒子の突出した部分が、第2の保護層3を横から支える効果を発揮するものと考えられる。これにより、第2の保護層3によって形成された凹凸形状が強固となり、射出成形時や予備成形時の熱と圧力によって、凹凸形状がなだらかとなったり、小さくなったりすることが抑制されていると考えられる。
【0026】
粒子径が8μm以上の粒子としては、特に制限されず、例えば、無機粒子、樹脂粒子などが挙げられる。無機粒子としては、上記の粒子径が5μm以下の無機粒子で例示したものと同じものが例示できる。また、樹脂粒子としては、例えば、ウレタンビーズ、アクリルビーズ、ポリエチレンビーズなどが挙げられる。これらの粒子の中でも、耐傷付き性を良好とする観点からは、好ましくは樹脂粒子、より好ましくはウレタンビーズが挙げられる。粒子径が8μm以上の粒子は、1種類単独で使用してもよいし、無機粒子や樹脂粒子を2種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0027】
粒子径が8μm以上の粒子の粒子径としては、加飾シートに表出されていた高い立体感が加飾樹脂成形品の成形時に劣化してしまうことを抑制する観点からは、好ましくは9μm以上、より好ましくは10μm以上が挙げられる。また、当該粒子の粒子径の上限値としては、通常20μm程度が挙げられる。
【0028】
第1の保護層2における粒子径が8μm以上の粒子の含有量としては、特に制限されないが、加飾シートに表出されていた高い立体感が加飾樹脂成形品の成形時に劣化してしまうことを抑制する観点からは、第1の保護層2に含まれる後述の樹脂100質量部に対して、好ましくは1?200質量部程度、より好ましくは3?100質量部程度、さらに好ましくは5?50質量部程度が挙げられる。
【0029】
第1の保護層2に含まれる、粒子径が5μm以下の無機粒子と粒子径が8μm以上の粒子の質量比は、特に制限されないが、加飾シートに高い立体感を与えると共に、成形時に立体感が損なわれることを抑制する観点、及び加飾シートに高い耐傷付き性を与える観点からは、好ましくは10/1?1/4程度、より好ましくは9/1?1/2程度が挙げられる。
【0030】
本発明において、第1の保護層2を形成する樹脂としては、上記の粒子径が5μm以下の無機粒子と粒子径が8μm以上の粒子とを第1の保護層2中に分散させることができるものであれば、特に制限されないが、加飾シートの三次元成形性及び耐傷付き性などの観点からは、好ましくは熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などが挙げられる。
【0031】
熱硬化性樹脂としては、特に制限されず、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、水酸基官能性アクリル樹脂、カルボキシル官能性アクリル樹脂、アミド官能性共重合体、ウレタン樹脂などが挙げられる。
【0032】
これらの熱硬化性樹脂の硬化の態様としては、特に制限されず、例えば以下のような態様が例示できる。例えば、エポキシ樹脂であれば、アミン、酸触媒、カルボン酸、酸無水物、水酸基、ジシアンジアミド又はケチミンとの反応などが挙げられる。フェノール樹脂であれば、塩基触媒と過剰なアルデヒドとの反応などが挙げられる。ユリア樹脂であれば、アルカリ性または酸性下での重縮合反応などが挙げられる。不飽和ポリエステル樹脂であれば、無水マレイン酸とジオールとの共縮合反応などが挙げられる。メラミン樹脂であれば、メチロールメラミンの加熱重縮合反応などが挙げられる。アルキド樹脂であれば、側鎖などに導入された不飽和基同士の空気酸化による反応などが挙げられる。ポリイミド樹脂であれば、酸または弱アルカリ触媒の存在下での反応、又はイソシアネート化合物との反応(2液型の場合)などが挙げられる。シリコーン樹脂であれば、シラノール基の酸触媒の存在下での縮合反応などが挙げられる。水酸基官能性アクリル樹脂であれば、水酸基と自身が持つアミノ樹脂との反応(1液型の場合)などが挙げられる。カルボキシル官能性アクリル樹脂であれば、アクリル酸またはメタクリル酸などのカルボン酸とエポキシ化合物による反応などが挙げられる。アミド官能性共重合体であれば、水酸基との反応または自己縮合反応などが挙げられる。ウレタン樹脂であれば、水酸基を含有するポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂等の樹脂とイソシアネート化合物又はその変性物との反応などが挙げられる。
【0033】
第1の保護層2を形成する樹脂としては、硬化性の観点からは、電離放射線硬化性樹脂がより好ましく、特に溶剤等を使用する必要がない点などからは、電子線硬化性樹脂が好ましい。以下、第1の保護層2を形成する電離放射線硬化性樹脂について詳述する。
【0034】
(電離放射線硬化性樹脂)
第1の保護層2の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂とは、電離放射線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂であり、具体的には、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基を有する、プレポリマー、オリゴマー、及びモノマーなどのうち少なくとも1種を適宜混合したものが挙げられる。ここで電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋しうるエネルギー量子を有するものを意味し、通常紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線も含むものである。電離放射線硬化性樹脂の中でも、電子線硬化性樹脂は、無溶剤化が可能であり、光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるため、第1の保護層2の形成において好適に使用される。
【0035】
電離放射線硬化性樹脂として使用される上記モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートモノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)、好ましくは3個以上(3官能以上)有する(メタ)アクリレートモノマーであればよい。多官能性(メタ)アクリレートとして、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
また、電離放射線硬化性樹脂として使用される上記オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートオリゴマーが好適であり、中でも分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)有する多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、アクリルシリコーン(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー(例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等)等が挙げられる。ここで、ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネートポリオールを(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。アクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、シリコーンマクロモノマーを(メタ)アクリレートモノマーとラジカル共重合させることにより得ることができる。ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレートは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレートを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートも用いることができる。ポリエステル(メタ)アクリレートは、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、或いは多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレートは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリブタジエン(メタ)アクリレートは、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。シリコーン(メタ)アクリレートは、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーンの末端又は側鎖に(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。これらのオリゴマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
これらの硬化性樹脂は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの硬化性樹脂の中でも、加飾シートの三次元成形性、耐傷付き性などをより一層高めるという観点から、好ましくはポリカーボネート(メタ)アクリレート、アクリルシリコーン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0038】
(他の添加成分)
第1の保護層2を形成する樹脂中には、上記の粒子径が5μm以下の無機粒子及び粒子径が8μm以上の粒子に加えて、第1の保護層2に備えさせる所望の物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば紫外線吸収剤や光安定剤等の耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤等が挙げられる。これらの添加剤は、常用されるものから適宜選択して用いることができる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基等の重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
【0039】
(第1の保護層2の厚さ)
第1の保護層2の硬化後の厚さについては、特に制限されないが、例えば、0.1?15μm程度、好ましくは0.5?10μm程度、さらに好ましくは1?5μm程度が挙げられる。このような範囲の厚さを満たすと、耐傷付き性等の表面保護層としての十分な物性が得られる。また、第1の保護層2を電離放射線硬化性樹脂により形成する場合であれば、電離放射線硬化性樹脂組成物に対して電離放射線を均一に照射することが可能であるため、均一に硬化することが可能となり、経済的にも有利になる。
【0040】
第1の保護層2において、粒子径が8μm以上の粒子の粒子径は、第1の保護層2の厚さよりも大きくてもよいし、小さくてもよいが、第2の保護層3によって形成された凹凸形状をより強固にする観点からは、粒子径が8μm以上の粒子の粒子径は、第1の保護層2の厚さよりも大きいことが好ましい。また、粒子径が5μm以下の無機粒子の粒子径も、第1の保護層2の厚さよりも大きくてもよいし、小さくてもよい。これらの粒子の粒子径が、第1の保護層2の厚さよりも大きい場合、これらの粒子は、第1の保護層2から第2の保護層3側に突出している。なお、第1の保護層2の厚さとは、表面が樹脂部分の厚さをいい、例えば、粒子径が5μm以下の無機粒子や、粒子径が8μm以上の粒子の粒子径が、第1の保護層2の厚さよりも大きい場合、第1の保護層2の厚さとは、これらの粒子が突出していない部分の厚さをいう。
【0041】
(第1の保護層2の形成方法)
第1の保護層2は、粒子径が5μm以下の無機粒子と、粒子径が8μm以上の粒子と、上記の樹脂を含む樹脂組成物を基材層1の上に塗布することにより形成することができる。粒子径が5μm以下の無機粒子の原料としては、例えば、平均粒子径が5μm以下、好ましく平均粒子径が4μm以下、さらに好ましくは平均粒子径が3μm以下である上記した無機粒子を用いることができる。なお、原料として用いる当該無機粒子の平均粒子径の下限値としては、好ましくは0.1μmである。また、粒子径が8μm以上の粒子の原料としては、例えば、平均粒子径が8μm以上、好ましくは平均粒子径が9μm以上、さらに好ましくは平均粒子径が10μm以上である上記した粒子を用いることができる。なお、原料として用いる当該粒子の平均粒子径の上限値としては、好ましくは20μmである。なお、本発明において、上記の無機粒子及び上記の粒子の平均粒子径は、島津レーザー回折式粒度分布測定装置SALD-2100を使用し、圧縮空気を利用してノズルから測定対象となる粉体を噴射し、空気中に分散させて測定する噴射型乾式測定方式によるものを意味する。
【0042】
例えば、第1の保護層2が、上記の熱硬化性樹脂により形成されている場合、硬化前の熱硬化性樹脂を基材層1の上に塗布し、上記した態様で熱硬化性樹脂を硬化させることにより、保護層2を形成することができる。
【0043】
また、第1の保護層2が上記の電離放射線硬化性樹脂により形成されている場合、第1の保護層2の形成は、例えば、電離放射線硬化性樹脂を含む電離放射線硬化性樹脂組成物を調製し、これを塗布し、架橋硬化することにより行われる。なお、電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度は、後述の塗布方式により、第1の保護層2に隣接する層上に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよい。本発明においては、調製された塗布液を、前記厚さとなるように、第1の保護層2に隣接する層上に、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗布し、未硬化樹脂層を形成させる。このようにして形成された未硬化樹脂層に、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させて第1の保護層2を形成する。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70?300kV程度が挙げられる。
【0044】
なお、電子線の照射において、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、第1の保護層2の下に電子線照射によって劣化しやすい樹脂を使用する場合には、電子線の透過深さと第1の保護層2の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定する。これにより、第1の保護層2の下に位置する層への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による各層の劣化を最小限にとどめることができる。また、照射線量は、保護層2の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5?300kGy(0.5?30Mrad)、好ましくは10?50kGy(1?5Mrad)の範囲で選定される。さらに、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190?380nmの紫外線を含む光線を放射すればよい。紫外線源としては、特に制限されないが、例えば、高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈等が挙げられる。
【0045】
[第2の保護層3]
第2の保護層3は、本発明の加飾シートにおいて、第1の保護層2の一部の上に設けられており、これにより形成された凹凸形状によって、加飾シートに高い立体感を付与している。また、第2の保護層3は、第1の保護層2との艶差によって、加飾シートに高い立体感を付与している。例えば、後述の通り、第2の保護層を高艶状態(グロス)とし、第1の保護層2を低艶状態(マット)とし、両層間に艶差を発現させることにより、加飾シートに高い立体感を付与することができる。また、加飾樹脂成形品の表面を手で触った際に凹凸形状を知覚させることにより、本物らしさや高級感をさらに高めるという効果も期待できる。
【0046】
また、第1の保護層2の表面上の第2の保護層3が設けられた部分2aと設けられていない部分2bとによって形成された凹部形状と、後述の絵柄層4によって形成される模様とを同調させることにより、加飾シートに高い立体感及び本物らしい意匠感を付与することができる。例えば絵柄層4に形成された模様が木目柄である場合、その絵柄によって表現された導管部と、上記の凹凸形状の凹部とを同調させることによって、木目柄にリアル感を持たせることができる。さらに、第2の保護層3においては、第1の保護層2に上記の粒子径が8μm以上の粒子が含まれていることにより、加飾シートに表出されていた高い立体感や本物らしい意匠感が加飾樹脂成形品の成形時に劣化することを効果的に抑制されている。
【0047】
第2の保護層3を構成する樹脂としては、特に制限されないが、好ましくは第1の保護層2を構成する上記の樹脂と同様の熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂が挙げられる。
【0048】
第2の保護層3に高い艶を与え、第1の保護層2との艶差によって、加飾シートに高い立体感を付与する観点からは、第2の保護層3は、樹脂粒子を含むことが好ましい。樹脂粒子としては、第1の保護層2で例示した樹脂粒子と同じものが例示できる。
【0049】
第2の保護層3に含まれる樹脂粒子の粒子径としては、特に制限されないが、第2の保護層3に高い艶を与え、第1の保護層2との艶差によって、加飾シートに高い立体感を付与する観点、及び実際に手で知覚可能な凹凸形状を加飾樹脂成形品の表面に付与する観点からは、例えば0.1?10μm程度、好ましくは0.5?8μm程度、より好ましくは1?5μm程度が挙げられる。
【0050】
第2の保護層3に含まれる樹脂粒子の含有量としては、特に制限されず、第2の保護層3に含まれる上記の樹脂100質量部に対して、好ましくは0?80質量部程度、より好ましくは1?60質量部程度、さらに好ましくは10?40質量部程度が挙げられる。
【0051】
第2の保護層3の厚さは、特に制限されないが、成形後においても、第2の保護層3によって形成された凹凸形状が保持され、加飾シートに表出されていた高い立体感の劣化を効果的に抑制する観点からは、好ましくは0.1?15μm程度、より好ましくは0.5?10μm程度、さらに好ましくは1?5μm程度が挙げられる。
【0052】
第2の保護層3は、上記の第1の保護層2と同様の方法により形成することができる。
【0053】
[絵柄層4]
絵柄層4は、樹脂成形品に装飾性を与える層であり、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される。絵柄層4によって形成される模様は、特に制限されず、例えば、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様など挙げられ、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様も挙げられる。これらの模様は、通常の黄色、赤色、青色、及び黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成される。
【0054】
絵柄層4に用いる絵柄インキとしては、バインダーに顔料、染料などの着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤などを適宜混合したものが使用される。該バインダーとしては、特に制限されず、例えば、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0055】
着色剤としては、特に制限されず、例えば、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料などが挙げられる。
【0056】
[隠蔽層5]
隠蔽層5は、基材層1の色の変化やバラツキを抑制する目的で、基材層1と保護層2との間、絵柄層4を設ける場合であれば基材層1と絵柄層4との間などに、必要に応じて設けられる層である。
【0057】
隠蔽層5は、基材層1が加飾シートの色調や絵柄に悪影響を及ぼすのを抑制するために設けられるため、一般には不透明色の層として形成される。
【0058】
隠蔽層5は、バインダーに、顔料、染料などの着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤などを適宜混合したインキ組成物を用いて形成される。隠蔽層5を形成するインキ組成物は、上述の絵柄層4に使用されるものから適宜選択して使用される。
【0059】
隠蔽層5は、通常、厚さが1?20μm程度に設定され、所謂ベタ印刷層として形成されることが望ましい。
【0060】
[透明フィルム層6]
透明フィルム層6は、本発明の加飾シートの耐傷付き性や耐候性を高めると共に、成形性を高める支持体としての役割を果たし、必要に応じて、基材層1や絵柄層4などの上に設けられる。透明フィルム層6は、樹脂フィルムにより形成される。透明フィルム層6を備えることで成形性が高まり、加飾シートを三次元成形した際に第1の保護層2や第2の保護層3にクラックが生じ難くなる。透明フィルム層6を形成する樹脂フィルムとしては、加飾シートの成形性を高められると共に、絵柄層4の上に設けられる場合において絵柄層4による意匠を隠蔽しないものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、またはアクリル樹脂などのフィルムが挙げられる。透明フィルム層6の厚さは、特に限定されないが、通常15?200μm程度、好ましくは30?150μm程度である。透明フィルム層6を形成する方法は、特に制限されないが、例えば、基材層1や絵柄層4など、隣接する層の表面上に上記の樹脂フィルムを熱ラミネート、ドライラミネートなどにより積層する方法などが挙げられる。
【0061】
[接着層7]
接着層7は、加飾シートと射出樹脂との密着性を向上させることなどを目的として、基材層1の裏面に必要に応じて設けられる層である。接着層7を形成する樹脂としては、加飾シートと射出樹脂との密着性を向上させることができるものであれば、特に制限されず、例えば、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アクリル変性ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0062】
2.加飾樹脂成形品
本発明の加飾樹脂成形品は、本発明の加飾シートに射出樹脂を一体化させることにより成形されてなるものである。即ち、本発明の加飾樹脂成形品は、少なくとも、射出樹脂層と、基材層と、第1の保護層と、前記第1の保護層の一部の上に設けられた第2の保護層とがこの順に積層された積層体からなり、第1の保護層が、粒子径が5μm以下の無機粒子と、粒子径が8μm以上の粒子とを含むことを特徴とする。本発明の加飾樹脂成形品では、必要に応じて、加飾シートに上述の絵柄層4、隠蔽層5、透明フィルム層6、接着層7などの少なくとも1層がさらに設けられていてもよい。
【0063】
本発明の加飾樹脂成形品は、本発明の加飾シートを用いて、例えば、インサート成形法、射出成形同時加飾法、ブロー成形法、ガスインジェクション成形法等の各種射出成形法により作製される。これらの射出成形法の中でも、好ましくはインサート成形法及び射出成形同時加飾法が挙げられる。
【0064】
インサート成形法では、まず、真空成形工程において、本発明の加飾シートを真空成形型により予め成形品表面形状に真空成形(オフライン予備成形)し、次いで必要に応じて余分な部分をトリミングして成形シートを得る。この成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を型締めし、流動状態の樹脂を型内に射出し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に加飾シートを一体化させることにより、加飾樹脂成形品が製造される。
【0065】
より具体的には、下記の工程を含むインサート成形法によって、本発明の加飾樹脂成形品が製造される。
本発明の加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、
真空成形された加飾シートの余分な部分をトリミングして成形シートを得るトリミング工程、及び
成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を射出成形型内に射出して樹脂と成形シートを一体化する一体化工程。
【0066】
インサート成形法における真空成形工程では、加飾シートを加熱して成形してもよい。この時の加熱温度は、特に限定されず、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚さなどによって適宜選択すればよいが、例えば基材層としてABS樹脂フィルムを使用する場合であれば、通常120?200℃程度とすることができる。また、一体化工程において、流動状態の樹脂の温度は、特に限定されないが、通常180?320℃程度とすることができる。
【0067】
また、射出成形同時加飾法では、本発明の加飾シートを射出成形の吸引孔が設けられた真空成形型との兼用雌型に配置し、この雌型で予備成形(インライン予備成形)を行った後、射出成形型を型締めして、流動状態の樹脂を型内に射出充填し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に本発明の加飾シートを一体化させることにより、加飾樹脂成形品が製造される。
【0068】
より具体的には、下記の工程を含む射出成形同時加飾法によって、本発明の加飾樹脂成形品が製造される。
本発明の加飾シートを、所定形状の成形面を有する可動金型の当該成形面に対し、加飾シートの基材層の表面が対面するように設置した後、当該加飾シートを加熱、軟化させると共に、可動金型側から真空吸引して、軟化した加飾シートを当該可動金型の成形面に沿って密着させることにより、加飾シートを予備成形する予備成形工程、
成形面に沿って密着された加飾シートを有する可動金型と固定金型とを型締めした後、両金型で形成されるキャビティ内に、流動状態の樹脂を射出、充填して固化させることにより樹脂成形体を形成し、樹脂成形体と加飾シートを積層一体化させる一体化工程、及び 可動金型を固定金型から離間させて、加飾シート全層が積層されてなる樹脂成形体を取り出す取出工程。
【0069】
射出成形同時加飾法の予備成形工程において、加飾シートの加熱温度は、特に限定されず、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚さなどによって適宜選択すればよいが、基材層としてポリエステル樹脂フィルムやアクリル樹脂フィルムを使用する場合であれば、通常70?130℃程度とすることができる。また、射出成形工程において、流動状態の樹脂の温度は、特に限定されないが、通常180?320℃程度とすることができる。
【0070】
本発明の加飾樹脂成形品において、射出樹脂層は、用途に応じた樹脂を選択して形成すればよい。射出樹脂層を形成する射出樹脂としては、熱可塑性樹脂であってもよく、また熱硬化性樹脂であってもよい。
【0071】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0072】
また、熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0073】
本発明の加飾樹脂成形品は、高い成形性及び耐傷付き性を有し、さらに加飾樹脂成形品に成形された際にも高い立体感を有するので、例えば、自動車等の車両の内装材又は外装材;窓枠、扉枠等の建具;壁、床、天井等の建築物の内装材;テレビ受像機、空調機等の家電製品の筐体;容器等として利用することができる。
【実施例】
【0074】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0075】
<実施例1?9及び比較例1?7>
(加飾シートの作製)
基材層としての厚さ400μmの着色ABS樹脂フィルム上に、バインダーとしてアクリル樹脂を用いた絵柄層(厚み5μm)をグラビア印刷により形成した。絵柄層の模様は、木目模様とした。次に、絵柄層の上に表1に記載の組成を有する樹脂組成物を用いて、グラビア印刷により第1の保護層(厚み3μm)を形成した。次に、第1の保護層の上に、表1の組成を有する樹脂組成物を用いて、絵柄層の木目模様の導管部に対応する位置が非形成部となるように、木目模様と同調した第2の保護層をパターン状に形成した。以上のようにして、表1に示されるような構成を有する、基材層/絵柄層/第1の保護層/第2の保護層がこの順に積層された加飾シートを得た。
【0076】
(加飾シートの意匠性評価)
実施例1?9及び比較例1?7で得られた加飾シートの外観を目視で観察した立体感、さらに加飾シートの表面を手で触った際に知覚される凹凸感を確認して、加飾シートの意匠性を以下の評価基準に従い評価した。結果を表1に示す。
◎:第1の保護層と第2の保護層で表現する意匠の立体感をしっかり認識でき、さらに凹凸感を手で知覚することもできる
○:第1の保護層と第2の保護層で表現する意匠の立体感をしっかり認識できる
△:第1の保護層と第2の保護層で表現する意匠の立体感を認識できる
×:第1の保護層と第2の保護層で表現する意匠の立体感をほとんど認識できない
××:第1の保護層と第2の保護層で表現する意匠の立体感を認識できない
【0077】
(射出成形後の意匠性評価)
実施例1?9及び比較例1?7の加飾シートをそれぞれ用い、各加飾シートを、熱盤温度170℃で加熱して射出成形の金型内形状に沿うように成形して、表面保護層側を金型内面に密着させた。金型は、80mm角の大きさで、立ち上がり10mm、コーナー部が2Rのトレー状である深絞り度の高い形状のものを用いた。一方、射出樹脂としてABS樹脂[日本エイアンドエル(株)製、商品名「クララスチックMTH-2」]を用いて、これを230℃にて溶融状態にしてから、キャビティ内に射出した。金型温度が30℃になった時点で、金型から加飾樹脂成形品を取り出し、加飾樹脂成形品を得た。得られた加飾樹脂成形品の外観を目視で観察した立体感、さらに加飾樹脂成形品の表面を手で触った際に知覚される凹凸感を確認し、加飾樹脂成形品の意匠性を、以下の評価基準に従い評価した。結果を表1に示す。
◎:第1の保護層と第2の保護層で表現する意匠の立体感をしっかり認識でき、さらに凹凸感を手で知覚することもできる
○:第1の保護層と第2の保護層で表現する意匠の立体感をしっかり認識できる
△:第1の保護層と第2の保護層で表現する意匠の立体感を認識できる
×:第1の保護層と第2の保護層で表現する意匠の立体感をほとんど認識できない
××:第1の保護層と第2の保護層で表現する意匠の立体感を認識できない
【0078】
(成形性評価試験)
実施例1?9及び比較例1?7の加飾シートを、それぞれ赤外線ヒーターで160℃に加熱し、軟化させた。次に、真空成形用型を用い、最大延伸倍率が150%になる条件で真空成形し、真空成形用型の内部形状となるように加飾シートを成形した。次に、加飾シートを冷却後、真空成形用型から離型した。離型した各加飾シートについて、以下の評価基準に従い成形性を評価した。結果を表1に示す。
○:離型した加飾シートの表面に割れや白化が全く見られず、真空成形用型の内部形状に良好に追従していた
△:離型した加飾シートの三次元成形部、最大延伸部の一部に微細な塗膜割れ又は白化が見られたが、実用上問題がない
×:離型した加飾シートの表面に割れや白化が見られ、真空成形用型の内部形状に追従できていなかった
××:離型した加飾シートの表面に著しい割れや白化が見られ、真空成形用型の内部形状に追従できていなかった
【0079】
(耐傷付き性評価試験)
実施例1?9及び比較例1?7の加飾シートの第2の保護層側の表面を爪で5往復ひっかき、表面の状態を目視で観察し、以下の基準に従い評価した。結果を表1に示す。
○:表面に傷付きがなかった
△:表面に微細な傷が認められたが、削れや白化は無かった
×:表面に傷が認められ、傷付き部分の艶上がりが観察された
××:表面に著しい傷があり、表面が削られていた
【0080】
【表1】

【0081】
表1に示す各成分としては、以下のものを用いた。
(第2の保護層)
ウレタンビーズ:平均粒子径3.5μm
なお、実施例において、各種粒子の平均粒子径は、上記の方法で測定して得られた値である。
樹脂A:アクリルポリオール(重量平均分子量15000?20000)
樹脂B:2官能ポリカーボネートアクリレート
(第1の保護層)
シリカα:平均粒子径4μm
シリカβ:平均粒子径1.3μm
シリカγ:平均粒子径10μm
ウレタンビーズA:平均粒子径3.5μm
ウレタンビーズB:平均粒子径10μm
ウレタンビーズC:平均粒子径14μm
アクリル1:アクリルポリオール(重量平均分子量15000?20000)
アクリル2:アクリルポリオール(重量平均分子量30000)
ウレタン:ポリウレタン
【0082】
表1に示されるように、粒子径が5μm以下の無機粒子と、粒子径が8μm以上の粒子を含む実施例1?9の加飾シートにおいては、加飾シート、加飾樹脂成形品の意匠性、成形性、耐傷付き性の点で、良好であるか、実用上問題ないことが明らかとなった。一方、粒子径が5μm以下の無機粒子及び粒子径が8μm以上の粒子のいずれか一方を含まない比較例1?7の加飾シートは、加飾シート、加飾樹脂成形品の意匠性、成形性、または耐傷付き性の点で劣っていた。例えば、粒子径が5μm以下の無機粒子を含むが、粒子径が8μm以上の粒子を含まない比較例1の加飾シートでは、加飾シートの意匠性は優れるものの、加飾樹脂成形品とした場合の意匠性、加飾シートの成形性、耐傷付き性の評価が悪かった。また、粒子径が5μm以下の無機粒子の量を増やした比較例2においても、加飾シートの成形性は改善するものの、加飾樹脂成形品とした場合の意匠性は低いままであった。また、例えば、無機粒子を含まない比較例4においては、加飾シートの意匠性及び加飾樹脂成形品の意匠性の評価が低かった。
【符号の説明】
【0083】
1…基材層
2…第1の保護層
3…第2の保護層
4…絵柄層
5…隠蔽層
6…透明フィルム層
7…接着層
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基材層と、第1の保護層と、前記第1の保護層の一部の上に設けられた第2の保護層とを有し、
前記第1の保護層が、粒子径が5μm以下の無機粒子と、粒子径が8μm以上の粒子とを含み、
前記粒子径が8μm以上の粒子が、シリカ粒子及び樹脂粒子の少なくとも1種である、加飾シート。
【請求項2】
前記第1の保護層において、前記粒子径が5μm以下の無機粒子の含有量が、前記第1の保護層に含まれる樹脂100質量部に対して、1?70質量部である、請求項1に記載の加飾シート。
【請求項3】
前記第1の保護層において、前記粒子径が8μm以上の粒子の含有量が、前記第1の保護層に含まれる樹脂100質量部に対して、1?200質量部である、請求項1または2に記載の加飾シート。
【請求項4】
前記第1の保護層において、前記粒子径が5μm以下の無機粒子と、前記粒子径が8μm以上の粒子との含有量の質量比(粒子径が5μm以下の無機粒子/粒子径が8μm以上の粒子)が、10/1?1/4である、請求項1?3のいずれかに記載の加飾シート。
【請求項5】
前記粒子径が5μm以下の無機粒子が、シリカ粒子である、請求項1?4のいずれかに記載の加飾シート。
【請求項6】
前記粒子径が8μm以上の粒子が、樹脂粒子である、請求項1?5のいずれかに記載の加飾シート。
【請求項7】
前記第1の保護層の厚さが、0.1?15μmである、請求項1?6のいずれかに記載の加飾シート。
【請求項8】
前記第2の保護層の厚さが、0.1?15μmである、請求項1?7のいずれかに記載の加飾シート。
【請求項9】
前記第2の保護層が、樹脂粒子を含む、請求項1?8のいずれかに記載の加飾シート。
【請求項10】
絵柄層をさらに有する、請求項1?9のいずれかに記載の加飾シート。
【請求項11】
前記第1の保護層上において、前記第2の保護層が設けられた部分と設けられていない部分とによって形成された凹部形状が、前記絵柄層の模様と同調している、請求項10に記載の加飾シート。
【請求項12】
少なくとも、射出樹脂層と、基材層と、第1の保護層と、前記第1の保護層の一部の上に設けられた第2の保護層とがこの順に積層された積層体からなり、
前記第1の保護層が、粒子径が5μm以下の無機粒子と、粒子径が8μm以上の粒子とを含み、
前記粒子径が8μm以上の粒子が、シリカ粒子及び樹脂粒子の少なくとも1種である、加飾樹脂成形品。
【請求項13】
請求項1?11のいずれかに記載の加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、
前記真空成形された加飾シートの余分な部分をトリミングして成形シートを得るトリミング工程、及び
前記成形シートを射出成形型に挿入し、前記射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を前記射出成形型内に射出して前記樹脂と前記成形シートとを一体化する一体化工程、
を備える、加飾樹脂成形品の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-03-15 
出願番号 特願2013-70158(P2013-70158)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (B32B)
P 1 651・ 121- YAA (B32B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大村 博一  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 渡邊 豊英
小野田 達志
登録日 2016-11-18 
登録番号 特許第6040835号(P6040835)
権利者 大日本印刷株式会社
発明の名称 加飾シート及び加飾樹脂成形品  
代理人 松井 宏記  
代理人 水谷 馨也  
代理人 水谷 馨也  
代理人 松井 宏記  
代理人 田中 順也  
代理人 田中 順也  
代理人 山田 威一郎  
代理人 立花 顕治  
代理人 山田 威一郎  
代理人 立花 顕治  
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