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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  B65H
管理番号 1340130
異議申立番号 異議2016-700581  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-06-27 
確定日 2018-03-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5871518号発明「自動綾巻きワインダの作業箇所を運転する方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5871518号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。 特許第5871518号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯

特許第5871518号(以下「本件特許」という。)に係る特許出願は、平成23年8月22日(パリ条約による優先権主張 2010年8月21日(以下「優先日」という。)、ドイツ連邦共和国)に特許出願され、平成28年1月22日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人村田機械株式会社(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。そして、以後の手続の経緯は次のとおりである。

平成28年12月12日 取消理由通知
平成29年 3月10日 意見書の提出(特許権者)
同年 6月15日 取消理由通知(決定の予告)
同年 8月29日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年11月 1日 意見書の提出(特許異議申立人)

第2 訂正の適否についての判断

1.訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前組立てされた構成ユニットとして形成されたスプライシングヘッド(18)」とあるのを、「スプライシング角柱体(19)が分配体(17)にカバー金属薄板(22)を介して固定されている前組立てされた構成ユニットとして形成されたスプライシングヘッド(18)」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「新たなスプライシングヘッド(18)」とあるのを、「スプライシング角柱体(19)が分配体(17)にカバー金属薄板(22)を介して固定されている前組立てされた構成ユニットとして形成された新たなスプライシングヘッド(18)」に訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
上記訂正事項1に係る訂正は、「前組立てされた構成ユニットとして形成されたスプライシングヘッド(18)」が「スプライシング角柱体(19)が分配体(17)にカバー金属薄板(22)を介して固定されている」ことを特定したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、かかる訂正は、本件特許明細書の「カバー金属薄板22自体は、ねじボルト39を用いて分配体17に接続されている。カバー金属薄板22には、さらにOリング40を介してスプライシング角柱体19が固定されており、このスプライシング角柱体19の圧力空気供給可能なスプライシング通路20もまた同様に、それぞれ糸固有に形成されており、つまり例えばスプライシング通路の形状及び/又は、スプライシング通路において開口するスプライシング空気ノズルの配置及び構成は、特定の糸材料に合わせられている。」(段落【0053】)との記載等に基づくものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものといえる。
また、訂正事項1は、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項2について
上記訂正事項2に係る訂正は、「新たなスプライシングヘッド(18)」が「スプライシング角柱体(19)が分配体(17)にカバー金属薄板(22)を介して固定されている前組立てされた構成ユニットとして形成された」ことを特定したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、かかる訂正は、本件特許明細書の「カバー金属薄板22自体は、ねじボルト39を用いて分配体17に接続されている。カバー金属薄板22には、さらにOリング40を介してスプライシング角柱体19が固定されており、このスプライシング角柱体19の圧力空気供給可能なスプライシング通路20もまた同様に、それぞれ糸固有に形成されており、つまり例えばスプライシング通路の形状及び/又は、スプライシング通路において開口するスプライシング空気ノズルの配置及び構成は、特定の糸材料に合わせられている。」(段落【0053】)との記載等に基づくものであり、本件特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものといえる。
また、訂正事項2は、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

3.小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。

第3 特許異議の申立てについて

1.本件特許発明
本件訂正請求により訂正された本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
自動綾巻きワインダの作業箇所を運転する方法であって、自動綾巻きワインダは、スプライシングヘッドを備えた糸スプライシング装置を有していて、スプライシングヘッドは、圧力空気管路用の接続孔及び交換可能な保持兼解繊管用の受容孔を備えた分配体と、交換可能なスプライシング角柱体とを有しており、カバー金属薄板を用いて分配体に固定された保持兼解繊管と、圧力空気を供給可能なスプライシング通路を有するスプライシング角柱体とはそれぞれ、糸固有に配置構成されている、自動綾巻きワインダの作業箇所を運転する方法において、
ロット交換時に、作業箇所の受容装置(30)に固定するために前側から接近可能な固定装置(44)を備えていて、スプライシング角柱体(19)が分配体(17)にカバー金属薄板(22)を介して固定されている前組立てされた構成ユニットとして形成されたスプライシングヘッド(18)を、全体として、スプライシング装置ハウジング(31)に配置された受容装置(30)及び圧力空気管路(27)から取り外して、スプライシング角柱体(19)及び保持兼解繊管(26A,26B)のような糸処理エレメントがそれぞれ個々に新たな糸ロットに合わせられている、スプライシング角柱体(19)が分配体(17)にカバー金属薄板(22)を介して固定されている前組立てされた構成ユニットとして形成された新たなスプライシングヘッド(18)と交換することを特徴とする、自動綾巻きワインダの作業箇所を運転する方法。」

2.刊行物の記載
(1)平成29年6月15日付けの取消理由(決定の予告)で通知した本件特許の優先日前に頒布された刊行物である実願昭60-53908号(実開昭61-178761号)のマイクロフィルム(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア.「本考案では、糸継装置を構成する各種部材のうち、解撚ノズルパイプを糸継装置本体ブロックとは別体の着脱自在なブロックに予め取付けておき、このようなノズルブロックを糸種の各条件に見合った数だけ用意しておき、継ぎ合わされるべき糸に適したノズルブロックを糸継装置の本体ブロックに取付固定するようにしたものである。」(第3ページ第2?9行)

イ.「第6図、第7図は糸継装置の概略構成を示す。糸継装置(1)は、糸継孔(2)を形成した糸継部材(3)、糸押え装置(4)、糸端解撚ノズル(5)(6)、糸寄せレバー(7)、糸切断装置(8)(9)および糸クランプ装置(10)(11)等より構成される。
糸継動作は次の順序で行われる。即ち、公知の自動ワインダーに糸継装置が設けられている場合、最初にパッケージ(P)側の糸(YP)が公知のサクションマウス(12)によって吸引把持されてサクションマウス(12)の旋回動に伴ってパッケージ側の糸(YP)が糸継装置の前方へ案内され、一部がクランプ装置(10)でクランプされ、精紡ボビン(B)側の糸(YB)も旋回動する中継パイプ(13)により案内され、クランプ装置(11)によりクランプされる。」(第3ページ第18行?第4ページ第15行)

ウ.「第1図、第2図において、解撚ノズルブロック(25)は一対の解撚ノズルパイプ(26)(27)を特定の糸に適した位置に調整されて位置固定し、上記パイプ(26)(27)に圧空を供給するためのメイン流体通路(28)および、該通路(28)から分岐した分岐通路(29)(30)が穿設され、メイン通路(28)には本体ブロック側の圧空供給路(第4図(31))に接続するための第1の細管(32)が挿入固定され、該細管(32)にはOリング(33)が嵌着されると共に、細管の一部はブロック(25)の背面(34)から突出(32a)して固定され、本体ブロックとの結合の際の位置決め作用を行う。
さらに、上記解撚ノズルブロック(25)には、糸継部材(3)の糸継孔(2)へ圧空を供給するための第2の細管(35)が前記細管(32)と反対側、即ちブロック(25)の前面に突出して固定される。該第2の細管(35)にもOリング(36)が嵌着され、突出部(35a)は糸継部材(3)を結合する際の位置決め用として作用する。」(第6ページ第11行?第7ページ第13行)

エ.「第3図、第4図において、本体ブロック(41)が示される。本体ブロック(41)はワインダー本体に固定されるためのボルト通し用孔(42)(43)が穿設され、解撚ノズルブロック固定用のねじ孔(44)(45)が形成されている。上記本体ブロック(41)のノズルブロック、結合面(46)は平面に形成され、該結合面(46)には解撚ノズルパイプへ圧空を供給するための供給路(31)が開口(47)し、また糸継孔へ圧空を供給するための供給路(48)が開口し、該開口(49)部にはOリング(50)が嵌着されている。さらに、糸継部材(3)、フロントプレート(39)、解撚ノズルブロック(25)を一体的に本体ブロック(41)に締結させるボルト(51)用のねじ孔(44)が形成され、第1、4図の本体ブロック(41)と解撚ノズルブロック(25)を結合させた際には、第1図のボルト(51)および第1の細管(32)の突出部(32a)、第2の細管(35)の開口部(52)は第4図の本体ブロック(41)のねじ孔(44)、開口(47)、開口(49)に各々連結されるのである。」(第8ページ第8行?第9ページ第12行)

オ.「上記解撚ノズルブロック(25)には、解撚ノズルパイプ(27)が第5図示の如く設けられる。第5図は第2図のV-V断面および糸継部材(3)との関係を示す。即ち、ノズルブロック(25)に形成される円筒凹部(57)にブッシュ(58)が嵌着され、該ブッシュ(58)の中心孔に解撚ノズルパイプ(27)が挿入され、該パイプ(27)に形成された奥行方向に傾斜した圧空噴出孔(59)がパイプ内周面に開口し、該噴出孔(59)はブッシュ(58)に設けられる圧空通過孔(60)に連通する。またノズルブロック(25)の円筒凹部の一部には第1、2図の解撚ノズル用の圧空供給用分岐路(30)が開口(61)しており、パイプ(27)内の奥行方向に圧空が噴射され、糸端(YB)の撚りを解くのである。」(第9ページ第20行?第10ページ第17行)

カ.「従って、処理される糸に応じたパイプ(26)(27)を挿入固定した解撚ノズルブロック(25)が種々用意され、工場等の作業現場では上記ノズルブロック(25)をワインダー本体側に固定設置されている第3、4図示の本体ブロック(41)に取付け固定することにより、パイプ(26)(27)の微調整なしに処理糸に適した糸継装置が組立てられるのである
なお、解撚ノズルブロック(25)を本体ブロック(41)に取付ける手順は次の二通りである。第1は第1図の如く、ブロック(25)に予めフロントプレート(39)をねじ(62)で締結し、さらに、糸継部材(3)を第2の細管(35)(決定注:「第2の細管(35a)」は「第2の細管(35)」の誤記であることが明らかなので、修正して摘記した。)に嵌合したものを一体として取付ける方法である。即ち、第4図の本体ブロック(41)の結合面(46)にノズルブロック(25)の結合面(34)を当接させ、この際第1の細管(32)(審決注:「第1の細管(32a)」は「第1の細管(32)」の誤記であることが明らかなので、修正して摘記した。)を本体ブロック(41)の孔(47)に挿入して位置決めが可能で、次いで、ボルト(51)をねじ孔(44)に螺入し、さらに、ノズルブロック(25)の孔(37)および本体ブロック(41)のねじ孔(45)に図示しないボルトを螺入して組付けが完了する。」(第11ページ第10行?第12ページ第16行)

キ.「いづれの場合も、本体ブロック(41)に対し、糸種に応じた解撚ノズルブロック、糸継部材を選択して組合わせ、最適の糸継装置がワンタッチで行えるのである。」(第13ページ第1?5行)

ク.上記イ.によれば糸継装置は糸継動作を行うから、刊行物1には糸継動作の方法が記載されているといえる。

ケ.上記カ.の「ボルト(51)をねじ孔(44)に螺入し、さらに、ノズルブロック(25)の孔(37)および本体ブロック(41)のねじ孔(45)に図示しないボルトを螺入して組付けが完了する。」との記載を踏まえると、第1ないし4図からは、ボルト(51)がねじ孔(44)に解撚ノズルブロック(25)側から螺入可能である点が看取できる。

上記の記載事項を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「自動ワインダーに糸継装置が設けられ、糸継動作が行われ、
糸継装置(1)は、糸継孔(2)を形成した糸継部材(3)、糸押え装置(4)、糸端解撚ノズル(5)(6)、糸寄せレバー(7)、糸切断装置(8)(9)および糸クランプ装置(10)(11)等より構成され、
本体ブロック(41)のノズルブロック、結合面(46)は平面に形成され、該結合面(46)には解撚ノズルパイプへ圧空を供給するための供給路(31)が開口(47)し、
糸継部材(3)、フロントプレート(39)、解撚ノズルブロック(25)を一体的に本体ブロック(41)に締結させるボルト(51)用のねじ孔(44)が形成され、
本体ブロック(41)と解撚ノズルブロック(25)を結合させた際には、ボルト(51)および第1の細管(32)の突出部(32a)、第2の細管(35)の開口部(52)は本体ブロック(41)のねじ孔(44)、開口(47)、開口(49)に各々連結され、
解撚ノズルブロック(25)は一対の解撚ノズルパイプ(26)(27)を特定の糸に適した位置に調整されて位置固定し、解撚ノズルパイプ(26)(27)に圧空を供給するためのメイン流体通路(28)には本体ブロック側の圧空供給路(31)に接続するための第1の細管(32)が挿入固定され、
解撚ノズルブロック(25)には、糸継部材(3)の糸継孔(2)へ圧空を供給するための第2の細管(35)が解撚ノズルブロック(25)の前面に突出して固定され、
第2の細管(35)にもOリング(36)が嵌着され、突出部(35a)は糸継部材(3)を結合する際の位置決め用として作用し、
ボルト(51)がねじ孔(44)に解撚ノズルブロック(25)側から螺入可能であり、
解撚ノズルブロック(25)に形成される円筒凹部(57)にブッシュ(58)が嵌着され、該ブッシュ(58)の中心孔に解撚ノズルパイプ(27)が挿入され、
処理される糸に応じた解撚ノズルパイプ(26)(27)を挿入固定した解撚ノズルブロック(25)が種々用意され、
解撚ノズルブロック(25)に予めフロントプレート(39)をねじ(62)で締結し、さらに、糸継部材(3)を第2の細管(35)に嵌合したものを一体として取付け、
本体ブロック(41)に対し、糸種に応じた解撚ノズルブロック、糸継部材を選択して組合わせ、
継ぎ合わされるべき糸に適した着脱自在な解撚ノズルブロックを糸継装置の本体ブロックに取付固定する
糸継動作の方法。」

(2)同じく平成29年6月15日付けの取消理由(決定の予告)で通知した本件特許の優先日前に頒布された刊行物である特開昭62-41173号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア.「本発明にとつて重要な部分だけが図示されている高温空気式の糸スプライシング装置は全体を1で示されている。この糸スプライシング装置1は基体2を有し、基体2には固定ねじ3によつてプレート4とスプライシングヘツド5とが固定されている。」(第3ページ右上欄第5?10行)

イ.「基体2の別の2つの孔13,14は、ニユーマチツク式の2つの保持兼準備装置15,16を受容するために働く。
ニユーマチツク式の保持兼準備装置15は管17を有し、この管17は、前方に向かつて、入口開口として働く管載着体19に続いている。ニユーマチツク式の保持兼準備装置16は管18を有し、この管18は前方に向かつて管載着体20に続いている。両管載着体19,20はプレート4に挿入されてそこで固定されている。」(第3ページ右上欄第19行?左下欄第8行)

ウ.「糸端部の準備中に環状通路23,24においては過圧が発生するので、管17,18をシールすると共に保持するためにゴム弾性的なOリング41,42が設けられている。」(第3ページ右下欄第13?16行)

エ.上記ア.ないしウ.の記載を踏まえると、FIG.2からは、孔13,14の段状部及びプレート4が、Oリング41,42を介して保持兼準備装置15,16を挟着する点が看取できる。

上記の記載事項を総合すると、刊行物2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

「基体2を有し、
基体2には固定ねじ3によつてプレート4とスプライシングヘツド5とが固定され、
基体2の2つの孔13,14は、2つの保持兼準備装置15,16を受容し、
保持兼準備装置15,16は管17,18を有し、
管17,18をシールすると共に保持するためにゴム弾性的なOリング41,42が設けられ、
孔13,14の段状部及びプレート4が、Oリング41,42を介して保持兼準備装置15,16を挟着する
糸スプライシング装置1。」

3.対比
本件特許発明と引用発明1とを対比する。

後者の「自動ワインダー」は、その構造、機能、作用等からみて、前者の「自動綾巻きワインダ」に相当し、同様に、「解撚ノズルブロック(25)」及び「糸継部材(3)」は「スプライシングヘッド」に、「糸継装置」は「糸スプライシング装置」に、「圧空供給路(31)」は「圧力空気管路」に、「円筒凹部(57)」は「受容孔」に、「解撚ノズルブロック(25)」は「分配体」に、「糸継部材(3)」は「スプライシング角柱体」に、「糸継ぎ孔(2)」は「スプライシング通路」に、「本体ブロック(41)」は「スプライシング装置ハウジング(31)」に、「ねじ孔(44)」は「受容装置(30)」に、「ボルト(51)」は「固定装置(44)」にそれぞれ相当する。
後者においては、自動ワインダーに糸継装置が設けられ、糸継動作が行われるところ、糸継が自動ワインダーが行う作業のひとつであることは明らかであって、糸継装置はその作業が行われる箇所であるから、後者の「糸継動作の方法」は、自動綾巻きワインダの作業箇所を運転する方法であるといえる。
後者においては、解撚ノズルブロック(25)のメイン流体通路(28)には本体ブロック側の圧空供給路(31)に接続するための第1の細管(32)が挿入固定されるから、後者の「圧空供給路(31)に接続するための第1の細管(32)」は前者の「圧力空気管路用の接続孔」に相当し、後者の「解撚ノズルブロック(25)」は、圧力空気管路用の接続孔を備えるといえる。
後者においては、解撚ノズルブロック(25)は一対の解撚ノズルパイプ(26)(27)を特定の糸に適した位置に調整されて位置固定し、処理される糸に応じた解撚ノズルパイプ(26)(27)を解撚ノズルブロック(25)に挿入固定するから、「解撚ノズルパイプ(26)(27)」は交換可能であり、糸固有に配置構成されているといえる。
後者においては、本体ブロック(41)に対し、糸種に応じた解撚ノズルブロック、糸継部材を選択して組合わせるのだから、後者の「糸継部材(3)」は、交換可能であり、糸固有に配置構成されているといえる。
後者の「フロントプレート(39)」と前者の「カバー金属薄板」とは、ともに「カバー薄板」といえるから、両者はカバー薄板を有するとの概念で共通する。
後者においては、解撚ノズルブロック(25)には、糸継部材(3)の糸継孔(2)への圧空を供給するための第2の細管(35)が解撚ノズルブロック(25)の前面に突出して固定されるから、後者の「糸継孔(2)」は圧力空気を供給可能であって、前者の「圧力空気を供給可能なスプライシング通路」に相当する。
後者の「ボルト(51)」は、ねじ孔(44)に解撚ノズルブロック(25)側から螺入可能であるから、作業箇所の受容装置に固定するために前側から接近可能であるといえる。
後者においては、解撚ノズルブロック(25)に予めフロントプレート(39)をねじ(62)で締結し、さらに、糸継部材(3)を第2の細管(35)に嵌合したものを一体として取付け、また、第2の細管(35)にもOリング(36)が嵌着され、突出部(35a)は糸継部材(3)を結合する際の位置決め用として作用するところ、「第2の細管(35)」は解撚ノズルブロック(25)の前面に突出して固定されるから「解撚ノズルブロック(25)」の一部をなすといえ、後者は「糸継部材(3)」を「解撚ノズルブロック(25)」に嵌合し、結合したものを一体として取付けるのであって、「解撚ノズルブロック(25)」及び「糸継部材(3)」は前組立てされた構成ユニットとして形成されたといえる。また、「嵌める」の一般的な意味は「くぼみに入れて固定する。」(株式会社岩波書店「広辞苑第六版」)であって、「嵌合する」も同様の意味を有すると認められるから、糸継部材(3)を第2の細管(35)に嵌合することは、糸継部材(3)に第2の細管(35)を入れて固定することであると解される。そうすると、後者の「解撚ノズルブロック(25)に予めフロントプレート(39)をねじ(62)で締結し、さらに、糸継部材(3)を第2の細管(35)に嵌合したものを一体として取付け」、「第2の細管(35)にもOリング(36)が嵌着され、突出部(35a)は糸継部材(3)を結合する際の位置決め用として作用」するものは、前者の「スプライシング角柱体(19)が分配体(17)にカバー金属薄板(22)を介して固定されている前組立てされた構成ユニットとして形成されたスプライシングヘッド(18)」に相当する。
後者においては、本体ブロック(41)に対し、糸種に応じた解撚ノズルブロック、糸継部材を選択して組合わせ、継ぎ合わされるべき糸に適した着脱自在な解撚ノズルブロックを糸継装置の本体ブロックに取付固定するから、ロット交換時に解撚ノズルブロック(25)及び糸継部材(3)が取り外されることは明らかである。また、後者においては、糸継部材(3)、フロントプレート(39)、解撚ノズルブロック(25)を一体的に本体ブロック(41)に締結させるボルト(51)用のねじ孔(44)が形成され、解撚ノズルパイプ(26)(27)に圧空を供給するためのメイン流体通路(28)には本体ブロック側の圧空供給路(31)に接続するための第1の細管(32)が挿入固定されるから、解撚ノズルブロック(25)及び糸継部材(3)を取り外す際には、本体ブロック(41)に配置されたねじ孔(44)及び圧空供給路(31)から取り外されることになる。また、後者においては、解撚ノズルブロック(25)及び糸継部材(3)を取り付ける際に糸継部材(3)を解撚ノズルブロック(25)に嵌合し、結合しているから、取り外す際には解撚ノズルブロック(25)及び糸継部材(3)を全体として取り外すことになる。そうすると、後者は、ロット交換時に、スプライシングヘッドを、全体として、スプライシング装置ハウジングに配置された受容装置及び圧力空気管路から取り外すといえる。
後者においては解撚ノズルブロック(25)に処理される糸に応じた解撚ノズルパイプ(26)(27)を挿入固定し、本体ブロック(41)に対し、糸種に応じた解撚ノズルブロック、糸継部材を選択して組合わせるから、後者はスプライシング角柱体及び保持兼解繊管のような糸処理エレメントがそれぞれ個々に新たな糸ロットに合わせられている、新たなスプライシングヘッドと交換するといえる。また、後者の「糸種に応じた解撚ノズルブロック、糸継部材を選択して組合わせ」たものは、「解撚ノズルブロック」と「糸継部材」とを組み合わせたものであるから、解撚ノズルブロック(25)に予めフロントプレート(39)をねじ(62)で締結し、さらに、糸継部材(3)を第2の細管(35)に嵌合したものを一体として取付け、第2の細管(35)にもOリング(36)が嵌着され、突出部(35a)は糸継部材(3)を結合する際の位置決め用として作用するものであることは明らかであって、前者の「スプライシング角柱体(19)が分配体(17)にカバー金属薄板(22)を介して固定されている前組立てされた構成ユニットとして形成された新たなスプライシングヘッド(18)」に相当するといえる。

したがって、本件特許発明と引用発明1とは、

「自動綾巻きワインダの作業箇所を運転する方法であって、自動綾巻きワインダは、スプライシングヘッドを備えた糸スプライシング装置を有していて、スプライシングヘッドは、圧力空気管路用の接続孔及び交換可能な保持兼解繊管用の受容孔を備えた分配体と、交換可能なスプライシング角柱体とを有しており、カバー薄板を有し、保持兼解繊管と、圧力空気を供給可能なスプライシング通路を有するスプライシング角柱体とはそれぞれ、糸固有に配置構成されている、自動綾巻きワインダの作業箇所を運転する方法において、
ロット交換時に、作業箇所の受容装置に固定するために前側から接近可能な固定装置を備えていて、スプライシング角柱体が分配体にカバー金属薄板を介して固定されている前組立てされた構成ユニットとして形成されたスプライシングヘッドを、全体として、スプライシング装置ハウジングに配置された受容装置及び圧力空気管路から取り外して、スプライシング角柱体及び保持兼解繊管のような糸処理エレメントがそれぞれ個々に新たな糸ロットに合わせられている、スプライシング角柱体が分配体にカバー金属薄板を介して固定されている前組立てされた構成ユニットとして形成された新たなスプライシングヘッドと交換する、自動綾巻きワインダの作業箇所を運転する方法。」

の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
前者では、保持兼解繊管が「カバー金属薄板を用いて分配体に固定された」のに対して、後者ではその点につき明らかでない点。

4.判断
上記相違点について検討する。

引用発明2の「基体2」は、その構造、機能、作用等からみて、本件特許発明の「分配体」に相当し、同様に、「スプライシングヘツド5」は「スプライシング角柱体」に、「保持兼準備装置15,16」は「保持兼解繊管」に、「糸スプライシング装置1」は「糸スプライシング装置」にそれぞれ相当する。
引用発明2の「プレート4」と本件特許発明の「カバー金属薄板」とは、「カバー薄板」との概念で共通する。
引用発明2においては、基体2には固定ねじ3によつてプレート4が固定され、基体2の2つの孔13,14は、2つの保持兼準備装置15,16を受容し、保持兼準備装置15は管17を有し、保持兼準備装置16は管18を有し、管17,18をシールすると共に保持するためにゴム弾性的なOリング41,42が設けられ、孔13,14の段状部及びプレート4が、Oリング41,42を介して保持兼準備装置15,16を挟着している。そうすると、引用発明2においては、保持兼準備装置15,16はプレート4を用いて基体2に固定されているといえ、本件特許発明と引用発明2とは、保持兼解繊管がカバー薄板を用いて分配体に固定されているとの概念で共通している。

引用発明1及び2は糸スプライシング装置の点で技術分野が共通しており、引用発明1の「フロントプレート(39)」及び引用発明2の「プレート4」はともに「分配体」(引用発明1の「解撚ノズルブロック(25)」、引用発明2の「基体2」)に固定される部材であるから、引用発明1に引用発明2を適用して、保持兼解繊管がカバー薄板を用いて分配体に固定されるようになすことは、当業者が容易に想到し得るものである。
また、糸スプライシング装置の部材を金属製とすることは従来普通に行われていることであって、引用発明1において部材の強度等を考慮して「フロントプレート(39)」を金属製とすることは当業者が適宜なし得たことである。

そして、本件特許発明の発明特定事項の全体によって奏される効果も、引用発明1及び2から当業者が予測し得る範囲内のものである。

そうすると、本件特許発明は、引用発明1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本件特許発明は、引用発明1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動綾巻きワインダの作業箇所を運転する方法であって、自動綾巻きワインダは、スプライシングヘッドを備えた糸スプライシング装置を有していて、スプライシングヘッドは、圧力空気管路用の接続孔及び交換可能な保持兼解繊管用の受容孔を備えた分配体と、交換可能なスプライシング角柱体とを有しており、カバー金属薄板を用いて分配体に固定された保持兼解繊管と、圧力空気を供給可能なスプライシング通路を有するスプライシング角柱体とはそれぞれ、糸固有に配置構成されている、自動綾巻きワインダの作業箇所を運転する方法において、
ロット交換時に、作業箇所の受容装置(30)に固定するために前側から接近可能な固定装置(44)を備えていて、スプライシング角柱体(19)が分配体(17)にカバー金属薄板(22)を介して固定されている前組立てされた構成ユニットとして形成されたスプライシングヘッド(18)を、全体として、スプライシング装置ハウジング(31)に配置された受容装置(30)及び圧力空気管路(27)から取り外して、スプライシング角柱体(19)及び保持兼解繊管(26A,26B)のような糸処理エレメントがそれぞれ個々に新たな糸ロットに合わせられている、スプライシング角柱体(19)が分配体(17)にカバー金属薄板(22)を介して固定されている前組立てされた構成ユニットとして形成された新たなスプライシングヘッド(18)と交換することを特徴とする、自動綾巻きワインダの作業箇所を運転する方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-11-14 
出願番号 特願2011-180573(P2011-180573)
審決分類 P 1 652・ 121- ZAA (B65H)
最終処分 取消  
前審関与審査官 小川 恭司藤井 眞吾  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 畑井 順一
森次 顕
登録日 2016-01-22 
登録番号 特許第5871518号(P5871518)
権利者 ザウラー ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
発明の名称 自動綾巻きワインダの作業箇所を運転する方法  
代理人 久野 琢也  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 久野 琢也  
代理人 阿部 寛  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 柴山 健一  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
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