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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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異議2017700366 | 審決 | 特許 |
異議2017701054 | 審決 | 特許 |
異議2016700780 | 審決 | 特許 |
異議2017700456 | 審決 | 特許 |
異議2018700579 | 審決 | 特許 |
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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B32B 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B32B 審判 全部申し立て その他 B32B |
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管理番号 | 1340155 |
異議申立番号 | 異議2018-700078 |
総通号数 | 222 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-06-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-01-30 |
確定日 | 2018-05-01 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6172197号発明「植物由来ポリエチレンを用いた包装材用シーラントフィルム、包装材用積層フィルム、および包装袋」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6172197号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 主な手続の経緯等 特許第6172197号(請求項の数は4。以下、「本件特許」という。)は、平成23年2月14日に出願された特願2011-28784号(以下、「原出願」という。)の一部を平成27年4月3日に出願した特願2015-77249号に係るものであって、平成29年7月14日に設定登録され、特許公報が同年8月2日に発行されたものであって、平成30年1月30日に、特許異議申立人 土田裕介(以下、単に「異議申立人」という。)により、本件特許の請求項1ないし4に係る特許に対して特許異議の申立てがなされたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1ないし4に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明4」という。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 ポリエチレン系樹脂からなるフィルムであって、 植物由来エチレンと石油由来α-オレフィンとの気相重合法にて得られた直鎖状低密度の植物由来ポリエチレン系樹脂を5?90重量%と、石油由来ポリエチレン系樹脂を10?95重量%とを混合した層を中間層とし、 外層および内層を石油由来ポリエチレン系樹脂とした多層構成によるフィルムをヒートシール性フィルムとする包装材用シーラントフィルムであって、 前記直鎖状低密度の植物由来ポリエチレン系樹脂は、放射性炭素年代測定^(14)Cの測定値から算定するバイオマス度が80?100%を有するエチレン-α-オレフィン共重合体である該包装材用シーラントフィルム。 【請求項2】 前記α-オレフィンが、ブテン-1またはヘキセン-1またはこれらの混合物であって、前記直鎖状低密度の植物由来ポリエチレン系樹脂の密度が0.910?0.925g/cm^(3)、メルトフローレートが0.5?4.0g/10分の物性を有することを特徴とする請求項1に記載の包装材用シーラントフィルム。 【請求項3】 請求項1または2に記載の包装材用シーラントフィルムを、基材フィルムと積層させたことを特徴とする包装材用積層フィルム。 【請求項4】 請求項3に記載の包装材用積層フィルムを用いてなることを特徴とする包装袋。」 第3 申立理由の概要 異議申立人は、証拠方法として甲第1ないし13号証を提出し、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、以下の取消理由1ないし3により、取り消されるべきものである旨主張している。 1 証拠方法 (1) 甲第1号証: 特開平10-114037号公報(以下、「甲1」という。) (2) 甲第2号証: リニアポリエチレンカタログ「SUMIKATHENE-L^(○R)(審決注:丸囲みRを意味する。以下同じ。)スミカセン-L^(○R)」、住友化学工業株式会社、1992年3月(以下、「甲2」という。) (3) 甲第3号証: 高圧法ポリエチレンカタログ「SUMIKATHENE^(○R) スミカセン^(○R)」、住友化学工業株式会社、2001年3月(以下、「甲3」という。) (4) 甲第4号証: 特開平6-32946号公報(以下、「甲4」という。) (5) 甲第5号証: 杉山英路ら、「地球環境に優しい『サトウキビ由来のポリエチレン』」、コンバーテック、株式会社加工技術研究会、2009年8月15日、第37巻、第8号、通巻437号、第63?67頁(以下、「甲5」という。) (6) 甲第6号証: 杉山英路、「新しいバイオマスプラスチックの可能性?『サトウキビ由来ポリエチレン』の製品化から?」、Polyfile、株式会社大成社、2009年12月10日、第46巻、第12号、通巻550号、第28?30頁(以下、「甲6」という。) (7) 甲第7号証: 藤本省三ら、「L-LDPEのフィルム加工について」、東洋曹達研究報告、東洋曹達工業株式会社、1983年7月1日、第27巻、第2号、第87?98頁(以下、「甲7」という。) (8) 甲第8号証: 特開2008-265115号公報(以下、「甲8」という。) (9) 甲第9号証: 特開2009-149013号公報(以下、「甲9」という。) (10) 甲第10号証の1: 国際公開第2009/070858号(以下、「甲10の1」という。) (11) 甲第10号証の2: 特表2011-506628号公報(以下、「甲10の2」という。) (12) 甲第11号証: 柏典夫ら、「LLDPE製造法およびその触媒」、石油学会誌、社団法人石油学会、1985年9月、第28巻、第5号、第355?362頁(以下、「甲11」という。) (13) 甲第12号証: 小林愛ら、「直鎖状低密度ポリエチレン由来の包材臭成分の同定」、日本包装学会誌、日本包装学会、2008年12月1日、第17巻、第6号、第427?432頁(以下、「甲12」という。) (14) 甲第13号証: 舊橋章、「製品開発に役立つ プラスチック材料入門」、日刊工業新聞社、2005年9月30日、第26?36頁(以下、「甲13」という。) 2 取消理由1 本件発明1?4は、甲1及び甲5並びに周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、請求項1?4に係る本件特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 3 取消理由2 本件発明1と特許第5799520号の請求項2に係る発明とは実質同一であり、また、本件発明1と特許第6011585号の請求項1に係る発明とは実質同一であるから、特許法第39条第2項の規定により特許をうけることができない。 よって、請求項1に係る本件特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 4 取消理由3 本件特許の特許請求の範囲の記載には不備があり、請求項1?4に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、請求項1?4に係る特許を取り消すべきものである。 第4 当審合議体の判断 当審合議体は、以下述べるように、取消理由1ないし3にはいずれも理由はないと判断する。 1 取消理由1(進歩性)について (1) 甲1に記載された発明 甲1の特許請求の範囲の請求項1、段落【0001】、【0011】の記載から、甲1には、以下の発明が記載されているといえる。 「シーラントフィルムの内外層として、引裂きの方向性がない直鎖状低密度ポリエチレン(宇部興産 (株)製1520F)のフィルム層を、中間層として引裂きの方向性がある樹脂組成物(住友化学工業(株)製FA101-0; 100重量部と住友化学工業 (株) 製F102-0;40重量部との混合物) を有し、ラミネートフィルムの袋に用いられるシーラントフィルム。」 (以下、「引用発明」という。) (2) 甲2に記載された事項 ア 「住友化学工業株式会社製 FA101-0」がリニアポリエチレンに分類される製品(SUMIKATHENE-L^(○R))である。 イ 「住友化学工業株式会社製 FA101-0」は、メルトフローレートが0.8g/10minであり、密度が0.919g/cm^(3)である。 ウ 「住友化学工業株式会社製 FA101-0」は、「主要用途」が「フィルム(一般・重袋)・シート・ブロー」である。 (3) 甲3に記載された事項 ア 「住友化学工業株式会社製 F102-0」が高圧法ポリエチレンに分類される製品(SUMIKATHENE^(○R))である。 イ 「住友化学工業株式会社製 F102-0」は、メルトフローレートが0.4g/10minであり、密度が922kg/m^(3)である。 ウ 「住友化学工業株式会社製 F102-0」は、「主要用途」が「重包装」である。 (4) 甲4に記載された事項 ア 「【0023】実施例1?4、比較例1?4 エチレン-ブテン-1共重合体(住友化学工業社製スミカセン-L FA101-0(MFR=0.8g/10min 、密度=0.919g/cm^(3) ))90重量%および低密度ポリエチレン(住友化学工業社製スミカセン F102-0(MFR=0.35g/10min 、密度=0.922g/cm^(3) ))10重量%からなるポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、」 (5) 甲5に記載された事項 ア 「1.はじめに 私たち人類はあらゆる利便性を追求した結果、社会は豊かになった。しかし、その反面、大量消費→大量廃棄した結果、○1(審決注:丸囲み1を表す。以下同じ)資源、エネルギーの不足、○2(審決注:丸囲み2を表す。以下同じ)CO_(2)(炭酸ガス)の増加による地球温暖化等の問題が明確になってきた。」(第63頁左欄第1?7行) イ 「ポリエチレン原料を従来の石油系原料から再生可能なサトウキビ(バイオマス系)に置き換えることは、植物の育成時のCO_(2)吸収と燃焼時の排出が同一(カーボンニュートラル)になり、地球上のCO_(2)を増やさないので地球環境にやさしく、また石油資源利用の節約にも貢献する。」(第63頁左欄第25?32行) ウ 「2.サトウキビ由来ポリエチレンの製造工程 サトウキビ由来ポリエチレンの製造フローを図1に示す。サトウキビ畑より刈り取ったサトウキビを圧延ローラーで糖液を取り出し、その糖液を加熱濃縮して結晶化する粗糖分(砂糖原料)と残糖液(廃糖蜜)を遠心分離器により分離する。この廃糖蜜を適切な濃度まで水で希釈して酵母菌により発酵させエタノールを作る。次にバイオエタノールを300?400℃に加熱してアルミナ等の触媒により分子内脱水反応させると高い収率でエチレンが生成される。生成物にはエチレン以外に水分、有機酸、一酸化炭素等の不純物が含まれるので必要な純度までエチレンを精製して、次の工程のポリエチレン重合プラントへ導入する。ポリエチレン重合プラントで重合触媒によりエチレンを高分子化(重合)してポリエチレンを生産する。」(第63頁中央欄第1?21行) エ 「3.サトウキビ由来ポリエチレンの同等性 当社とBraskem社は共同でトリウンフォ工場内の研究開発センターで図2にある試験設備により同等性を評価した。 (1)エチレン 試験設備にバイオマス由来エタノールを導入し、出来上がったエチレンの成分分析を行った結果、従来の石油由来エチレンとの品質同等性を確認した。 (2)ポリエチレン 試験重合機に石油系エチレンとバイオマス系エチレンをそれぞれ投入し、同1条件でポリエチレン重合し、出来上がったポリマーの同等性を検討した。この結果を表1に示す。多少の数値上の差異はあるが、テスト重合機の条件設定に影響されていると考えられ、基本的にはいずれの用途グレードとも石油系、バイオマス系の品質は同等であることが確認できた。」(第63頁右欄第4?24行) オ 「4.サトウキビ由来ポリエチレンの生産概要と生産予定グレード サトウキビ由来ポリエチレンはBraskem社のトリウンフォ工場で、2011年から高密度ポリエチレン(HDPE)と直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を合わせて年産20万トン生産される計画である。」(第64頁左欄及び中央欄第1?4行) カ 「 」(第64頁表1、表2) キ 「6.バイオマス度の判定法(^(14)Cによる分析手法) 今回開発されたサトウキビ由来ポリエチレンは植物由来の樹脂であるが、従来から生産されてきた石油由来ポリエチレンと外観、物性が同じであり、バイオマス度(カーボンの由来比)を数値化することが重要であると考え、^(14)C(放射性炭素年代測定)による分析手法により判別を行った。図6は、Braskem社の試験プラントで試作したサトウキビ由来のHDPEを米国のベータアナリティック社においてASTMD68662) 測定法に基づいて炭素分析した結果であるが、100%バイオベースであることが確認された。」(第65頁左欄第26行?中央欄第10行) (6) 甲6に記載された事項 ア 「1.はじめに 私たち人類はあらゆる利便性を追求した結果,社会は豊かになった。しかし,その反面,資源・エネルギーの不足とCO_(2)の増加による地球温暖化等の問題が表面化してきた。そして現在,世界は脱石油社会を要望している。 豊田通商(株)は,ブラジルのBraskem社と協同で,ポリオレフィンを従来の石油由来から再生可能な植物由来にするため,2006年より技術開発に着手し2007年にパイロットプラントによる技術検証が完了した。」(第28頁左欄第1?9行) イ 「サトウキビ由来ポリエチレンの商業生産は,まだ少し先のことであり、また、価格は石油系と比べて高価であるにもかかわらず,欧米・日本・韓国などのグローバル企業や業界トップ企業の関心は非常に高く,商業生産前に取引契約を進める企業が多い。日本では既に(株)資生堂が採用を公表しており,環境省が進める「エコファースト制度」の認定においても当ポリエチレンへの切り替えをコミットしている。引合い用途においては,化粧品やシャンプー等のボトル・チューブ類,レジ袋・ゴミ袋,レジカゴ,食品包装材,衛生用品,物流資材,電線被服材,人工芝・シート類,自動車部品など多種多様である。」(第28頁左欄第19行?右欄第8行) ウ 「3.生産スキーム 2011年初旬より, Braskem社はトリウンフォエ場でHDPEとLLDPEを合せて年産20万トンの規模で生産する計画である。エタノールをエチレンに変換するプラントを新設して,重合機は,既存のスラリー法と気層法の設備をそれぞれ流用する。今回の生産スキームのメリットは、既存の重合機を流用することにより,生産初期トラブルを防ぐことができ,各グレード生産の立上げ,品質確保が早く実行できることがある。」(第28頁右欄第12?20行) エ 「 」(第28頁表1) オ 「 」(第29頁図1) カ 「5.サトウキビ由来ポリエチレンの製造工程 図1にサトウキビ由来ポリエチレンの製造フローを示す。まず,サトウキビから糖液を取り出し,その糖液を加熱濃縮して結晶化する粗糖分(砂糖原料)と残糖液(廃糖蜜)を分離する。この廃糖蜜を適切な濃度まで水で希釈して酵母菌によりエタノール発酵させて,蒸留によりエタノールを得る。尚,サトウキビから糖液を絞り出す際に大量の搾りかす(バガス)が発生する。ブラジルでは,このバガスを燃料として蒸気を発生させ,砂糖・バイオエタノールに必要な熱・電気エネルギーを全て賄うことができ,また,その余剰電力がブラジルの重要な電力源となっている。このように生産されたエタノールは,Braskem社工場に運ばれ,エチレンに加工される。エタノールを300?400℃に加熱し,特別に開発されたアルミナ触媒により分子内脱水反応をさせることでエチレンが高い収率で生成する。生成物にはエチレン以外に水分,有機酸,一酸化炭素等の不純物が含まれるので必要な純度まで精製する。最後にこの精製エチレンを重合プラントにおいて触媒重合しポリエチレンを得る。」(第29頁左欄第4行?22行) キ 「7.バイオマス度の判定法 バイオマス度は^(14)C(放射性炭素)の分析により測定することができる。原料となるバイオマスには,一定比率で^(14)Cを含むのに対し,一方で石油・ガス・石炭に含まれるカーボンは,全て^(12)Cであり,その差を測定することで,バイオマス度を測定する。」(第29頁右欄第8?13行) (7) 甲7に記載されている事項 ア 「[2]ブレンドによるフィルム物性について HP-LDPEにL-LDPEをブレンドすることにより,フィルムの物理的性質やドローダウン性を改良でき,またL-LDPEにHD-LDPEを若干ブレンドすることにより,伸張粘度や高シェア-域における溶融粘度が改善され,バブル安定性やメルトフラクチャーに良い影響を与えることが報告されている。^(1))。またブレンド比率によっては,従来のHP-LDPEの加工機を改良することなしに使用できるので,フィルム市場においては各種用途に利用され始めている。」(第94頁左欄第1?10行) イ 「 」(第97頁Fig.31、第98頁Fig.32) ウ 「(5)引裂強さ フィルムを引裂く方法および引裂スピードにより,その挙動は異なる。引裂スピードがゆっくりである直角引裂強さは引裂破断強さと同様,FW1294の比率が多くなると強度は大きくなる(Fig.31)。しかし,引裂スピードが速いエレメンドルフ引裂強さは,FW1294の比率が40?80wt%でMD方向の引裂強さが最小値を持ち,高密度ポリエチレンのバランスフィルム並の値となる(Fig.32)」(第98頁左欄第3?14行) (8) 甲8に記載されている事項 ア 「【0001】 本発明は、多層積層フィルムに関し、更に詳しくは、ポリ乳酸樹脂を主体とし、包装用シ-ラント材料としての機能を果たすと共に遮光性等を有し、密閉性に優れている共に内容物保護適性に優れ、かつ、生分解性を備え、廃棄処理適性に優れ、更に、美粧性に優れ、包装体の外観を損ねることなく、消費者の購買意欲を喚起し、主に、食品、スナック菓子類、油脂類、冷凍食品、化成品、医療品、その他等を充填包装するに有用な多層積層フィルムに関するものてある。」 イ 「【0007】 また、上記の特許文献2、3に係る多層積層樹脂フィルムについては、包装用シ-ラント材料としての機能を果たすと共に遮光性等を有し、密閉性に優れている共に内容物保護適性等に優れているものではあるが、化石原料を主原料としたポリエチレン、ポリプロピレン等の既存のプラスチック等を使用すると、CO_(2)増加につながることから、単に、分別、リサイクル等の対策・検討だけでは、環境負荷の軽減には不十分であるという問題点を有するものである。 そこで本発明は、アルミニウム箔等が担っていた遮光機能を代替えでき、かつ、分別・リサイクルに貢献でき、また、化石原料を使わずに植物由来原料を使用することにより、CO_(2)の削減に貢献でき、更に、包装用シ-ラント材料としての機能を十分に果たし、密閉性に優れている共に内容物保護適性に優れ、かつ、廃棄処理適性に優れ、主に、食品、スナック菓子類、油脂類、冷凍食品、化成品、医療品、その他等を充填包装するに有用な多層積層フィルムを提供することである。」 ウ 「【0010】 本発明に係る多層積層フィルムは、遮光性材料であると共にヒ-トシ-ル性樹脂層としても作用し、遮光性に優れ、かつ、アルミニウムレスであり、また、ラミネ-ト強度、ヒ-トシ-ル性強度等にも優れ、更に、強度等を有し、かつ、耐侯性、耐熱性、耐水性、その他等の諸堅牢性に優れ、特に、遮光性ないし光遮断性に優れ、例えば、太陽あるいは蛍光灯等による太陽光あるいは蛍光等の透過を阻止し、内容物が、分解ないし変質し、あるいは、褪色、その他等の光劣化を引き起こすということを防止し、内容物の充填包装適性、保存適性等を有し、特に、完全遮光を要する産業部材としての感光性材料の包装用材料として極めて優れた有用性を有し、かつ、包装外観を損ねることなく美粧性に優れ、更に、生分解性を備えていることから、使用後に焼却廃棄処理する際に有害物質等を発生することなく、廃棄処理適性、環境適性等に極めて優れ、また、金属探知機等による金属片(異物)探知も容易であるという利点を有するものである。・・・」 (9) 甲9に記載されている事項 ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 基材と、該基材の少なくとも片面に、バイオマス樹脂と合成樹脂を含む樹脂層を有する積層体において、前記バイオマス樹脂が微生物産生系ポリエステル及び/又は脂肪族ポリエステルであり、前記樹脂層のバイオマス樹脂と合成樹脂の配合割合が質量基準で50?90:50?10であり、保香性に優れることを特徴とする積層体。 【請求項2】 請求項1に記載の積層体であって、上記バイオマス樹脂がポリ乳酸系樹脂であり、上記合成樹脂がポリオレフィン系樹脂であり、かつ、前記積層体の樹脂層へオレンジジュースが接していても、香りと風味を損ないにくく保香性に優れることを特徴とする積層体。」 イ 「【0001】 本発明は、積層体に関し、さらに詳しくは、保香性に優れ、かつ、環境への負荷を低減し、さらには省資源、循環型社会、地球温暖化防止、農業の活性化などのために、バイオマス樹脂を用いた積層体に関するものである。」 ウ 「【背景技術】 【0003】 (主なる用途)本発明の積層体から製造されてなるパウチやスタンドパウチなどの軟包装袋の主なる用途としては、ジュース、清涼飲料及びアルコールなどの飲料、アイスクリーム、冷菓及びヨーグルトなどの液状、粘調状、固形分を含む液状食品の容器などで、環境への負荷を低減し、さらには省資源、循環型社会、地球温暖化防止、農業の活性化なども標榜したものである。しかしながら、保香性に優れ、かつ、環境への負荷を低減し、さらには省資源、循環型社会、地球温暖化防止、農業の活性化などを必要とし、ポリオレフィン系樹脂と同程度のヒートシール性も必要とする用途であれば、特に限定されるものではない。」 エ 「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 そこで、本発明は上記のような問題点を解消するために、本発明者らは鋭意研究を進め、本発明の完成に至ったものである。その目的は、保香性に優れ、環境への負荷を低減し、さらには省資源、循環型社会へ近づくバイオマス樹脂を用いても、該バイオマス樹脂を含む層の加工性がよくより高速で積層体とすることができ、またパウチやスタンディングパウチなどの製造ではヒートシール性に優れるので、従来設備で容易に製造でき、液体用のパウチやスタンディングパウチなどの軟包装にも用いることのできる積層体を提供することである。」 オ 「【0014】 (樹脂層)樹脂層としてはバイオマス樹脂と合成樹脂の混練物からなる樹脂組成物であり、質量基準でバイオマス樹脂:合成樹脂=50?90:50?10とする。合成樹脂成分としては特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、該ポリオレフィン系樹脂としてはLDPE、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体やカルボン酸をグラフト重合した酸変性ポリオレフィン、アイオノマーなどが混練性のよい点で好ましい。さらに好ましくは安価でヒートシール性のよいLDPEである。生分解性や強度に優れるポリ乳酸系樹脂と安価でヒートシール性に優れるポリオレフィン系樹脂の組み合わせである。また、樹脂層を構成するバイオマス樹脂と合成樹脂からなる樹脂組成物に加えて、着色剤、顔料、体質顔料、充填剤、滑剤、可塑剤、界面活性剤、増量剤などの添加剤を加えてもよい。 【0015】 (バイオマス樹脂)バイオマス樹脂としては、澱粉、ポリ乳酸系樹脂、微生物産生ポリエステル、脂肪族又は芳香族ポリエステルなどがあるが、微生物産生ポリエステル及び/又は脂肪族ポリエステルを用いる。バイオマス樹脂には生分解するもの、生分解しないものなどがあるが、いずれでもよく、好ましくは生分解性の樹脂であり、特に好ましくは生分解性や強度の点でポリ乳酸系樹脂である。」 (10) 甲10の1に記載されている事項(訳文のみ記載する) ア 「出願人 ・・・ ブラスケム エス.エイ.」 イ 「発明の名称 エチレン-ブチレンコポリマーの製造のための統合された方法、エチレン-ブチレンコポリマー及び再生可能な天然原料から供給されるエチレン及びコモノマーとしての1-ブチレンの使用」 ウ 「本発明は、少なくとも1つの再生可能な天然原料からのエチレン-ブチレンコポリマーの製造のための統合された方法に関する。」(第1頁第7?9行、甲10の2【0001】) エ 「本発明のエチレン-ブチレンコポリマー(11a)の製造は、反応器(18)において達成され、105℃?300℃の範囲内の温度における溶液重合法で;50℃?100℃の範囲内の温度における懸濁重合法で;又は60℃?80℃にわたる温度における気相重合法で、触媒、好ましくはチーグラー-ナッタ触媒又はメタロセン触媒の存在下において行われ得る。」(第21頁第3?9行、甲10の2【0070】) オ 「請求項15 コモノマーとして1-ブチレンを用いるエチレン及び1-ブチレンの重合が、気相で重合反応器(18)において60℃?80℃にわたる温度で、チーグラーナッタ触媒又はメタロセン触媒の存在下で行われる、請求項1から12までのいずれか一項に記載の方法。」(請求の範囲の請求項15) (11) 甲11に記載されている事項 ア 「3.LLDPE製造技術の比較 LLDPE製造技術には,以下の方法がある。 ○1気相法,○2スラリー法,○3高圧法,○4溶液法」(第355頁右欄第5?7行) イ 「 」(第359頁右欄Table7) (12) 甲12に記載されている事項 ア「 」(第428頁右欄Table1) (13) 甲13に記載されている事項 ア 「直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE) (a)製法と構造 HDPEの密度を調整する目的で、α-オレフィンを共重合させることを紹介してきた、そのα-オレフィンの量を増やして密度を0.91程度まで低下させたコポリマーがL-LDPEと呼ばれるポリエチレンになる。このL-LDPEは、高圧法LDPEと異なり、分岐の長さや量を目的の密度に合わせて任意に調節して作られたポリマーである。・・・ L-LDPEのもう一つの問題は、コモノマーとして使われたα-オレフィンの組成にある。α-オレフィンとして使われているコモノマーには、図3-3に示すようなものがあり、これらのコモノマーは、L-LDPEの構造の中では、それぞれ異なる長さの分岐をつくる。例えば、ブテン-1では-CH_(2)CH_(3)のエチル基の分岐となるが、オクテン-1では-(CH_(2))_(5)-CH_(3)のヘキシル基の分岐となる。 ・・・ L-LDPEの分岐の数は、主鎖の1000CH_(3)当たり10?30個とされているが・・・ 」(第34頁第3行?第26行及び第35頁図3-3) (14) 本件発明1と引用発明との対比 本件発明1と引用発明とを対比する。 本件発明1と引用発明とを対比すると、後者の「シーラントフィルムの内外層として、直鎖状低密度ポリエチレン(宇部興産 (株)製1520F)のフィルム層」は前者の「外層および内層を石油由来ポリエチレン系樹脂とした」ことに相当する。同様に、「中間層として樹脂組成物」「を有」することは「樹脂組成物を中間層」とすることに、「ラミネートフィルムの袋に用いられるシーラントフィルム」は「包装材用シーラントフィルム」に相当する。 そして、引用発明が「ポリエチレン系樹脂からなるフィルム」であることは明らかである。 また、ラミネートフィルムには熱溶着性(ヒートシール性)が要求されるところ、引用発明は、「内外層」及び「中間層」を有する「ラミネートフィルムの袋に用いられるシーラントフィルム」であるから、引用発明が「多層構成によるフィルムをヒートシール性フィルムとする包装材用シーラントフィルム」であることも明らかである。 そして、リニアポリエチレンカタログ「SUMIKATHENE-L^(○R) スミカセン-L^(○R)」、住友化学工業株式会社、1992年3月(甲2)、高圧法ポリエチレンカタログ「SUMIKATHENE^(○R)スミカセン^(○R)」、住友化学工業株式会社、2001年3月(甲3)、特開平6-32946号公報(甲4)によれば、引用発明の「FA101-0」はエチレン-ブテン-1共重合体、「F102-0」はポリエチレンであって、いずれも石油由来の原料から製造されていると認められるから、引用発明の「樹脂組成物(住友化学工業(株)製FA101-0; 100重量部と住友化学工業 (株) 製F102-0;40重量部との混合物) 」と本件発明1の「サトウキビ由来エチレンと石油由来α-オレフィンとの気相重合法にて得られた直鎖状低密度のサトウキビ由来ポリエチレン系樹脂を5?90重量%と、石油由来ポリエチレン系樹脂を10?95重量%とを含む樹脂組成物」は、「エチレンと石油由来α-オレフィンとの重合にて得られた直鎖状低密度のポリエチレン系樹脂を5?90重量%と、石油由来ポリエチレン系樹脂を10?95重量%とを含む樹脂組成物」の限りで相当する。 以上の点からみて、本件特許発明1と引用発明とは、 「ポリエチレン系樹脂からなるフィルムであって、 エチレンと石油由来α-オレフィンとの重合にて得られた直鎖状低密度のポリエチレン系樹脂を5?90重量%と、石油由来ポリエチレン系樹脂を10?95重量%とを含む樹脂組成物を中間層とし、外層および内層を石油由来ポリエチレン系樹脂とした多層構成によるフィルムをヒートシール性フィルムとする包装材用シーラントフィルム。」 である点で一致し、 次の点で相違する。 <相違点1> エチレンと石油由来α-オレフィンとの重合の方法に関し、本件特許発明1では、「気相重合法」であるのに対して、引用発明では、特定していない点。 <相違点2> エチレン及びそれと石油由来α-オレフィンとの重合にて得られた直鎖状低密度のポリエチレン系樹脂に関し、本件発明1では、「サトウキビ由来」のエチレンを用いた直鎖状低密度の「サトウキビ由来」のポリエチレン系樹脂を含み、「植物由来ポリエチレン系樹脂はバイオマス度が80?100%を有するエチレン-α-オレフィン共重合体」であるのに対して、引用発明では、石油由来のエチレンを用いた直鎖状低密度の石油由来のポリエチレン系樹脂であって、中間層の樹脂を構成する当該樹脂とF102-0を合わせた樹脂は引裂きの方向性のある樹脂である点。 (15) 相違点の判断 ア 上記相違点1について検討する。 エチレンと石油由来α-オレフィンとの重合の方法として、気相重合法は周知であるから(上記1(6)ウ及び(11)参照)、気相重合法を引用発明において用いることは、当業者が容易になし得たことというべきである。 イ 上記相違点2について検討する。 相違点2に係る引用発明の「直鎖状低密度の石油由来のポリエチレン」は、中間層を構成するポリエチレン系樹脂の一成分を構成するものであって、引用発明の3層構造のポリエチレン樹脂からなるシーラントフィルムを形成するポリエチレン樹脂原料の一つである。 ここで、本件特許の原出願の出願時点において、ポリエチレン系樹脂の原料として用いるエチレンについて、石油由来のものから植物由来のものに置換することは、当業者に周知の事項であるといえる。 しかし、引用発明のシーラントフィルムを構成するポリエチレン系樹脂のうちの特定の「直鎖状低密度の石油由来のポリエチレン」についてだけ、植物由来ポリエチレンとする動機はない。 さらに、当該中間層の樹脂は、引裂きの方向性のある樹脂であることが求められるものであって、甲1の段落【0009】によれば、通常の直鎖状低密度ポリエチレンに低密度ポリエチレンあるいはエチレン-酢酸ビニル共重合体を配合した樹脂を形成して得られるとされているが、甲5に記載のブラスケム社製のサトウキビ由来直鎖低密度ポリエチレンであるLL-118を利用しても、当該中間層の樹脂が引裂き方向性のある樹脂となるか不明である。 してみれば、引用発明の「直鎖状低密度の石油由来のポリエチレン」として、当該ブラスケム社のLL-118を採用することに阻害要因もあり、たとえ当業者といえども、置き換えることはできない。 よって、相違点2に係る構成が、当業者が容易に想到し得たとはいえないから、その効果について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明から容易に発明をすることができたということはできない。 (16) 本件発明2ないし4と引用発明との対比 本件発明2ないし4は、本件発明1を直接又は間接的に引用し、さらに限定した発明であり、少なくとも上記(15)で検討した相違点2の構成が、当業者が容易に想到し得たものとはいえないから、同様の理由で引用発明から容易に発明をすることができたということはできない。 (17) まとめ 上記のとおりであって、異議申立人が主張する取消理由1には、理由がない。 2 取消理由2(39条)について (1) 特許第5799520号の請求項2(以下、「原出願特許発明2」という。)との関係 職権で調査したところによれば、特許第5799520号に対して、特許異議申立てがなされ、異議2016-700344号として審理され、平成29年4月25日付けで 「特許第5799520号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 特許第5799520号の請求項1、2、4及び5に係る特許を維持する。 特許第5799520号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。」 との結論の異議決定がされ、この決定は確定している。 当該異議決定により認められた訂正により、特許第5799520号の特許請求の範囲は以下のとおりのものとなった。 「【請求項1】 ポリエチレン系樹脂からなるフィルムであって、 サトウキビ由来のエチレンと石油由来α-オレフィンとの気相重合法にて得られた直鎖状低密度のサトウキビ由来のポリエチレン系樹脂を5?90重量%と、石油由来ポリエチレン系樹脂を10?95重量%とを含む樹脂組成物を中間層とし、外層および内層を石油由来ポリエチレン系樹脂とした多層構成によるフィルムをヒートシール性フィルムとすることを特徴とする 包装材用シーラントフィルム。 【請求項2】 前記ポリエチレン系樹脂は、放射性炭素年代測定^(14)Cの測定値から算定するバイオマス度を有するエチレン-α-オレフィン共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の包装材用シーラントフィルム。 【請求項4】 請求項1ないし2のいずれか1項に記載の包装材用シーラントフィルムを、基材フィルムと積層させたことを特徴とする包装材用積層フィルム。 【請求項5】 請求項4に記載の包装材用積層フィルムを用いてなることを特徴とする包装袋。」 そこで、原出願特許発明2を請求項1を引用しない形で表記すると以下のとおりである。 「ポリエチレン系樹脂からなるフィルムであって、 サトウキビ由来のエチレンと石油由来α-オレフィンとの気相重合法にて得られた直鎖状低密度のサトウキビ由来のポリエチレン系樹脂を5?90重量%と、石油由来ポリエチレン系樹脂を10?95重量%とを含む樹脂組成物を中間層とし、外層および内層を石油由来ポリエチレン系樹脂とした多層構成によるフィルムをヒートシール性フィルムとし、前記ポリエチレン系樹脂は、放射性炭素年代測定^(14)Cの測定値から算定するバイオマス度を有するエチレン-α-オレフィン共重合体であることを特徴とする包装材用シーラントフィルム。」 本件発明1と原出願特許発明2とを対比すると、以下の点で相違している。 <相違点A> 本件発明1の中間層を構成する樹脂のポリエチレン系樹脂の1つが「植物由来」であるのに対し、原出願特許発明2では「サトウキビ由来」である点。 <相違点B> 本件発明1では、植物由来ポリエチレン系樹脂のバイオマス度が「80?100%程度」と特定されているのに対し、原出願特許発明2ではこのような特定がない点。 以下、相違点について検討する。 相違点Aについて 植物由来ポリエチレンの原料となるバイオエタノールは、サトウキビやトウモロコシの第1世代のバイオエタノール、バカスや麦わら、稲わらなどを使った第2世代のバイオエタノールが存在することから、植物由来ポリエチレンが、一義的にサトウキビ由来ポリエチレンであるということはできない。してみれば、相違点Aは実質的な相違点である。 相違点Bについて 植物由来ポリエチレンのバイオマス度は0?100まで任意に取り得るものであって、バイオマスプラスチックの認証マーク(日本バイオプラスチック協会のグリーンプラ、日本バイオプラスチック公開のバイオマスプラ、財団法人日本有機資源協会のバイオマスマーク)の習得においての基準にも関わるものであるから、相違点Bは実質的な相違点である。 以上のことから、本件発明1は、原出願特許発明2と同一ということはできない。 (2) 特許第6011585号の請求項1(以下、「分割出願特許発明1」という。)との関係 職権で調査したところによれば、特許第6011585号に対して、特許異議申立てがなされ、異議2017-700366号として審理され、平成30年3月14日付けで 「特許第6011585号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?3〕について訂正することを認める。 特許第6011585号の請求項1?3に係る特許を維持する。」 との結論の異議決定がされ、この決定は確定している。 当該異議決定により認められた訂正により、特許第6011585号の特許請求の範囲の請求項1(分割出願特許発明1)は以下のとおりのものとなった。 「【請求項1】 包装材用シーラントフィルムであって、該シーラントフィルムは、植物由来ポリエチレン系樹脂と石油由来ポリエチレン系樹脂とからなる樹脂組成物から形成された単層構成、または、中間層を前記樹脂組成物とし、外層および内層を石油由来ポリエチレン系樹脂とした多層構成からなり、該植物由来ポリエチレン系樹脂は、放射性炭素年代測定^(14)Cの測定値から算定するバイオマス度80?100%を有する、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂であって、植物由来エチレンとα-オレフィンとを、メタロセン触媒の存在下において気相重合法により共重合させて得られた樹脂であることを特徴とする包装材用シーラントフィルム。」 本件発明1と分割出願特許発明1とを対比すると、以下の点で相違している。 <相違点C> 本件発明1は、中間層が植物由来ポリエチレン系樹脂を5?90重量%と石油由来ポリエチレン系樹脂を10?95重量%とを混合したもの」であるのに対し、分割出願特許発明1では樹脂の混合割合について特定がない点。 <相違点D> 本件発明1では、植物由来ポリエチレン系樹脂が、植物由来エチレンと石油由来α-オレフィンとの気相重合にて得られているのに対し、分割出願特許発明1では、これがさらにメタロセン触媒の存在下において得られたことが特定されている点。 以下、相違点について検討する。 相違点Cについて 相違点Cは、植物由来ポリエチレンの配合量の違いにより包装材用シーラントフィルムのバイオマス度が変化することから、その認証に影響を与える重要な要素といえる。 してみれば、相違点Cは、実質的な相違点である。 相違点Dについて 気相重合によるポリエチレンの製造方法としては、チーグラー触媒を利用するものやメタロセン触媒を利用するものがともに知られており、それぞれの触媒系により製造されたポリエチレンは、その構造も異なることが知られているから、相違点Dは実質的な相違点である。 よって、本件発明1は、分割出願特許発明1と同一ということはできない。 (3) まとめ 上記のとおりであって、異議申立人が主張する取消理由2には、理由がない。 3 取消理由3(明確性)について (1) 異議申立人は、本件特許の請求項1に係る発明は、「直鎖状低密度の植物由来ポリエチレン系樹脂は、放射性炭素年代測定^(14)Cの測定値から算定するバイオマス度が80?100%を有するエチレン-α-オレフィン共重合体である」ことを特定する一方で、この「直鎖状低密度の植物由来ポリエチレン系樹脂」は、「植物由来エチレンと石油由来α-オレフィンと」から得られるとも特定しており、これらの記載には矛盾があるから、明確でない旨主張する。 しかし、これら両者の条件を満足する範囲が存在しないならばともかく、両者の条件を満足させる範囲は明らかに存在し、その範囲が本件特許の請求項1に係る発明といえるから、本件特許の請求項1に記載は明確である。 (2) 異議申立人は、本件特許の請求項1に係る発明は「包装材用シーラントフィルム」に関する発明(「物」の発明)であるが、「植物由来エチレンと石油由来α-オレフィンとの気相重合法によって得られた」との製造方法によって特定されているから、明確でない旨主張する。 しかし、「気相重合法で得られ」との記載により、「包装材用シーラントフィルム」が不明確となるとまではいえない。 (3) まとめ 上記のとおりであって、異議申立人が主張する取消理由3には、理由がない。 第5 むすび したがって、異議申立人の主張する申立理由及び証拠方法によっては、請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2018-04-19 |
出願番号 | 特願2015-77249(P2015-77249) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
Y
(B32B)
P 1 651・ 5- Y (B32B) P 1 651・ 121- Y (B32B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 市村 脩平、長谷川 大輔、斎藤 克也 |
特許庁審判長 |
岡崎 美穂 |
特許庁審判官 |
大島 祥吾 渕野 留香 |
登録日 | 2017-07-14 |
登録番号 | 特許第6172197号(P6172197) |
権利者 | 大日本印刷株式会社 |
発明の名称 | 植物由来ポリエチレンを用いた包装材用シーラントフィルム、包装材用積層フィルム、および包装袋 |
代理人 | 結田 純次 |
代理人 | 吉住 和之 |
代理人 | 竹林 則幸 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 黒木 義樹 |