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審決分類 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する F16C
審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する F16C
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する F16C
審判 訂正 特許請求の範囲の実質的変更 訂正する F16C
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する F16C
管理番号 1340421
審判番号 訂正2018-390041  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2018-03-02 
確定日 2018-05-01 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第4069382号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4069382号の明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
本件訂正審判に係る特許第4069382号(以下、「本件特許」という。)は、平成15年3月14日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成20年1月25日に特許権の設定登録がなされ、平成30年3月2日に本件訂正審判の請求がなされたものである。

第2 審判請求の趣旨及び訂正の内容
本件訂正審判の請求の趣旨は、「特許第4069382号の明細書を、本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを認める、との審決を求める。」ものであり、その訂正の内容は、次のとおりである。(なお、下線は請求人が付したものである。)

1 訂正事項1
明細書段落【0016】の「接触部12bのある側に設けられてもよく、」との記載を削除する。

2 訂正事項2
明細書段落【0021】の「本発明に係る第3実施形態」との記載を「第3参考形態」に訂正し、同段落及び明細書段落【0022】の「本実施形態」との記載を「本参考形態」に訂正する。

3 訂正事項3
明細書段落【0024】の「本発明に係る第4実施形態」との記載を「第4参考形態」に訂正し、同段落の「本実施形態」との記載を「本参考形態」に訂正する。

4 訂正事項4
明細書段落【0026】の「本発明に係る第5実施形態」との記載を「第5参考形態」に訂正し、同段落の「本実施形態」との記載を「本参考形態」に訂正する。

5 訂正事項5
明細書段落【0028】の「本発明に係る第6実施形態」との記載を「第6参考形態」に訂正し、同段落及び明細書段落【0029】の「本実施形態」との記載を「本参考形態」に訂正する。

6 訂正事項6
明細書段落【0032】の「本発明に係る第7実施形態」との記載を「第7参考形態」に訂正し、同段落の「本実施形態」との記載を「本参考形態」に訂正する。

7 訂正事項7
明細書段落【0034】の「本発明に係る第8実施形態」との記載を「第8参考形態」に訂正し、同段落の「本実施形態」との記載を「本参考形態」に訂正する。

8 訂正事項8
明細書段落【0036】の「本発明に係る第9実施形態」との記載を「第9参考形態」に訂正し、同段落の「本実施形態」との記載を「本参考形態」に訂正する。

9 訂正事項9
明細書段落【0038】の「本発明第10実施形態」との記載を「第10参考形態」に訂正し、同段落の「本実施形態」との記載を「本参考形態」に訂正する。

10 訂正事項10
明細書段落【0040】の「本発明第11実施形態」との記載を「第11参考形態」に訂正し、同段落の「本実施形態」との記載を「本参考形態」に訂正する。

11 訂正事項11
明細書段落【0042】の「本発明に係る第12実施形態」との記載を「第12参考形態」に訂正し、明細書段落【0044】の「本実施形態」との記載を「本参考形態」に訂正する。

12 訂正事項12
明細書段落【0047】の「本発明の第13実施形態」との記載を「第13参考形態」に訂正し、明細書段落【0049】の「本実施形態」との記載を「本参考形態」に訂正する。

13 訂正事項13
明細書段落【0052】の「本発明の第14実施形態」との記載を「第14参考形態」に訂正し、明細書段落【0055】の「本実施形態」との記載を「本参考形態」に訂正する。

14 訂正事項14
明細書段落【0058】の「本発明の第15実施形態」との記載を「第15参考形態」に訂正し、明細書段落【0061】の「本実施形態」との記載を「本参考形態」に訂正する。

15 訂正事項15
明細書段落【0065】の「第1?15実施形態」との記載を「第1実施形態、第2実施形態及び第3?15参考形態」に訂正し、同段落の「第10実施形態」との記載を「第10参考形態」に訂正し、明細書段落【0074】の「第10実施形態」との記載を「第10参考形態」に訂正し、同段落の「実施形態2?9または11?15」との記載を「実施形態2、参考形態3?9または11?15」に訂正する。

16 訂正事項16
明細書段落【0071】の「図9」との記載を「図10」に訂正する。

17 訂正事項17
明細書段落【0078】の「本発明の第16実施形態」との記載を「第16参考形態」に訂正し、明細書段落【0084】の「本発明の第17実施形態」との記載を「第17参考形態」に訂正し、明細書段落【0075】、【0080】、【0086】、【0089】、【0093】、【0097】、【0099】、【0103】及び【0105】の「実施形態」との記載を「参考形態」に訂正する。


18 訂正事項18
明細書の【0106】の「実施例1」との記載を「参考例1」に訂正する。

19 訂正事項19
明細書の【0116】の【図面の簡単な説明】の【図3】ないし【図24】の下記の記載
「【図3】本発明に係る第3実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明に係る第4実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明に係る第5実施形態を示す断面図である。
【図6】本発明に係る第6実施形態を示す断面図である。
【図7】本発明に係る第7実施形態を示す断面図である。
【図8】本発明に係る第8実施形態を示す断面図である。
【図9】本発明に係る第9実施形態を示す断面図である。
【図10】本発明に係る第10実施形態を示す断面図である。
【図11】本発明に係る第11実施形態を示す断面図である。
【図12】本発明に係る第12実施形態を示す断面図である。
【図13】本発明に係る第13実施形態を示す断面図である。
【図14】本発明に係る第14実施形態を示す断面図である。
【図15】本発明に係る第15実施形態を示す断面図である。
【図16】本発明に係る第1?15実施形態に記載の転がり軸受を用いて構成されるスピンドル装置を示す断面図である。
【図17】本発明に係る第16?17実施形態に記載の転がり軸受を用いて構成されるスピンドル装置を示す断面図である。
【図18】図17に示すスピンドル装置の拡大断面図であり、本発明の第16実施形態を示す図である。
【図19】図17に示すスピンドル装置の拡大断面図であり、本発明の第17実施形態を示す図である。
【図20】本発明に係る第16実施形態の第1変形例を示す断面図である。
【図21】本発明に係る第16実施形態の第2変形例を示す断面図である。
【図22】本発明に係る第16実施形態の第3変形例を示す断面図である。
【図23】本発明に係る第16実施形態の第4変形例を示す断面図である。
【図24】本発明に係る第16実施形態の第5変形例を示す断面図である。」を
「【図3】本発明に係る第3参考形態を示す断面図である。
【図4】第4参考形態を示す断面図である。
【図5】第5参考形態を示す断面図である。
【図6】第6参考形態を示す断面図である。
【図7】第7参考形態を示す断面図である。
【図8】第8参考形態を示す断面図である。
【図9】第9参考形態を示す断面図である。
【図10】第10参考形態を示す断面図である。
【図11】第11参考形態を示す断面図である。
【図12】第12参考形態を示す断面図である。
【図13】第13参考形態を示す断面図である。
【図14】第14参考形態を示す断面図である。
【図15】第15参考形態を示す断面図である。
【図16】本発明に係る第1実施形態、第2実施形態及び第3?15参考形態に記載の転がり軸受を用いて構成されるスピンドル装置を示す断面図である。
【図17】第16?17参考形態に記載の転がり軸受を用いて構成されるスピンドル装置を示す断面図である。
【図18】図17に示すスピンドル装置の拡大断面図であり、本発明の第16参考形態を示す図である。
【図19】図17に示すスピンドル装置の拡大断面図であり、本発明の第17参考形態を示す図である。
【図20】第16参考形態の第1変形例を示す断面図である。
【図21】第16参考形態の第2変形例を示す断面図である。
【図22】第16参考形態の第3変形例を示す断面図である。
【図23】第16参考形態の第4変形例を示す断面図である。
【図24】第16参考形態の第5変形例を示す断面図である。」に訂正する。

第3 当審の判断
1 訂正事項1
(1)訂正の目的の適否について
本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本発明」という。)は、
「外周面に内輪軌道を有する内輪と、内周面に外輪軌道及びカウンタボアを有する外輪と、前記内輪軌道と前記外輪軌道との間に転動自在に設けられたゼロでない接触角を有する複数の玉と、を備え、グリース潤滑されている工作機械用転がり軸受であって、
前記外輪の前記玉との接触部から軸方向にずれた位置で、且つ前記外輪の前記接触部のある側と反対側で前記玉とオーバーラップする位置に、前記カウンタボアの前記外輪軌道に隣接する箇所に開口した、前記転がり軸受内に追加グリースを補給するための補給孔が径方向に向かって設けられ、
前記追加グリースは前記転がり軸受の回転中に前記補給孔から前記玉に補給され、
前記追加グリースの一回の補給量が0.004cc?0.1ccに設定されて、dmNが100万以上となる環境で使用されることを特徴とする工作機械用転がり軸受。」である。
そして、訂正前明細書の段落【0016】の、第1実施形態に関する「なお、補給孔15は、接触部12bのある側に設けられてもよく、接触部12b以外の部分に設ければよい。」との記載のうち、「接触部12bのある側に設けられてもよく、」との記載は、本発明と整合しない。
訂正事項1は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との関係で不合理が生じているために不明瞭となっている記載を訂正し、その本来の意を明らかにするため、訂正前明細書の段落【0016】の「接触部12bのある側に設けられてもよく、」との記載を削除するのものである。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的としたものに該当する。

(2)新規事項の有無について
訂正事項1は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを整合させることを目的として、本発明と整合しない記載を削除するものであるから、新規事項を何ら追加するものではなく、特許法第126条第5項に規定する要件に適合するものである。

(3)特許請求の範囲の拡張又は変更の有無について
訂正事項1は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために行うものにすぎないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、特許法第126条第6項に規定する要件に適合するものである。

2 訂正事項2?15、17及び19について
(1)訂正の目的の適否について
訂正前明細書に記載された第3?17実施形態は、カウンタボアを有しない外輪の点(第3実施形態)、玉とオーバーラップしない位置の開口の点(第4実施形態、)、外輪の接触部のある側に開口を配置した点(第5実施形態)、外輪に開口を有しない点(第16、17実施形態)及び、玉ではなく円筒ころを用いた点(第6?15、17実施形態)において、本発明と異なる。そうすると、訂正前明細書は、本発明に係る実施形態ではないにもかかわらず、第3?17「実施形態」と記載されている点で不明瞭である。
訂正事項2?15、17及び19は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、訂正前明細書の第3?17「実施形態」を第3?17「参考形態」に訂正するものである。
したがって、訂正事項2?15、17及び19に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的としたものに該当する。

(2)新規事項の有無について
訂正事項2?15、17及び19は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを整合させることを目的として、本発明の技術範囲に含まれない態様を参考形態に訂正するものであるから、新規事項を何ら追加するものではなく、特許法第126条第5項に規定する要件に適合するものである。

(3)特許請求の範囲の拡張又は変更の有無について
訂正事項2?15、17及び19は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために行うものにすぎないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、特許法第126条第6項に規定する要件に適合するものである。

3 訂正事項16について
(1)訂正の目的の適否について
訂正前明細書の段落【0071】には、図面【図16】に関する「開口194,195,196は、図1および図9に示す補給路15,15,105に連通しており」との記載がある。
ところが、図面【図9】には、連通路15又は連通路105が記載されていないし、図面【図9】に記載された連通路95の配置は、図面【図16】に記載された円筒ころ軸受100のための開口196の配置と整合しない。 一方で、図面【図10】には、連通路105が記載されており、図面【図10】に記載された連通路105の配置は、図面【図16】に記載された円筒ころ軸受100のための開口196の配置と整合する。
そうすると、訂正前明細書の段落【0071】の「図9」との記載は明白な誤記であり、本来の正しい記載は「図10」であるといえる。
訂正事項16は、明細書段落【0071】の明白な誤記である「図9」との誤記を、本来の正しい「図10」との記載に訂正するものである。
したがって、訂正事項16に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第2号に掲げる、誤記又は誤訳の訂正を目的としたものに該当する。

(2)新規事項の有無について
訂正事項16は、訂正前明細書段落【0071】並びに図面【図10】及び【図16】に基づき、明白な誤記を本来の正しい記載に訂正するものにすぎないから、新規事項を何ら追加するものではなく、特許法第126条第5項に規定する要件に適合するものである。

(3)特許請求の範囲の拡張又は変更の有無について
訂正事項16は、訂正前明細書段落【0071】並びに図面【図10】及び【図16】に基づき、明白な誤記を本来の正しい記載に訂正するものにすぎないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、特許法第126条第6項に規定する要件に適合するものである。

(4)独立特許要件について
訂正事項16は、明細書の段落【0071】明白な誤記を本来の正しい記載に訂正するものであって、当該訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができなくなる理由は見出せないから、特許法第126条第7項に規定する要件に適合するものである。

4 訂正事項18について
(1)訂正の目的の適否について
訂正前明細書の段落【0106】?【0108】に記載された単列円筒ころ軸受の耐久試験は、本発明に係る玉を用いた転がり軸受の耐久試験ではないにもかかわらず、段落【0106】に「実施例1」と記載されている点で不明瞭である。
訂正事項18は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、明細書の段落【0106】の「実施例1」との記載を「参考例1」に訂正するものである。
したがって、訂正事項18に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的としたものに該当する。

(2)新規事項の有無について
訂正事項18は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを整合させることを目的として、本発明の技術範囲に含まれない態様を参考例に訂正するものであるから、新規事項を何ら追加するものではなく、特許法第126条第5項に規定する要件に適合するものである。

(3)特許請求の範囲の拡張又は変更の有無について
訂正事項18は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために行うものにすぎないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、特許法第126条第6項に規定する要件に適合するものである。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正審判の請求に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第2号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第5項ないし第7項の規定を満たすものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
工作機械用転がり軸受
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高速回転する工作機械の主軸及び高速モータ等に用いられる工作機械用転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
工作機械主軸用の軸受には、工作精度向上のため、振動、音響等の特性が良好であることが求められる。また、工作機械主軸用の軸受には、取り扱いやすく環境面やコスト面で有利な、グリース潤滑を採用し、かつ、高速回転性、高寿命を達成することが求められている。
【0003】
工作機械主軸に用いられるグリース潤滑の転がり軸受は、発熱しないように、初期に封入したグリースのみで潤滑されるのが普通である。グリースを封入した初期段階で、グリースの慣らし運転を行わずに高速回転させると、グリースの噛み込みや攪拌抵抗により異常発熱を起こすため、数時間をかけて慣らし運転を行ってグリースを最適な状態にしている。
【0004】
近年、工作機械主軸の高速化が益々進み、主軸を支持する軸受はdmN(=(軸受内径+軸受外径)÷2×回転速度(rpm))100万以上という環境で使用されることが珍しくなくなっている。オイルエアやオイルミスト等の油潤滑のものと比較すると、グリース潤滑の転がり軸受は高速回転における寿命が短い傾向がある。グリース潤滑の場合、軸受の転がり疲れ寿命よりも前に、グリース劣化により軸受が焼付いてしまう。回転数が著しく高い場合、短時間でグリースが劣化または油膜形成不足により、早期に焼付が発生する。
【0005】
出願人は、この問題を解決するために特願2002-200172において、グリース潤滑されている転がり軸受であって、外輪に補給孔が設けられ、該補給孔を介して、一回の補給量が軸受空間容積の0.1?4%となるようにグリースが補給される転がり軸受を提案している。この転がり軸受によれば、回転している軸受の異常昇温が抑制され、焼付の発生を防ぐことが可能である。したがって、特願2002-200172に記載の転がり軸受によれば、異常昇温を回避し、慣らし運転を実施しなくてもよい。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特願2002-200172に記載の転がり軸受では、一回の補給量が軸受空間容積の0.1?4%となるようにグリースが補給を行うことにより異常昇温は発生しないように構成することが可能であるが、グリースの一回の補給量が多い場合には、温度の脈動が生じてしまう可能性がある。
【0007】
この温度の脈動について評価するために評価試験を行ったところ、内径65mmのアンギュラ玉軸受において、一回の補給時に軸受空間容積の1%以上(軸受空間容積の1%は、0.15ccに相当)のグリースを補給すると、補給した瞬間に1℃?2℃程度の温度の脈動が生じることがわかった。
【0008】
この温度の脈動は、精度を要求されない通常の使用時には問題とはならないが、金型用途向けの工作機械等、精度が厳しく要求される装置の主軸に用いられる転がり軸受においては、この温度の脈動により軸の長さが変化してしまい、加工精度に影響を及ぼしてしまう恐れがある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、グリース供給時に温度の脈動が生じない工作機械用転がり軸受を提供することにある。
【0010】
本発明の目的は、下記構成により達成される。
(1) 外周面に内輪軌道を有する内輪と、内周面に外輪軌道及びカウンタボアを有する外輪と、前記内輪軌道と前記外輪軌道との間に転動自在に設けられたゼロでない接触角を有する複数の玉と、を備え、グリース潤滑されている工作機械用転がり軸受であって、 前記外輪の前記玉との接触部から軸方向にずれた位置で、且つ前記外輪の前記接触部のある側と反対側で前記玉とオーバーラップする位置に、前記カウンタボアの前記外輪軌道に隣接する箇所に開口した、前記転がり軸受内に追加グリースを補給するための補給孔が径方向に向かって設けられ、前記追加グリースは前記転がり軸受の回転中に前記補給孔から前記玉に補給され、前記追加グリースの一回の補給量が0.004cc?0.1ccに設定されて、dmNが100万以上となる環境で使用されることを特徴とする工作機械用転がり軸受。
【0011】
上記構成の工作機械用転がり軸受によれば、グリースが早期に劣化または油膜形成不足により軸受が破損する前に、新たなグリースを外輪側(径方向)又は外輪間座側(軸方向)から補給することにより、軸受寿命の延長が可能となる。外輪側から供給された場合、グリースは、補給孔を通って、外輪内径面から軸受空間に補給される。一方、外輪間座側から供給された場合、グリースは、補給孔を通って、直接軸受空間内に軸方向に供給される。外輪間座側からの供給時には、外径よりも内径側にグリースを供給するように構成するほうが好ましい。補給されたグリースは、転動体や保持器に付着し、転動体や保持器の回転に伴って軸受内部全体に馴染む。
【0012】
通常、工作機械の主軸に組み込まれるアンギュラ玉軸受の場合、グリースの初期封入量は、軸受空間容積の10?20%を目安とされている。一方、工作機械の主軸に組み込まれる円筒ころ軸受の場合、グリースの初期封入量は、軸受空間容積の8?15%を目安とされている。これは、グリースの初期慣らし運転の時間短縮と、温度上昇の抑制という要求からきているものである。特に円筒ころ軸受の場合、グリースの初期慣らし運転時に、回転しているころがグリースを噛みこんで異常昇温することがよくある。最悪の場合、焼付を起こしてしまうこともある。
【0013】
しかし、上記構成のように、一回のグリース補給量を0.004cc?0.1ccとすることで、異常昇温を回避し、慣らし運転の必要性がない。さらに、上記構成の転がり軸受においては、一回のグリース補給量を0.004cc?0.1ccとすることで、温度の脈動も抑制することができ、転がり軸受が適用される工作機械主軸装置の加工精度を高いレベルに保つことが可能である。
【0014】
たとえば、アンギュラ玉軸受のように、接触角を有し、転動体が玉である場合、外輪の内径面の、軌道溝の接触部のある側からずれた箇所に補給孔を開口させ、補給孔を介して一回のグリース補給量を0.004cc?0.1ccとすることで、運転中の損傷、温度の脈動を防止できる。
補給孔の直径が、0.1?5mmの範囲内であれば、定量のグリース補給をより円滑に行うことができる。すなわち、グリースが補給孔につまることがなく、グリースが過度に補給されることもない。なお、補給孔は円形断面のものに限定されない。例えば、直径0.1?5mmの円形断面積と同等の断面積を有する矩形断面や多角形断面の補給孔であってもよい。
上記転がり軸受は、dmNが100万以上となる環境でも長寿命を達成できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
図1に示す本発明に係る第1実施形態のアンギュラ玉軸受10は、外周面に内輪軌道11aを有する内輪11、内周面に外輪軌道12aを有する外輪12、内外輪11,12間に形成された内輪軌道11a及び外輪軌道12aに沿って複数配置された玉13及び玉13を円周方向等間隔に保持する保持器14を備えている。本実施形態のアンギュラ玉軸受10は、工作機械の主軸支持用に用いられる外輪カウンタボア軸受である。
【0016】
本実施形態においては、外輪12のカウンタボア側(図1では右側)に、外輪12を径方向に貫通する補給要素としての補給孔15が設けられている。補給孔15は、直径0.1?5mmの円形断面を有している。補給孔15は、外輪12の内径面の、外輪軌道12aに隣接する箇所に開口している。
補給孔15は、外輪12の周方向に間隔をあけた複数箇所に設けられてもよい。なお、補給孔15は、接触部12b以外の部分に設ければよい。
【0017】
アンギュラ玉軸受10の軸受空間には、軸受空間容積の10?20%の量のグリースが初期封入される。ここで、軸受空間容積とは、外輪内径と内輪外径との間にできる空間から、転動体の体積及び保持器の体積を差し引いた容積を意味する。そして、軸受使用時には、次のようなグリース補給方法が適用される。すなわち、適宜なタイミングで(間欠的、定期的に)、補給孔15を介して、一回の補給量が0.004cc?0.1ccとなるようにグリースショットさせる。グリースショットのバラツキを考慮すると、一回の補給量の上限は、0.12ccである。また、一回のグリース補給量は、温度の脈動の発生防止を考慮すると、0.01cc?0.03ccであることが好ましい。以上に示す範囲内のグリースショットを行うことで、グリースの劣化または油膜形成不足による異常昇温の発生および軸受の破損を防止するとともに、グリース補給時の温度の脈動を抑制し、アンギュラ玉軸受10が取り付けられる工作機械の軸精度の劣化を防ぐことができる。
【0018】
図2に示す本発明に係る第2実施形態のアンギュラ玉軸受20は、内輪21、外輪22、内外輪21の内輪軌道21aと外輪22の外輪軌道22aとの間に複数配置された玉23及び玉23を円周方向等間隔に保持する保持器24を備えている。
【0019】
本実施形態においては、外輪22のカウンタボア側(図2では右側)に、外輪22を径方向に貫通する補給要素としての補給孔25が設けられている。補給孔25の外輪内径面側には、グリースだまり25aが形成されている。グリースだまり25aの断面積は、補給孔25の他の部分の断面積より大きい。補給孔25は、グリースだまり25aを有しているため、段付き円柱状空間となっている。グリースだまり25aは、外輪22の内径面であって、外輪軌道22aに隣接する箇所に位置している。以下に説明する他の実施形態においても、補給孔がグリースだまりを有してもよい。
【0020】
アンギュラ玉軸受20の軸受空間には、軸受空間容積の10?20%の量のグリースが初期封入される。そして、軸受使用時には、次のようなグリース補給方法が適用される。すなわち、適宜なタイミングで(間欠的、定期的に)、補給孔25を介して、一回の補給量が0.004cc?0.1ccとなるようにグリースショットさせる。グリースショットのバラツキを考慮すると、一回の補給量の上限は、0.12ccである。また、一回のグリース補給量は、温度の脈動の発生防止を考慮すると、0.01cc?0.03ccであることが好ましい。以上に示す範囲内のグリースショットを行うことで、グリースの劣化または油膜形成不足による異常昇温の発生および軸受の破損を防止するとともに、グリース補給時の温度の脈動を抑制し、アンギュラ玉軸受20が取り付けられる工作機械の軸精度の劣化を防ぐことができる。
【0021】
図3に示す第3参考形態のアンギュラ玉軸受30は、内輪31、外輪32、内輪31の内輪軌道31aと外輪32の外輪軌道32aとの間に複数配置された玉33及び玉33を円周方向等間隔に保持する保持器34を備えている。本参考形態のアンギュラ玉軸受30は、内輪カウンタボア軸受である。
【0022】
本参考形態においては、外輪32の外輪軌道32aであって接触部32bのある側(図3では右側)の反対側に、外輪32を径方向に貫通する補給要素としての補給孔35が開口している。尚、補給孔35は、接触部32bのある側であってもよく、接触部32b以外の部分に設ければよい。
【0023】
アンギュラ玉軸受30の軸受空間には、軸受空間容積の10?20%の量のグリースが初期封入される。そして、軸受使用時には、次のようなグリース補給方法が適用される。すなわち、適宜なタイミングで(間欠的、定期的に)、補給孔35を介して、一回の補給量が0.004cc?0.1ccとなるようにグリースショットさせる。グリースショットのバラツキを考慮すると、一回の補給量の上限は、0.12ccである。また、一回のグリース補給量は、温度の脈動の発生防止を考慮すると、0.01cc?0.03ccであることが好ましい。以上に示す範囲内のグリースショットを行うことで、グリースの劣化または油膜形成不足による異常昇温の発生および軸受の破損を防止するとともに、グリース補給時の温度の脈動を抑制し、アンギュラ玉軸受30が取り付けられる工作機械の軸精度の劣化を防ぐことができる。
【0024】
図4に示す第4参考形態のアンギュラ玉軸受40は、内輪41、外輪42、内輪41の内輪軌道41aと外輪42の外輪軌道42aとの間に複数配置された玉43及び外輪案内の保持器44を備えている。本参考形態のアンギュラ玉軸受40は、外輪カウンタボア軸受である。
本参考形態においては、外輪42のカウンタボア側(図4では右側)に、外輪42を径方向に貫通する補給要素としての補給孔45が設けられている。補給孔45は、保持器44の片側(図4では右側)の案内面44aに向けて開口している。
【0025】
アンギュラ玉軸受40の軸受空間には、軸受空間容積の10?20%の量のグリースが初期封入される。そして、軸受使用時には、次のようなグリース補給方法が適用される。すなわち、適宜なタイミングで(間欠的、定期的に)、補給孔45を介して、一回の補給量が0.004cc?0.1ccとなるようにグリースショットさせる。グリースショットのバラツキを考慮すると、一回の補給量の上限は、0.12ccである。また、一回のグリース補給量は、温度の脈動の発生防止を考慮すると、0.01cc?0.03ccであることが好ましい。以上に示す範囲内のグリースショットを行うことで、グリースの劣化または油膜形成不足による異常昇温の発生および軸受の破損を防止するとともに、グリース補給時の温度の脈動を抑制し、アンギュラ玉軸受40が取り付けられる工作機械の軸精度の劣化を防ぐことができる。
【0026】
図5に示す第5参考形態のアンギュラ玉軸受50は、内輪51、外輪52、内輪51の内輪軌道51aと外輪52の外輪軌道52aとの間に複数配置された玉53及び外輪案内の保持器54を備えている。本参考形態のアンギュラ玉軸受50は、外輪カウンタボア軸受である。
本参考形態においては、外輪52の反カウンタボア側(図では左側)に、外輪52を径方向に貫通する補給要素としての補給孔55が設けられている。補給孔55は、保持器54の片側(図では左側)の案内面54aに向けて開口している。
【0027】
アンギュラ玉軸受50の軸受空間には、軸受空間容積の10?20%の量のグリースが初期封入される。そして、軸受使用時には、次のようなグリース補給方法が適用される。すなわち、適宜なタイミングで(間欠的、定期的に)、補給孔55を介して、一回の補給量が0.004cc?0.1ccとなるようにグリースショットさせる。グリースショットのバラツキを考慮すると、一回の補給量の上限は、0.12ccである。また、一回のグリース補給量は、温度の脈動の発生防止を考慮すると、温度の脈動の発生防止を考慮すると、0.01cc?0.03ccであることが好ましい。以上に示す範囲内のグリースショットを行うことで、グリースの劣化または油膜形成不足による異常昇温の発生および軸受の破損を防止するとともに、グリース補給時の温度の脈動を抑制し、アンギュラ玉軸受50が取り付けられる工作機械の軸精度の劣化を防ぐことができる。
【0028】
図6に示す第6参考形態の複列円筒ころ軸受60は、内輪61、外輪62、内輪61の内輪軌道61aと外輪62の外輪軌道62aとの間に2列に複数配置された円筒ころ63及び各列の円筒ころ63を円周方向等間隔に保持する保持器64を備えている。本参考形態の複列円筒ころ軸受60は、工作機械の主軸支持用転がり軸受である。
【0029】
本参考形態においては、外輪62の軸方向中央部に、外輪62を径方向に貫通する補給要素としての補給孔65が設けられている。補給孔65は、直径0.1?5mmの円形断面を有している。補給孔65は、それぞれの保持器64の、2列の円筒ころ63の間に位置する部分に向けて開口している。
本参考形態においては、外輪外径面の軸方向中央部に、補給孔65に連通する溝65bを設けて、補給孔65にグリースGをショットし易くしているが、溝65bはなくてもよい。
【0030】
円筒ころ軸受60の軸受空間には、軸受空間容積の8?15%の量のグリースが初期封入される。そして、軸受使用時には、次のようなグリース補給方法が適用される。すなわち、適宜なタイミングで(間欠的、定期的に)、補給孔65を介して、一回の補給量が一列につき0.004cc?0.1ccとなるようにグリースGをショットさせる。グリースショットのバラツキを考慮すると、一回の補給量の上限は、0.12ccである。また、円筒ころ軸受は、アンギュラ玉軸受よりも温度の脈動が顕著に起こりやすいため、一回の補給量はアンギュラ玉軸受への補給量よりも少なくする必要がある。したがって、円筒ころ軸受の場合には、一列につき一回のグリース補給量が0.005cc?0.02ccであることが特に好ましい。
【0031】
保持器64に向けてショットされたグリースGは、軸受回転に伴って、内外輪の軌道面の円周上に均一に塗布される。こうして、ショットされたグリースGによる新しい油膜が形成される。必要最低限のグリース以外は、転動面外側にかき出されて土手のような形状になる。その状態のグリースから微量な基油が漏れて、転動面や保持器案内面が潤滑される。以上に示す範囲内のグリースショットを行うことで、グリース補給時の温度の脈動を抑制し、複列円筒ころ軸受60が取り付けられる工作機械の軸精度の劣化を防ぐことができる。
【0032】
図7に示す第7参考形態の複列円筒ころ軸受70は、内輪71、外輪72、内輪71の内輪軌道71aと外輪72の外輪軌道72aとの間に2列に複数配置された円筒ころ73及び各列の円筒ころ73を円周方向等間隔に保持する保持器74を備えている。
本参考形態においては、外輪72に、外輪72を径方向に貫通する補給要素としての補給孔75が、軸方向に見て複数(ここでは2本)設けられている。補給孔75は、各列の円筒ころ73の転動面に向けて開口している。外輪外径面には、2列の溝75bが設けられている。
【0033】
円筒ころ軸受70の軸受空間には、軸受空間容積の8?15%の量のグリースが初期封入される。そして、軸受使用時には、次のようなグリース補給方法が適用される。すなわち、適宜なタイミングで(間欠的、定期的に)、補給孔75を介して、一列につき一回の補給量が0.004cc?0.1ccとなるようにグリースGをショットさせる。グリースショットのバラツキを考慮すると、一回の補給量の上限は、0.12ccである。円筒ころ軸受は、アンギュラ玉軸受よりも温度の脈動が顕著に起こりやすいため、一回の補給量はアンギュラ玉軸受への補給量よりも少なくする必要がある。したがって、円筒ころ軸受の場合には、一列につき一回のグリース補給量が0.005cc?0.02ccであることが特に好ましい。以上に示す範囲内のグリースショットを行うことで、グリースの劣化または油膜形成不足による異常昇温の発生および軸受の破損を防止するとともに、グリース補給時の温度の脈動を抑制し、複列円筒ころ軸受70が取り付けられる工作機械の軸精度の劣化を防ぐことができる。
【0034】
図8に示す第8参考形態の単列円筒ころ軸受80は、内輪81、外輪82、内輪81の内輪軌道81aと外輪82の外輪軌道82aとの間に複数配置された円筒ころ83及び外輪案内の保持器84を備えている。
本参考形態においては、外輪82に、外輪82を径方向に貫通する補給要素としての補給孔85が、軸方向に見て2本設けられている。各補給孔85は、円筒ころ83の軸方向両側に位置する、保持器84の案内面に向けて開口している。外輪外径面には、2列の溝85bが設けられている。
図示しないが、片側の保持器案内面に向けて開口する、軸方向に見て1本の補給孔を設けた構成とすることもできる。
【0035】
円筒ころ軸受80の軸受空間には、軸受空間容積の8?15%の量のグリースが初期封入される。そして、軸受使用時には、次のようなグリース補給方法が適用される。すなわち、適宜なタイミングで(間欠的、定期的に)、補給孔85を介して、一回の補給量が0.004cc?0.1ccとなるようにグリースGをショットさせる。グリースショットのバラツキを考慮すると、一回の補給量の上限は、0.12ccである。円筒ころ軸受は、アンギュラ玉軸受よりも温度の脈動が顕著に起こりやすいため、一回の補給量はアンギュラ玉軸受への補給量よりも少なくする必要がある。したがって、円筒ころ軸受の場合には、一回のグリース補給量が0.005cc?0.02ccであることが特に好ましい。以上に示す範囲内のグリースショットを行うことで、グリースの劣化または油膜形成不足による異常昇温の発生および軸受の破損を防止するとともに、グリース補給時の温度の脈動を抑制し、単列円筒ころ軸受80が取り付けられる工作機械の軸精度の劣化を防ぐことができる。
【0036】
図9に示す第9参考態の単列円筒ころ軸受90は、内輪91、外輪92、内輪91の内輪軌道91aと外輪92の外輪軌道92aとの間に複数配置された円筒ころ93及び外輪案内の保持器94を備えている。
本参考形態においては、外輪92の軸方向中央部に、外輪92を径方向に貫通する補給要素としての補給孔95が設けられている。補給孔95は、円筒ころ93の転動面に向けて開口している。外輪外径面の軸方向中央部には、溝95bが設けられている。
【0037】
円筒ころ軸受90の軸受空間には、軸受空間容積の8?15%の量のグリースが初期封入される。そして、軸受使用時には、次のようなグリース補給方法が適用される。すなわち、適宜なタイミングで(間欠的、定期的に)、補給孔95を介して、一回の補給量が0.004cc?0.1ccとなるようにグリースGをショットさせる。グリースショットのバラツキを考慮すると、一回の補給量の上限は、0.12ccである。円筒ころ軸受は、アンギュラ玉軸受よりも温度の脈動が顕著に起こりやすいため、一回の補給量はアンギュラ玉軸受への補給量よりも少なくする必要がある。したがって、円筒ころ軸受の場合には、一回のグリース補給量が0.005cc?0.02ccであることが特に好ましい。以上に示す範囲内のグリースショットを行うことで、グリースの劣化または油膜形成不足による異常昇温の発生および軸受の破損を防止するとともに、グリース補給時の温度の脈動を抑制し、単列円筒ころ軸受90が取り付けられる工作機械の軸精度の劣化を防ぐことができる。
【0038】
図10に示す第10参考形態の単列円筒ころ軸受100は、内輪101、外輪102、内輪101の内輪軌道101aと外輪102の外輪軌道102aとの間に複数配置された円筒ころ103及び外輪案内の保持器104を備えている。
本参考形態においては、外輪102に、外輪102を径方向に貫通する補給要素としての補給孔105が、軸方向に見て2本設けられている。各補給孔105は、円筒ころ103の軸方向両端面と保持器104の案内面との間に向けて開口している。外輪外径面には、2列の溝105bが設けられている。
図示しないが、径方向に見て1本の補給孔を設けた構成とすることもできる。
【0039】
円筒ころ軸受100の軸受空間には、軸受空間容積の8?15%の量のグリースが初期封入される。そして、軸受使用時には、次のようなグリース補給方法が適用される。すなわち、適宜なタイミングで(間欠的、定期的に)、補給孔105を介して、一回の補給量が0.004cc?0.1ccとなるようにグリースGをショットさせる。グリースショットのバラツキを考慮すると、一回の補給量の上限は、0.12ccである。円筒ころ軸受は、アンギュラ玉軸受よりも温度の脈動が顕著に起こりやすいため、一回の補給量はアンギュラ玉軸受への補給量よりも少なくする必要がある。したがって、円筒ころ軸受の場合には、一回のグリース補給量が0.005cc?0.02ccであることが特に好ましい。以上に示す範囲内のグリースショットを行うことで、グリースの劣化または油膜形成不足による異常昇温の発生および軸受の破損を防止するとともに、グリース補給時の温度の脈動を抑制し、単列円筒ころ軸受100の軸精度の劣化を防ぐことができる。
【0040】
図11に示す第11参考形態の単列円筒ころ軸受110は、内輪111、外輪112、内輪111の内輪軌道111aと外輪112の外輪軌道112aとの間に複数配置された円筒ころ113及び外輪案内の保持器114を備えている。
本参考形態においては、外輪112の軸方向中央部に、外輪112を径方向に貫通する補給要素としての補給孔115が設けられている。補給孔115は、グリースをショットするノズル400の、先端テーパ形状に対応するテーパ形状になっており、外径面側から内径面側に向かうにつれて直径が減少している。すなわち、補給孔115は、円錐台状空間になっている。補給孔115は、円筒ころ113の転動面に向けて開口している。
【0041】
円筒ころ軸受110の軸受空間には、軸受空間容積の8?15%の量のグリースが初期封入される。そして、軸受使用時には、次のようなグリース補給方法が適用される。すなわち、適宜なタイミングで(間欠的、定期的に)、補給孔115を介して、一回の補給量が0.004cc?0.1ccとなるようにグリースGをショットさせる。グリースショットのバラツキを考慮すると、一回の補給量の上限は、0.12ccである。円筒ころ軸受は、アンギュラ玉軸受よりも温度の脈動が顕著に起こりやすいため、一回の補給量はアンギュラ玉軸受への補給量よりも少なくする必要がある。したがって、円筒ころ軸受の場合には、一回のグリース補給量が0.005cc?0.02ccであることが特に好ましい。以上に示す範囲内のグリースショットを行うことで、グリースの劣化または油膜形成不足による異常昇温の発生および軸受の破損を防止するとともに、グリース補給時の温度の脈動を抑制し、単列円筒ころ軸受110が取り付けられる工作機械の軸精度の劣化を防ぐことができる。
【0042】
図12に示す第12参考形態の単列円筒ころ軸受120は、内輪121、二つの鍔122bを有する外輪122、内輪121の内輪軌道121aと外輪122の外輪軌道122aとの間に配置された円筒ころ123及び外輪案内の保持器124を備えている。
【0043】
円筒ころ123は、外輪122の内周面である鍔122b間に形成された外輪軌道122aおよび内輪121の外周面に形成された内輪軌道121aに沿って転動可能に配置されている。外輪軌道122aの両端部には、円筒ころ123のエッジ部123aと対向する位置に、凹部である逃げ部122cが設けられ、エッジ部123aとの干渉を避ける構造となっている。
【0044】
本参考形態においては、外輪122を径方向に貫通し、外輪122の逃げ部122cの一方に連通する補給要素としての一つの補給孔125が形成されている。追加グリースは、外部から補給孔125を介して径方向に転がり軸受120の内部の逃げ部122cに補給される。
【0045】
円筒ころ軸受120の軸受空間には、軸受空間容積の8?15%の量のグリースが初期封入される。そして、軸受使用時には、次のようなグリース補給方法が適用される。すなわち、適宜なタイミングで(間欠的、定期的に)、補給孔125を介して、一回の補給量が0.004cc?0.1ccとなるようにグリースGをショットする。補給されたグリースは、補給されたグリースは、円筒ころ123の転動に伴い、軸受内部全体に馴染み、不足したグリースを補う。
【0046】
グリースショットのバラツキを考慮すると、一回の補給量の上限は、0.12ccである。円筒ころ軸受は、アンギュラ玉軸受よりも温度の脈動が顕著に起こりやすいため、一回の補給量はアンギュラ玉軸受への補給量よりも少なくする必要がある。したがって、円筒ころ軸受の場合には、一回のグリース補給量が0.005cc?0.02ccであることが特に好ましい。以上に示す範囲内のグリースショットを行うことで、グリースの劣化または油膜形成不足による異常昇温の発生および軸受の破損を防止するとともに、グリース補給時の温度の脈動を抑制し、単列円筒ころ軸受120が取り付けられる工作機械の軸精度の劣化を防ぐことができる。
【0047】
図13に示す第13参考形態の単列円筒ころ軸受130は、内輪131、二つの鍔132bを有する外輪132、内輪131の内輪軌道131aと外輪132の外輪軌道132aとの間に配置された二つの円筒ころ133及び外輪案内の保持器134を備えている。
【0048】
円筒ころ133は、外輪132の内周面である鍔132b間に形成された外輪軌道132aおよび内輪131の外周面に形成された内輪軌道131aに沿って転動可能に配置されている。外輪軌道132aの両端部には、円筒ころ133のエッジ部133aと対向する位置に、凹部である逃げ部132cが設けられ、エッジ部133aとの干渉を避ける構造となっている。
【0049】
本参考形態においては、外輪132を径方向に貫通し、外輪132の逃げ部132cのそれぞれに連通する補給要素としての二つの補給孔135が形成されている。追加グリースは、外部から補給孔135を介して径方向に転がり軸受130の内部の逃げ部132cに補給される。
【0050】
円筒ころ軸受130の軸受空間には、軸受空間容積の8?15%の量のグリースが初期封入される。そして、軸受使用時には、次のようなグリース補給方法が適用される。すなわち、適宜なタイミングで(間欠的、定期的に)、補給孔135を介して、一回の補給量が0.004cc?0.1ccとなるようにグリースGをショットする。補給されたグリースは、補給されたグリースは、円筒ころ133の転動に伴い、軸受内部全体に馴染み、不足したグリースを補う。
【0051】
グリースショットのバラツキを考慮すると、一回の補給量の上限は、0.12ccである。円筒ころ軸受は、アンギュラ玉軸受よりも温度の脈動が顕著に起こりやすいため、一回の補給量はアンギュラ玉軸受への補給量よりも少なくする必要がある。したがって、円筒ころ軸受の場合には、一回のグリース補給量が0.005cc?0.02ccであることが特に好ましい。以上に示す範囲内のグリースショットを行うことで、グリースの劣化または油膜形成不足による異常昇温の発生および軸受の破損を防止するとともに、グリース補給時の温度の脈動を抑制し、単列円筒ころ軸受130が取り付けられる工作機械の軸精度の劣化を防ぐことができる。
【0052】
図14に示す第14参考形態の複列円筒ころ軸受140は、内輪141、外輪142、内輪141の内輪軌道141aと外輪142の外輪軌道142aとの間に配置された円筒ころ143及び外輪案内の保持器144を備えている。
【0053】
外輪142は、軸方向両端に形成された二つの鍔142bと内径面中央に形成された鍔142dとを有している。鍔142bと鍔142dとの間には、それぞれ二つの外輪軌道142aが形成されている。
【0054】
二つの円筒ころ143は、二つの外輪軌道142aおよび内輪141の外周面に形成された内輪軌道141aに沿ってそれぞれ転動可能に配置されている。外輪軌道142aの両端部のそれぞれには、円筒ころ143のエッジ部143aと対向する位置に、凹部である逃げ部142cが設けられ、エッジ部143aとの干渉を避ける構造となっている。
【0055】
本参考形態においては、外輪142を径方向に貫通し、それぞれの外輪軌道142aの両端部に設けられた逃げ部142cの一方に連通する補給要素としての二つの補給孔145が設けられている。追加グリースは、外部から補給孔145を介して径方向に転がり軸受140の内部の逃げ部142cに補給される。
【0056】
円筒ころ軸受140の軸受空間には、軸受空間容積の8?15%の量のグリースが初期封入される。そして、軸受使用時には、次のようなグリース補給方法が適用される。すなわち、適宜なタイミングで(間欠的、定期的に)、補給孔145を介して、一列につき一回の補給量が0.004cc?0.1ccとなるようにグリースGをショットする。補給されたグリースは、補給されたグリースは、円筒ころ143の転動に伴い、軸受内部全体に馴染み、不足したグリースを補う。
【0057】
グリースショットのバラツキを考慮すると、一回の補給量の上限は、0.12ccである。円筒ころ軸受は、アンギュラ玉軸受よりも温度の脈動が顕著に起こりやすいため、一回の補給量はアンギュラ玉軸受への補給量よりも少なくする必要がある。したがって、円筒ころ軸受の場合には、一列につき一回のグリース補給量が0.005cc?0.02ccであることが特に好ましい。以上に示す範囲内のグリースショットを行うことで、グリースの劣化または油膜形成不足による異常昇温の発生および軸受の破損を防止するとともに、グリース補給時の温度の脈動を抑制し、複列円筒ころ軸受140が取り付けられる工作機械の軸精度の劣化を防ぐことができる。
【0058】
図15に示す第15参考形態の複列円筒ころ軸受150は、内輪151、外輪152、内輪151の内輪軌道151aと外輪152の外輪軌道152aとの間に配置された円筒ころ153及び外輪案内の保持器154を備えている。
【0059】
外輪152は、軸方向両端に形成された二つの鍔152bと内径面中央に形成された鍔152dとを有している。鍔152bと鍔152dとの間には、それぞれ二つの外輪軌道152aが形成されている。
【0060】
二つの円筒ころ153は、二つの外輪軌道152aおよび内輪151の外周面に形成された内輪軌道151aに沿ってそれぞれ転動可能に配置されている。外輪軌道152a両端部のそれぞれには、円筒ころ153のエッジ部153aと対向する位置に、凹部である逃げ部152cが設けられ、エッジ部153aとの干渉を避ける構造となっている。
【0061】
本参考形態においては、外輪152を径方向に貫通し、それぞれの外輪軌道152aの両端部に設けられた逃げ部152cのそれぞれに連通する補給要素としての四つの補給孔155が設けられている。追加グリースは、外部から補給孔155を介して径方向に転がり軸受150の内部の逃げ部152cに補給される。
【0062】
円筒ころ軸受150の軸受空間には、軸受空間容積の8?15%の量のグリースが初期封入される。そして、軸受使用時には、次のようなグリース補給方法が適用される。すなわち、適宜なタイミングで(間欠的、定期的に)、補給孔155を介して、一列につき一回の補給量が0.004cc?0.1ccとなるようにグリースGをショットする。補給されたグリースは、補給されたグリースは、円筒ころ153の転動に伴い、軸受内部全体に馴染み、不足したグリースを補う。
【0063】
グリースショットのバラツキを考慮すると、一回の補給量の上限は、0.12ccである。円筒ころ軸受は、アンギュラ玉軸受よりも温度の脈動が顕著に起こりやすいため、一回の補給量はアンギュラ玉軸受への補給量よりも少なくする必要がある。したがって、円筒ころ軸受の場合には、一列につき一回のグリース補給量が0.005cc?0.02ccであることが特に好ましい。以上に示す範囲内のグリースショットを行うことで、グリースの劣化または油膜形成不足による異常昇温の発生および軸受の破損を防止するとともに、グリース補給時の温度の脈動を抑制し、複列円筒ころ軸受150が取り付けられる工作機械の軸精度の劣化を防ぐことができる。
【0064】
なお、図1?図15に示した転がり軸受において、外輪外径面に溝を設けたものと無いものとがあるが、全ての転がり軸受について溝を設けることも設けないことも可能である。
また、外輪外径面もしくはハウジング内径面にOリングを設けて、グリース漏れを防ぐことも可能である。
【0065】
図16は、本発明に係る第1実施形態、第2実施形態及び第3?15参考形態に記載の転がり軸受を用いて構成される工作機械用主軸装置としてのスピンドル装置160を示す図である。このスピンドル装置160は、主軸ハウジング161内に第1実施形態の外輪溝付きタイプのアンギュラ玉軸受10及び第10参考形態の補給孔片側1本の円筒ころ軸受100を用いて主軸171を支持している。なお、図16の主軸装置は、例示のために異種の軸受を用いているが、同種の軸受のみから構成するようにしてもよい。
【0066】
主軸ハウジング161は、ハウジング本体162と、ハウジング本体162の前端(図中左側)に内嵌固定された前側軸受ハウジング163と、ハウジング本体162の後側(図中右側)に内嵌固定された後側ハウジング164とを備えている。前側軸受ハウジング163の端部には、外輪押さえ部材165及び内輪押さえ部材166が設けられており、外輪押さえ部材165と内輪押さえ部材166との間には、ラビリンスが形成されている。主軸ハウジング161の後端面は、カバー170によって覆われている。
【0067】
主軸171は、前側軸受ハウジング163に外嵌する2つの転がり軸受10,10(図1に示すものと同等)と、後側軸受ハウジング164に外嵌する1つの円筒ころ軸受100(図10に示すものと同等の補給孔1本のタイプ)に内嵌することにより、主軸ハウジング161によって回転自在に支承されている。2つの転がり軸受10,10の外輪12,12間には、外輪間座180が配置されており、また内輪11,11間には、内輪間座176が配置されている。
【0068】
主軸171の軸方向の略中央部には、ロータ186が外嵌固定されている。ロータ186の外周面側には、ステータ187が所定距離離れて同軸配置されている。ステータ187は、ステータ187の外周面側に配置されたステータ固定部材188を介してハウジング本体162に固定されている。ハウジング本体162とステータ固定部材188との間には、主軸171の周方向に沿う方向に複数の溝178が形成されている。この複数の溝178内には、ステータ187の冷却用の冷媒が流される。
【0069】
同様に、ハウジング本体162と前側軸受ハウジング163との間であって、アンギュラ玉軸受10の外周側にあたる部位には、ハウジングおよび軸受冷却用の冷媒が流される複数の溝177が形成されている。
【0070】
この主軸ハウジング161の後端面には、軸受10,10,100のそれぞれにグリース供給を行うためのグリースが供給される3個のグリース供給口192が周方向に沿って開口している(図16には一つのみ図示)。これらの3つのグリース供給口192は、ハウジング本体162、前側軸受ハウジング163及び後側軸受ハウジング164内に形成されたグリース供給路193a,193b,193cにそれぞれ連通している(図16では、便宜上、各グリース供給路193a,193b,193cを同一断面に図示している)。これにより、本実施形態のスピンドル装置160は、外部に設けられたグリース供給器190からグリース供給管191を介して主軸ハウジング161内にグリース供給可能に構成されている。
【0071】
グリース供給路193aは、単列円筒ころ軸受100の外輪側に対応して形成された開口196に連通しており、グリース供給路193bは、前側(図左側)に配置されたアンギュラ玉軸受10の外輪側に対応して形成された開口194に連通しており、またグリース供給路193cは、後側(図中央)に配置されたアンギュラ玉軸受10の外輪側に対応して形成された開口195に連通している。これにより、グリース供給器190から供給されたグリースは、各軸受10,10,100の外輪側まで独立に供給される。開口194,195,196は、図1および図10に示す補給孔15,15,105に連通しており、グリースは補給孔15,15,105を介して軸受空間内部に独立に供給される。
【0072】
グリース補給器190は、各軸受10,10,100に対して独立にグリース供給可能に構成されている。すなわち、グリース補給器190は、適宜なタイミングで(間欠的または定期的に)、一回の補給量が0.004cc?0.1ccとなるように各軸受10,10,100毎にグリースショットする。補給されたグリースは、軸受10内部の玉13及び軸受100内部のころ103の転動に伴い、軸受10及び100内部全体に馴染み、不足したグリースを補う。ここで、アンギュラ玉軸受の場合には、一回のグリース補給量が0.01cc?0.03ccであることが好ましく、また円筒ころ軸受の場合には、一回のグリース補給量が0.005cc?0.02ccであることが好ましい。以上に示す範囲内のグリースショットを行うことで、グリースの劣化または油膜形成不足による異常昇温の発生および軸受の破損を防止するとともに、グリース補給時の温度の脈動を抑制し、各軸受10,10,100が取り付けられるスピンドル装置の軸精度の劣化を防ぐことができる。
【0073】
なお、本実施形態においては、各軸受10,10,100の軸受空間内部に連通したグリース排出路197が前側ハウジング163および後側ハウジング164に形成されている。グリースは、このグリース排出路197を介して、グリース排出路197の外周側開口198から装置外に排出される。
【0074】
本実施形態のスピンドル装置では、第1実施形態の軸受10および第10参考形態の軸受100を例として挙げたが、勿論その他の実施形態2、参考形態3?9または11?15の軸受、又はそれらの任意の組合せを代わりに用いてもよい。
また、その他の軸受の外輪に同様の補給孔を設けても同様の効果が期待されることは言うまでもない。
【0075】
図17は、以下に説明する第16,17参考形態に係る転がり軸受200及び210を用いて構成される工作機械用主軸装置としてのスピンドル装置を示す図である。なお、図17のスピンドル装置は、例示のために異種の軸受を用いているが、同種の軸受のみから構成するようにしてもよい。
【0076】
軸受200及び210は、主軸1に外嵌し、ハウジング7に内嵌している。主軸1は、軸受200及び210を介して、ハウジング7に対し回転可能である。軸受200及び210の各内輪及び外輪間には、それぞれ主軸1及びハウジング7に沿って配置された内輪間座500a,500b,500c,500d,500e及び外輪間座600a,600b,600c,600d,600eが図視左から順に配置されている。
【0077】
内輪間座500a及び500e並びに外輪間座600a及び600eの軸方向両端には、それぞれ内輪押さえ部材8a,8b及び外輪押さえ部材9a,9bが配置され、各間座を介して各軸受に予圧を与えている。内輪押さえ部材8a及び外輪押さえ部材9a並びに内輪押さえ部材8b及び外輪押さえ部材9bの間には、図示せぬ間隙が形成されており、両押さえ部材間にラビリンスを形成している。
【0078】
図18は、図17に示すスピンドル装置の拡大断面図である。ここでは、第16参考形態に係るアンギュラ玉軸受200並びにその周辺構造について説明する。
【0079】
図18に示す各アンギュラ玉軸受200は、内輪201、外輪202、内輪201の内輪軌道201aと外輪202の外輪軌道202aとの間に複数配置された玉203、及び、玉203を円周方向等間隔に保持する保持器204を備えている。外輪202は、玉203を接触角を持って保持するためのテーパ部202bを軸方向片側に有している。以下、テーパ部が形成された軸方向一方を正面側、他方を背面側と呼ぶこととする。
【0080】
本参考形態においては、各アンギュラ玉軸受200間には、グリース補給用外輪間座600bが配置されている。グリース補給用外輪間座600bには、ハウジング7を貫通した二つのグリース補給用ノズル4が、グリース補給用外輪間座600bに差し込み固定されている。グリース補給用ノズル4には、外部のグリース供給器2から補給パイプ3を介して追加グリースが供給される。
【0081】
グリース補給用外輪間座600bは、ノズル4の先端から追加グリースをアンギュラ玉軸受200内部に補給する補給要素としての補給孔205を有している。補給孔205は、直径0.1?5mmの円形断面を有しており、軸受200の内側(保持器204よりも内径側)に向けて軸方向に開口している。補給孔205は、内輪201及び外輪202間に背面側から軸方向に追加グリースを供給する。供給されるグリースは、主に保持器204よりも内径側に供給される。
【0082】
なお、補給孔205は、径方向に間隔をあけてグリース補給用外輪間座600bの複数箇所に設けられてもよい。また、供給されるグリースは、主に保持器204よりも内径側に供給されるほうが好ましいが、外径側に供給してもよい。
【0083】
各アンギュラ玉軸受200の軸受空間には、軸受空間容積の10?20%の量のグリースが初期封入される。そして、軸受使用開始後、グリース供給器2は、適宜なタイミングで(間欠的、定期的に)、補給孔205を介して、一回の補給量が0.004cc?0.1ccとなるようにグリースショットする。補給されたグリースは、アンギュラ玉軸受200内部の玉203の転動に伴い、アンギュラ玉軸受200内部全体に馴染み、不足したグリースを補う。ここで、一回のグリース補給量が0.01cc?0.03ccであることが好ましい。以上に示す範囲内のグリースショットを行うことで、グリースの劣化または油膜形成不足による異常昇温の発生および軸受の破損を防止するとともに、グリース補給時の温度の脈動を抑制し、アンギュラ玉軸受200が取り付けられるスピンドル装置の軸精度の劣化を防ぐことができる。
【0084】
図19は、図17に示すスピンドル装置の拡大断面図であり、ここでは、第17参考形態に係る単列円筒ころ軸受210について説明する。
【0085】
単列円筒ころ軸受210は、内輪211、外輪212、内輪211の内輪軌道211aと外輪212の外輪軌道212aとの間に配置された円筒ころ213、及び、ころ213を円周方向等間隔に保持する保持器214を備えている。
【0086】
本参考形態においては、円筒ころ軸受210の軸方向隣には、グリース補給用外輪間座600dが配置されている。グリース補給用外輪間座600dには、ハウジング7を貫通したグリース補給用ノズル4がグリース補給用外輪間座600dに差し込み固定されている。グリース補給用ノズル4には、外部のグリース供給器2から補給パイプ3を介して追加グリースが供給される。
【0087】
グリース補給用外輪間座600dは、ノズル4の先端から追加グリースを軸受210内部に補給する補給要素としての補給孔215を有している。補給孔215は、直径0.1?5mmの円形断面を有しており、軸受210の内側(保持器214よりも内径側)に向けて軸方向に開口している。補給孔215は、内輪211及び外輪212間に背面側から軸方向に追加グリースを供給する。供給されるグリースは、主に保持器214よりも内径側に供給される。
なお、補給孔215は、径方向に間隔をあけてグリース補給用外輪間座600dの複数箇所に設けられてもよい。また、供給されるグリースは、主に保持器214よりも内径側に供給されるほうが好ましいが、外径側に供給してもよい。
【0088】
各円筒ころ軸受210の軸受空間には、軸受空間容積の10?20%の量のグリースが初期封入される。そして、軸受使用開始後、グリース供給器2は、適宜なタイミングで(間欠的、定期的に)、補給孔215を介して、一回の補給量が0.004cc?0.1ccとなるようにグリースショットする。補給されたグリースは、円筒ころ軸受210内部のころ213の転動に伴い、円筒ころ軸受210内部全体に馴染み、不足したグリースを補う。ここで、一回のグリース補給量が0.005cc?0.02ccであることが好ましい。以上に示す範囲内のグリースショットを行うことで、グリースの劣化または油膜形成不足による異常昇温の発生および軸受の破損を防止するとともに、グリース補給時の温度の脈動を抑制し、円筒ころ軸受210が取り付けられるスピンドル装置の軸精度の劣化を防ぐことができる。
【0089】
図20は、第16参考形態の第1の変形例に係るスピンドル装置の拡大断面図を示す。
本変形例に用いられているアンギュラ玉軸受220は、軸に外嵌する内輪221、ハウジング1000に内嵌する外輪222、内輪221の内輪軌道221aと外輪222の外輪軌道222aとの間に転動自在に配置された玉223、並びに玉223を保持する保持器224から構成される。
【0090】
ハウジング1000は、径方向内側に突出した凸部1000aを有する。軸受220の外輪222は、軸方向背面側で凸部1000aに接している。内輪221の軸方向背面側には、凸部1000aと軸方向に対向する内輪間座510aが配置されている。
【0091】
一方、外輪222の軸方向正面側には、グリース補給用外輪間座610が設けられている。グリース補給用外輪間座610は、内輪間座510bと径方向に対向している。ハウジング1000におけるグリース補給用外輪間座610の外径面に対応する位置には、グリース補給用ノズル400をグリース補給用外輪間座610に差し込むための開口1000bが形成されている。グリース補給用ノズル400の基部400aは、ねじ等の固定部材400bによりハウジング1000の外径面上に固定されており、基部400aから延出した先端部400cがグリース補給用外輪間座610内部に差し込まれている。
【0092】
グリース補給用外輪間座610は、グリース補給用ノズル400の先端部400cから追加グリースを軸受220内部に補給する補給要素としての補給孔225を有している。補給孔225は、直径0.1?5mmの円形断面を有している。補給孔225は、内輪221及び外輪222間に正面側から軸方向に追加グリースを供給する。追加グリースの量は、一回の補給量が0.004cc?0.1ccであり、一回の補給量が0.01cc?0.03ccであることが好ましい。以上に示す範囲内のグリースショットを行うことで、グリースの劣化または油膜形成不足による異常昇温の発生および軸受の破損を防止するとともに、グリース補給時の温度の脈動を抑制し、アンギュラ玉軸受220が取り付けられるスピンドル装置の軸精度の劣化を防ぐことができる。
なお、補給孔225は、径方向に間隔をあけてグリース補給用外輪間座610の複数箇所に設けられてもよい。
【0093】
図21は、第16参考形態の第2の変形例に係るスピンドル装置の拡大断面図を示す。
本変形例に用いられているアンギュラ玉軸受230は、軸に外嵌する内輪231、ハウジング1100に内嵌する外輪232、内輪231の内輪軌道231aと外輪232の外輪軌道232aとの間に転動自在に配置された玉233、並びに玉233を保持する保持器234から構成される。
【0094】
ハウジング1100は、径方向内側に突出した凸部1100aを有する。軸受230の外輪232は、軸方向正面側で凸部1100aに接している。内輪231の正面側には、凸部1100aに径方向に対向する内輪間座520bが配置されている。一方、外輪232の軸方向背面側には、内輪間座520a及び外輪間座620がそれぞれに対向して配置されている。
【0095】
凸部1100aの反対側となるハウジング1000の外径面には、グリース補給用ノズル400を凸部1100a内に差し込むための開口1100bが形成されている。グリース補給用ノズル400の基部400aは、ねじ等の固定部材400bによりハウジング1100の外径面上に固定されており、基部400aから延出した先端部400cが凸部1100a内部に差し込まれている。
【0096】
凸部1100aは、グリース補給用ノズル400の先端部400cから追加グリースを軸受230内部に補給する補給要素としての補給孔235を有している。補給孔235は、直径0.1?5mmの円形断面を有している。補給孔235は、内輪231及び外輪232間に正面側から軸方向に追加グリースを供給する。追加グリースの量は、一回の補給量が0.004cc?0.1ccであり、一回の補給量が0.01cc?0.03ccであることが好ましい。以上に示す範囲内のグリースショットを行うことで、グリースの劣化または油膜形成不足による異常昇温の発生および軸受の破損を防止するとともに、グリース補給時の温度の脈動を抑制し、アンギュラ玉軸受230が取り付けられるスピンドル装置の軸精度の劣化を防ぐことができる。なお、補給孔235は、径方向に間隔をあけて凸部1100aの複数箇所に設けられてもよい。
【0097】
また、図22に本参考形態の第3の変形例に係るスピンドル装置の拡大断面図を示す。
本変形例は、第2変形例のアンギュラ玉軸受230の正面側と背面側を入れ替えたものであり、ハウジング1100の凸部1100aがアンギュラ玉軸受230の軸方向背面側に設けられている。その他の構成は、図21に示したものと同様である。
【0098】
本変形例において、追加グリースは、凸部1100aに形成された補給孔235から、内輪231及び外輪232間に背面側から軸方向に供給される。追加グリースの量は、一回の補給量が0.004cc?0.1ccであり、一回のグリース補給量が0.01cc?0.03ccであることが好ましい。以上に示す範囲内のグリースショットを行うことで、これにより、グリースの劣化または油膜形成不足による異常昇温の発生および軸受の破損を防止するとともに、グリース補給時の温度の脈動を抑制し、アンギュラ玉軸受230が取り付けられるスピンドル装置の軸精度の劣化を防ぐことができる。
【0099】
図23は、第16参考形態の第4の変形例に係るスピンドル装置の拡大断面図を示す。
本変形例に用いられているアンギュラ玉軸受240は、軸に外嵌する内輪241、ハウジング1200に内嵌する外輪242、内輪241の内輪軌道241aと外輪242の外輪軌道242aとの間に転動自在に配置された玉243、並びに玉243を保持する保持器244から構成される。外輪1200の正面側端部には、テーパ部から径方向内側に突出した凸部242bが形成されている。
【0100】
軸受240の外輪242は、軸方向正面側で、即ち、凸部242bが、外輪間座630bと接しており、軸方向背面側で、外輪間座630aと接している。内輪241の背面側及び正面側には、それぞれ外輪間座630a及び630bと径方向に対向する内輪間座530a及び530bが配置されている。
【0101】
ハウジング1200は、外輪242の凸部242bの反対側となる外径面に、グリース補給用ノズル400を凸部242b内に差し込むための開口1200bを有している。グリース補給用ノズル400の基部400aは、ねじ等の固定部材400bによりハウジング1200の外径面上に固定されており、基部400aから延出した先端部400cが、開口1200bを介して外輪242の凸部242b内部に差し込まれている。
【0102】
凸部242bは、グリース補給用ノズル400の先端部400cから追加グリースを軸受240内部に補給する補給要素としての補給孔245を有している。補給孔245は、直径0.1?5mmの円形断面を有している。補給孔245は、内輪241及び外輪242間に正面側から軸方向に追加グリースを供給する。追加グリースの量は、一回の補給量が0.004cc?0.1ccであり、一回のグリース補給量が0.01cc?0.03ccであることが好ましい。以上に示す範囲内のグリースショットを行うことで、これにより、グリースの劣化または油膜形成不足による異常昇温の発生および軸受の破損を防止するとともに、グリース補給時の温度の脈動を抑制し、アンギュラ玉軸受240が取り付けられるスピンドル装置の軸精度の劣化を防ぐことができる。
なお、補給孔245は、径方向に間隔をあけて凸部242bの複数箇所に設けられてもよい。
【0103】
また、図24に本参考形態の第5の変形例に係るスピンドル装置の拡大断面図を示す。
本変形例は、第4変形例のアンギュラ玉軸受240の外輪242の変形例であり、外輪242の凸部242bが、アンギュラ玉軸受240の軸方向背面側に形成されている。その他の構成は、図23に示したものと同様である。
【0104】
本変形例において、追加グリースは、凸部242bに形成された補給孔245から、内輪241及び外輪242間に背面側から軸方向に供給される。追加グリースの量は、一回の補給量が0.004cc?0.1ccであり、一回のグリース補給量が0.01cc?0.03ccであることが好ましい。以上に示す範囲内のグリースショットを行うことで、これにより、グリースの劣化または油膜形成不足による異常昇温の発生および軸受の破損を防止するとともに、グリース補給時の温度の脈動を抑制し、アンギュラ玉軸受240が取り付けられるスピンドル装置の軸精度の劣化を防ぐことができる。
【0105】
上記した第16,17参考形態および第16参考形態の変形例1?5のように構成することにより、軸方向に追加グリースを軸受内部に補給することが可能となる。
また、その他の軸受において、同様の補給孔を設けても同様の効果が期待されることは言うまでもない。
また、グリースショットするタイミングは、スピンドルの停止時であっても回転時であってもどちらでもよい。
【0106】
【実施例】
(参考例1)
転がり軸受へのグリース補給量について、以下のような実験を行った。
【0107】
内輪内径70mm、外輪外径110mm、幅20mmの単列円筒ころ軸受(NSK製、呼び番号N1014)を用いて、耐久試験を行った。耐久試験に用いられたグリースは、イソフレックスNBU15(NOKクリューバー(株)製)であり、グリースの初期封入量は、軸受空間容積の10%であった。試験条件は、dmN=150万で行われた。
【0108】
本耐久試験では、上記軸受を3つ用意し、耐久試験開始後、6時間毎に各軸受に0.01cc、0.004cc、0.002ccのグリース補給を行った。その結果、0.002ccでは、早期に軸受が焼き付いてしまったが、0.004cc及び0.01ccのグリース供給では、耐久試験開始後1000時間を経過しても異常、故障等は発生しなかった。以上の結果より、一回のグリース補給量を0.004cc以上と設定することにより、転がり軸受の耐久性において問題がないことがわかった。
【0109】
(実施例2)
内輪内径65mm、外輪外径100mm、幅18mm、玉径7.144mm、接触角18°のアンギュラ玉軸受740,750を用いて、グリース補給量と温度の脈動の関係を確認する温度脈動確認試験を行った。温度脈動確認試験に用いられたグリースは、イソフレックスNBU15(NOKクリューバー(株)製)であり、グリースの初期封入量は、軸受空間容積の15%であった。また、試験条件は、dmN=180万であった。
【0110】
本脈動確認試験は、図25に示す試験用主軸装置700を用いて行われた。試験用主軸装置700は、支持台701上に配置されたハウジングブロック702によってハウジング本体703が支持される構成を有している。ハウジング本外703には、アンギュラ玉軸受740,750が互いに背面配置で内嵌している。このアンギュラ玉軸受主軸740は、主軸710に外嵌しており、主軸710を回転自在に支承している。
【0111】
アンギュラ玉軸受740,750間には、各アンギュラ玉軸受740,750の内輪間に内輪間座711が、そして各アンギュラ玉軸受740,750の外輪間に外輪間座712がそれぞれ設けられている。また、アンギュラ玉軸受750の軸方向後端側(図中右側)には、後端外輪押さえ713が設けられている。
また、アンギュラ玉軸受740の軸方向前端側(図中左側)には、外輪押さえ部材714と内輪押さえ部材715が設けられている。各アンギュラ玉軸受740,750は、外輪押さえ部材714及び内輪押さえ部材715によって後端外輪押さえ713側に軸方向に沿って押圧されている。
【0112】
ハウジング703には、ノズル部材730,730が各アンギュラ玉軸受740,750に対応して取り付けられている。ノズル部材730、730は、各アンギュラ玉軸受740,750の外輪に設けられた孔側からグリースを軸受空間内に供給する。本温度脈動確認試験では、グリースは、試験開始後1時間おきに供給するような構成とした。一回のグリース補給時に各軸受に供給されるグリースの量は、0.035cc、0.10cc、0.15cc、0.30cc、0.60ccとして計5回実験を行った。図26は、この温度脈動確認試験の結果を示すグラフであり、(a)はグリース補給量が0.035ccの場合、(b)はグリース補給量が0.10ccの場合、(c)はグリース補給量が0.15ccの場合、(d)はグリース補給量が0.30ccの場合、そして(e)はグリース補給量が0.60ccの場合を示す。
【0113】
図26(a),(b)に示すように、グリース補給量が0.035cc及び0.10ccの場合には、グリース補給をおこなっても、アンギュラ玉軸受740,750の軸受温度に全く変化はない。しかしながら、図26(c)に示すように、グリース補給量が0.15ccの場合には、グリース補給する毎にアンギュラ玉軸受740,750の温度が1°C程度上昇しているのがわかる。同様に、図26(d),(e)に示すように、グリース補給量が0.30cc及び0.60ccの場合にも、グリース補給する毎にアンギュラ玉軸受740,750の温度が1?2°C程度上昇しているのがわかる。
【0114】
ここで、アンギュラ玉軸受740と軸受750では、グリース補給前の定常状態での温度が異なっている。この定常状態での温度の差異は、アンギュラ玉軸受740と、アンギュラ玉軸受750の周辺構造の差異、例えば、ハウジングブロック702からの距離の差異や図示せぬ冷却装置との位置関係等により発生した熱の抑制率が異なっているため、定常状態での温度が異なっているものと考えられる。
【0115】
いずれにせよ、アンギュラ玉軸受740においても、またアンギュラ玉軸受750においても、図26(c)?図26(e)に示すように、グリース補給量が0.15cc以上の場合には、補給グリースの攪拌抵抗等により軸受が発熱を起こし、軸受の昇温、すなわち温度の脈動が発生していると考えられる。したがって、一回のグリース補給量を0.1cc以下と設定することにより、温度の脈動が発生しない安定したグリース供給を行うことが可能であることがわかった。
【0116】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、グリースが早期に劣化して軸受が破損する前に新たなグリースを補給することにより、グリース潤滑でありながら高速回転性に優れて長寿命の工作機械用転がり軸受を提供できる。また、一回の補給量が0.004cc?0.1ccとなるようにグリースを転がり軸受に補給することにより、グリース供給時に温度の脈動が生じない工作機械用転がり軸受、並びにそれを用いた工作機械用主軸装置及び高速モータを提供することが可能になる。このように、以上に示す範囲内のグリース補給を行うことで、グリースの劣化または油膜形成不足による異常昇温の発生及び軸受の破損を防止するとともに、グリース補給時の温度の脈動を抑制し、軸受が取り付けられる工作機械の軸精度の劣化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る第1実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明に係る第2実施形態を示す断面図である。
【図3】第3参考形態を示す断面図である。
【図4】第4参考形態を示す断面図である。
【図5】第5参考形態を示す断面図である。
【図6】第6参考形態を示す断面図である。
【図7】第7参考形態を示す断面図である。
【図8】第8参考形態を示す断面図である。
【図9】第9参考形態を示す断面図である。
【図10】第10参考形態を示す断面図である。
【図11】第11参考形態を示す断面図である。
【図12】第12参考形態を示す断面図である。
【図13】第13参考形態を示す断面図である。
【図14】第14参考形態を示す断面図である。
【図15】第15参考形態を示す断面図である。
【図16】本発明に係る第1実施形態、第2実施形態及び第3?15参考形態に記載の転がり軸受を用いて構成されるスピンドル装置を示す断面図である。
【図17】第16?17参考形態に記載の転がり軸受を用いて構成されるスピンドル装置を示す断面図である。
【図18】図17に示すスピンドル装置の拡大断面図であり、第16参考形態を示す図である。
【図19】図17に示すスピンドル装置の拡大断面図であり、第17参考形態を示す図である。
【図20】第16参考形態の第1変形例を示す断面図である。
【図21】第16参考形態の第2変形例を示す断面図である。
【図22】第16参考形態の第3変形例を示す断面図である。
【図23】第16参考形態の第4変形例を示す断面図である。
【図24】第16参考形態の第5変形例を示す断面図である。
【図25】実施例2の温度脈動試験に用いられた試験用主軸装置を示す図である。
【図26】実施例2の脈動確認試験の結果を示すグラフであり、(a)はグリース補給量が0.035ccの場合、(b)はグリース補給量が0.10ccの場合、(c)はグリース補給量が0.15ccの場合、(d)はグリース補給量が0.30ccの場合、そして(e)はグリース補給量が0.60ccの場合を示す。
【符号の説明】
10,20,30,40,50 アンギュラ玉軸受(転がり軸受)
11,21,31,41,51 内輪
12,22,32,42,52 外輪
13,23,33,43,53 玉(転動体)
14,24,34,44,54 保持器
15,25,35,45,55 補給孔
60,70,80,90,100,110 円筒ころ軸受(転がり軸受)
61,71,81,91,101,111 内輪
62,72,82,92,102,112 外輪
63,73,83,93,103,113 円筒ころ(転動体)
64,74,84,94,104,114 保持器
65,75,85,95,105,115 補給孔
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2018-03-30 
結審通知日 2018-04-03 
審決日 2018-04-16 
出願番号 特願2003-70338(P2003-70338)
審決分類 P 1 41・ 854- Y (F16C)
P 1 41・ 853- Y (F16C)
P 1 41・ 852- Y (F16C)
P 1 41・ 855- Y (F16C)
P 1 41・ 856- Y (F16C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 谿花 正由輝  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 内田 博之
滝谷 亮一
登録日 2008-01-25 
登録番号 特許第4069382号(P4069382)
発明の名称 工作機械用転がり軸受  
代理人 松山 美奈子  
代理人 松山 美奈子  

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