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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01S
管理番号 1340468
審判番号 不服2017-13198  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-06 
確定日 2018-06-05 
事件の表示 特願2016-548137「測位基準信号を処理するための方法、装置、およびデバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月30日国際公開、WO2015/112430、平成29年 4月13日国内公表、特表2017-510794、請求項の数(30)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
特許出願: 平成27年1月15日
(パリ条約による優先権主張(外国庁受理2014年1月24日、米国)を伴う国際出願)
拒絶理由通知: 平成28年12月7日(発送日:同年同月13日)
手続補正: 平成29年3月13日
拒絶査定: 平成29年5月1日(送達日:同年同月9日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成29年9月6日


第2 原査定の概要
原査定(平成29年5月1日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.本願請求項1-2,8-11,17-20,24-27,30に係る発明は、以下の引用文献1の記載に基づいて、また本願請求項3-5,12-14,21-23,28に係る発明は、以下の引用文献1-2の記載に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特表2014-502067号公報
2.米国特許出願公開第2013/0285856号明細書


第3 本願発明
本願請求項1-30に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明30」という。)は、平成29年3月13日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-30に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
モバイルデバイスにおいて、
第1のタイプのオケージョン中に基地局から送信された第1の測位基準信号(PRS)バーストを収集することと、
第2のタイプのオケージョン中に前記基地局から送信された第2のPRSバーストを収集することと、
1つまたは複数の性能基準に少なくとも部分的に基づいて、測位動作において使用するために前記収集された第1のPRSバーストと前記収集された第2のPRSバーストとの間で選択することとを備える方法。
【請求項2】
前記1つまたは複数の性能基準が、少なくとも信号対雑音比を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つまたは複数の性能基準が、少なくとも最良の確定された自己相関のピークを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記最良の確定された自己相関のピークが時間領域においてまたは周波数領域において測定される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記1つまたは複数の性能基準が、少なくとも、前記最良の確定された自己相関のピークの幅と公称相関ピーク幅との比較を備える、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記選択することが、
前記収集された第2のPRSバースト中で検出された1つまたは複数のシンボルを、前記収集された第1のPRSバースト中で検出された1つまたは複数のシンボルと比較することをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記比較することは、
前記収集された第2のPRSバースト中で検出された前記1つまたは複数のシンボルが、前記収集された第1のPRSバースト中で検出された前記1つまたは複数のシンボルとは異なる極性のものであるかどうかを決定することを備える、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記1つまたは複数の性能基準のうちの第1の性能基準を備える前記収集された第1のPRSバーストに少なくとも部分的に基づいて、前記収集された第1のPRSバーストを、前記第1のタイプのオケージョン中に送信されたものとして指定することと、
前記第1の性能基準とは異なる前記1つまたは複数の性能基準のうちの第2を備える前記収集された第2のPRSバーストに少なくとも部分的に基づいて、前記収集された第2のPRSバーストを、前記第2のタイプのオケージョン中に送信されたものとして指定することと、をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
メモリデバイスに、基地局が異なるタイプのオケージョン中に異なるPRSバーストを送信するかどうかを識別するための1つまたは複数のインジケータを記憶することをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
通信チャネルから信号を受信するための受信機と、
第1のタイプのオケージョン中に前記受信機において受信された、基地局から送信された第1の測位基準信号(PRS)バーストを収集することと、
第2のタイプのオケージョン中に前記基地局から送信された第2のPRSバーストを収集することと、
1つまたは複数の性能基準に少なくとも部分的に基づいて、測位動作において使用するために前記収集された第1のPRSバーストと前記収集された第2のPRSバーストとの間で選択することと
を行うための、前記受信機に結合された1つまたは複数のプロセッサとを備える、モバイルデバイス。
【請求項11】
前記1つまたは複数のプロセッサが、
前記収集された第1および前記収集された第2のPRSバーストの信号対雑音を備える前記1つまたは複数の性能に少なくとも部分的に基づいて、前記収集された第1のPRSバーストと前記収集された第2のPRSバーストとの間で選択することをさらに行うためのものである、請求項10に記載のモバイルデバイス。
【請求項12】
前記1つまたは複数のプロセッサが、
前記収集された第1および前記収集された第2のPRSバーストの最良の確定された自己相関のピークを備える前記1つまたは複数の性能基準に少なくとも部分的に基づいて、前記収集された第1のPRSバーストと前記収集された第2のPRSバーストとの間で選択することをさらに行うためのものである、請求項10に記載のモバイルデバイス。
【請求項13】
前記1つまたは複数のプロセッサが、
時間領域においてまたは周波数領域において、前記最良の確定された自己相関のピークを計算することをさらに行うためのものである、請求項12に記載のモバイルデバイス。
【請求項14】
前記1つまたは複数のプロセッサが、
計算された自己相関のピーク幅と公称相関ピーク幅との比較に少なくとも部分的に基づいて、前記収集された第1のPRSバーストと前記収集された第2のPRSバーストとの間で選択することをさらに行うためのものである、請求項10に記載のモバイルデバイス。
【請求項15】
前記1つまたは複数のプロセッサが、
前記収集された第2のPRSバースト中で検出された1つまたは複数のシンボルを、前記収集された第1のPRSバースト中で検出された1つまたは複数のシンボルと比較することをさらに行うためのものである、請求項10に記載のモバイルデバイス。
【請求項16】
前記1つまたは複数のプロセッサは、
前記収集された第2のPRSバースト中で検出された前記1つまたは複数のシンボルが、前記収集された第1のPRSバースト中で検出された前記1つまたは複数のシンボルとは異なる極性のものであるかどうかを決定することをさらに行うためのものである、請求項15に記載のモバイルデバイス。
【請求項17】
前記1つまたは複数のプロセッサが、
前記1つまたは複数の性能基準のうちの第1の性能基準を備える前記収集された第1のPRSバーストに少なくとも部分的に基づいて、前記収集された第1のPRSバーストを、第1のタイプのオケージョン中に送信されたものとして指定することと、
前記第1の性能基準とは異なる前記1つまたは複数の性能基準のうちの第2を備える前記収集された第2のPRSバーストに少なくとも部分的に基づいて、前記収集された第2のPRSバーストを、第2のタイプのオケージョン中に送信されたものとして指定することとをさらに行うためのものである、請求項10に記載のモバイルデバイス。
【請求項18】
前記1つまたは複数のプロセッサは、
メモリデバイスに、基地局が異なるタイプのオケージョン中に異なるPRSバーストを送信するかどうかを識別するための1つまたは複数のインジケータを記憶することをさらに行うためのものである、請求項10に記載のモバイルデバイス。
【請求項19】
第1のタイプのオケージョン中に基地局から送信された第1の測位基準信号(PRS)バーストを収集することと、
第2のタイプのオケージョン中に前記基地局から送信された第2のPRSバーストを収集することと、
1つまたは複数の性能基準に少なくとも部分的に基づいて、測位動作において使用するために前記収集された第1のPRSバーストと前記収集された第2のPRSバーストとの間で選択することと
を行うためにモバイルデバイスの1つまたは複数のプロセッサによって実行可能である、その上に記憶された機械可読命令を備える非一時的記憶媒体を備える物品。
【請求項20】
前記モバイルデバイスの1つまたは複数のプロセッサによって実行可能である、その上に記憶された機械可読命令を備える前記非一時的記憶媒体が、
前記収集された第1および前記収集された第2のPRSバーストの信号対雑音を備える前記1つまたは複数の性能基準に少なくとも部分的に基づいて、前記収集された第1のPRSバーストと前記収集された第2のPRSバーストとの間で選択することをさらに行うためのものである、請求項19に記載の物品。
【請求項21】
前記モバイルデバイスの1つまたは複数のプロセッサによって実行可能である、その上に記憶された機械可読命令を備える前記非一時的記憶媒体が、
前記収集された第1および前記収集された第2のPRSバーストの最良の確定された自己相関のピークを備える前記1つまたは複数の性能基準に少なくとも部分的に基づいて前記収集された第1のPRSバーストと前記収集された第2のPRSバーストとの間で選択することをさらに行うためのものである、請求項19に記載の物品。
【請求項22】
前記モバイルデバイスの1つまたは複数のプロセッサによって実行可能である、その上に記憶された機械可読命令を備える前記非一時的記憶媒体が、
時間領域においてまたは周波数領域において、前記最良の確定された自己相関のピークを計算することをさらに行うためのものである、請求項21に記載の物品。
【請求項23】
前記モバイルデバイスの1つまたは複数のプロセッサによって実行可能である、その上に記憶された機械可読命令を備える前記非一時的記憶媒体が、
計算された自己相関のピーク幅と公称相関ピーク幅との比較に少なくとも部分的に基づいて、前記収集された第1のPRSバーストと前記収集された第2のPRSバーストとの間で選択することをさらに行うためのものである、請求項19に記載の物品。
【請求項24】
前記モバイルデバイスの1つまたは複数のプロセッサによって実行可能である、その上に記憶された機械可読命令を備える前記非一時的記憶媒体が、
前記1つまたは複数の性能基準のうちの第1の性能基準を備える前記収集された第1のPRSバーストに少なくとも部分的に基づいて、前記収集された第1のPRSバーストを、第1のタイプのオケージョン中に送信されたものとして指定することと、
前記第1の性能基準とは異なる前記1つまたは複数の性能基準のうちの第2を備える前記収集された第2のPRSバーストに少なくとも部分的に基づいて、前記収集された第2のPRSバーストを、第2のタイプのオケージョン中に送信されたものとして指定することとをさらに行うためのものである、請求項19に記載の物品。
【請求項25】
前記モバイルデバイスの1つまたは複数のプロセッサによって実行可能である、その上に記憶された機械可読命令を備える前記非一時的記憶媒体が、
メモリデバイスに、基地局が異なるタイプのオケージョン中に異なるPRSバーストを送信するかどうかを識別するための1つまたは複数のインジケータを記憶することをさらに行うためのものである、請求項19に記載の物品。
【請求項26】
第1のタイプのオケージョン中に基地局から送信された第1の測位基準信号(PRS)バーストを収集するための手段と、
第2のタイプのオケージョン中に前記基地局から送信された第2のPRSバーストを収集するための手段と、
1つまたは複数の性能基準に少なくとも部分的に基づいて、測位動作において使用するために前記収集された第1のPRSバーストと前記収集された第2のPRSバーストとの間で選択するための手段とを備える、モバイルデバイス。
【請求項27】
前記収集された第1のPRSバーストおよび前記収集された第2のPRSバーストの信号対雑音比を計算するための手段をさらに備える、請求項26に記載のモバイルデバイス。
【請求項28】
前記収集された第1のPRSバーストおよび前記収集された第2のPRSバーストの最良の確定された自己相関のピークを計算するための手段をさらに備える、請求項26に記載のモバイルデバイス。
【請求項29】
前記収集された第2のPRSバースト中で検出された1つまたは複数のシンボルが、前記収集された第1のPRSバースト中で検出された1つまたは複数のシンボルとは異なる極性のものであるかどうかを決定するための手段をさらに備える、請求項26に記載のモバイルデバイス。
【請求項30】
前記1つまたは複数の性能基準のうちの第1の性能基準を備える前記収集された第1のPRSバーストに少なくとも部分的に基づいて、前記収集された第1のPRSバーストを、第1のタイプのオケージョン中に送信されたものとして指定するための手段と、
前記第1の性能基準とは異なる前記1つまたは複数の性能基準のうちの第2を備える前記収集された第2のPRSバーストに少なくとも部分的に基づいて、前記収集された第2PRSバーストを、第2のタイプのオケージョン中に送信されたものとして指定するための手段とをさらに備える、請求項26に記載のモバイルデバイス。」


第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審による。以下同様。)

「【請求項1】
マルチキャリア無線通信ネットワーク(10)におけるユーザ機器(UE)(12)のサービングノード(32)による当該UE(12)についての測位適応型のキャリアスイッチングの方法(100)であって、
前記UE(12)についてのプライマリキャリアとして第1のキャリアを割り当てること(102)と、
前記UE(12)についての前記プライマリキャリアとなるべき第2のキャリアを選択すること(104)と、
前記UE(12)についての前記プライマリキャリアを前記第1のキャリアから前記第2のキャリアにスイッチングすること(106)と、
を含み、
前記選択するステップ(104)及び前記スイッチングするステップ(106)のうちの少なくとも1つは、1つ以上の測位用測定が実行されることを可能にするように制約される、
方法。」

「【請求項20】
前記第1及び第2のキャリア上で測位リファレンス信号(PRS)を送信することと、
前記PRSの送信は時間的にずらして配置されることと、
あるキャリア上でのPRS送信に先立って前記UE(12)についての前記プライマリキャリアを当該キャリアにスイッチングすることと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法(100)。」

「【請求項24】
マルチキャリア無線通信ネットワーク(10)において動作可能なユーザ機器(UE)(12)による測位適応型のキャリアスイッチングの方法(200)であって、
プライマリキャリアとしての第1のキャリア上で通信信号を受信すること(202)と、
1つ以上の測位用測定を実行すること(204)と、
前記プライマリキャリアは前記第1のキャリアから第2のキャリアにスイッチングされるべきであるという標識をサービングノード(32)から受信すること(206)と、
進行中の前記測位用測定を維持しながら、前記プライマリキャリアとしての前記第2のキャリアにスイッチングすること(208)と、
を含む、方法。」

「【0016】
PRSは、幾つかの連続するサブフレーム(NPRS)によってグループ化される予め定義される測位サブフレームにおいて送信され、1つの測位機会として知られる。図3に示されるように、測位機会は、N個のサブフレームのある周期性によって、即ち、2つの測位機会の間の時間間隔で、周期的に発生する。LTEにおいて、標準化された期間Nは、160ms、320ms、640ms、及び1280msであり、連続するサブフレームの数は、1個、2個、4個、及び6個である。」

「【0038】
図6は、マルチRATのマルチキャリア無線通信ネットワーク10の機能ブロック図を表す。UE12は、第1のRAT30に従って2つ以上のキャリア周波数上に変調される通信及び制御信号を、LTEにおけるeNodeBなどの当該第1のRAT30におけるサービングノード32から受信し及びサービングノード32に送信する。サービングノード32は、マルチキャリア送受信器34と、UE12についてプライマリキャリア及び1つ以上のセカンダリキャリアを選択するように動作し、並びに最適なマルチキャリアネットワーク動作のために当該プライマリキャリアを必要又は要望に応じてスイッチングするようにさらに動作するコントローラ38と、を備える。本発明の実施形態によれば、コントローラ38は、本明細書においてさらに説明されるように、そのプライマリキャリアの選択及びスイッチングの決定において測位適応型の手法で制約され、それにより、例えば進行中の測位用測定が完了される。サービングノード32は、ネットワークインタフェース36を介して、LTEにおけE-SMLC又はSLPといったロケーションサービスノード40に接続される。ロケーションサービスノード40は、GPS信号の受信又はPRSのOTDOA測定といったUE12によって実行される測位用測定に基づいて、当該UE12についての測位手続きを実行し得る。」

「【0045】
本発明の実施形態によれば、マルチキャリア無線通信ネットワーク10におけるキャリアスイッチングの決定は、一貫性のある、ロバストな測位用測定性能を確かなものにするために制約される。これらの制約は、UE12にプライマリキャリア又はセカンダリキャリアとして割り当てられるべき選択キャリア周波数に影響を及ぼし、及び/又は、キャリアスイッチングのタイミングにも影響を及ぼし得る。これらの制約は、サービングネットワークノード32、52(例えば、eNodeB)、及び/又はUE12上で動作し得る。例えば、プライマリキャリアのスイッチングが測位用測定セッションの開始に先立って又は進行中の測位用測定セッションが完了した後に発生すること、即ち測位セッション又は測定期間中にプライマリキャリアのスイッチングが発生しないことを確かなものにするために、制約は課され得る。別の例として、コンポーネントキャリアからのプライマリキャリアの選択は、UE12が測位用測定を実行することを可能にするためにPRSを送信するキャリアを選択するように、即ち、測位用測定のために用いられることができるPRSの最も好ましい設定を有するプライマリキャリア(例えば、時間ドメイン及び/又は周波数ドメインにおいて最大密度のPRSを送信するもの)、又は取り得る最も良好な伝搬特性を有するキャリアを選択するように制約され得る。」

上記記載より、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「マルチキャリア無線通信ネットワーク(10)において動作可能なユーザ機器(UE)(12)による測位適応型のキャリアスイッチングの方法(200)であって、
プライマリキャリアとしての第1のキャリア上で通信信号を受信すること(202)と、
前記プライマリキャリアは前記第1のキャリアから第2のキャリアにスイッチングされるべきであるという標識をサービングノード(32)から受信すること(206)と、
進行中の前記測位用測定を維持しながら、前記プライマリキャリアとしての前記第2のキャリアにスイッチングすること(208)と、
を含む方法であって(【請求項24】参照。)、
前記第1及び第2のキャリア上で測位リファレンス信号(PRS)が送信され(【請求項20】参照。)、
PRSは、幾つかの連続するサブフレームによってグループ化される予め定義される測位サブフレームにおいて送信され、1つの測位機会として知られるものであり、測位機会は、N個のサブフレームのある周期性によって、即ち、2つの測位機会の間の時間間隔で、周期的に発生する(【0016】参照。)方法であって、
測位用測定のために用いられることができるPRSの最も好ましい設定を有するプライマリキャリア、又は取り得る最も良好な伝搬特性を有するキャリアを選択するように制約され得る、
方法。」


第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
まず、引用発明の「マルチキャリア無線通信ネットワーク(10)において動作可能なユーザ機器(UE)」は、本願発明1の「モバイルデバイス」に相当する。
また、引用発明においては、「第1及び第2のキャリア上で測位リファレンス信号(PRS)が送信され」ており、さらに「PRSは、幾つかの連続するサブフレームによってグループ化される予め定義される測位サブフレームにおいて送信され、1つの測位機会として知られるものであり、測位機会は、N個のサブフレームのある周期性によって、即ち、2つの測位機会の間の時間間隔で、周期的に発生する」とされているから、引用発明において「プライマリキャリアとしての第1のキャリア上で通信信号を受信すること」は、本願発明1において「第1のタイプのオケージョン中に基地局から送信された第1の測位基準信号(PRS)バーストを収集すること」に相当するといえる。
さらに、引用発明において「プライマリキャリアとしての前記第2のキャリアにスイッチング」された後に、第2のキャリア上で通信信号を受信することも明らかであって、これは本願発明1において「第2のタイプのオケージョン中に前記基地局から送信された第2のPRSバーストを収集すること」に相当するといえる。
次に、引用発明において「測位用測定のために用いられることができるPRSの最も好ましい設定を有するプライマリキャリア、又は取り得る最も良好な伝搬特性を有するキャリアを選択」されることは、本願発明1において「1つまたは複数の性能基準に少なくとも部分的に基づいて、測位動作において使用するために前記収集された第1のPRSバーストと前記収集された第2のPRSバーストとの間で選択」されることに相当する。
してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「モバイルデバイスにおいて、
第1のタイプのオケージョン中に基地局から送信された第1の測位基準信号(PRS)バーストを収集することと、
第2のタイプのオケージョン中に前記基地局から送信された第2のPRSバーストを収集することと、
を備える方法であって、
1つまたは複数の性能基準に少なくとも部分的に基づいて、測位動作において使用するために前記収集された第1のPRSバーストと前記収集された第2のPRSバーストとの間で選択される、
方法。」

(相違点)
本願発明1においては、「モバイルデバイスにおいて、」「1つまたは複数の性能基準に少なくとも部分的に基づいて、測位動作において使用するために前記収集された第1のPRSバーストと前記収集された第2のPRSバーストとの間で選択する」ことを備えるとされているが、引用発明においては「測位用測定のために用いられることができるPRSの最も好ましい設定を有するプライマリキャリア、又は取り得る最も良好な伝搬特性を有するキャリアを選択」されるものの、キャリアのスイッチングについては、「前記プライマリキャリアは前記第1のキャリアから第2のキャリアにスイッチングされるべきであるという標識をサービングノード(32)から受信」して、スイッチングするとされており、「モバイルデバイスにおいて、」選択は行われていない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点について検討すると、引用発明において、キャリアスイッチングの選択をユーザ機器(UE)において行うようにすることの動機を見いだすことはできない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用文献1に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
なお、念のため上記引用文献2(原査定において請求項1に係る発明(本願発明1に対応)に対して引用されたものではない)の記載内容を検討しても、上記相違点に係る本願発明1の構成は記載も示唆もされていない。

2.本願発明10,19,26について
本願発明10,19,26は、本願発明1に対応するモバイルデバイスもしくは物品の発明であり、本願発明1の「モバイルデバイスにおいて、」「1つまたは複数の性能基準に少なくとも部分的に基づいて、測位動作において使用するために前記収集された第1のPRSバーストと前記収集された第2のPRSバーストとの間で選択する」という構成に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用文献1に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明2-9,11-18,20-25,27-30について
本願発明2-9,11-18,20-25,27-30は、本願発明1,10,19,26のいずれかを引用する発明であって、本願発明1の「モバイルデバイスにおいて、」「1つまたは複数の性能基準に少なくとも部分的に基づいて、測位動作において使用するために前記収集された第1のPRSバーストと前記収集された第2のPRSバーストとの間で選択する」という構成、もしくはそれに対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用文献1、または引用文献1ないし2に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第6 原査定について
本願発明1-30は「モバイルデバイスにおいて、」「1つまたは複数の性能基準に少なくとも部分的に基づいて、測位動作において使用するために前記収集された第1のPRSバーストと前記収集された第2のPRSバーストとの間で選択する」という構成、もしくはそれに対応する構成を備えものであり、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1、または引用文献1ないし2に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-05-21 
出願番号 特願2016-548137(P2016-548137)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01S)
最終処分 成立  
前審関与審査官 ▲高▼場 正光  
特許庁審判長 小林 紀史
特許庁審判官 中村 説志
中塚 直樹
発明の名称 測位基準信号を処理するための方法、装置、およびデバイス  
代理人 井関 守三  
代理人 福原 淑弘  
代理人 岡田 貴志  
代理人 蔵田 昌俊  

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