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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1340471
審判番号 不服2016-17608  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-25 
確定日 2018-05-18 
事件の表示 特願2013-511386「Wi-Fiインテリジェント選択エンジン」拒絶査定不服審判事件〔平成23年11月24日国際公開,WO2011/146831,平成25年 7月25日国内公表,特表2013-530629〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2011年(平成23年)5月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2010年5月20日 米国,2010年9月15日 米国)を国際出願日とする出願であって,平成26年4月2日付けで拒絶理由が通知され,同年9月8日付けで意見書及び手続補正書が提出され,平成27年1月27日付けで拒絶理由が通知され,同年4月23日付けで意見書及び手続補正書が提出され,同年8月31日付けで最後の拒絶理由が通知され,同年11月24日付けで意見書及び手続補正書が提出され,平成28年3月22日付けで拒絶理由が通知され,同年6月27日付けで意見書及び手続補正書が提出され,同年7月21日付けで拒絶査定されたところ,同年11月25日に拒絶査定不服審判が請求され,同時に手続補正されたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年11月25日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の概要
平成28年11月25日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)は,同年6月27日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された
「【請求項1】
モバイル・デバイスからのWi-Fiアクセス・ポイントのインテリジェント選択の方法であって、
プロセッサを含むモバイル・デバイスによってネットワークから時刻を受信するステップと、
前記モバイル・デバイスの位置を前記モバイル・デバイスによって評価するステップと、
前記位置での1つまたは複数のWi-Fiアクセス・ポイントの可用性を前記モバイル・デバイスによって判定するステップであって、判定する前記ステップは、前記モバイル・デバイスの位置を既知の位置のデータベースと比較するステップを含み、各既知の位置は、前記1つまたは複数のWi-Fiアクセス・ポイントに関連付けられる、ステップと、
前記時刻、前記位置およびユーザ・プロファイルに関連付けられた時間スケジュールに関連するルールを満たす前記1つまたは複数のWi-Fiアクセス・ポイントの前記可用性に応答して、前記モバイル・デバイス内のWi-Fiトランシーバを前記モバイル・デバイスによってアクティブ化するステップと、
Wi-Fiアクセス・ポイントに接続するように前記モバイル・デバイスを前記モバイル・デバイスによってトリガするステップと
を含む方法。」
という発明(以下,「本願発明」という。)を,
「【請求項1】
モバイル・デバイスによるWi-Fiアクセス・ポイントのインテリジェント選択の方法であって、
プロセッサを含むモバイル・デバイスによってネットワークから時刻を受信するステップと、
前記モバイル・デバイスの位置を前記モバイル・デバイスによって評価するステップと、
前記位置での1つまたは複数のWi-Fiアクセス・ポイントの可用性を前記モバイル・デバイスによって判定するステップであって、判定する前記ステップは、前記モバイル・デバイスの位置を既知の位置のデータベースと比較するステップを含み、各既知の位置は、前記1つまたは複数のWi-Fiアクセス・ポイントに関連付けられる、ステップと、
前記1つまたは複数のWi-Fiアクセス・ポイントのうちのWi-Fiアクセス・ポイントが、複数の前記既知の位置のうちの1つの前記既知の位置に基づく前記位置にあり、前記Wi-Fiアクセス・ポイントへの接続に関連するユーザ情報に関連付けられたスケジュールを時刻と前記位置とが満たし、前記Wi-Fiアクセス・ポイントが使用可能であることの判定に応答して、前記モバイル・デバイス内のWi-Fiトランシーバを前記モバイル・デバイスによってアクティブ化するステップと、
前記Wi-Fiアクセス・ポイントに接続するように前記モバイル・デバイスを前記モバイル・デバイスによってトリガするステップと
を含む方法。」
という発明(以下,「本願補正発明」という。)とすることを含むものである。([当審注]:下線部は補正箇所を示す。)

2 本件補正の適否について
請求項1についての上記補正は,審判請求人も審判請求書で述べているように,特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲を減縮を目的とするものと認められ,同第3項,同第4項の規定も満たしている。
そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(本願補正発明)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて,以下検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は,上記「1 補正の概要」の項目で示したとおりのものと認める(以下,本願補正発明を再掲する。)。
「 【請求項1】
モバイル・デバイスによるWi-Fiアクセス・ポイントのインテリジェント選択の方法であって、
プロセッサを含むモバイル・デバイスによってネットワークから時刻を受信するステップと、
前記モバイル・デバイスの位置を前記モバイル・デバイスによって評価するステップと、
前記位置での1つまたは複数のWi-Fiアクセス・ポイントの可用性を前記モバイル・デバイスによって判定するステップであって、判定する前記ステップは、前記モバイル・デバイスの位置を既知の位置のデータベースと比較するステップを含み、各既知の位置は、前記1つまたは複数のWi-Fiアクセス・ポイントに関連付けられる、ステップと、
前記1つまたは複数のWi-Fiアクセス・ポイントのうちのWi-Fiアクセス・ポイントが、複数の前記既知の位置のうちの1つの前記既知の位置に基づく前記位置にあり、前記Wi-Fiアクセス・ポイントへの接続に関連するユーザ情報に関連付けられたスケジュールを時刻と前記位置とが満たし、前記Wi-Fiアクセス・ポイントが使用可能であることの判定に応答して、前記モバイル・デバイス内のWi-Fiトランシーバを前記モバイル・デバイスによってアクティブ化するステップと、
前記Wi-Fiアクセス・ポイントに接続するように前記モバイル・デバイスを前記モバイル・デバイスによってトリガするステップと
を含む方法。」

(2)引用発明,公知技術

ア 引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された米国特許出願公開第2008/0305786号明細書(以下,「引用例1」という。)には,「MANAGING MOBILE STATION WI-FI COMMUNICATIONS」([当審仮訳]:モバイルステーションのWI-FI通信の管理)に関し,図面とともに以下の事項が記載されている(なお,下線は当審にて付したものである。)。

(ア)「FIELD OF THE INVENTION
[0001] This invention generally relates to communications. More particularly, this invention relates to wireless communications.
DESCRIPTION OF THE RELATED ART
[0002] Wireless communication systems are well known and in widespread use. Cellular communication networks typically include a plurality of base stations geographically located to serve corresponding regions or cells. Mobile stations such as cell phones, personal digital assistants and laptop computers communicate using radio frequency signals through the base stations to a cellular network, which facilitates communications with other devices.
[0003] There are other wireless communication technologies that are available such as IEEE 802.11 wireless fidelity (Wi-Fi) communications. Wi-Fi communications typically have higher bandwidth capability than IP connectivity available through cellular networks. Additionally, Wi-Fi communications are typically available at a lower cost. Wi-Fi communication capability, however, is typically limited to within a closer range of a Wi-Fi access point or source of Wi-Fi communications. Typical ranges are from about fifty to several hundred meters. Wi-Fi access points can be located inside of buildings that are privately owned or in public buildings, for example.
[0004] Some mobile stations have the capability of communicating using a cellular network, Wi-Fi communications or both. Some known mobile stations have a connection manager that switches between Wi-Fi and cellular-based (e.g., WAN IP connectivity) communications based on the availability of each network and other criteria such as application needs, etc. With such devices, the connection manager software relies upon the Wi-Fi network card of the mobile station to provide an indication whether a Wi-Fi communication network is currently available. Leaving a Wi-Fi network card switched on for this purpose undesirably utilizes battery power because the network card must be switched on even while it is not being used.
[0005] In some cases, the user of the mobile station can manually select which technology to access. For example, an individual having such a device may switch on the Wi-Fi capability of the device once the individual arrives at the office where there is a Wi-Fi access point. There is a disadvantage associated with manual activation in that it can be inconvenient for the user. Additionally, the user may inadvertently leave on a Wi-Fi network card, which has the battery draining disadvantage mentioned above.
[0006] It would be advantageous to provide automatic management of Wi-Fi capability for a mobile station that does not require manual activation of the Wi-Fi capability and does not require a Wi-Fi network card to be permanently switched on.
SUMMARY
[0007] An exemplary method of managing Wi-Fi capability for a mobile station includes turning off a Wi-Fi communications portion of the mobile station when the mobile station is not being used for Wi-Fi communications. The mobile station enters a Wi-Fi probing mode responsive to at least one of a plurality of preselected triggering events to determine whether the Wi-Fi communications capability should remain active.
[0008] An exemplary mobile station includes a first portion having a Wi-Fi communications capability. A second portion includes a Wi-Fi communications manager that controls when the first portion is active. The Wi-Fi communications manager turns off the first portion when Wi-Fi communications are not in use. The Wi-Fi communications manager determines when at least one of a plurality of preselected triggering events occurs and instructs the first portion to enter a probing mode that is used to determine whether the first portion should remain active.
[0009] The various features and advantages of this invention will become apparent to those skilled in the art from the following detailed description. The drawings that accompany the detailed description can be briefly described as follows.」(1ページ左欄?同右欄)
([当審仮訳]:
発明の分野
[0001] 本発明は,一般に,通信に関する。より具体的には,本発明は,無線通信に関する。
関連技術の説明
[0002] 無線通信システムはよく知られており,かつ,広く用いられている。セルラー通信ネットワークは,典型的には,対応する領域又はセルにサービスするために,地理的に位置する複数の基地局を含む。セルホン,パーソナルデジタルアシスタント,及びラップトップコンピュータ,といったモバイルステーションは,基地局を通じて,他のデバイスと通信することを可能にするセルラーネットワークへ,無線周波数信号を用いて通信する。
[0003] IEEE 802.11ワイヤレスフィデリティー(Wi-Fi)通信といった,利用可能な他の無線通信技術がある。Wi-Fi通信は,典型的には,セルラーネットワークを通じて利用可能なIP接続性よりも,高い帯域幅の能力を有する。加えて,Wi-Fi通信は,典型的には,より低いコストで利用可能である。しかしながら,Wi-Fi通信の能力は,典型的には,Wi-Fiアクセスポイント又はWi-Fi通信のソースのより狭いレンジ内に,制限される。典型的なレンジは,およそ50から数百メートルである。Wi-Fiアクセスポイントは,例えば,私的に所有するビルディングの中か,又は,公的なビルディングに,位置することができる。
[0004] いくつかのモバイルステーションは,セルラーネットワーク,Wi-Fi通信,又は両方,を用いて通信する能力を有する。幾つかの既知のモバイルステーションは,それぞれのネットワークの利用可能性と,アプリケーションのニーズなどといった他の基準とに基づいて,Wi-Fiとセルラーベース(例えばWAN IP接続性)との通信を切り替える接続マネージャを有する。そのようなデバイスが有する,接続マネージャソフトウエアは,Wi-Fi通信ネットワークが現在利用可能かどうかの表示を提供するためのモバイルステーションのWi-Fiネットワークカードを頼りにしている。あるWi-Fiネットワークカードが,その目的で,スイッチオンにしたままにしておくことは,望まないバッテリーパワーを利用する,というのは,そのネットワークカードは,それが使われなかったとしても,スイッチオンしなければならないからである。
[0005] いくつかのケースにおいて,モバイルステーションのユーザは,アクセスするためのいずれかの技術を手動で選択する。例えば,そのようなデバイスを有するある個人は,Wi-Fiアクセスポイントがあるオフィスに到着するとすぐ,Wi-Fi能力をスイッチオンにするかもしれない。ユーザにとって不便であり得るという点において,手動のアクティベーションに関連した不利な点が存在する。加えて,そのユーザは,うっかりWi-Fiネットワークカードをオンのままにしておくかもしれず,それは,バッテリが枯渇する上述したような不利な点を有するものである。
[0006] Wi-Fi能力の手動のアクティベーションを必要とせず,かつWi-Fiネットワークカードを恒久的にスイッチオンすることを必要としない,モバイルステーションのためのWi-Fi能力の自動的な管理を提供することは,有利な点となり得る。
要約
[0007] モバイルステーションのWi-Fi能力を管理する例示的な方法は,モバイルステーションがWi-Fi通信のために用いられていないときに,モバイルステーションのWi-Fi通信部分をオフにすることを含む。モバイルステーションは,Wi-Fi通信能力をアクティブなままにするかどうか判定するための,複数の予め選択されたトリガリングイベントのうちの少なくとも一つに応答して,Wi-Fi探索モードに入る。
[0008] 例示的なモバイルステーションは,Wi-Fi通信能力を有する第1部分を含む。第2部分は,いつ第1部分がアクティブであるかを制御するWi-Fi通信マネージャを含む。そのWi-Fi通信マネージャは,Wi-Fi通信が用いられていないときに第1部分をオフにする。そのWi-Fi通信マネージャは,いつ複数の予め選択されたトリガリングイベントのうちの少なくとも一つが発生したかを判定し,かつ,第1部分に,第1部分がアクティブなままであるべきかどうかを判断するために用いられる探索モードに入るように指示する。
[0009] 本発明の様々な特徴及び利点は,以下の詳細な説明から当業者にとって明らかになるであろう。詳細な説明に伴う図面は,以下のとおり簡潔に説明する。)

(イ)「[0015] The disclosed example arrangement allows for automatically controlling the activation of wireless fidelity (Wi-Fi) communication capability for a mobile station without requiring the Wi-Fi capability of the mobile station to be continuously active at all times. With the disclosed example, it is possible to automatically control the activation of the Wi-Fi capability for a mobile station responsive to at least one of a plurality of preselected triggering events that instigate a Wi-Fi probing mode used for determining whether the Wi-Fi capability should remain active.
[0016] FIG. 1 schematically shows an example mobile station 20. While the illustration shows a cellular phone, other mobile stations can be used in an embodiment of this invention. Example mobile stations include personal digital assistants and notebook or laptop computers. This invention is not necessarily limited to any particular type of mobile station.
[0017] The example mobile station 20 includes a first portion 24 that provides the mobile station 20 with Wi-Fi communication capability. In one example, the first portion 24 of the mobile station 20 comprises a Wi-Fi network card. In the illustration, the mobile station 20 can communicate with at least one source 26 of Wi-Fi communications. The source 26 may be any known Wi-Fi access point or device.
[0018] The example mobile station 20 includes a second portion 28 that comprises a Wi-Fi communications manager (WCM) that controls when the first portion 24 is active. The WCM 28 automatically controls when the first portion 24 is turned on such that the first portion 24 need not be on continuously at all times. Automatically controlling when the first portion 24 is turned on saves battery life for the mobile station 20, for example. The WCM 28 in this example determines when at least one of a plurality of preselected triggering events occurs for purposes of controlling when the first portion 24 is active.
[0019] The example mobile station 20 also has communication capability such as cellular phone communications over a wireless network (e.g., UMTS, GSM or CDMA communications). Because the example mobile station 20 is capable of Wi-Fi communications on the one hand and another type of communications on the other hand, the mobile station 20 is considered a dual mode service (DMS) mobile station. The mobile station 20 has the capability of operating in more than one mode for communicating.」(1ページ右欄?同左欄)
(当審仮訳:
[0015] 開示された例示的な配置は,モバイルステーションのWi-Fi能力がいつも連続的にアクティブであることを必要とすることなく,自動的にワイヤレスフィデリティー(Wi-Fi)通信能力のアクティベーションを制御することを可能にする。開示された例示を用いると,Wi-Fi能力をアクティブなままにすべきかどうかを判定するために利用されるWi-Fi探索モードを引き起こさせる,複数の予め選択されたトリガリングイベントのうちの少なくとも一つに応答するモバイルステーションが,Wi-Fi能力のアクティベーションを自動的に制御できる。
[0016] 図1は,例示のモバイルステーション20を図式的に示す。この図ではセルラーホンを示しているが,本発明の実施形態では他のモバイルステーションも利用され得る。例示のモバイルステーションは,パーソナルデジタルアシスタント,並びに,ノートブックの若しくはラップトップのコンピュータを含む。本発明は,必ずしも,モバイルステーションのいかなる特定のタイプに制限するものではない。
[0017] 例示のモバイルステーション20は,モバイルステーション20にWi-Fi通信能力を提供する第1部分24を含む。一つの例において,モバイルステーション20の第1部分24は,Wi-Fiネットワークカードからなる。この例において,モバイルステーション20は,Wi-Fi通信の少なくとも1つのソース26と通信できる。そのソース26は,任意の既知のWi-Fiアクセスポイント又はデバイスであってよい。
[0018] 例示のモバイルステーション20は,いつ第1部分24がアクティブかを制御するWi-Fi通信マネージャ(WCM)からなる第2部分28を含む。そのWCM28は,第1部分24がいつも連続的にオンである必要がないようにするべく,いつ第1部分24がオンにされるかを自動的に制御する。いつ第1部分24がオンにされるかを自動的に制御することは,例えば,モバイルステーション20のバッテリーライフを節約する。この例におけるWCM28は,いつ第1部分24がアクティブであるかを制御することを目的として,複数の予め選択されたトリガリングイベントのうちの少なくとも一つがいつ発生するかを判定する。
[0019] 例示のモバイルステーション20はまた,無線ネットワークを介したセルラーホン通信(例えば,UMTS,GSM又はCDMA通信)といった通信能力を有する。例示のモバイルステーション20はまた,一方ではWi-Fi通信を,また他方では別のタイプの通信を,行う能力があるから,そのモバイルステーション20は,デュアルモードサービス(DMS)モバイルステーションとみなされる。そのモバイルステーションは,通信のために1を超えるモードで運用する能力を有する。)

(ウ)「[0020] FIGS. 2A and 2B include a flowchart diagram 30 that summarizes one example approach for managing the operation of the first portion 24, which provides Wi-Fi communication capability. The example approach facilitates activating the first portion 24 only when Wi-Fi communications are available, which avoids the need to leave the first portion 24 active at all times. By only selectively activating the first portion 24, the illustrated example allows for saving battery power and reducing processing requirements, for example.
[0021] The example process of FIGS. 2A and 2B begins at 32. At 34 a DMS probe timer is set. As shown at 36, the Wi-Fi capabilities of a mobile station are not active. In other words, there is no attachment to a DMS zone, which is an area within which Wi-Fi communications are possible. Whenever the Wi-Fi capabilities are turned off, they remain off until at least one of a plurality of preselected triggering events 40 occurs. In the example of FIG. 2A, the triggering events include an incoming cellular call at 42, an outgoing call setup at 44, the DMS probe timer expiring at 46, a user-initiated probing request at 48, the loss of a location information source at 50 and a location information update at 52. Any one of the example triggering events will be used to initiate a Wi-Fi probing mode in which the mobile station (e.g., the first portion 24) searches for a Wi-Fi access point in the vicinity of the current location of the mobile station.
[0022] Using an incoming cellular call or an outgoing call setup (i.e., the triggering events 42 and 44 in the illustrated example) for initiating a Wi-Fi probing mode allows for potential cost savings, for example. In many circumstances, a call can be handled less expensively and delivered in better quality with a higher bit rate over a Wi-Fi connection compared to using a cellular network connection, directly. The example of FIG. 2A recognizes the possibility of establishing a Wi-Fi connection for purposes of handling the call whenever possible. Even though the Wi-Fi capabilities have been inactive, whenever an incoming cellular call or an outgoing call setup begins, the Wi-Fi capabilities of the mobile station are turned on to determine whether the call may be handled using a Wi-Fi connection, for example.
[0023] Using a DMS probe timer (i.e., the triggering event 46) allows for periodically checking for Wi-Fi capabilities even if no other triggering event occurs.
[0024] The example of FIG. 2A also recognizes that a user of a mobile station may desire to attempt to establish a Wi-Fi connection. Accordingly, the triggering event 48 recognizes when an appropriate selection is made by a user to initiate Wi-Fi activity.
[0025] Using the loss of a location information source as a triggering event (i.e., the triggering event 50) addresses a situation where the mobile station may control Wi-Fi capability based on known location information. For example, a user of a mobile station may typically activate Wi-Fi communication capability when they enter their home or office building. Various sources of location information are available to different mobile stations. The triggering event 50 recognizes that if a mobile station loses contact with a source of location information (e.g., loses sight of GPS satellites), it may be beneficial to probe for Wi-Fi access at that time. Additionally, the example triggering event 50 allows for potentially establishing a Wi-Fi connection, which can be used to obtain location information.
[0026] Whenever one of the triggering events 42 - 50 occurs, the Wi-Fi capability of a mobile station is turned on and a Wi-Fi probing mode begins at 54. Activating the Wi-Fi communication capability responsive to one of the triggering events in this manner allows for selectively turning on the Wi-Fi communication capability only when it is potentially useful or needed. At 56, a determination is made whether a Wi-Fi access point is detected in the vicinity of the current location of the mobile station. When Wi-Fi network is detected and through which DMS service is accessible (e.g., successful registration with a VoIP gateway), that is considered a DMS zone. In one example, just recognizing a Wi-Fi network is not considered sufficient to identify a DMS zone. Instead, in such an example, a DMS zone is discovered when the Wi-Fi network is discovered and a connection to some VoIP gateway over that particular Wi-Fi network is possible. In the example of FIG. 2A, if no DMS zone is found, the Wi-Fi capability of the mobile station is turned off at 58 and the process returns to the step at 36.
[0027] In the event that a DMS zone is found (e.g., a Wi-Fi access point is available and it is possible to register with a VoIP gateway), information regarding the current mobile station location is collected from the mobile station at 60. As shown in FIG. 2B, the location information is then compared to previously stored Wi-Fi availability locations from a location list, which is stored on the mobile station, for example. If the location of the located DMS zone is not already on the list based upon the determination made at 62, a new location is added to the location list at 64. In the example of FIG. 2B, at the same time, a timestamp is set in association with that location entry to keep track of when the last time the mobile station was in that location. If the DMS zone was already in the location list or once it has been added to the list, a Wi-Fi connection begins at 66 by initiating the appropriate authentication and registration procedures through the Wi-Fi access point. This portion of the process occurs in a known manner. Once the appropriate authentication and registration is completed, the DMS zone is considered attached at 68 and the Wi-Fi communication capabilities of the mobile station remain active.
[0028] In one example, the mobile station 20 has a service set identifier (SSID) whitelist of known SSIDs stored in memory. When the SSID of a discovered DMS zone is on the whitelist, that is a known DMS zone. The mobile station 20 may discover a new DMS zone when it detects an unknown SSID by attempting to go through the due authentication and registration procedures. That SSID is added to the known SSID whitelist if the due authentication and registration procedures are performed successfully with a served network. One example includes always attempting to locate a known DMS zone based on the known SSIDs before attempting to identify new or previously unknown SSIDs.
[0029] Referring to FIG. 3, once the Wi-Fi capabilities are active, they remain active until a user disconnects from the Wi-Fi access point manually or leaves the area of coverage of that DMS zone. In the example of FIG. 3, even though the DMS probe timer expires at 70, no action is taken at 72 and the Wi-Fi capabilities of the mobile station remain active. At 74, the mobile station leaves the existing DMS zone. At 76 the Wi-Fi capabilities of the mobile station are automatically turned off. Then, the DMS probe timer is reinitiated at 34 and the process continues to the step 36 as shown in FIG. 2A.
[0030] In FIG. 2A, when the triggering event 52 occurs, the WCM 28 detects an update regarding a location of the mobile station. This may be the result of user movement between different locations, for example. A decision is made at 80 whether the current location is found in the location information already in the location list, which indicates where Wi-Fi capability is known to be available. If the current location of the mobile station does not correspond to a location determined to have Wi-Fi capability, the Wi-Fi capability of the mobile station remains inactive. If the current location of the mobile station corresponds to a location where Wi-Fi communications are available, the Wi-Fi capability is turned on at 82 and previously stored information regarding the Wi-Fi network at that location is used to begin the process of establishing a Wi-Fi connection. A decision is made at 84 whether the DMS zone is actually available. This recognizes that in some circumstances a Wi-Fi access point may be reconfigured or moved so that it is no longer available where one had previously been available.
[0031] This portion of the example process continues in FIG. 2B where the current time is added at 86 to a record regarding that DMS zone to indicate the most recent time that the mobile station visited that DMS zone. At 88, the client registration begins to establish a Wi-Fi connection. Assuming that is successful, the DMS zone is attached at 68.」(2ページ左欄?3ページ左欄)
(当審仮訳:
[0020] 図2A及び2Bは,WiFi通信能力を提供する第1部分24の運用を管理するための一つの例示的アプローチをまとめたフローチャートダイアグラム30を含む。その例示的アプローチは,Wi-Fi通信が利用可能なときにのみ,第1部分24をアクティベートすることを可能にするものであり,それは,第1部分24をいつもアクティブなままにしておく必要がないようにする。第1部分24を選択的にアクティベートすることのみによって,図示された例示は,バッテリーパワーを節約し,例えば,処理の要求を減らすことを可能にする。
[0021] 図2A及び2Bの例示的なプロセスは,32で始まる。34で,DMS探査タイマがセットされる。36で示されるように,モバイルステーションのWi-Fi能力は,アクティブではない。換言すると,そのエリア内でWi-Fi通信が可能であるようなエリアであるDMSゾーンへのアタッチメントがない。Wi-Fi能力がオフにされたときはいつも,複数のあらかじめ選択されたトリガリングイベント40のうちの少なくとも1つが発生するまで,それらはオフのままである。図2Aの例において,そのトリガリングイベント40は,42での到来するセルラー呼,44での発信する呼セットアップ,46でのDMS探査タイマの期限切れ,48でのユーザが開始した探査リクエスト,50での位置情報ソースの喪失,及び,52での位置情報のアップデートを含む。そのモードにおいてモバイルステーション(たとえば,第1の部分24)が現在のモバイルステーションの位置の近傍におけるWi-Fiアクセスポイントを探すようなWi-Fi探査モード,を開始するために,例示のトリガリングイベントのうちの任意の一つが用いられるであろう。
[0022] Wi-Fi探索モードを開始するために,到来するセルラー呼,又は,発信する呼セットアップ(すなわち,図示された例におけるトリガリングイベント42及び44)を用いることは,例えば,潜在的なコストの低減を可能にする。多くの状況において,直接,セルラーネットワーク接続を用いることと比べて,Wi-Fi接続を通じた呼は,より安価に扱われ,かつ,高いビットレートでより良好な品質で伝達され得る。図2Aの例は,可能であればいつでも,その呼を扱うことを目的としたWi-Fi接続の確立の可能性を認識する。Wi-Fi能力がアクティブでないとしても,到来するセルラー呼,又は発信する呼セットアップが始まるときはいつも,例えば,その呼が,Wi-Fi接続を用いて扱われてもよいかどうかを判断するために,モバイルステーションのWi-Fi能力がオンにされる。
[0023] DMS探索タイマ(すなわち,トリガリングイベント46)を使用することは,たとえ他のトリガリングイベントが発生していなくても,Wi-Fi能力を周期的にチェックすることを可能にする。
[0024] 図2Aの例はまた,モバイルステーションのユーザが,Wi-Fi接続の確立を試みることを希望するかもしれないことを認識する。
[0025] あるトリガリングイベント(すなわち,トリガリングイベント50)として,位置情報ソースの喪失を用いることは,モバイルステーションが,既知の位置情報に基づいて,Wi-Fi能力を制御するかもしれないという状況に対処する。例えば,彼らが,彼らの家又はオフィスビルに入ったときに,モバイルステーションのユーザは通常,Wi-Fi通信能力をアクティベートする。異なるモバイルステーションに対して,様々な位置情報のソースが利用可能である。トリガリングイベント50は,もしモバイルステーションが位置情報のソースとの接触を失った(例えば,GPS衛星を見失った)ら,そのときにWi-Fiアクセスを探索することが有益であり得ること,を認識する。加えて,その例示されたトリガリングイベント50は,位置情報を取得するために用いられ得るWi-Fi接続を潜在的に確立することを可能にする。
[0026] トリガリングイベント42-50のうちの一つが発生したときはいつも,モバイルステーションのWi-Fi能力はオンにされ,かつ,54で,Wi-Fi探索モードが始まる。それらのトリガリングイベントのうちの一つに応じてWi-Fi通信能力をアクティベートすることは,潜在的に有用又は必要であるときにのみ,Wi-Fi通信能力がオンにされることを可能にする。56において,モバイルステーションの現在の位置の近傍で,Wi-Fiアクセスポイントが検出されるかどうかについて判定がなされる。Wi-Fiネットワークが検出され,かつ,そのネットワークを通じてDMSサービスがアクセス可能である(例えば,VoIPゲートウエイへ成功裏に登録する)とき,それは,DMSゾーンとみなされる。一つの例において,単にWi-Fiネットワークを認識することが,DMSゾーンを識別するのに十分であるとはみなされない。代わりに,そのような一つの例において,Wi-Fiネットワークが発見され,かつ,その特定のWi-Fiネットワークを介して,あるVoIPゲートウェイに対する接続が可能であるとき,DMSゾーンは発見される。図2Aの例において,もしDMSゾーンが見つからなかったとすると,58でモバイルステーションのWi-Fi能力はオフにされ,また,そのプロセスは36のステップに戻る。
[0027] DMSゾーンが発見された(例えば,あるWi-Fiアクセスポイントが利用可能で,かつ,VoIPゲートウエイに登録することができる)場合に,60で,現在のモバイルステーションの位置に関する情報が,そのモバイルステーションから収集される。そして,図2Bに示されるように,その位置情報は,例えば,モバイルステーションに格納された位置リストからの,以前に格納されたWi-Fiが利用可能な位置と,比較される。62での判定に基づいて,もし,DMSゾーンが存在する位置が,既にそのリストに載っていたのでなければ,64で,その位置リストに新しい位置が追加される。図2Bのその例において,同時に,モバイルステーションがその位置にいた最後の時刻がいつなのかの追跡を維持するための位置エントリに関連付けて,タイムスタンプがセットされる。もし,DMSゾーンが,位置リスト中に既にあったか,又は,以前にそのリストに追加されたことがあったとすれば,66で,Wi-Fiアクセスポイントを通じて適切な認証及び登録手続きが開始されることによって,Wi-Fi接続が開始する。この処理の部分は,既知のやり方で行う。ひとたび適切な認証及び登録が完了すると,68で,そのDMSゾーンはアタッチされたとみなされ,そして,モバイルステーションのWi-Fi通信能力は,アクティブなままにされる。
[0028] 一つの例において,モバイルステーション20は,メモリに格納されている,既知のSSIDのサービスセット識別子(SSID)ホワイトリストを有する。発見されたあるDMSゾーンのSSIDが,そのホワイトリストに載っていたとき,それは,既知のDMSゾーンである。モバイルステーション20は,知らないSSIDを発見するとき,行われるべき認証及び登録手続きの遂行を試みることによって,新しいDMSゾーンを発見するかもしれない。もし,提供されたネットワークを用いて,行われるべき認証及び登録手続きが首尾よく遂行されるならば,そのSSIDは,既知のSSIDホワイトリストに,追加される。一つの例は,新しい又は以前は知られていなかったSSIDを特定することを試みる前に,既知のSSIDに基づいて,既知のDMSゾーンの位置を特定することを常に試みることを含む。
[0029] 図3を参照すると,ひとたびWi-Fi能力がアクティブになると,ユーザが,そのWi-Fiアクセスポイントから手動で切断するか,又は,DMSゾーンのカバレッジのエリアから立ち去るかするまで,それらはアクティブなままである。図3のその例において,70でDMS探索タイマが期限切れになったとしても,72でアクションは取られず,そしてモバイルステーションのWi-Fi能力はアクティブなままである。74で,そのモバイルステーションが,存在しているDMSゾーンから離れる。そうすると,図2Aに示されているように,34で,そのDMS探索タイマは再起動され,そして処理はステップ36へと続く。
[0030] 図2Aにおいて,トリガリングイベント52が発生したとき,WCM28は,モバイルステーションの位置についての更新を検出する。これは,ユーザの異なる位置間の移動の結果であり得る。80で,位置情報中の現在の位置が,Wi-Fi能力が利用可能なことが既知である場所であることを示す位置リスト中にすでに見つけられたかどうかの決定が行われる。もし,モバイルステーションの現在の位置が,Wi-Fi能力が利用可能な位置に対応しないのであれば,そのモバイルステーションのWi-Fi能力は,インアクティブなままである。もし,モバイルステーションの現在の位置が,Wi-Fi通信が利用可能な位置に対応するのであれば,82で,そのWi-Fi能力はオンにされ,また,以前に格納された,その位置でのWi-Fiネットワークに関する情報は,Wi-Fi接続の確立の処理を開始するために用いられる。84で,そのDMSゾーンが実際に利用可能かどうかについての決定がなされる。これは,いくつかの状況では,Wi-Fiアクセスポイントが再構成されたか,移動されたかもしれず,そのため,以前はそれが利用可能であった場所で,もはやそれが利用可能でないということを,認識する。
[0031] この例の処理の部分は,86で,モバイルステーションがそのDMSゾーンを訪れた最も最近の時刻を示すために,現在の時刻が,DMSゾーンについてのレコードに追加されるところの図2Bへと続く。88で,Wi-Fi接続を確立するために,クライアント登録が始まる。それが成功すると,68でそのDMSゾーンはアタッチされる。)

(エ)図2A及び図2Bは,それぞれ,以下のとおりである(図面中の下線も当審で付与したものである。)。

[図2A]

(ステップ52,56,60,80,82の当審仮訳は,それぞれ以下のとおりある。
52:「位置情報の更新」
56:「新しいDMSゾーンが見つかったか?」
60:「端末から位置情報を集める」
80:「位置情報は,その位置リスト中に既にあるか?」
82:「WiFiをオンにし,かつ,既知のWiFiネットワークを選択する」
残りのステップの当審仮訳は省略する。)

[図2B]

(ステップ64の当審仮訳は,以下のとおりである。
64:「新しい位置項目を追加し,かつ,<LAST_TIMESTAMP>=今を,位置リスト上にセットする」
残りのステップの当審仮訳は省略する。)

上記記載及び無線通信の分野における技術常識を考慮すると,
a 上記(エ)の図2A及び図2B,並びにこれらの図面に関連した上記(ウ)において記載された,フローチャートダイアグラム30([0030])に関連する処理は,いずれも,モバイルステーションによって実行されることは明らかである。

b 上記(ウ)の[0030]における記載によれば,ステップ80では,「位置情報中の現在の位置が,Wi-Fi能力が利用可能なことが既知である場所であることを示す位置リスト中にすでに見つけられたかどうかの決定が行われる」ものであるところ,このステップ80で用いられる「位置リスト」は,上記(ウ)の[0027]における記載によれば,Wi-Fiアクセスポイントが利用可能である場合などの条件を満たすときに,位置を追加することなどを通じて作成されるものであるから,Wi-Fiアクセスポイントが利用可能なことが既知である場所であることを示すものと解される。
そうすると,上記(エ)の図2Aにおける記載によれば,位置情報が位置リスト中に既にある場合(ステップ80がYESの場合),ステップ82で,「WiFiをオンにし,かつ,既知のWiFiネットワークを選択する」ものであるが,このステップ82で,既知のWi-Fiアクセスポイントを選択していることは明らかである。
さらに,上記(ア)の[0006]ないし[0007]における記載によれば,引用例1には,Wi-Fi能力の手動のアクティベーションを必要とせず,かつWi-Fiネットワークカードを恒久的にスイッチオンすることを必要としない,モバイルステーションのためのWi-Fi能力の自動的な管理をする方法に関するものが示されているといえるが,ステップ82についての上記検討によれば,引用例1には,それに加えて,Wi-Fiアクセスポイントを選択する方法が記載されているということもできる。

c 上記(ウ)の[0027]及び上記(エ)の図2Bにおける記載によれば,ステップ64は,モバイルステーションがその位置にいた最後の時刻がいつなのかの追跡を維持するための位置エントリに関連付けて,タイムスタンプを今(NOW(図2B))にして,位置リスト情報にセットするステップを含むと解される。そうすると,上記ステップ64において,モバイルステーションによって今の時刻を取得していることは明らかである。

d 上記(ウ)の[0030]及び上記(エ)の図2Aにおける記載によれば,トリガリングイベント52が発生するとき,モバイルステーションの位置についての更新を検出し,またステップ80で,現在の位置が,Wi-Fi能力が利用可能なことが既知である場所であることを示す位置リスト中に既にあるかを決定するものであるが,そのような位置についての更新の検出及び決定を行うためにモバイルステーションの現在の位置を検出していると解することが自然である。

e 上記(ウ)の[0030]及び上記(エ)の図2Aにおける記載,並びに上記bによれば,トリガリングイベント52が発生してモバイルステーションの位置についての更新を検出すると,その後のステップ80で,前記モバイルステーションの現在の位置が,Wi-Fi能力が利用可能なことが既知である場所であることを示す位置リスト中に既にあるかを決定し,もし,モバイルステーションの現在の位置が,Wi-Fi通信が利用可能な位置に対応するのであれば,ステップ82で,Wi-Fi能力をオンにし,かつ,Wi-Fiアクセスポイントを選択(上記bを参照)するといえる。
ここで,上記の[0030]には「Wi-Fi能力が利用可能なことが既知である場所であることを示す位置リスト」という記載があるが,上記bに示したとおり,ここでいう「位置リスト」は,「Wi-Fiアクセスポイントが利用可能なことが既知である場所であることを示す」ものと解することができる。
さらに,上記ステップ82の上記「Wi-Fi能力をオンにし,」に関し,上記(イ)の[0017]における記載によれば,モバイルステーションが含むとされる,Wi-Fi通信能力を含む第1部分は,Wi-Fiネットワークカードからなるものであるから,上記「Wi-Fi能力をオンにし,」は,モバイルステーション内のWi-Fiネットワークカードをオンにするといえる。

f 上記(ウ)の[0030]における記載によれば,以前に格納された,その位置でのWi-Fiネットワークに関する情報は,Wi-Fi接続の確立の処理を開始するために用いられるが,そのような情報を用いて,実際に,選択されたWi-Fiアクセスポイント(上記bを参照)に対してWi-Fi接続の確立の処理を開始することは当然のことである。

以上を総合すると,引用例1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「Wi-Fi能力の手動のアクティべーションを必要とせず,かつWi-Fiネットワークカードを恒久的にオンすることを必要としない,モバイルステーションのためのWi-Fi能力の自動的な管理をし,Wi-Fiアクセスポイントを選択する方法であって,
前記モバイルステーションによって今の時刻を取得することと,
前記モバイルステーションの現在の位置を前記モバイルステーションによって検出することと,
前記モバイルステーションの位置についての更新を検出すると,前記モバイルステーションの現在の位置が,Wi-Fiアクセスポイントが利用可能なことが既知である場所であることを示す位置リスト中に既にあるかを前記モバイルステーションによって決定することと,
もし,前記モバイルステーションの現在の位置が,Wi-Fiアクセスポイントが利用可能な位置に対応するのであれば,前記モバイルステーション内のWi-Fiネットワークカードを前記モバイルステーションによってオンにすることと,
Wi-Fiアクセスポイントを選択して,Wi-Fi接続の確立の処理を前記モバイルステーションによって開始すること
を含む方法。」

イ 公知技術
原査定の拒絶の理由で引用された特開2008-278313号公報(以下,「引用例2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「【0041】
(5)通信制御エリアを限定して行う通信制御処理手順
次に、ポータブルNV装置1の制御部20では、上述したようにウォードライビング中に探索し得た複数の無線アクセスポイントを順次登録した後、それらの無線アクセスポイントを介してサーバとの間でデータ通信を行うタイミングを制御する通信制御処理について説明する。
【0042】
図6に示すようにポータブルNV装置1の制御部20は、不揮発性メモリ21からRAM22上に立ち上げたアプリケーションプログラムに従い、ルーチンRT2の開始ステップから入って次のステップSP11へ移り、上述したようにウォードライビング中に自動的に登録した無線アクセスポイントの通信可能範囲内に当該ポータブルNV装置1が位置するか否かを判定する。
【0043】
例えば図7に示すように、ポータブルNV装置1の制御部20は、ナビゲーション画面G2に表示した無線アクセスポイントアイコンAP1及びAP2に対して、その通信可能範囲を例えば半径50mであると想定し、当該通信可能範囲をサークルWA1及びWA2によって表示するようになされており、そのサークルWA1、WA2の範囲内に自車アイコンP1が存在するときは無線アクセスポイントの通信可能範囲であることをユーザに対して認識させ得るようになされている。
【0044】
従ってステップSP11で否定結果が得られると、このことは自車アイコンP1がサークルWA1、WA2の範囲内に存在せず、無線アクセスポイントAP1、AP2に対する通信可能範囲外にポータブルNV装置1が位置していることを表しており、このときポータブルNV装置1の制御部20は自車アイコンP1がサークルWA1、WA1の範囲内に位置するようになるまで待ち受ける。
【0045】
これに対してステップSP11で肯定結果が得られると、このことは車両走行中に自車アイコンP1が無線アクセスポイントアイコンAP1、AP2のサークルWA1、WA2の範囲内に位置し、無線アクセスポイントの通信エリアに入ったことを表しており、このときポータブルNV装置1の制御部20は次のステップSP12へ移る。
【0046】
ステップSP12においてポータブルNV装置1の制御部20は、自車アイコンP1がサークルWA1又はWA2の範囲内に存在するため、無線通信ユニット28によるワイヤレス通信機能をオン状態に設定することにより、そのサークルWA1又はWA2の範囲内に設置されている無線アクセスポイントに対して無線通信ユニット28によるワイヤレス通信接続を開始し、次のステップSP13へ移る。
【0047】
ステップSP13においてポータブルNV装置1の制御部20は、無線アクセスポイントを介して所定のサーバとデータ通信を行う際、車両走行中である以上、通信可能範囲であるサークルWA1、WA1の範囲内に短時間しか存在し得ないため、例えばRSS(Rich Site Summary)、電子メール、ポッドキャストの音楽データ等の優先順位を設け、その
優先順位に従ってデータ通信を行い、次のステップSP14へ移る。
【0048】
この場合、制御部20は、車両走行中であるため、無線アクセスポイントを介して所定のサーバとデータ通信を行う時間が非常に短いことを考慮し、データ量の少ないRSS、電子メール、音楽データ等の順番で優先順位を設定することにより、短時間であっても、そのデータが欠けることなく完全に取得し得るようになされている。
【0049】
なおRSSとは、インターネット上のホームページに接続したとき、このホームページの見出しや要約などがXML(eXtensible Markup Language)形式で記述されたメタデータであり、主にサイトの更新情報を公開するのに用いられているものである。
【0050】
ステップSP14においてポータブルNV装置1の制御部20は、無線通信ユニット28が無線アクセスポイントと通信接続できているか否かに基づいて、無線アクセスポイントの通信可能範囲内に未だ存在しているか否かを判定する。
【0051】
ここで肯定結果が得られると、このことは自車アイコンP1がサークルWA1又はWA2の範囲内に存在し、すなわち無線アクセスポイントの通信可能範囲内に車両が未だ存在しており、無線通信ユニット28と無線アクセスポイントとが通信接続可能な状態にあることを表しており、このときポータブルNV装置1の制御部20は、ステップSP12へ戻って無線通信ユニット28によるワイヤレス通信機能をオン状態に設定したまま、データ通信を継続する。
【0052】
これに対してステップSP14で否定結果が得られると、このことは自車アイコンP1がサークルWA1又はWA2の範囲外へ移動し、すなわち無線アクセスポイントの通信可能範囲外に車両が存在しており、無線通信ユニット28と無線アクセスポイントとが通信接続可能な状態にはないことを表しており、このときポータブルNV装置1の制御部20は次のステップSP15へ移る。
【0053】
ステップSP15においてポータブルNV装置1の制御部20は、無線通信ユニット28が無線アクセスポイントと通信接続可能な状態ではなくなったので、当該無線通信ユニット28によるワイヤレス通信機能をオフ状態に切り換えることによりバッテリ29の電力消費を低減させ、次のステップSP16へ移って通信制御処理手順を終了する。」

(イ)「【0063】
さらに上述の実施の形態においては、無線アクセスポイントの通信可能範囲にポータブルNV装置1が位置しているときのみ、無線通信ユニット28によるワイヤレス通信機能をオン状態に設定し、当該無線アクセスポイントを介してサーバとデータ通信するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、確実に無線アクセスポイントと通信可能な例えば、家の敷地内、会社の敷地内にポータブルNV装置1が位置していることをGPS情報に基づいて判断したときのみ、無線通信ユニット28によるワイヤレス通信機能をオン状態に設定し、当該無線アクセスポイントを介してサーバとデータ通信したり、家の敷地内、会社の敷地内であって、かつ制御部20のタイマー機能により所定の時間帯にあるときのみ、無線通信ユニット28によるワイヤレス通信機能をオン状態に設定し、当該無線アクセスポイントを介してサーバとデータ通信するようにしても良い。」

これらの記載によれば,引用例2には,確実に無線アクセスポイントと通信可能にするために,「家の敷地内、会社の敷地内に装置が位置していることをGPS情報に基づいて判断し、かつタイマー機能により所定の時間帯にあるときのみ、ワイヤレス通信機能をオン状態に設定し、無線アクセスポイントを介してサーバとデータ通信する。」(以下,「公知技術」という。)ことが記載されていると認められる。

(3)対比・判断
本願補正発明と,引用発明とを対比すると,
ア 引用発明の「モバイルステーション」,「Wi-Fiアクセスポイント」,及び「Wi-Fiネットワークカード」は,それぞれ,本願補正発明の「モバイル・デバイス」,「Wi-Fiアクセス・ポイント」,及び「Wi-Fiトランシーバ」に相当する。

イ 引用発明の「Wi-Fi能力の手動のアクティべーションを必要とせず,かつWi-Fiネットワークカードを恒久的にオンすることを必要としない,モバイルステーションのためのWi-Fi能力の自動的な管理をし,Wi-Fiアクセスポイントを選択する方法」を,「モバイル・デバイスによるWi-Fiアクセス・ポイントのインテリジェント選択の方法」と称することは任意である。

ウ 引用発明は「モバイルステーションによって今の時刻を取得すること」を含むところ,当該「モバイルステーション」は,パーソナルデジタルアシスタント,並びに,ノートブックの若しくはラップトップのコンピュータを含み得るものであり,これらがプロセッサを含むことは技術常識である。
したがって,時刻をネットワークから受信するかどうかはさておき,本願補正発明と,引用発明とは,「プロセッサを含むモバイル・デバイスによって時刻を取得するステップ」を含む点で共通する。

エ 引用発明の「位置リスト」は,「Wi-Fiアクセスポイントが利用可能なことが既知である場所であることを示す位置リスト」であり,本願補正発明でいう「既知の位置のデータベース」としての機能を果たしている。
また,引用発明では,「前記モバイルステーションの現在の位置を前記モバイルステーションによって検出」して「前記モバイルステーションの現在の位置が,Wi-Fiアクセスポイントが利用可能なことが既知である場所であることを示す位置リスト中に既にあるかを前記モバイルステーションによって決定すること」により決定された結果(位置リスト中に既にある/ない)が,現在の位置でWi-Fiアクセスポイントが利用可能か否かを示していることは明らかであるから,モバイルステーションの現在の位置を検出し,その現在の位置が位置リスト中に既にあるかを決定することは,本願補正発明の「前記モバイル・デバイスの位置を前記モバイル・デバイスによって評価するステップ」及び「前記位置での1つまたは複数のWi-Fiアクセスポイントの可用性を判定するステップ」に相当する。
さらに,引用発明において,現在の位置が,位置リスト中に既にあるかを決定するためには,現在の位置を位置リストと「比較する」必要があるから,「前記モバイルステーションの現在の位置が,Wi-Fiアクセスポイントが利用可能なことが既知である場所であることを示す位置リスト中に既にあるかを前記モバイルステーションによって決定すること」は,本願補正発明の「判定する前記ステップは、前記モバイル・デバイスの位置を既知の位置のデータベースと比較するステップを含み」に相当する。
加えて,引用発明の位置リストは,Wi-Fi探索モードでWi-Fiアクセスポイントが検出され,またWi-Fiアクセスポイント利用可能である等の場合に,DMSゾーンが存在する位置として現在のモバイルステーションの位置に関する情報が追加されていく(上記(2)ア(ウ)の[0026]?[0027]を参照。)ことを前提としているから,その位置リストに含まれる複数の位置の各々は,1つ又は複数のWi-Fiアクセスポイントに関連付けられているものであり,引用発明はその点で,本願補正発明の「各既知の位置は、前記1つまたは複数のWi-Fiアクセス・ポイントに関連付けられる」ということと一致する。
そうすると,引用発明の「前記モバイルステーションの現在の位置を前記モバイルステーションによって検出」及び「前記モバイルステーションの現在の位置が,Wi-Fiアクセスポイントが利用可能なことが既知である場所であることを示す位置リスト中に既にあるかを前記モバイルステーションによって決定すること」は,本願補正発明の「前記モバイル・デバイスの位置を前記モバイル・デバイスによって評価するステップ」と「前記位置での1つまたは複数のWi-Fiアクセス・ポイントの可用性を前記モバイル・デバイスによって判定するステップであって、判定する前記ステップは、前記モバイル・デバイスの位置を既知の位置のデータベースと比較するステップを含み、各既知の位置は、前記1つまたは複数のWi-Fiアクセス・ポイントに関連付けられる、ステップ」に相当する。

オ 引用発明の「前記モバイルステーション内のWi-Fiネットワークカードを前記モバイルステーションによってオンにする」は,本願補正発明の「前記モバイル・デバイス内のWi-Fiトランシーバを前記モバイル・デバイスによってアクティブ化する」と,表現が異なるだけで差異は無い。
また,引用発明の「もし,モバイルステーションの現在の位置が,Wi-Fiアクセスポイントが利用可能な位置に対応するのであれば,」という条件を満たすかどうかは,上記エで示した位置リストを用いた決定の結果によるところ,当該位置リストは,Wi-Fiアクセスポイント利用可能である等の場合に現在の位置に関する情報が追加されていくものである(上記エを参照)ことを鑑みれば,位置リストに特定の位置が含まれている場合,それは,Wi-Fiアクセスポイントがその特定の位置にある(Wi-Fiアクセスポイントが検出された)ということのみならず,その特定の位置でWi-Fiアクセスポイントが利用可能であるということも示している。
したがって,本願補正発明と,引用発明とは,スケジュールについての条件に基づく判定に応答するかどうかはさておき,少なくとも「前記1つまたは複数のWi-Fiアクセス・ポイントのうちのWi-Fiアクセス・ポイントが、複数の前記既知の位置のうちの1つの前記既知の位置に基づく前記位置にあり、前記Wi-Fiアクセス・ポイントが使用可能であることの判定に応答して、前記モバイル・デバイス内のWi-Fiトランシーバを前記モバイル・デバイスによってアクティブ化するステップ」を含むという点で共通する。

カ 引用発明の「Wi-Fiアクセスポイントを選択して,Wi-Fi接続の確立の処理をモバイルステーションによって開始するステップ」は,本願補正発明の「前記Wi-Fiアクセス・ポイントに接続するように前記モバイル・デバイスを前記モバイル・デバイスによってトリガするステップ」と,表現が異なるだけで差異はない。

以上を総合すると,本願補正発明と,引用発明とは,以下の点で一致し,また相違している。
[一致点]
「 モバイル・デバイスによるWi-Fiアクセス・ポイントのインテリジェント選択の方法であって、
プロセッサを含むモバイル・デバイスによって時刻を取得するステップと、
前記モバイル・デバイスの位置を前記モバイル・デバイスによって評価するステップと、
前記位置での1つまたは複数のWi-Fiアクセス・ポイントの可用性を前記モバイル・デバイスによって判定するステップであって、判定する前記ステップは、前記モバイル・デバイスの位置を既知の位置のデータベースと比較するステップを含み、各既知の位置は、前記1つまたは複数のWi-Fiアクセス・ポイントに関連付けられる、ステップと、
前記1つまたは複数のWi-Fiアクセス・ポイントのうちのWi-Fiアクセス・ポイントが、複数の前記既知の位置のうちの1つの前記既知の位置に基づく前記位置にあり、前記Wi-Fiアクセス・ポイントが使用可能であることの判定に応答して、前記モバイル・デバイス内のWi-Fiトランシーバを前記モバイル・デバイスによってアクティブ化するステップと、
前記Wi-Fiアクセス・ポイントに接続するように前記モバイル・デバイスを前記モバイル・デバイスによってトリガするステップと
を含む方法。」

[相違点]
(相違点1)
一致点である「プロセッサを含むモバイル・デバイスによって時刻を取得するステップ」に関し,
本願補正発明は,「プロセッサを含むモバイル・デバイスによってネットワークから時刻を受信するステップ」であるのに対し,
引用発明は,どのように時刻を取得するのか特定が無い点。

(相違点2)
一致点である「前記1つまたは複数のWi-Fiアクセス・ポイントのうちのWi-Fiアクセス・ポイントが、複数の前記既知の位置のうちの1つの前記既知の位置に基づく前記位置にあり、前記Wi-Fiアクセス・ポイントが使用可能であることの判定に応答して、前記モバイル・デバイス内のWi-Fiトランシーバを前記モバイル・デバイスによってアクティブ化するステップ」に関し,
本願補正発明は,「前記1つまたは複数のWi-Fiアクセス・ポイントのうちのWi-Fiアクセス・ポイントが、複数の前記既知の位置のうちの1つの前記既知の位置に基づく前記位置にあり、前記Wi-Fiアクセス・ポイントへの接続に関連するユーザ情報に関連付けられたスケジュールを時刻と前記位置とが満たし、前記Wi-Fiアクセス・ポイントが使用可能であることの判定に応答して、前記モバイル・デバイス内のWi-Fiトランシーバを前記モバイル・デバイスによってアクティブ化するステップ」であるのに対し,
引用発明は,当該「前記Wi-Fiアクセス・ポイントへの接続に関連するユーザ情報に関連付けられたスケジュールを時刻と前記位置とが満たし、」という特定が無い点。

そこで以下,各相違点について検討する。

(相違点1について)
無線通信システムにおいて,モバイルステーションがネットワーク側から時刻を取得することは常套手段であるから,引用発明の「前記モバイルステーションによって今の時刻を取得」することを,ネットワークから時刻を受信するステップとすることは,当業者が容易になし得る。

(相違点2について)
上記(2)イの項目で公知技術として示したとおり,確実に無線アクセスポイントと通信可能にするために,「家の敷地内、会社の敷地内に装置が位置していることをGPS情報に基づいて判断し、かつタイマー機能により所定の時間帯にあるときのみ、ワイヤレス通信機能をオン状態に設定し、無線アクセスポイントを介してサーバとデータ通信する。」ことは公知であり,上記装置が,上記「所定の時間帯」に,所定の位置といえる上記「家の敷地内、会社の敷地内」に位置し得ることは当然想定されており,また確実に通信可能な場所である「家」や「会社」はユーザごとに異なるものである。してみれば,上記相違点2の点は公知である。
そして,通信の分野において,通信をより確実なものとすることは,当業者にとって一般的な課題であるから,引用発明においても,より確実にWi-Fiアクセスポイントと通信可能にすることを目的として,公知技術のようなワイヤレス通信機能をオン状態に設定する条件を,Wi-Fiネットワークカードをオンにするための判定の条件と組み合わせようとする動機が存在する。
そうすると,引用発明の「前記モバイルステーション内のWi-Fiネットワークカードを前記モバイルステーションによってオンにすること」(「前記モバイル・デバイス内のWi-Fiトランシーバを前記モバイル・デバイスによってアクティブ化するステップ」)を,「前記1つまたは複数のWi-Fiアクセス・ポイントのうちのWi-Fiアクセス・ポイントが、複数の前記既知の位置のうちの1つの前記既知の位置に基づく前記位置にあり、前記Wi-Fiアクセス・ポイントへの接続に関連するユーザ情報に関連付けられたスケジュールを時刻と前記位置とが満たし、前記Wi-Fiアクセス・ポイントが使用可能であることの判定に応答」して行うようにすることは,公知技術に基づき当業者が容易になし得る。

また,上記の相違点1及び相違点2を総合的に勘案しても,本願補正発明の奏する作用,効果は,引用発明及び公知技術の奏する作用,効果から予測される範囲内のものに過ぎず,格別顕著なものということはできない。

(4)独立特許要件についてのまとめ
よって,本願補正発明は,引用発明及び公知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

( なお,本願補正発明の進歩性に関し,審判請求人は,審判請求書の「(6)理由1について」の「(a)引用文献1-4と請求項1-3,7,9に係る本願発明との対比」の項目において,以下のように主張している。
「また、引用文献2は、「家の敷地内、会社の敷地内であって、かつ制御部20のタイマー機能により所定の時間帯にあるときのみ、無線通信ユニット28によるワイヤレス通信機能をオン状態に設定し、当該無線アクセスポイントを介してサーバとデータ通信するようにしても良い。」と述べているに過ぎず、時刻と位置とが当該スケジュールを満たすか否かが判定されるような「ユーザ情報に関連付けられたスケジュール」を一切開示も示唆もするものではありません。引用文献2の「タイマー機能」は、単なるタイマー機能であり、「ユーザ情報に関連付けられたスケジュール」とは全く異なるものです。」(下線は審判請求人が付与。)
しかし,公知技術における,所定の位置(家の敷地内,会社の敷地内)と所定の時間帯とを組み合わせたものは,ユーザごとに異なるものであるから,装置の移動先として想定されている,ユーザ情報に関連付けられた所定の位置と所定の時間帯との列挙であり,本願補正発明の「ユーザ情報に関連付けられたスケジュール」と異なるところは無い。してみれば,上記の主張は採用できない。)

3 補正の却下の決定についてのまとめ
上記のとおりであるから,請求項1についてした上記補正は,特許法第184条の12第2項で読み替えた同法第17条の2第3項,同第4項及び同第5項の規定には違反しないものの,同第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,上記補正以外の他の補正事項について検討するまでもなく,本件補正は,同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記[補正の却下の決定の結論]で示したとおり,決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成28年11月25日付けでされた手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(本願発明)は,同年6月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである(上記「第2 補正の却下の決定」の「1 補正の概要」の項目で示した本願発明を再掲する。)。
「【請求項1】
モバイル・デバイスからのWi-Fiアクセス・ポイントのインテリジェント選択の方法であって、
プロセッサを含むモバイル・デバイスによってネットワークから時刻を受信するステップと、
前記モバイル・デバイスの位置を前記モバイル・デバイスによって評価するステップと、
前記位置での1つまたは複数のWi-Fiアクセス・ポイントの可用性を前記モバイル・デバイスによって判定するステップであって、判定する前記ステップは、前記モバイル・デバイスの位置を既知の位置のデータベースと比較するステップを含み、各既知の位置は、前記1つまたは複数のWi-Fiアクセス・ポイントに関連付けられる、ステップと、
前記時刻、前記位置およびユーザ・プロファイルに関連付けられた時間スケジュールに関連するルールを満たす前記1つまたは複数のWi-Fiアクセス・ポイントの前記可用性に応答して、前記モバイル・デバイス内のWi-Fiトランシーバを前記モバイル・デバイスによってアクティブ化するステップと、
Wi-Fiアクセス・ポイントに接続するように前記モバイル・デバイスを前記モバイル・デバイスによってトリガするステップと
を含む方法。」

2 引用発明,公知技術
引用発明及び公知技術は,上記「第2 補正の却下の決定」の2(2)ア及びイの項目でそれぞれ認定したとおりのものである。

3 対比・判断
そこで,本願発明と引用発明とを対比するに,本願発明は,本願補正発明から上記「第2 補正の却下の決定」の「1 補正の概要」の項目で示した補正に係る限定を省いたものである。
そうすると,引用発明の「もし,前記モバイルステーションの現在の位置が,Wi-Fiアクセスポイントが利用可能な位置に対応するのであれば,前記モバイルステーション内のWi-Fiネットワークカードを前記モバイルステーションによってオンにすること」は,ユーザ・プロファイルに関連付けられた時間スケジュールに関連するルールかどうかは別として,「前記位置に関連するルールを満たす前記1つまたは複数のWi-Fiアクセス・ポイントの前記可用性に応答して、前記モバイル・デバイス内のWi-Fiトランシーバを前記モバイル・デバイスによってアクティブ化するステップ」という点で,本願発明と共通するものであるから,本願発明と引用発明との相違点は,上記「第2 補正の却下の決定」の2(3)の項目で示した「(相違点1)」と,同項目で示した「(相違点2)」に代えた下記の相違点(以下,「相違点2’」という。)とである。

(相違点2’)
本願発明は,「前記時刻、前記位置およびユーザ・プロファイルに関連付けられた時間スケジュールに関連するルールを満たす前記1つまたは複数のWi-Fiアクセス・ポイントの前記可用性に応答して、前記モバイル・デバイス内のWi-Fiトランシーバを前記モバイル・デバイスによってアクティブ化するステップ」であるのに対し,
引用発明は,上記に係る「前記時刻、およびユーザ・プロファイルに関連付けられた時間スケジュールに関連するルール」という特定がない点。

そこで各相違点について検討すると,相違点1については,上記「第2 補正の却下の決定」の2(3)の「(相違点1について)」の項目で検討したとおり,当業者が容易になし得るものであり,また相違点2’については,公知技術として示したとおり相違点2’の点は公知であり,通信をより確実なものとするために,引用発明のWi-Fiネットワークカードをオンにするための判定の条件(ルール)と,公知技術のようなワイヤレス通信機能をオン状態に設定する条件(ルール)を組み合わせて,「前記時刻、前記位置およびユーザ・プロファイルに関連付けられた時間スケジュールに関連するルールを満たす前記1つまたは複数のWi-Fiアクセス・ポイントの前記可用性に応答して、前記モバイル・デバイス内のWi-Fiトランシーバを前記モバイル・デバイスによってアクティブ化するステップ」とすることは,当業者が容易になし得る。
よって,本願発明は,引用発明及び公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願の他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-12-20 
結審通知日 2017-12-21 
審決日 2018-01-05 
出願番号 特願2013-511386(P2013-511386)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 575- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 古市 徹▲高▼橋 真之  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 松永 稔
川口 貴裕
発明の名称 Wi-Fiインテリジェント選択エンジン  
代理人 岡部 讓  

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