• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1340474
審判番号 不服2017-8950  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-20 
確定日 2018-05-18 
事件の表示 特願2012-255052「遊技板」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月 5日出願公開、特開2014-100375〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成24年11月21日の出願であって、平成28年9月5日付けで拒絶の理由が通知され、平成28年10月13日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成29年3月21日付け(発送日:3月29日)で拒絶査定がなされ、それに対して、平成29年6月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、これに対し、当審において、平成29年12月28日付けで拒絶の理由が通知され、平成30年3月2日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2 本願発明
平成30年3月2日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、その請求項1に記載された事項により特定されるとおりであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである(A?Dは、分説するために当審にて付した。)。

「【請求項1】
A 透光性を有する樹脂材料により形成されたベースとなる板状の基材に、所定の絵柄を形成した絵柄層を積層した遊技板であって、
B 外部から入射した光を拡散させるための透光性を有する光拡散フィルムからなる光拡散層を前記基材の下方に貼り合わせた状態で積層し、
C 前記光拡散層は、入射した光を拡散する凹部及び凸部が形成された拡散面を有し、前記拡散面は、外部からの光が入射する入射面であり、
D 前記凹部及び凸部が露出する領域が形成されていることを特徴とする遊技板。」

3 拒絶理由通知の概要
平成29年12月28日付け拒絶理由通知は、平成30年3月2日付け手続補正書により補正される前の本願の請求項1?5に係る発明は、特開2010-228号公報に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

4 刊行物
(1)刊行物1に記載された発明
本願の出願日前に頒布され、平成29年12月28日付け拒絶理由通知で引用された刊行物である特開2010-228号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審にて付した。以下、同じ。)。

(1-a) 「【0026】
装飾板20は、遊技盤Bの盤面を構成するもので、この装飾板20は、図2及び図3にて示すごとく、透明シート21、一側図柄層22、遮蔽層23、他側図柄層24及び縮み層25でもって構成されている。
【0027】
透明シート21は、無色透明なポリエステル樹脂材料により矩形状に形成されている。一側図柄層22は、透明シート21の裏面に沿い層状に形成されている。この一側図柄層22は、図1から分かるように、図柄部22aを有しており、この図柄部22aは、一側図柄層22の右側下部にて形成されている。なお、図1において、図柄部22aは、本来、破線で示すべきであるが、便宜上、実線により示されている。」

(1-b) 「【0044】
ここで、装飾板20の形成方法について説明する。まず、上記ポリエステル樹脂材料として、所定の厚さ(例えば、0.4(mm)或いは0.53(mm)の厚さ)を有する無色透明のポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)からなるシート材料を準備する。そして、このシート材料を矩形状に切断して、透明シート21用原シート1とする(図4参照)。
【0045】
ついで、4色(シアン、マゼンダ、イエロー、ブラック)のインクでもって、オフセット印刷機(図示しない)により、原シート1の裏面に沿い層状にオフセット印刷して、一側図柄層22用原印刷層2を形成する(図4参照)。このとき、図柄部22aを、原印刷層2の右側下部に位置するようにオフセット印刷により青色に形成し、原印刷層2の図柄部22a以外の部位を、所定のカラー印刷パターンにて、上記フルカラー背景色となるようにオフセット印刷する。ここで、原印刷層2は、上述のごとくオフセット印刷されているため、この原原印刷層2の厚さは、通常、約2(μm)?4(μm)の範囲以内の値となり、一側図柄層22の上記透光可能な薄さを満たす。」

(1-c) 「【0049】
ついで、シルク印刷機或いはスクリーン印刷機により、紫外線硬化性インクを用いて原印刷層4の裏面に沿い層状に縮み印刷して縮み層25用原印刷層5を形成する(図7参照)。ここで、原印刷層5は、その縮み構成により、上記光拡散特性を有する。これにより、装飾板20に対応する原板6(図7参照)の形成が終了する。なお、縮み印刷とは、紫外線硬化性インクの印刷後紫外線照射による硬化で縮ませる処理をいう。
【0050】
最後に、上述のように形成した原板6を、図8にて示すように、切り抜く。ここで、原板6は上述のような構成を有するので、図8にて示すように切り抜かれた原板6は、透明シート21、一側図柄層22、遮蔽層23、他側図柄層24及び縮み層25を積層してなる装飾板20となる(図8参照)。これにより、装飾板20の形成が終了する。そして、このように装飾板20を形成した後は、当該装飾板20を、その縮み層25側から、基板10の表面に透明の接着剤により貼着する。」

(1-d) 「【0056】
ここで、縮み層25は、上述のごとく光拡散特性を有するため、基板10からの入射光を拡散させる。このため、図柄部24aに入射する各青色光は、図柄部24aの全体に亘り均一な輝度の青色拡散光となって、図柄部24aを透過するとともに、図柄部24bに入射する各赤色光は、図柄部24bの全体に亘り均一な輝度の赤色拡散光となって、図柄部24bを透過する。但し、図柄部24aは上述のごとくくりぬき形成されているため、図柄部24aに入射する青色拡散光は、そのままの色にて、当該図柄部24aを通過する。また、図柄部24bの枠及び文字列は、上述のごとく赤色に形成されているため、図柄部24bに入射する赤色拡散光は、図柄部24bの枠及び文字列を赤色で強く光らせるようにして当該図柄部24bを透過する。」

(1-e) 「【0063】
また、上述のように基板10が無色透明であるから、一側及び他側の各図柄層22、24の各図柄部は、遊技盤B上の障害釘71や風車50c等の役物の位置に影響されることなく、自由に位置させることができるので、装飾板20のデザインの自由度が向上し得る。また、上述のように基板10が無色透明であるから、各光源30、40からの光は、当該基板10のどの部位をも透過できるので、光を装飾板20に向けて通過させるに要する貫通穴をわざわざ基板に設ける必要もない。
(第2実施形態)
図10及び図11は、本発明の第2実施形態の要部を示している。この第2実施形態では、上記第1実施形態にて述べた遊技盤Bにおいて、基板10及び装飾板20に代えて、基板10A及び装飾板20Aが採用されている。
【0064】
基板10Aは、複数のベニヤ板を積層してなるもので、上記第1実施形態にて述べた基板10の左側対向部位10a及び右側対向部位10bに対する基板10Aの各対応部位には、図10或いは図11にて示すごとく、各貫通穴部10c、10dが形成されている。
【0065】
装飾板20Aは、上記第1実施形態にて述べた装飾板20において、台紙26を付加的に採用した構成を備えている。台紙26は、装飾板20の縮み層25に沿いその裏面側から接着剤でもって接着されており、この台紙26には、各開口部26a、26bが、図10或いは図11にて示すごとく、基板10Aの各貫通穴部10c、10dに対向するように形成されている。なお、本第2実施形態では、上記第1実施形態にて述べた障害釘群70の多数の釘71のうち、基板10Aの貫通穴部10cに対応する障害釘71は、廃止されている(図10参照)。」

(1-f) 「【0070】
なお、本発明の実施にあたり、上記各実施形態に限ることなく、次のような種々の変形例が挙げられる。
・・・
(9)一側図柄層22、遮蔽層23、他側図柄層24及び縮み層25は、上記実施形態にて述べたような印刷層に代えて、一側図柄層22、遮蔽層23、他側図柄層24及び縮み層25と同様の構成及び光学的特性を有する一側図柄フィルム、遮蔽フィルム、他側図柄フィルム及び光拡散フィルムで形成してもよい。」

上記(1-a)?(1-f)の記載事項及び図面から、以下(1-g)、(1-h)の事項が導かれる。

(1-g)図2には、21、22、23、24、25、10の符号が付された層を順に積層した構造が図示されている。

(1-h)刊行物1には、「この装飾板20は、図2及び図3にて示すごとく、透明シート21、一側図柄層22、遮蔽層23、他側図柄層24及び縮み層25でもって構成されている。」(段落【0026】)、「装飾板20を、その縮み層25側から、基板10の表面に透明の接着剤により貼着する。」(段落【0050】)と記載されている。そして、当該記載より、装飾板20は、基板10を含まないことは明らかである。また、刊行物1には、「透明シート21用原シート1」(段落【0044】)、「原シート1の裏面に沿い層状にオフセット印刷して、一側図柄層22用原印刷層2を形成する」(段落【0045】)と記載されているから、透明シート21の一側図柄層22が形成される側が、裏面側であるといえる。
また、上記認定事項(1-g)より、刊行物1には、透明シート21、一側図柄層22、遮蔽層23、他側図柄層24、縮み層25、基板10を順に積層した構造が記載されているといえ、上記の通り、基板10は装飾板20には含まれないから、縮み層25は、装飾板20における透明シート21の裏面側の最外層として形成されたものといえる。
さらに、刊行物1には、「縮み層25は、上述のごとく光拡散特性を有するため、基板10からの入射光を拡散させる。このため、図柄部24aに入射する各青色光は、図柄部24aの全体に亘り均一な輝度の青色拡散光となって、図柄部24aを透過する」(段落【0056】)と記載されており、基板10は透明シート21の裏面側に配置されるものであるから、刊行物1には、光拡散特性を有し、裏面側からの入射光を拡散させて透過させる縮み層25を透明シート21の裏面側の最外層として形成する点が記載されているといえる。

上記(1-a)?(1-f)の記載事項及び(1-g)、(1-h)の認定事項を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

「無色透明なポリエステル樹脂材料により形成されている透明シート21の裏面に沿って、オフセット印刷により図柄部22aを有する一側図柄層22を形成した、遊技盤Bの盤面を構成する装飾板20であって、(段落【0026】、【0027】、【0045】)
紫外線硬化性インクを用いて縮み印刷して形成され、光拡散特性を有し、裏面側からの入射光を拡散させて透過させる縮み層25を透明シート21の裏面側の最外層として形成し、縮み層25に代えて、同様の光学的特性を有する光拡散フィルムで形成してもよい装飾板20。(段落【0049】、【0070】、認定事項(1-h))」

5 対比、判断
(1)対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する(下記の(a)?(d)は、それぞれ、本願発明の構成A?Dに対応している。)。

(a)刊行物1発明の「無色透明なポリエステル樹脂材料」、「図柄部22aを有する一側図柄層22」及び「遊技盤Bの盤面を構成する装飾板20」は、それぞれ、本願発明の「透光性を有する樹脂材料」、「所定の絵柄を形成した絵柄層」及び「遊技板」に相当する。また、刊行物1発明の「透明シート21」は、その「裏面に沿って、オフセット印刷により図柄部22aを有する一側図柄層22を形成」するものであるから、本願発明の「基材」と同様に「ベースとなる」「基材」であるといえる。
したがって、刊行物1発明の「無色透明なポリエステル樹脂材料により形成されている透明シート21の裏面に沿って、オフセット印刷により図柄部22aを有する一側図柄層22を形成した、遊技盤Bの盤面を構成する装飾板20」は、本願発明の構成Aと、「透光性を有する樹脂材料により形成されたベースとなる」「基材に、所定の絵柄を形成した絵柄層を積層した遊技板」である点で共通する。

(b)まず、本願発明における「光拡散層を前記基材の下方に貼り合わせた状態で積層し」との事項の意味について検討する。
当該事項においては、光拡散層を基材と直接接触させた状態で貼り合わせる旨は特定されていない。また、本願の請求項1を引用する請求項2には、「前記絵柄層は、前記光拡散層の上方に積層されている」と特定されており、当該請求項2に対応する実施例である図5においては、光拡散層57と基材52とは間に第1絵柄層54を有しており直接接触した状態とはなっていない。また、本願明細書の段落【0063】には「光拡散層57と接着剤層56との間」と記載されており、光拡散層57と基材52には「間」があることも明らかである。さらに、図1においても、基材2と光拡散層4との間に接着剤層3を有しており、本願明細書の段落【0012】には「接着剤層3は、基材2と、光拡散層4との間に形成されており、基材2と光拡散層4とを貼り付けるために形成された層である。」と記載されているように、接着剤層3は基材2と光拡散層4との間にある層であるから、図1の実施形態の記載が、基材2と光拡散層4との間に別の層があることを妨げるものとはいえない。
以上より、本願発明の上記「光拡散層を前記基材の下方に貼り合わせた状態で積層し」との事項は、光拡散層と基材とを直接接触させた状態で貼り合わせることを意味するものではなく、単に光拡散層が基材の下方側に位置する状態で、貼り合わせた状態で積層されていることを意味すると解釈するのが相当である。

そして、刊行物1発明の「裏面側」は、本願発明の「下方」に相当する。また、刊行物1発明の「縮み層25」は、「光拡散特性を有し、裏面側からの入射光を拡散させて透過させる」ものであるから、本願発明の「光拡散フィルム」と同様に「外部から入射した光を拡散させるための透光性を有する」ものといえる。また、刊行物1発明において、「縮み層25に代えて、同様の光学的特性を有する光拡散フィルムで形成」した際の「光拡散フィルム」からなる層は、本願発明の「光拡散フィルムからなる光拡散層」に相当する。そして、「縮み層25に代えて、同様の光学的特性を有する光拡散フィルムで形成」した際には、「光拡散フィルム」を「縮み層25」と同様に「装飾板20」の「裏面側の最外層として」設け、また、「装飾板20」を構成する他の層と一体化させていることは明らかであるから、「縮み層25に代えて、同様の光学的特性を有する光拡散フィルムで形成」した際の「光拡散フィルム」からなる層は、「透明シート21」(基材)の「裏面側」(下方)に貼り合わせた状態で積層されているといえる。
したがって、刊行物1発明の「紫外線硬化性インクを用いて縮み印刷して形成され、光拡散特性を有し、裏面側からの入射光を拡散させて透過させる縮み層25を透明シート21の裏面側の最外層として形成し、縮み層25に代えて、同様の光学的特性を有する光拡散フィルムで形成してもよい」ことは、本願発明の「外部から入射した光を拡散させるための透光性を有する光拡散フィルムからなる光拡散層を前記基材の下方に貼り合わせた状態で積層」したことに相当する。

以上、(a)?(b)の対比より、本願発明と刊行物1発明とは、

「A’透光性を有する樹脂材料により形成されたベースとなる基材に、所定の絵柄を形成した絵柄層を積層した遊技板であって、
B 外部から入射した光を拡散させるための透光性を有する光拡散フィルムからなる光拡散層を前記基材の下方に貼り合わせた状態で積層した遊技板。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)構成Aの「基材」に関して、本願発明は「板状の基材」と特定されているのに対し、刊行物1発明の「透明シート21」は、「板状」とは特定されていない点。

(相違点2)構成Cに関して、本願発明は、「前記光拡散層は、入射した光を拡散する凹部及び凸部が形成された拡散面を有し、前記拡散面は、外部からの光が入射する入射面であ」ると特定されているのに対し、刊行物1発明はそのように特定されていない点。

(相違点3)構成Dに関して、本願発明は、「前記凹部及び凸部が露出する領域が形成されている」と特定されているのに対し、刊行物1発明はそのように特定されていない点。

(2)判断
ア.相違点1について
上記相違点1について検討する。
遊技板において、透光性を有する樹脂材料により形成された板状の基材に、絵柄層を形成して遊技板を形成することは、周知技術に過ぎない(以下、「周知技術1」という。周知技術1については、例えば、特開平10-151264号公報(段落【0014】には、透明な合成樹脂板16(板状の基材)に印刷層18(絵柄層)を設けたセル板12(遊技板)が記載されている。)、実願昭54-122932号(実開昭56-42286号)のマイクロフィルム(「2.実用新案登録請求の範囲」には、透明合成樹脂板1(板状の基材)に模様層2(絵柄層)を設けたパチンコ機釘板(遊技板)が記載されている。)等参照。)。
そして、刊行物1発明と上記周知技術1とは、絵柄層を形成する遊技板に関するものである点で共通するものであるから、刊行物1発明において、上記周知技術1を適用し、「透明シート21」(基材)を板状とし、上記相違点に係る発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ.相違点2、3について
相違点2、3は、共に光拡散層に関連するものであるので、併せて検討する。
光拡散フィルムにおいて、凹部及び凸部が形成され、入射した光を拡散する拡散面を有するものとすることは、周知技術に過ぎない(以下、「周知技術2」という。周知技術2については、例えば、特開2010-39124号公報(段落【0021】、【0025】には、凸形状の部分を有する光拡散層を両面に備えた光拡散フィルムが記載されている。)、特開2010-175749号公報(段落【0035】には、両面に凹凸形状が形成された光拡散フィルムが記載されている。)、特開2010-49830号公報(段落【0017】には、凹凸を備える光拡散面を両面に有する光拡散シートが記載されている。)等参照。)。
また、刊行物1発明の「縮み層25」は、「紫外線硬化性インクを用いて縮み印刷して形成され」るものであり、縮み印刷により縮み層25を形成した際に、少なくとも他の層に密着していない裏面側に、拡散面となる縮み部が形成されることは、明らかである。さらに、刊行物1発明の「縮み層25」は、「最外層として形成」されるものであるから、「装飾板20」の最外層に位置する「縮み層25」は、その裏面側表面の領域が露出しているといえる。
そして、刊行物1発明において、光拡散フィルムの具体的な構成として上記周知技術2を適用し、「光拡散フィルム」を凹部及び凸部が形成され、入射した光を拡散する拡散面を有するものとし、その際に、縮み印刷により形成した場合における縮み層25と同様に、光が入射する裏面側に拡散面を有し、また、当該拡散面が「装飾板20」の最外層に位置して露出するようにし、上記相違点2、3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

ところで、ここまでの説示は、本願発明は「遊技板」そのものに係る発明であるから、本願発明の「前記凹部及び凸部が露出する領域が形成されている」とは、「遊技板」単体として見た場合に「凹部及び凸部が露出する領域」があることを意味し、遊技機に「遊技板」を取り付けた際に、「凹部及び凸部が露出する領域」が無くなるか否かを問うものではないと解釈してしたものである。一方、本願発明の「前記凹部及び凸部が露出する領域が形成されている」とは、「遊技板」を遊技機に取り付けて用いた状態において、「前記凹部及び凸部が露出する領域」を有していることを意味するとの解釈が全くできないわけでもないことから、そのように解釈した場合について、以下検討する。
刊行物1には、「基板10Aの各対応部位には、図10或いは図11にて示すごとく、各貫通穴部10c、10dが形成されている。」(段落【0064】)、「装飾板20Aは、上記第1実施形態にて述べた装飾板20において、台紙26を付加的に採用した構成を備えている。台紙26は、装飾板20の縮み層25に沿いその裏面側から接着剤でもって接着されており、この台紙26には、各開口部26a、26bが、図10或いは図11にて示すごとく、基板10Aの各貫通穴部10c、10dに対向するように形成されている。」(段落【0065】)と記載されている。また、図10には、縮み層25の裏面側の領域を各貫通穴部10c、開口部26aにより露出するようにした点が図示されている。
よって、刊行物1には、装飾板20Aを基板10Aに取り付ける際に、縮み層25の裏面側の領域を露出させる点(以下、「刊行物1記載の技術事項」という。)が記載されているといえる。
そして、刊行物1発明において、上記刊行物1記載の技術事項を適用し、装飾板20を基板10に取り付けた状態においても、縮み層25の裏面側の領域を露出させる構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
したがって、仮に上記のように解釈したとしても、刊行物1発明において、上記周知技術2及び刊行物1記載の技術事項を適用し、上記相違点2、3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(3)請求人の主張について
平成30年3月2日付けの意見書の【意見の内容】、「5.(3)」において、請求人は、「しかしながら、刊行物1に記載された発明は、本願発明1のように光拡散層が基材の下方に積層されていない上に、凹部及び凸部が露出しておらず、基板10に対して縮み層25が全体的に積層されています。」との主張をしているが、上記(1)(b)に示した通り、刊行物1発明の「縮み層25」(光拡散層)も「透明シート21」(基材)の下方に貼り合わせた状態で積層したものといえ、上記(2)イ.に示した通り、刊行物1発明において、「縮み層25」(光拡散層)は、その裏側の領域が露出したものといえるか、あるいは、刊行物1記載の技術事項を適用して、取り付けた状態においても、その裏面側の領域を露出させる構成とすることは当業者が容易に想到し得たものであるから、請求人の上記主張は採用できない。

6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-03-14 
結審通知日 2018-03-22 
審決日 2018-04-03 
出願番号 特願2012-255052(P2012-255052)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 澤田 真治  
特許庁審判長 石井 哲
特許庁審判官 萩田 裕介
蔵野 いづみ
発明の名称 遊技板  
代理人 細井 勇  
代理人 佐藤 太亮  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ