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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1340506
審判番号 不服2016-18204  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-05 
確定日 2018-05-16 
事件の表示 特願2014-518555「光起電モジュール及び積層体」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月10日国際公開、WO2013/006223、平成26年10月 2日国内公表、特表2014-526142〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成24年4月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年7月1日 米国)を国際出願日とする出願であって、その後の手続の経緯は以下のとおりである。
平成26年 2月 5日 手続補正書
平成28年 1月21日 拒絶理由通知(同年1月26日発送)
平成28年 4月14日 意見書・手続補正書
平成28年 8月17日 拒絶査定(同年8月23日送達)
平成28年12月 5日 本件審判請求・手続補正書
平成29年 4月25日 上申書

2 平成28年12月5日付け手続補正(以下「本件補正」という。)
(1)本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであって,本件補正の前後の特許請求の範囲の記載は以下のとおりである。
(本件補正前)
「【請求項1】
通常動作中に太陽の方を向く第1の面、及び第2の面を有する光起電モジュールであって、前記光起電モジュールは、
外周フレームと、
前記外周フレームによって少なくとも部分的に囲繞されかつ支持された光起電積層体と、を備え、
前記光起電積層体は、
前記光起電モジュールの前記第1の面に向かって配置された透明なカバー層と、
前記カバー層の下にあって前記カバー層に付着する上側封入材層と、
前記上側封入材層の下にあって電気的に相互接続されている複数の光起電太陽電池と、
前記複数の光起電太陽電池の下にある下側封入材層と、
均質な後部環境保護層と、を有し、
前記上側封入材層及び前記下側封入材層は、前記複数の光起電太陽電池を囲繞し、
前記後部環境保護層は、前記下側封入材層に付着し、前記光起電モジュールの前記第2の面側の周囲環境に露出され、
前記上側封入材層は、前記複数の光起電太陽電池の間に存在する間隙に延在している、光起電モジュール。
【請求項2】
前記上側封入材層は、前記複数の光起電太陽電池の間に存在する間隙に延在し、前記下側封入材層に接触し、結合している、請求項1に記載の光起電モジュール。
【請求項3】
…以下、略…」

(本件補正後)
「【請求項1】
通常動作中に太陽の方を向く第1の面、及び第2の面を有する光起電モジュールであって、前記光起電モジュールは、
外周フレームと、
前記外周フレームによって少なくとも部分的に囲繞されかつ支持された光起電積層体と、を備え、
前記光起電積層体は、
前記光起電モジュールの前記第1の面に向かって配置された透明なカバー層と、
前記カバー層の下にあって前記カバー層に付着する上側封入材層と、
前記上側封入材層の下にあって電気的に相互接続されている複数の光起電太陽電池と、
前記複数の光起電太陽電池の下にある下側封入材層と、
均質な後部環境保護層と、を有し、
前記上側封入材層及び前記下側封入材層は、前記複数の光起電太陽電池を囲繞し、
前記後部環境保護層は、前記下側封入材層に付着し、前記光起電モジュールの前記第2の面側の周囲環境に露出され、
前記上側封入材層は、前記複数の光起電太陽電池の間に存在する間隙に延在し、前記下側封入材層に接触し、結合している、光起電モジュール。
【請求項2】
…以下、略…」(注:下線は、請求人が補正箇所に付した下線である。)

(2)本件補正の検討
本件補正は、上側封入材層に関し、補正前の請求項1に、
「前記上側封入材層は、前記複数の光起電太陽電池の間に存在する間隙に延在している」
と特定されているものを、補正後の請求項1では、
「前記上側封入材層は、前記複数の光起電太陽電池の間に存在する間隙に延在し、前記下側封入材層に接触し、結合している」
と特定するものである。
ここで、補正後の請求項1の上記特定事項は、補正前の請求項2に特定されている事項である。してみると、請求項1についての本件補正は、補正前の請求項1を削除するとともに、請求項1を引用する請求項2の記載を請求項1の記載を引用しないものにして新たな請求項1とするものである。よって、請求項1についての本件補正の目的は、特許法第17条の2第5項第1号に規定する請求項の削除である。
そして、請求項1についての本件補正が、新たな技術的事項を導入しないものであることは明らかであるから、特許法第17条の2第3項の規定を満たす。
したがって、請求項1についての本件補正は適法である。

3 本願発明
上記2で検討したとおり、請求項1についての本件補正は適法であるから,本願の請求項1に係る発明は,本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「通常動作中に太陽の方を向く第1の面、及び第2の面を有する光起電モジュールであって、前記光起電モジュールは、
外周フレームと、
前記外周フレームによって少なくとも部分的に囲繞されかつ支持された光起電積層体と、を備え、
前記光起電積層体は、
前記光起電モジュールの前記第1の面に向かって配置された透明なカバー層と、
前記カバー層の下にあって前記カバー層に付着する上側封入材層と、
前記上側封入材層の下にあって電気的に相互接続されている複数の光起電太陽電池と、
前記複数の光起電太陽電池の下にある下側封入材層と、
均質な後部環境保護層と、を有し、
前記上側封入材層及び前記下側封入材層は、前記複数の光起電太陽電池を囲繞し、
前記後部環境保護層は、前記下側封入材層に付着し、前記光起電モジュールの前記第2の面側の周囲環境に露出され、
前記上側封入材層は、前記複数の光起電太陽電池の間に存在する間隙に延在し、前記下側封入材層に接触し、結合している、光起電モジュール。」(以下「本願発明」という。)

4 引用発明
(1)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された米国特許出願公開第2010/0224235号明細書(以下「引用例」という。)には、以下の記載がある(注:訳は、ファミリー文献である特表2012-519967号公報を参考にして作成した。下線は、当審において付加した。以下、同様である。)

ア 「[0015]Moreover, when solar cell modules are installed and used in building structures, they are often fixed within a frame and mounted on a support structure. The frames are commonly made of rigid materials such as metals or plastics. Metal frames have been made from steel, aluminum, titanium, brass, lead, chrome, copper, and combinations or alloys of two or more of these metals, for example. Plastic frames have been made from polycarbonate, polyurethane, nylon, and combinations of two or more of these materials, for example. It is also desirable to reduce the weight of the frames and mounting systems.」
訳:「[0015]さらに、太陽電池モジュールが建築構造物中に設置され利用される場合には、それらはフレーム内に固定され支持構造上に取付けられることが多い。フレームは一般に金属類またはプラスチック類などの剛性材料で製造される。金属フレームは、例えば、鋼、アルミニウム、チタン、真鍮、鉛、クロム、銅およびこれらの金属の2つ以上の組合せまたは合金で製造されてきた。プラスチックフレームは、例えばポリカーボネート、ポリウレタン、ナイロンおよびこれらの材料の2つ以上の組合せから製造されてきた。同様に、フレームおよび取付けシステムの重量を削減することも所望される。」

イ 「[0041]The term "laminate", as used herein alone or in combined form, such as "laminated" or "lamination" for example, refers to a structure having at least two layers that are adhered or bonded firmly to each other. The layers may be adhered to each other directly or indirectly. "Directly" means that there is no additional material, such as an interlayer or an adhesive layer, between the two layers, and "indirectly" means that there is additional mater
ial between the two layers.

[0046]In addition, these lighter solar cell modules also enable the use of lighter frames and mounting systems. As used in this context, the term "lighter" may refer to the weight of the frame or mounting system. Alternatively, however, it may refer to the weight that the frame or mounting system is properly rated to support. Moreover, ionomeric encapsulant sheets have superior moisture resistance and weather ability. Therefore, solar cell modules made with thin glass sheets and ionomeric encapsulant sheets may also be suitable for use in frameless mounting systems.」
訳:「[0041]ここで単独で使用されるかまたは「ラミネート(された)(laminated)」または「ラミネーション(lamination)」などの組合せた形で使用される「ラミネートする(ラミネート)(laminate)」という用語は、互いにしっかりと接着または結合された少なくとも2つの層を有する構造を意味する。層は互いに直接的または間接的に接着されてもよい。「直接的に」という用語は、2層の間に中間層または接着剤層などの追加の材料が全く存在しないことを意味し、「間接的に」という用語は、2層の間に追加の材料が存在することを意味する。

[0046]さらに、より軽量なこれらの太陽電池モジュールは同様に、より軽量のフレームおよび取付けシステムの使用をも可能にする。この状況で使用される「より軽量な」という用語は、フレームまたは取付けシステムの重量を意味してもよい。しかしながら、あるいはそれはフレームまたは取付け用システムが支持するよう適切に定格された重量を意味してもよい。さらに、アイオノマー封入材シートはより優れた耐湿性と耐候性を有する。したがって、薄いガラスシートとアイオノマー封入材シートを用いて作られた太陽電池モジュールもまた、枠無し取付けシステム内での使用に適したものであるかもしれない。」

ウ 「[0047]Referring now to the drawings, wherein like reference numerals designate corresponding structure throughout the views, and referring in particular to FIG. 1 , a solar cell module 10 comprises a solar cell assembly 13 that is laminated between two polymeric encapsulant layers, a first or front encapsulant layer 12 and a second or back encapsulant layer 14 . These three layers, in turn, are laminated between two outer protective layers, a first outer protective layer or front sheet 11 and a second outer protective layer or back sheet 15 . One or both of the two encapsulant layers 12 and 14 is an ionomeric encapsulant layer, and one or both of the outer protective layers 11 and 15 is a thin glass sheet.
[0048]Still referring to FIG. 1 , the solar cell assembly 13 has a lateral area that is smaller than the lateral area of the solar cell module 10 . Thus, the two encapsulant layers 12 and 14 may come in contact and bond to each other to form a seal 16 around the edges of the solar cell assembly 13 . Moreover, the first and second encapsulant layers 12 and 14 may be the same or different. In addition, the first and second protective layers 11 and 15 may be the same or different.」
訳:「[0047]ここで、図全体にわたり同じ参照番号が対応する構造を指している図面、特に図1を参照すると、太陽電池モジュール10は、2つのポリマー封入材層、つまり第1のまたは正面封入材層12および第2のまたは背面封入材層14の間にラミネートされている太陽電池アセンブリ13を含む。これら3つの層は、それ自体、2つの外部保護層つまり第1の外部保護層または正面シート11と第2の外部保護層または背面シート15の間にラミネートされている。2つの封入材層12および14のうちの一方または両方がアイオノマー封入材層であり、外部保護層11および15の一方または両方が薄いガラスシートである。
[0048]さらに図1を参照すると、太陽電池アセンブリ13は太陽電池モジュール10の側面積より小さい側面積を有する。したがって、2つの封入材層12および14は互いに接触して結合して、太陽電池アセンブリ13の縁部のまわりにシール16を形成する。さらに、第1および第2の封入材層12および14は同じものでも、異なるものでもよい。さらに、第1および第2の保護層11および15は同じであっても異なるものであってもよい。」

エ 「[0057]The term "solar cell" as used herein refers to any article that can convert light into electrical energy. Suitable solar cells include, but are not limited to, wafer-based solar cells (e.g., solar cells comprising materials selected from c-Si, mc-Si, and mixtures thereof) and thin film solar cells (e.g., solar cells comprising materials selected from a-Si, μc-Si, CdTe, CIS, CIGS, light absorbing dyes, organic semiconductors, and mixtures thereof). A solar cell assembly may comprise one or a plurality of solar cells. The plurality of solar cells may be electrically interconnected or arranged in a flat plane. In addition, the solar cell assembly may further comprise conductive pastes in wafer-based solar cells, conductive coatings in thin film solar cells, or electrical wirings deposited upon either type of solar cells.
[0058]The solar cell assembly may have a front, sun-facing side and a back, non-sun-facing side. In such a configuration, all the laminated layers that are positioned between the light source and the front, sun-facing side of the solar cell assembly should have sufficient transparency to allow light to reach the solar cells. The other laminated layers positioned behind the back, non-sun-facing side of the solar cell assembly need not be transparent.」
訳:「[0057]本明細書で使用される「太陽電池」という用語は、光を電気エネルギーに変換できるあらゆる物品を意味する。適切な太陽電池には、ウェハーベースの太陽電池(例えばc-Si、mc-Siおよびそれらの混合物から選択される材料を含む太陽電池)および薄膜太陽電池(例えばa-Si、μc-Si、CdTe、CIS、CIGS、光吸収性染料、有機半導体およびその混合物の中から選択された材料を含む太陽電池)が含まれるが、これらに限定されない。太陽電池アセンブリは、1つまたは複数の太陽電池を含んでいてもよい。複数の太陽電池を電気的に相互接続するかまたは平担な平面内に配置してもよい。太陽電池アセンブリはさらに、ウェハーベースの太陽電池においては導体ペースト、薄膜太陽電池においては導電性コーティング、またはいずれのタイプの太陽電池上でも被着される電気配線を含んでいてもよい。
[0058]太陽電池アセンブリは、正面の太陽に対面する側および背面の太陽に対面しない側を有していてもよい。このような形態においては、光源と太陽電池アセンブリの正面の太陽に対面する側の間に位置づけされている全てのラミネートされた層は、光が太陽電池に到達できるように充分な透明度を有しているべきである。太陽電池アセンブリの背面の太陽に対面しない側の後ろに位置づけされたもう1つのラミネートされた層は、透明である必要はない。」

オ 「[0075]In addition to one or more solar cells, one or more thin glass sheets and one or more ionomeric encapsulant sheets, the solar cell modules may further comprise additional films, rigid sheets, or other non-ionomeric polymeric encapsulant sheets.
[0076]Suitable non-ionomeric materials for use in encapsulant layers such as 12 or 14 of FIG. 1 include, without limitation, ethylene unsaturated acid copolymers, polyethylene vinyl acetates) (EVA), poly(vinyl acetals) (e.g., poly(vinyl butyrals) (PVB)), polyurethanes, poly(vinyl chlorides), polyethylenes (e.g., linear low density polyethylenes), polyolefin block copolymer elastomers, copolymers of α-olefins and α,β-ethylenically unsaturated carboxylic acid esters) (e.g., ethylene methyl acrylate copolymers and ethylene butyl acrylate copolymers), silicone elastomers, epoxy resins, and blends or combinations of two or more of these materials.
[0077]Suitable sheets or films for use as one of the outer protective layers such as 11 or 15 of FIG. 1 include, without limitation, conventional glass sheets, plastic sheets, metal sheets, ceramic sheets, plastic films and metal films.
[0078]Suitable conventional glass sheets may have a thickness of about 2 mm or more and include not only window glass, plate glass, silicate glass, sheet glass, low iron glass, tempered glass, tempered CeO-free glass, and float glass, but also colored glass, specialty glass (such as those containing ingredients to control solar heating), coated glass (such as those sputtered with metals (e.g., silver or indium tin oxide) for solar control purposes), low E-glass, Toroglas丸R(注:丸の中にR) glass (Saint-Gobain N.A. Inc., Trumbauersville, Pa.), Solexia^(TM) glass (PPG Industries, Pittsburgh, Pa.), but also Starphire丸R(注:丸の中にR) glass (PPG Industries).
[0079]Suitable plastic sheets comprise materials such as polycarbonates, acrylics, polyacrylates, cyclic polyolefins (e.g., ethylene norbornene polymers), polystyrenes (preferably metallocene-catalyzed polystyrenes), polyamides, polyesters, fluoropolymers, or combinations of two or more of these materials.
[0080]When a non-transparent sheet, such as aluminum, steel or galvanized steel, or a ceramic plate is used, it is used in a back protective layer or back sheet that is positioned towards the rear, non-sun-facing side of the solar cell assembly.
[0081]Suitable plastic film layers include, without limitation, polymers such as polyesters (e.g., poly(ethylene terephthalate) and poly(ethylene naphthalate)), polycarbonates, polyolefins (e.g., polypropylene, polyethylene, and cyclic polyolefins), norbornene polymers, polystyrenes (e.g., syndiotactic polystyrene), styrene-acrylate copolymers, acrylonitrile-styrene copolymers, polysulfones (e.g., polyethersulfone, polysulfone, etc.), nylons, poly(urethanes), acrylics, cellulose acetates (e.g., cellulose acetate, cellulose triacetate, etc.), cellophanes, poly(vinyl chlorides) (e.g., poly(vinylidene chloride)), fluoropolymers (e.g., polyvinyl fluoride, polyvinylidene fluoride, polytetrafluoroethylene, ethylene-tetrafluoroethylene copolymers and the like) and combinations of two or more thereof. The plastic film may also be a bi-axially oriented polyester film (preferably poly(ethylene terephthalate) film) or a fluoropolymer film (e.g., Tedlar丸R(注:丸の中にR), Tefzel丸R(注:丸の中にR), and Teflon丸R(注:丸の中にR) films, from E. I. du Pont de Nemours and Company, Wilmington, Del. (DuPont)). Further the films used herein may be in the form of a multi-layer film, such as a fluoropolymer/polyester/fluoropolymer multilayer film (e.g., Tedlar丸R(注:丸の中にR)/PET/Tedlar丸R(注:丸の中にR) or TPT laminate film available from Isovolta AG., Austria or Madico, Woburn, Mass.).」
訳:「[0075]1つ以上の太陽電池、1枚以上の薄いガラスシートおよび1枚以上のアイオノマー封入材シートに加えて、太陽電池モジュールはさらに追加のフィルム、剛性シートまたは他の非アイオノマーポリマー封入材シートを含んでいてもよい。
[0076]図1の12または14などの封入材層中で使用するための適切な非アイオノマー材料としては、限定的意味なく、エチレン性不飽和酸コポリマー、ポリ(エチレンビニルアセテート類)(EVA)、ポリ(ビニルアセタール類)(例えばポリ(ビニルブチラール類)(PVB))、ポリウレタン類、ポリ(ビニルクロリド類)、ポリエチレン類(例えば直鎖低密度ポリエチレン類)、ポリオレフィンブロックコポリマーエラストマー、α-オレフィンおよびα,β-エチレン性不飽和カルボン酸エステル類)のコポリマー(例えばエチレンメチルアクリレートコポリマーおよびエチレンブチルアクリレートコポリマー)、シリコーンエラストマー、エポキシ樹脂類、およびこれらの材料の2つ以上のブレンドまたは組合せが含まれる。
[0077]図1の11または15などの外部保護層の1つとして使用するのに適したシートまたはフィルムとしては、限定的な意味なく、従来のガラスシート、プラスチックシート、金属シート、セラミックシート、プラスチックフィルムおよび金属フィルムが含まれる。
[0078]適切な従来のガラスシートは、約2mm以上の厚みを有していてもよく、窓ガラス、厚ガラスシート、ケイ酸塩ガラス、並ガラスシート、低鉄ガラス、強化ガラス、無CeO強化ガラス、およびフロートガラスのみならず、色ガラス、特殊ガラス(例えば、太陽光加熱を制御するための成分を含むもの)、コーテッドガラス(例えば太陽光を制御する目的で金属(例えば銀またはインジウム錫酸化物)でのスパッタリングが施されたもの)、低Eガラス、Toroglas(登録商標)ガラス(Saint-Gobain N.A.Inc.(Trumbauersville、PA))、Solexia(商標)ガラス(PPG Industries(Pittsburgh、PA))やStarphire(登録商標)ガラス(PPG Industries)も含んでいる。
[0079]適切なプラスチックシートは、ポリカーボネート類、アクリル樹脂類、ポリアクリレート類、環式ポリオレフィン類(例えばエチレンノルボルネンポリマー)、ポリスチレン類(好ましくはメタロセン-触媒ポリスチレン類)、ポリアミド類、ポリエステル類、フルオロポリマーまたはこれらの材料の2つ以上の組合せなどの材料を含む。
[0080]アルミニウム、鋼または亜鉛メッキ鋼またはセラミックプレートなどの不透明シートが使用される場合、それは、太陽電池アセンブリの後部の太陽に対面しない側に向かって位置づけされる背面保護層また背面シートの形で使用される。
[0081]適切なプラスチックフィルム層には、限定的な意味なく、ポリエステル類(例えばポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(エチレンナフタレート))、ポリカーボネート類、ポリオレフィン類(例えばポリプロピレン、ポリエチレン、および環式ポリオレフィン類)、ノルボルネンポリマー、ポリスチレン類(例えばシンジオタクチックポリスチレン)、スチレン-アクリレートコポリマー、アクリロニトリル-スチレンコポリマー、ポリスルホン類(例えばポリエーテルスルホン、ポリスルホンなど)、ナイロン類、ポリ(ウレタン類)、アクリル樹脂類、セルロースアセテート類(例えばセルロースアセテート、セルローストリアセテートなど)、セロファン類、ポリ(ビニルクロリド類)(例えばポリ(ビニリデンクロリド)、フルオロポリマー(例えばポリビニルフルオリド、ポリビニリデンフルオリド)、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマーなど)およびそれらの2つ以上の組合せが含まれる。プラスチックフィルムは、2軸延伸ポリエステルフィルム(好ましくはポリ(エチレンテレフタレート)フィルム)またはフルオロポリマーフィルム(例えばE.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington、DE)(DuPont))製のTedlar(登録商標)、Tefzel(登録商標)およびTeflon(登録商標)フィルム)でもあってもよい。さらに本明細書中で使用されるフィルムは、多層フィルム、例えばフルオロポリマー/ポリエステル/フルオロポリマー多層フィルム(例えばIsovolta AG.(Austria)またはMadico(Woburn、MA)から入手可能なTedlar(登録商標)/PET/Tedlar(登録商標)またはTPTラミネートフィルム)の形をしていてもよい。」

カ 「What we claimed is:
1 . A solar cell module comprising, as laminated layers, (A) a solar cell assembly comprising one or a plurality of solar cells, (B) a first ionomeric encapsulant layer comprising a first ionomer composition, and (C) a first outer protective layer comprising a first thin glass sheet having a thickness of less than 1.5 mm.」
訳:「特許請求の範囲
1.(A)1つまたは複数の太陽電池を含む太陽電池アセンブリと、(B)第1のアイオノマー組成物を含む第1のアイオノマー封入材層と、(C)1.5mm未満の厚みを有する第1の薄いガラスシートを含む第1の外部保護層とをラミネートされた層として含む太陽電池モジュール。」

キ 図1は、以下のとおりのものである。

(2)引用発明
ア 上記(1)ア[0015]に記載されるように、太陽電池モジュールは、フレームに取り付けられることが多いことを踏まえると、引用例には「フレームと、該フレームに取り付けられた太陽電池モジュール」が開示されている。

イ 上記(1)ウの記載を踏まえて図1を見ると、
「正面シート11、正面封入材層12、太陽電池アセンブリ13、背面封入材層14、背面シート15を備える太陽電池モジュールであって、
太陽電池アセンブリ13は、正面封入材層12および背面封入材層14の間にラミネートされ、
正面封入材層12、太陽電池アセンブリ13、背面封入材層14は、正面シート11と背面シート15の間にラミネートされている、
太陽電池モジュール」
が看て取れる。

ウ 上記(1)エ[0057]によれば、太陽電池アセンブリは、電気的に相互接続された複数の太陽電池を含んでいてもよいものである。

エ 上記(1)エ[0058]によれば、太陽電池アセンブリは、正面の太陽に対面する側および背面の太陽に対面しない側を有し、光源と太陽電池アセンブリの正面の太陽に対面する側の間に位置づけされている全てのラミネートされた層は、光が太陽電池に到達できるように充分な透明度を有していることが開示されている。

オ 上記(1)オ[0077]、[0079]によれば、背面シート15などの外部保護層の1つとして使用するのに適したシートとしては、プラスチックシートが含まれ、プラスチックシートは、ポリエステル類、フルオロポリマーなどの材料を含むことが開示されている。

カ してみると、引用例には以下の発明が記載されている。
「フレームと、該フレームに取り付けられた太陽電池モジュールであって、 該太陽電池モジュールは、正面シート11、正面封入材層12、太陽電池アセンブリ13、背面封入材層14、背面シート15を備え、
該太陽電池アセンブリ13は、正面封入材層12および背面封入材層14の間にラミネートされ、
正面封入材層12、太陽電池アセンブリ13、背面封入材層14は、正面シート11と背面シート15の間にラミネートされ、
太陽電池アセンブリ13は、電気的に相互接続された複数の太陽電池を含み、正面の太陽に対面する側および背面の太陽に対面しない側を有し、
光源と太陽電池アセンブリ13の正面の太陽に対面する側の間に位置づけされている全てのラミネートされた層は、光が太陽電池に到達できるように充分な透明度を有し、
背面シート15等の外部保護層の1つとして使用するのに適したプラスチックシートは、例えば、ポリエステル類、フルオロポリマー等の材料を含む、
フレームと、該フレームに取り付けられた太陽電池モジュール。」(以下「引用発明」という。)

5 対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「太陽電池モジュール」は本願発明の「光起電積層体」に相当し、以下同様に、「正面シート11」は「カバー層」に、「正面封入材層12」は「上側封入材層」に、「太陽電池」は「光起電太陽電池」に、「背面封入材層14」は「下側封入材層」に、「背面シート15」は「後部環境保護層」に、「フレーム」は「外周フレーム」に相当する。そして、引用発明の「太陽電池アセンブリ13」は本願発明の「複数の光起電太陽電池」に相当し、引用発明の「フレームと、該フレームに取り付けられた太陽電池モジュール」は本願発明の「光起電モジュール」に相当する。

(2)本願発明の「通常動作中に太陽の方を向く第1の面、及び第2の面を有する光起電モジュール」と、引用発明の「フレームと、該フレームに取り付けられた太陽電池モジュール」であって、「太陽電池モジュール」が「正面の太陽に対面する側および背面の太陽に対面しない側を有」する「太陽電池アセンブリ」を備える「フレームと、該フレームに取り付けられた太陽電池モジュール」を対比する。
引用発明の「太陽電池アセンブリ」は、「正面の太陽に対面する側および背面の太陽に対面しない側を有し」ているから、「太陽電池アセンブリ」を備える「太陽電池モジュール」もまた、「正面の太陽に対面する側および背面の太陽に対面しない側を有し」ている。そうすると、引用発明の「太陽電池アセンブリ」の「正面の太陽に対面する側」は、本願発明の「通常動作中に太陽の方を向く第1の面」に相当し、引用発明の「太陽電池アセンブリ」の「背面の太陽に対面しない側」は、本願発明の「第2の面」に相当する。
そして、上記(1)のとおり、引用発明の「フレームと、該フレームに取り付けられた太陽電池モジュール」は、本願発明の「光起電モジュール」に相当する。
してみると、本願発明の「通常動作中に太陽の方を向く第1の面、及び第2の面を有する光起電モジュール」と、引用発明の「フレームと、該フレームに取り付けられた太陽電池モジュール」であって、「太陽電池モジュール」が「正面の太陽に対面する側および背面の太陽に対面しない側を有」する「太陽電池アセンブリ」を備える、「フレームと、該フレームに取り付けられた太陽電池モジュール」は相当関係にある。

(3)本願発明の「前記外周フレームによって少なくとも部分的に囲繞されかつ支持された光起電積層体」と、引用発明の「該フレームに取り付けられた太陽電池モジュール」を対比する。
引用発明の「フレーム」は本願発明の「外周フレーム」に相当し、引用発明の「太陽電池モジュール」は本願発明の「光起電積層体」に相当する。
してみると、本願発明の「前記外周フレームによって少なくとも部分的に囲繞されかつ支持された光起電積層体」と、引用発明の「該フレームに取り付けられた太陽電池モジュール」は、「前記外周フレームによって支持された光起電積層体」の点で一致する。

(4)本願発明の「前記光起電モジュールの前記第1の面に向かって配置された透明なカバー層」と、引用発明の「正面シート11」を対比する。
ア 引用発明の「正面」は太陽に対面する側であるから、引用発明の「正面シート11」は、本願発明の「前記光起電モジュールの前記第1の面に向かって配置された」「カバー層」に相当する。
イ そして、引用発明は、
(ア)「正面封入材層12、太陽電池アセンブリ13、背面封入材層14は、正面シート11と背面シート15の間にラミネートされ」、
(イ)「光源と太陽電池アセンブリ13の正面の太陽に対面する側の間に位置づけされている全てのラミネートされた層は、光が太陽電池に到達できるように充分な透明度を有し」、
との特定事項を備えるところ、「正面シート11」は、上記(ア)によればラミネートされた層であり、上記(イ)によれば、ラミネーとされた層は十分な透明度を有している。してみると、引用発明の「正面シート11」は十分な透明度を有しており、本願発明の「透明なカバー層」に相当する。
してみると、本願発明の「前記光起電モジュールの前記第1の面に向かって配置された透明なカバー層」と、引用発明の「正面シート11」は相当関係にある。

(5)本願発明の「前記カバー層の下にあって前記カバー層に付着する上側封入材層と、前記上側封入材層の下にあって電気的に相互接続されている複数の光起電太陽電池と、前記複数の光起電太陽電池の下にある下側封入材層」と、引用発明の「正面封入材層12、太陽電池アセンブリ13、背面封入材層14」であって、「太陽電池アセンブリ13は、電気的に相互接続された複数の太陽電池を含」む、「正面シート11と背面シート15の間にラミネートされ」る「正面封入材層12、太陽電池アセンブリ13、背面封入材層14」を対比する。
引用発明における「ラミネートする」という用語は、引用例の[0041]の記載によれば、互いにしっかりと接着または結合された少なくとも2つの層を有する構造を意味する。そうすると、「正面封入材層12」と「正面シート11」は、互いにしっかりと接着または結合されるから、「付着」していると言える。
そして、引用発明は、「正面封入材層12、太陽電池アセンブリ13、背面封入材層14は、正面シート11と背面シート15の間にラミネートされ」ているから、「正面シート11」の下に「正面封入材層12」があり、「正面封入材層12」の下に「太陽電池アセンブリ13」があり、「太陽電池アセンブリ13」の下に「背面封入材層14」がある。
さらに、引用発明の「太陽電池アセンブリ13」が含む「電気的に相互接続された複数の太陽電池」は、本願発明の「電気的に相互接続されている複数の光起電太陽電池」に相当する。
してみると、本願発明の「前記カバー層の下にあって前記カバー層に付着する上側封入材層と、前記上側封入材層の下にあって電気的に相互接続されている複数の光起電太陽電池と、前記複数の光起電太陽電池の下にある下側封入材層」と、引用発明の「正面封入材層12、太陽電池アセンブリ13、背面封入材層14」であって、「太陽電池アセンブリ13は、電気的に相互接続された複数の太陽電池を含」む、「正面シート11と背面シート15の間にラミネートされ」る「正面封入材層12、太陽電池アセンブリ13、背面封入材層14」は、相当関係にある。

(6)本願発明の「均質な後部環境保護層」と引用発明の「ポリエステル類、フルオロポリマー等の材料を含」む「背面シート15」を対比する。
ア はじめに、本願発明の「均質な後部環境保護層」の技術的な意味について発明の詳細な説明を参酌して検討する。
本願の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
「【0024】
シーリング層160は、積層体110の他の層に環境保護を提供するのに十分な任意の単層の均質フィルムであり得る。シーリング層160は、水蒸気透過率が24時間当たり40g/m2未満であり得る。これは耐水性を有する水蒸気透過率として、本明細書に記載されており、任意の適切な材料で構築され得る。ある実施形態においては、例えば、フルオロポリマー、ポリビニリデンフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリアミド又はポリフェニレンオキシドを実施形態で使用することができ、市場で入手可能なTEFLON(登録商標)又はTEDLAR(登録商標)などの材料をも含まれる。単層(single-stratum)の層としての使用に適した他の任意の材料もまた使用できる。したがって、シーリング層160は環境保護層としての役目を果たし得る。均質な単層シーリング層160は、他の光起電モジュールの多層後板とは対照的に、一枚の膜又は単一の層であり得る。それ故、一部の実施形態において、シーリング層160は、下側封入材層150と積層体110の下部の周囲環境との間の唯一の層であり得る。一部の実施形態においてシーリング層160は、ガラス繊維層、又は、例えば、金属層若しくは導電充填剤を含有するポリマーであり得る熱伝導層であってもよい。」
上記記載によれば、「均質」は、一般的な意味(一つの物体中のどの部分をとっても、成分・性質の一定していること[株式会社岩波書店 広辞苑第六版])であり、「均質な後部環境保護層」は、例えば、フルオロポリマー、ポリエステルの材料の層であってよいものである。
イ 上記アを踏まえて検討すると、本願発明の「後部環境保護層」と引用発明の「背面シート15」は、何れも「フルオロポリマー、ポリエステル」等の材料であって良い点で共通し、また、引用例には「背面シート15」の均質性について特段の記載がないことから、引用発明の「背面シート15」は一般的な意味での均質なシートであると認められる。
してみると、本願発明の「均質な後部環境保護層」と引用発明の「ポリエステル類、フルオロポリマー等の材料を含」む「背面シート15」は相当関係にある。

(7)本願発明の「前記後部環境保護層は、前記下側封入材層に付着し、前記光起電モジュールの前記第2の面側の周囲環境に露出され」ていることと、引用発明の「背面シート15」は、「正面シート11」とともに「背面封入材層14」をラミネートするとともに、「外部保護層の1つ」であることを対比する。
上記(5)で検討したとおり、引用発明における「ラミネートする」という用語は、互いにしっかりと接着または結合された少なくとも2つの層を有する構造を意味する。してみると、引用発明の「背面シート15」が「正面シート11」とともに「背面封入材層14」をラミネートすることは、「背面シート15」は「背面封入部材14」に付着していると言える。
また、引用発明の「背面シート15」は、「外部保護層の1つ」であるから、外部環境に露出していると言える。
してみると両者は相当関係にある。

(8)以上によれば、本願発明と引用発明は、
「通常動作中に太陽の方を向く第1の面、及び第2の面を有する光起電モジュールであって、前記光起電モジュールは、
外周フレームと、
前記外周フレームによって支持された光起電積層体と、を備え、
前記光起電積層体は、
前記光起電モジュールの前記第1の面に向かって配置された透明なカバー層と、
前記カバー層の下にあって前記カバー層に付着する上側封入材層と、
前記上側封入材層の下にあって電気的に相互接続されている複数の光起電太陽電池と、
前記複数の光起電太陽電池の下にある下側封入材層と、
均質な後部環境保護層と、を有し、
前記後部環境保護層は、前記下側封入材層に付着し、前記光起電モジュールの前記第2の面側の周囲環境に露出されている、
光起電モジュール。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:前記外周フレームによって支持された光起電積層体は、本願発明では、「前記外周フレームによって少なくとも部分的に囲繞され」るのに対し、引用発明では、そのようなものなのか否か明らかでない点。

相違点2:本願発明では、「前記上側封入材層及び前記下側封入材層は、前記複数の光起電太陽電池を囲繞し」、「前記上側封入材層は、前記複数の光起電太陽電池の間に存在する間隙に延在し、前記下側封入材層に接触し、結合している」のに対し、引用発明では、「該太陽電池アセンブリ13は、正面封入材層12および背面封入材層14の間にラミネートされ」ているものの、正面封入材層12および背面封入材層14は太陽電池アセンブリ13を囲繞し、そして、正面封入材層12は、太陽電池アセンブリ13が含む複数の太陽電池の間に存在する間隙に延在し、背面封入材層14に接触し、結合しているものなのか否か明らかでない点。

6 判断
以下、上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
太陽電池パネルを外周フレームによって支持する際、外周フレームが太陽電池パネルを囲繞するように支持することは、例えば、特開2011-114035号公報(例えば、「【0014】…太陽電池パネル40の外縁部を全周にわたって囲繞して太陽電池パネル40を取り付け架台などから支持する矩形枠状のフレーム10と…」との記載、及び図1、図2を参照。)、特開2007-211435号公報(例えば、「【0007】…太陽電池パネル1は、方形板状の太陽電池本体2を方形枠状のフレーム3で囲繞して成り、…架台に設置される。」との記載を参照。)に記載されるように周知技術である。してみると、引用発明において上記周知技術を採用し、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項となすことに困難性は無い。

(2)相違点2について
一般に、太陽電池を複数の層の間にラミネートすることは、複数の層と太陽電池の一体化、太陽電池の固定、太陽電池の封止等の目的でなされることを踏まえると、引用発明の正面封入材層12および背面封入材層14は、複数の太陽電池を囲繞するとともに、太陽電池の間に存在する間隙に延在し、互いに結合するものと認められる。したがって、相違点2は、実質的なものではない。
また、仮に、相違点2が実質的に相違するものであるとしても、太陽電池素子間にも熱可塑性樹脂の封止材シートが延在し、結合するするようになすことは、例えば、実願昭58-97750号(実開昭60-6250号)のマイクロフィルムの第1図及びその説明箇所に記載されるように周知技術であるから、引用発明において上記周知技術を採用し、太陽電池を複数含む際に、複数の太陽電池間においても、正面封入材層12と背面封入材層14が太陽電池間の間隙に延在し、互いに接触して結合させ、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項となすことは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。

(3)そして、本願発明が奏する作用効果は、引用発明と上記周知技術に基づいて当業者が容易に予測しうる程度のものである。

7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-12-07 
結審通知日 2017-12-12 
審決日 2017-12-28 
出願番号 特願2014-518555(P2014-518555)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 濱田 聖司  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 小松 徹三
松川 直樹
発明の名称 光起電モジュール及び積層体  
代理人 龍華国際特許業務法人  

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