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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B01J
管理番号 1340584
審判番号 不服2016-17652  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-25 
確定日 2018-06-05 
事件の表示 特願2013-535022「ラミネートされたリーク防止化学処理機、作製方法及び操作方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 4月26日国際公開、WO2012/054542、平成26年 3月 6日国内公表、特表2014-505579、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由
第1 手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下、「本件出願」という。)は、平成23年10月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2010年10月18日 米国、2011年2月9日 米国)を国際出願日とする出願であって、以降の手続の経緯は、概略、以下のとおりのものである。

平成27年 7月27日:拒絶理由通知
平成28年 2月 2日:意見書
平成28年 2月 2日:手続補正書
平成28年 7月15日:拒絶査定
平成28年11月25日:審判請求書
平成28年11月25日:手続補正書
平成28年12月27日:前置報告書
平成29年 6月19日:拒絶理由通知
平成29年 9月20日:意見書
平成29年 9月20日:手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)
平成29年11月22日:拒絶理由通知
平成30年 3月26日:意見書

第2 本願発明

本件出願の請求項1?13に係る発明は、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、請求項に係る各発明を、項番に従って「本願発明1」などといい、併せて「本願発明」ともいう。)。

「【請求項1】
第1のシート及び第2のシートを備えるラミネートされたマイクロチャネルアセンブリであって、各シートは、長さ及び幅を有し、シート長さにシート幅を乗じることにより定義される断面積は、100cm^(2)より大きく、
前記第1及び第2のシートは、実質的に平坦であり、
前記第1のシートは、平行な長さを有する平行マイクロチャネルのアレイを備え、前記マイクロチャネルは、バリア壁により互いに分離され、
前記マイクロチャネルは、前記第1のシートの厚みを部分的に又は完全に貫通し、
前記第1のシート及び前記第2のシートは、隣接しており、
前記バリア壁の長さに沿って伸び、前記第1のシートを前記第2のシートに結合する溶接部を備える、ラミネートされたマイクロチャネルアセンブリ。
【請求項2】
前記シート長さに前記シート幅を乗じることにより定義される前記断面積は、500cm^(2)より大きく、前記溶接部は、前記第1のシート及び前記第2のシートを共に保持して第1サブアセンブリを形成し、前記アセンブリは、前記第1サブアセンブリに積み重ねられる第2サブアセンブリをさらに備え、前記第2サブアセンブリは複数の連続流体通路を備え、前記第1サブアセンブリ及び前記第2サブアセンブリは、前記第1サブアセンブリ及び第2サブアセンブリの周縁部に沿って溶接によって結合されている、請求項1に記載のマイクロチャネルアセンブリ。
【請求項3】
前記溶接部は、連続的であり、かつ、前記平行マイクロチャネルのアレイにおけるマイクロチャネル間にシールを形成し、前記第1及び第2のシートは拡散接合又はろう付けされていない、請求項1に記載のマイクロチャネルアセンブリ。
【請求項4】
前記第2のシート上の前記溶接部は、少なくとも2.7cm/cm^(2)の密度を有する、請求項1に記載のマイクロチャネルアセンブリ。
【請求項5】
前記溶接部は、0.015cm以上の幅を有するレーザ結合部である、請求項1に記載のマイクロチャネルアセンブリ。
【請求項6】
引張から圧縮に、又はその逆方向に変化するチャネル層におけるプロセスを行う方法であって、
第1のチャネル層、及び該第1のチャネルに直接隣接する第2のチャネル層を備える、請求項1に記載のラミネートされたマイクロチャネルアセンブリであって、第1の時点で、前記第1のチャネル層は、第1の圧力における第1の流体を備え、前記第2のチャネル層は、第2の圧力における第2の流体を備え、前記第1の圧力は、前記第2の圧力よりも高いものを提供することと、
前記第1の時点で、前記第1のチャネル層において単位動作を行うことであって、第2の時点で、前記第1のチャネル層は、第3の圧力における第3の流体を備え、前記第2のチャネル層は、第4の圧力における第4の流体を備え、前記第4の圧力は、前記第3の圧力よりも高いとする単位動作を行うことと、
前記第2の時点で、前記第1のチャネル層において単位動作を行うことと、
を含む方法。
【請求項7】
前記第1及び第3の流体は、フィッシャー・トロプシュプロセスストリームであり、前記第2及び第4の流体は、熱交換流体である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のチャネルは、熱伝導性の圧入インサート及び触媒を備える、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のチャネル内に固体が蓄積すると、反応器内の変化に対応するようにプロセス条件が調節される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
長さ及び幅を有する請求項1に記載のラミネートされたマイクロチャネルアセンブリを備えるラミネートされたマイクロチャネルデバイスであって、シート長さにシート幅を乗じることにより定義される断面積は、100cm^(2)より大きく、前記第2のシートが前記マイクロチャネルデバイス内のシートの表面の断面にわたり、0.05cm/cm^(2)から20cm/cm^(2)の間のレーザ溶接された結合部の密度を有する表面を持ち、この断面は、主要表面の連続領域の少なくとも50%を占める、ラミネートされたマイクロチャネルデバイス。
【請求項11】
前記シート長さに前記シート幅を乗じることにより定義される前記断面積は、500cm^(2)より大きく、頂部プレートと結合されて、前記マイクロチャネルデバイス内のシートの表面の断面にわたり、0.05cm/cm^(2)から20cm/cm^(2)の間のレーザ溶接された結合部の密度を有する溶接されたアセンブリを形成し、この断面は、主要表面の100%を占める、請求項10に記載のラミネートされたマイクロチャネルデバイス。
【請求項12】
第1のシート及び第2のシートを備えるラミネートされたマイクロチャネルアセンブリであって、各シートは、長さ及び幅を有し、シート長さにシート幅を乗じることにより定義される断面積は、100cm^(2)より大きく、
前記第1及び第2のシートは、実質的に平坦であり、
前記第1のシートは、平行な長さを有する平行マイクロチャネルのアレイを備え、前記マイクロチャネルは、バリア壁により互いに分離され、
前記マイクロチャネルは、前記第1のシートの厚みを部分的に又は完全に貫通し、
前記第1のシート及び前記第2のシートは、隣接しており、
前記バリア壁の長さに沿って伸び、前記第1のシートを前記第2のシートに結合する溶接部を備える、ラミネートされたマイクロチャネルアセンブリを形成する方法であって、
前記方法は、頂部シートを底部シートに溶接して、前記頂部シートの頂部表面と前記底部シートの底部表面との間に配置される複数のチャネルを形成することを含み、前記マイクロチャネルは、前記底部シートの厚みを部分的に又は完全に貫通し、前記溶接は、前記複数のチャネルにおけるチャネル間のシールを形成するために使用され、前記溶接部は、前記頂部シート及び前記底部シートを共に保持して第1サブアセンブリを形成し、前記方法は、前記第1サブアセンブリに第2サブアセンブリを積み重ねることをさらに含み、前記第2サブアセンブリは複数の連続流体通路を備え、前記第1サブアセンブリ及び前記第2サブアセンブリは、前記第1サブアセンブリ及び第2サブアセンブリの周縁部に沿って溶接によって結合される方法。
【請求項13】
シートをアセンブリに結合する方法は、2つの隣接する内部フローマイクロチャネル間をシールするためにレーザ溶接することを含む、請求項12に記載の方法。」

第3 拒絶の理由

平成29年11月22日付け拒絶理由通知書で、当審が通知した拒絶理由の概略は、次のとおりのものである。

本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献1?5に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特表2003-516223号公報
引用文献2:特表2006-511345号公報
引用文献3:特開2006-290718号公報
引用文献4:特表2007-534457号公報
引用文献5:国際公開第2010/042794号

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献1の記載

引用文献1には、「モジュール式ミクロ反応システム」(発明の名称)について、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。

「【0002】
本発明によるミクロ反応システムは、ハウジングと、該ハウジング内に格納された機能的基本モジュールとを有し、前記ハウジングは少なくとも1つの流体入口と少なくとも1つの流体出口とを有し、前記基本モジュールは前記ハウジング内において直列に前後に配設され、かつ流体が前記基本モジュールを連続して貫流可能であるように形成される。前記基本モジュールの少なくともあるものは、フィルム積層を形成しつつ、固定または取り外し可能に互いに結合された板状の略長方形の互いに積み重ねた複数のフィルムから構成され、該フィルムの1つまたは複数は一方または両方の表面にミクロ構造のチャンネル、センサ要素、加熱要素またはそれらの組合せを備える。さらに、各フィルム積層は、表面にチャンネルが設けられた少なくとも1つのフィルムを備え、前記チャンネルは、流体ラインのためにフィルム積層の一方の側面からフィルム積層の対向するまたはそれに隣接する側面に通じるように形成される。」

「【0009】
「フィルム」とは、本発明に関連して、通常略長方形の形態を有する板状要素を意味する。本発明のために使用されるフィルムまたは板状要素は、金属、金属合金またはステンレス鋼から構成されることが好ましく、この場合用途および規定に応じてケイ素または窒化ケイ素(SiNX)製のフィルムも適切である。後者は、熱抵抗要素およびセンサ用のベースとして特に使用される。金属または金属合金としては、金、銀、銅、ニッケル、ニッケルとコバルトの合金およびニッケルと鉄の合金が特に好ましい。フィルム材料としては、セラミック、およびポリテトラフルオルエチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)またはシクロオレフィンコポリマ(COC)のようなプラスチックも適している。フィルムは、約0,05mm?数mmの厚さを有する。
【0010】
互いに積み重ねたフィルムの相互結合またはフレームとフィルム積層との間の結合は、溶接またはろう付け、好ましくはレーザ溶接、レーザろう付け、電子線溶接、マイクロ拡散溶接によって、あるいは例えばセラミックグリーンフィルムのようなセラミック中間層を介した接着または継ぎ合わせによって行うことが有効である。フィルムは、流体がそのために設けられたチャンネルのみを通して流れ、また2つのフィルムの間の望ましくない位置で飛び出すことができないように、フィルム積層内で互いに結合される。液密の結合は、フィルムの固定相互プレスによっても達成することができる。フィルムのミクロ構造化、特にフィルム表面へのチャンネルの付与はエッチング、フライス加工または放電加工によって行われる。特に適切な方法は、LIGAまたはレーザLIGAである。ポリマ材料製のフィルムは型成形法によって製造されることが好ましい。
【0011】
「チャンネル」または「ミクロチャンネル」とは、本発明に関連して、フィルムの一方または両方の表面の溝状の窪部を意味する。このようなチャンネルの幅は1?1000μm、好ましくは5?500μmの範囲にある。通常、多数のチャンネルが互いに並んで、しばしば平行に、同時にいくつかの例では別の形態で延在して配設される。アスペクト比はチャンネル幅に対するチャンネルの深さの比率を表す。通常、ミクロチャンネルのアスペクト比は1以下である。」

「【0031】
図4は本発明によるフレーム要素10を示し、本図ではセンサ6はフレーム内の孔を通してフレーム開口部に導入される。センサ6は、圧力および/または温度センサであり得る。図5は、フィルム積層と、フィルム積層の前面および後面の配設された図4のフレーム要素10とを有する本発明による基本モジュールを示している。フィルム積層は、フィルム積層の前面から背面に一群で平行かつ直線に延在するミクロ構造のチャンネルを有する流体ライン要素14から構成される。さらに、フィルム積層はセンサ/加熱要素12と熱伝達要素13とを含む。図5の基本モジュールは反応経路として適している。
【0032】
図6a、図6b、図6cは、フィルム積層内に共に配設するために適切な加熱要素12’、流体ライン要素14’および熱伝達要素13’を示している。図6aの加熱要素12’は、本質的に長方形のプレートから構成され、その表面を電気熱抵抗加熱ワイヤが通る。加熱ワイヤは、接続部18の加熱要素12の一方の側面に終端し、そこで加熱ワイヤに電流が供給される。好ましくは、接続部18はいわゆるボンドパッドとして形成される。図6bの流体ライン要素14’は、流体ライン要素の片側から対向側に延びる一群の平行に延在する溝状のミクロチャンネル20を備える。フィルム積層内の流体ライン要素の上方に配設されたフィルムによって、個々の溝状のチャンネルは上から液密に閉じられ、隣接したチャンネル内への流体の進入またはフィルム積層から側方への流出を阻止する。図6cに示した熱伝達要素13’の場合、冷却または加熱流体は供給路4’を通して導入され、ミクロ構造の熱伝達体チャンネル21を通して熱伝達要素13’を通して導かれ、また流出路4”を通して再び排出される。」

「【図4】、【図5】

」(【図面の簡単な説明】において、「【図4】 センサ付きの本発明によるフレーム要素である。」、「【図5】 フィルム積層とフレーム要素とを有する本発明による基本モジュールである。」と記載されており、ここで、上記【0031】によれば、「フレーム要素10」と記載されていることから、向かって右側が【図4】であり、向かって左側が【図5】であることがわかる。)
)

「【図6a】

【図6b】



2 引用発明

(1) 引用文献1の【0010】、【0011】、【0031】、【0032】、【図4】?【図6b】によれば、引用文献1の【図5】には、フィルム積層と、フィルム積層の前面および後面の配設されたフレーム要素10とを有する本発明による基本モジュールが示されており、当該フィルム積層は、フィルム積層の前面から背面に一群で平行かつ直線に延在するミクロ構造のチャンネルを有する「流体ライン要素14」から構成され、さらに、「センサ/加熱要素12」と「熱伝達要素13」とを含むことがわかり、ここで、当該フィルム積層は、上から「流体ライン要素14」、「熱伝達要素13」、「センサ/加熱要素12」という順番のものが隣接しながら、複数積層されていることがわかり、また、上から4番目の「流体ライン要素14」と、上から3番目の「センサ/加熱要素12」とは、隣接しており、同じく【図6a】、【図6b】の記載からみて、当該「流体ライン要素14」及び当該「センサ/加熱要素12」は、長さ及び幅を有し、実質的に平坦であるといえる。

(2) また、引用文献1の【0032】、【図6b】によれば、上記フィルム積層における「流体ライン要素14(14’)」は、流体ライン要素の片側から対向側に延びる一群の平行に延在する溝状のミクロチャンネル20を備え、各溝状のミクロチャンネル20は、いわゆる「凸状細片」のようなもので互いに分離されていることがわかる。また、溝状のミクロチャンネル20は、「流体ライン要素14」の厚みを部分的に貫通しているともいえる。

(3) 以上のことから、引用文献1には、

「上から『流体ライン要素14』、『熱伝達要素13』、『センサ/加熱要素12』という順番のものが隣接しながら、複数積層されているフィルム積層であって、各『流体ライン要素14』と、『センサ/加熱要素12』は、長さ及び幅を有し、
前記『流体ライン要素14』及び『センサ/加熱要素12』は、実質的に平坦であり、
前記『流体ライン要素14』は、流体ライン要素の片側から対向側に延びる一群の平行に延在する溝状のミクロチャンネル20を備え、溝状のミクロチャンネル20は、凸状細片のようなものにより互いに分離され、
溝状のミクロチャンネル20は、『流体ライン要素14』の厚みを部分的に貫通している、
積層されたフィルム積層」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3 引用文献2の記載

引用文献2には、「マイクロチャンネル装置の製造装置、その製造方法、及び単位動作を実施する方法」(発明の名称)について、以下の記載がある。

「【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロチャンネルを使用した化学反応に使用されるマイクロチャンネル装置の製造装置、その製造方法、及びユニット動作を導く方法に関する。」

「【0042】
用語の定義
「含む」とは1つ以上の追加の要素の存在を排除しないことを意味する。例えば1つの薄層、1つのシート等を含むとは、複数の薄層又はシート等を含むものと理解できる。
【0043】
「接合」とは固着又は接着を意味し、拡散接合、貼着、ろう付け、及び溶接を含む。
【0044】
重畳又は積層体の「周長」とは厚さに直交する平面内で計測して積層体の長さ及び幅廻りの距離を指す。
【0045】
「結合」とは直接接触することを意味する。「結合された」とは積層装置が接合されたことを示す。
【0046】
「シート」とは任意の幅及び長さを有し、厚さ(最小寸法)が好ましくは2mm以下、更に好ましくは1mm以下、ある場合には50?500μmである実質的に平坦な板又はシートを指す。幅と長さは互いに直交し、厚さに対しても直交する。好ましい実施例では、シートはそのシートを含む複数層の積層体の長さと幅に共通する長さと幅を有する。シートの長さは流れの方向に沿っている。しかし流れの方向が決定できない場合には、長さはシートの長さ寸法である。
【0047】
「薄条片」は厚さが5mm未満、好ましくは2mm未満、更に好ましくは1mm未満の厚さを有する。長さは条片の細長寸法のことである。幅は長さと厚さに直交する方向の寸法である。面積は長さ×幅である。薄条片の面積は、シート、基板又は積層体であってその上に当該薄条片が載せられるものの面積の50%以下、好ましくは30%以下、更に好ましくは10%以下である。ある好ましい実施例では、薄条片は長さ対幅のアスペクト比が10以上、好ましくは50以上、更に好ましくは100以上である。薄条片は円形断面(ワイヤ)、正方形断面、長方形断面等を有しうる。
【0048】
「単位動作」とは化学反応、蒸発、圧縮、化学分離、蒸留、凝縮、混合、乳化、加熱又は冷却を意味する。これらの単位操作ではしばしば流体の輸送が生じるが、単位操作には単なる流体の輸送は意味しない。ある好ましい実施例では単位操作は単なる混合ではない。
【0049】
複数のシートを重畳して形成する装置中では、「薄層」はシートを表す。条片又は他の部材を重畳して形成される装置中では、薄層はその中を1つ又は複数の流路が貫通する一組の部材を表すことがある。薄層は平面内で不連続であり得るが接合により連続する。薄層は更に一方の端部が流れを複数の平行なマイクロチャンネルに分配するために開放領域に隣接している場合には不連続にとどまることができる。不連続な薄層は第2の不連続な薄層と一端部で接合して連続な結合又は壁を形成することができる。
【0050】
「積層装置」とは装置を流通する処理流に対して単位動作を実施することができるように薄層から製作された装置である。「積層装置」は構成部材を重畳して形成される装置である。ある場合には、構成部材はシートであるが、他の実施例では構成部材は条片又はブロック体である。本明細書に記載され全ての装置は積層装置(又は互いに結合された複数の積層装置)である。薄層はサブ組立て積層体よりなりうる(図15参照)。
【0051】
「マイクロチャンネル」は少なくとも1つの5mm以下の内法寸法を有する。マイクロチャンネルは高さと、幅と、長さを有する。高さ及び/又は幅は好ましくは約2mm以下であり、より好ましくは1mm以下である。長さは一般に長い、好ましい長さは1cmより長く、好ましくは1-50cmである。マイクロチャンネルはその長さに沿って断面積が変動し得るが、入口オリフィスのような単なるオリフィスではない。
【0052】
「開放チャンネル」は反応チャンネルの全体にわたって延び且つ比較的低い圧力降下で反応チャンネルを気体が流れる少なくとも0.05mmの空隙である。
【0053】
「処理チャンネル体積」は処理チャンネルの内部体積である。この体積は触媒の体積(触媒を使用する場合)と開放流れ体積(開放流れが存在する場合)を含む。この体積にはチャンネル壁は含まれない。例えば、2cm×2cm×0.1cmの触媒と触媒に直接接した2cm×2cm×0.2cmの開放流れ体積を有する反応室は1.2cm^(3)の全体積を有する。
【0054】
層の断面積はチャンネル壁の面積を含む。層は典型的にはチャンネル壁により分離される複数のチャンネルを含む。チャンネルの断面積には流れ変更部材により占有される面積は含まれない。
【0055】
「支持片」は積層装置に構造的な指示を与える部片である。
典型例は別々のシートを互いに離隔するワイヤ又は棒材である。ある実施例では支持片は2つのシートに直接接触する(すなわち結合される)。しかし、ある実施例では支持片は2つのシートに直接接触せず、その代わりに他の支持片結合される。積層装置の全断面積にほぼ延在するシートは構造的な支持を与えるが支持部片ではない。ある実施例では支持部片はほぼ平坦である。
「厚さ」は重畳方向に測る。」

「【0110】
本発明はまた本発明の任意の積層装置において1以上の単位動作を実施する方法を含む。単位動作を実施するための適当な動作条件は通常の実験により決定できる。本発明の反応には次の反応、例えばアセチル化、付加反応、アルキル化、脱アルキル化、水素添加アルキル化、還元性アルキル化、アミン化、アンモ酸化、アリール化、自熱リフォーミング、カルボニル化、脱カルボニル化、還元性カルボニル化、カルボキシル化、還元性カルボキシル化、還元性カップリング、縮合、クラッキング、水素添加クラッキング、環化、シクロオリゴマー化、ダツハロゲン化(当審注:「脱ハロゲン化」の誤記と認定する。)、脱水素化、オキシ脱水素化、二量体化、エポキシ化、エステル化、交換、フィッシャートロプシュ反応、ハロゲン化、ヒドロハロゲン化、同族体化、水和、脱水和、水素添加、脱水素添加、加水分解、水素処理(水素化脱硫HDS/HDN等)、異性化、メチル化、ヂメチル化(当審注:「ジメチル化」の誤記と認定する。)、メタセシス、ニトロ化、酸化、部分酸化、重合、還元、改質、逆水性ガスシフト、サバチエ反応、スルフォン化、テロメ化、エステル交換、三量体化、及び水性ガスシフトが含まれる。これらの各反応に対しては、当業者に知られた触媒及び条件がある。本発明はこれらの触媒を利用する装置及び方法を含む。
【0111】
例えば、本発明はアミン化触媒を使用するアミン化法とアミン化触媒を収容した装置を含む。本発明は上記の各反応に対して、個別に(例えば水素添加分解)、又は群で(例えば、それぞれ水素ハロゲン化、水素メタル化、水素ケイ素化触媒による水素ハロゲン化、水素メタル化、水素ケイ素化)を実施できる。本発明の装置を利用する各反応に対する適当な処理条件と触媒は当業者の常識と普通の実験で決定できる。一例を挙げると、本発明は本書に記載した積層装置(反応器)を使用したフィッシャートロプシュ反応を提供する。」

「【0112】
(実験例)
試験装置を次の部片から構成した(厚さは積層方向であり、参照符号は図17のものである)。
リブ52:幅1.52mm×厚2.54mm×長93.6mm
リブ54:幅1.52mm×厚5.10mm×長79.5mm
リブ(第2型):幅1.52mm×厚5.10mm×長51.1mm
薄シート56:幅79.8mm×厚0.51mm×長93.7mm
基板58:幅79.8mm×厚12.7mm×長93.7mm
縁部条片60:幅12.7mm×厚5.10mm×長79.8mm
縁部条片62:幅12.7mm×厚2.54mm×長93.7mm
ろう材箔64:各縁部条片の上下に配置した。
【0113】
組立において、上記リブを前述の櫛状の固定具を使用して薄シート上に整列し、また縁部条片も薄シート上に配置した。これらのリブと縁部条片は所定位置に仮溶接した。好ましくは溶接工程は抵抗又はレーザ(スポット)溶接による。このようにしてサブ組立体を形成した。サブ組立体を縁部条片の面でろう付けすることにより重畳し、ろう付け炉に入れて真空下に約800℃まで加熱した。
【0114】
チャンネルと外部の間の圧力差は縁部条片の周部を隣接した壁シムに封着するのに必要である。外部は積み重ね工程でレーザ溶接により封着できる。縁部条片が部分的に積層された重畳体9の表面に露出された状態で、縁部条片の下側部分をそれが乗っているシートに対してレーザ溶接できる。シートが縁部条片に載せられた後に、上側の縁部条片の周部が直上のシートに局部加熱によりレーザ溶接できる。熱はシートを透過して接合部に達する。
【0115】
同じ方法により第2の装置を形成した。ただし次の部片を使用した。
ワイヤ(リブ):直径0.254mm×長178mm
リブ: 幅1.02mm×厚1.02mm×長127mm
薄シート: 幅127mm×厚1.27mm×長178mm
基板:幅127mm×厚12.7mm×長178mm
縁部条片:幅12.7mm×厚0.252mm×長178mm
縁部条片:幅12.7mm×厚1.02mm×長127mm
及びろう材箔
この第2の装置ではワイヤはワイヤ間に0.76mmの空隙があり、また各層には99本のワイヤが存在した。」

「【図17】



4 引用文献3の記載

引用文献3には、「水素製造装置およびその製造方法」(発明の名称)について、以下の記載がある。

「【0051】
次に、触媒担持体11,14を改質部6、CO除去部7に載置した後、筐体本体2Aの開口面を閉塞するように、筐体蓋体2Bを筐体本体2Aに接合(図3の斜線を付した部位で接合)して筐体2を形成する。これにより、気化部5と改質部6とCO除去部7がこの順に連通したものとなり、本発明の水素製造装置1が得られる。この筐体本体2Aと筐体蓋体2Bの接合は、例えば、拡散接合、ロウ付け、レーザー溶接、抵抗溶接、陽極接合等により行うことができ、特にレーザー溶接が触媒C1,C2への熱による影響が少なく好ましい。
上述のような本発明の水素製造装置の製造方法では、筐体2の内部に直接触媒を担持することなく、隔壁3,4による筐体本体2A内部の区画と独立して触媒担持体11,14を作製するので、触媒担持量のバラツキが抑制され、均一な触媒担持が可能であり、かつ、触媒C1,C2の汚染や失活が生じることが防止される。また、筐体本体2Aと筐体蓋体2Bとの接合面の清浄性が失われることがなく、かつ、接合面積が小さいもの(図3の斜線を付した部位)となるので、接合の信頼性が高いとともに、この接合工程での熱による触媒C1,C2の凝集、失活を防止することができる。」

「【実施例】
【0054】
次に、より具体的な実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
[実施例1]
(筐体本体の作製)
SUS304のブロック体(72mm×24mm、高さ10mm)を準備し、このブロック体の一方の面から切削加工を行った。これにより、厚み3mmの2個の隔壁により内部が区画され、気化部(15mm×18mm、深さ9mm)、改質部(30mm×18mm、深さ9mm)、CO除去部(15mm×18mm、深さ9mm)がこの順に配列され、隔壁の端部には1.8m×1.8mmの開口部が形成された。
次いで、筐体本体の気化部とCO除去部の壁部に直径2mmの開口を形成し、この開口に外径3mm、内径2mmのSUS304のパイプを銀ロウ付により接合した。これにより、図3に示されるような筐体本体を得た。
・・・(中略)・・・
【0058】
(筐体本体と筐体蓋体の接合)
上述の筐体本体の改質部、CO除去部に、それぞれ改質部用の触媒担持体、CO除去部用の触媒担持体を載置した。
次いで、SUS304からなる筐体蓋体(70mm×22mm、厚み0.5mm)を準備し、上述の筐体本体の開口面を閉塞するように配置し、その後、下記の条件でレーザー溶接により筐体本体と筐体蓋体を接合した。
(レーザー溶接の条件)
・出 力 : 180W
・パルスエネルギー: 6.4J
・周波数 : 30Hz」

「【図3】



5 引用文献4の記載

引用文献4には、「触媒または吸着媒体用内部フィン支持体を備えるマイクロチャネル」(発明の名称)について、以下の記載がある。

「【0073】
SMR触媒を担持するFeCrAlYフィンを除き、マイクロチャネル反応器を様々な厚さのインコネル617プレートから作製し、積み重ね、互いに締め付け、周縁を溶接して底面積0.5×3.36インチ(12.7×92mm)、高さ0.67インチ(171.1mm)の反応器を形成する。ガス流用のすべてのチャネルは、電極放電加工(EDM)によって形成される空気ジェットオリフィスを除き、従来の技術を用いて機械加工される。空気ヘッダプレート(厚さ6.35mmで底面積12.7×56.5mm)を、空気ジェットオリフィスの上の燃焼プレート中に機械加工された深さ2.54mmの窪み中に溶接する。燃焼プレートに隣接する面に、深さ0.125インチ(3.18mm)×幅0.080インチ(2.03mm)×長さ1.84インチ(46.8mm)の寸法の空気ヘッダチャネルが機械加工される。燃焼プレートはウェブプレートに隣接して積み重ねられ、これはSMRプレートに隣接して積み重ねられる。SMRプレートは同一面で3区画に分割され、積み重ねた後、互いに、およびウェブプレートに溶接される。中心SMR区画(長さ17.7mmのヘッダとフッタ間の中心)の全体の長さ56.7mmにフィンを含むマイクロチャネルが機械加工される。隣接するSMRプレート区画は各々その中に断面2.03×0.66mmで長さ12.6mmのヘッダまたはフッタチャネルが形成してある。燃焼プレートがウェブプレートに隣接する面に機械加工されて長さ1.78インチ(4.52cm)の燃焼チャネルを形成し、熱を吸熱SMR反応へ提供する。燃焼チャネルは0.080×0.036インチ(2.03×0.91mm)の断面を有する。また、燃焼プレートは流れ方向に沿った燃焼チャネル中心線上の中心にジェットオリフィスも含み、厚さ0.150インチ(3.81mm)のプレートに電極放電加工(EDM)によって機械加工され、それによって空気ヘッダチャネルを燃焼チャネルに連結する。燃焼流はSMRガスに対して並流で供給される。燃焼チャネルは燃焼チャネルの入口で水素を供給され、予備過熱された空気は、長さ45.2cmの燃焼ゾーンに、特に燃焼ゾーン入口から1.0、2.7,4.8,7.4、14.7、24.4、34.0mm下流に分配された前述の空気ジェットオリフィスに導入される。軸方配置1.0mmと4.8mmの空気ジェットオリフィスの断面は流れの軸に沿って楕円であり、寸法は0.024×0.012インチ(0.61×0.30mm)で両端は全円である。軸方配置2.7mmのジェット孔の断面は正三角形であり、0.024インチ(0.61mm)の両辺と半径0.05mmの円の角を有し、下流を「指す」。他のすべての空気ジェットオリフィスの断面は直径0.012インチ(0.30mm)の円である。水素燃料は、断面2.03×0.41mmで長さ23.4mmのヘッダ領域を燃焼ゾーンへ導かれる。燃焼燃料ヘッダの端部で、0.41mmの寸法はウェブからジェット孔へ向かって突然拡大して0.91mmに広がる。燃焼チャネルとSMR反応プロセスマイクロチャネルの分離は、0.060インチ(1.52mm)ウェブであり、ウェブプレートの中心(マイクロチャネル幅の中心でもある)から周縁へ深さ0.25インチ(6.35mm)に穿孔された直径0.023インチ(0.58mm)のサーモウェル(thermowell)を除いて均質な固体である。ウェブに反応ゾーンの長さに沿って6箇所に配置されたこれらのサーモウェルは、0.50mmのK型非接地インコネルのコーティング熱電対を介してSMRと燃焼チャネル間の金属の温度測定を可能にし、燃焼またはSMRチャネルのいずれかに気密シールを施す煩わしさがない。ガスは空気、水素、およびSMR反応物入口に導入され、各プレートの面に直交して展延する内径1.75mm(外径3.18)の管を経て燃焼排気およびSMR生成物出口から除かれる。追加で設けられた4個の内径1.75mm管は、フィンの両端でSMRチャネルに接し、燃焼ゾーンの始めと終わりに一致するレベルで燃焼チャネルに接する。」

6 引用文献5の記載

引用文献5には、「マイクロチャネルプロセス技術を使用するプロセスおよび装置」(発明の名称)について、以下の記載がある(括弧内は、当審仮訳)。

「Summary of the Invention
A problem associated with commercial hydrocracking processes relates to the formation of hot spots and coking that tend to form in the hydrocracking reactors. These hot spots and coking may be created by inadequate mixing, inadequate contacting with the catalyst and/or inefficient temperature control. The present invention provides a solution to these problems. With this invention it is possible to obtain significantly reduced coking over that observed in conventional hydrocracking processes. It is also possible to obtain higher rates of reaction and more precise temperature control. The invention provides the advantage of higher selectivity to desired products over conventional hydrocrackers. These advantages may be achieved with the invention as a result of enhanced mass and energy transfer that is due in part to the microchannel construction of the microchannel reactors used to treat the reactants.
(発明の概要
商業的な水素化分解プロセスと関連する問題は、水素化分解反応器の中で形成される傾向があるホットスポットの形成およびコーキングに関する。これらのホットスポットおよびコーキングは、不適切な混合、触媒との不適切な接触および/または効率の悪い温度調節によって生み出されることがある。本発明は、これらの問題に対する解決策を提供する。本発明によれば、従来の水素化分解プロセスにおいて観測されるものより顕著に低下したコーキングを得ることが可能である。より高い反応速度およびより精密な温度調節を得ることも可能である。本発明は、従来の水素化分解装置より高い所望の生成物への選択性という利点を提供する。本発明では、反応体を処理するために用いられるマイクロチャネル反応器のマイクロチャネル構造に部分的に起因する増強された物質移動およびエネルギー移動の結果としてこれらの利点を実現することができる。)」(第1頁第26行?第2頁第5行)

「This invention relates to a hydrocracking process, comprising: (A) flowing CO and H_(2) in a Fischer-Tropsch process microchannel in contact with a Fischer-Tropsch (FT) catalyst to form a Fischer-Tropsch synthesis product; and (B) flowing reactants comprising the Fischer-Tropsch synthesis product from step (A) and hydrogen in a hydrocracking process microchannel in contact with a hydrocracking catalyst to form one or more hydrocracked products and removing the hydrocracked product from the hydrocracking process microchannel; the temperature within the hydrocracking process microchannel being in the range from about 50 ℃ to about 500 ℃, and in one embodiment from about 100 ℃ to about 400 ℃; the pressure within the hydrocracking process microchannel being in the range from about 1 to about 25 MPa, and in one embodiment in the range from about 1 to about 15 MPa, and in one embodiment from about 1 to about 7 MPa, and in one embodiment from about 1 to about 4 MPa; and the hydrogen to Fischer-Tropsch synthesis product volume ratio for the reactants entering the hydrocracking process microchannel being in the range from about 10 to about 6000 seem of hydrogen per ccm of Fischer-Tropsch synthesis product, and in one embodiment from about 50:1 to about 4000:1 sccm/ccm, and in one embodiment from about 100:1 to about 2000:1 sccm/ccm, and in one embodiment from about 300:1 to about 1500:1 sccm/ccm. The Fischer-Tropsch process microchannel and the hydrocracking process microchannel may comprise the same process microchannel. Alternatively, the Fischer-Tropsch process microchannel and the hydrocracking process microchannel may comprise different process microchannels. The Fischer-Tropsch catalyst and the hydrocracking catalyst may be positioned in the same process microchannel. These catalysts may be mixed together in the same reaction zone. The hydrocracking catalyst may be positioned in the same process microchannel as the Fischer-Tropsch catalyst, but downstream of the Fischer-Tropsch catalyst. The hydrocracking catalyst may be downstream of the Fischer-Tropsch catalyst in another process microchannel. Part of the hydrocracking catalyst may be mixed with the Fischer-Tropsch catalyst and part of the hydrocracking catalyst may be positioned downstream of the Fischer-Tropsch catalyst, the downstream hydrocracking catalyst being positioned in either in the same process microchannel and/or in another downstream process microchannel. In one embodiment, a footer and/or header may be positioned intermittent between the Fischer-Tropsch catalyst and the hydrocracking catalyst.
(本発明は、(A)COおよびH_(2)をフィッシャー・トロプシュプロセスマイクロチャネルの中へ流し、フィッシャー・トロプシュ(FT)触媒と接触させてフィッシャー・トロプシュ合成生成物を形成させるステップ、および(B)ステップ(A)からのフィッシャー・トロプシュ合成生成物および水素を含む反応体を水素化分解プロセスマイクロチャネルの中へ流し、水素化分解触媒と接触させて1つ以上の水素化分解生成物を形成させ、水素化分解プロセスマイクロチャネルから水素化分解生成物を取り出すステップを含み、水素化分解プロセスマイクロチャネル内の温度は約50℃から約500℃の範囲内、一実施態様において約100℃から約400℃であり、水素化分解プロセスマイクロチャネル内の圧力は約1から約25MPaの範囲内、一実施態様において約1から約15MPaの範囲内、一実施態様において約1から約7MPa、一実施態様において約1から約4MPaであり、水素化分解プロセスマイクロチャネルへ入る反応体についてフィッシャー・トロプシュ合成生成物に対する水素の体積比は1ccmのフィッシャー・トロプシュ合成生成物あたり約10から約6000sccm、一実施態様において約50:1から約4000:1sccm/ccm、一実施態様において約100:1から約2000:1sccm/ccm、一実施態様において約300:1から約1500:1sccm/ccmの水素である水素化分解プロセスに関する。フィッシャー・トロプシュプロセスマイクロチャネルと水素化分解プロセスマイクロチャネルとは同じプロセスマイクロチャネルを含んでよい。あるいは、フィッシャー・トロプシュプロセスマイクロチャネルと水素化分解プロセスマイクロチャネルとは異なるプロセスマイクロチャネルを含んでよい。フィッシャー・トロプシュ触媒と水素化分解触媒とは同じプロセスマイクロチャネルの中に配置されてよい。これらの触媒は同じ反応ゾーンの中で混合されてよい。水素化分解触媒は、フィッシャー・トロプシュ触媒と同じプロセスマイクロチャネルの中ではあるがフィッシャー・トロプシュ触媒の下流に配置されてよい。水素化分解触媒は、別のプロセスマイクロチャネルの中でフィッシャー・トロプシュ触媒の下流にあってよい。水素化分解触媒の一部がフィッシャー・トロプシュ触媒と混合され、水素化分解触媒の一部がフィッシャー・トロプシュ触媒の下流に配置されてもよく、下流の水素化分解触媒は同じプロセスマイクロチャネルの中および/または下流にある別のプロセスマイクロチャネルの中のどちらに配置されてもよい。一実施態様において、フィッシャー・トロプシュ触媒と水素化分解触媒との間にフッタおよび/またはヘッダが中間配置されてよい。)」(第3頁第19行?第4頁第20行)

「The local conditions in the microchannel reactor may be controlled via tailoring temperature and/or composition profiles via one or more of the following: heat exchange with heat exchange channels adjacent to or in thermal contact with the one or more process microchannels in the microchannel reactor; heat exchange with multiple combinations of heat exchange channels strategically placed to correspond to individual reaction sections within the process microchannels; addition of one or more reactants and/or diluents using staged addition along the axial length of the process microchannels. An isothermal reactor profile may be employed. With such a thermal profile, a partial boiling heat exchange fluid may be used. A tailored temperature profile along the length of the process microchannels may be used. Heat may be removed with a single phase fluid, such as a hot oil, steam, a gas or the like. The heat exchange fluid may flow in a direction that is co-current, counter-current or cross-current to the flow of the process fluids in the process microchannels. The heat exchange fluid may be used to remove exothermic reaction heat from the process microchannels, and to preheat the reactants entering the process microchannels. The reactants may be preheated to substantially the reaction conditions or they may be partially preheated from the inlet temperature of the feed to an intermediate temperature between the average reaction temperature and the inlet temperature. In one embodiment, the hydrocarbon reactant may enter the reactor at a temperature below the reaction temperature to minimize coking and then be heated to the reaction temperature in the reactor. In one embodiment, the hydrocarbon reactant entering the microchannel reactor may be at a temperature that is about 10 ℃, or about 50 ℃, or about 100 ℃, or more, less than the reaction temperature. In one embodiment, the hydrocarbon reactant entering the microchannel reactor may be at a temperature that is between 200℃ and 250 ℃, and the reaction temperature may be between about 300 ℃ and 400 ℃. In one embodiment, the reactor may be operated in a non-isothermal mode where the reaction temperature at the top of the reaction channel is less than or greater than the temperature at the reactor outlet by 10 ℃, or 200 ℃, or 100 ℃ or more. It may be desired to have a cooler front end of the process microchannel to create a desired thermal profile between the fluid manifold region and the catalytic reaction region.
(マイクロチャネル反応器の中の局所条件は以下、すなわちマイクロチャネル反応器の中の1つ以上のプロセスマイクロチャネルと隣接しているかまたは熱接触している熱交換チャネルとの熱交換、プロセスマイクロチャネル内の個々の反応セクションと対応するように戦略的に配置されている熱交換チャネルの複数の組み合わせとの熱交換、プロセスマイクロチャネルの軸方向長さに沿った段階的添加を用いる1つ以上の反応体および/または希釈媒の添加、の1つ以上によって温度および/または組成プロフィールを調整することによって調節してよい。等温反応器プロフィールを使用してよい。そのような熱プロフィールとともに部分沸騰熱交換流体を用いてよい。プロセスマイクロチャネルの長さに沿って、調整された温度プロフィールを用いてよい。熱い油、蒸気、気体または類似物などの単一相流体を用いて熱を除去してよい。熱交換流体は、プロセスマイクロチャネルの中のプロセス流体の流れに対して並流、向流または交差流となる方向へ流れてよい。熱交換流体を用いてプロセスマイクロチャネルから発熱反応の熱を除去し、プロセスマイクロチャネルへ入る反応体を予熱してよい。反応体を実質的に反応条件へ予熱してもよく、または反応体を原料の入口温度から平均反応温度と入口温度との間の中間温度へ部分的に予熱してもよい。一実施態様において、炭化水素反応体はコーキングを最小にするために反応温度未満の温度で反応器へ入り、それから反応器の中で反応温度へ加熱されてよい。一実施態様において、マイクロチャネル反応器へ入る炭化水素反応体は、反応温度より約10℃、または約50℃、または約100℃、またはそれ以上低い温度であってよい。一実施態様において、マイクロチャネル反応器へ入る炭化水素反応体は200℃と250℃との間である温度であってよく、反応温度は約300℃と400℃との間であってよい。一実施態様において、反応器は、反応チャネルの上部における反応温度が反応器出口における温度より10℃、または20℃、または100℃以上低いかまたは高い非等温モードで運転されてよい。流体マニホールド領域と触媒反応領域との間の所望の熱プロフィールを作り出すためにより低温のプロセスマイクロチャネルの前端を有することが望ましいことがある。)」(第51頁第17行?第52頁第16行)

第5 対比

本願発明1と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。

1 引用発明の「流体ライン要素14」は、上記「第4 2(2)」で述べたとおり、その片側から対向側に延びる一群の平行に延在する溝状のミクロチャンネル20を備えることから、各溝状のミクロチャンネル20は、平行な長さを有する一群であるといえる。そして、引用文献1の【図6b】を参酌すれば、これがシート状であることは明らかである。
してみると、引用発明の「流体ライン要素の片側から対向側に延びる一群の平行に延在する溝状のミクロチャンネル20を備え」る「流体ライン要素14」は、その構造からみて、本願発明1の「平行な長さを有する平行マイクロチャネルのアレイを備え」る「第1のシート」に相当するといえる。

2 また、引用発明の「流体ライン要素14」の「溝状のミクロチャンネル20」は、凸状細片のようなものにより互いに分離されていることから、引用発明の「溝状のミクロチャンネル20」が「互いに分離され」る「凸状細片のようなもの」は、本願発明1の「マイクロチャネル」が「互いに分離され」る「バリア壁」に相当するといえる。

3 また、引用発明の「センサ/加熱要素12」は、引用文献1の【図6a】を参酌すると、シート状であることは明らかであり、また、「流体ライン要素14」との位置関係からみて、本願発明1の「第2のシート」に相当するといえる。

4 また、上記「1」より、引用発明の「溝状のミクロチャンネル20は、流体ライン要素14の厚みを部分的に貫通し、」は、本願発明1の「前記マイクロチャネルは、前記第1のシートの厚みを部分的に又は完全に貫通し、」に相当するといえる。

5 また、引用発明の「フィルム積層」は、溝状のミクロチャンネル20を備える「流体ライン要素14」を備えていることから、引用発明の「フィルム積層」は、本願発明1の「マイクロチャネルアセンブリ」に相当するといえる。

6 さらに、上記「1」、「3」、及び「5」より、引用発明の「上から『流体ライン要素14』、『熱伝達要素13』、『センサ/加熱要素12』という順番のものが隣接しながら、複数積層されているフィルム積層」は、本願発明1の「第1のシート及び第2のシートを備えるラミネートされたマイクロチャネルアセンブリ」に相当するといえる。

7 してみると、本願発明1と引用発明とは、

「第1のシート及び第2のシートを備えるマイクロチャネルアセンブリであって、各シートは、長さ及び幅を有し、
前記第1及び第2のシートは、実質的に平坦であり、
前記第1のシートは、平行な長さを有する平行マイクロチャネルのアレイを備え、前記マイクロチャネルは、バリア壁により互いに分離され、
前記マイクロチャネルは、前記第1のシートの厚みを部分的に又は完全に貫通し、
前記第1のシート及び前記第2のシートは、隣接している、
マイクロチャネルアセンブリ。」

の点で一致し、一方、以下の点で相違している。

<相違点1>

各シート(第1のシート及び第2のシート)における「シート長さにシート幅を乗じることにより定義される断面積」について、本願発明1は、「100cm^(2)より大きく」と特定しているのに対して、引用発明は、斯かる点が不明である点。

<相違点2>

マイクロチャネルアセンブリについて、本願発明1は、「前記バリア壁の長さに沿って伸び、前記第1のシートを前記第2のシートに結合する溶接部を備える、ラミネートされた」と特定しているのに対して、引用発明は、斯かる点が不明である点。

第6 判断

事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討する。

1 <相違点2>について

引用文献1の【0010】によれば、引用発明の積層されたフィルム積層に関して、「互いに積み重ねたフィルムの相互結合・・・(中略)・・・は、溶接またはろう付け、好ましくはレーザ溶接、レーザろう付け、電子線溶接、マイクロ拡散溶接によって、・・・(中略)・・・行うことが有効である。」と記載されている。
上記引用文献1の記載を考慮するならば、引用発明の「上から『流体ライン要素14』、『熱伝達要素13』、『センサ/加熱要素12』という順番のものが隣接しながら、複数積層されているフィルム積層」の相互結合形態としては、隣接している「流体ライン要素14」と「センサ/加熱要素12」と「熱伝達要素13」の各要素間の周囲を溶接することが想定されていると解される。そして、その際、当該周囲ではない部分、すなわち、「流体ライン要素14」内における凸状細片のようなものに対して、その長さに沿って溶接することは、技術的にみても想定外のことというべきである。
してみると、相違点2に係る本願発明1の「前記バリア壁の長さに沿って伸び、前記第1のシートを前記第2のシートに結合する溶接部を備える、ラミネートされた」という構成は、仮に、引用文献2?5に開示されていたとしても、引用発明においては採用し得ないものである。
そして、マイクロチャネルアセンブリが、本願発明1は、「前記バリア壁の長さに沿って伸び、前記第1のシートを前記第2のシートに結合する溶接部を備える、ラミネートされた」ことにより、本願発明1は、「圧縮及び引張下の両方で動作し、1000時間を超える稼動期間内で圧縮に戻る程堅牢であった」(【0147】)、「フィン及び触媒圧密の熱接触は、デバイス内の圧力変化により影響を受けなかった」(【0147】)、「全溶接反応器の性能が検証され、ろう付け及び/又は拡散接合が必要ではないことが実証された。全溶接製造技術により可能となった熱接触は、望ましい結果を提供した」(【0148】)という顕著な効果を奏するものである。

2 小括

したがって、他の相違点について判断するまでもなく、相違点2に係る構成を備える本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献1?5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

また、本願発明2?11は、上記本願発明1を引用し、本願発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、上記本願発明1と同様な理由から、引用発明、引用文献1?5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

また、本願発明12についても、本願発明1における発明のカテゴリーを、「ラミネートされたマイクロチャネルアセンブリを形成する方法」という製造方法の発明に変更するものであり、実質的に、本願発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、上記本願発明1と同様な理由により、引用発明、引用文献1?5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
さらに、本願発明12を引用する本願発明13についても、同様な理由により、引用発明、引用文献1?5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 むすび

以上のとおり、本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献1?5に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-05-21 
出願番号 特願2013-535022(P2013-535022)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B01J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 神田 和輝山本 吾一  
特許庁審判長 冨士 良宏
特許庁審判官 日比野 隆治
國島 明弘
発明の名称 ラミネートされたリーク防止化学処理機、作製方法及び操作方法  
代理人 アクシス国際特許業務法人  

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