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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1340644
審判番号 不服2016-16069  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-27 
確定日 2018-05-23 
事件の表示 特願2014-255106「ワイヤレス通信システムにおける無線アクセス技術間ハンドオーバ中のQoSコンテキスト転送のための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月16日出願公開、特開2015- 73324〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2010年(平成22年)8月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2010年(平成22年)6月21日、米国)を国際出願日とする特願2013-516561号の一部を、平成26年12月17日に新たな特許出願としたものであって、平成27年1月16日に手続補正がなされ、平成27年9月28日付け拒絶理由の通知に対し、平成28年1月6日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成28年6月21日に拒絶査定がされ、これに対して平成28年10月27日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成28年10月27日付けの手続補正の却下の決定
[結論]
平成28年10月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1の記載を、次のとおり補正することを含むものである。(以下、この記載事項により特定される発明を「本願補正発明」という。)
「【請求項1】
第1の無線アクセス技術(RAT)に関連するサービス品質(QoS)パラメータの第1のセットと、第2のRATに関連するQoSパラメータの第2のセットとを識別することと、
利用されたネットワーク通信アプリケーションと、前記利用されたネットワーク通信アプリケーションに関連するQoSパラメータの前記第1のセット中の少なくとも1つのQoSパラメータとに関係する情報を取得することと、
前記取得した情報に基づいて、前記第1のRATに関連するQoSパラメータの前記第1のセットと、前記第2のRATに関連するQoSパラメータの前記第2のセットの前記少なくとも1つが、前記利用されたネットワーク通信アプリケーションから取得されないと判断された場合に、前記利用されたネットワーク通信アプリケーションとは無関係に、前記利用されたネットワーク通信アプリケーションに関連するQoSパラメータの前記第1のセット中の前記少なくとも1つのQoSパラメータを、QoSパラメータの前記第2のセット中の少なくとも1つのQoSパラメータにマッピングすることと
を備える、方法。」(下線は、手続補正書の記載のとおり。)

2 補正の適否
上記補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記取得した情報に基づいて、前記利用されたネットワーク通信アプリケーションとは無関係に、前記利用されたネットワーク通信アプリケーションに関連するQoSパラメータの前記第1のセット中の前記少なくとも1つのQoSパラメータを、QoSパラメータの前記第2のセット中の少なくとも1つのQoSパラメータにマッピングすること」を「前記取得した情報に基づいて、前記第1のRATに関連するQoSパラメータの前記第1のセットと、前記第2のRATに関連するQoSパラメータの前記第2のセットの前記少なくとも1つが、前記利用されたネットワーク通信アプリケーションから取得されないと判断された場合に、前記利用されたネットワーク通信アプリケーションとは無関係に、前記利用されたネットワーク通信アプリケーションに関連するQoSパラメータの前記第1のセット中の前記少なくとも1つのQoSパラメータを、QoSパラメータの前記第2のセット中の少なくとも1つのQoSパラメータにマッピングする」へと限定する補正であり、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、本件補正は特許法第17条の2第3項、及び第4項の規定に違反するものではない。
そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1) 引用例
原査定の拒絶の理由で引用された特表2006-502666号公報(以下、「引用例」という。)には次の事項が記載されている。(下線は、当審にて付与。)
ア 「【請求項8】
様々な型の無線通信システムを越えてシームレスに動作するよう構成された無線送受信ユニット(WTRU)であって、
無線サービスを実行する少なくとも1つのアプリケーションと、
ユーザとネットワークのインターフェース間でユーザ情報信号を伝送する少なくとも1つのベアラと、
前記WTRUが他の様々な型の無線通信システムにハンドオーバすると、第1の無線通信システムに確立されたセッションを継続可能とすることによって、サービス品質の要件を変換する前記アプリケーションと前記ベアラとの間の少なくとも1つのトランスレータと
を備えたことを特徴とするユニット。
【請求項9】
前記トランスレータは、
所定の型の無線通信システムに従って指定された、入来するサービス品質の要件を受け取り、および
前記要件を変換して、別の型の無線通信システムに従って前記要件を出力するようさらに構成されたことを特徴とする請求項8に記載のWTRU。」

イ 「【0012】
例えば、WTRU10が、例示の目的のためにCDMA2000システムであるシステム14において、音声会話アプリケーションまたはサービスを利用しており、いかなる理由かで、例示の目的のためにUMTSシステムであるシステム16に切り換わると仮定する。シナリオで、音声会話アプリケーションのQoS要件は、CDMA2000の場合ではUMTSの場合より異なって定義される。したがって、音声会話アプリケーションの実行を継続する(すなわち、ユーザの電話会話を保持する)ためには、WTRU10を、QoSのトランスレータなどのインターフェースを含めて構成を行い、CDMA2000の言葉で指定されたQoS要件をUMTSの言葉に訳す。
【0013】
QoSのトランスレータを利用することにより、あらゆる2つの型の無線通信システムの間でのシームレスな動作を保証できることに留意されたい。一例として、UMTSシステムおよびWLAN型の無線通信システムを越えて動作するWTRUについて以下で説明する。
【0014】
引き続き図2を参照すると、システム16がUMTSシステムであり、WTRU10が進行中の対話型ゲームのアプリケーションを有することにより、システム16のUMTSでアプリケーションを実行しており、さらにWTRU10がWLAN型のシステムであるシステム18にハンドオーバしようとしていると仮定する。
【0015】
前述のとおり、無線通信システムは、各サービスの型に対して特定のQoS定義を有しているので、それぞれベアラサービスを介して情報を伝送する場合に、異なる言語を使用する。一例として、UMTSにおいて、下表(すなわち、表1である)に示すように、遅延およびBER要件を定義することが多い。下表は、第3世代パートナーシッププロジェクトの技術規格(3GPP TS)22105 v620からの引用である。
【0016】
【表1】
【0017】
同様に、QoSを、リアルタイム、対話型ゲーム、およびストリーミングのアプリケーションに対するエンドユーザの経験に基づいて定義することもできる。一例として、以下に示す表2は、UMTSのエンドユーザのQoS目標を表にしたものである。この表もまた、3GPP TS 22105 v620からの引用である。
【0018】
【表2】
【0019】
したがって、この例では、対話型ゲームに関する上表の例示的QoS定義は、システム18で使用されるどのような定義にも変換(すなわちマッピング)する必要があろう。対話型ゲームのQoS要件を変換することによって、ユーザがWLAN型のシステム18に切り換えるにもかかわらず、対話型ゲームを継続することが可能になるであろう。」

ウ 表2



エ 「【0022】
マッピングをWTRUで実行することができるだけでなく、システム自体でも実行することができることに留意することが重要である。もちろん、システムで実行する場合、マッピングを所望のあらゆるシステム構成要素で実行することができる。図3および図4は、WTRUでQoS要件の変換が実行される例であり、以下に説明する。
【0023】
ここで図3を参照すると、様々な無線通信システムのQoS要件を様々な型の無線通信システムを越えてマッピングすることができる、WTRU50を示す。WTRU50は、アプリケーション52および複数のベアラ54_(1)、54_(2)、および54_(n)を含み、これらのベアラをひとまとめにして、参照符号54を用いて参照する。本実施形態において、アプリケーション52はマッピングの機能を含む。すなわち、上で略述した例では、ハンドオーバの前に、ユーザはUMTSシステム16で操作をしている。したがって、アプリケーション52はQoS要件をUMTSのベアラ、例えばベアラ54_(1)に供給しており、UMTSの指定に従ってQoS要件を定義する。ひとたびユーザがWLAN型のシステム18にハンドオーバすると、別のベアラ、例えばベアラ54_(2)を使用してシステム18に情報を伝送する。しかし、WLAN型のシステム18における情報伝送は、ベアラ54_(2)を介して情報を伝送する場合に、利用されるに違いないQoS定義とは、異なるQoS定義を有する。これは、アプリケーションがUMTSシステム16で動作中に開始されたもので、アプリケーション52はUMTSに関して伝わることの問題である。したがって、ユーザがシステム18にハンドオーバする場合、アプリケーションの実行を継続するために、アプリケーションは、UMTSのQoS定義を使用し、ベアラ54_(1)を介して情報を送信することを中止し、WLAN型のシステム18用の適切なQoS定義を使用し、ベアラ54_(2)を介して情報の送信を開始する。上述の通り、システム18はあらゆる型のWLAN型のシステムであることが可能で、したがってシステムに応じて適切なQoS定義を変えることができることに留意されたい。供給されるベアラ54の数が、シームレスに動作することができるWTRUにわたるシステムの型の数に一致することが望ましいことにも留意されたい。アプリケーションを構成することにより、ベアラ等が提供されているすべてのシステムの型の間を変換することが望ましい。
【0024】
次に図4を参照すると、別の実施形態を示し、さらにまた、WTRU50は、所望のあらゆる数の様々な型の無線通信システムを越えてシームレスに動作することができる。本実施形態において、変換すなわちマッピングの機能は、アプリケーション52から分離されている。この装置は、アプリケーションが、様々な型の無線通信システムのQoS要件を変換する責任なしに、通常どおり動作できるという点で好ましい場合もある。
【0025】
本実施形態においてでは、トランスレータ(translator)56_(2)、56_(n)が、アプリケーションと1つを除く各ベアラとの間に供給されることが望ましい。したがって、アプリケーション52を、特定の型のシステム、例えばCDMA2000で開始し、ユーザがそのシステム内で操作を続ける場合、アプリケーション52は、CDMA2000のQoS要件を変換する必要なしに、ベアラ54_(1)と直に通信することができる。ユーザが、所定のシステムの型から別のシステムの型にハンドオーバをしようとしない場合、この方法であらゆる型の無線通信システムにサービスを提供することが望ましい。すなわち、例えば、WTRU50がCDMA2000からUMTSに切り換わり、UMTSのアプリケーションを開始する場合、アプリケーション52とベアラ54_(1)は、UMTSのQoS要件を使用して直に通信するであろう。
【0026】
ユーザが、所定のシステムの型から別のシステムの型にハンドオーバをする場合、アプリケーション52は、ユーザがハンドオーバする先のシステムに対応するベアラと通信する。さらに、アプリケーション52は通常どおり実行を継続するが、アプリケーションと対応するベアラとの通信は、対応するベアラによって受信される前に適切に変換される。例えば、GSMシステムから802.11ネットワークへのハンドオーバをすると仮定すると、ひとたびハンドオーバが行われると、アプリケーション52からの通信を、802.11のベアラ、例えばベアラ54_(n)に経路指定する。アプリケーションは、ユーザがGSMのシステムで動作中に開始されたものであり、したがってアプリケーションはGSMに関するQoS要件を指定するが、QoS要件は、ベアラ54_(n)に対応するトランスレータ56nによって変換され、その結果、ユーザにGSMシステムと802.11システムを越えてシームレスな動作を提供する。」

オ 図3


カ 図4



(2) 引用発明
ア 上記(1)エ段落0024の「本実施形態において、変換すなわちマッピングの機能は、アプリケーション52から分離されている。」との記載によると、引用例において、変換処理とマッピング処理は同じ処理を意味しているといえる。
そして、上記(1)アによれば、引用例の請求項8を引用する請求項9に記載されたWTRUは、請求項8及び9に記載された事項により特定される動作を行うから、引用例の請求項8及び9には、下記の方法が記載されているといえる。
「 様々な型の無線通信システムを越えてシームレスに動作するよう構成された無線送受信ユニット(WTRU)により実行される方法であって、
少なくとも1つのアプリケーションにより無線サービスを実行し、
前記アプリケーションと、ユーザとネットワークのインターフェース間でユーザ情報信号を伝送する少なくとも1つのベアラとの間の少なくとも1つのトランスレータにより、前記WTRUが他の様々な型の無線通信システムにハンドオーバすると、第1の無線通信システムに確立されたセッションを継続可能とすることによって、サービス品質の要件をマッピングし、
前記トランスレータは、
所定の型の無線通信システムに従って指定された、入来するサービス品質の要件を受け取り、および
前記要件をマッピングして、別の型の無線通信システムに従って前記要件を出力するようさらに構成された
方法。」
イ 上記(1)イ段落0012の「音声会話アプリケーションのQoS要件は、CDMA2000の場合ではUMTSの場合より異なって定義される。」、段落0017の「QoSを、リアルタイム、対話型ゲーム、およびストリーミングのアプリケーションに対するエンドユーザの経験に基づいて定義することもできる。」、及び段落0019の「対話型ゲームに関する上表の例示的QoS定義は、システム18で使用されるどのような定義にも変換(すなわちマッピング)する必要があろう。」との記載、及び、上記(1)ウ「表2」によれば、引用例記載の上記発明において、サービス品質の要件といえるQoS要件は、「音声会話」、「ビデオフォン」、「テレメトリ双方向制御」、「対話型ゲーム」、「Telnet」といったアプリケーションごとに定義されているといえる。
ウ 上記(1)エ段落0024の記載、及び、上記(1)カ「図4」によると、引用例記載の上記方法において「マッピングの機能は、アプリケーション52から分離され」、また、「アプリケーションが、様々な型の無線通信システムの」サービス品質の要件といえる「QoS要件を変換する責任なしに、通常どおり動作できる」といえる。

以上を踏まえると、引用例には以下のとおりの発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「 様々な型の無線通信システムを越えてシームレスに動作するよう構成された無線送受信ユニット(WTRU)により実行される方法であって、
少なくとも1つのアプリケーションにより無線サービスを実行し、
前記アプリケーションと、ユーザとネットワークのインターフェース間でユーザ情報信号を伝送する少なくとも1つのベアラとの間の少なくとも1つのトランスレータにより、前記WTRUが他の様々な型の無線通信システムにハンドオーバすると、第1の無線通信システムに確立されたセッションを継続可能とすることによって、サービス品質の要件をマッピングし、
前記トランスレータは、
所定の型の無線通信システムに従って指定された、入来するサービス品質の要件を受け取り、および
前記要件をマッピングして、別の型の無線通信システムに従って前記要件を出力するようさらに構成され、
前記サービス品質の要件はアプリケーションごとに定義され、
マッピングの機能は、アプリケーションから分離され、アプリケーションが、様々な型の無線通信システムのサービス品質の要件をマッピングする責任なしに、通常どおり動作できる
方法。」

(3) 対比
ア 上記(1)ウ「表2」に示されるように、サービス品質の要件がデータレート、エンドツーエンド一方向遅延、情報損失といった複数のパラメータで指定されることを踏まえると、引用発明の「所定の型の無線通信システムに従って指定された」サービス品質の要件、及び、「別の型の無線通信システムに従って」出力されるサービス品質の要件は、それぞれ本願補正発明の「第1の無線アクセス技術(RAT)に関連するサービス品質(QoS)パラメータの第1のセット」、及び「第2のRATに関連するQoSパラメータの第2のセット」に相当するといえる。
そして、サービス品質の要件のマッピングが、マッピング前のサービス品質の要件と、マッピング後のサービス品質の要件との対応関係に基づいて行われる処理であり、マッピングを行うために、マッピング前後のサービス品質の要件をそれぞれ識別する必要があることは技術常識といえるから、所定の型の無線通信システムに従って指定されたサービス品質要件を、別の型の無線通信システムに従うサービス品質の要件へマッピングを行う引用発明は「第1の無線アクセス技術(RAT)に関連するサービス品質(QoS)パラメータの第1のセットと、第2のRATに関連するQoSパラメータの第2のセットとを識別する」動作を行う点で本願補正発明と一致する。

イ 「サービス品質の要件はアプリケーションごとに定義され」ている引用発明において、トランスレータでマッピングされ、出力される、別の型の無線通信システムに従うサービス品質の要件を特定するために、アプリケーションに関する情報が必要なことは明らかである。
また、上記(1)ウ「表2」に示されるように、「音声会話」、「ビデオフォン」、「テレメトリ双方向制御」、「対話型ゲーム」、「Telnet」といったアプリケーションがネットワークを利用していることが明らかであることを踏まえると、無線サービスを実行する引用発明の「少なくとも1つのアプリケーション」は、本願補正発明の「ネットワーク通信アプリケーション」に相当し、引用発明のトランスレータが受け取る「所定の型の無線通信システムに従って指定された、入来するサービス品質の要件」は、「利用されたネットワーク通信アプリケーションに関連するQoSパラメータの第1のセット中の少なくとも1つのQoSパラメータ」といえるから、引用発明は「利用されたネットワーク通信アプリケーションと、前記利用されたネットワーク通信アプリケーションに関連するQoSパラメータの第1のセット中の少なくとも1つのQoSパラメータとに関係する情報を取得する」動作を行う点で本願補正発明と一致する。

ウ 引用発明のトランスレータの「所定の型の無線通信システムに従って指定された、入来するサービス品質の要件を受け取り、および
前記要件をマッピングして、別の型の無線通信システムに従って前記要件を出力する」との処理は、本願補正発明の「利用されたネットワーク通信アプリケーションに関連するQoSパラメータの第1のセット中の少なくとも1つのQoSパラメータを、QoSパラメータの第2のセット中の少なくとも1つのQoSパラメータにマッピングする」処理に相当する。
また、「マッピングの機能は、アプリケーションから分離され、アプリケーションが、様々な型の無線通信システムのサービス品質の要件をマッピングする責任なしに、通常どおり動作できる」引用発明は、アプリケーションとは無関係にマッピング処理を行っているといえるから、引用発明は、「第1のRATに関連するQoSパラメータの第1のセットと、第2のRATに関連するQoSパラメータの第2のセットの前記少なくとも1つが、利用されたネットワーク通信アプリケーションから取得されないと判断された場合に」との条件を伴わないものの、「取得した情報に基づいて、」「利用されたネットワーク通信アプリケーションとは無関係に、前記利用されたネットワーク通信アプリケーションに関連するQoSパラメータの第1のセット中の少なくとも1つのQoSパラメータを、QoSパラメータの第2のセット中の少なくとも1つのQoSパラメータにマッピングする」動作を行う点で本願補正発明と一致する。

以上を踏まえると、本願補正発明と引用発明とは以下の点で一致し、また、相違している。
(一致点)
「第1の無線アクセス技術(RAT)に関連するサービス品質(QoS)パラメータの第1のセットと、第2のRATに関連するQoSパラメータの第2のセットとを識別することと、
利用されたネットワーク通信アプリケーションと、前記利用されたネットワーク通信アプリケーションに関連するQoSパラメータの前記第1のセット中の少なくとも1つのQoSパラメータとに関係する情報を取得することと、
前記取得した情報に基づいて、前記利用されたネットワーク通信アプリケーションとは無関係に、前記利用されたネットワーク通信アプリケーションに関連するQoSパラメータの前記第1のセット中の前記少なくとも1つのQoSパラメータを、QoSパラメータの前記第2のセット中の少なくとも1つのQoSパラメータにマッピングすることと
を備える、方法。」

(相違点)
一致点の「取得した情報に基づいて」、「利用されたネットワーク通信アプリケーションとは無関係に、利用されたネットワーク通信アプリケーションに関連するQoSパラメータの第1のセット中の前記少なくとも1つのQoSパラメータを、QoSパラメータの第2のセット中の少なくとも1つのQoSパラメータにマッピングする」との処理を、
本願補正発明が「第1のRATに関連するQoSパラメータの第1のセットと、第2のRATに関連するQoSパラメータの第2のセットの前記少なくとも1つが、利用されたネットワーク通信アプリケーションから取得されないと判断された場合に、」との条件に基づいて行うのに対して、引用発明の上記処理が上記条件に基づいて行われない点。

(4) 判断
引用例の上記(1)エ段落0023、及び上記(1)オ「図3」には、アプリケーションがマッピングの機能を含む、別の例が記載されている。
そして、マッピングの機能を含むアプリケーションにおいてマッピングされたサービス品質の要件に対して、トランスレータがアプリケーションとは無関係に再度マッピングを行う必要が無いことは明らかであるから、引用発明において、マッピング処理の重複を避けるために「第1のRATに関連するQoSパラメータの第1のセットと、第2のRATに関連するQoSパラメータの第2のセットの前記少なくとも1つが、利用されたネットワーク通信アプリケーションから取得されないと判断された場合に、」との条件に基づいて、マッピングを行うことは当業者が容易に想到し得る事項といえる。

よって、本願補正発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


3 結論
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成28年10月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし37に係る発明は、平成28年1月6日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし37に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
第1の無線アクセス技術(RAT)に関連するサービス品質(QoS)パラメータの第1のセットと、第2のRATに関連するQoSパラメータの第2のセットとを識別することと、
利用されたネットワーク通信アプリケーションと、前記利用されたネットワーク通信アプリケーションに関連するQoSパラメータの前記第1のセット中の少なくとも1つのQoSパラメータとに関係する情報を取得することと、
前記取得した情報に基づいて、前記利用されたネットワーク通信アプリケーションとは無関係に、前記利用されたネットワーク通信アプリケーションに関連するQoSパラメータの前記第1のセット中の前記少なくとも1つのQoSパラメータを、QoSパラメータの前記第2のセット中の少なくとも1つのQoSパラメータにマッピングすることと
を備える、方法。」

2 引用例・引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用例、その記載事項、及び引用発明は、前記「第2」2(1)及び(2)に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、本願補正発明の「前記取得した情報に基づいて、前記第1のRATに関連するQoSパラメータの前記第1のセットと、前記第2のRATに関連するQoSパラメータの前記第2のセットの前記少なくとも1つが、前記利用されたネットワーク通信アプリケーションから取得されないと判断された場合に、前記利用されたネットワーク通信アプリケーションとは無関係に、前記利用されたネットワーク通信アプリケーションに関連するQoSパラメータの前記第1のセット中の前記少なくとも1つのQoSパラメータを、QoSパラメータの前記第2のセット中の少なくとも1つのQoSパラメータにマッピングする」との発明特定事項から「前記第1のRATに関連するQoSパラメータの前記第1のセットと、前記第2のRATに関連するQoSパラメータの前記第2のセットの前記少なくとも1つが、前記利用されたネットワーク通信アプリケーションから取得されないと判断された場合に、」との条件、すなわち前記「第2」2(3)で認定し、前記「第2」2(4)で判断した相違点を省いたものであるから、本願発明と引用発明とは、前記「第2」2(3)で認定した(一致点)で一致し、相違しない。
よって、本願発明は引用発明といえ、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例記載の発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-12-12 
結審通知日 2017-12-19 
審決日 2018-01-05 
出願番号 特願2014-255106(P2014-255106)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04W)
P 1 8・ 113- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久慈 渉  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 松永 稔
海江田 章裕
発明の名称 ワイヤレス通信システムにおける無線アクセス技術間ハンドオーバ中のQoSコンテキスト転送のための方法および装置  
代理人 井関 守三  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 岡田 貴志  
代理人 福原 淑弘  

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