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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 A63F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A63F
管理番号 1340692
審判番号 不服2017-8811  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-16 
確定日 2018-06-15 
事件の表示 特願2012-229476「ゲームプログラム、ゲーム装置、ゲームシステム、およびゲーム処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月 8日出願公開、特開2014- 79398、請求項の数(19)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年10月17日の出願であって、平成28年10月31日付けで手続補正がされ、平成29年4月3日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年6月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がされ、平成30年2月27日付けで拒絶理由通知がされ、同年4月2日付けで手続補正がされたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1乃至19に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」乃至「本願発明19」という。)は、平成30年4月2日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1乃至19に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「操作入力に応じた音を出力する装置に含まれるコンピュータで実行されるゲームプログラムであって、
前記コンピュータを、
入力手段からユーザの入力を受け付ける入力受付手段と、
表示画面に表示される操作オブジェクトを、ユーザ入力に応じて所定の移動可能範囲内で移動させる操作オブジェクト移動制御手段と、
演奏する楽曲に応じて出力される音それぞれに設定される複数の音オブジェクトを、前記表示画面内に出現させて移動させる音オブジェクト移動制御手段と、
前記操作オブジェクトと前記音オブジェクトとが接触した場合、当該接触が生じた時点で当該音オブジェクトに設定されている音を出力音として設定して、当該出力音を出力する音出力制御手段として機能させ、
前記音出力制御手段は、前記操作オブジェクトと前記音オブジェクトとが接触した時点において、当該音オブジェクトが接触した当該前記操作オブジェクトにおける接触位置に応じて異なる音を、前記出力音として設定して当該出力音を出力する、ゲームプログラム。」

なお、本願発明2乃至19の概要は以下のとおりである。
本願発明2は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明3は、本願発明2を減縮した発明である。
本願発明4は、本願発明1乃至3の何れかを減縮した発明である。
本願発明5は、本願発明4を減縮した発明である。
本願発明6は、本願発明1乃至5の何れかを減縮した発明である。
本願発明7は、本願発明6を減縮した発明である。
本願発明8は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明9は、本願発明8を減縮した発明である。
本願発明10は、本願発明9を減縮した発明である。
本願発明11は、本願発明9または10を減縮した発明である。
本願発明12は、本願発明8を減縮した発明である。
本願発明13は、本願発明1乃至12の何れかを減縮した発明である。
本願発明14は、本願発明1乃至13の何れかを減縮した発明である。
本願発明15は、本願発明1乃至14の何れかを減縮した発明である。
本願発明16は、本願発明6を減縮した発明である。
本願発明17は、本願発明1に対応するゲーム装置の発明であり、本願発明1と実質的な構成の差異がない発明である。
本願発明18は、本願発明1に対応するゲームシステムの発明であり、本願発明1と実質的な構成の差異がない発明である。
本願発明19は、本願発明1に対応するゲーム処理方法の発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。


第3 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前の平成23年1月20日に頒布された引用文献1(特開2011-11008号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【請求項9】
コンピュータを、
所定の経路内を移動可能な移動対象が配置される当該経路内における位置を指定する指示入力を受け付ける入力受付部、
複数のタイミングのそれぞれについて、当該タイミングと前記移動対象が配置されるべき位置とを対応付けて記憶する記憶部、
前記複数のタイミングのそれぞれにおいて、前記受け付けられた指示入力のうち、当該タイミングまでに受け付けられた指示入力によって指定される位置と、当該タイミングに対応付けて記憶される位置と、が一致する場合、当該一致する位置に対応付けられる音を出力する音声出力部、
として機能させることを特徴とするプログラム。」
(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、プレイヤーが簡単な操作で様々な楽器を演奏する感覚が得られるゲームを実現するために好適なゲーム装置、ゲーム処理方法、ならびに、プログラムに関する。」
(3)「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、決められた場所に複数配置されるボタン(あるいはキー)などを所定のタイミングで押圧することにより、ダンスをしたり楽器を演奏したりすることができる。しかし、プレイヤーは、多くのボタンの配列を覚えなければならず、また、多くのボタンの配列と、ゲーム画面に現れる指示マークの内容と、の対応関係を瞬時に把握しなければならないため、複数のボタンを使い分けることに不慣れなプレイヤーにとっては操作が難しく感じられてしまうことがあった。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するものであり、プレイヤーが簡単な操作で様々な楽器を演奏する感覚が得られるゲームを実現するために好適なゲーム装置、ゲーム処理方法、ならびに、プログラムを提供することを目的とする。」
(4)「【0028】
本発明によれば、コンピュータを上述のように動作するゲーム装置として機能させることができる。
また、本発明のプログラムは、コンパクトディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、ディジタルビデオディスク、磁気テープ、半導体メモリ等のコンピュータ読取可能な情報記憶媒体に記録することができる。」
(5)「【0052】
図3は、ゲーム装置200にて行われるゲームの画面の構成例を示す図である。ゲーム画面には、判定ライン310、移動ボックス320、移動対象330、演奏指示マーク340(図3中では340A?340Cの3つ)、ゲージ350が含まれる。
【0053】
図4は、図3に示すゲーム画面の背景等を取り除き、判定ライン310付近を拡大して分かりやすく表した図である。
【0054】
ここで、ゲーム装置200にて行われるゲームの概要について説明する。このゲームは、プレイヤーが特定の楽器等を演奏することにより課題曲を完成させる音楽ゲームである。ゲームが開始されると、一部の楽器(例えばトロンボーン)のパートを除いた背景音(又は背景曲)がスピーカーから出力される。プレイヤーは、背景音に含まれていないその楽器のパートを演奏する。
【0055】
移動ボックス320は、ゲーム画面内の所定の位置に固定されている。本実施形態では、移動対象330は、ゲーム画面内に1つだけ存在し、判定ライン310に沿って移動ボックス320内を移動可能である。移動対象330は、プレイヤーの指示により、判定ライン310上の第1の端点410と第2の端点420を結ぶ線分で表される経路430上を、矢印D1又はD2の方向に移動する。CPU 101は、移動対象330を移動するとき、背景に描かれているトロンボーンのスライドの画像も合わせて移動するとよい。
【0056】
ゲーム画面が表示される表示装置の表面は、ペンや指などで接触された場所の位置を検知できるセンサーを備えるタッチパネルになっており、CPU 101は、センサーによって検知された位置に基づいてプレイヤーの指示入力を受け付ける。このような表示装置は一般に“タッチスクリーン”と呼ばれる。プレイヤーは、移動対象330が表示された位置にタッチペンを接触させたまま移動させる(一般にこの操作は“ドラッグ”と呼ばれる)ことができる。移動対象330は、プレイヤーからの指示に応じて、移動開始位置から移動終了位置まで滑らかに移動する。
【0057】
経路430上の位置のそれぞれには、所定の音高あるいは所定の周波数の音が対応付けられている。図5(a),(b)は、経路430上の位置と音高(又は音階、音程)との対応付けの例を表す図である。
【0058】
図5(a)において、横軸は、移動対象330の位置の座標を表す。縦軸は、音高を表す。移動対象330は、P_(MIN)以上P_(MAX)以下の範囲で移動可能である。また、それぞれの位置に対応付けられる音高は、V_(MIN)以上V_(MAX)以下で連続的に変化する。第1の端点410から移動対象330の位置までの距離が長いほど、対応付けられる音高は高くなる。
【0059】
図5(b)において、移動対象330の位置と音高との対応関係は次のようになっている。
・P_(MIN)以上P_(1)未満 : V_(MIN) (例えば、“ド”の音階)
・P_(1)以上P_(2)未満 : V_(1) (例えば、“レ”の音階)
・P_(2)以上P_(3)未満 : V_(2) (例えば、“ミ”の音階)
・P_(3)以上P_(4)未満 : V_(3) (例えば、“ファ”の音階)
・P_(4)以上P_(5)未満 : V_(4) (例えば、“ソ”の音階)
・P_(5)以上P_(6)未満 : V_(5) (例えば、“ラ”の音階)
・P_(6)以上P_(7)未満 : V_(6) (例えば、“シ”の音階)
・P_(7)以上P_(MAX)以下 : V_(MAX) (例えば、1オクターブ上の“ド”の音階)
【0060】
本実施形態では、第1の端点410にはトロンボーンの最も低い音高の音が対応付けられ、第2の端点420にはトロンボーンの最も高い音高の音が対応付けられている。言い換えれば、図3において、移動対象330をゲーム画面の上方(Y座標が小さくなる向き)に移動させると低い音が出て、移動対象330をゲーム画面の下方(Y座標が大きくなる向き)に移動させると高い音が出る。
【0061】
ただし、経路430上の各位置への音の対応付けは自由であり、本発明によって限定されない。例えば、図5(a)では音高の変化率が一定であるが、音高の変化率は一定でなくてもよい。すなわち、音高は、位置に対して直線的に変化しなくてもよい。
【0062】
CPU 101は、背景曲の再生スピードに合わせて、判定ライン310に向かって演奏指示マーク340を移動させながら表示する。図4では、演奏指示マーク340は、右から左へ向かって軌道440上をスクロールする。演奏指示マーク340のことを“音符”ともいう。演奏指示マーク340は、判定ライン310を通過すると、さらに画面の左へ向かって移動して判定ライン310から離れていき、やがて画面外に消える。
【0063】
プレイヤーは、コントローラ105を用いて、トロンボーンを演奏する指示を入力する。この指示は、プレイヤーが移動対象330を現在位置から矢印D1又はD2の向きに経路430上の任意の位置まで移動させることにより与えられる。
【0064】
演奏指示マーク340が判定ライン310と重なる位置450まで移動してきたときに、プレイヤーが移動対象330を位置450に移動させると、その位置450に対応付けられている音が出力される。そして、プレイヤーが演奏するトロンボーンと背景音とがマッチした音楽が出力される。
【0065】
演奏指示マーク340は、移動対象330を移動すべきタイミングと、移動対象330を移動すべき位置と、の対応付け(以下「ゲーム課題」という。)を表すマークである。演奏指示マーク340は、プレイヤーにとって、移動対象330を移動すべきタイミングと、移動対象330を移動すべき位置と、を判断するための目安になる。ゲーム課題は、1つの音楽につき、少なくとも1つ以上定義されるが、複数であることが望ましい。
【0066】
移動対象330を移動すべきタイミングは、典型的には、再生される楽曲の先頭から何小節の何拍目かを表す情報により指定される。あるいは、再生される楽曲の先頭から何秒目かを表す情報により指定されてもよい。
【0067】
移動対象330を移動すべき位置は、ゲーム画面に定義される所定の座標系(例えばX-Y座標系)を用いて表される座標値によって指定される。座標系の定義の仕方は任意である。
【0068】
演奏指示マーク340の位置と移動対象330の位置が一致することを「ゲーム課題が達成される」とも表現する。1つのゲーム課題が達成されると、プレイヤーは所定の点数を獲得し、その点数がスコアに加算される。また、ゲームの盛り上がり度を表すゲージ350の示す値が所定量だけアップする。」

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「コンピュータをコンピュータをゲーム装置として機能させるプログラムであって、
ゲーム装置の画面には、判定ライン、移動ボックス、移動対象、演奏指示マーク、ゲージが含まれ、
所定の経路内を移動可能な移動対象が配置される当該経路内における位置を指定する指示入力を受け付ける入力受付部、
複数のタイミングのそれぞれについて、当該タイミングと前記移動対象が配置されるべき位置とを対応付けて記憶する記憶部、
前記複数のタイミングのそれぞれにおいて、前記受け付けられた指示入力のうち、当該タイミングまでに受け付けられた指示入力によって指定される位置と、当該タイミングに対応付けて記憶される位置と、が一致する場合、当該一致する位置に対応付けられる音を出力する音声出力部、
として機能させるプログラムであって、
ゲームは、プレイヤーが特定の楽器等を演奏することにより課題曲を完成させる音楽ゲームであって、ゲームが開始されると、一部の楽器(例えばトロンボーン)のパートを除いた背景音(又は背景曲)がスピーカーから出力され、プレイヤーは、背景音に含まれていないその楽器のパートを演奏し、
ゲーム画面が表示される表示装置の表面は、ペンや指などで接触された場所の位置を検知できるセンサーを備えるタッチパネルになっており、CPUは、センサーによって検知された位置に基づいてプレイヤーの指示入力を受け付け、プレイヤーは、移動対象が表示された位置にタッチペンを接触させたまま移動させることができ、移動対象は、プレイヤーからの指示に応じて、移動開始位置から移動終了位置まで滑らかに移動し、
演奏指示マークが判定ラインと重なる位置まで移動してきたときに、プレイヤーが移動対象を位置に移動させると、その位置に対応付けられている音が出力され、プレイヤーが演奏するトロンボーンと背景音とがマッチした音楽が出力される、プログラム。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前の平成20年10月23日に頒布された引用文献2(特開2008-253440号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【請求項4】
表示装置にメロディに対応する楽器の正しい操作位置と操作タイミングであるアクションポイントを表示する一方、楽器の操作位置をコンピュータに取り込んで、取り込んだ操作位置に基づいて音源データに所定の処理を施して音響出力するプログラムであって、
楽器の操作位置を入力する処理と、
曲の進行に伴ってアクションポイントの位置、および、前記入力した楽器の操作位置を
表示する処理と、
アクションポイントが前記操作タイミングをもとに設定された判定領域にあるときに、楽器が操作されたか否かを判定し、判定領域内で操作されなかった場合あるいは操作された場合であってもその操作位置が正しい操作位置と比較して所定以上の差がある場合は失敗と判定する処理と、
当該判定結果が失敗の場合は、保存されている演奏失敗時の処理内容に基づいて音源データに処理を施して音響出力する処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする音楽演奏プログラム。」
(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、音楽ゲームや音楽演習、音楽再生装置に利用できる音楽再生制御システム、音楽演奏プログラム、および演奏データの同期再生方法に関する。」
(3)「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般に演奏を忠実に再現しようとすると大量の演奏データを処理しなければ
ならず、同時に、この演奏データに対する音源やサンプリング波形、それらの管理テーブルやプログラムナンバー等の処理も必要になり、いかにコンピュータの負荷を軽減するかが問題となる。また、インターネットなどの通信ネットワークを介して複数人が異なる場所でそれぞれのパートを演奏し、互いに自分のパートと相手のパートを合成して音響出力することによってバンド演奏の練習をするような場合、いかに通信ネットワークの負荷を少なくして、リアルタイム性を持たせるかが問題となる。
【0006】
本発明は、上述のかかる事情に鑑みてなされたものであり、コンピュータやネットワークに負荷を与えず、またネットワークを通して複数人で楽曲のパートごとに演奏するときにも、音楽データ間の同期をとって、うまく演奏できたかどうかの確認を正確に把握でき、効果的な音楽演習を行うことのできる音楽再生制御システム、音楽演奏プログラム、および演奏データの同期再生方法を提供することを目的とする。」
(4)「【0019】
なお、コンピュータとは、プログラム実行可能な演算機能があれば足り、ゲーム機などの専用コンピュータのほか、パーソナルコンピュータなどの汎用コンピュータや携帯電話あるいは携帯音楽再生装置なども含む趣旨である。本発明によるプログラムを用いることにより従来の演奏装置よりも低い演算機能でより品質の高い音楽再生を実現することができる。」
(5)「【0025】
(ゲームの概要)
本実施の形態による音楽再生制御システムは、コンピュータのキーボードや、ゲームコントローラー、MIDIなどに対応した楽器を使って演奏を入力するシステムであり、プレイヤーは譜面がわからなくても、画面の指示に従って操作することで、すでに発音している音を変化させるものである。
【0026】
従来、音楽ゲームと呼ばれているゲームのシステムは、「落ちてきたシンボルを、音楽を聴きタイミング良く押し、音楽を奏でる」といったものである。これはリズム感のみがゲーム性になっているもので、落ちてきたものを叩き、タイミングによって点数を競うというものになる。
【0027】
本実施の形態は、この「リズム」的要素に「音程」の要素を加えることにより、ゲームの幅をより広げるものである。表示装置に演奏のタイミングと正しい楽器の操作位置を示すシンボルを表示し、プレイヤーは、表示されているシンボルの動きに合わせて、タイミング良くボタン(実行スイッチ)を押すだけでなく、楽器の操作位置(ピッチ)がシンボルの高さに合っていなければ、演奏が成功しないというシステムである。なお、以下の説明において、正しい演奏のタイミングと楽器の操作位置情報もしくは表示装置に表示された当該情報のシンボルを「アクションポイント」という。
【0028】
次にシステムの動きとゲームのやり方を説明する。まず、演奏データの仕様に沿って、時間経過によって本来の操作位置を示すシンボル(アクションポイント)を表示画面上の右から左へ流し、これをプレイヤーがゲーム用の入力装置(以下、楽器あるいは自機ともいう)を操作して、流れてくるアクションポイントに自機の操作位置によって表示位置がきまるシンボル(以下、自機シンボルという)の高さをあわせるようにする。そして、アクションポイントが表示画面上の判定ラインに重なったら、アクションポイントの色に対応する操作対象の自機シンボルを操作して、実行スイッチを押す。アクションポイントおよび自機シンボルは操作すべき対象物の種類、たとえばギターゲームの場合は弦ごとに色別表示されており、プレイヤーはその弦のアクションポイントに対応する位置を押圧すると共にタイミングを合わせて実行スイッチを押すというものである。
【0029】
ゲームの処理手順の概要としては、アクションポイントが判定領域にあり、且つ実行スイッチが押されると、判定を開始する。そして、実行スイッチのタイミングは合っているか(判定ラインもしくはその前後の許容範囲内か)、ピッチは合っているか(自機シンボルの高さとアクションポイントの高さの差は許容範囲内か)、操作すべき対象物は合っているか(操作対象物はシンボルの色に対応しているか)、といった判定処理を実行し、合格判定(MAX,SMALL)の場合は点数を加算する。
【0030】
判定処理の結果、合格判定の場合は、そのまま曲は演奏されていくが、不合格判定(MUTE)の場合、再生する音を変化させる。たとえば、ボリュームを小さくするとか、音を歪ませるとか、ノイズを重畳する等である。曲開始から曲終了まで、以上の処理を繰り返す。
【0031】
図1にゲーム画面を示す。ここで、アクションポイント8の表示シンボルは、画面右から左方向へテンポ情報に基づく速度で移動し、プレイヤーは楽器を操作することによって自機シンボル7を上下方向に移動させてアクションポイント8の高さに合わせ、タイミングよく実行スイッチを押すことによって加点され、現在出力されている音源には変化を与えず、原音として流す。」
(6)「【0056】
図8において、まず、演奏データ63中のある時間範囲内にアクションポイントが存在するか否かを判定する(S101)。具体的には、演奏開始からの経過時間tの前後の所定時間(たとえば、0.5秒)を判定領域としてこの領域が表示画面に出力されている場合、演奏データ中にその時間帯に含まれるアクションポイントが存在するか否かを判定する。たとえば、経過時間が10秒のときに9.5秒から10.5秒の間にアクションポイントを持つ演奏データが存在する場合は、ステップS101においてアクションポイント有りとし、演奏データが存在しない場合はアクションポイント無しとする。なお、この所定時間は、アクションポイントの前後で変えても良いし、初心者モードや上級者モードの設定あるいは曲テンポによって可変にしても良い。
【0057】
ステップS101で「Yes」のときは、入力した操作データにもとづいて実行スイッチONとなっているか否かを判定し(S102)、実行スイッチがONになっている場合は(S102で「Yes」)、操作データ中の操作種別と操作位置(自機シンボルの位置)がアクションポイントの位置と一致もしくは所定の範囲内か否かを判定して(S103)、Yesならば、そのアクションIDに関連付けて、成功フラグをセットし(S104
)、Noならば失敗フラグをセットする。なお、ステップS102で実行スイッチがONになっていなければ(S102で「No」)、そのまま終了して次の起動を待つ。
【0058】
一方、ステップS101でNoの場合は、次に、判定領域を過ぎたフラグの立っていないアクションIDが存在するか否かを判定し、存在する場合は(S105で「Yes」)、そのアクションIDに失敗フラグをセットし、存在しない場合は(S105で「No」)、そのまま終了する。」
(7)「【0064】
具体的には、演奏するパートの音源データ61、すなわち波形データを演奏効果にもとづいて信号処理する。たとえば、演奏の経過時間にしたがって、演奏が失敗した時(失敗フラグが立った時)ときは、その楽器パートの音量を所定レベルに小さくし、成功フラグがセットされているときは、もとのレベルに復帰する。さらに音源変化係数に変化のあったときは、これに伴って音源波形を変化させる。こうして生成された楽器パートの音源と、演奏しないパートの音源とを、音響出力するためのフォーマットにするよう処理し、音響出力装置80へ出力する。」
(8)「【0083】
本実施形態の実行スイッチは、操作位置の入力手段と別に設けて、そのスイッチが操作されたときにONするようにしても良いし、操作位置の入力手段と一体として形成しても良い。たとえば、操作位置の入力手段に操作されたかどうかを感知するセンサー(たとえば振動検知センサー)を設けて、操作されたと感知したときに実行信号をONにしてもよい。」
(9)「【0115】
本発明は、上述の実施の形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。たとえば、演奏結果の成功/失敗フラグのみによって、音源データに所定の処理を行うのではなく、アクションIDにフラグのほか、操作タイミングや操作位置情報等も入力し、本来のタイミングや操作位置とのずれによって、他段階あるいは連続的にノイズ量を変える、音量を変えるなどの処理を行うようにしても良い。」
(10)上記(4)【0028】、及び図1より、演奏データ(曲)の仕様に沿って、表示位置の高さが設定される複数のアクションポイントが看取できる。

したがって、上記引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「表示装置にメロディに対応する楽器の正しい操作位置と操作タイミングであるアクションポイントを表示する一方、楽器の操作位置をゲーム機などの専用コンピュータに取り込んで、取り込んだ操作位置に基づいて音源データに所定の処理を施して音響出力するプログラムであって、
楽器の操作位置を入力する処理と、
演奏データ(曲)の仕様に沿って、表示位置の高さが設定される複数のアクションポイントであって、曲の進行に伴ってアクションポイントの位置、および、前記入力した楽器の操作位置を表示する処理と、
アクションポイントが前記操作タイミングをもとに設定された判定領域にあるときに、楽器が操作されたか否かを判定し、判定領域内で操作されなかった場合あるいは操作された場合であってもその操作位置が正しい操作位置と比較して所定以上の差がある場合は失敗と判定する処理と、
当該判定結果が失敗の場合は、保存されている演奏失敗時の処理内容に基づいて音源データに処理を施して音響出力する処理と、
をゲーム機などの専用コンピュータに実行させる音楽演奏プログラム。」

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前の平成14年10月15日に頒布された引用文献3(特開2002-301262号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【請求項6】 ゲーム装置において、コンピュータに、
プレーヤーによって選択された曲が再生されている期間に前記曲に関する問題を生成する問題生成手段と、
生成された前記問題をディスプレイに表示させる表示制御手段と、
前記プレーヤーが前記問題に対して行った解答を感知して、前記問題に対する前記プレーヤーの解答の正誤を判定する判定手段と、
前記判定手段の出力に応じて異なる音声を発生する発音手段と、
して機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項7】 請求項6に記載のプログラムであって、
前記問題が、前記プレーヤーに前記タイミング・ボタンと前記音程ボタンとを前記曲のリズムと音程に合わせて操作させることであることを特徴とするプログラム。
【請求項8】 請求項7に記載のプログラムであって、
前記表示制御手段は、前記ディスプレイ上に、(1)前記曲のリズムに応じた速度で表示状態を変化させる第1の標識を、(2)前記音程ボタンの操作量に応じた位置にカーソルを、(3)前記タイミング・ボタンが押された時点に第2の標識をそれぞれ表示させることができ、
前記判定手段は、前記タイミング・ボタンが押された時点における前記曲の音程と前記カーソルの位置とに基づいて、当該時点における音程のズレを判定することができ、
前記発音手段が、前記ズレに基づいた音声を発音することができることを特徴とするプログラム。
【請求項9】 請求項8に記載のプログラムであって、
前記判定手段が、前記標識の表示状態変化の時点と前記タイミング・ボタンが押された時点との差を算出することができ、前記差が所定の範囲内にあるときに前記発音手段を作動させることを特徴とするプログラム。」
(2)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、プレーヤーが決定したタイミングと音程とに応じて音やメロディを発音するゲーム装置に関する。」
(3)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】この発明は上記の課題に鑑みて提案されたものであり、この発明は、プレーヤーが選択した曲のリズムと音程とに応じた操作を要求し、必要に応じて複数のプレーヤーが一緒にゲームを楽しむことができるゲーム装置或いはプログラム又はプログラム記憶媒体を提供することを目的とする。」
(4)「【0025】音程差判定部13は、問題生成部2から再生中の曲の音程データを受取るとともに、音程ボタン4からその操作量に応じたY座標データを受取る。曲の再生中にプレーヤーがタイミング・ボタン3を押したとき、音程判定部13は、タイミング差算出部12がタイミング差が発音有効範囲内にあると判定した場合には、タイミング・ボタン3が押された時点における問題標識24とカーソル22との位置に基づいて、音程差がゼロであるか、プラスであるか、マイナスであるかを判定し、判定結果を発音制御部14に与える。
【0026】発音制御部14は、音程差判定部13における判定結果、即ち、音程差がゼロであるか、プラスであるか、マイナスであるかに応じて、発音機15に対して、正解音、正解音から高い方にズレた音、正解音より低い方にズレた音をそれぞれ生成するよう指令する。」
(5)「【0031】一方、タイミング差算出部12は、タイミング・ボタン3が押されたと判定したとき(ステップ108のYES)、ステップ109において、プレーヤーが行った操作を数値化する。つまり、タイミング・ボタン3が押された時点がタイミング標識21の色の変化タイミングと一致したか、どれだけズレているかに応じてプレーヤーの操作が数値化される。これを受けて、表示制御部17はステップ110において、プレーヤーの操作の数値に応じて、ディスプレイ6上のキャラクタ26の成長の度合い及びバー27の長さを決める。」

したがって、上記引用文献3には次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「ゲーム装置において、コンピュータに、
プレーヤーによって選択された曲が再生されている期間に前記曲に関する問題を生成する問題生成手段と、
生成された前記問題をディスプレイに表示させる表示制御手段と、
前記プレーヤーが前記問題に対して行った解答を感知して、前記問題に対する前記プレーヤーの解答の正誤を判定する判定手段と、
前記判定手段の出力に応じて異なる音声を発生する発音手段と、
して機能させ、
前記問題が、前記プレーヤーに前記タイミング・ボタンと前記音程ボタンとを前記曲のリズムと音程に合わせて操作させることであり、
前記表示制御手段は、前記ディスプレイ上に、(1)前記曲のリズムに応じた速度で表示状態を変化させる第1の標識を、(2)前記音程ボタンの操作量に応じた位置にカーソルを、(3)前記タイミング・ボタンが押された時点に第2の標識をそれぞれ表示させることができ、
前記判定手段は、前記タイミング・ボタンが押された時点における前記曲の音程と前記カーソルの位置とに基づいて、当該時点における音程のズレを判定することができ、
前記発音手段が、前記ズレに基づいた音声を発音することができ、
前記判定手段が、前記標識の表示状態変化の時点と前記タイミング・ボタンが押された時点との差を算出することができ、前記差が所定の範囲内にあるときに前記発音手段を作動させるプログラム。」

4.引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前の平成24年10月4日に頒布された引用文献4(特開2012-187136号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【請求項1】
少なくとも一つの操作部を有する入力装置と、
ゲーム画面を表示出力する表示装置と、
ゲーム中における前記操作部の操作時期を記述したシーケンスデータを記憶するシーケンスデータ記憶手段と、
前記操作部の操作時期をプレイヤに案内する操作案内手段と、を備え、
前記操作案内手段は、
前記ゲーム上の現在時刻から将来に向かって所定の時間範囲に含まれる前記操作部の操作時期を前記シーケンスデータに基づいて判別する操作時期判別手段と、
前記操作部に対応する少なくとも一つの経路を有する複数の操作案内領域を前記ゲーム画面上に出現させる案内領域提示手段と、
前記操作時期判別手段にて判別された各操作時期のそれぞれに対応する操作指示標識と、前記現在時刻に対応する操作基準標識とを、前記複数の操作案領域のうちのいずれかの領域内の経路に沿って時間順の配置で表示させるとともに、当該経路に沿って、前記操作指示標識にて案内されるべき操作時期と前記現在時刻との時間差の減少に伴って前記操作指示標識と前記操作基準標識との間の距離が減少し、前記操作指示標識にて案内されるべき操作時期に当該操作指示標識が前記操作基準標識と一致するように前記操作基準標識と前記操作指示標識との間に前記ゲーム上の時間の進行に応じた相対的な変位を生じさせる標識位置制御手段と、
所定の条件に応じて、前記相対的な変位を生じさせる経路を前記複数の操作案内領域間で切り替える経路切替手段と、を備え、
前記シーケンスデータには、前記複数の操作案内領域のいずれかの領域に対応する操作時期と前記複数の操作案内領域に共通して対応する操作時期とが含まれ、
前記標識位置制御手段は、前記経路切替手段による経路の切り替え前後において前記相対的な変位の連続性が保たれるように、各操作時期に対応する操作指示標識の表示を制御することを特徴とするゲームシステム。
【請求項2】
前記経路切替手段による経路の切り替え後に、切り替え前後の各経路にそれぞれ対応する各操作案内領域間の配置を互いに入れ替える領域入替手段を更に備える請求項1に記載のゲームシステム。
【請求項3】
前記案内領域提示手段は、前記複数の操作案内領域を、互いが上下方向にずれて位置するように前記ゲーム画面上に出現させる請求項1又は2に記載のゲームシステム。
【請求項4】
前記案内領域提示手段は、前記経路として前記ゲーム画面の奥側から手前側に向かって延びるような経路を表示させるとともに、前記複数の操作案内領域を、上側に位置する操作案内領域から下側に位置する操作案内領域に向かうに従って徐々に前記ゲーム画面内の手前側に位置するような奥行き方向にずれた配置で出現させる請求項3に記載のゲームシステム。」
(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲーム画面を通じて入力装置が有する操作部の操作時期を案内するゲームシステム及び、それに用いる制御方法に関する。」
(3)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のゲームでは、所定の経路に沿ってノーツバーが移動することにより、ノーツバーと操作基準標識との間に相対的な変位が生じ、この変位により操作時期が案内されている。しかし、この所定の経路は位置や数が固定されている。このため、操作時期を案内するために移動するノーツバーの移動方向等は変化しない。そして、特許文献1のようなゲームでは、ゲームの難易度を変化させる手段が、ゲーム画面に表示されるノーツバーの数の増減やゲーム画面に表示されたノーツバーの移動速度の一律的増減といった手段に限定されてしまう。一方、特許文献2のゲームでは、ゲーム開始前の選択により使用する経路の数が増減する。これにより、ゲームの難易度を変化させることができる。しかし、特許文献2のゲームは、プレイヤの腕前に応じて臨機応変にゲームの難易度を変化させるものではない。また、経路数が変化するのみで、変化の前後間で操作指示標識の移動速度等に変化が生じるものでもない。このため、ゲームの難易度の変化が十分でない場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、操作指示標識等が相対的に変位する経路を切り替えることにより、ゲームの進行中にゲームの難易度を変化させることができるゲームシステム及び、それに用いる制御方法を提供することを目的とする。」
(4)「【0032】
また、図3に示すように、各操作案内領域52A、52Bは、いずれも図3の奥側から手前側に向かうに従って、徐々に幅が広がる台形状に形成されている。各操作案内領域52A、52Bには、経路としての複数のレーンRがそれぞれ設定されている。いずれの領域52A、52BのレーンRも奥側から手前側に向かって延びている。また、各操作案内領域52A、52Bは奥行き方向にもずれて配置されている。具体的には、上方に配置される操作案内領域が奥側方向に、下方に配置される操作案内領域が上方の操作案内領域よりも手前側方向に、それぞれずれるような位置に配置される。このため、図3の例では、第1操作案内領域52Aに設定される第1レーン群R1は、第2操作案内領域52Bに設定される第2レーン群R2よりも奥側の位置から第2レーン群R2の途中の位置まで延びるように配置されている。」

したがって、上記引用文献4には次の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。
「少なくとも一つの操作部を有する入力装置と、
ゲーム画面を表示出力する表示装置と、
ゲーム中における前記操作部の操作時期を記述したシーケンスデータを記憶するシーケンスデータ記憶手段と、
前記操作部の操作時期をプレイヤに案内する操作案内手段と、を備え、
前記操作案内手段は、
前記ゲーム上の現在時刻から将来に向かって所定の時間範囲に含まれる前記操作部の操作時期を前記シーケンスデータに基づいて判別する操作時期判別手段と、
前記操作部に対応する少なくとも一つの経路を有する複数の操作案内領域を前記ゲーム画面上に出現させる案内領域提示手段と、
前記操作時期判別手段にて判別された各操作時期のそれぞれに対応する操作指示標識と、前記現在時刻に対応する操作基準標識とを、前記複数の操作案領域のうちのいずれかの領域内の経路に沿って時間順の配置で表示させるとともに、当該経路に沿って、前記操作指示標識にて案内されるべき操作時期と前記現在時刻との時間差の減少に伴って前記操作指示標識と前記操作基準標識との間の距離が減少し、前記操作指示標識にて案内されるべき操作時期に当該操作指示標識が前記操作基準標識と一致するように前記操作基準標識と前記操作指示標識との間に前記ゲーム上の時間の進行に応じた相対的な変位を生じさせる標識位置制御手段と、
所定の条件に応じて、前記相対的な変位を生じさせる経路を前記複数の操作案内領域間で切り替える経路切替手段と、を備え、
前記シーケンスデータには、前記複数の操作案内領域のいずれかの領域に対応する操作時期と前記複数の操作案内領域に共通して対応する操作時期とが含まれ、
前記標識位置制御手段は、前記経路切替手段による経路の切り替え前後において前記相対的な変位の連続性が保たれるように、各操作時期に対応する操作指示標識の表示を制御し、
前記経路切替手段による経路の切り替え後に、切り替え前後の各経路にそれぞれ対応する各操作案内領域間の配置を互いに入れ替える領域入替手段を更に備え、
前記案内領域提示手段は、前記複数の操作案内領域を、互いが上下方向にずれて位置するように前記ゲーム画面上に出現させ、
前記案内領域提示手段は、前記経路として前記ゲーム画面の奥側から手前側に向かって延びるような経路を表示させるとともに、前記複数の操作案内領域を、上側に位置する操作案内領域から下側に位置する操作案内領域に向かうに従って徐々に前記ゲーム画面内の手前側に位置するような奥行き方向にずれた配置で出現させるゲームシステム。」


第4 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
(1-1)本願発明1と引用発明1とを対比すると、
後者の「指示入力」、「音」、「(ゲーム)装置」、「コンピュータ」、「プログラム」、「『ペン』、『指』、『タッチペン』」、「プレイヤー」、「入力受付部」、「画面」、「移動対象」、及び「『楽器等を演奏すること』による『課題曲』」は、それぞれ、前者の「『操作入力』、『ユーザの入力』及び『ユーザ入力』」、「音」、「装置」、「コンピュータ」、「ゲームプログラム」、「入力手段」、「ユーザ」、「入力受付手段」、「表示画面」、「操作オブジェクト」、及び「演奏する楽曲」に相当する。
後者の「所定の経路内」は、移動可能な移動対象が配置されるものであるから、前者の「所定の移動可能範囲内」に相当する。そして、後者の「移動対象」は、指示入力により、経路内における位置が指定されるものであるから、後者の「プログラム」は、「ユーザ入力に応じて所定の移動可能範囲内で移動させる操作オブジェクト移動制御手段」として機能させるといえる。
後者の「演奏指示マーク」は、判定ラインと重なる位置まで移動してきたときに、プレイヤーが移動対象を位置に移動させると、その位置に対応付けられている音が出力されるから、前者の「音オブジェクト」に相当し、プレイヤーが演奏するトロンボーンと背景音とがマッチした音楽が出力されるものであるから、「演奏する楽曲に応じて出力される音それぞれに設定される」ものといえる。
そして、後者の「演奏指示マーク」は、画面に表示され、移動するものであるから、後者の「プログラム」は、「表示画面内に出現させて移動させる音オブジェクト移動制御手段」として機能させるといえる。

したがって、両者は、
「操作入力に応じた音を出力する装置に含まれるコンピュータで実行されるゲームプログラムであって、
前記コンピュータを、
入力手段からユーザの入力を受け付ける入力受付手段と、
表示画面に表示される操作オブジェクトを、ユーザ入力に応じて所定の移動可能範囲内で移動させる操作オブジェクト移動制御手段と、
演奏する楽曲に応じて出力される音それぞれに設定される複数の音オブジェクトを、前記表示画面内に出現させて移動させる音オブジェクト移動制御手段として機能させる、ゲームプログラム。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明1が、「前記操作オブジェクトと前記音オブジェクトとが接触した場合、当該接触が生じた時点で当該音オブジェクトに設定されている音を出力音として設定して、当該出力音を出力する音出力制御手段として機能させ、前記音出力制御手段は、前記操作オブジェクトと前記音オブジェクトとが接触した時点において、当該音オブジェクトが接触した当該前記操作オブジェクトにおける接触位置に応じて異なる音を、前記出力音として設定して当該出力音を出力する」ものであるのに対し、引用発明1は、そのようなものでない点。

(1-2)本願発明1と引用発明2とを対比すると、
後者の「操作位置を入力(する)」、「音響」、「ゲーム機」、「プログラム」、「表示装置」、「楽器の操作位置」、「『音源データ』、『演奏データ(曲)』」、及び「複数のアクションポイント」は、それぞれ、、前者の「『操作入力』、『ユーザの入力』及び『ユーザ入力』」、「音」、「装置」、「ゲームプログラム」、「表示画面」、「操作オブジェクト」、「演奏する楽曲」、及び「複数の音オブジェクト」に相当する。
後者の「プログラム」は、「楽器の操作位置」を「ゲーム機などの専用コンピュータに取り込んで」、「所定の処理を施す」ものであるから、「装置に含まれるコンピュータで実行されるゲームプログラム」といえる。
後者の「音楽演奏プログラム」は、「楽器の操作位置を入力する処理」を実行するものであるから、後者の「音楽演奏プログラム」は、「入力手段からのユーザの入力を受け付ける入力受付手段」として機能させるといえる。
後者の「アクションポイントの位置」は「曲の進行」に伴うものであるから、「移動」するものであることが明らかであって、後者の「音楽演奏プログラム」は、「曲の進行に伴ってアクションポイントの位置」を「表示する処理」を実行するものであるから、「表示画面内に出現させて移動させる音オブジェクト移動制御手段」として機能させるといえる。

したがって、両者は、
「操作入力に応じた音を出力する装置に含まれるコンピュータで実行されるゲームプログラムであって、
前記コンピュータを、
入力手段からユーザの入力を受け付ける入力受付手段と、
表示画面に表示される操作オブジェクトと、
演奏する楽曲に応じて出力される音それぞれに設定される複数の音オブジェクトを、前記表示画面内に出現させて移動させる音オブジェクト移動制御手段として機能させ、
出力音を出力する、ゲームプログラム。」
の点で一致し、上記[相違点1]に加え、以下の点で相違している。

[相違点2]
本願発明1が、「ユーザ入力に応じて所定の移動可能範囲内で移動させる操作オブジェクト移動制御手段」として機能させるものであるのに対し、引用発明2は、そのようなものでない点。


(2)判断
1.本願発明1について
ア.新規性について
そうすると、引用発明2は、上記相違点1、及び相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を具備していない。
したがって、本願発明1が、引用発明2であるとすることはできない。

イ-1.引用発明1を主引用発明とした進歩性について
上記相違点1について検討する。
引用文献1に、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を示唆する記載もないし、引用発明1は、プレイヤーが移動対象を移動させると、その位置に対応付けられている音が出力されるだけのものであるから、本願発明1のように、操作オブジェクトと音オブジェクトとが接触した場合、当該接触が生じた時点で当該音オブジェクトに設定されている音を出力音として設定して、当該出力音を出力するものではないから、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を設計的事項といえる理由もない。

そして、本願発明1は、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項により、「楽曲に応じて出現する音オブジェクトに操作オブジェクトを接触させることによって当該音オブジェクトに設定されている音が出力され、当該楽曲の演奏を楽しむ音楽ゲームを実現することができる。また、ユーザ入力に応じて移動可能範囲内で操作オブジェクトを移動させて音オブジェクトと接触させることができ、音オブジェクトが移動する先に操作オブジェクトを配置するだけで楽曲に応じたサウンドを出力することができるため、容易な操作で音楽ゲームを楽しむことができる。」(【0042】参照。)という作用効果を奏するものである。

また、原査定で提示されたいずれの引用文献にも、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項は記載も示唆もされていない。

したがって、本願発明1は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

イ-2.引用発明2を主引用発明とした進歩性について
本願発明1と引用発明2とは、上記相違点1に加え、上記相違点2で相違するものであるから、上記「イ-1」と同様の理由により、本願発明1は、引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

2.本願発明2乃至7、10、12、16について
イ-1.引用発明1を主引用発明とした進歩性について
本願発明2乃至7、10、12、16は、本願発明1の発明特定事項にさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、上記「1. (2) イ-1.」と同様の理由により、本願発明2乃至7、10、12、16が、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

イ-2.引用発明2を主引用発明とした進歩性について
本願発明2乃至7、10、12、16は、本願発明1の発明特定事項にさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、上記「1. (2) イ-2.」と同様の理由により、本願発明2乃至7、10、12、16が、引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

3.本願発明8、9、11、13乃至15について
ア.新規性について
本願発明8、9、11、13乃至15は、本願発明1の発明特定事項にさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、上記「1. (2) ア.」と同様の理由により、本願発明8、9、11、13乃至15が、引用発明2であるとすることはできない。

イ-1.引用発明1を主引用発明とした進歩性について
本願発明8、9、11、13乃至15は、本願発明1の発明特定事項にさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、上記「1. (2) イ-1.」と同様の理由により、本願発明8、9、11、13乃至15が、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

イ-2.引用発明2を主引用発明とした進歩性について
本願発明8、9、11、13乃至15は、本願発明1の発明特定事項にさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、上記「1. (2) イ-2.」と同様の理由により、本願発明8、9、11、13乃至15が、引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

4.本願発明17乃至19について
ア.新規性について
本願発明17は、本願発明1に対応するゲーム装置の発明であり、本願発明1と実質的な構成の差異がない発明であり、本願発明18は、本願発明1に対応するゲームシステムの発明であり、本願発明1と実質的な構成の差異がない発明であり、本願発明19は、本願発明1に対応するゲーム処理方法の発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明であるから、上記「1. (2) ア.」と同様の理由により、本願発明17乃至19が、引用発明2であるとすることはできない。

イ-1.引用発明1を主引用発明とした進歩性について
本願発明17乃至19は、上述するものであるから、上記「1. (2) イ-1.」と同様の理由により、本願発明17乃至19が、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

イ-2.引用発明2を主引用発明とした進歩性について
本願発明17乃至19は、上述するものであるから、上記「1. (2) イ-2.」と同様の理由により、本願発明17乃至19が、引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。


第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、
「1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
●理由1について
・請求項 1、8、9、11、13乃至15、17乃至19
・引用文献等 2

●理由2について
・請求項 1乃至19
・引用文献等 1乃至4

<引用文献等一覧>
1.特開2011-11008号公報
2.特開2008-253440号公報
3.特開2002-301262号公報
4.特開2012-187136号公報」
というものである。

しかしながら、平成30年4月2日付け手続補正により補正された請求項1乃至19は、それぞれ「前記音出力制御手段は、前記操作オブジェクトと前記音オブジェクトとが接触した時点において、当該音オブジェクトが接触した当該前記操作オブジェクトにおける接触位置に応じて異なる音を、前記出力音として設定して当該出力音を出力する」という事項、「前記音出力制御手段は、前記操作オブジェクトと前記音オブジェクトとが接触した時点において、当該音オブジェクトが接触した当該前記操作オブジェクトにおける接触位置に応じて異なる音を、前記出力音として設定して当該出力音を出力する」に対応する構成を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1、8、9、11、13乃至15、17乃至19は、上記引用文献2に記載された発明であるとすることはできないし、また、本願発明1乃至19は、上記引用文献1乃至4に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。


第6 当審拒絶理由について
当審では、
「この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

請求項1、17?19の「前記音オブジェクトが接触した前記操作オブジェクトに対する位置」における「位置」とは、操作オブジェクトの位置なのか、音オブジェクトの位置なのか不明である。」
との拒絶の理由を通知しているが、平成30年4月2日付けの補正において、上記指摘に対して、請求項1、17乃至18は、「当該音オブジェクトが接触した当該前記操作オブジェクトにおける接触位置に応じて異なる音を、前記出力音として設定して当該出力音を出力する」との補正がなされ、請求項19は、「当該音オブジェクトが接触した当該前記操作オブジェクトにおける接触位置に応じて異なる音が前記出力音として設定されて、当該出力音が出力される」との補正がなされた結果、この拒絶の理由は解消した。


第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-06-05 
出願番号 特願2012-229476(P2012-229476)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (A63F)
P 1 8・ 113- WY (A63F)
P 1 8・ 121- WY (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 柴田 和雄  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 藤本 義仁
森次 顕
発明の名称 ゲームプログラム、ゲーム装置、ゲームシステム、およびゲーム処理方法  
代理人 寺本 亮  
代理人 石原 盛規  
代理人 小沢 昌弘  

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