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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B32B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B32B
管理番号 1340721
審判番号 不服2016-17556  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-24 
確定日 2018-05-24 
事件の表示 特願2014-519988「キャリア付金属箔」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月12日国際公開、WO2013/183605〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年6月3日(優先権主張 平成24年6月4日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成28年1月22日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、平成28年3月28日に意見書の提出及び手続補正がなされ、平成28年8月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成28年11月24日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成28年11月24日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年11月24日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりに補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「樹脂製の板状キャリアと、該キャリアの少なくとも一方の面に、剥離可能に密着させた金属箔からなるキャリア付金属箔であって、当該金属箔と当該板状キャリアとの剥離強度が、10gf/cm以上80gf/cm以下であり、
前記金属箔の前記板状キャリアと接しない側の表面の十点平均粗さ(Rz jis)が0.4μm以上10.0μm以下であるキャリア付金属箔。
(金属層/純炭素層からなる接合界面層を有するキャリア付金属箔を除く)」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成28年3月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「樹脂製の板状キャリアと、該キャリアの少なくとも一方の面に、剥離可能に密着させた金属箔からなるキャリア付金属箔であって、当該金属箔と当該板状キャリアとの剥離強度が、10gf/cm以上200gf/cm以下であり、
前記金属箔の前記板状キャリアと接しない側の表面の十点平均粗さ(Rz jis)が0.4μm以上10.0μm以下であるキャリア付金属箔。
(金属層/純炭素層からなる接合界面層を有するキャリア付金属箔を除く)」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「金属箔と板状キャリアとの剥離強度」について、「10gf/cm以上200gf/cm以下」を「10gf/cm以上80gf/cm以下」 に数値範囲を限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア) 原査定の拒絶の理由に引用された本願優先日前に頒布された引用文献である特開2009-272589号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。)
a 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の板状キャリヤーと、該キャリヤーの少なくとも一方の面に、機械的に剥離可能に密着させた金属箔からなるキャリヤー付金属箔。
・・・
【請求項7】
板状キャリヤーと金属箔との剥離強度が1g/cm以上、1kg/cm以下であり、剥離面が板状キャリヤーと金属との境界であることを特徴とする請求項1?6のいずかに記載のキャリヤー付金属箔。
・・・」
b 「【0001】
本発明は、プリント配線板に使用される片面若しくは2層以上の多層積層板又は極薄のコアレス基板の製造において用いられるキャリヤー付銅箔に関する。」
c 「【0007】
本発明は、これらの事象に鑑みてなされたものであり、プリント配線板に使用される片面若しくは2層以上の多層積層板又は極薄のコアレス基板の製造の際に用いられるキャリヤー付銅箔に関する。
詳しくは、積層板の製造時に使用するキャリヤー付き銅箔に係り、その目的とするのは樹脂を支持体とし、その片面または表裏両面に、易剥離性銅箔を配置することを特徴とし、プリント基板製造工程の簡素化及び歩留りアップによるコスト削減を実現することを課題とする。」
d 「【0012】
本願発明のキャリヤー付金属箔を図2に示す。キャリヤー付金属箔は、合成樹脂製の板状キャリヤーと該キャリヤーの少なくとも一方の面に機械的に剥離可能に密着した金属箔からなる。図2では、合成樹脂製の板状キャリヤーの両側に、金属箔が密着させたキャリヤー付金属箔が示されている。
構造的には、前記図1に示すCCL材と類似しているが、本願発明のキャリヤー付金属箔は、金属箔と樹脂は最終的に分離されるもので、機械的に容易に剥離できる構造を有する。この点、CCL材は剥離させるものではないので、構造と機能は、全く異なるものである。
【0013】
金属箔としては、銅又は銅合金箔が代表的なものであるが、アルミニウム、ニッケル、亜鉛などの箔を使用することもできる。銅又は銅合金箔の場合、5?120μmの厚みを有する電解箔又は圧延箔を使用することができる。
板状キャリヤーとなる合成樹脂としては、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等を使用することができる。また、前記プリプレグを使用することもできる。特に、合成樹脂が、樹脂の重合によりBステージ(モノマー)からCステージ(ポリマー)へ変化した樹脂を使用することができる。上記の通り、本願発明は、従来のCACに替えて、銅(Cu)-樹脂(Regin)-銅(Cu)の構造を有する(CRC)ものである。・・・」
e 「【0014】
・・・板状キャリヤーと金属箔とは、めっき又はエッチング等の工程において、適度の密着性が必要であるが、いずれ機械的に剥がすことになるので、両者の剥離強度は、1g/cm以上、1kg/cm以下であることが望ましい。さらに、剥離面は板状キャリヤーと金属との境界であることが望ましく、両者の間で、相手材料の残渣が残ることは、除去工程が必要となり、工程の複雑化になるので、避けなければならない。」
f 「【0016】
(実施例1)
樹脂材料として、エポキシ樹脂から作製したプリプレグを用いた。このプリプレグの表裏に銅箔を接着させてキャリヤー付銅箔とした。このキャリヤー付銅箔上に、所望枚数のプリプレグ、次に内層コアと称する2層プリント回路基板、次にプリプレグ、さらにキャリヤー付銅箔を順に重ねることで1組の4層基板の材料組み立てユニットが完成させた。
次に、このユニット(通称「ページ」と言う)を10回程度繰り返し、プレス組み立て物(通称「ブック」と言う)を構成した。
【0017】
その後、このブックをホットプレス機にセットし、所定の温度及び圧力で加圧成型することにより4層基板を製造した。・・・
【0018】
このようにして作製された、プリプレグを有する多層構造のプリント回路基板は、めっき工程及び又はエッチング工程経て回路を形成し、さらにキャリヤー樹脂と銅箔の間で、剥離分離させて完成品となるが、合成樹脂製のキャリヤーで銅箔を全面に亘って支持しているので、前記積層中に、銅箔に皺の発生は全く認められなかった。」
g 「



(イ) 上記記載事項(ア)a?gから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「合成樹脂製の板状キャリヤーと、該キャリヤーの少なくとも一方の面に、機械的に剥離可能に密着させた金属箔からなり、板状キャリヤーと金属箔との剥離強度が1g/cm以上、1kg/cm以下であり、剥離面が板状キャリヤーと金属との境界である、キャリヤー付金属箔。」

イ 引用文献2
(ア) 同じく原査定の拒絶の理由に引用された本願優先日前に頒布された引用文献である国際公開第2007/135972号(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
a「[0001] 本件発明は、キャリアシート付銅箔、当該キャリアシート付銅箔の製造方法、当該キャリアシート付銅箔に表面処理を施したキャリアシート付表面処理銅箔、当該キャリアシート付表面処理銅箔を用いた銅張積層板に関する。これらは全てプリント配線板の製造材料として好適なものである。 」
b「[0005] これらのことから、キャリア箔付電解銅箔が用いられてきた。キャリア箔付電解銅箔は、一般にピーラブルタイプとエッチャブルタイプに大別することが可能である。違いを一言で言えば、ピーラブルタイプは銅張積層板とした後にキャリア箔を物理的に引き剥がして除去するものであり、エッチャブルタイプは銅張積層板とした後にキャリア箔をエッチングにて除去するものである。そして、近年では、エッチングプロセスが不要で製造コストの上昇を招かないピーラブルタイプのキャリア箔付電解銅箔に対する要求が顕著となってきた。特許文献3、特許文献4等にピーラブルタイプのキャリア箔付電解銅箔が開示されている。 」
c「[0006] このピーラブルタイプのキャリア箔付電解銅箔は、キャリア箔層と銅箔層との間に、剥離層を設けた層構成を備える。そして、プレス加工の熱履歴を受けた以降も、キャリア箔を20gf/cm?1OOgf/cmの引き剥がし強さで剥離可能な特性が求められる。そして、この引き剥がし強さは、プレス加工の温度が高温になるほど、大きな値となる。ところが、300°Cを超えるプレス加工温度が採用される液晶ポリマ基材、フッ素樹脂基材又はキャスティング法によるポリイミド樹脂脂層の形成でも 300°Cを超える温度での加熱を受ける。係る場合、キャリア箔層と銅箔層との間の剥離層が耐熱性に乏しい場合、キャリア箔層と銅箔層との間、キャリア箔層/剥離層/銅箔層の3層の間での相互拡散が起き、キャリア箔の一部がちぎれて銅箔層の表面に残留したり、キャリア箔層と銅箔層とが引き剥がせないという現象が生じる。」

(イ) 上記記載事項(ア)a?cから、引用文献2には、次の技術的事項が記載されている。
「キャリア箔付電解銅箔は、一般にピーラブルタイプとエッチャブルタイプに大別することが可能であり、ピーラブルタイプは銅張積層板とした後にキャリア箔を物理的に引き剥がして除去するものであり、ピーラブルタイプのキャリア箔付電解銅箔は、キャリア箔層と銅箔層との間に、剥離層を設けた層構成を備え、プレス加工の熱履歴を受けた以降も、キャリア箔を20gf/cm?100gf/cmの引き剥がし強さで剥離可能な特性が求められること。」

ウ 引用文献9
(ア) 同じく原査定の拒絶の理由に引用された本願優先日前に頒布された引用文献である特開2009-166404号公報(以下「引用文献9」という。)には、次の事項が記載されている。
a 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面側の表面粗さRzが、0.01μm以上、5μm以下である支持基材と、前記支持基材の他方の面側に剥離層と、金属箔と、絶縁層とをこの順に積層成形したことを特徴とする積層板。
【請求項2】
前記金属箔の絶縁層面側の表面粗さRzが、0.01μm以上、3μm以下である請求項1に記載の積層板。
・・・」
b 「【0001】
本発明は、積層板、積層板の製造方法、多層プリント配線板および半導体装置に関する。」
c 「【0013】
図1に示すように、本発明の積層板500は、一方の面側の表面粗さRzが、0.01μm以上、5μm以下である支持基材101と、支持基材101の他方の面側に剥離層201と、金属箔301と、絶縁層401とをこの順に積層成形した積層板500である。
【0014】
支持基材101の一方の面側の表面粗さRzは、0.01以上、5μm以下であり、好ましくは0.05μm以上、2μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上、1μm以下である。表面粗さが、この範囲内にあれば、積層板製造時に、絶縁層401と支持基材付き金属箔150とを積層し、加熱・加圧後、支持基材101を剥離しても金属箔301面の凹凸は小さく、表面平滑性に優れるものとなる。従来、表面粗さは、金属箔301と絶縁層401との密着性を考慮して、支持基材付き金属箔150の絶縁層401面側の粗さをコントロールしてきた。しかしながら、微細線化が進につれ回路歩留の低下が顕著となり、その要因が金属箔301表面に発生している凹凸であることが判明した。また、その金属箔301表面の凹凸の原因について研究者が鋭意検討した結果、金属箔301を支持している支持基材101の表面の粗さが起因していることが判明した。すなわち、支持基材付き金属箔150と絶縁層401とを対向配置し、加熱加圧積層成形する際、支持基材101と接する積層用当て板の圧力により、支持基材101表面の凹凸が金属箔301表面に転写し、凹凸が形成されることが分った。このように、支持基材101の当て板面側の表面粗さをコントロールすることにより微細線化が可能な積層板500とすることができる。
なお、表面粗さRzとは、JIS B0601で規定する10点平均粗さのことである。
【0015】
支持基材101の一方の面側の表面粗さRzを0.01μm以上、5μm以下にする方法としては、例えば、機械的研磨、化学的研磨、電気化学的溶解、或いは電解めっき法などの方法を単独で、或いは2つ以上を組み合わせて表面粗さRzを0.01μm以上、5μm以下に平滑化できる。
また、研磨加工は、支持基材付き金属箔150にしてから、支持基材101の一方の面側を研磨して表面粗さRzを0.01μm以上、5μm以下にしてもよいし、または、予め支持基材101の一方の面側を研磨して表面粗さRzを0.01μm以上、5μm以下にしたのち、支持基材101の他方の面側に剥離層201と、金属箔301とをこの順に積層して支持基材付き金属箔を得てもよい。
【0016】
絶縁層401と接する面側の金属箔301の表面粗さRzは、0.01μm以上、3μm以下が好ましく、0.1μm以上、2.5μm以下がより好ましく、さらには0.5μm以上、2μm以下が好ましい。表面粗さがこの範囲にあると、微細な凹凸のアンカー効果が生じ絶縁層401との密着が強くなる。」
d 「



(イ) 上記記載事項(ア)a?dから、引用文献9には、次の技術的事項が記載されている。
「剥離層201と接する面と反対側の、絶縁層401と接する面側の金属箔301の表面粗さRzは、0.01μm以上、3μm以下が好ましく、0.1μm以上、2.5μm以下がより好ましく、さらには0.5μm以上、2μm以下が好ましく、表面粗さがこの範囲にあると、微細な凹凸のアンカー効果が生じ絶縁層401との密着が強くなること。」

(3)対比・判断
ア 本件補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「合成樹脂製の板状キャリヤー」、「金属箔」、「キャリヤー付金属箔」は、その構造及び機能からみて、本件補正発明の「樹脂製の板状キャリア」、「金属箔金属箔」、「キャリア付金属箔」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「機械的に剥離可能に密着させた」は、本願補正発明の「剥離可能に密着させた」に相当する。
引用発明は、「金属層/純炭素層からなる接合界面層を有するキャリア付金属箔」に該当しないものである。

イ よって、本件補正発明は、引用発明とは、
「樹脂製の板状キャリアと、該キャリアの少なくとも一方の面に、剥離可能に密着させた金属箔からなるキャリア付金属箔。(金属層/純炭素層からなる接合界面層を有するキャリア付金属箔を除く)」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
本件補正発明は、該金属箔と当該板状キャリアとの剥離強度が、10gf/cm以上80gf/cm以下であるのに対して、引用発明は、板状キャリアと金属箔との剥離強度が1g/cm以上、1kg/cm以下である点。

(相違点2)
本件補正発明は、金属箔の板状キャリアと接しない側の表面の十点平均粗さ(Rz jis)が0.4μm以上10.0μm以下であるのに対して、引用発明は、金属箔の板状キャリアと接しない側の表面の十点平均粗さは明らかでない点。

ウ そこで、上記各相違点について検討する。
まず、上記相違点1について検討する。
引用文献2には、「キャリア箔付電解銅箔は、一般にピーラブルタイプとエッチャブルタイプに大別することが可能であり、ピーラブルタイプは銅張積層板とした後にキャリア箔を物理的に引き剥がして除去するものであり、ピーラブルタイプのキャリア箔付電解銅箔は、キャリア箔層と銅箔層との間に、剥離層を設けた層構成を備え、プレス加工の熱履歴を受けた以降も、キャリア箔を20gf/cm?100gf/cmの引き剥がし強さで剥離可能な特性が求められること。」という技術的事項が記載されている。また、引用発明のキャリア付金属箔もキャリアは金属箔から剥離可能である(引用文献1【0012】)から、引用発明のキャリア付金属箔もピーラブルタイプといえる。そうすると、引用文献2に記載された技術的事項と引用発明とはピーラブルタイプのキャリア付金属箔である点で技術分野及び課題が共通するから、引用文献2に記載された技術的事項を引用発明に適用することは、当業者が容易になし得る事項である。そして、その適用にあたって、剥離強度の下限値に注目して20gf/cmとすること、及び剥離強度の範囲を「20gf/cm?100gf/cm」の範囲内でかつ大部分の範囲が一致する「20gf/cm?80gf/cm」に変更して、相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得る設計上の変更にすぎない。そして、本件出願明細書の表1の実施例においても、金属箔と当該板状キャリアとの剥離強度が80gf/cmを超えるものでも、剥離作業性は、「S(Super good):樹脂が破壊されず、剥離できた」と評価されるものが多数あり、その結果をみても、剥離強度の上限値(80gf/cm)について臨界的意義があるということはできない。
よって、引用発明において上記相違点1に係る本件補正発明の構成を採用することは当業者が容易になし得ることである。

次に上記相違点2について検討する。
引用文献9には、「剥離層201と接する面と反対側の、絶縁層401と接する面側の金属箔301の表面粗さRzは、0.01μm以上、3μm以下が好ましく、0.1μm以上、2.5μm以下がより好ましく、さらには0.5μm以上、2μm以下が好ましく、表面粗さがこの範囲にあると、微細な凹凸のアンカー効果が生じ絶縁層401との密着が強くなること。」という技術的事項が記載されている。すなわち、引用文献9には、「剥離層201と接する面と反対側の、絶縁層401と接する面側の金属箔301の表面粗さRzは、0.5μm以上、2μm以下が好ましいこと。」という技術的事項が記載されている。また、引用発明のキャリア付金属箔の金属箔も、一方の表面でキャリアと剥離可能に積層することが予定されている(引用文献1【0016】?【0018】)から、金属箔の板状キャリアと接しない側の表面は、他部材の密着が課題となるものである。そうすると、引用文献9に記載された技術的事項と引用発明とは技術分野及び課題が共通するから、引用文献9に記載された技術的事項を引用発明の金属箔の板状キャリアと接しない側の表面に適用することは、当業者が容易になし得る事項である。そして、その適用にあたって、表面の十点平均粗さ(Rz jis)の範囲を「0.5μm以上、2μm以下」の範囲を含む「0.4μm以上10.0μm以下」に変更して、相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得る設計上の変更にすぎない。
よって、引用発明において上記相違点2に係る本件補正発明の構成を採用することは当業者が容易になし得ることである。

そして、上記相違点1及び2を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明、引用文献2に記載された技術及び引用文献9に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲のものにすぎず、格別なものとはいうことはできない。

したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び引用文献9に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)小括
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び引用文献9に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成28年3月28日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「第2 1 (2)本件補正前の特許請求の範囲の記載参照。)により特定されるとおりのものである。

2 引用文献
原査定の拒絶理由に引用された引用文献1、2、9及びその記載事項並びに引用発明は、前記「第2 2(2)引用文献の記載事項」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、本件補正発明の「金属箔と板状キャリアとの剥離強度」について、 「10gf/cm以上80gf/cm以下」を「10gf/cm以上200gf/cm以下」とするもので、その範囲を広げるものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに限定された本件補正発明が、前記「第2 2(3)対比・判断」に記載したとおり、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び引用文献9に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び引用文献9に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び引用文献9に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-03-19 
結審通知日 2018-03-27 
審決日 2018-04-09 
出願番号 特願2014-519988(P2014-519988)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B32B)
P 1 8・ 121- Z (B32B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中川 裕文中村 勇介増田 亮子  
特許庁審判長 門前 浩一
特許庁審判官 小野田 達志
蓮井 雅之
発明の名称 キャリア付金属箔  
代理人 アクシス国際特許業務法人  
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