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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G07C 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G07C |
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管理番号 | 1340727 |
審判番号 | 不服2017-5477 |
総通号数 | 223 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-04-17 |
確定日 | 2018-05-24 |
事件の表示 | 特願2012-243902「乗降客数カウントシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月19日出願公開、特開2014- 92998〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願は、平成24年11月5日の特許出願であって、平成28年7月7日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月9日に意見書とともに手続補正書が提出され特許請求の範囲及び明細書について補正がなされたが、平成29年1月13日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされた。 これに対し、平成29年4月17日に該査定の取消を求めて本件審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、特許請求の範囲及び明細書についてさらに補正がなされたものである。 第2 平成29年4月17日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成29年4月17付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 補正の内容の概要 平成29年4月17日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、平成28年9月9日付けで補正された特許請求の範囲及び明細書をさらに補正するものであって、特許請求の範囲の請求項1に関する以下の補正を含んでいる。なお、下線部は補正箇所を示す。 (1)<補正前> 「 【請求項1】 乗客輸送車両が乗降所に停車するたびに、前記乗客輸送車両によって前記乗客輸送車両の乗降口近傍の画像が生成されると共に生成された画像から当該乗降所における乗降客数がカウントされ、そのカウント結果が前記乗客輸送車両から管理センタへと送信される、乗降客数カウントシステム。」 (2)<補正後> 「 【請求項1】 乗客輸送車両が乗降所に停車するたびに、前記乗客輸送車両によって前記乗客輸送車両の乗降口近傍の距離画像が生成され、生成された距離画像に対して閾値を用いた人物の抽出処理が行われて当該乗降所における乗降客数がカウントされ、そのカウント結果が前記乗客輸送車両から管理センタへと送信される、乗降客数カウントシステム。」 2 補正の適否 本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、補正前の請求項1の「画像」について「距離画像」と限定し、また「画像から」「当該乗降所における乗降客数がカウントされ」ることについて「画像に対して閾値を用いた人物の抽出処理が行われて」「当該乗降所における乗降客数がカウントされ」ることを限定的に特定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。 また、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に違反するところもない。 そこで、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定される独立特許要件に適合するか否かについて検討する。 (1)補正発明 補正発明は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、上記1(2)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「乗降客数カウントシステム」であると認める。 (2)引用文献 これに対して、原審の平成28年7月7日付け拒絶の理由に引用された、本件の出願日前に頒布された刊行物である特開昭62-197884号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の発明が記載されていると認められる。 ア 引用文献1に記載された事項 引用文献1には、「バス情報収集方式」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線部は当審で付したものである。 (ア)特許請求の範囲 「(1)ポーリング信号の送信とバスからバス情報の受信を行なう基地無線局とバス情報を演算処理する中央制御装置と乗降客検出器、ドア開閉検出器、距離検出等情報検出器による情報を送信する送受信機を備える車載装置よりなり、各バスが上記ポーリング信号に対して、それぞれバス情報を発信することを特徴とするバス情報収集方式。」 (イ)背景技術の欄 「乗合バスの運行管理を行うための基本データである各停留所での乗降客数と走行距離と所要時間を自動的に計測する装置が検討され、実用化されている。 この場合、乗降客検出器としては、乗降口に光電スイッチ、又はドアスイッチ等を用いて乗降客を計数する構成のものが使用され、走行距離検出器としては、速度計への入力信号を分岐して車輪の回転数に同期して数パルス信号を得るような構成のものが使用され、またドア開閉検出器としてはドアが開閉した時に働くリミットスイッチによるものが使用される。 ・・・」 (ウ)発明の目的、構成の欄 「本発明は、上述のような路上制御装置を多数必要とするよな方式にかえ、これを要することなくバス情報収集をリアルタイムで行える方式を得ることにあり、中央側よりのポーリングによって、バス情報をその都度伝送するように構成したものである。 以下図面に示す実施例により本発明を説明する。第1図は本発明の構成をブロック図で示す。 図において20はポーリング信号を送信し、バス情報を受信する基地無線局であり、21はバス情報を演算処理する中央制御装置である。これに対してバス24に車載制御装置25が搭載され、これにアンテナ26が取付けられる。 第2図は本発明における車載制御装置25を示すブロック図である。車載制御装置25は車内放送用テープデッキ28からの停留所情報を信号処理部27で読みとる。また、信号処理部27で、この停留所情報、例えば番号を見出しに、これに車番を加え、例えば次の停留所におけるドア開閉検出器30と乗降客検出器29よりの情報、また距離検出器32よりの情報を入力処理して、1停留所車位で車番を付して情報を編成し、基地無線局20よりのポーリングに対して準備する。 中央制御装置21に接続される基地無線局よりポーリング信号を発し、そのポーリング信号に呼応する特性のバスがこれに応答して、信号処理部27において編成されたバス情報を送信する。ポーリングの繰り返しを行うことによって全線のバス情報を収集する。・・・ ポーリング周期を停留所間の走行時間より短かくすることによって、全停留所ごとのデータを収集できる。・・・」 (エ)上記記載事項(イ)に「各停留所での乗降客数・・・を自動的に計測する装置が検討され、実用化されている。・・・この場合、乗降客検出器としては、乗降口に光電スイッチ、又はドアスイッチ等を用いて乗降客を計数する構成のものが使用され」とあり、また、上記記載事項(ウ)に「信号処理部27で、この停留所情報、例えば番号を見出しに・・・次の停留所におけるドア開閉検出器30と乗降客検出器29よりの情報・・・を入力処理して・・・基地無線局20よりのポーリングに対して準備する」とあるところ、これらの記載を併せ読めば、引用文献1記載の「乗降客検出器29」は、“乗降客数を計測”しているものといえる。 (オ)また、上記(エ)にて指摘した記載箇所を、上記記載事項(ウ)の「中央制御装置21に接続される基地無線局よりポーリング信号を発し、そのポーリング信号に呼応する特性のバスがこれに応答して、信号処理部27において編成されたバス情報を送信する。」との記載と併せ読めば、引用文献1記載の「車載装置」は“中央制御装置21に接続される基地無線局からのポーリング信号に応答して乗降客数等のバス情報を送信する”ものと認められる。 (カ)さらに、上記記載事項(ウ)に「ポーリング周期を停留所間の走行時間より短かくすることによって、全停留所ごとのデータを収集できる。」とあることから、引用文献1記載の「バス情報収集方式」は、“バスの全停留所ごとに”乗降客数等のバス情報を送信する機能を有するものと言い得る。 イ 引用文献1発明 上記記載事項ア(ア)ないし(ウ)及び上記認定事項(エ)ないし(カ)を、図面を参照しつつ技術常識を踏まえ補正発明に照らして整理すると、引用文献1には以下の発明が記載されていると認める。(以下「引用文献1発明」という。) 「バスの全停留所ごとに、前記バスによって前記バスの乗降口の光電スイッチを用いて当該停留所における乗降客数が計測され、中央制御装置21に接続される基地無線局からのポーリング信号に応答して乗降客数等のバス情報を送信する、バス情報収集方式。」 (3)対比 補正発明と引用文献1発明とを対比すると以下のとおりである。 引用文献1発明の「バス」は、補正発明の「乗客輸送車両」に相当することは、技術常識から明らかであり、以下同様にそれぞれの機能及び技術常識を踏まえれば、「全停留所ごとに」は「乗降所に停車するたびに」に、「停留所」は「乗降所」に、「乗降客数が計測され」は「乗降客数がカウントされ」に、「中央制御装置21に接続される基地無線局からのポーリング信号に応答して乗降客数等のバス情報を送信する」は「そのカウント結果が前記乗客輸送車両から管理センタへと送信される」に、「バス情報収集方式」は「乗降客数カウントシステム」に相当することも明らかである。 次に、引用文献1発明の「前記バスによって前記バスの乗降口の光電スイッチを用いて当該停留所における乗降客数が計測され」ることは、上記対応関係を踏まえ、「前記乗客輸送車両によって前記乗客輸送車両の乗降口の光電スイッチを用いて当該乗降所における乗降客数がカウントされ」ることと言い改められるところ、 これは、補正発明の「前記乗客輸送車両によって前記乗客輸送車両の乗降口近傍の距離画像が生成され、生成された距離画像に対して閾値を用いた人物の抽出処理が行われて当該乗降所における乗降客数がカウントされ」と、 “前記乗客輸送車両によって前記乗客輸送車両の乗降口のカウント手段により当該乗降所における乗降客数がカウントされ”るものである限りにおいて共通する。 そうすると、補正発明と引用文献1発明とは、以下の点で一致しているということができる。 <一致点> 「乗客輸送車両が乗降所に停車するたびに、前記乗客輸送車両によって前記乗客輸送車両の乗降口のカウント手段により当該乗降所における乗降客数がカウントされ、そのカウント結果が前記乗客輸送車両から管理センタへと送信される、乗降客数カウントシステム。」 そして、補正発明と引用文献1発明とは、以下の点で相違している。 <相違点> 乗客輸送車両によって前記乗客輸送車両の乗降口のカウント手段により当該乗降所における乗降客数がカウントされることに関し、 補正発明は、乗客輸送車両によって前記乗客輸送車両の乗降口近傍の距離画像が生成され、生成された距離画像に対して閾値を用いた人物の抽出処理が行われて当該乗降所における乗降客数がカウントされるのに対し、 引用文献1発明は、乗客輸送車両(バス)によって前記乗客輸送車両の乗降口の光電スイッチを用いて当該乗降所における乗降客数がカウント(計測)される点。 (4)相違点の検討 (ア)乗降客数カウントシステムにおいて、車両の乗降口近傍を撮像する撮像部を有し、生成された画像に基づいて乗降客数をカウントすることは、原査定においても例示された特開平9-27021号公報(【請求項6】、段落【0024】、【0026】、【0031】?【0033】、図1、図2(a)、図2(b)等参照)、特開平8-329213号公報(段落【0073】?【0080】、図10、図11等参照)に示されるように従来周知の技術事項である。 そして、引用文献1発明における光電スイッチによる乗降客数のカウントに代えて、上記従来周知の撮像部により生成された画像に基づいて乗降客数をカウントするように構成することは、当業者がより精度の高い乗降客数カウントを行うために、ごく自然に採用し得るものというべきである。 (イ)次に、引用文献1発明に、撮像部により生成された画像に基づく乗降客数カウントという上記従来周知の技術事項を適用するにあたり、相違点に係る補正発明のように、画像を距離画像とし、生成された距離画像に対して閾値を用いて人物の抽出処理を行い人数カウントすることも、(i)そのように、生成された距離画像に対して閾値を用いた人物の抽出処理を行い人数カウントすることは、特開2011-20656号公報(段落【0037】?【0038】等参照)、「全COMSセンサに距離画像空間をモデル化するクローラ」(日経エレクトロニクス,日経BP社,2012年4月30日,第1081号,p.50-59、特に57?58ページ参照)に示されるように従来周知の技術事項であること、(ii)公共スペースでの人数カウントにおいては、プライバシー保護の観点から本人を特定できるような通常の画像撮影はあまり好ましくないことに鑑みれば、やはり、当業者が容易に想到し得たものというべきである。 (ウ)以上を総合すると、引用文献1発明に、上記従来周知の各技術事項を適用して、相違点に係る補正発明の構成とすることは当業者が容易に推考し得たものというのが相当である。 (5)小括 したがって、補正発明は、引用文献1発明及び従来周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記[補正却下の決定の結論]のとおり、決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたところ、本件出願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、平成28年9月9日付けの手続補正書により補正された上記第2の1(1)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「乗降客数カウントシステム」であると認める。 2 引用文献 これに対して、原審の拒絶の理由に引用された引用文献は、上記第2の2(2)に示した引用文献1であり、その記載事項は上記第2の2(2)のとおりである。 3 対比・検討 本願発明は、実質的に、上記第2の2で検討した補正発明のうち上記第2の2で指摘した限定事項を除いたものである。そうすると、本願発明より狭い範囲を特定事項とする補正発明が、上記第2の2で検討したとおり想到容易である以上、それよりも広い範囲を特定事項とする本願発明も、引用文献1発明及び従来周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということになる。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件出願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-03-19 |
結審通知日 | 2018-03-27 |
審決日 | 2018-04-09 |
出願番号 | 特願2012-243902(P2012-243902) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
Z
(G07C)
P 1 8・ 121- Z (G07C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小島 哲次 |
特許庁審判長 |
高木 彰 |
特許庁審判官 |
長屋 陽二郎 五閑 統一郎 |
発明の名称 | 乗降客数カウントシステム |
代理人 | 小川 護晃 |
代理人 | 奥山 尚一 |
代理人 | 西山 春之 |