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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25D
管理番号 1340730
審判番号 不服2017-6827  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-11 
確定日 2018-05-24 
事件の表示 特願2016- 28075号「冷蔵庫」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月24日出願公開、特開2017-146020号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)2月17日の特許出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成28年12月19日付け:拒絶理由通知
平成29年 2月23日 :意見書
平成29年 3月15日付け:拒絶査定
平成29年 5月11日 :審判請求

第2 本願発明について
本願の請求項1ないし13に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるとおりのものであると認めるところ、請求項1に係る発明は、以下のとおりである(以下「本願発明」という。)。
「【請求項1】
食品を保存する貯蔵室と、
前記貯蔵室の内部に可視光を照射可能な発光部と、を備え、
前記発光部は、
可視光領域の第1の波長を中心波長とする光を照射する第1の光源と、
前記第1の波長より短い可視光領域の第2の波長を中心波長とする光を照射する第2の光源と、を備え、
光を照射する照射工程において、前記第1の光源から第1の放射強度で光を照射し、同時に、前記第2の光源から前記第1の放射強度と異なる第2の放射強度で光を照射する冷蔵庫。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本願の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1.特開2005-65622号公報
引用文献2.実願平5-20858号(実開平6-72333号)のCD-ROM

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載及び引用発明
(1)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付与。)。
(ア)「【請求項1】
冷蔵庫の野菜室に、赤・青・緑の3色の発光ダイオード素子を複数配置した照射板を設け、この照射板を複数のエリアに区分し、エリアごとに照射する発光ダイオード素子の発光色の組合せを変更するための選択手段を設けたことを特徴とする野菜保存用照射装置。
【請求項2】
光強度制御部を備え、この光強度制御部によって、発光ダイオード素子のオンオフや照射する光強度を制御する請求項1に記載の野菜保存用照射装置。」
(イ)「【0002】
植物というのは、特定の波長の光があればその栽培や育成が可能である、と言われている。また、上記特定の波長の光を照射することによって、植物の鮮度も維持することができる、と言われている。この性質を利用して、冷蔵庫内に収納した葉菜類の鮮度を保持する冷蔵庫として、例えば、特開2002-267348号公報に記載された発明が従来から知られている。この従来の冷蔵庫では、冷蔵庫内の緑色葉菜類の鮮度を保持するために、葉菜類の収納容器に、特定の波長の光を照射する弱光照射装置を配置している。
上記弱光照射部は、葉菜類の鮮度保存に適した約660nmの波長の光を出力する赤色光発光ダイオード素子(以下「LED」という)によって構成されている。野菜室に収納した葉菜類に、弱光照射部によって約660nmの波長の光を照射することで、葉菜類の鮮度を高く保持するものである。」
(ウ)「【0007】
第1の発明によれば、照射板が照射する光の波長を、エリアごとに変更できるので、種類の異なる野菜を混在して野菜室に収納した場合に、野菜の種類に適した波長の光を照射することができる。
このように野菜の種類に適した波長の光を照射すれば、種類の異なる野菜を野菜室に収納した場合であっても、全ての野菜の鮮度を高く保つことができる。」
(エ)「【0010】
照射板3は、図3に示すように、エリア4a,4b,4cごとに、操作部6と、基板7とを備えている。
上記基盤7の片面7aには、複数のLED9を配置している。これらLEDは、赤色LEDと緑色LEDと青色LEDの3種類のLEDによって構成されている。そして、これらLED9を配置した面7aが、野菜室2内の野菜に対向するようにしている。
【0011】
図3において、Rは赤色LED、Gは緑色LED、Bは青色LEDを表している。そして、赤色LEDと緑色LEDを交互に一列に配置し、その隣に、青色LEDのみの列を配置している。この青色LEDのみの列の隣に、緑色LEDと赤色LEDを交互に一列に配置し、さらに隣には青色LEDのみの列を配置している。各列の個々のLEDは、隣合う列の個々のLEDと互い違いに配置するようにしている。
なお、図3に示したLEDの配列は、一例であって、いずれの色のLEDも基板7の面7a全体に片寄りなく配置されていれば、どのような配置でもよい。
【0012】
上記操作部5(当審注:操作部6の誤記。)は、何色のLED9をオンにするかを選択する選択手段8からなり、この選択手段8は、八つのボタンを備えている。すなわち、この選択手段8は、赤色単色を選択するボタンと、青色単色を選択するボタンと、緑色単色単色を選択するボタンと、赤色と青色の混合を選択するボタンと、赤色と緑色の混合を選択するボタンと、青色と緑色の混合を選択するボタンと、赤色と青色と緑色の3色混合を選択するボタンと、全部のLED9をオフにするボタンとから成る。
【0013】
上記選択手段8の八種類のボタンは、次のようにして選択する。
例えば、葉緑素が光を吸収するピークは赤色660nm付近であるため、赤色は光合成に最も寄与し、植物が好むといわれている。そこで、赤色だけで育つと言われるリーフレタスや小松菜などを保存するときは、赤色単色を選択するボタンをオンにする。
【0014】
また、450nm付近の青色の光は、植物の形態形成に必要であるといわれており、赤色の光と青色の光を混合すると切花長が伸びる等の効果がある。
そこで、カット野菜のみずみずしさを保持しつつ、保存期間を延ばそうとするときは、赤色と青色の混合を選択するボタンをオンにする。」
(オ)「【0016】
なお、発光体としてLED9を使用するのは、そのピーク波長が植物の光合成に適しているからであるが、他に次のような理由もある。すなわち、LED9の光照射によって発生する熱は極めて小さい。そのため、仮に野菜室2に大量の野菜が収納され、野菜が照射板3に直接触れたとしても、野菜類が焼ける心配はないということである。」
(カ)「【0031】
ところで、光の強度というのは、野菜の鮮度に大きな影響を与えるものであり、強すぎると、その鮮度に悪影響を及ぼす場合がある。そこで、上記の実施形態に、光強度の初期値を設定できる手段を追加して、この設定手段により、野菜種類に応じたLEDへの入力電流の最大値を予め設定するようにしてもよい。このように光強度を野菜の種類に応じて可変にすれば、野菜へ照射される光によって野菜の鮮度に悪影響を与えるといった問題を回避できる。」
(2)引用発明
したがって、引用文献1には、以下の発明が記載されている。(以下「引用発明」という。)
「冷蔵庫の野菜室に、赤・青・緑の3色の発光ダイオード素子を複数配置した照射板を設け、照射板3は、操作部6と、基板7とを備え、操作部6は、何色の発光ダイオードをオンにするかを選択する選択手段8からなり、この選択手段8は、赤色と青色の混合を選択するボタンと備えている冷蔵庫。」

2 引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は植物育成用補光装置の改良に関する。」
(イ)「【0005】
【課題を解決するための手段】
本考案は上記課題を解決するために次の構成とする。つまり青色光、緑色光及び赤色光用の複数種の高輝度発光ダイオードを有して構成する。
また複数の発光ダイオードを適宜選択し、植物育成を図るように構成する。
【0006】
【作用】
上記した構造の植物育成用補光装置によると、青色光、緑色光及び赤色光用の発光ダイオードを適宜選択して組合せ、使用するので植物に適合した光で照射できる。」
(ウ)「【0010】
上記した発光ダイオード162個で構成し、青色光12W/m^(2)、緑色光16W/m^(2)、赤色光22W/m^(2)で照射すると、シクラメン、ベゴニア、シンビジュウム、テーブルヤシ、アザレア、アンスリウム、シラネリア、デンドロビュウム、ピレア、プリムラ、フィロデンドロン、セントポーリア等の補光に適する。」

第5 対比
本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。
引用発明の「冷蔵庫の野菜室」は、本願発明の「食品を保存する貯蔵室」に相当する。
引用発明の「赤・青・緑の3色の発光ダイオード素子を複数配置した照射板」は、本願発明の「貯蔵室の内部に可視光を照射可能な発光部」に相当する。
引用発明の「赤」「色の発光ダイオード素子」及び「青」「色の発光ダイオード素子」は、赤色は青色より波長が長いこと、及び発光ダイオードはピーク波長を持っていることから、それぞれ本願発明の「可視光領域の第1の波長を中心波長とする光を照射する第1の光源」及び「第1の波長より短い可視光領域の第2の波長を中心波長とする光を照射する第2の光源」に相当する。
引用発明の「選択手段8」により「赤色と青色の混合を選択」する態様は、「赤」「色の発光ダイオード素子」と「青」「色の発光ダイオード素子」から同時に光を照射しているといえるから、本願発明の「光を照射する照射工程において、前記第1の光源から第1の放射強度で光を照射し、同時に、前記第2の光源から」「第2の放射強度で光を照射する」態様に相当する。
そうすると、本願発明と引用発明は、
「食品を保存する貯蔵室と、
前記貯蔵室の内部に可視光を照射可能な発光部と、を備え、
前記発光部は、
可視光領域の第1の波長を中心波長とする光を照射する第1の光源と、
前記第1の波長より短い可視光領域の第2の波長を中心波長とする光を照射する第2の光源と、を備え、
光を照射する照射工程において、前記第1の光源から第1の放射強度で光を照射し、同時に、前記第2の光源から第2の放射強度で光を照射する冷蔵庫。」で一致し、以下の点で相違する。
第1の放射強度と第2の放射強度について、本願発明では「異なる」のに対して、引用発明では、不明な点。

第6 判断
引用文献1には、「何色のLED9をオンにするかを選択する選択手段8からなり、この選択手段8は、八つのボタンを備えている」こと(段落【0012】)、「リーフレタスや小松菜などを保存するときは、赤色単色を選択するボタンをオンにする。」こと(段落【0013】)、「カット野菜のみずみずしさを保持しつつ、保存期間を延ばそうとするときは、赤色と青色の混合を選択するボタンをオンにする。」こと(段落【0014】)及び「光強度の初期値を設定できる手段を追加して、この設定手段により、野菜種類に応じたLEDへの入力電流の最大値を予め設定するようにしてもよい。」こと(段落【0031】)が記載されている。
さらに、引用文献1には、「植物というのは、特定の波長の光があればその栽培や育成が可能である、と言われている。また、上記特定の波長の光を照射することによって、植物の鮮度も維持することができる、と言われている。」(【0002】)とも記載されているから、引用発明について、野菜の種類に応じた特定の波長の光を所定の強度で照射して野菜の鮮度を維持すること、及び、野菜の鮮度を維持するための特定の波長は、野菜の栽培や育成を可能とする波長であることが示唆されているといえる。
一方、引用文献2に、植物の育成のために、植物に適合した光で照射すること、そして、植物に適合した光で照射する例として、発光ダイオードにより青色光12W/m^(2)、緑色光16W/m^(2)、赤色光22W/m^(2)で照射することがシクラメン等の補光に適していることが記載されており、植物に適合した光として、波長ごとに異なる放射強度を設定する技術事項が把握できる。
そうすると、引用発明において、野菜の鮮度を維持するために赤色と青色の混合を選択するにあたり、植物の育成のために植物に適合した波長ごとに異なった放射強度を設定する引用文献2に記載された技術事項を参照し、赤色の放射強度と、青色の放射強度を異なる強度とすること、即ち、相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-03-19 
結審通知日 2018-03-27 
審決日 2018-04-09 
出願番号 特願2016-28075(P2016-28075)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F25D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西山 真二  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 莊司 英史
佐々木 正章
発明の名称 冷蔵庫  
代理人 小澤 次郎  
代理人 高橋 英樹  
代理人 高田 守  

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