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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1340733
審判番号 不服2017-11565  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-03 
確定日 2018-05-24 
事件の表示 特願2015-197364号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年4月13日出願公開、特開2017-70336号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成27年10月5日の出願であって、平成28年10月25日付け拒絶理由通知に対して、同年12月23日付けで意見書、及び、手続補正書が提出されたところ、平成29年4月28日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年5月9日)がなされたものである。
これに対し、同年8月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、その審判の請求と同時に手続補正書が提出されたものである。
さらに、平成29年10月11日付け前置報告に対して、平成29年11月8日に上申書が提出されたものである。

第2 平成29年8月3日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成29年8月3日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであって、特許請求の範囲の請求項1について本件補正前に、
(平成28年12月23日付け手続補正)
「【請求項1】
遊技球が転動可能な遊技領域を有する遊技盤と、
前記遊技領域内に位置し、特別入賞口と、前記特別入賞口に遊技球が入賞し易い開状態と前記開状態と比較して前記特別入賞口に遊技球が入賞し難い閉状態とに変化させる開閉部材と、前記特別入賞口を通過した遊技球が転動可能な特定領域と、前記特定領域に遊技球が入球し易い第1入球状態と前記第1入球状態と比較して前記特定領域に遊技球が入球し難い第2入球状態とに変化させる変化部材と、を有する特別入賞装置と、
遊技球が前記特別入賞口を通過してから前記変化部材を経由して前記特定領域に至るまでの通路である特別通路の前側の少なくとも一部を、遊技者に視認困難にさせる視認困難部材と、
前記特定領域と前記変化部材との少なくとも一方の周辺に配置される光源と、
遊技制御手段と、
演出制御手段と、
を備え、
前記遊技制御手段は、
前記開閉部材を一時的に開状態とする制御に伴って、前記変化部材の入球状態を変化させる変化処理を実行し、
前記演出制御手段は、
少なくとも前記遊技制御手段によって前記開閉部材を開状態とさせている間、前記光源を点灯させる制御である発光制御を行う発光処理を実行する、
ことを特徴とする遊技機。」とあったものを、

(本件補正である平成29年8月3日付け手続補正)
「【請求項1】
遊技球が転動可能な遊技領域を有する遊技盤と、
前記遊技領域内に位置し、特別入賞口と、前記特別入賞口に遊技球が入賞し易い開状態と前記開状態と比較して前記特別入賞口に遊技球が入賞し難い閉状態とに変化させる開閉部材と、前記特別入賞口を通過した遊技球が転動可能な特定領域と、前記特定領域に遊技球が入球し易い第1入球状態と前記第1入球状態と比較して前記特定領域に遊技球が入球し難い第2入球状態とに変化させる変化部材と、を有する特別入賞装置と、
前記特定領域と前記変化部材との少なくとも一方の周辺に配置される光源と、
遊技球が前記特別入賞口を通過してから前記変化部材を経由して前記特定領域に至るまでの通路である特別通路の前側の一部を、前記光源が点灯しているか否かにかかわらず、遊技者に視認困難にさせる視認困難部材と、
遊技制御手段と、
演出制御手段と、
を備え、
前記遊技制御手段は、
前記開閉部材を一時的に開状態とする制御に伴って、前記変化部材の入球状態を変化させる変化処理を実行し、
前記演出制御手段は、
少なくとも前記遊技制御手段によって前記開閉部材を開状態とさせている期間中、遊技者の見た目で消灯して見えないように、前記光源を点灯させる制御である発光制御を行う発光処理を実行する、
ことを特徴とする遊技機。」と補正することを含むものである(下線部は補正箇所を示す。)。

2 補正の適否
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「視認困難部材」に関して、「遊技球が前記特別入賞口を通過してから前記変化部材を経由して前記特定領域に至るまでの通路である特別通路の前側の少なくとも一部を、遊技者に視認困難にさせる」とあったものを、「遊技球が前記特別入賞口を通過してから前記変化部材を経由して前記特定領域に至るまでの通路である特別通路の前側の一部を、前記光源が点灯しているか否かにかかわらず、遊技者に視認困難にさせる」と限定し、
補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「発光処理」に関して、「少なくとも前記遊技制御手段によって前記開閉部材を開状態とさせている間、前記光源を点灯させる制御である発光制御を行う」とあったものを、「少なくとも前記遊技制御手段によって前記開閉部材を開状態とさせている期間中、遊技者の見た目で消灯して見えないように、前記光源を点灯させる制御である発光制御を行う」と限定することを含むものである。
そして、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
また、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面等の記載からみて、新規事項を追加するものではない。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかについて、以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、次のとおりのものであると認める(記号A?Hは、分説するため当審で付した。)。
「【請求項1】
A 遊技球が転動可能な遊技領域を有する遊技盤と、
B 前記遊技領域内に位置し、特別入賞口と、前記特別入賞口に遊技球が入賞し易い開状態と前記開状態と比較して前記特別入賞口に遊技球が入賞し難い閉状態とに変化させる開閉部材と、前記特別入賞口を通過した遊技球が転動可能な特定領域と、前記 特定領域に遊技球が入球し易い第1入球状態と前記第1入球状態と比較して前記特定領域に遊技球が入球し難い第2入球状態とに変化させる変化部材と、を有する特別入賞装置と、
C 前記特定領域と前記変化部材との少なくとも一方の周辺に配置される光源と、
D 遊技球が前記特別入賞口を通過してから前記変化部材を経由して前記特定領域に至るまでの通路である特別通路の前側の一部を、前記光源が点灯しているか否かにかかわらず、遊技者に視認困難にさせる視認困難部材と、
E 遊技制御手段と、
F 演出制御手段と、
を備え、
G 前記遊技制御手段は、
前記開閉部材を一時的に開状態とする制御に伴って、前記変化部材の入球状態を変化させる変化処理を実行し、
H 前記演出制御手段は、
少なくとも前記遊技制御手段によって前記開閉部材を開状態とさせている期間中、遊技者の見た目で消灯して見えないように、前記光源を点灯させる制御である発光制御を行う発光処理を実行する、
ことを特徴とする遊技機。」

(2)刊行物に記載された発明
原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2009-226134号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線部は当審で付した。以下同様。)。

・記載事項
ア 「【0001】
本発明は、ぱちんこ遊技機等の弾球遊技機に関し、特に弾球遊技機における賞球の払い出しを制御する技術に関する。
・・・
【0006】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、特別遊技における出玉設計を工夫することで遊技者の期待感ひいては遊技継続意欲を保ちつつ、遊技者と遊技運営者の利益のバランスを確保可能な弾球遊技機を提供することにある。」

イ 「【0028】
図1は、実施例に係るぱちんこ遊技機の前面側における基本的な構造を示す。以下、弾球遊技機として従来にいういわゆる第1種ぱちんこ遊技機を例に説明する。
ぱちんこ遊技機10は、主に遊技機枠と遊技盤で構成される。ぱちんこ遊技機10の遊技機枠は、外枠11、前枠12、透明板13、扉14、上球皿15、下球皿16、および発射ハンドル17を含む。外枠11は、開口部分を有し、ぱちんこ遊技機10を設置すべき位置に固定するための枠体である。前枠12は、外枠11の開口部分に整合する枠体であり、図示しないヒンジ機構により外枠11へ開閉可能に取り付けられる。前枠12は、遊技球を発射する機構や、遊技盤を着脱可能に収容させるための機構、遊技球を誘導または回収するための機構等を含む。
・・・
【0030】
遊技盤50は、外レール54と内レール56により区画された遊技領域52上に、アウト口58、特別図柄表示装置61、演出表示装置60、始動入賞口(以下、「始動口」という)62、センター飾り64、大入賞口66、作動口68、一般入賞口72を含む。さらに遊技領域52には、図示しない複数の遊技釘や風車などの機構が設置される。始動口62は、遊技球の入球を検出するための始動入賞検出装置74と、始動口62の拡開機構を拡開させるための普通電動役物ソレノイド76を備える。始動口62の拡開機構が拡開されたとき、始動口62の開口幅が拡がって入球容易性が向上する。始動入賞検出装置74は、始動口62への遊技球の入球を検出するセンサであり、入球時にその入球を示す始動入賞情報を生成する。一般入賞口72は、遊技球の入球を検出するための一般入賞検出装置73を備える。一般入賞検出装置73は、一般入賞口72への遊技球の入球を検出するセンサであり、入球時にその入球を示す一般入賞情報を生成する。大入賞口66は、遊技球の入球を検出するための入賞検出装置78と、大入賞口66を拡開させるための大入賞口ソレノイド80を備える。入賞検出装置78は、大入賞口66への遊技球の入球を検出するセンサであり、入球時にその入球を示す大入賞口入賞情報を生成する。
【0031】
大入賞口66は、特別図柄192が所定の態様にて停止したときに「大当たり」として開放状態となる横長方形状の入賞口である。大入賞口66は、遊技領域52の略中央に設けられた演出表示装置60の右方に並設されている。大入賞口66の入賞検出装置78は、遊技球の通過を検出するセンサを備えて構成される。また、大入賞口66のやや上方には、遊技領域52の前面に進退可能な一対の可動役物140が埋設されている。さらに、大入賞口66の直下には、透明な樹脂材からなる表示窓142が設けられており、その表示窓142の背部、つまり遊技盤50の内部には、クルーン144が配設されている。クルーン144は、大入賞口66に入球した遊技球を特定領域または非特定領域に振り分ける振り分け機構として機能する。本実施例において、大入賞口66に入球した遊技球は、一旦その開口部直下の中央領域に集められ、図示しない遊技通路を通ってクルーン144の中央に落下される。入賞検出装置78のセンサは、この遊技通路に配置されて遊技球の通過を検出することで大入賞口66への入球を検出する。表示窓142の背部には、また、クルーン144が形成する遊技球の通路を照らすための照明ランプ146が設けられている。表示窓142には、比較的透明度が低い黒色の合成樹脂フィルムが貼着されている。このため、通常の遊技状態においてはクルーン144等の内部構造物の視認性は低いが、照明ランプ146が点灯されると、これらが外部からはっきりと視認できるようになっている。」

ウ 「【0036】
遊技者が発射ハンドル17を手で回動させると、その回動角度に応じた強度で上球皿15に貯留された遊技球が1球ずつ内レール56と外レール54に案内されて遊技領域52へ発射される。遊技者が発射ハンドル17の回動位置を手で固定させると一定の時間間隔で遊技球の発射が繰り返される。遊技領域52の上部へ発射された遊技球は、複数の遊技釘や風車に当たりながらその当たり方に応じた方向へ落下する。遊技球が一般入賞口72や始動口62、大入賞口66の各入賞口へ落入すると、その入賞口の種類に応じた賞球が上球皿15または下球皿16に払い出される。一般入賞口72等の各入賞口に落入した遊技球はセーフ球として処理され、アウト口58に落入した遊技球はアウト球として処理される。なお、各入賞口は遊技球が通過するゲートタイプのものを含み、本願において「落入」「入球」「入賞」というときは「通過」を含むものとする。
【0037】
遊技球が始動口62に落入すると、特別図柄表示装置61および演出表示装置60において特別図柄192および装飾図柄190が変動表示される。特別図柄192および装飾図柄190の変動表示は、表示に先だって決定された表示時間の経過後に停止される。停止時の特別図柄192および装飾図柄190が大当たりを示す図柄である場合、通常遊技よりも遊技者に有利な遊技状態である特別遊技に移行し、大入賞口66の開閉動作が開始される。このときスロットマシンのゲームを模した装飾図柄190は、3つの図柄を一致させるような表示態様をとる。特別遊技において、大入賞口66は、約30秒間開放された後、または9球以上の遊技球が落入した後で一旦閉鎖される。このような大入賞口66の開閉が所定回数、例えば15回繰り返される。
・・・
【0039】
図2は、ぱちんこ遊技機の背面側における基本的な構造を示す。
電源スイッチ40は、ぱちんこ遊技機10の電源をオンオフするスイッチである。メイン基板102は、ぱちんこ遊技機10の全体動作を制御し、特に始動口62へ入賞したときの抽選等、遊技動作全般を処理する。サブ基板104は、液晶ユニット42を備え、演出表示装置60における表示内容や複数の可動役物140の動作、遊技効果ランプ90の点灯を制御し、特にメイン基板102による抽選結果に応じて表示内容を変動させ、その演出の進行に沿って可動役物140や遊技効果ランプ90の点灯を作動させる。メイン基板102およびサブ基板104は、遊技制御装置100を構成する。セット基盤39は、賞球タンク44や賞球の流路、賞球を払い出す払出ユニット43等を含む。払出ユニット43は、各入賞口への入賞に応じて賞球タンク44から供給される遊技球を上球皿15へ払い出す。払出制御基板45は、払出ユニット43による払出動作を制御する。発射装置46は、上球皿15の貯留球を遊技領域52へ1球ずつ発射する。発射制御基板47は、発射装置46の発射動作を制御する。電源ユニット48は、ぱちんこ遊技機10の各部へ電力を供給する。
・・・
【0041】
本実施例におけるメイン基板102は、入球判定手段110、当否抽選手段112、図柄決定手段114、保留制御手段116、メイン表示制御手段118、特別遊技制御手段120、特定遊技実行手段122、開閉制御手段124、可動物制御手段126を備える。本実施例におけるサブ基板104は、パターン記憶手段130、演出画像記憶手段131、演出決定手段132、演出表示制御手段134を備える。本実施例における払出制御基板45は、賞球払出制御手段138を備える。なお、メイン基板102に含まれる各機能ブロックは、いずれかがメイン基板102ではなくサブ基板104に搭載されるかたちで構成されてもよい。同様に、サブ基板104に含まれる各機能ブロックは、いずれかがサブ基板104ではなくメイン基板102に搭載されるかたちで構成されてもよい。」

エ 「【0062】
同図(a)に示すように、特別遊技の実行前においては大入賞口66が閉じられており、可動役物140も遊技領域52の表面より奥に待機した状態となっている。照明ランプ146が消灯しているため、表示窓142よりも奥に配設されたクルーン144は遊技者から確認し難い状態、言い換えれば目立たない状態となっている。遊技領域52の右方に打ち出された遊技球150は、図示のように可動役物140、大入賞口66、表示窓142の前面を通過して落下していくことになる。」

オ 「【0073】
図10は、図9におけるS75の賞球制御開始処理を詳細に示すフローチャートである。 演出表示制御手段134は、照明ランプ146を点灯してクルーン144を含む遊技球の振り分け部をライトアップする(S110)。そして、大入賞口66に落入した遊技球が特定領域に入球した場合(S112のY)、可動物制御手段126は、可動役物140を作動させることなく待機状態に保持する(S114)。
【0074】
一方、特定領域ではなく非特定領域に入球した場合(S112のN、S116のY)、可動物制御手段126は、可動役物140を作動させて大入賞口66への入球を阻止する(S118)。また、演出表示制御手段134は、照明ランプ146を消灯して振り分け部を目立たなくするとともに(S120)、図5(b)に示した選択画面を表示させる(S122)。このとき、操作ボタン82の操作による遊技者からの選択要求があると、図5(c)に示した特典画像を表示させる。S116において非特定領域への入球がないまま所定時間(本実施例では10秒)が経過した場合も(S116のN、S124のY)、S118からS122の処理を実行する。すなわち、遊技者が特典画像を見るために遊技球の発射を意図的に中断させるなど、大入賞口66そのものへの入球がなかった場合には、遊技者の意思を優先して特典画像を表示させる。S124において所定時間が経過していない場合には(S124のN)、S118からS122の処理をスキップする。」

カ 「【0078】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例はあくまで例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0079】
上記実施例では、大入賞口66に入球した遊技球を内部のクルーン144により特定領域または非特定領域に機械的に振り分け、非特定領域に入球した場合には大入賞口66の外部に設けた可動役物140を作動させて、大入賞口66への入球を阻止するようにした。変形例においては、大入賞口66の内部に第2の可動物を設け、入球した遊技球が特定領域または非特定領域のいずれに最初に入球するかにより、その後の振り分けを制御するようにしてもよい。
【0080】
図13は、変形例にかかる可動物の構成および各単位遊技中に実行されうるその可動物の制御例を表す図である。(a)は特別遊技実行前の様子を表し、(b)および(c)は特別遊技開始後に大入賞口66に入球した遊技球が振り分けられる様子を表している。また、(d)は単位遊技において特定領域に入球したときに展開される様子を表し、(e)は単位遊技において非特定領域に入球したときに展開される様子を表している。同図(c)?(e)は、(a)のA-A矢視断面図である。なお、同図において上記実施例と実質的に同じ構成部分については同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化することにする。
【0081】
同図に示すように、大入賞口66の内部には、左右に延びて入球した遊技球を振り分ける振り分け通路250が設けられている。振り分け通路250の中央部はやや隆起しており、入球した遊技球が左右のいずれかに導かれるようにされている。振り分け通路250の左端部および右端部には入球孔251、252が設けられており、入球孔251が特定領域につながり、入球孔252が非特定領域につながっている。これら入球孔251、252の下方にも、それぞれ特定領域、非特定領域の遊技球の通過を検出する検出装置(センサ)が設けられているが、ここでは図示を省略している。
【0082】
振り分け通路250の背部において入球孔251、252に対応する位置には、可動役物241、242が前方に進退可能に埋設されている。可動役物241、242は、図示のように振り分け通路250の中央に向けて低くなる配置構成を有し、前方に進出したときには振り分け通路250に滑らかに接続される傾斜面を形成する。可動役物241、242は、それぞれ駆動ソレノイド243、244によって進退駆動される。なお、本変形例においては、大入賞口66の外部に入球を阻止するための可動物は設けられていない。
【0083】
同図(a)に示すように、特別遊技の実行前においては大入賞口66が閉じられており、可動役物241、242も振り分け通路250の背部に待機した状態となっている。照明ランプ146が消灯しているため、表示窓142よりも奥に配設された振り分け通路250は目立たない状態となっている。遊技領域52の右方に打ち出された遊技球150は、図示のように大入賞口66、表示窓142の前面を通過して落下していくことになる。
【0084】
そして、特別遊技へ移行すると、同図(b)および(c)に示すように大入賞口66が開放されるとともに、照明ランプ146が点灯されて振り分け通路250が視認できるようになる。大入賞口66に入球した遊技球は振り分け通路250の上面を転動して入球孔251または252に入球する。入球孔251、252の入球確率は等しくなるように設計されており、可動役物241、242が作動していない状態においては、特定領域および非特定領域にいずれも1/2の確率で入球するようになる。
【0085】
一方、大入賞口66に入球した遊技球が最初に特定領域に入球すると、可動物制御手段126よって同図(d)に示すように可動役物242が作動され、入球孔252が閉じられる。このとき、遊技球が入球孔252側に転動したとしても入球することはなく、可動役物242の傾斜面に乗り上げた後に跳ね返されるか、そのまま逆向きに転動するようになる。その結果、遊技球は振り分け通路250の中央に設けられた隆起部を乗り越えて左端に到達し、入球孔251に入球する。すなわち、最初に特定領域に入球すると、その単位遊技においては常に特定領域に入球するようになる。同様に、大入賞口66に入球した遊技球が最初に非特定領域に入球すると、同図(e)に示すように可動役物241が作動されて入球孔251が閉じられる。その結果、大入賞口66に入球した遊技球は、その単位遊技中は常に非特定領域に入球するようになる。」

・認定事項
キ 変形例に関して、【図13】(a)、(b)に大入賞口66の扉が開閉する状態が図示されている。
そして、「大入賞口66」の配置について、別実施例についてではあるが、【0030】に「大入賞口66は、遊技領域52の略中央に設けられた演出表示装置60の右方に並設されている。」と記載されている。
したがって、刊行物1には、遊技領域52の略中央に設けられた演出表示装置60の右方に並設されている大入賞口66を備え、大入賞口66は、開閉する扉を有することが記載されているものと認められる(認定キ-1)。

また、変形例に関して、【図13】(a)、(b)に表示窓142が大入賞口66の扉の下方に位置することが図示され、【0081】に「大入賞口66の内部には、・・・振り分け通路250が設けられている。」と記載され、【0083】に「・・・表示窓142よりも奥に配設された振り分け通路250・・・」と記載されている。
したがって、刊行物1には、大入賞口66の内部に、大入賞口66の扉の下方に位置する表示窓142よりも奥に振り分け通路250が配設されていることが記載されているものと認められる(認定キ-2)。

ク 【0078】?【0087】、及び、【図13】に示された変形例に係る可動物は、表示窓142と照明ランプ146を備えるものである。
また、【0028】?【0077】、及び、【図4】に示された実施例1に係る可動物も、表示窓142と照明ランプ146を備えるものである。
そして、【0080】に「上記実施例と実質的に同じ構成部分については同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化することにする。」と記載されていることからみて、実施例1の表示窓142と照明ランプ146に関する【0031】の「表示窓142の背部には、・・・遊技球の通路を照らすための照明ランプ146が設けられている。」との記載は、変形例の表示窓142と照明ランプ146にもそのまま当てはまるものといえる。
したがって、刊行物1の変形例1の表示窓142の背部には、遊技球の通路を照らすための照明ランプ146が設けられているといえる。
また、刊行物1の【0083】に「表示窓142よりも奥に配設された振り分け通路250」と記載され、【0082】に「振り分け通路250の背部において入球孔251、252に対応する位置には、可動役物241、242が前方に進退可能に埋設されている。」と記載されている。
これらのことに基づくと、【図13】の(a)に、弾球遊技機が、表示窓142の背面奥に設けられた可動役物241、242を側面から照らすように配置された照明ランプ146を備えることが図示されている。

ケ 【0083】に「照明ランプ146が消灯している」と記載され、【0084】に「照明ランプ146が点灯され」ると記載されているが、照明ランプ146の点灯、消灯制御は、別実施例についてであるが、【0073】に「演出表示制御手段134は、照明ランプ146を点灯し・・・」と記載され、【0074】に「演出表示制御手段134は、照明ランプ146を消灯し・・・」ていることから、サブ制御基板により行われるものである。
そして、【0041】に「サブ基板104は、演出表示制御手段134を備える。」と記載されている。
また、【0084】に「特別遊技へ移行すると、・・・大入賞口66が開放されるとともに、照明ランプ146が点灯されて振り分け通路250が視認できるようになる。」と記載されている。
したがって、刊行物1には、特別遊技へ移行すると、大入賞口66が開放されるとともに、サブ基板104の演出表示制御手段134は、照明ランプ146を点灯させて振り分け通路250を視認できるようにすることが記載されている。

上記ア?カの記載事項、上記キ?ケの認定事項、及び、図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されていると認められる。
「a 上部へ発射された遊技球が落下する遊技領域52を有する遊技盤50(【0030】、【0036】)と、
b 遊技領域52の略中央に設けられた演出表示装置60の右方に並設されている大入賞口66とを備え、
大入賞口66は、開閉する扉を有し(認定キ-1)、
大入賞口66の内部に、大入賞口66の扉の下方に位置する表示窓142よりも奥に振り分け通路250が配設され(認定キ-2)、
振り分け通路250の左端部に設けられた入球孔251は、特定領域がつながり、振り分け通路250の右端部に設けられた入球孔252は、非特定領域がつながり(【0081】)、
振り分け通路250の背部において入球孔251、252に対応する位置には、入球を阻止するための可動役物241、242が前方に進退可能に埋設され(【0082】)、
c 表示窓142の背面奥に設けられた可動役物241、242を側面から照らすように配置された照明ランプ146(認定事項ク)を備え、
d 表示窓142に貼着された、照明ランプ146が消灯しているときに、表示窓142よりも奥に配設された振り分け通路250を目立たない状態とする比較的透明度が低い黒色の合成樹脂フィルム(【0031】、【0083】)と、
e メイン基板102(【0039】)と、
f サブ基板104(【0039】)とを備え、
g メイン基板102の備える可動物制御手段126は、特別遊技へ移行すると大入賞口66を開放し、大入賞口66に入球した遊技球が最初に非特定領域に入球すると、可動役物241を作動させて、入球孔251を閉じ(【0041】、【0084】、【0085】)、
h 特別遊技へ移行すると、大入賞口66が開放されるとともに、サブ基板104の演出表示制御手段134は、照明ランプ146を点灯させて振り分け通路250を視認できるようにした(認定事項ケ)
弾球遊技機(【0001】)。」

(3)対比
本件補正発明と刊行物発明とを対比する(対比にあたっては、本件補正発明の構成A?Hと刊行物発明の構成a?hについて、それぞれ(a)?(h)の見出しを付して行った。)。
(a)刊行物発明における「上部へ発射された遊技球が落下する遊技領域52」、「遊技盤50」は、それぞれ、本件補正発明における「遊技球が転動可能な遊技領域」、「遊技盤」に相当する。
したがって、刊行物発明における構成aは、本件補正発明における構成Aに相当する。

(b)刊行物発明における「遊技領域52の略中央に設けられた演出表示装置60の右方に並設されている大入賞口66」は、本件補正発明における「遊技領域内に位置」する「特別入賞口」に相当する。
刊行物発明における「大入賞口66」の「開閉する扉」は、扉の「開」状態が遊技球が入球しやすい状態であり、扉の「閉」状態が遊技球が入球し難い状態であることは、当業者にとって自明であるから、本件補正発明における「特別入賞口に遊技球が入賞し易い開状態と開状態と比較して特別入賞口に遊技球が入賞し難い閉状態とに変化させる開閉部材」に相当する。
刊行物発明における「特定領域」は、大入賞口66を通過した遊技球が通過する領域であるから、本件補正発明における「特別入賞口を通過した遊技球が転動可能な特定領域」に相当する。
刊行物発明における「可動役物241」は、入球孔251に対応する位置において、振り分け通路250の背部から前方に進むように変位することにより、特定領域への遊技球の入球を阻止するものであり、逆に、入球孔251から退くように変位することにより、特定領域への遊技球の入球を許容するものであるから、本件補正発明における「特定領域に遊技球が入球し易い第1入球状態と第1入球状態と比較して特定領域に遊技球が入球し難い第2入球状態とに変化させる変化部」に相当する。
そして、刊行物発明における「大入賞口66」は、「特定領域」、「可動役物241」を内部に有するものであるから、本件補正発明における「特別入賞装置」にも相当する。
したがって、刊行物発明における構成bは、本件補正発明における構成Bに相当する。

(c)刊行物発明における「照明ランプ146」は、表示窓142の背面奥で、かつ、振り分け通路250の背部に埋設された、「可動役物241、242」の「側面から照らすように配置され」るものであり、構成bより、「可動役物241、242」の埋設位置が「入球孔251、252に対応する位置」であることから、結局、「照明ランプ146」は、「特定領域」と「可動役物241、242」とを「側面から照らす」ものであるといえる。
したがって、刊行物発明における「照明ランプ146」は、本件補正発明における「特定領域と変化部材との少なくとも一方の周辺に配置される光源」に相当する。

(d)構成bより、刊行物発明における「入球孔251」は、「特定領域」につながるものである。
そうすると、刊行物発明において、「大入賞口66」、「振り分け通路250」、「入球孔251」を経て順に「特定領域」に至る通路は、本件補正発明における「特別入賞口を通過してから変化部材を経由して特定領域に至るまでの通路」に相当する。
したがって、刊行物発明における構成dの「振り分け通路250」は、「大入賞口66」、「振り分け通路250」、「入球孔251」を経て順に「特定領域」に至る通路の一部を構成するものであるから、本件補正発明における「特別入賞口を通過してから変化部材を経由して特定領域に至るまでの通路である特別通路」の「一部」に相当する。

ここで、本件補正発明における「視認困難部材」について検討する。本願明細書の【0360】には、「視認困難部材」について「実施の形態では、遊技盤2の前面に設けられた一般装飾16やガイド162によって、遊技球が第1大入賞口30を通過した後の遊技球のルートの一部が視認困難になっているが、視認困難にさせる部材としてはこれらに限るものではない。例えば、遊技くぎ、ねじ、補強部材、も視認困難部材に該当する。また、視認困難部材は、Vランプ68が点灯していない間、遊技球のルートを覆い隠し、点灯するとそのルートを視認可能にするハーフミラーであってもよい。」と記載されている。この記載によれば、本件補正発明における「視認困難部材」には、「点灯するとそのルートを視認可能にするハーフミラー」を含むものである。
そうすると、刊行物発明における「目立たない状態とする比較的透明度が低い黒色の合成樹脂フィルム」が「貼着された」「表示窓142」は、ハーフミラー構成hより「照明ランプ146を点灯させて振り分け通路250を視認できるよう」にする部材であって、いわゆるハーフミラーの機能を有することから、本件補正発明における「視認困難部材」に相当する。
また、刊行物発明において、「振り分け通路250」が「表示窓142よりも奥に配設され」ていることより、「表示窓142」は、「振り分け通路250」の前側に位置するものである。
さらに、刊行物発明における「照明ランプ146が消灯しているとき」と、本件補正発明における「光源が点灯しているか否かにかかわらず」とは、「光源が消灯しているとき」である点で共通する。
ゆえに、刊行物発明における構成dと本件補正発明における構成Dとは、「遊技球が前記特別入賞口を通過してから前記変化部材を経由して前記特定領域に至るまでの通路である特別通路の前側の一部を、前記光源が消灯しているときに、遊技者に視認困難にさせる視認困難部材」である点で共通する。

(e)刊行物発明における構成eの「メイン基板102」は、本件補正発明における構成Eの「遊技制御手段」に相当する。

(f)刊行物発明における構成fの「サブ基板104」は、本件補正発明における「演出制御手段」に相当する。

(g)刊行物発明における「大入賞口66に入球した遊技球が最初に特定領域に入球する」ことは、「特別遊技へ移行」し、大入賞口66が開放されることに伴って発生する事象であるから、本件補正発明における「開閉部材を一時的に開状態とする制御に伴」うことに相当する。
そして、刊行物発明における「可動役物242を作動させて、入球孔252を閉じ」ることは、本件補正発明における「変化部材の入球状態を変化させる変化処理を実行」することに相当する。
したがって、刊行物発明における構成gは、本件補正発明における構成Gに相当する。

(h)まず、本件補正発明における「遊技者の見た目で消灯して見えないように、光源を点灯させる」ことは、光源が点灯した状態では、遊技者の見た目で光源が消灯していないように見えることを表現したものであって、要するに、光源が点灯した状態であることを意味するものである。
そして、刊行物発明における「特別遊技へ移行すると、大入賞口66が開放される」ことと、本件補正発明における「少なくとも遊技制御手段によって開閉部材を開状態とさせている期間中」とは、「遊技制御手段によって開閉部材を開状態とさせているとき」である点で共通する。
そして、刊行物発明における「照明ランプ146が点灯され」ることは、本件補正発明における「遊技者の見た目で消灯して見えないように、光源を点灯させる制御である発光制御を行う発光処理を実行する」ことに相当する。
したがって、刊行物発明における構成hと本件補正発明における構成Hとは、「演出制御手段は、前記遊技制御手段によって前記開閉部材を開状態とさせているときに、遊技者の見た目で消灯して見えないように、光源を点灯させる制御である発光制御を行う発光処理を実行する」ことで共通する。

したがって、両者の一致点および相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「A 遊技球が転動可能な遊技領域を有する遊技盤と、
B 前記遊技領域内に位置し、特別入賞口と、前記特別入賞口に遊技球が入賞し易い開状態と前記開状態と比較して前記特別入賞口に遊技球が入賞し難い閉状態とに変化させる開閉部材と、前記特別入賞口を通過した遊技球が転動可能な特定領域と、前記特定領域に遊技球が入球し易い第1入球状態と前記第1入球状態と比較して前記特定領域に遊技球が入球し難い第2入球状態とに変化させる変化部材と、を有する特別入賞装置と、
C 前記特定領域と前記変化部材との少なくとも一方の周辺に配置される光源と、
D’遊技球が前記特別入賞口を通過してから前記変化部材を経由して前記特定領域に至るまでの通路である特別通路の前側の一部を、前記光源が消灯しているときに、遊技者に視認困難にさせる視認困難部材と、
E 遊技制御手段と、
F 演出制御手段と、
を備え、
G 前記遊技制御手段は、
前記開閉部材を一時的に開状態とする制御に伴って、前記変化部材の入球状態を変化させる変化処理を実行し、
H’前記演出制御手段は、
前記遊技制御手段によって前記開閉部材を開状態とさせているときに、遊技者の見た目で消灯して見えないように、前記光源を点灯させる制御である発光制御を行う発光処理を実行する、
遊技機。」

[相違点1](構成Dについて)
特別通路の前側の一部を遊技者に視認困難にさせる視認困難部材に関して、
本件補正発明は、光源が点灯しているか否かにかかわらず、視認困難にさせるのに対して、
刊行物発明は、照明ランプ146(「光源」)が消灯しているときに視認困難にさせるが、光源が点灯しているときに視認困難にするか否か明らかでない点で一応相違する。

[相違点2](構成Hについて)
演出制御手段によって、遊技者の見た目で消灯して見えないように、光源を点灯させる制御である発光制御を行う発光処理が実行されるのが、
本件補正発明は、少なくとも遊技制御手段によって開閉部材を開状態とさせている期間中であるのに対して、
刊行物発明は、遊技制御手段によって開閉部材を開状態とさせているときであって、本件補正発明の構成を備えるか否か不明である点。

(4)当審の判断
ア 相違点1について
上記相違点1について検討する。
(ア)相違点1が実質的な相違点であるかについて
刊行物発明において、表示窓142は、振り分け通路250を視認可能にする機能を担っているものである。
そうすると、表示窓142の近傍に位置する大入賞口66の「開閉する扉」に、大入賞口66の内部にある遊技球の通路を遊技者に視認させる機能を担う必要のないことから、「開閉する扉」は不透明な部材から構成されているとみることができる。
そして、大入賞口66の「開閉する扉」が開放された場合、開放された扉により、照明ランプ146を点灯させても、遊技者が、大入賞口66の内部にある遊技球の通路を視認することを遮ることとなる。
この場合、大入賞口66の「開閉する扉」によって、照明ランプ146が点灯しているか否かにかかわらず、大入賞口66の内部にある遊技球の通路は視認不能となることから、刊行物発明における「開閉する扉」は、本件補正発明における構成Dの「特別通路の前側の一部を、前記光源が点灯しているか否かにかかわらず、遊技者に視認困難にさせる視認困難部材」に相当する。
したがって、刊行物発明における構成dは、本件補正発明における構成Dに相当する。
ゆえに、相違点1は実質的な相違点ではない。

(イ)相違点1について、実質的な相違点でないことは、上記(ア)において検討したとおりである。
ここでは、仮にそうでないとして、つまり、相違点1が相違点であるとして検討を進めることにする。
まず、刊行物発明における大入賞口66の「開閉する扉」は、上記(ア)において検討したように、遊技者が大入賞口66の内部にある遊技球の通路は視認させる機能を担うものではないので、その材料を不透明なものとすることは、当業者が適宜なし得たものである。

次に、相違点1に係る「視認困難部材」に関して、本件補正発明における「視認困難部材」には、上記(3)対比(d)によると、「遊技くぎ」が含まれるものである。
そして、遊技機の技術分野において、右側遊技領域に配置された大入賞装置の下方の遊技領域に遊技釘を設けることは、本願出願前に周知の技術事項であり(例えば、特開2015-91410号公報の【図1】、【図2】に、の右側遊技領域に配置された第1大入賞口15の下方に釘が設けられていることや、
特開2011-194102号公報の【図1】、【図2】に、右側遊技領域に配置された大入賞口6の下方に釘が設けられていることや、
特開2011-30834号公報の【図1】に、右側遊技領域に配置された大入賞口装置14の下方に釘が設けられていることや、
特開2010-51401号公報の【図16】に、右側遊技領域に配置された第2大入賞口87の下方に釘が設けられていることを参照。以下「周知の技術事項1」という。)。
一方、刊行物発明においても、大入賞口66は、「遊技領域52の略中央に設けられた演出表示装置60の右方に並設されている」のであって、大入賞口66の下方が、遊技球が転動することが可能な領域であることは明らかである。
したがって、刊行物発明の「大入賞口66の扉の下方に位置する表示窓142」に上記周知の技術事項1を適用して、「表示窓142」に遊技釘を設けることは、当業者が必要に応じてなし得たものである。

さらに、遊技機の技術分野において、透明な樹脂からなる遊技盤に障害釘を設けることは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、特開2013-31686号公報の【0020】、【0021】、【図5】、【図9】には、遊技盤本体をなす、透過性部材からなる板状部材600に障害釘620を設けたことが記載され、特開2004-201964号公報の【0012】、【0021】、【図2】には、アクリル樹脂製の透明基板からなる遊技盤14に障害釘を植設したことが記載されている。以下「周知の技術事項2」という。)。
一方、刊行物発明における「表示窓142」も透明な部材から構成されていることは明らかである。
したがって、刊行物発明における透明な部材からなる「表示窓142」に上記周知の技術事項2を適用して、「表示窓142」に遊技釘を設けることは、当業者が必要に応じてなし得たものである。

よって、刊行物発明に基づいて、あるいは、刊行物発明に上記周知の技術事項1、若しくは2を適用して上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。

イ 相違点2について
上記相違点2について検討する。
遊技機の技術分野において、入賞装置内に光源を設け、入賞装置の前側に、光源の消灯時に入賞装置内の遊技球の動きを遊技者に視認困難にする部材を設け、少なくとも、開閉部材を開状態とさせている期間中は、光源を点灯させ、入賞装置内の遊技球の動きを遊技者に視認可能とすることは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、特開2003-159406号公報の【0001】、【0007】、【0009】、【0013】?【0015】、【図5】、【図6】には、可変入賞装置1の振分体22の収納室25の前面に透視可能閉鎖領域31を形成し、透視可能閉鎖領域31にマジックミラーと呼ばれるような半透視可能閉鎖領域32を形成し、半透視可能閉鎖領域32に対応する光源33を設けたパチンコ機において、少なくとも、開閉体13の開放期間中は光源を点灯制御して、光源33が点灯した光が半透視可能閉鎖領域32を裏側から照明している場合は半透視可能閉鎖領域32が透視可能となって、可変入賞装置1の前側から連絡口26に対する特定入賞口20及び普通入賞口21の位置関係を遊技者に見えるように形成したことが記載され、
特開2004-290231号公報の【0001】、【0028】、【0041】、【0051】、【0055】、【0057】、【図10】には、役物装置12の室内前方側にハーフミラー27を備えた遊技機において、始動口38(左始動口)または始動口30(右始動口)に入賞したパチンコ球を検出した始動口センサ36が時刻t10にパルス状の検出信号を出力し、この検出信号を受けて、照明ランプ49を時刻t20まで点灯し、役物装置12の室内を明るくしたうえで、大入賞口18,50を時刻t12から時刻t14まで開放し、役物装置12内におけるパチンコ球の動きを遊技者に見え易い状態としたことが記載され、
特開2004-141551号公報の【0001】、【0013】、【0015】、【0019】、【0027】、【図2】、【図3】には、開閉部材9が設けられた普通電動役物5の内部に設けられている回転盤7を外部から見ることができるようにハーフミラー20を設けたパチンコ機において、遊技球が入賞口11に入賞したタイミングから、普通電動役物5内に流入した遊技球がいずれかの入賞口22a?22cに入賞するまでの所定時間、ランプ15を点灯させ、内部に設けられている回転盤7を、ハーフミラー20を透して外部から遊技者が見えるようにしたことが記載されている。以下「周知の技術事項3」という。)。
そして、刊行物発明と上記周知の技術事項3とは、入賞装置内に光源を設けるとともに、入賞装置の前側に、光源の消灯時に入賞装置内の遊技球の動きを遊技者に視認困難にする部材を設け、少なくとも、開閉部材を開状態とさせている期間中は、光源を点灯させた遊技機という共通の構成を有するとともに、入賞口が開放されているときに、入賞装置内の遊技球の動きを遊技者に視認可能にするという共通の作用効果を奏するものである。
したがって、刊行物発明の大入賞口66に上記周知の技術事項3を適用して、少なくとも大入賞口66が開放されている期間中、照明ランプ146を点灯させた状態に維持し、大入賞口内の遊技球の動きを遊技者に視認可能とし、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

ウ 請求人の主張について
請求人は、平成29年11月8日付け上申書において、「引用文献1に記載される黒色のフィルムは、通常時は内部構造物を隠し、所定の条件を満たすことで光源を点灯させて内部構造物を登場させる、といった演出に用いられる部材であって、光源が点灯しているか否かにかかわらず内部構造体を視認困難にし続けるものではありません。・・・本願のような、特定領域39と振分部材71との少なくとも一方の周辺に配置される光源と、通路の一部のみを覆い、さらに光源を点灯したとしても視認困難性は維持する視認困難部材と、の組み合わせであれば、遊技性の低下の抑制等のために通路の一部を視認困難にした場合であっても、遊技者が特定領域39の通過を確認したい場合を想定して、その確認が容易になるといった効果が生じます。つまり、引用文献1に記載される黒色のフィルムは、補正後の請求項1に記載される視認困難部材に該当しないものであり、引用文献1には、補正後の請求項1に記載される視認困難部材が開示されていません。」(第3頁第15?43行)と主張する。

そこで、上記請求人の主張について検討する。
まず、本件補正発明における「視認困難部材」には、上記(3)対比(d)によると、「一般装飾16」、「ガイド162」、「遊技くぎ」、「ねじ」、「補強部材」、「ハーフミラー」といった種々のものが含まれるものである。
そして、上記ア(ア)において検討したように、刊行物発明における「大入賞口66」の「開閉する扉」は、本件補正発明における「視認困難部材」に相当するものである。
仮にそうでないとしても、上記ア(イ)において検討したように、刊行物発明における「大入賞口66の扉の下方に位置する表示窓142」に遊技釘を設けることは、上記周知技術1、若しくは2に基づいて当業者が容易になし得たものである。
したがって、請求人の上記主張は、採用できない。

ところで、請求人は、平成29年11月8日付け上申書において本件補正発明の構成Hについて、「少なくとも前記遊技制御手段によって前記開閉部材を開状態とさせている期間中、発光制御として、前記光源を第1の期間で点灯させた後、前記第1の期間よりも短く、遊技者が前記光源が消灯していないように見えて且つ点滅に見える長さとなる第2の期間で前記光源を消灯させる動作を繰り返す発光処理を実行する」と補正する補正案を提示しているので、この点について検討する。
遊技機の技術分野において、各種ランプを点滅制御することは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、特開平7-185079号公報の【図20】?【図22】や、特開平5-92068号公報の【図11】?【図12】や、特開平8-98925号公報の【図14】?【図16】や、特開2006-314829号公報の【図14】?【図16】を参照。以下「周知の技術事項4」という。)。
そして、刊行物発明に上記周知の技術事項4を適用して、特別遊技へ移行した際に、照明ランプ146を点灯させることに換えて点滅させることは、当業者が容易になし得たものであり、その際に、照明ランプ14を点灯させる期間、及び、消灯させる期間を、演出効果や、省エネ効果等を勘案して設定することは、当業者が適宜決定し得たものである。

よって、請求人の上記主張を採用することはできない。

エ 小括
本件補正発明により奏される効果は、刊行物発明、及び、上記周知の技術事項1?3から当業者が予測できる効果の範囲内のものであり、新たな効果を奏するものとはいえない。
そうすると、上記ア?ウにおいて検討したとおり、本件補正発明は、少なくとも、刊行物発明、及び、上記周知の技術事項1?3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

(5)まとめ
上記(1)?(4)より、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たさないものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1に係る発明は、平成28年12月23日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。記号A?Hは、分説するため当審で付した。)は、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
A 遊技球が転動可能な遊技領域を有する遊技盤と、
B 前記遊技領域内に位置し、特別入賞口と、前記特別入賞口に遊技球が入賞し易い開状態と前記開状態と比較して前記特別入賞口に遊技球が入賞し難い閉状態とに変化させる開閉部材と、前記特別入賞口を通過した遊技球が転動可能な特定領域と、前記特定領域に遊技球が入球し易い第1入球状態と前記第1入球状態と比較して前記特定領域に遊技球が入球し難い第2入球状態とに変化させる変化部材と、を有する特別入賞装置と、
D”遊技球が前記特別入賞口を通過してから前記変化部材を経由して前記特定領域に至るまでの通路である特別通路の前側の少なくとも一部を、遊技者に視認困難にさせる視認困難部材と、
C 前記特定領域と前記変化部材との少なくとも一方の周辺に配置される光源と、
E 遊技制御手段と、
F 演出制御手段と、
を備え、
G 前記遊技制御手段は、
前記開閉部材を一時的に開状態とする制御に伴って、前記変化部材の入球状態を変化させる変化処理を実行し、
H”前記演出制御手段は、
少なくとも前記遊技制御手段によって前記開閉部材を開状態とさせている間、前記光源を点灯させる制御である発光制御を行う発光処理を実行する、
ことを特徴とする遊技機。」

2 刊行物に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1の記載事項、及び、刊行物発明の認定については、上記「第2 2(2)刊行物に記載された発明」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、上記「第2[理由]」で検討した本件補正発明から、「視認困難部材」に関して、「遊技球が前記特別入賞口を通過してから前記変化部材を経由して前記特定領域に至るまでの通路である特別通路の前側の一部を、前記光源が点灯しているか否かにかかわらず、遊技者に視認困難にさせる」とあったものを、「遊技球が前記特別入賞口を通過してから前記変化部材を経由して前記特定領域に至るまでの通路である特別通路の前側の少なくとも一部を、遊技者に視認困難にさせる」とその限定を省くとともに、「発光処理」に関して、「少なくとも前記遊技制御手段によって前記開閉部材を開状態とさせている期間中、遊技者の見た目で消灯して見えないように、前記光源を点灯させる制御である発光制御を行う」とあったものを、「少なくとも前記遊技制御手段によって前記開閉部材を開状態とさせている間、前記光源を点灯させる制御である発光制御を行う」とその限定を省くものである。
そして、本願発明の構成D”は、本件補正発明の構成Dから「前記光源が点灯しているか否かにかかわらず、」との構成を省くものであるから、前記3(3)(d)の内容からみて、刊行物発明における構成dは、本願発明の構成D”に相当する。
そうすると、本願発明と刊行物発明とは、本件補正発明と同様に、次の点において、相違し、その余の点において一致する。

[相違点イ](構成H”について)
演出制御手段によって、光源を点灯させる制御である発光制御を行う発光処理が実行されるのが、
本願発明は、少なくとも遊技制御手段によって開閉部材を開状態とさせている間であるのに対して、
刊行物発明は、遊技制御手段によって開閉部材を開状態とさせているときであって、本願発明の構成を備えるか否か不明である点。

相違点イは、前記相違点2に対応するものである。そうすると、前記第2 3(4)イにおいて検討した内容からみて、本願発明は、刊行物発明、及び、上記周知の技術事項3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-03-20 
結審通知日 2018-03-27 
審決日 2018-04-10 
出願番号 特願2015-197364(P2015-197364)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福田 知喜  
特許庁審判長 石井 哲
特許庁審判官 青木 洋平
長崎 洋一
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人コスモス特許事務所  

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