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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1340745
審判番号 不服2016-19584  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-27 
確定日 2018-05-22 
事件の表示 特願2015-10643「オンチップフレームバッファを使用したオーバドライブによるLCD応答時間の改良」拒絶査定不服審判事件〔平成27年7月2日出願公開、特開2015-121799〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この審判事件に関する特許出願(以下、「本願」という。)は、2008年(平成20年)10月2日及び2009年(平成21年)1月22日にアメリカ合衆国でされた特許出願に基づくパリ条約の優先権を主張して平成21年9月24日にされた国際特許出願(特願2011-530118)の一部を、平成27年1月22日に新たな特許出願である外国語書面出願としたものである。その後、同年2月4日及び平成28年6月7日に特許請求の範囲についての補正がされ、同年8月31日付けで拒絶査定がされ、同年9月5日に査定の謄本が送達された。
これに対して、同年12月27日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に特許請求の範囲についての補正(以下、「本件補正」という。)がされた。

第2 本件補正の却下の決定
[結論]
本件補正を却下する。

[理由]
本件補正は、以下に述べるとおり、外国語書面の翻訳文(以下、単に「翻訳文」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
したがって、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下するべきものである。

1 本件補正の内容
(1)本件補正は、特許請求の範囲の請求項1の記載を以下のとおりとすることを含む。下線は、補正箇所を示すために当審が付した。

「【請求項1】
ディスプレイをオーバドライブする方法であって、
前記ディスプレイ上に現在表示されているディスプレイの画素を示す現在の画素強度レベルを含む現在のピクチャフレームを受信することと、
前記ディスプレイの前記画素に対応する目標画素強度レベルを含む目標ピクチャフレームを受信することと、
前記目標ピクチャフレームを前記現在のピクチャフレームと比較することであって、該比較することは前記目標画素強度レベルを前記現在の画素強度レベルと比較することを含む、比較することと、
前記目標ピクチャフレームと前記現在のピクチャフレームとの前記比較に基づいて、前記目標ピクチャフレームに対する調整が行われるべきであると決定することと、
前記調整が行われるべきであると決定することに応じて、前記ディスプレイの前記画素に対応する調整画素強度レベルを含む調整ピクチャフレームを生成することであって、前記調整画素強度レベルは前記ディスプレイの前記画素を前記目標画素強度レベルを超えてオーバドライブすることにより達成される、前記目標画素強度レベルにあるかそれに近接する値を有する、生成することと、
前記調整ピクチャフレームに基づいて、規定された期間内に達成可能な達成可能ピクチャフレームを生成することと、
前記達成可能ピクチャフレームを前記現在のピクチャフレームとして格納することと、
を含み、
前記達成可能ピクチャフレームは、
前記ディスプレイの前記画素に対応する第1達成可能画素強度レベルであって前記所与の期間後に前記調整画素強度レベルに等しい第1達成可能画素強度レベルと、
前記ディスプレイの前記画素に対応する第2達成可能画素強度レベルであって前記所与の期間後に前記調整画素強度レベルよりも低いか高い第2達成可能画素強度レベルと、
からなるグループから選択されるひとつを含む方法。」

(2)本件補正後の請求項1の「前記達成可能ピクチャフレームは、前記ディスプレイの前記画素に対応する第1達成可能画素強度レベルであって前記所与の期間後に前記調整画素強度レベルに等しい第1達成可能画素強度レベルと、前記ディスプレイの前記画素に対応する第2達成可能画素強度レベルであって前記所与の期間後に前記調整画素強度レベルよりも低いか高い第2達成可能画素強度レベルと、からなるグループから選択されるひとつを含む」という記載によれば、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)の「達成可能ピクチャフレーム」は、「第1達成可能画素強度レベル」及び「第2達成可能画素強度レベル」のいずれかを含む。そして、「第1達成可能画素強度レベル」は、「所与の期間後に」「調整画素強度レベルに等しい」ものであり、「第2達成可能画素強度レベル」は、「所与の期間後に」「調整画素強度レベルよりも低いか高い」ものである。
そうすると、本件補正発明は、「達成可能ピクチャフレーム」に含まれる達成可能画素強度レベルが所与の期間後に調整画素強度レベルに等しいか、調整画素強度レベルよりも低いか、調整画素強度レベルよりも高いかのいずれかであるという技術的事項を含むものである。

2 翻訳文に記載された事項
(1)翻訳文の記載
翻訳文には、以下の記載がある。下線は、当審が付した。

「【背景技術】
…(中略)…
【0003】
液晶ディスプレイ(LCD)は、現代の電子デバイスのための表示デバイスとして広範に使用されている。一般にLCDは、画像の集合を生成するために照明される、画素の配列を含む。LCDの応答時間は、各画素を形成する液晶が現在の強度レベルから新しい目標強度レベルに遷移するのにかかる時間を測定したものとすることができる。例えば応答時間は、LCD画素が完全にアクティブな状態(黒)から完全に非アクティブな状態(白)に変化するか、あるいは完全にアクティブな状態から完全に非アクティブな状態に変化した後に再び完全にアクティブな状態に戻るのに必要な時間とすることができる。ディスプレイの応答時間が遅すぎると、画素に対して送信された情報に対して画素の動作が遅延する可能性があり、その結果デジタルノイズが表示されるかあるいはLCD上でゴースティングが発生する。そのため、応答時間はLCDに関して重要である。LCDの応答時間は、表示された画像を変更するようにディスプレイが命令される頻度を規定するLCDのリフレッシュ期間に結び付けられる。しかし、ある特定の場合において、LCDの応答時間はそのリフレッシュ期間を上回る。このような場合、LCDは、ユーザにとって望ましくない画面アーチファクトを表示する。従って、LCDの応答時間を加速させる技術が必要である。」

「【課題を解決するための手段】
…(中略)…
【0005】
信号調整回路を有する電子デバイスが提供される。一実施形態において、信号調整回路は、LCDの1つ以上の画素に送出されている信号を調整するために使用される。信号調整回路は、目標ピクチャフレームの特定の画素位置に対する所定の目標画素強度を所定のフレームリフレッシュ期間中にLCD上で実現するのは困難である可能性があることを判定する。これは、LCD上に表示されている現在の画素強度及び/又は目標画素強度に基づいて判定される。困難であると判定された場合、信号調整回路は、所定の画素位置に対して目標画素レベルを調整し、この調整された信号をLCDドライバに送出する。調整された信号は、1つ以上のフレーム期間において目標画素をオーバドライブする。目標画素をオーバドライブした場合、画素の強度は調整された目標レベルには到達しないが、元の所定の目標レベルには到達する。」

「【発明を実施するための形態】
…(中略)…
【0031】
ステップ66において、信号調整回路56は、目標ピクチャフレームにおいて各画素強度レベルを調査し、あらゆる画素強度レベルについて調整が必要かどうかを判定する。例えば、ディスプレイ24が1つのフレーム内で目標ピクチャフレームの現在の画素強度レベルから目標画素強度レベルに正常に遷移できない場合、調整することが必要になる。例えば、ディスプレイ24における画素は25msで黒色から白色に遷移できるが、その画素において一方の階調から他方の階調への遷移が完了するには数百ミリ秒かかる場合がある。従って、ディスプレイ24は60Hzでリフレッシュされるが、例えば一方の階調から他方の階調への遷移は25?30Hzでのみ達成されるため、ディスプレイ24上の画像を汚すことになる。従って、信号調整回路56は各画素をオーバドライブし、それにより、一方の画素強度レベルから他方の画素強度レベルにより迅速に遷移できるようにする。画素をオーバドライブすることは、規定された時間、すなわち1つのフレームの期間内において目標画素強度レベル又はそれに近接する実際の画素強度レベルを実現するために、画素が目標画素強度レベルを越えて駆動される処理である。従って、オーバドライブされた画素は規定された時間でオーバドライブされた画素強度レベルには到達できないであろうが、画素がオーバドライブされて到達した実際の画素強度レベルは元の目標画素強度レベルと等しくなり得る。このように、オーバドライビング技術を介して、信号調整回路56は、受信したピクチャフレームにおいて規定された元の目標画素強度レベルを実現する。従って、信号調整回路56は、1つのフレーム等の所定の時間制約内で実際の画素強度レベルを実現するために、特定の画素をいつ、どれくらいオーバドライブすべきかを判定する。また、画素をいつ、どれくらいオーバドライブすべきかは、調整された画素レベルを提供するルックアップテーブルを使用して決定されてもよいし、あるいは他のあらゆる適切なアルゴリズム又は方法を取り入れることにより決定されてもよい。
【0032】
ステップ68において、信号調整回路56は、調整されたピクチャフレーム及び達成可能なピクチャフレームを生成する。調整されたピクチャフレームは、ディスプレイ24において画素をオーバドライブするためにビデオコントローラ58に送信される調整された画素レベルを含む。しかし、ディスプレイ24の画素をオーバドライブする場合、画素は設定時間内で目標ピクチャフレームを実現できない場合がある。例えば、ある画素位置では、目標画素強度レベルに到達する前に2つ以上のフレームに対してオーバドライブされる。信号調整回路は、調整されたピクチャフレームを適用した後の1つのフレームにおいてディスプレイ24により実際に生成される達成可能な画素強度レベルを把握している。従って、ディスプレイ24により達成可能なピクチャフレームは、信号調整回路56により判定される。そのようなシナリオにおいて、目標ピクチャフレーム、調整されたピクチャ及び達成可能なピクチャは、種々の画素レベルを含む種々のピクチャフレームである。
【0033】
しかし、目標ピクチャフレームと、調整されたピクチャフレームと、達成可能なピクチャフレームとの間で、これらのピクチャフレームのうちのいくつか又は全てが同等となる、ある特定の場合がある。例えば、フレーム間で画像が不変である場合、調整の必要はなく且つ上述のピクチャフレームは全て同等となるであろう。ディスプレイ24が1つのフレーム内で目標ピクチャフレームに正常に遷移できる場合も同様である。更に例として、ディスプレイ24が調整されたピクチャフレームを適用することによってのみ1つのフレーム内で目標ピクチャフレームに正常に遷移できる場合、目標ピクチャフレーム及び達成可能なピクチャフレームは互いに同等であるが、調整されたピクチャフレームとは異なるだろう。
…(中略)…
【0038】
信号調整回路56は調整回路78を更に含む。調整回路78は、目標ピクチャフレームを受信し、バッファ74に格納された現在のピクチャフレームを取得する。調整回路78は、これら2つのピクチャフレームに基づいて、ルックアップテーブル76にアクセスし、あらゆる画素強度レベルに対して調整が必要かどうかを判定し且つ目標画素強度レベルに到達できるようにするオーバドライブレベルを判定する。例えば、ディスプレイ24が現在の画素強度レベルから目標ピクチャフレームの目標画素強度レベルに1つのフレーム内では正常に遷移できない場合、調整することが必要となる。調整回路78は、ルックアップテーブル76からのオーバドライブレベルに基づいて、規定された時間、すなわち1つのフレーム内での目標画素強度レベル又はそれに近接した実際の画素強度レベルへの到達を実現するために、調整された画素強度レベルをビデオコントローラ58に送信する。調整回路78は、ビデオコントローラ58に送信された調整された画素強度レベルに基づいて、実現されるであろう実際の画素強度レベルに対応するピクチャフレームでバッファ74におけるピクチャフレームを更に上書きする。」

(2)翻訳文に記載された事項の検討
翻訳文の前記(1)の記載(特に下線を付した部分)によれば、以下のことが認められる。

ア 液晶ディスプレイ(LCD)の画素の応答時間は、例えば画素が完全にアクティブな状態(黒)から完全に非アクティブな状態(白)に変化するのに必要な時間であり、これがLCDのリフレッシュ期間を上回るほど長くなると、ユーザにとって望ましくない画面アーチファクトが表示されるので、画素の応答時間を短くする必要があるという課題があった(【0003】)。

イ この課題を解決するために、LCDに含まれるある画素の現在の画素強度レベルと目標ピクチャフレーム中の対応する画素の目標画素強度レベルとに基づいて、所定のフレームリフレッシュ期間(単一のフレーム期間)内にその目標画素強度レベルを実現することが困難か否かを判定し、困難と判断された場合は、その目標画素強度レベルに代えて、調整された画素強度レベル(調整画素強度レベル)を1つ以上のフレーム期間においてLCDドライバに送出し、その画素をオーバドライブすることによって、現在の画素強度レベルから調整画素強度レベルには到達できないものの、元の目標画素強度レベル又はほぼ元の目標画像強度レベルには到達できるようにする(【0005】、【0038】)。

ウ 画素のオーバドライブとは、フレーム期間内に目標画素強度レベル又はそれに近接する画素強度レベルを実現するために、目標画素強度レベルを越えて画素を駆動することによって、ある画素強度レベルから別の画素強度レベルへの遷移を迅速化する処理であり、その結果、実際の画素強度レベルは、フレーム期間内に調整画素強度レベルには到達できないが、元の目標画素強度レベルとは等しくなり得る(【0031】)。
ここで、調整画素強度レベルは、画素をオーバドライブするために1つ以上のフレーム期間においてLCDドライバに送出するものであるから(前記イ)、目標画素強度レベルを越えて画素を駆動できる階調レベルであり、したがって、目標画素強度レベルを越える階調レベルである。
実際の画素強度レベルが設定時間内に目標画素強度レベルに到達できない場合は、設定時間内に実際に達成された達成可能画素強度レベルを把握し、その画素を再びオーバドライブする(【0032】)。
ここで、実際の画素強度レベルは目標画素強度レベルに到達できない一方、達成可能画素強度レベルは実際に達成されているのであるから、達成可能画素強度レベルが目標画素強度レベルに到達していないことは明らかである。

エ フレーム間で画像が不変の場合や、画素をオーバドライブするまでもなく、1つのフレーム内で目標画素強度レベルが達成できる場合は、調整の必要がない(目標画素強度レベルをそのまま調整画素強度レベルとすればよい)し、目標画素強度レベルはフレーム期間内に既に達成されていることになるから、目標画素強度レベル、調整画素強度レベル及び達成可能画素強度レベルは全て等しくなる(【0033】)。

オ 画素のオーバドライブにより1つのフレーム内で目標ピクチャフレームに正常に遷移できる場合は、実際の画素強度レベルが目標画素強度レベルに到達できることになるから、目標画素強度レベルと達成可能画素強度レベルとは等しくなる一方、調整画素強度レベルは目標画素強度レベルを越える階調レベルであるから、実際の画素強度レベルは調整画素強度レベルに到達していないことになる(【0033】)。

カ 以上のことをまとめると、達成可能画素強度レベルは、フレーム期間内に目標画素強度レベルと等しくなることもあるし(前記エ及びオ)、目標画素強度レベルに到達しないこともある(前記ウ)。そして、調整画素強度レベルは、目標画素強度レベルと等しくなることもあるものの(前記エ)、一般には、目標画素強度レベルを越える階調レベルである(前記ウ)。したがって、達成可能画素強度レベルは、フレーム期間内に調整画素強度レベルと等しくなることもあるが、一般には、調整画素強度レベルに到達しないことになる。
そうすると、翻訳文には、達成可能画素強度レベルはフレーム期間内に調整画素強度レベルと等しくなるか、調整画素強度レベルに到達しないかのいずれかであることが記載されている。

3 判断
(1)前記1(2)のとおり、本件補正発明は、「達成可能ピクチャフレーム」に含まれる達成可能画素強度レベルが所与の期間後に調整画素強度レベルに等しいか、調整画素強度レベルよりも低いか、調整画素強度レベルよりも高いかのいずれかであるという技術的事項を含むものである。
すなわち、本件補正発明は、達成可能画素強度レベルと調整画素強度レベルとの関係について、3通りの可能性を含む。
この点は、請求人も認めるところである。すなわち、請求人は、当業者が本件補正発明に至ることが困難な理由として、引用文献1ないし引用文献5に記載されたオーバドライブ技術はたかだか目標画素強度以下のレベルに画素をオーバドライブするものであり、いずれも二つの可能性を開示するのみであって、三つの可能性を開示するものではないことを挙げている(審判請求書、第5ページ第15行ないし第23行)。この主張は、本件補正発明が3通りの可能性を含むことを前提とするものと解される。

(2)一方、前記2(2)カのとおり、翻訳文には、達成可能画素強度レベルはフレーム期間内に調整画素強度レベルと等しくなるか、調整画素強度レベルに到達しないかのいずれかであるという技術的事項が記載されている。そして、翻訳文には、達成可能画素強度レベルが調整画素強度レベルに到達してそれと等しくなるレベルを越える可能性があることは、記載も示唆もされてもいない。
そもそも、画素のオーバドライブは、画素の応答時間が長すぎると、実際の画素強度レベルが規定の期間内に目標画素強度レベルに到達しなくなる結果、ユーザにとって望ましくない画面アーチファクトが生じるという課題を解決しようとするものであるから(翻訳文【0003】、【0005】、【0031】)、画素をオーバドライブした結果、実際に達成された達成可能画素強度レベルが目標画素強度レベルと等しくなれば、目的は達成される。すなわち、画素のオーバドライブの目的からすれば、実際の画素強度レベルを、目標画素強度レベルを越えるレベルにまで到達させて、達成可能画素強度レベルが目標画素強度レベルを越えるようにする必要はなく、そのようなことは最初から想定されていないといわざるを得ない。
そして、調整画素強度レベルは、目標画素強度レベルと等しいか、それを越える階調レベルなのであるから、達成可能画素強度レベルが調整画素強度レベルを越えるようにすることもまた、最初から想定されていないことが明らかである。
したがって、翻訳文には、達成可能画素強度レベルと調整画素強度レベルとの関係について、達成可能画素強度レベルはフレーム期間内に調整画素強度レベルと等しくなるか、調整画素強度レベルに到達しないかの2通りの可能性しか記載されていない。

(3)以上に述べたとおり、達成可能画素強度レベルと調整画素強度レベルとの関係について、本件補正発明は3通りの可能性を含むのに対し、翻訳文には2通りの可能性しか記載されていないのであるから、本件補正発明が含む技術的事項が翻訳文に記載された技術的事項の範囲内にないことは明らかである。
したがって、本件補正発明が含む技術的事項は、翻訳文の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるということはできず、翻訳文に記載した事項の範囲内にあるとはいえない。

4 請求人の主張について
請求人は、翻訳文には「画素をオーバドライブすることは、規定された時間、すなわち1つのフレームの期間内において目標画素強度レベル又はそれに近接する実際の画素強度レベルを実現するために、画素が目標画素強度レベルを越えて駆動される処理である。」(【0031】)という記載があり、この記載における「目標画素強度レベル又はそれに近接する」との表現は目標画素強度レベルよりも高いか低いか又はそれと等しいレベルであり得ることを示すと主張し、したがって、「調整画素強度レベル」は目標画素強度レベルよりも低いか高いか又はそれと等しいレベルであり得ると主張する(審判請求書、第5ページ第24行ないし第6ページ第3行)。

(1)しかし、前記3(2)のとおり、画素のオーバドライブのそもそもの目的からすれば、実際の画素強度レベルが目標画素強度レベルを越えるようにする必要はなく、そのようなことは最初から想定されていない。
そうすると、翻訳文の【0031】の記載における「目標画素強度レベル又はそれに近接する実際の画素強度レベルを実現する」との表現は、目標画素強度レベルを実現するか、目標画素強度レベルには到達しないものの、それに近接する実際の画素強度レベルを実現するかの2通りのいずれかであることを示すものと解するのが相当である。
したがって、「目標画素強度レベル又はそれに近接する」との表現が目標画素強度レベルよりも高いか低いか又はそれと等しいレベルの3通りであり得ることを示すとする請求人の主張は、採用することができない。

(2)また、翻訳文に記載されているとおり、「画素をオーバドライブすることは、」「画素が目標画素強度レベルを越えて駆動される処理である」(【0031】)から、画素は、目標画素強度レベルを越えるレベルにまで駆動される。この駆動は、目標画素強度レベルに代えて調整画素強度レベルをLCDドライバに送出することによって行われるから(【0005】)、調整画素強度レベルとしては、目標画素強度レベルを越えるものが想定されていることは明らかである。
仮に、調整画素強度レベルが目標画素強度レベルに達しないものであるとすると、それをLCDドライバに送出し、実際の画素強度レベルがその調整画素強度レベルに到達したとしても、その調整画素強度レベルが元の目標画素強度レベルに達しないものである以上、実際の画素強度レベルが元の目標画素強度レベルには到達することはない。そうすると、「1つのフレームの期間内において目標画素強度レベル又はそれに近接する実際の画素強度レベルを実現するために」(【0031】)という目的に照らして意味がないことは明らかである。
したがって、請求人の主張は、目標画素強度レベルに代えて調整画素強度レベルで画素を駆動することの技術的意義を失わせるものであり、採用することができない。

(3)さらに、仮に請求人が主張するとおり、調整画素強度レベルが目標画素強度レベルよりも低いか高いか又はそれと等しいレベルであり得るとしても、これは、達成可能画素強度レベルが調整画素強度レベルよりも高いか低いか又はそれと等しいレベルであり得ることを直ちに意味するものではなく、翻訳文には達成可能画素強度レベルはフレーム期間内に調整画素強度レベルと等しくなるか、調整画素強度レベルに到達しないかのいずれかであることが記載されているとの認定(前記2(2)カ)を左右するものではない。
したがって、請求人の主張は、当を得ない。

5 本件補正の却下の決定のむすび
以上に述べたとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下するべきものである。

第3 本願に係る発明についての判断
1 原査定の概要
本願の請求項1ないし請求項20に係る発明は、いずれも、下記の引用文献1、引用文献2又は引用文献3に記載された発明と、例えば引用文献4及び引用文献5に記載された周知技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2004-246312号公報
引用文献2:特開昭64-010299号公報
引用文献3:特開2008-003301号公報
引用文献4:国際公開第2008/062577号
引用文献5:特開2006-126256号公報

2 本願に係る発明
(1)前記第2のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項1ないし請求項20に係る発明は、本願の本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項20に記載された事項により特定されるものである。特に、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
ディスプレイをオーバドライブする方法であって、
前記ディスプレイ上に現在表示されているディスプレイの画素を示す現在の画素強度レベルを含む現在のピクチャフレームを受信することと、
前記ディスプレイの前記画素に対応する目標画素強度レベルを含む目標ピクチャフレームを受信することと、
前記目標ピクチャフレームを前記現在のピクチャフレームと比較することであって、該比較することは前記目標画素強度レベルを前記現在の画素強度レベルと比較することを含む、比較することと、
前記目標ピクチャフレームと前記現在のピクチャフレームとの前記比較に基づいて、前記目標ピクチャフレームに対する調整が行われるべきであると決定することと、
前記調整が行われるべきであると決定することに応じて、前記ディスプレイの前記画素に対応する調整画素強度レベルを含む調整ピクチャフレームを生成することであって、前記調整画素強度レベルは前記ディスプレイの前記画素を前記目標画素強度レベルを超えてオーバドライブすることにより達成される、前記目標画素強度レベルに近接する値を有する、生成することと、
前記調整ピクチャフレームに基づいて、規定された期間内に達成可能な達成可能ピクチャフレームを生成することと、
前記達成可能ピクチャフレームを前記現在のピクチャフレームとして格納することと、
を含む方法。」

(2)翻訳文の前記第2の2(1)の記載(特に【0003】)によれば、本願発明は、液晶ディスプレイ(LCD)の画素の応答時間がLCDのリフレッシュ期間を上回るほど長くなると、ユーザにとって望ましくない画面アーチファクトが表示されるので、画素の応答時間を短くする必要があるという課題を解決しようとするものである。

3 引用文献1に記載された発明
(1)引用文献1の記載
引用文献1には、以下の記載がある。下線は、当審が付した。

「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示装置に関し、特に、動画表示に好適に用いられる液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置は、例えばパーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ、アミューズメント機器、テレビ装置などに用いられている。さらに、液晶表示装置の応答特性を改善し、高画質の動画表示を得るための検討がなされている。
【0003】
特許文献1は、大画面、高解像度の画素表示に対応できる液晶制御回路および液晶パネルの駆動方法を開示している。具体的には、液晶に印加している現在の電圧値と、次のフィールドで液晶に印加する電圧値とを比較・演算し、電圧値を補正することによって、液晶の立ち上がり時の応答時間が短縮されることを開示している。
【0004】
【特許文献1】
特開平3-174186号公報(第1図?第4図参照)
【0005】
特許文献1に開示された液晶パネルの駆動方法について、図13を参照しながら説明する。図13では、補正前の電圧データがフィールド番号F4でD1からD5に変化している場合を示している。
【0006】
図13に示すように、V1、V5で示す電圧が比較的小さく、つまりコモン電圧に近く、かつV5-V1>0なる関係が成り立つときは、液晶の立ち上がり速度が遅いので、透過量が所定の値まで変化するのに長時間を要する。TN(Twisted Nematic)液晶を反射モードで用いた液晶パネルであって、液晶が光を透過させない最小電圧値が2.0V、液晶が最大量の光を透過させる最大の電圧値が3.5Vの液晶パネルを一例とする。この液晶パネルにおいて、印加電圧V1を2.0V、変化した電圧V5を2.5Vとすると、透過量が所定の値になる時間は、約70?100msecである。したがって、応答に要する時間は2フィールド以上となるので、画像の尾ひきが発生する。
【0007】
この応答時間は、V5が大きくなるほど小さくなり、2フィールド内の33msec以内に応答するようになる。このように電圧V5が所定値より小さいときは、電圧V5を印加するフィールドF4で電圧V5よりも高い電圧が印加されるように電圧データを補正する。具体的には、液晶制御回路によって、フィールドF3とF4のデータを比較したとき、その画素の電圧変化量がわかるので、データ補正器(特許文献1の第2図参照)によって、フィールドF4のデータをD5からD7に補正する。ソースドライブIC(特許文献1の第1図参照)は、フィールドF4で前記補正電圧データD7によりソース信号線にV7なる電圧を印加する。したがって、液晶の立ち上がり特性は改善され、F4で示す1フィールド内で所定の透過量T5が得られる。
【0008】
この液晶パネルによれば、たとえば電圧V7として3.0?3.5Vを印加することによって、20?30msecに応答時間を改善できる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
液晶表示装置においては、動画のボケのない高画質を得るために、液晶の高速応答が求められている。特許文献1に開示された方法によれば、液晶の応答は高速化する。しかし、液晶応答が遅い条件では、液晶に印加している電圧値に対応する液晶パネルの定常状態の透過率と、実際の液晶パネルの透過率との間に差が生じるので、電圧値の補正が正確にできないという問題がある。例えば、低温環境下では液晶応答速度が低下するので、中間調付近でも目標とする階調に到達しなくなるおそれがある。
【0010】
また、高階調から、階調電圧の設定値の中で極限に近い電圧値に対応する低階調に遷移する場合や、低階調から、階調電圧の設定値の中で極限に近い電圧値に対応する高階調に遷移する場合などでは、液晶パネルへの印加電圧が飽和するので、目標とする階調に到達しなくなるおそれがある。あるいは、電圧値の補正方法の精度が低い場合には、実用にたえる補正値を得られずに、目標の階調に到達しないおそれがある。このように、目標の階調に到達していない状態で、次フィールドの駆動を行うと、誤差が蓄積する。これらの結果、動画表示で残像現象による画像のボヤケが発生したり、動画像の輪郭に輝点が表示されたりした。
【0011】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高画質な動画表示の液晶表示装置を提供することにある。」

「【0021】
本願明細書において、液晶表示装置において表示を行うために液晶層に印加される電圧を階調電圧Vgと呼び、例えば、0階調(黒)?63階調(白)の全64階調表示を行う場合、0階調の表示を行うための階調電圧VgをV0、63階調の表示を行うための階調電圧VgをV63で示す。実施形態で例示するノーマリブラックモード(以下「NBモード」と称する。)の液晶表示装置の場合、V0が最低の階調電圧であり、V63が最高の階調電圧となる。これに対し、ノーマリホワイトモード(以下「NWモード」と称する。)の液晶表示装置においては、逆に、V0が最高の階調電圧であり、V63が最低の階調電圧となる。
【0022】
以下では、液晶表示装置で表示すべき画像情報を与える信号を入力画像信号Sと呼び、それぞれの入力画像信号Sに応じて画素に印加される電圧を階調電圧Vgと呼ぶ。64階調の入力画像信号(S0?S63)は、それぞれ階調電圧(V0?V63)に一対一で対応する。階調電圧Vgは、それぞれの階調電圧Vgが印加された液晶層が定常状態に到達したときに、それぞれの入力画像信号Sに対応する透過率(表示状態)となるように設定される。このときの透過率を定常状態透過率と称する。勿論、階調電圧V0?V63の値は液晶表示装置によって異なり得る。
【0023】
液晶表示装置は、例えばインターレース駆動され、1枚の画像に対応する1フレームを2つのフィールドに分割し、各フィールドに入力画像信号Sに対応する階調電圧Vgが表示部に印加される。勿論、1フレームが3以上のフィールドに分割されることもあり得るし、ノンインターレース駆動されてもよい。ノンインターレース駆動においては、各フレームに入力画像信号Sに対応する階調電圧Vgが表示部に印加される。インターレース駆動における1フィールドまたはノンインターレース駆動における1フレームをここでは1垂直期間と称する。
【0024】
オーバーシュート電圧を検出するための入力画像信号Sの比較は、全ての画素のそれぞれに対する前垂直期間の入力画像信号Sと現垂直期間の入力画像信号Sとの間で行われる。1フレームの画像情報が複数のフィールドに分割されるインターレース駆動の場合でも、1フレーム前のその画素に対する入力画像信号Sや上下のラインの入力画像信号Sが補完信号として使用され、1垂直期間中に全ての画素に相当する信号が与えられる。そして、前フィールドと現フィールドのこれらの入力画像信号Sが比較される。」

「【0027】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照しながら、本発明による実施形態の液晶表示装置を説明する。以下では、垂直配向型のNBモードの液晶表示装置を例に本発明の実施形態を説明するが、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明を水平配向型のNBモードの液晶表示装置や垂直配向型液晶層または水平配向型液晶層を備えたNWモードの液晶表示装置に適用することもできる。なお、1フィールドが1垂直期間に相当するインターレース駆動方式の液晶表示装置を例に本発明の実施形態を説明するが、本発明はこれに限られず、1フレームが1垂直期間に相当するノンインターレース駆動方式の液晶表示装置にも適用できる。
【0028】
(オーバーシュート駆動)
本明細書でオーバーシュート駆動とは、前垂直期間(直前の垂直期間)と現垂直期間との入力画像信号Sを比較し現垂直期間の入力画像信号Sに対応する階調電圧を補正する、液晶パネルの駆動法を指す。この比較・補正された階調電圧をオーバーシュートされた電圧という。例えば、現垂直期間の入力画像信号Sに対応する階調電圧が前垂直期間の入力画像信号Sに対応する階調電圧Vgよりも高い場合には、現垂直期間の入力画像信号に対応する階調電圧Vgよりもさらに高い電圧であり、逆に、現垂直期間の入力画像信号Sに対応する階調電圧が前垂直期間の入力画像信号に対応する階調電圧Vgよりも低い場合には、現垂直期間の入力画像信号Sに対応する階調電圧Vgよりもさらに低い電圧を指す。
【0029】
本発明の液晶表示装置では、前垂直期間の入力画像信号Sが、現フィールドにおける液晶パネルの透過率(予測値)に即して適切に加工されている。」

「【0067】
(実施形態2)
図5は、本発明による実施形態2の液晶表示装置が備える駆動回路10aの構成を示す模式図である。なお、図5では、説明に不要な部分は省略している。また、便宜上、信号Sに対応する階調レベルをSで表すことがある。例えば、信号S128に対応する階調レベルをS128と表すことがある。
【0068】
駆動回路10aは、外部からの入力画像信号Sを受け取り、それに応じた駆動電圧を液晶パネル15に供給する。駆動回路10aは、組合せ検出回路12と、オーバーシュート電圧検出回路13と、極性反転回路14と、予測値検出回路16と、予測値記憶回路17と、オーバーシュート(以下、「OS」ともいう。)パラメータテーブル18と、予測テーブル19とを有する。なお、OSパラメータテーブル18および予測テーブル19は、記憶回路に記憶された、階調レベルに関する情報の集合である。
【0069】
組合せ検出回路12は、予測値記憶回路17に保持された予測信号と、現フィールドの入力画像信号とを比較し、その組合せを示す信号(組合せ信号)を予測値検出回路16に出力する。また、組合せ検出回路12は、OSパラメータテーブル18を参照して、前述の組み合わせに対応する階調レベルを検出し、オーバーシュート電圧検出回路13に出力する。オーバーシュート予測値検出回路16は、予測テーブル19を参照して、組合せ検出回路12で検出された組合せ信号に対応する予測値(階調レベル)を検出する。以下、OSパラメータテーブル18に設定された階調レベルを「OSパラメータ」ともいう。
【0070】
予測値記憶回路17は、予測値検出回路16で検出された信号を保持する。保持される信号は、入力画像信号Sの少なくとも1枚のフィールド画像に相当する。1フレームが複数のフィールドに分割されない場合、予測値記憶回路17は、少なくとも1枚のフレーム画像に相当する信号を保存する。
【0071】
一方、オーバーシュート電圧検出回路13は、組合せ検出回路12から出力されたOSパラメータに対応する駆動電圧を、階調電圧Vgおよびオーバーシュート駆動専用電圧Vosのなかから検出する。極性反転回路14は、オーバーシュート電圧検出回路13で検出された駆動電圧を交流信号に変換し、液晶パネル(表示部)15に供給する。
【0072】
OSパラメータテーブル18には、2個の信号のそれぞれに対応する階調レベルを組み合わせた階調遷移のパターン毎に、液晶パネル15の光学応答を1フィールド内に完了させることを目標とする目標階調レベルが設定されている。また、OSパラメータテーブル18には、目標階調レベルに達せず、かつ液晶パネル15が表示可能な限界階調レベルが設定されている。限界階調レベルは、言い換えれば、NBモードの液晶表示装置において、階調電圧の設定値の中で最大値に近い電圧値に対応する高階調レベル、または階調電圧の設定値の中で最小値に近い電圧値に対応する低階調レベルである。また、限界階調レベルは、NWモードの液晶表示装置において、階調電圧の設定値の中で最大値に近い電圧値に対応する低階調レベル、または階調電圧の設定値の中で最小値に近い電圧値に対応する高階調レベルである。
【0073】
図6は、本実施形態のOSパラメータテーブル18を示す図である。本実施形態のOSパラメータテーブル18には、32階調ごとの代表的な階調遷移パターンについて、オーバーシュート電圧に対応する目標階調レベルおよび限界階調レベルが記録されている。その他の階調遷移パターンについては、テーブル18に記録された階調レベルから計算で求められる。
【0074】
図6を参照しながら、目標階調レベルおよび限界階調レベルについて具体的に説明する。目標階調レベルは、液晶パネル15の光学応答を1フィールド内に完了させることを目標とする階調レベルであり、予測値記憶回路17に保持された予測信号に対応する階調レベルと、現フィールドの入力画像信号に対応する階調レベルとの組合せに対応して設定されている。すなわち、階調遷移パターンに対応して、目標階調レベルが設定されている。例えば、予測値記憶回路17に保持されている信号S96と、現フィールドの入力画像信号S128との組合せ(S96、S128)に対応して、目標階調レベルS147が設定されている。
【0075】
しかし、予測信号と入力画像信号との組合せ(階調遷移パターン)によっては、目標階調レベルに達しない階調レベルを設定せざるを得ない場合がある。例えば、低階調レベルから、階調電圧の設定値の中で最大値に近い電圧値に対応する高階調レベルに遷移する場合(例えば、S0からS255に遷移する場合)や、高階調レベルから、階調電圧の設定値の中で最小値に近い電圧値に対応する低階調レベルに遷移する場合(例えば、S255からS0に遷移する場合)には、目標階調レベルに達しない階調レベルを設定せざるを得ない場合がある。その理由は、256階調の液晶パネル15においては、液晶パネル15が表示可能な0階調(黒)から255階調(白)のいずれかの階調レベルを設定せざるを得ない場合があるからである。例えば、S0からS255に遷移する場合であっても、上限の階調レベルS255を設定せざるを得ない場合があり、同様に、S255からS0に遷移する場合であっても、下限の階調レベルS0を設定せざるを得ない場合がある。これら階調レベルS0,S255に対応する階調電圧を液晶パネル15へ印加しても、印加電圧が飽和しているので、目標とする階調レベルには到達しない。言い換えれば、階調遷移パターンによっては、目標階調レベルに達せず、かつ液晶パネル15が表示可能な限界階調レベルを設定せざるを得ない場合がある。
【0076】
このように、OSパラメータテーブル18に格納されるOSパラメータは、1フィールド後に目標の階調に到達するように決められた目標階調レベルであるか、あるいは目標階調レベルに達しない限界階調レベルである。しかし、階調遷移パターンによっては、液晶応答が遅いので、設定された目標階調レベルを用いても、1フィールド後に目標の階調レベルに到達しないこともある。本実施形態では、予測テーブル19から、現フィールドで実際に到達する階調レベルの予測値を求め、この予測値に基づいて、次フィールドの入力画像信号を補正する。
【0077】
予測テーブル19には、オーバーシュート電圧検出回路13が極性反転回路14を介して液晶パネル15に目標電圧レベルまたは限界電圧レベルを印加した場合に、液晶表示パネル15が1フィールド後に実際に到達する到達階調レベルが、階調遷移のパターン毎に設定されている。なお、目標電圧レベルとは、目標階調レベルに対応する電圧値であり、限界電圧レベルとは、限界階調レベルに対応する電圧値である。階調遷移パターンに応じて、目標電圧レベルおよび限界電圧レベルが選択的に印加される。
【0078】
図7は、本実施形態の予測テーブル19を示す図である。本実施形態の予測テーブル19には、32階調ごとの代表的な階調遷移パターンについて、オーバーシュート電圧によって、そのフィールド中に到達する階調レベルが記録されている。例えば、図6に示すOSパラメータテーブル18を参照して、予測信号S96と入力画像信号S128との組合せ(S96、S128)に対応する目標階調レベルS147の目標電圧レベルが印加された場合、1フィールド後に実際に到達する到達階調レベルはS125である。図7に示す予測テーブル19には、組合せ(S96、S128)に対応して、到達階調レベルS125が記録されている。テーブル19に記録された階調レベルは、予め測定することにより求められ、その他の階調遷移パターンについては、テーブル19に記録された階調レベルから計算で求められる。
【0079】
本実施形態における駆動回路10aの動作を2フィールドにわたって説明する。入力画像信号は8ビットとする。例えば、ある画素についての入力画像信号Sがフィールド毎にS255,S64,S128の順に変化するとする。
【0080】
1フィールド目では、現フィールドの入力画像信号がS64であるときに、予測値記憶回路17は、その画素について信号S255を保持しているとする。このとき、組合せ検出回路12は、現フィールドの入力画像信号S64と、予測値記憶回路17に保持されている信号S255との組合せ(S255、S64)を検出する。さらに、OSパラメータテーブル18から、この組み合わせに応じたOSパラメータS0を検出し、オーバーシュート電圧検出回路13に出力する。すなわち、組合せ検出回路12は、OSパラメータテーブル18から、入力画像信号S64と予測信号S255との組合せ(S255、S64)に応じたOSパラメータS0を設定している。言い換えれば、組合せ検出回路12は、階調遷移パターンに応じて、目標階調レベルと限界階調レベルとを選択的に設定する設定手段である。
【0081】
オーバーシュート電圧検出回路13は、OSパラメータS0に対応した階調電圧V0を検出し、階調電圧V0を駆動電圧として極性反転回路14に供給する。極性反転回路14は、オーバーシュート電圧検出回路13で検出された駆動電圧(階調電圧V0)を交流信号に変換し、液晶パネル15に供給する。言い換えれば、オーバーシュート電圧検出回路13および極性反転回路14は、設定手段(組合せ検出回路12)により設定された目標階調レベルに対応する目標電圧レベルと、設定手段(組合せ検出回路12)により設定された限界階調レベルに対応する限界電圧レベルとを選択的に液晶層に印加する電圧印加手段である。
【0082】
一方、予測値検出回路16は、組合せ検出回路12によって検出された組合せ(S255、S64)に応じて、予測テーブル19から予測信号S134を検出し、予測値記憶回路17がこれを保持する。
【0083】
続いて、2フィールド目では、入力画像信号はS128である。組合せ検出回路12は、現フィールドの入力画像信号S128と、予測値記憶回路17に保持されている予測信号S134との組合せ(S134、S128)を検出し、オーバーシュート電圧検出回路13に出力する。オーバーシュート電圧検出回路13は、OSパラメータS120に対応した階調電圧V120を検出し、階調電圧V120を駆動電圧として極性反転回路14に供給する。
【0084】
一方、予測値検出回路16は、組合せ検出回路12によって検出された組合せ(S134、S128)に応じて、予測テーブル19から予測信号S128を計算により検出し、予測値記憶回路17がこれを保持する。
【0085】
組合せ検出回路12による検出動作について、より具体的に説明する。この例では、n-1番目の入力画像信号による階調(S255)からn番目の入力画像信号による階調(S64)へ階調が遷移している。言い換えれば、n-1番目の入力画像信号とn番目の入力画像信号との階調レベルが異なる。この場合には、n-1番目の入力画像信号とn番目の入力画像信号との組合せ(S255、S64)に応じたOSパラメータS0と、組合せ(S255、S64)に応じた予測信号S134との階調レベルが異なる。言い換えれば、n番目の入力画像信号によって階調レベルをS255からS64に遷移させるために、n番目の入力画像信号S64を補正して、補正されたn番目の入力画像信号(OSパラメータ)S0に対応する電圧を印加しても、1フィールド後に実際に到達する到達階調レベルはS134である。
【0086】
n+1番目の入力画像信号によって目標階調レベルをS128にする場合には、実際に到達する到達階調レベルS134に基づいてn+1番目の入力画像信号S128を補正するのが望ましい。そこで、組合せ検出回路12は、OSパラメータテーブル18から、組み合わせ(S134、S128)に応じたOSパラメータS120を計算により検出し、オーバーシュート電圧検出回路13に出力する。
【0087】
以上の説明から、組合せ検出回路12は、n-1番目の入力画像信号による階調(S255)からn番目の入力画像信号による階調(S64)への階調遷移に対して、n-1番目の入力画像信号とn番目の入力画像信号とが異なる階調レベルの場合に、予測テーブル19を参照して得た到達階調レベル(S134)に基づいて、n+1番目の入力画像信号(S128)による目標階調レベルを補正する補正手段であると言える。n-1番目の入力画像信号とn番目の入力画像信号とが異なる階調レベルであるか否かの判断は、例えば組合せ検出回路12により行われる。また、n-1番目の入力画像信号とn番目の入力画像信号との比較に代えて、あるいはこれとともに、OSパラメータと予測信号(到達階調レベル)とを比較してもよく、あるいはn番目の入力画像信号と予測信号(到達階調レベル)とを比較しても良い。
【0088】
一方、n-1番目の入力画像信号とn番目の入力画像信号との階調レベルが同じ場合には、階調レベルに変化がないので、n-1番目の入力画像信号(階調レベル)、n番目の入力画像信号(階調レベル)、OSパラメータおよび予測信号(到達階調レベル)は、いずれも同じ値になる。例えば、n-1番目の入力画像信号がS128、n番目の入力画像信号がS128のとき、図6に示すOSパラメータテーブル18からOSパラメータはS128であり、図7に示す予測テーブル19から予測信号(到達階調レベル)はS128であることが分かる。このように、n-1番目の入力画像信号とn番目の入力画像信号との階調レベルが同じ場合、言い換えればOSパラメータと予測信号(到達階調レベル)とが同じ値の場合、OSパラメータに基づいて、n+1番目の入力画像信号による目標階調レベルを補正しても良い。
【0089】
上記の通り、高階調から低階調に遷移する場合(例えば、S255からS0への遷移)や低階調から高階調に遷移する場合(例えば、S0からS255への遷移)では、オーバーシュート電圧を印加しても、液晶パネル15への印加電圧が飽和するので、目標階調レベルに到達しないことがある。また、低温環境下では液晶応答速度が低下するので、中間調付近でも目標とする階調レベルに到達しなくなるおそれがある。本実施形態によれば、現フィールドで実際に到達する階調レベルの予測値に基づいて、次フィールドの入力画像信号を補正するので、目標とする階調レベルと実際に到達する階調レベルとの誤差が徐々に解消される。」

「【0122】
【発明の効果】
本発明によると、オーバーシュート電圧をより適切に判定できる液晶表示装置が提供される。本発明の液晶表示装置は、液晶応答の不足や過剰が軽減されるので、動画表示における残像現象による画像のボヤケ発生や動画像の輪郭の輝点が防止され、高品位の動画表示が可能となる。」

【図5】

【図6】

【図7】

【図13】


(2)引用文献1に記載された発明の認定
引用文献1の前記(1)の記載(特に下線を付した部分)によれば、以下のことが認められる。

ア 引用文献1には、動画表示に好適な液晶表示装置が記載されている(【0001】)。

イ 引用文献1に記載された液晶表示装置では、前フィールドの入力画像信号Sと現フィールドの入力画像信号Sとを比較して現フィールドの入力画像信号Sに対応する階調電圧Vgを補正し、その補正された階調電圧(オーバーシュート電圧)で液晶パネルを駆動するオーバーシュート駆動が用いられる(【0023】、【0028】)。

ウ オーバーシュート電圧を検出するための入力画像信号Sの比較は、全ての画素のそれぞれに対する前フレームの入力画像信号Sと現フレームの入力画像信号Sとの間で行われる(【0024】)。

エ オーバーシュート電圧は、現フィールドの入力画像信号Sに対応する階調電圧Vgが前フィールドの入力画像信号Sに対応する階調電圧Vgより高い場合は、現フィールドの入力信号Sに対応する階調電圧Vgよりさらに高い電圧であり、逆に、現フィールドの入力画像信号Sに対応する階調電圧Vgが前フィールドの入力画像信号Sに対応する階調電圧Vgより低い場合は、現フィールドの入力画像信号Sに対応する階調電圧Vgよりさらに低い電圧である(【0023】、【0028】)。

オ 引用文献1に記載された液晶表示装置は、外部からの入力画像信号Sを受け取り、それに応じた駆動電圧を液晶パネル15に供給する駆動回路10aを備え、駆動回路10aは、組合せ検出回路12、オーバーシュート電圧検出回路13、極性反転回路14、予測値検出回路16、予測値記憶回路17、オーバーシュートパラメータテーブル(OSパラメータテーブル)18及び予測テーブル19を有する(【0067】、【0068】、図5)。

カ OSパラメータテーブル18には、予測値記憶回路17に保持されている信号に対応する階調レベルと現フィールドの入力画像信号に対応する階調レベルとの代表的な組合せ毎に(すなわち、代表的な階調遷移パターン毎に)、オーバーシュート電圧に対応する目標階調レベル及び限界階調レベルが記録されており、その他の組合せについてのオーバーシュート電圧に対応する目標階調レベル又は限界階調レベルは、OSパラメータテーブル18に記録された目標階調レベル及び限界階調レベルから計算で求められる(【0072】ないし【0075】、図6)。
ここで、目標階調レベルは、液晶パネル15の光学応答を1フィールド内に完了させることを目標とする階調レベルであり、限界階調レベルは、目標階調レベルに達しない階調レベルであって、液晶パネル15が表示可能な最大(又は最小)の階調レベルである(【0072】、【0074】、【0075】)。
なお、予測値記憶回路17に保持されている信号に対応する階調レベル(S128)と現フィールドの入力画像信号に対応する階調レベル(S128)とが等しい場合のように、OSパラメータ(S128)が現フィールドの入力画像信号に対応する階調レベル(S128)と等しいこともある(【0088】、図6)。

キ 予測テーブル19には、液晶パネル15に目標階調レベル又は限界階調レベルに対応する電圧値を印加したときに、液晶パネル15が1フィールド後に実際に到達する到達階調レベルが代表的な階調遷移パターン毎に予め測定されて記録されており、その他の階調遷移パターンについての到達階調レベルは、予測テーブル19に記録された到達階調レベルから計算で求められる(【0077】、【0078】、図7)。

ク ある画素についての入力画像信号Sがフィールド毎に例えばS255、S64、S128の順に変化するときの2フィールドにわたる駆動回路10aの動作は、以下のとおりである(【0079】)。

(ア)1フィールド目では、組合せ検出回路12は、予測値記憶回路17に保持されている信号(S255)と現フィールド(1フィールド目)の入力画像信号(S64)との組合せを検出し、その組合せ(S255、S64)に応じたOSパラメータ(S0)を、OSパラメータテーブル18を参照して検出し、オーバーシュート電圧検出回路13に出力するとともに、その組合せ(S255、S64)を示す組合せ信号を予測値検出回路16に出力する(【0069】、【0080】、図6)。
オーバーシュート電圧検出回路13は、OSパラメータ(S0)に対応する階調電圧(V0)を検出し、極性反転回路14を介して液晶パネル15に供給する(【0071】、【0081】)。
予測値検出回路16は、その組合せ(S255、S64)を示す組合せ信号に応じた予測信号(S134)を、予測テーブル19を参照して検出し、予測値記憶回路17は、これを保持する(【0069】、【0082】、図7)。

(イ)2フィールド目では、組合せ検出回路12は、予測値記憶回路17に保持されている信号(S134)と現フィールド(2フィールド目)の入力画像信号(S128)との組合せを検出し、その組合せ(S134、S128)に応じたOSパラメータ(S120)を、OSパラメータテーブル18を参照して検出し、オーバーシュート電圧検出回路13に出力するとともに、その組合せ(S134、S128)を示す組合せ信号を予測値検出回路16に出力する(【0069】、【0083】、図6)。
オーバーシュート電圧検出回路13は、OSパラメータ(S120)に対応する階調電圧(V120)を検出し、極性反転回路14を介して液晶パネル15に供給する(【0083】)。
予測値検出回路16は、その組合せ(S134,S128)を示す組合せ信号に応じた予測信号(S128)を、予測テーブル19を参照して検出し、予測値記憶回路17は、これを保持する(【0069】、【0084】、図7)。

(ウ)ここで、予測テーブル19には、液晶パネル15に目標階調レベル又は限界階調レベルに対応する電圧レベルを印加したときに、液晶パネル15が1フィールド後に実際に到達する到達階調レベルが予め測定されて記録されているから(前記キ)、1フィールド目に予測値記憶回路17に保持される予測信号(S134)は、現フィールド(1フィールド目)の入力画像信号(S64)を補正した入力画像信号であるOSパラメータ(S0)に対応する電圧(V0)を液晶パネル15に印加したときに、液晶パネル15が実際に到達する到達階調レベルである(【0085】)。
同様に、2フィールド目に予測値記憶回路17に保持される予測信号(S128)は、現フィールド(2フィールド目)の入力画像信号(S128)を補正した入力画像信号であるOSパラメータ(S120)に対応する電圧(V120)を液晶パネル15に印加したときに、液晶パネル15が実際に到達する到達階調レベルである。
そして、駆動回路10aの動作は、1フィールド目の直前のフィールドでも同様であるから、1フィールド目の最初の時点で予測値記憶回路17に保持されている信号(S255)は、1フィールド目の直前のフィールドで液晶パネル15が実際に到達した到達階調レベルである。

ケ ここで、特に前記カ及びクに着目して、駆動回路10aの1フィールド目の動作をまとめると、引用文献1には、動画表示に好適な液晶表示装置の駆動方法として、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「液晶表示装置の液晶パネル15をオーバーシュート駆動する方法であって、
ある画素について、
組合せ検出回路12が、液晶パネル15が現フィールド(1フィールド目)の直前のフィールドで実際に到達して予測値記憶回路17に保持されている到達階調レベル(S255)と、現フィールド(1フィールド目)の入力画像信号(S64)との組合せを検出し、
組合せ検出回路12が、その組合せ(S255、S64)に応じたOSパラメータ(S0)を、OSパラメータテーブル18を参照して検出し、オーバーシュート電圧検出回路13に出力し、
組合せ検出回路12が、その組合せ(S255、S64)を示す組合せ信号を予測値検出回路16に出力し、
オーバーシュート電圧検出回路13が、OSパラメータ(S0)に対応する階調電圧(V0)を検出し、極性反転回路14を介して液晶パネル15に供給し、
予測値検出回路16が、その組合せ(S255、S64)を示す組合せ信号に応じた、液晶パネルが現フィールド(1フィールド目)で実際に到達する到達階調レベル(S134)を、予測テーブル19を参照して検出し、
予測値記憶回路17が、到達階調レベル(S134)を保持し、
OSパラメータテーブル18には、予測値記憶回路17に保持されている信号に対応する階調レベルと現フィールドの入力画像信号に対応する階調レベルとの代表的な組合せ毎に、オーバーシュート電圧に対応する目標階調レベル及び限界階調レベルが記録されており、その他の組合せについてのオーバーシュート電圧に対応する目標階調レベル又は限界階調レベルは、OSパラメータテーブル18に記録された目標階調レベル及び限界階調レベルから計算で求められ、
目標階調レベルは、液晶パネル15の光学応答を1フィールド内に完了させることを目標とする階調レベルであり、限界階調レベルは、目標階調レベルに達しない階調レベルであって、液晶パネル15が表示可能な最大(又は最小)の階調レベルであり、
予測値記憶回路17に保持されている信号に対応する階調レベル(S128)と現フィールドの入力画像信号に対応する階調レベル(S128)とが等しい場合のように、OSパラメータ(S128)が現フィールドの入力画像信号に対応する階調レベル(S128)と等しいこともある
方法。」

4 本願発明と引用発明との一致点及び相違点
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりである。

ア 引用発明の「液晶表示装置の液晶パネル15」は、本願発明の「ディスプレイ」に相当し、引用発明の「オーバーシュート駆動」は、本願発明の「オーバドライブ」に相当するから、引用発明の「液晶表示装置の液晶パネル15をオーバーシュート駆動する方法」は、本願発明の「ディスプレイをオーバドライブする方法」に相当する。

イ 引用発明の「予測値記憶回路17に保持されている到達階調レベル(S255)」は、「液晶パネル15が現フィールド(1フィールド目)の直前のフィールドで実際に到達して」いるものであるから、液晶パネル15に現在表示されている階調レベルにほかならない。したがって、前記アを踏まえると、引用発明の「液晶パネル15が現フィールド(1フィールド目)の直前のフィールドで実際に到達して予測値記憶回路17に保持されている到達階調レベル(S255)」は、本願発明の「前記ディスプレイ上に現在表示されているディスプレイの画素を示す現在の画素強度レベル」に相当する。
そして、引用発明の「組合せ検出回路12」は、「液晶パネル15が現フィールド(1フィールド目)の直前のフィールドで実際に到達して予測値記憶回路17に保持されている到達階調レベル(S255)と、現フィールド(1フィールド目)の入力画像信号(S64)との組合せを検出」する際に、「予測値記憶回路17に保持されている到達階調レベル(S255)」を「予測値記憶回路17」からの信号として受け取っていることが明らかであるから、引用発明は、本願発明の「前記ディスプレイ上に現在表示されているディスプレイの画素を示す現在の画素強度レベルを」「受信すること」に相当する構成を備えている。

ウ 引用発明の「現フィールド(1フィールド目)の入力画像信号(S64)」は、それに対応する階調レベルを「液晶表示装置の液晶パネル15」上に実現することを意図するものであり、いわば、「液晶表示装置の液晶パネル15」上に実現するべき階調レベルの目標を表すものであるから、前記アを踏まえると、本願発明の「前記ディスプレイの前記画素に対応する目標画素強度レベル」に相当する。
そして、引用発明の「組合せ検出回路12」は、「液晶パネル15が現フィールド(1フィールド目)の直前のフィールドで実際に到達して予測値記憶回路17に保持されている到達階調レベル(S255)と、現フィールド(1フィールド目)の入力画像信号(S64)との組合せを検出」する際に、「現フィールド(1フィールド目)の入力画像信号(S64)」を外部から入力される信号として受け取っていることが明らかであるから、引用発明は、本願発明の「前記ディスプレイの前記画素に対応する目標画素強度レベルを」「受信すること」に相当する構成を備えている。

エ 引用発明の「組合せ検出回路12」が「予測値記憶回路17に保持されている到達階調レベル(S255)と、現フィールド(1フィールド目)の入力画像信号(S64)との組合せを検出」するのは、「その組合せ(S255、S64)に応じたOSパラメータ(S0)を、OSパラメータテーブル18を参照して検出」するためであるから、引用発明の「組合せ検出回路12」は、「予測値記憶回路17に保持されている到達階調レベル(S255)」と「現フィールド(1フィールド目)の入力画像信号(S64)」とを比較し、その結果に基づいて「OSパラメータ(S0)」を決定しているということができる。
したがって、前記イ及びウを踏まえると、引用発明は、本願発明の「前記目標画素強度レベルを前記現在の画素強度レベルと比較すること」に相当する構成を備えている。

オ 引用発明の「組合せ検出回路12」は、「予測値記憶回路17に保持されている到達階調レベル(S255)と、現フィールド(1フィールド目)の入力画像信号(S64)との組合せを検出し、」「その組合せ(S255、S64)に応じたOSパラメータ(S0)を、OSパラメータテーブル18を参照して検出」することで、「現フィールド(1フィールド目)の入力画像信号(S64)」を、それとは異なる「OSパラメータ(S0)」に調整している。
その一方、「予測値記憶回路17に保持されている信号に対応する階調レベル(S128)と現フィールドの入力画像信号に対応する階調レベル(S128)とが等しい場合のように、OSパラメータ(S128)が現フィールドの入力画像信号に対応する階調レベル(S128)と等しいこともある」から、引用発明の「組合せ検出回路12」は、「予測値記憶回路17に保持されている信号に対応する階調レベル(S128)と現フィールドの入力画像信号に対応する階調レベル(S128)とが等しい場合」には、「現フィールドの入力画像信号に対応する階調レベル(S128)」を調整することなく、それをそのまま「OSパラメータ(S128)」とするものである。
そうすると、引用発明の「組合せ検出回路12」は、「予測値記憶回路17に保持されている到達階調レベル(S255)と、現フィールド(1フィールド目)の入力画像信号(S64)との組合せ」に応じて、「現フィールド(1フィールド目)の入力画像信号(S64)」を調整するか否かを決定しているということができる。
ここで、本願発明の「ピクチャフレーム」は、「ディスプレイ上に現在表示されているディスプレイの画素」の全てを指すと解される。そして、本願発明の「前記目標ピクチャフレームと前記現在のピクチャフレームとの前記比較」における「前記比較」は、「前記目標画素強度レベルを前記現在の画素強度レベルと比較すること」であるから、「前記目標ピクチャフレームと前記現在のピクチャフレームとの前記比較」は、「前記目標画素強度レベルを前記現在の画素強度レベルと比較すること」を「ディスプレイ上に現在表示されているディスプレイの画素」の全てについて行うことと解される。
したがって、前記イないしエを踏まえると、引用発明は、本願発明の「前記目標ピクチャフレームと前記現在のピクチャフレームとの前記比較に基づいて、前記目標ピクチャフレームに対する調整が行われるべきであると決定すること」と、「前記目標画素強度レベルと前記現在の画素強度レベルとの前記比較に基づいて、前記目標画素強度レベルに対する調整が行われるべきであると決定すること」である点で共通する構成を備えている。

カ 引用発明の「組合せ検出回路12」が「予測値記憶回路17に保持されている到達階調レベル(S255)と、現フィールド(1フィールド目)の入力画像信号(S64)との組合せを検出し、」「その組合せ(S255、S64)に応じたOSパラメータ(S0)を、OSパラメータテーブル18を参照して検出」することは、その「OSパラメータ(S0)」の出力先である「オーバーシュート電圧検出回路13」が「OSパラメータ(S0)に対応する階調電圧(V0)を検出し、極性反転回路14を介して液晶パネル15に供給」するものであること及び前記アないしオを踏まえると、本願発明の「前記調整が行われるべきであると決定することに応じて、前記ディスプレイの前記画素に対応する調整画素強度レベルを」「生成すること」に相当し、したがって、引用発明の「OSパラメータ(S0)」は、本願発明の「調整画素強度レベル」に相当する。

キ 引用発明の「OSパラメータ(S0)」は、「予測値記憶回路17に保持されている到達階調レベル(S255)」から「現フィールド(1フィールド目)の入力画像信号(S64)」を越える階調レベルに設定されているから、前記カを踏まえると、引用発明は、本願発明の「前記調整画素強度レベルは前記ディスプレイの前記画素を前記目標画素強度レベルを超えてオーバドライブする」に相当する構成を備えている。

ク 引用発明の「現フィールド(1フィールド目)」は、本願発明の「規定された期間」に相当し、引用発明の「液晶パネルが現フィールド(1フィールド目)で実際に到達する到達階調レベル(S134)」は、本願発明の「達成可能ピクチャフレーム」に含まれる「画素」に対応する画素強度レベルに相当する。
したがって、引用発明の「組合せ検出回路12が、液晶パネル15が現フィールド(1フィールド目)の直前のフィールドで実際に到達して予測値記憶回路17に保持されている到達階調レベル(S255)と、現フィールド(1フィールド目)の入力画像信号(S64)との組合せを検出し、」「その組合せ(S255、S64)を示す組合せ信号を予測値検出回路16に出力し、」「予測値検出回路16が、その組合せ(S255、S64)を示す組合せ信号に応じた、液晶パネルが現フィールド(1フィールド目)で実際に到達する到達階調レベル(S134)を、予測テーブル19を参照して検出」することと、本願発明の「前記調整ピクチャフレームに基づいて、規定された期間内に達成可能な達成可能ピクチャフレームを生成すること」とは、「規定された期間内に達成可能な達成可能画素強度レベルを生成すること」である点で共通する。

ケ 前記イ及びクを踏まえると、引用発明の「予測値記憶回路17が、到達階調レベル(S134)を保持」することと、本願発明の「前記達成可能ピクチャフレームを前記現在のピクチャフレームとして格納すること」とは、「達成可能画素強度レベルを現在の画素強度レベルとして格納すること」である点で共通する。

(2)一致点及び相違点
前記(1)の対比の結果をまとめると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

ア 一致点
「ディスプレイをオーバドライブする方法であって、
前記ディスプレイ上に現在表示されているディスプレイの画素を示す現在の画素強度レベルを受信することと、
前記ディスプレイの前記画素に対応する目標画素強度レベルを受信することと、
前記目標画素強度レベルを前記現在の画素強度レベルと比較することと、
前記目標画素強度レベルを前記現在の画素強度レベルとの前記比較に基づいて、前記目標画素強度レベルに対する調整が行われるべきであると決定することと、
前記調整が行われるべきであると決定することに応じて、前記ディスプレイの前記画素に対応する調整画素強度レベルを生成することであって、前記調整画素強度レベルは前記ディスプレイの前記画素を前記目標画素強度レベルを超えてオーバドライブする、生成することと、
規定された期間内に達成可能な達成可能画素強度レベルを生成することと、
前記達成可能画素強度レベルを前記現在の画素強度レベルとして格納することと、
を含む方法。」

イ 相違点
(ア)相違点1
現在の画素強度レベルを受信すること、目標画素強度レベルを受信すること、目標画素強度レベルを現在の画素強度レベルと比較すること、目標画素強度レベルに対する調整、調整画素強度レベルを生成すること、達成可能画素強度レベルを生成すること、及び達成可能画素強度レベルを現在の画素強度レベルとして格納することが、本願発明では、いずれも「現在の画素強度レベルを含む現在のピクチャフレーム」、「目標画素強度レベルを含む目標ピクチャフレーム」、「調整画素強度レベルを含む調整ピクチャフレーム」及び「達成可能ピクチャフレーム」に対して行われるのに対し、引用発明では「ある画素について」行われる点。

(イ)相違点2
本願発明では、「調整画素強度レベル」が「前記ディスプレイの前記画素を前記目標画素強度レベルを超えてオーバドライブすることにより達成される、前記目標画素強度レベルに近接する値を有する」のに対し、引用発明では、「OSパラメータ(S0)」(本願発明の「調整画素強度レベル」に相当する。)が「予測値記憶回路17に保持されている到達階調レベル(S255)」から「現フィールド(1フィールド目)の入力画像信号(S64)」を越える階調レベルに設定されていることで、本願発明の「前記ディスプレイの前記画素を前記目標画素強度レベルを超えてオーバドライブする」に相当する構成を備えているものの、そのこと「により達成される、前記目標画素強度レベルに近接する値を有する」に相当する構成を備えているかは不明である点。

(ウ)相違点3
本願発明では、「規定された期間内に達成可能な達成可能ピクチャフレームを」「前記調整ピクチャフレームに基づいて」「生成」するから、「達成可能ピクチャフレーム」に含まれる達成可能画素強度レベルは、「調整画素強度レベル」に基づいて生成されるのに対し、引用発明では、「予測値検出回路16が、その組合せ(S255、S64)を示す組合せ信号に応じた、液晶パネルが現フィールド(1フィールド目)で実際に到達する到達階調レベル(S134)を、予測テーブル19を参照して検出」するから、「到達階調レベル(S134)」(本願発明の「達成可能ピクチャフレーム」に含まれる達成可能画素強度レベルに相当する。)は、「予測値記憶回路17に保持されている到達階調レベル(S255)」及び「現フィールド(1フィールド目)の入力画像信号(S64)」(本願発明の「現在の画像強度レベル」及び「目標画素強度レベル」に相当する。)に基づいて生成される点。

5 相違点についての判断
(1)相違点1について
引用文献1には、「オーバーシュート電圧を検出するための入力画像信号Sの比較は、全ての画素のそれぞれに対する前垂直期間の入力画像信号Sと現垂直期間の入力画像信号Sとの間で行われる。1フレームの画像情報が複数のフィールドに分割されるインターレース駆動の場合でも、1フレーム前のその画素に対する入力画像信号Sや上下のラインの入力画像信号Sが補完信号として使用され、1垂直期間中に全ての画素に相当する信号が与えられる。そして、前フィールドと現フィールドのこれらの入力画像信号Sが比較される。」(【0024】)と記載されているから、引用発明では、「現フィールド(1フィールド目)の入力画像信号(S64)」は、「液晶表示装置の液晶パネル15」の全ての画素について与えられるものであり、「予測値記憶回路17に保持されている到達階調レベル(S255)と、現フィールド(1フィールド目)の入力画像信号(S64)との組合せ」の「検出」も、「液晶表示装置の液晶パネル15」の全ての画素について行われる。
そうすると、引用発明では、「その組合せ(S255、S64)に応じたOSパラメータ(S0)」の「検出」も、「その組合せ(S255、S64)を示す組合せ信号に応じた」「到達階調レベル(S134)」の「検出」も、「到達階調レベル(S134)」の「保持」も、「液晶表示装置の液晶パネル15」の全ての画素について行われることになる。
これは、本願発明の「ピクチャフレーム」が「ディスプレイ上に現在表示されているディスプレイの画素」の全てを指すと解されることを踏まえると(前記4(1)オ)、引用発明におけるこれらの「検出」又は「保持」が、本願発明でいう「ピクチャフレーム」に対して行われることにほかならない。
したがって、相違点1は、実質的な相違点ではない。

(2)相違点2について
引用発明は、「予測値記憶回路17に保持されている到達階調レベル(S255)」と「現フィールド(1フィールド目)の入力画像信号(S64)」との「組合せ(S255、S64)」について認定されたものであるが、「組合せ(S255、S64)」以外の組合せに適用できることは当然である。
そこで、例えば組合せ(S128、S96)を考えると、引用文献1の図6及び図7から、OSパラメータはS62であり、到達階調レベルはS97であることが読み取れる。すなわち、これらの図には、OSパラメータ(S62)が、予測値記憶回路17に保持されている到達階調レベル(S128)から現フィールド(1フィールド目)の入力画像信号(S96)を越える階調レベル(S62)に設定された結果、現フィールド(1フィールド目)の入力画像信号(S96)に近接する値である到達階調レベル(S97)を有するようになることが示されている。
これは、本願発明の「調整画素強度レベル」が「前記ディスプレイの前記画素を前記目標画素強度レベルを超えてオーバドライブすることにより達成される、前記目標画素強度レベルに近接する値を有する」ことに相当する。
したがって、相違点2は、実質的な相違点ではない。

(3)相違点3について
引用発明の「到達階調レベル(S134)」は、「予測値記憶回路17に保持されている到達階調レベル(S255)」にある画素を「OSパラメータ(S0)」で駆動したときに実際に到達すると予測される階調レベルであるから、もともとは「予測値記憶回路17に保持されている到達階調レベル(S255)」及び「OSパラメータ(S0)」という2つのパラメータによって決まるものである。
そうである以上、引用発明において、「到達階調レベル(S134)」(本願発明の「達成可能ピクチャフレーム」に含まれる達成可能画素強度レベルに相当する。)を、「予測値記憶回路17に保持されている到達階調レベル(S255)」及び「現フィールド(1フィールド目)の入力画像信号(S64)」に基づいて生成するのではなく、もともと「到達階調レベル(S134)」を決める2つのパラメータである「予測値記憶回路17に保持されている到達階調レベル(S255)」(同じく「現在の画素強度レベル」に相当する。)及び「OSパラメータ(S0)」(同じく「調整画素強度レベル」に相当する。)に基づいて生成するようにすることは、当業者にとって自明のことである。
その結果、相違点3に係る本願発明の構成が得られることは明らかである。

(4)本願発明が奏する効果について
前記2(2)のとおり、本願発明は、液晶ディスプレイ(LCD)の画素の応答時間がLCDのリフレッシュ期間を上回るほど長くなると、ユーザにとって望ましくない画面アーチファクトが表示されるので、画素の応答時間を短くする必要があるという課題を解決しようとするものである。したがって、本願発明は、画素の応答時間を短くすることができ、画質を向上させることができるという効果を奏するものと認められる。
これに対して、引用発明は、液晶応答の高速化という課題を解決するとともに、目標の階調に到達していない状態で次フィールドの駆動を行うと誤差が蓄積する結果、動画表示で残像現象による画像のボヤケが発生したり、動画像の輪郭に輝点が表示されたりするという課題を解決しようとするものである(引用文献【0009】ないし【0011】)。そして、オーバーシュート電圧をより適切に判定でき、液晶応答の不足や過剰が軽減されるので、動画表示における残像現象による画像のボヤケ発生や動画像の輪郭の輝点が防止され、高品位の動画表示が可能となるという効果を奏するものである(同【0122】)。
そうすると、引用発明が奏する効果は、画素の応答時間の短縮及びそれによる画質の向上という点で、本願発明が奏する効果と共通するものである。
したがって、本願発明の効果は、引用発明が奏する効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

6 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において種々の主張をするが、それらはいずれも、本件補正後の特許請求の範囲の記載を前提とするものである。
しかし、前記第2のとおり、本件補正は却下されたので、請求人の主張は、いずれも当を得ない。

7 むすび
以上に述べたとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶するべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-12-18 
結審通知日 2017-12-19 
審決日 2018-01-09 
出願番号 特願2015-10643(P2015-10643)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09G)
P 1 8・ 561- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西島 篤宏  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 小林 紀史
須原 宏光
発明の名称 オンチップフレームバッファを使用したオーバドライブによるLCD応答時間の改良  
代理人 高柳 司郎  
代理人 下山 治  
代理人 木村 秀二  
代理人 大塚 康徳  
代理人 大塚 康弘  
代理人 永川 行光  
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