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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 補正却下を取り消さない 原査定を取り消し、特許すべきものとする G09F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 補正却下を取り消さない 原査定を取り消し、特許すべきものとする G09F
管理番号 1340749
審判番号 不服2017-16543  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-07 
確定日 2018-06-12 
事件の表示 特願2015-239843「表示装置及び電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月16日出願公開、特開2016-106244、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成12年1月28日(優先権主張 平成11年1月28日(以下、「優先日」という。)、平成11年3月23日)に出願した特願2000-19944号の一部を、平成22年9月16日に新たな特許出願とした特願2010-208098号の一部を、平成25年10月18日に新たな特許出願とした特願2013-216898号の一部を、平成26年7月9日に新たな特許出願とした特願2014-141129号の一部を、平成27年12月9日に新たな特許出願としたものであって、
平成28年8月3日付けの拒絶理由通知に対して、平成28年9月16日付けで手続補正がなされ、平成29年2月13日付けの最後の拒絶理由通知に対して、平成29年3月21日付けで手続補正がなされたが、平成29年8月14日付けで、平成29年3月21日付け手続補正書でした補正の却下の決定がなされるとともに、同日付で拒絶査定(以下、「原査定」という)がなされ、平成29年8月22日に拒絶査定の謄本が送達され、これに対し、平成29年11月7日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成29年8月14日付けの補正の却下の決定及び原査定の概要
1 平成29年3月21日付けの補正の却下の決定の概要は以下のとおりである。
平成29年3月21日付けの補正は、限定的減縮を目的とするものであるが、当該補正後の本願請求項1に係る発明は引用文献2-4に基づいて、請求項2-4に係る発明は引用文献2-5に基づいて、請求項5に係る発明は引用文献2-4、6に基づいて、請求項6-8に係る発明は引用文献2-6に基づいて、請求項9-11に係る発明は引用文献2-7に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、独立特許要件を満たさないから、平成29年3月21日付けの補正は却下すべきものである。

引用文献等一覧
2.特開平10-333641号公報
3.特開昭56-133786号公報
4.特開平02-060088号公報
5.特開平09-197390号公報
6.特開平09-171192号公報
7.特開平07-272857号公報

2 原査定の概要は次のとおりである。
1.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1(明確性)について

・請求項10,11
請求項10が請求項9を引用する場合、「前記EL素子と前記第2の基板との間」に配置される「樹脂」と「パッシベーション膜」の相対的な位置関係が特定できず、請求項10及び請求項10を引用する請求項11の記載は不明りょうである。
よって、請求項10,11に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

●理由2(進歩性)について

・請求項1
・引用文献等2-4

・請求項2
・引用文献等2-5

・請求項3,4
・引用文献等2-5

・請求項5
・引用文献等2-4,6

・請求項6-8
・引用文献等2-6

・請求項9
・引用文献等2-7

・請求項10
・引用文献等2-7

・請求項11
・引用文献等2-7

引用文献等一覧
2.特開平10-333641号公報
3.特開昭56-133786号公報
4.特開平02-060088号公報
5.特開平09-197390号公報
6.特開平09-171192号公報
7.特開平07-272857号公報

第3 本願発明
本願の請求項1-11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明11」という。)は、平成29年11月7日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
第1の基板と、
第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間の層間絶縁膜と、
前記第1の基板と前記層間絶縁膜との間のTFTと、
前記層間絶縁膜と前記第2の基板との間のEL素子と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間の第1のシール材と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間の第2のシール材と、を有し、
前記第1のシール材は、前記EL素子を囲むように設けられており、
前記第2のシール材は、前記第1のシール材の外側に設けられており、
前記第2のシール材は、前記第1の基板と前記第2の基板との間の部分と、前記第1の基板と重ならず且つ前記第2の基板と重ならない部分と、を有することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
第1の基板と、
第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間の下地膜と、
前記下地膜と前記第2の基板との間の層間絶縁膜と、
前記下地膜と前記層間絶縁膜との間のTFTと、
前記層間絶縁膜と前記第2の基板との間のEL素子と、
前記下地膜と前記第2の基板との間の第1のシール材と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間の第2のシール材と、を有し、
前記第1のシール材は、前記EL素子を囲むように設けられており、
前記第2のシール材は、前記第1のシール材の外側に設けられており、
前記第2のシール材は、前記第1の基板と前記第2の基板との間の部分と、前記第1の基板と重ならず且つ前記第2の基板と重ならない部分と、を有することを特徴とする表示装置。
【請求項3】
第1の基板と、
第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間の下地膜と、
前記下地膜と前記第2の基板との間の層間絶縁膜と、
前記下地膜と前記層間絶縁膜との間のTFTと、
前記下地膜と前記層間絶縁膜との間の配線と、
前記層間絶縁膜と前記第2の基板との間のEL素子と、
前記下地膜と前記第2の基板との間の第1のシール材と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間の第2のシール材と、を有し、
前記第1のシール材は、前記EL素子を囲むように設けられており、
前記第2のシール材は、前記第1のシール材の外側に設けられており、
前記第2のシール材は、前記第1の基板と前記第2の基板との間の部分と、前記第1の基板と重ならず且つ前記第2の基板と重ならない部分と、を有し、
前記EL素子の陰極は、前記配線と電気的に接続されていることを特徴とする表示装置。
【請求項4】
第1の基板と、
第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間の下地膜と、
前記下地膜と前記第2の基板との間の層間絶縁膜と、
前記下地膜と前記層間絶縁膜との間のTFTと、
前記下地膜と前記層間絶縁膜との間の配線と、
前記層間絶縁膜と前記第2の基板との間のEL素子と、
前記下地膜と前記第2の基板との間の第1のシール材と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間の第2のシール材と、を有し、
前記第1のシール材は、前記EL素子を囲むように設けられており、
前記第2のシール材は、前記第1のシール材の外側に設けられており、
前記第2のシール材は、前記第1の基板と前記第2の基板との間の部分と、前記第1の基板と重ならず且つ前記第2の基板と重ならない部分と、を有し、
前記層間絶縁膜は、コンタクトホールを有し、
前記EL素子の陰極は、前記コンタクトホールを介して、前記配線と電気的に接続されていることを特徴とする表示装置。
【請求項5】
第1の基板と、
第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間の層間絶縁膜と、
前記第1の基板と前記層間絶縁膜との間のTFTと、
前記層間絶縁膜と前記第2の基板との間のEL素子と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間の第1のシール材と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間の第2のシール材と、を有し、
前記第1のシール材は、前記EL素子を囲むように設けられており、
前記第2のシール材は、前記第1のシール材の外側に設けられており、
前記第2のシール材は、前記第1の基板と前記第2の基板との間の部分と、前記第2の基板の側面の一部と接する部分と、を有することを特徴とする表示装置。
【請求項6】
第1の基板と、
第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間の下地膜と、
前記下地膜と前記第2の基板との間の層間絶縁膜と、
前記下地膜と前記層間絶縁膜との間のTFTと、
前記層間絶縁膜と前記第2の基板との間のEL素子と、
前記下地膜と前記第2の基板との間の第1のシール材と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間の第2のシール材と、を有し、
前記第1のシール材は、前記EL素子を囲むように設けられており、
前記第2のシール材は、前記第1のシール材の外側に設けられており、
前記第2のシール材は、前記第1の基板と前記第2の基板との間の部分と、前記第2の基板の側面の一部と接する部分と、を有することを特徴とする表示装置。
【請求項7】
第1の基板と、
第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間の下地膜と、
前記下地膜と前記第2の基板との間の層間絶縁膜と、
前記下地膜と前記層間絶縁膜との間のTFTと、
前記下地膜と前記層間絶縁膜との間の配線と、
前記層間絶縁膜と前記第2の基板との間のEL素子と、
前記下地膜と前記第2の基板との間の第1のシール材と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間の第2のシール材と、を有し、
前記第1のシール材は、前記EL素子を囲むように設けられており、
前記第2のシール材は、前記第1のシール材の外側に設けられており、
前記第2のシール材は、前記第1の基板と前記第2の基板との間の部分と、前記第2の基板の側面の一部と接する部分と、を有し、
前記EL素子の陰極は、前記配線と電気的に接続されていることを特徴とする表示装置。
【請求項8】
第1の基板と、
第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間の下地膜と、
前記下地膜と前記第2の基板との間の層間絶縁膜と、
前記下地膜と前記層間絶縁膜との間のTFTと、
前記下地膜と前記層間絶縁膜との間の配線と、
前記層間絶縁膜と前記第2の基板との間のEL素子と、
前記下地膜と前記第2の基板との間の第1のシール材と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間の第2のシール材と、を有し、
前記第1のシール材は、前記EL素子を囲むように設けられており、
前記第2のシール材は、前記第1のシール材の外側に設けられており、
前記第2のシール材は、前記第1の基板と前記第2の基板との間の部分と、前記第2の基板の側面の一部と接する部分と、を有し、
前記層間絶縁膜は、コンタクトホールを有し、
前記EL素子の陰極は、前記コンタクトホールを介して、前記配線と電気的に接続されていることを特徴とする表示装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項において、
前記EL素子と前記第2の基板との間の樹脂を有することを特徴とする表示装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項において、
前記EL素子と前記第2の基板との間のパッシベーション膜を有することを特徴とする表示装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の表示装置と、
操作スイッチ、音声入力部、受像部、又はバッテリと、
を有する電子機器。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開平10-333641号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。以下同様。)。
「【0038】駆動用トランジスタ12は、nチャネルのメモリTFTから構成される。・・・」

「【0042】以下、有機ELパネル1の構造について詳しく説明する。図2は、有機ELパネル1の1画素分の構成を平面的に示す図であり、図3は、図2のA-A線断面図である。これらの図に示すように、有機EL素子11、駆動用トランジスタ12及び選択用トランジスタ13をガラス基板14の上に形成することによって、有機ELパネル1を構成している。
【0043】具体的に説明すると、ガラス基板14の上にアルミニウムからなるゲートメタル膜で構成されるゲートラインGLと、ゲートラインGLと一体に形成された選択用トランジスタ13のゲート電極13aと、駆動用トランジスタ12のゲート電極12aとがパターン形成されている。ゲート電極GL、ゲート電極13a及びゲート電極12aの上には、陽極酸化膜14aが形成されている。さらに、ゲート電極12a上の陽極酸化膜14aの上には、窒化シリコンでなるゲート絶縁膜14bが形成されている。」

「【0045】ゲート電極12aの上側のゲート絶縁膜14a(当審注:14bの誤記)の上には、アモルファスシリコンでなる半導体層12dが形成されている。半導体層12dの中央にはブロッキング層12eが形成され、その両側にはオーミック層12fが形成されている。そして、基準電圧ラインSLと一体形成された駆動用トランジスタ12のソース電極12bが、オーミック層12fに積層して形成されている。一方、その反対側には、駆動用トランジスタ12のドレイン電極12cが、オーミック層13fに積層して形成されている。このようにして駆動用トランジスタ12が形成される。なお、基準電圧ラインSLは接地されており、0Vの電圧が印加されている。
【0046】上記のようにして形成された駆動用トランジスタ12及び選択用トランジスタ13の上には、駆動用トランジスタ12のドレイン電極12cの端部に形成されたコンタクトホール15aを除いて、層間絶縁膜14cが形成されている。層間絶縁膜14cの上には、MgIn(Magnesium Indium)からなる可視光反射性のカソード電極11aがパターン形成されている。カソード電極11aは、コンタクトホール15aを介して駆動用トランジスタ12のドレイン電極12cと接続されている。カソード電極11aの上には、R、G、Bのそれぞれの色に発光する複数の発光層を有する有機EL層11bが、マトリクス状に所定の配置で形成されている。そして、有機EL層11bの上に、各ゲートラインGLに対応してそれぞれマトリクスの行方向の画素領域に亘って延在し、列方向の画素領域に亘って互いに離間し、かつ同じ幅に設けられたITO(Indium-Tin Oxide)からなる複数のアノード電極11cが形成されている。このようにして、有機EL素子11が形成される。また、画素毎に基準電圧ラインSLとゲート絶縁膜14bとゲート電極12aにより構成されたキャパシタCpが設けられている。」

図3


上記記載より、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(括弧内は、認定に用いた引用文献2の記載箇所を示す。)。
「有機EL素子11、駆動用トランジスタ12をガラス基板14の上に形成することによって構成された有機ELパネル1であって(【0042】)、
駆動用トランジスタ12は、メモリTFTから構成されるものであり(【0038】)、ガラス基板14の上に駆動用トランジスタ12のゲート電極12aが形成され、ゲート電極12aの上には、ゲート絶縁膜14bが形成され(【0043】)、ゲート絶縁膜14bの上には、アモルファスシリコンでなる半導体層12dが形成され、半導体層12dの両側にはオーミック層12fが形成され、ソース電極12bが、オーミック層12fに積層して形成され、その反対側には、ドレイン電極12cが、オーミック層13fに積層して形成され(【0045】)、
駆動用トランジスタ12の上には、層間絶縁膜14cが形成され、
層間絶縁膜14cの上には、カソード電極11aが形成され、カソード電極11aの上には、有機EL層11bが形成され、有機EL層11bの上に、アノード電極11cが形成され、このようにして、有機EL素子11が形成される(【0046】)、
有機ELパネル1。」

2 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開昭56-133786号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「次に、上記構成に係るエレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法について説明する。」(第2頁左下欄第11-12行)

「したがって、表示用基板1、対向基板6および封着部材8により気密容器を形成することができる。この構成により、EL層は真空中、あるいは絶縁性の気体により外部から湿気が入るのを防止するため、長寿命となる。」(第2頁右下欄第6-10行)

3 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開平02-060088号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「薄膜EL素子が形成されたガラス基板と、EL構成部を大気中の湿気から保護するガラス板との縁辺部を接着剤でシールし、前記接着シール部を弗素系樹脂で被い、前記薄膜EL素子への湿気の侵入を防ぐことを特徴とする薄膜ELパネル。」(第1頁左下欄第5-10行)

第1図


4 引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(特開平09-197390号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0013】まず図1(A)に示すようにガラス基板101上に下地膜として酸化珪素膜102を3000Åの厚さにプラズマCVD法で成膜する。」

5 引用文献6について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6(特開平09-171192号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0012】
【発明の実施の形態】上記の構成を利用することによって得られるアクティブマトリクス型液晶表示装置の具体的な構成を図1に示す。図1において、TFT基板上には、マトリクス状に配置された複数の画素TFTと、画素TFTを駆動する駆動回路薄膜トランジスタが形成されている。対向基板とTFT基板間には、封止材により液晶材が封止され、画素TFTと共に、駆動回路TFTは液晶材内部に存在しているため、駆動回路TFTを保護することができる。
【0013】また、本発明では、対向基板、TFT基板を整形するために、これらの基板を切断した後に、分断端面が外部と接触しないように、ショートリング分断端面に非導電性または弱導電性の樹脂を塗布している。これにより、画素TFTに接続されているバスラインを外部から遮蔽することができるので、画素TFTが静電破壊されるのを防止することができる。」

6 引用文献7について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献7(特開平07-272857号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0014】(第二実施例)図3は、本発明の第二実施例に係わるEL素子の断面図である。この薄膜EL素子本体は、第一実施例と同様の方法で構成されている。このEL素子本体上に樹脂等の封入材9を塗布し、その上にガラス板の保護層8を配置した。この封入材9には熱硬化性の樹脂が適している。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「ガラス基板14」は、本願発明1の「第1の基板」に相当する。

イ 引用発明は、「ガラス基板14の上に駆動用トランジスタ12のゲート電極12aが形成され、ゲート電極12aの上には、ゲート絶縁膜14bが形成され、ゲート絶縁膜14bの上には、アモルファスシリコンでなる半導体層12dが形成され、半導体層12dの両側にはオーミック層12fが形成され、ソース電極12bが、オーミック層12fに積層して形成され、その反対側には、ドレイン電極12cが、オーミック層13fに積層して形成され」ているので、「駆動用トランジスタ12」は、「ガラス基板14」の上に形成されている。
そして、引用発明は、「駆動用トランジスタ12の上には、層間絶縁膜14cが形成され」ているので、「層間絶縁膜14c」は、「駆動用トランジスタ12」の上に形成されている。
したがって、引用発明の「層間絶縁膜14c」は、「ガラス基板14」の上に形成されている。
そうすると、引用発明の「ガラス基板14」の上に形成されている「層間絶縁膜14c」と、本願発明1の「前記第1の基板と前記第2の基板との間の層間絶縁膜」とは、「前記第1の基板の上の層間絶縁膜」である点で共通する。

ウ 引用発明の「駆動用トランジスタ12は、メモリTFTから構成される」ので、引用発明の「駆動用トランジスタ12」は、本願発明1の「TFT」に相当する。
上記イで述べたように、引用発明の「駆動用トランジスタ12」は、「ガラス基板14」の上に形成され、「駆動用トランジスタ12の上には、層間絶縁膜14cが形成され」ているので、引用発明の「駆動用トランジスタ12」は、「ガラス基板14」と「層間絶縁膜14c」の間に形成されている。
したがって、引用発明の「ガラス基板14」と「層間絶縁膜14c」の間に形成されている「駆動用トランジスタ12」は、本願発明1の「前記第1の基板と前記層間絶縁膜との間のTFT」に相当する。

エ 引用発明は、「層間絶縁膜14cの上には、カソード電極11aが形成され、カソード電極11aの上には、有機EL層11bが形成され、有機EL層11bの上に、アノード電極11cが形成され、このようにして、有機EL素子11が形成される」ので、引用発明の「有機EL素子11」は、「層間絶縁膜14c」の上に形成されている。
したがって、引用発明の「層間絶縁膜14c」の上に形成されている「有機EL素子11」と、本願発明1の「前記層間絶縁膜と前記第2の基板との間のEL素子」とは、「前記層間絶縁膜の上のEL素子」である点で共通する。

オ 引用発明の「有機ELパネル1」は、本願発明1の「表示装置」に相当する。

すると、本願発明1と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「第1の基板と、
前記第1の基板の上の層間絶縁膜と、
前記第1の基板と前記層間絶縁膜との間のTFTと、
前記層間絶縁膜の上のEL素子と、
を有する表示装置。」

(相違点1)
本願発明1は、「第2の基板」を有するのに対して、引用発明は、そのような特定がない点。
(相違点2)
層間絶縁膜が、本願発明1は、「前記第1の基板と前記第2の基板との間」であるのに対して、引用発明は、「ガラス基板14」に対向する基板を有していないため、そのような特定がない点。
(相違点3)
EL素子が、本願発明1は、「前記層間絶縁膜と前記第2の基板との間」であるのに対して、引用発明は、「ガラス基板14」に対向する基板を有していないため、そのような特定がない点。
(相違点4)
本願発明1は、「前記第1の基板と前記第2の基板との間の第1のシール材と、」「を有し、」「前記第1のシール材は、前記EL素子を囲むように設けられて」いるのに対して、引用発明は、そのような特定がない点。
(相違点5)
本願発明1は、「前記第1の基板と前記第2の基板との間の第2のシール材と、を有し、」「前記第2のシール材は、前記第1のシール材の外側に設けられており、前記第2のシール材は、前記第1の基板と前記第2の基板との間の部分と、前記第1の基板と重ならず且つ前記第2の基板と重ならない部分と、を有する」のに対して、引用発明は、そのような特定がない点。

(2)判断
事案に鑑み、まず、上記相違点5について検討する。
引用文献4には、ガラス基板と、ガラス板との縁辺部を接着剤でシールし、接着シール部を弗素系樹脂で被い、薄膜EL素子への湿気の侵入を防ぐ技術が記載されている(上記「第4 3」)。しかし、引用発明には、ガラス基板に対向する基板を有することも、ガラス基板とそれに対向する基板との間にシール材を有することも示されていないため、引用発明に、引用文献4に記載された技術を適用する動機付けがない。
また、引用文献4には、弗素系樹脂が、ガラス基板とガラス板との間の部分を有することは記載されていないのであるから、引用発明に、引用文献4に記載された、接着シール部を弗素系樹脂で被い、薄膜EL素子への湿気の侵入を防ぐ技術を適用しても、弗素系樹脂が、ガラス基板とガラス板との間の部分を有する構成を得ることはできない。

また、引用文献3には、表示用基板1、対向基板6および封着部材8によりエレクトロルミネッセンス表示装置の気密容器を形成することは記載されているが(上記「第4 2」)、封着部材8の外側にシール材を設けることは記載されていない。

さらに、引用文献5-7には、第2のシール材を、第1のシール材の外側に設け、第2のシール材は、第1の基板と第2の基板との間の部分とを有することは記載されていない。

したがって、上記相違点5に係る本願発明1の構成は、引用発明及び引用文献3-7に記載された技術に基づいて、当業者が容易に想到し得えたことであるとはいえない。

よって、本願発明1は、上記相違点1-4について検討するまでもなく、引用発明及び引用文献3-7に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2 本願発明2-4について
本願発明2-4も、上記相違点5に係る本願発明1の「前記第1の基板と前記第2の基板との間の第2のシール材と、を有し、」「前記第2のシール材は、前記第1のシール材の外側に設けられており、前記第2のシール材は、前記第1の基板と前記第2の基板との間の部分と、前記第1の基板と重ならず且つ前記第2の基板と重ならない部分と、を有する」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明及び引用文献3-7に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

3 本願発明5について
(1)対比
本願発明5と引用発明を対比すると、上記「1(1)対比」の「ア」-「オ」の点は同じである。

すると、本願発明5と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「第1の基板と、
前記第1の基板の上の層間絶縁膜と、
前記第1の基板と前記層間絶縁膜との間のTFTと、
前記層間絶縁膜の上のEL素子と、
を有する表示装置。」

(相違点1)
本願発明5は、「第2の基板」を有するのに対して、引用発明は、そのような特定がない点。
(相違点2)
層間絶縁膜が、本願発明5は、「前記第1の基板と前記第2の基板との間」であるのに対して、引用発明は、「ガラス基板14」に対向する基板を有していないため、そのような特定がない点。
(相違点3)
EL素子が、本願発明5は、「前記層間絶縁膜と前記第2の基板との間」であるのに対して、引用発明は、「ガラス基板14」に対向する基板を有していないため、そのような特定がない点。
(相違点4)
本願発明5は、「前記第1の基板と前記第2の基板との間の第1のシール材と、」「を有し、」「前記第1のシール材は、前記EL素子を囲むように設けられて」いるのに対して、引用発明は、そのような特定がない点。
(相違点5’)
本願発明5は、「前記第1の基板と前記第2の基板との間の第2のシール材と、を有し、」「前記第2のシール材は、前記第1のシール材の外側に設けられており、前記第2のシール材は、前記第1の基板と前記第2の基板との間の部分と、前記第2の基板の側面の一部と接する部分と、を有する」のに対して、引用発明は、そのような特定がない点。

(2)判断
事案に鑑み、まず、上記相違点5’について検討する。
引用文献4には、ガラス基板と、ガラス板との縁辺部を接着剤でシールし、接着シール部を弗素系樹脂で被い、薄膜EL素子への湿気の侵入を防ぐ技術が記載されている(上記「第4 3」)。しかし、引用発明には、ガラス基板に対向する基板を有することも、ガラス基板とそれに対向する基板との間にシール材を有することも示されていないため、引用発明に、引用文献4に記載された技術を適用する動機付けがない。
また、引用文献4には、弗素系樹脂が、ガラス基板とガラス板との間の部分を有することは記載されていないのであるから、引用発明に、引用文献4に記載された、接着シール部を弗素系樹脂で被い、薄膜EL素子への湿気の侵入を防ぐ技術を適用しても、弗素系樹脂が、ガラス基板とガラス板との間の部分を有する構成を得ることはできない。

また、引用文献3には、表示用基板1、対向基板6および封着部材8によりエレクトロルミネッセンス表示装置の気密容器を形成することは記載されているが(上記「第4 2」)、封着部材8の外側にシール材を設けることは記載されていない。

さらに、引用文献5-7には、第2のシール材を、第1のシール材の外側に設け、第2のシール材は、第1の基板と第2の基板との間の部分とを有することは記載されていない。

したがって、上記相違点5’に係る本願発明5の構成は、引用発明及び引用文献3-7に記載された技術に基づいて、当業者が容易に想到し得えたことであるとはいえない。

よって、本願発明5は、上記相違点1-4について検討するまでもなく、引用発明及び引用文献3-7に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

4 本願発明6-8について
本願発明6-8も、上記相違点5’に係る本願発明5の「前記第1の基板と前記第2の基板との間の第2のシール材と、を有し、」「前記第2のシール材は、前記第1のシール材の外側に設けられており、前記第2のシール材は、前記第1の基板と前記第2の基板との間の部分と、前記第2の基板の側面の一部と接する部分と、を有する」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明5と同じ理由により、引用発明及び引用文献3-7に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

5 本願発明9-11について
本願発明9-11は、本願発明1-8を直接又は間接的に引用する発明であり、上記相違点5に係る本願発明1の構成又は上記相違点5’に係る本願発明5の構成と、同一の構成を備えるものであるから、本願発明1又は本願発明5と同じ理由により、引用発明及び引用文献3-7に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第6 原査定について
1 理由1(特許法第36条第6項第2号)について
審判請求時の補正により、請求項10の「請求項1乃至請求項9のいずれか一項において」という記載は、「請求項1乃至請求項8のいずれか一項において」に補正されており、原査定の理由1を維持することはできない。

2 理由2(特許法第29条第2項)について
審判請求時の補正により、本願発明1-11は、「前記第1の基板と前記第2の基板との間の第2のシール材と、を有し、」「前記第2のシール材は、前記第1のシール材の外側に設けられており、前記第2のシール材は、前記第1の基板と前記第2の基板との間の部分と、」「を有する」という事項を有するものとなっており、引用発明及び引用文献3-7に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。したがって、原査定の理由2を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-05-28 
出願番号 特願2015-239843(P2015-239843)
審決分類 P 1 8・ 121- WYB (G09F)
P 1 8・ 537- WYB (G09F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 村川 雄一  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 中塚 直樹
須原 宏光
発明の名称 表示装置及び電子機器  

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