• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01B
管理番号 1340794
審判番号 不服2017-12644  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-25 
確定日 2018-06-19 
事件の表示 特願2014-524437「ワークピースを検査するための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月14日国際公開、WO2013/021157、平成26年10月 9日国内公表、特表2014-527170、請求項の数(24)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年8月9日(パリ条約による優先権主張2011年8月9日、英国、2011年10月24日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成28年5月9日付けで拒絶理由が通知され、平成28年11月17日付けで手続補正がなされ、平成29年4月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成29年8月25日付けで拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年4月20日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。
「1.この出願の請求項1-24に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記1-6の刊行物に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2004-138449号公報
2.特表2000-511827号公報
3.特開2008-249352号公報
4.特開平05-272903号公報
5.特開2004-028653号公報(周知技術を示す文献)
6.特開2011-021962号公報(周知技術を示す文献)」

第3 本願発明
本願の請求項1-24に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明24」という。)は、平成29年8月25日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-24に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1及び本願発明5は、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
測定装置での測定方法であって、
測定しようとする一連の公称上同一のワークピースのうちの1つである基準ワークピースの形態であるマスター加工品を提供するステップであって、前記マスター加工品が前記測定装置の外部のソースから取得された既知の寸法を有するステップと、
前記マスター加工品の複数の点の座標を測定することにより、前記マスター加工品の複数の寸法値を2つ以上の温度で前記装置で測定し、各温度における前記マスター加工品の2つ以上の対応する測定された寸法値のセットを生成するステップと、
前記マスター加工品が測定された前記温度を測定するステップと、
前記マスター加工品の前記複数の測定された寸法値を前記マスター加工品の対応する前記既知の寸法に関連付ける1つまたは複数のエラーマップまたはルックアップテーブルまたは関数を生成するステップであって、前記エラーマップ、ルックアップテーブルまたは関数は、またはそのそれぞれは、前記マスター加工品が測定された前記各温度に依存するステップと
を含むことを特徴とする方法。」

「【請求項5】
測定装置での測定方法であって、
前記測定装置の外部のソースから取得された既知の寸法を有する基準ワークピースの形態であるマスター加工品を提供するステップと、
前記マスター加工品の複数の点の座標を測定することにより、前記基準ワークピースの複数の寸法値を第1の温度で前記装置で測定し、前記第1の温度における前記基準ワークピースの結果的に得られた測定された寸法値の第1のセットを生成するステップと、
前記第1の温度における前記基準ワークピースの前記複数の測定された寸法値を前記基準ワークピースの対応する前記既知の寸法に関連付ける少なくとも1つのエラーマップまたはルックアップテーブルまたは関数を生成するステップと、
測定されたワークピース寸法値を得るために製造ワークピースを前記装置で測定し、前記ワークピース寸法値が得られた前記温度を測定するステップと、
前記ワークピース寸法値を、前記エラーマップ、ルックアップテーブルまたは関数から導出された補正値で補正するステップと
を含み、
前記補正値は前記ワークピース寸法値が得られた温度に基づいて判断されることを特徴とする方法。」

本願発明2-4は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明6-22は、本願発明1又は5を減縮した発明である。
本願発明23は、本願発明1-22に記載の方法を実施するように構成された「測定装置」の発明である。
本願発明24は、本願発明1-22に記載の方法を実施させるように構成された「測定装置用のソフトウェアプログラム」の発明である。

第4 引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2004-138449号公報)には、図面とともに、次の技術が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像計測方法及び装置に係り、特に、ワークのアライメントマーク等を画像入力し、ワークの長寸法を計測する際に用いるのに好適な、ワーク及び計測装置の熱膨張や熱収縮による計測値への影響を軽減することが可能な画像計測方法及び装置に関する。」

「【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ワークに付されたマークを画像入力し、ワークの長寸法を計測する際に、予め求めておいたワークと計測装置の複合的な熱膨張係数と、マーク座標登録時と計測時の雰囲気温度差から長寸法の計測値を補正し、雰囲気温度変動に伴うワークと計測装置の熱膨張・熱収縮による計測値への影響を軽減するようにして、前記課題を解決したものである。」

「【0016】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0017】
本実施形態は、図4(全体図)及び図5(ブロック図)に示す如く、ワーク10、20の画像を入力するためのカメラ14を含む画像入力部30と、雰囲気温度計測部32と、前記画像入力部30から入力される画像を処理する画像処理部42、該画像処理部42の出力により長寸法を算出する長寸法算出部44及び本発明による温度補正を行なうための温度補正処理部46を含む処理部40と、該処理部40による処理結果を表示するための出力部50と、各構成機器を制御するための制御部52とを含んで構成されている。
【0018】
測定に際しては、図6に手順を示す如く、基準ワークの材質が変わった場合は、まずステップ100で、予め雰囲気温度を変えて基準ワーク10のアライメントマーク12の座標を計測し、図3(A)に示したような雰囲気温度の変動に伴い長寸法が変動するデータ38を採取しておく。そして、該データ38を基に、ワークと計測装置の複合的な熱膨張係数αを求めておく。
【0019】
次いで、基準ワークのアライメントマークの位置が変わった場合は、ステップ110で、画像入力部30にて長寸法が既知の基準ワーク10のアライメントマーク12を画像入力し、画像処理部42にて画像上の座標を計測・登録しておく。同時に雰囲気温度計測部32で雰囲気温度t0を計測する。
【0020】
なお、基準ワークの材質及びアライメントマークの位置が変わらない場合は、ステップ100と110は1度行なえば良い。
【0021】
ステップ110終了後、又は、基準ワークの材質及びアライメントマークの位置が変わらない場合は、ステップ120で、画像入力部30にて基準ワークと同型で長寸法Lxが未知の計測ワーク20のアライメントマーク22を画像入力し、画像処理部42にて画像上の座標を計測する。同時に雰囲気温度計測部32で雰囲気温度tmを計測する。
【0022】
次いでステップ130で、長寸法算出部44にて、ステップ110、120で計測した基準ワーク10と計測ワーク20のアライメントマーク座標の差と基準ワークの長寸法L0から、計測ワーク20の長寸法Lxを求める。
【0023】
次いでステップ140で、温度補正処理部46で、ステップ100で求めた熱膨張係数αとステップ110、120で計測した雰囲気温度差△t(=tm-t0)から長寸法補正量αΔtを求め、ステップ130で算出した長寸法Lxを補正する。
【0024】
次いでステップ150で、補正後の計測結果を出力部50に出力する。
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、測定時の雰囲気温度が変動しても、温度補正を行なうため、計測値は変動せず、ワーク及び計測装置の熱膨張や熱収縮による計測値の影響を軽減できる。」

したがって、上記引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「ワーク10、20の画像を入力するためのカメラ14を含む画像入力部30と、雰囲気温度計測部32と、前記画像入力部30から入力される画像を処理する画像処理部42、該画像処理部42の出力により長寸法を算出する長寸法算出部44及び温度補正を行なうための温度補正処理部46を含む処理部40と、該処理部40による処理結果を表示するための出力部50と、各構成機器を制御するための制御部52とを含んで構成され(段落【0017】より。以下同様。)、予め雰囲気温度を変えて基準ワーク10のアライメントマーク12の座標を計測し、雰囲気温度の変動に伴い長寸法が変動するデータ38を採取しておき、そして、該データ38を基に、ワークと計測装置の複合的な熱膨張係数αを求めておき(【0018】)、
次いで、画像入力部30にて長寸法が既知の基準ワーク10のアライメントマーク12を画像入力し、画像処理部42にて画像上の座標を計測・登録しておき、同時に雰囲気温度計測部32で雰囲気温度t0を計測し(【0019】)、
画像入力部30にて基準ワークと同型で長寸法Lxが未知の計測ワーク20のアライメントマーク22を画像入力し、画像処理部42にて画像上の座標を計測し、同時に雰囲気温度計測部32で雰囲気温度tmを計測し(【0021】)、
次いで、長寸法算出部44にて、計測した基準ワーク10と計測ワーク20のアライメントマーク座標の差と基準ワークの長寸法L0から、計測ワーク20の長寸法Lxを求め(【0022】)、
次いで温度補正処理部46で、熱膨張係数αと、計測した雰囲気温度差△t(=tm-t0)から長寸法補正量αΔtを求め、算出した長寸法Lxを補正する(【0023】)、
ワーク及び計測装置の熱膨張や熱収縮による計測値への影響を軽減することが可能な画像計測方法及び装置(【0001】)。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献2(特表2000-511827号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
ア 「技術分野
本発明は、機械の制御に関し、より特定的には、工作機械の真の位置の三次元レーザ測定を使用して、機械の精度および制御を高める方法に関する。」(第9頁第6-8行)

イ 「この「オートスケール(“autoscale”)」特徴は実際に、部品の工学的設計仕様から導出されたNC媒体を、機械加工中に生じる部品に対する物理的な変化に適用するようにする。ここで物理的な変化とは、工場の温度の、設計標準の20℃(68°F)からの変化によって生じる部品のサイズの変化等を含む。たとえば、本発明では、部品の特徴(形態)に対する位置のデジタルデータセット定義は、その固有の熱膨張係数による部品の膨張または収縮の影響を反映するよう調整される。「オートスケール」に関しては、本発明では、計算で得たスケールファクタが工場の温度の変化から予測されるサイズの変化と一致するかどうかを平行に判定する。本発明では工場の温度を監視し(ただし、部品の温度もしくは機械の温度、またはそれら3つの温度のいかなる組合せを監視することも可能である)、温度の変化が起こると、(たとえばユーザによって規定された警報設定点における2°または5°の変化等の)適切な間隔で尺度をつくりなおす。「オートスケール」は、連続的に尺度をつくりなおすのではなく、一括のまたは間隔をおいた調整を行なう。これは、要求される処理の量を減じる。」(第18頁第14-28行)

ウ 「オートスケールは、写真測量法、経緯儀、およびレーザトラッカ等の産業的な光学的検査システムに適応が可能な、熱補償技術である。オートスケールでは、実際の部品の基準または形態の位置を測定し、部品が実際にどの程度その設計基準の状態から膨張(または収縮)したかを判定し、その後、後続の位置に関する動作に対してサイズ変動の補償係数(尺度)を適用する。このオートスケール技術は、部品の温度の測定値に依存するのではなく、実際の部品のサイズに依存する。オートスケールファクタは、部品の基準サイズに対する「実際の」サイズの(小数で表わされる)割合である。このスケールファクタは、部品の測定された幾何学をその基準幾何学と比較することに基づいた、実際の部品の「ベストフィット(“best fit”)」を示す。実際のワークピースは、多数の要因に基づいて非線形性の変化を示す。本発明では、このスケールファクタを個々の温度測定値および部品の成長モデルと突き合わせて、その差を最小にしかつ予期できなかった挙動を検出する。本発明では、オートスケールと組合せて部品の位置計算を行なう。」(第39頁第12-25行)

したがって、上記引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「オートスケールでは、実際の部品の基準または形態の位置を測定し、部品が実際にどの程度その設計基準の状態から膨張(または収縮)したかを判定し、その後、後続の位置に関する動作に対してサイズ変動の補償係数(尺度)を適用する(上記「ウ」より。)が、オートスケールは、温度の変化が起こると、適切な間隔で尺度をつくりなおして、間隔をおいた調整を行ない、要求される処理の量を減じる(上記「イ」より。)。」

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2008-249352号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、被測定物の寸法を測定する寸法測定装置及び寸法測定方法に関するものである。」

「【0008】
図1及び図2を参照して、本発明の実施の形態の寸法測定装置1について説明する。図1は寸法測定装置1の平面図であり、図2は図1を模式的に示した模式図である。
【0009】
寸法測定装置1は、ワーク(被測定物)の寸法を測定すると共に、ワークの寸法精度を評価する装置である。
【0010】
本実施の形態におけるワークは、ベーンポンプにおけるベーンを保持するロータ2a、及びロータ2aが収装されるカムリング2bである。以下では、ロータ2aとカムリング2bの双方を総称する場合にはワーク2と記す。
【0011】
寸法測定装置1は、ワーク2を搬送するコンベア5(搬送手段)と、ワーク2の寸法及び温度を測定する測定部6(6a,6b)と、寸法精度によって仕分けされたワーク2を収容する収容部7とを備える。」

「【0021】
コンベア5によって搬送されたロータ2a及びカムリング2bの測定を行う測定部6a及び測定部6bは、ワーク2の温度を測定する温度測定部14(温度測定手段)と、ワーク2の寸法を測定する寸法測定部15(寸法測定手段)とを備える。また、測定部6aには、ロータ2aの寸法精度を評価する際に基準となるロータマスタ16a(基準材)が配置され、測定部6bには、カムリング2bの寸法精度を評価する際に基準となるカムリングマスタ16b(基準材)が配置されている。以下では、ロータマスタ16a及びカムリングマスタ16bを総称する場合、マスタ16と記す。なお、温度測定部14、寸法測定部15、及びマスタ16は、全てならし領域11内に配置されている。
【0022】
温度測定部14では、熱電対等の接触式の温度計を用いてワーク2の温度測定が行われる。
【0023】
寸法測定部15では、測定部位が全てのワーク2において同じとなるように位置決めされた状態で、ワーク2の寸法測定が行われる。本実施の形態では、ロータ2a及びカムリング2bの厚さが測定される。ワーク2の寸法の測定方法については後述する。
【0024】
マスタ16についても、温度と寸法(厚さ)が測定され、その測定された温度と寸法がワーク2の寸法精度を評価する際の基準温度、基準寸法となる。マスタ16は、ワーク2の機種が変更された際には、その機種に対応するマスタに変更されると共に、変更されたマスタの基準温度と基準寸法が測定される。また、同じ機種のワーク2を連続して計測する場合には、所定条件を満たした場合に、マスタ16の基準温度と基準寸法の再測定が行われる。この所定条件としては、前回の測定から所定時間経過した場合や、測定されたワーク2の温度とマスタ16の基準温度との温度差が所定以上となった場合等である。」

したがって、上記引用文献3には、「ロータ2aとカムリング2bの双方」を「ワーク2」と「総称」し(段落【0010】参照。)、「ロータマスタ16a及びカムリングマスタ16b」を「マスタ16」と総称する場合(段落【0021】参照。)に、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「被測定物の寸法を測定する寸法測定装置(段落【0001】より。以下、同様。)であって、ワーク2を搬送するコンベア5(搬送手段)と、ワーク2の寸法及び温度を測定する測定部6とを備え(【0011】)、
ワーク2の測定を行う測定部6は、ワーク2の温度を測定する温度測定部14(温度測定手段)と、ワーク2の寸法を測定する寸法測定部15(寸法測定手段)とを備え、また、測定部6には、ワーク2の寸法精度を評価する際に基準となるマスタ16(基準材)が配置され(【0021】)、
温度測定部14では、ワーク2の温度測定が行われ(【0022】)、
寸法測定部15では、ワーク2の寸法測定が行われ(【0023】)、
マスタ16についても、温度と寸法(厚さ)が測定され、その測定された温度と寸法がワーク2の寸法精度を評価する際の基準温度、基準寸法となり、所定条件を満たした場合に、マスタ16の基準温度と基準寸法の再測定が行われ、この所定条件としては、測定されたワーク2の温度とマスタ16の基準温度との温度差が所定以上となった場合である(【0024】)、
寸法測定装置(【0001】)。」

4.引用文献4
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開平05-272903号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は工作機械での測定方法に関するものである。本発明はその種の測定に使用するアーティファクト(artefact)にも関するものである。」

「【0019】本発明によれば、新規に加工したワークピース14Aをプローブ20で検査した直後にコア4をその軸2Aのまわりにて回転させて割出して、アーティファクト26をワークピース14Aが以前に占めていた位置にもたらす。このアーティファクト26は以前に製造済みのものであり、しかも追跡可能な標準規格(例えば国定の標準規格局の適当な標準規格)に対して較正済みであるため、その寸法は正確にわかっている。ワークピース14Aの個所にアーティファクト26をもたらして、プローブ20を用いて同じ測定サイクルを繰返す。この例のアーティファクト26はワークピース14Aの公称寸法および形状に係わる正確なレプリカである。アーティファクト26でワークピース14Aに対して行ったと同じ測定を全て行って、それにて得られた結果を、例えば工作機械のコンピュータ数値制御系で互いに直接比較することにより差を求めて、ワークピース14Aが公差内か、公差から外れているかを決定することができる。公差から外れている場合には、そのワークピースを除去するか、または制御系によってさらに加工するような修正手段を講じることができる。名目上、同一の一連のワークピースを機械加工する場合には、不正確性(誤差)がワークピースを廃棄しなければならない程に大きくなる前に、制御系によってこれらの誤差を検出できるようにし、この情報を用いて順次ワークピースの加工を修正することもできる。
【0020】なお、次の2つの重要なことに留意すべきである。先ず、アーティファクト26はワークピース14Aを加工する時の加工サイクルを通してコア4上のカセット10に取付けたままとする。このために、アーティファクトはできるだけワークピース14Aと同じ温度環境に置くようにする。実際上(通常行われるように)ワークピース14Aに加工サイクル中冷却剤を浴びせる場合で、このような冷却剤の浴びせが同時にアーティファクト26に悪影響を及ぼさない場合には、アーティファクト26を真直ぐな位置に割出した後に、このアーティファクト26を測定するサイクルに特殊な冷却剤を浴びせる工程を含めることができる。アーティファクトはワークピースと同じ環境に置かれるため、これらはほぼ同じ温度となり、同じように熱膨張する。このためにワークピース14Aはそのような手段を講じない場合よりもアーティファクトとより一層正確に比較することができる。」

したがって、上記引用文献4には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「工作機械での測定方法(段落【0001】より。以下同様。)であって、アーティファクト26でワークピース14Aに対して行ったと同じ測定を全て行って、それにて得られた結果を、互いに直接比較することにより差を求めて、ワークピース14Aが公差内か、公差から外れているかを決定するが、アーティファクト26はワークピース14Aの公称寸法および形状に係わる正確なレプリカであり、このアーティファクト26は以前に製造済みのものであり、しかも追跡可能な標準規格(例えば国定の標準規格局の適当な標準規格)に対して較正済みであるため、その寸法は正確にわかっている(【0019】)、測定方法(【0001】)。」

5.引用文献5
原査定の拒絶の理由において、周知技術を示す文献として提示された引用文献5(特開2004-028653号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車エンジンのシリンダブロックに設けられたシリンダボアの内径寸法を計測する内径計測装置に関する。」

「【0010】
すなわち、この内径計測装置によって、アルミ製のシリンダブロックのシリンダボアの内径を計測する際には、マスターリングを用いて寸法基準値を測定する。
【0011】
次に、シリンダボアの内径を、複数設定された各測定箇所で測定する。このとき、このシリンダボアの内径は、シリンダブロックの温度によって変化する。
【0012】
しかし、前記各測定箇所での内径は、所定温度置きに実測されており、その実測値は、実測時のシリンダブロックの実測時温度に対応してテーブル化され温度補正値テーブルとして記憶されている。そして、各々の温度補正テーブルは、前記各実測時温度に対する前後四点の実測値を用いた曲線補間法により補間関数が算出されている。ここで、前記曲線補間法としては、「(n+1)個の異なる値がわかれば次数n以下の多項式が決定しうる」というラグランジュの補間公式(Lagrange’s interpolation formula)を用いた方法が、その一例として挙げられる。
【0013】
これにより、測定された寸法測定値は、その測定箇所に対応する前記補間関数を用いるとともに、当該測定時の前記シリンダブロックの温度に基づいて補正され、温度に応じた変形に伴う測定誤差が排除され、前記寸法測定値と寸法基準値との差からシリンダボアの内径寸法が計測される。」

「【0033】
このため、前記制御部13に設けられた記憶装置には、各車種に対応したシリンダブロック2において、各測定箇所毎の内径寸法を5℃刻みで測定した実測結果が温度補正値テーブルとしてそれぞれ記憶されており、各温度補正値テーブルからは、各実測時温度に対する前後四点の実測値を用いた曲線補間法、具体的には、実測値の前後四点による中間の二点間のラグランジェの曲線補間法によって補間された三次式の補間多項式である補間関数としての前記関数62が算出されている。」

したがって、上記引用文献5には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「シリンダボアの内径寸法を計測する内径計測装置(段落【0001】より。以下、同様。)であって、この内径計測装置によって、アルミ製のシリンダブロックのシリンダボアの内径を計測する際には、マスターリングを用いて寸法基準値を測定し(【0010】)、次に、シリンダボアの内径を、複数設定された各測定箇所で測定するが、このとき、このシリンダボアの内径は、シリンダブロックの温度によって変化する(【0011】)ものの、前記各測定箇所での内径は、所定温度置きに実測されており、その実測値は、実測時のシリンダブロックの実測時温度に対応してテーブル化され温度補正値テーブルとして記憶されており、そして、各々の温度補正テーブルは、前記各実測時温度に対する前後四点の実測値を用いた曲線補間法により補間関数が算出されている(【0012】)ので、これにより、測定された寸法測定値は、その測定箇所に対応する前記補間関数を用いるとともに、当該測定時の前記シリンダブロックの温度に基づいて補正され、温度に応じた変形に伴う測定誤差が排除され、前記寸法測定値と寸法基準値との差からシリンダボアの内径寸法が計測される(【0013】)、内径計測装置(【0001】)。」

6.引用文献6
原査定の拒絶の理由において、周知技術を示す文献として提示された引用文献6(特開2011-021962号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0001】
本発明は、測定装置に関し、特に、被検物を高精度に測定することができるようにした測定装置に関する。 」

「【0014】
図1は、本発明を適用した測定装置の一実施の形態の構成例を示す図である。
【0015】
図1に示すように、測定装置11は、測定装置11全体の水平度を調整することができる架台12に、石製または鋳鉄製の定盤13が載置され、水平に保たれた定盤13の上面に傾斜回転テーブル14が載置されている。
【0016】
定盤13は、端部(図1では右側の端部)が、定盤13上をY軸方向(図1の奥行き方向)に駆動可能な門型フレーム15のY軸ガイドを兼ねるように形成されている。門型フレーム15は、X軸方向(図1の左右方向)に延びるX軸ガイド15a、定盤13のY軸ガイドに沿って駆動する駆動側柱15b、および駆動側柱15bの駆動に従って定盤13の上面を滑動する従動側柱15cにより構成されている。
【0017】
ヘッド部16は、門型フレーム15のX軸ガイド15aに沿って駆動可能であり、ヘッド部16に対してZ軸方向(図1の上下方向)に駆動可能なZ軸ガイド17が装着されている。Z軸ガイド17の下端部には、測定プローブ18が装着されており、測定プローブ18は、Z軸を中心に回動可能、かつ、水平方向の所定軸を中心に傾動可能に構成されている。」

「【0038】
次に、図3を参照して、所定の傾斜角度で傾斜している回転テーブル21上の被検物41を、測定プローブ18を使用して測定する例について説明する。
【0039】
例えば、図3において右下を向く被検物41の側面42に測定プローブ18を当接させて側面42を測定した後、回転テーブル21を90度回転させて、図3において手前側を向いている被検物41の側面43を右下に向け、側面42と同様に側面43を測定する場合、回転テーブル21の回転に伴って被検物41の姿勢が変化する。このため、被検物41の重心の偏りに応じて重心位置が変化することにより、回転テーブル21の面ブレが発生したり、傾斜テーブル22の沈み込みが発生したりする。」

したがって、引用文献6には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「水平に保たれた定盤13の上面に傾斜回転テーブル14が載置され(段落【0015】より。以下、同様。)、定盤13は、定盤13上をY軸方向に駆動可能な門型フレーム15より構成され(【0016】)、ヘッド部16は、門型フレーム15のX軸ガイド15aに沿って駆動可能であり、ヘッド部16に対してZ軸方向に駆動可能なZ軸ガイド17が装着され、Z軸ガイド17の下端部には、測定プローブ18が装着されており、測定プローブ18は、Z軸を中心に回動可能、かつ、水平方向の所定軸を中心に傾動可能に構成され( 【0017】)、所定の傾斜角度で傾斜している回転テーブル21上の被検物41を、測定プローブ18を使用して測定する(【0038】)、測定装置11。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを比較すると、次のことがいえる。
ア 引用発明における「画像計測」「装置」による「画像計測方法」が、本願発明1における「測定装置での測定方法」に相当する。

イ 引用発明における「計測ワーク20」は「基準ワークと同型」であるから、本願発明1における「測定しようとする一連の公称上同一のワークピース」とは、「測定しようとする一連の同一のワークピース」の点で共通する。

ウ 引用発明における「基準ワーク」は、「計測ワーク20」と「同型」であるから、上記「イ」を踏まえると、本願発明1における「測定しようとする一連の公称上同一のワークピースのうちの1つである基準ワークピース」とは、「測定しようとする一連の同一のワークピースのうちの1つである基準ワークピース」の点で共通するといえる。
すると、引用発明における「長寸法が既知の基準ワーク10」が本願発明1における「基準ワークピースの形態であるマスター加工品」に相当するといえる。

エ 引用発明における「基準ワーク10」の「既知の」「長寸法」が、「画像計測」「装置」以外のソースから取得された寸法であることは明らかであるから、引用発明において「長寸法が既知の基準ワーク10」を用意することが、本願発明1における「マスター加工品を提供するステップであって、前記マスター加工品が前記測定装置の外部のソースから取得された既知の寸法を有するステップ」に相当するといえる。

オ 引用発明における「長寸法」は、2つの「アライメントマーク12」の「画像上の座標を計測・登録」することで得られるから、引用発明において「予め雰囲気温度を変えて基準ワーク10のアライメントマーク12の座標を計測し、雰囲気温度の変動に伴い長寸法が変動するデータ38を採取してお」くことと、本願発明1における「前記マスター加工品の複数の点の座標を測定することにより、前記マスター加工品の複数の寸法値を2つ以上の温度で前記装置で測定し、各温度における前記マスター加工品の2つ以上の対応する測定された寸法値のセットを生成するステップ」とは、「前記マスター加工品の複数の点の座標を測定することにより、前記マスター加工品の寸法値を2つ以上の温度で前記装置で測定し、各温度における前記マスター加工品の対応する測定された寸法値のセットを生成するステップ」の点で共通する。

カ 引用発明において「予め雰囲気温度を変えて基準ワーク10のアライメントマーク12の座標を計測し、雰囲気温度の変動に伴い長寸法が変動するデータ38を採取しておき、そして、該データ38を基に、ワークと計測装置の複合的な熱膨張係数αを求め」る際、「雰囲気温度」を測定していることは明らかであるから、引用発明において「雰囲気温度の変動に伴い長寸法が変動するデータ38を採取」する際に「雰囲気温度」を測定することが、本願発明1における「前記マスター加工品が測定された前記温度を測定するステップ」に相当する。

キ 引用発明における「予め雰囲気温度を変えて基準ワーク10のアライメントマーク12の座標を計測し、雰囲気温度の変動に伴い長寸法が変動するデータ38を採取しておき、そして、該データ38を基に、ワークと計測装置の複合的な熱膨張係数αを求め」ることと、本願発明1における「前記マスター加工品の前記測定された寸法値を前記マスター加工品の対応する前記既知の寸法に関連付ける1つまたは複数のエラーマップまたはルックアップテーブルまたは関数を生成するステップ」とは「前記マスター加工品についての寸法と温度との関係を生成するステップ」の点で共通する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「測定装置での測定方法であって、
測定しようとする一連の同一のワークピースのうちの1つである基準ワークピースの形態であるマスター加工品を提供するステップであって、前記マスター加工品が前記測定装置の外部のソースから取得された既知の寸法を有するステップと、
前記マスター加工品の複数の点の座標を測定することにより、前記マスター加工品の寸法値を2つ以上の温度で前記装置で測定し、各温度における前記マスター加工品の対応する測定された寸法値のセットを生成するステップと、
前記マスター加工品が測定された前記温度を測定するステップと、
マスター加工品についての寸法と温度との関係を生成するステップと
を含むことを特徴とする方法。」

(相違点1)
本願発明1では、一連の同一のワークピースが「公称上」のものであるのに対し、引用発明では、計測ワークが「公称上」のものか、不明である点。

(相違点2)
本願発明1では、測定される前記マスター加工品の寸法値が「複数」であるのに対し、引用発明では、アラインメントマーク間の1つの寸法を測定することが示されているに過ぎない点。

(相違点3)
本願発明1では、前記マスター加工品についての寸法と温度との関係が、「前記マスター加工品の前記測定された寸法値を前記マスター加工品の対応する前記既知の寸法に関連付ける1つまたは複数のエラーマップまたはルックアップテーブルまたは関数」であるのに対し、引用発明では、「基準ワーク10」についての「ワークと計測装置の複合的な熱膨張係数α」である点。

(2)判断
事案に鑑みて、上記相違点3について検討する。
上記相違点3に係る本願発明1の「前記マスター加工品の前記測定された寸法値を前記マスター加工品の対応する前記既知の寸法に関連付ける1つまたは複数のエラーマップまたはルックアップテーブルまたは関数」を生成するという構成は、引用文献2-6には記載されておらず、また、本願の優先日前において周知技術であるともいえない。
また、引用発明における補正方法は、「画像入力部30にて長寸法が既知の基準ワーク10のアライメントマーク12を画像入力し、画像処理部42にて画像上の座標を計測・登録しておき、同時に雰囲気温度計測部32で雰囲気温度t0を計測し、画像入力部30にて基準ワークと同型で長寸法Lxが未知の計測ワーク20のアライメントマーク22を画像入力し、画像処理部42にて画像上の座標を計測し、同時に雰囲気温度計測部32で雰囲気温度tmを計測し、次いで、長寸法算出部44にて、計測した基準ワーク10と計測ワーク20のアライメントマーク座標の差と基準ワークの長寸法L0から、計測ワーク20の長寸法Lxを求め、次いで温度補正処理部46で、ステップ100で求めた熱膨張係数αとステップ110、120で計測した雰囲気温度差△t(=tm-t0)から長寸法補正量αΔtを求め、ステップ130で算出した長寸法Lxを補正する」というものであるから、引用発明における補正方法で用いられる、「基準ワーク10」についての「ワークと計測装置の複合的な熱膨張係数α」を、「基準ワーク10」における「既知の」「長寸法」に関連付けるべき理由も見いだせない。
したがって、本願発明1は、相違点1、相違点2について検討するまでもなく、当業者であっても、引用発明、引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-4について
本願発明2-4も、本願発明1の「前記マスター加工品の前記測定された寸法値を前記マスター加工品の対応する前記既知の寸法に関連付ける1つまたは複数のエラーマップまたはルックアップテーブルまたは関数」を生成するという構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明5について
(1)対比
本願発明5と引用発明とを対比する。
ア 引用発明における「画像計測」「装置」での「計測ワーク20の長寸法Lxを求め」る方法が、本願発明5における「測定装置での測定方法」に相当する。

イ 引用発明における「基準ワーク10」における「既知の」「長寸法」が、引用発明における「画像計測」「装置」以外のソースから取得された寸法であることは明らかであるから、引用発明における「長寸法が既知の基準ワーク10」を提供することが、本願発明5における「前記測定装置の外部のソースから取得された既知の寸法を有する基準ワークピースの形態であるマスター加工品を提供するステップ」に相当する。

ウ 引用発明における「長寸法」が、2つの「アライメントマーク12」から「算出」されるものであることを踏まえると、引用発明における「予め雰囲気温度を変えて基準ワーク10のアライメントマーク12の座標を計測し、雰囲気温度の変動に伴い長寸法が変動するデータ38を採取してお」くことと、本願発明5における「前記マスター加工品の複数の点の座標を測定することにより、前記基準ワークピースの複数の寸法値を第1の温度で前記装置で測定し、前記第1の温度における前記基準ワークピースの結果的に得られた測定された寸法値の第1のセットを生成するステップ」とは、「前記マスター加工品の複数の点の座標を測定することにより、前記基準ワークピースの寸法値を第1の温度で前記装置で測定し、前記第1の温度における前記基準ワークピースの結果的に得られた測定された寸法値の第1のセットを生成するステップ」の点で共通するといえる。

エ 引用発明において「予め雰囲気温度を変えて基準ワーク10のアライメントマーク12の座標を計測し、雰囲気温度の変動に伴い長寸法が変動するデータ38を採取しておき、そして、該データ38を基に、ワークと計測装置の複合的な熱膨張係数αを求め」ることと、本願発明5における「前記第1の温度における前記基準ワークピースの前記複数の測定された寸法値を前記基準ワークピースの対応する前記既知の寸法に関連付ける少なくとも1つのエラーマップまたはルックアップテーブルまたは関数を生成するステップ」とは、「基準ワークピースについての温度と寸法との関係を生成するステップ」の点で共通する。

オ 引用発明における「基準ワークと同型で長寸法Lxが未知の計測ワーク20のアライメントマーク22を画像入力し、画像処理部42にて画像上の座標を計測し、同時に雰囲気温度計測部32で雰囲気温度tmを計測」することは、該計測が「計測ワーク20」の「長寸法Lx」を得るための座標計測であることは明らかであるから、本願発明5における「測定されたワークピース寸法値を得るために製造ワークピースを前記装置で測定し、前記ワークピース寸法値が得られた前記温度を測定するステップ」に相当するといえる。

カ 引用発明における「温度補正処理部46で、熱膨張係数αと、計測した雰囲気温度差△t(=tm-t0)から長寸法補正量αΔtを求め、算出した長寸法Lxを補正する」ことと、本願発明5における「前記ワークピース寸法値を、前記エラーマップ、ルックアップテーブルまたは関数から導出された補正値で補正するステップ」とは、「前記ワークピース寸法値を、基準ワークピースの温度と寸法との関係から導出された補正値で補正するステップ」の点で共通する。

キ 引用発明における「長寸法補正量αΔt」が「熱膨張係数αと、計測した雰囲気温度差△t(=tm-t0)から」計算されることが、本願発明5における「前記補正値は前記ワークピース寸法値が得られた温度に基づいて判断される」ことに相当する。

したがって、本願発明5と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
測定装置での測定方法であって、
前記測定装置の外部のソースから取得された既知の寸法を有する基準ワークピースの形態であるマスター加工品を提供するステップと、
前記マスター加工品の複数の点の座標を測定することにより、前記基準ワークピースの寸法値を第1の温度で前記装置で測定し、前記第1の温度における前記基準ワークピースの結果的に得られた測定された寸法値の第1のセットを生成するステップと、
基準ワークピースについての温度と寸法との関係を生成するステップと、
測定されたワークピース寸法値を得るために製造ワークピースを前記装置で測定し、前記ワークピース寸法値が得られた前記温度を測定するステップと、
前記ワークピース寸法値を、前記エラーマップ、ルックアップテーブルまたは関数から導出された補正値で補正するステップと
を含み、
前記補正値は前記ワークピース寸法値が得られた温度に基づいて判断されることを特徴とする方法。」

(相違点1)
本願発明5では、測定される基準ワークピースの寸法値が「複数」であるのに対し、引用発明では、アラインメントマーク間の1つの寸法を測定することが示されているに過ぎない点。

(相違点2)
本願発明5では、基準ワークピースについての温度と寸法との関係を生成するステップが、「前記第1の温度における前記基準ワークピースの前記複数の測定された寸法値を前記基準ワークピースの対応する前記既知の寸法に関連付ける少なくとも1つのエラーマップまたはルックアップテーブルまたは関数を生成するステップ」であるのに対し、引用発明では、「基準ワーク」について、「雰囲気温度の変動に伴い長寸法が変動するデータ38を採取して」いるものの、特定の雰囲気温度において採取された基準ワーク10の長寸法を、基準ワーク10の「既知の」「長寸法」と関連付ける少なくとも1つのエラーマップまたはルックアップテーブルまたは関数を生成することは、示されていない点。

(2)判断
事案に鑑みて、上記相違点2について検討すると、上記相違点2に係る本願発明5の「前記第1の温度における前記基準ワークピースの前記複数の測定された寸法値を前記基準ワークピースの対応する前記既知の寸法に関連付ける少なくとも1つのエラーマップまたはルックアップテーブルまたは関数」を生成するという構成は、引用文献2-6には記載されておらず、また、本願の優先日前において周知技術であるともいえない。
また、上記「1.」「(2)」で述べたとおり、引用発明における補正方法で用いられる、「基準ワーク10」についての「ワークと計測装置の複合的な熱膨張係数α」を、「基準ワーク10」における「既知の」「長寸法」に関連付けるべき理由も見いだせない。
したがって、本願発明5は、相違点1について検討するまでもなく、当業者であっても、引用発明、引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

4.本願発明6-22について
本願発明6-22も、本願発明1の「前記マスター加工品の前記測定された寸法値を前記マスター加工品の対応する前記既知の寸法に関連付ける1つまたは複数のエラーマップまたはルックアップテーブルまたは関数」を生成するという構成、又は、本願発明5の「前記第1の温度における前記基準ワークピースの前記複数の測定された寸法値を前記基準ワークピースの対応する前記既知の寸法に関連付ける少なくとも1つのエラーマップまたはルックアップテーブルまたは関数を生成するステップ」を備えるものであるから、本願発明1及び本願発明5と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

5.本願発明23、24について
本願発明23は、本願発明1-22に記載の方法を実施するように構成された「測定装置」の発明であり、本願発明24は、本願発明1-22に記載の方法を実施させるように構成された「測定装置用のソフトウェアプログラム」の発明であるから、上記「1.」-「4.」で述べたのと同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1-4は、「前記マスター加工品の前記測定された寸法値を前記マスター加工品の対応する前記既知の寸法に関連付ける1つまたは複数のエラーマップまたはルックアップテーブルまたは関数」を生成するという構成を有するものとなっており、本願発明5は「前記第1の温度における前記基準ワークピースの前記複数の測定された寸法値を前記基準ワークピースの対応する前記既知の寸法に関連付ける少なくとも1つのエラーマップまたはルックアップテーブルまたは関数」を生成するという構成を有するものとなっており、本願発明6-22は、本願発明1の「前記マスター加工品の前記測定された寸法値を前記マスター加工品の対応する前記既知の寸法に関連付ける1つまたは複数のエラーマップまたはルックアップテーブルまたは関数」を生成するという構成、又は、本願発明5の「前記第1の温度における前記基準ワークピースの前記複数の測定された寸法値を前記基準ワークピースの対応する前記既知の寸法に関連付ける少なくとも1つのエラーマップまたはルックアップテーブルまたは関数」を生成するという構成を有するものとなっている。
よって、上記「第5」「1.」-「4.」で述べたとおり、本願発明1-22は当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-6に基づいて、容易に発明できたものであるとはいえない。
また、本願発明23、本願発明24についても、上記「第5」「5.」で述べたとおり、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-6に基づいて、容易に発明できたものであるとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-06-05 
出願番号 特願2014-524437(P2014-524437)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 梶田 真也  
特許庁審判長 小林 紀史
特許庁審判官 清水 稔
中村 説志
発明の名称 ワークピースを検査するための方法および装置  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ