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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1340846
審判番号 不服2017-3893  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-16 
確定日 2018-05-31 
事件の表示 特願2015-180954号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年3月23日出願公開、特開2017-55826号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年9月14日の出願であって、平成28年5月27日付けの拒絶理由の通知に対し、同年8月3日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年12月9日付け(発送日:同年12月20日)で拒絶査定がなされ、これに対して平成29年3月16日に審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、その後当審による同年10月26日付けの拒絶理由の通知に対し、同年12月14日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年12月26日付けの最後の拒絶理由の通知に対し、平成30年3月5日に意見書が提出されるとともに手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
本件補正は特許請求の範囲の請求項1の記載の補正を含むものであり、本件補正前の平成29年12月14日にされた手続補正の特許請求の範囲の請求項1の記載と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、それぞれ以下のとおりである(下線部は補正箇所を示す。また、A?I2については発明を分説するため当審で付与した。)。

(本件補正前)
「【請求項1】
通常遊技状態又は通常遊技状態より遊技者に有利な有利遊技状態の何れかの遊技状態に制御される遊技機において、
判定条件の成立に基づき遊技者に所定の利益を付与する特別遊技を行うか否かの特別遊技判定を実行する特別遊技判定手段と、
表示手段において複数の識別図柄の変動表示を行った後に当該特別遊技判定の判定結果を示す停止態様で当該複数の識別図柄を停止表示させる変動演出を行う演出制御手段と、
演出モードを設定する演出モード設定手段と、を備え、
前記演出モードは、
第1演出モードと、当該第1演出モードとは異なる第2演出モードと、を含み、
前記変動演出中に実行される演出には、前記識別図柄の停止表示を行う前に実行する前記特別遊技の実行の確定を告知する確定演出が含まれ、
前記第1演出モードと前記第2演出モードとは、同一の遊技状態であり、
前記演出制御手段は、
前記演出モード設定手段によって前記第1演出モードに設定されている場合、及び、前記第2演出モードに設定されている場合の何れにおいても前記確定演出を実行可能であり、
前記演出モード設定手段によって前記第1演出モードに設定されている場合と、前記第2演出モードに設定されている場合とで異なる実行割合で前記確定演出を実行可能である、
ことを特徴とする遊技機。」

(本件補正後)
「【請求項1】
A 通常遊技状態又は通常遊技状態より遊技者に有利な有利遊技状態の何れかの遊技状態に制御される遊技機において、
B 判定条件の成立に基づき遊技者に所定の利益を付与する特別遊技を行うか否かの特別遊技判定を実行する特別遊技判定手段と、
C 表示手段において複数の識別図柄の変動表示を行った後に当該特別遊技判定の判定結果を示す停止態様で当該複数の識別図柄を停止表示させる変動演出を行う演出制御手段と、
D 演出モードを設定する演出モード設定手段と、を備え、
E 前記演出モードは、
第1演出モードと、当該第1演出モードとは異なる第2演出モードと、を含み、
F 前記変動演出中に実行される演出には、前記識別図柄の停止表示を行う前に実行する前記特別遊技の実行の確定を告知する確定演出が含まれ、
G 前記第1演出モードと前記第2演出モードとは、同一の遊技状態であり、
H 前記演出制御手段は、
H1 前記演出モード設定手段によって前記第1演出モードに設定されている場合、及び、前記第2演出モードに設定されている場合の何れにおいても前記確定演出を実行可能であり、
H2 前記演出モード設定手段によって前記第1演出モードに設定されている場合と、前記第2演出モードに設定されている場合とで異なる実行割合で前記確定演出を実行可能であり、
I 前記確定演出は、
I1 第1確定演出と、当該第1確定演出とは異なる第2確定演出と、を含み、
I2 所定のリーチ演出の実行前は、前記第1確定演出および前記第2確定演出を実行することが可能である一方、所定のリーチ演出の実行中は、前記第1確定演出を実行することが不可能であるが前記第2確定演出を実行することが可能である、
ことを特徴とする遊技機。」

2 補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「確定演出」に関して、「I 前記確定演出は、I1 第1確定演出と、当該第1確定演出とは異なる第2確定演出と、を含み、I2 所定のリーチ演出の実行前は、前記第1確定演出および前記第2確定演出を実行することが可能である一方、所定のリーチ演出の実行中は、前記第1確定演出を実行することが不可能であるが前記第2確定演出を実行することが可能である」いるという限定を付加するものである。
また、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
そうすると、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、明細書の段落【0437】?【0443】、【0788】?【0790】、【1083】?【1202】及び図47?51、図81?85、図99?106等の記載に基づいており、新規事項を追加するものではない。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、前記1(本件補正後)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献に記載された事項
ア 当審による平成29年12月26日付けの拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2005-131297号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0015】
(一般説明)
図1は、パチンコ遊技機の前面側における基本的な構造を示す。以下、弾球遊技機としていわゆる第1種パチンコ遊技機を例に説明する。パチンコ遊技機10は、主に遊技機枠と遊技盤面で構成される。」

「【0019】
図柄表示装置26は、その画面に第1種特別図柄と呼ばれる図柄(以下、「特別図柄」という)と、特別図柄に連動する装飾図柄を変動させながら表示する。ここで、特別図柄は、始動口28への遊技球の落入を契機として行われる抽選の結果に応じて大当たりを発生させるか否かを示すための図柄であり、装飾図柄は、抽選の結果を視覚的に演出するための図柄である。図柄表示装置26は、例えば液晶ディスプレイで構成されるとともに、装飾図柄としてスロットマシンのゲームを模した図柄変動の動画像を画面の中央領域に表示する。装飾図柄を表示する場合、特別図柄は演出的な役割をもつ必要がないため、図柄表示装置26の隅の目立たない領域に表示される。特別図柄は、変動中に○と×の図柄が繰り返されるような表示態様をとってもよいが、以下では、0から9の数字が繰り返される表示態様をとる場合を示す。特別図柄の停止図柄は、大当たりであるか否かを示し、例えば停止図柄が「3」である場合は大当たりを、また「7」である場合には確率変動付き大当たりを、それ以外の数字は外れを示すものであってよい。なお、確率変動付き大当たりとは、確率変動の対象となる大当たりを意味する。」

「【0021】
遊技者が発射ハンドル17を手で回動させると、その回動角度に応じた強度で上球皿15に貯留された遊技球が1球ずつ遊技領域31へ発射され、遊技者が発射ハンドル17の回動位置を手で固定させると一定の時間間隔で遊技球の発射が繰り返される。遊技領域31の上部へ発射された遊技球は、複数の遊技釘20に当たりながらその当たり方に応じた方向へ落下し、一般入賞口24や始動口28等の各入賞口へ落入するとその入賞口の種類に応じた賞球が上球皿15に払い出される。遊技球が始動口28に落入すると、図柄表示装置26において特別図柄および装飾図柄が変動表示される。特別図柄および装飾図柄の変動表示は一定時間経過後に停止され、停止時の特別図柄が特定の態様になると、いわゆる「大当たり」として大入賞口29の開閉動作を開始する。このときスロットマシンのゲームを模した装飾図柄は、例えば3つの図柄を一致させるような表示態様をとる。」

「【0034】
メイン制御部70において、表示処理部74は、特別図柄の変動表示を開始すると、変動開始指示をサブ制御部80の表示処理部92に送り、図柄変動の表示時間のカウントを行う。サブ制御部80の表示処理部92は、変動開始指示を受け取ると、装飾図柄の変動表示を開始する。表示処理部74は、特別図柄の変動時間が終了するタイミングで、特別図柄の停止図柄を図柄表示装置26に表示し、変動表示の停止指示をサブ制御部80へ送る。表示処理部92は、変動表示の停止指示を受け取ると、装飾図柄の停止図柄を図柄表示装置26に表示する。これにより、1回の抽選結果による表示処理が終了する。
【0035】
当否決定部61は、特別図柄保留記憶部63から読み出した乱数の値が大当たり値であった場合、停止図柄の表示後、特別遊技の開始指示を特別遊技実行部64へ送る。特別遊技実行部64は、特別遊技処理部65、継続判定部66、および確変判定部67を含む。特別遊技処理部65は、大入賞処理部58に対して大入賞口の開放指示を送る。大入賞処理部58は、特別遊技処理部65から受け取る開放指示に基づいて大入賞口29を開放させる。開放された大入賞口29に落入する遊技球は、大入賞口29の内部に設けられたセンサである大入賞検出部53により検出され、大入賞口29へ遊技球が落入すると大入賞処理部58は払出制御部79へ賞球数等の払出指示を送るとともに、1回の大入賞口29の開放における遊技球の落入球数を計数する。大入賞処理部58は、約30秒間の開放期間が経過するか、または大入賞口29へ落入する遊技球が10球に達したときに大入賞口29を一旦閉鎖する。」

「【0037】
確変実行部68は、確率変動遊技へ移行すべき旨の判定を確変判定部67から受け取った場合、当否決定部61がもつ当否テーブルを確率変動遊技用に変更する。例えば、通常遊技時の大当たり値の範囲が0から207までであったのに対し、確率変動遊技時の大当たり値の範囲を0から1093までとする。これにより、確率変動遊技時の大当たり確率が、通常遊技時よりも大きくなる。

「【0039】
図4は、通常遊技から特別遊技へ移行する過程を示すフローチャートである。まず始動入賞検出部51が始動口28への遊技球の落入を検出すると(S10のY)、乱数決定部72が、図柄変動中であるか否かを判定する(S12)。図柄が変動中でなければ(S12のN)、乱数決定部72が乱数を決定し(S14)、当否決定部61が、乱数に基づいて抽選当否を判定する(S28)。一方、図柄が変動中であれば(S12のY)、乱数決定部72が、特別図柄保留記憶部63に乱数を保留可能であるか否かを判定する(S16)。図柄変動中、例えば4個の乱数が特別図柄保留記憶部63に保留されていれば、それ以上の乱数を保留することができないため(S16のN)、特別図柄保留記憶部63はその乱数を取得しない。なお、乱数を保留できない場合は、乱数決定部72が、入賞を無視して乱数自体を生成しなくてもよい。一方、保留されている乱数の数が3個以内であれば、乱数を保留する記憶領域が空いていると判定される(S16のY)。この場合、乱数決定部72は乱数を決定し(S18)、特別図柄保留記憶部63の空き領域に乱数を記憶させる(S20)。なお、S16において、乱数を保留できない場合は(S16のN)、S18、S20のステップをスキップする。
【0040】
またS10において、始動口28への入賞がなければ(S10のN)、当否決定部61が、特別図柄保留記憶部63に乱数が保留されているか否かを判定する(S22)。保留されていない場合(S22のN)、本フローを終了し、保留されている場合は(S22のY)、その時点で行われている図柄変動が終了するのを待つ。なお乱数が保留されている場合とは、入賞が以前に発生し且つその入賞の抽選結果についての図柄変動が未だ行われていない状態を示す。このとき、図柄表示装置26では、保留球以前の入賞の抽選結果についての特別図柄および装飾図柄の変動表示がなされている。なお、S12における図柄変動と、S22の判定時点で表示されている図柄変動を、本フローでは説明の便宜上、「前回の図柄変動」と呼び、これに続く図柄変動のことを「当回の図柄変動」と呼ぶことにする。
【0041】
前回の図柄変動が終了すると、当否決定部61は、特別図柄保留記憶部63に保留されている抽選結果のうち最初に抽選結果として格納された乱数を読み出してその記憶内容を消去し(S24)、2番目以降の領域に抽選結果の乱数が格納されていればそれらをそれぞれ一つ前の記憶領域へシフトする(S26)。当否決定部61は、読み出した乱数に基づいて抽選当否を判定し(S28)、続いて、図柄変動の表示内容が決定される。表示処理部74および表示処理部92は当回の特別図柄および装飾図柄を図柄表示装置26に変動表示させる(S30)。S28における当否決定部61による当否判定の結果、乱数が大当たり値であった場合(S32のY)、特別遊技へ移行し(S34)、抽選結果の乱数が外れ値であれば(S32のN)、S34をスキップする。」

「【0048】
図8は、本実施例のパチンコ遊技機10の前面側における構造を示す。図1に示す構造に追加する構成として、パチンコ遊技機10は、遊技者からの手動操作による入力を受け付ける入力部100を備える。遊技者は、完全先告知モードのオンオフを入力部100への手動操作を介して行う。入力部100は、例えば機械的なボタンとして形成されてもよく、また赤外線センサやタッチセンサとして形成されてもよい。遊技者は、入力部100に対して押下等の所定の手動操作を行うことで、入力部100への指示入力を行うことができる。入力部100は、遊技者が空いている左手で操作できるようパチンコ遊技機10の左側に設けられることが好ましい。さらに、入力部100はその径が比較的大きめに形成されているので、遊技者にとって操作が容易である。そのような操作を介し、遊技者は自分の好みに応じて完全先告知モードをオンオフできる。
【0049】
パチンコ遊技機10は、告知ランプ102およびスピーカ104をさらに備える。遊技者が完全先告知モードをオンした場合、パチンコ遊技機10は、図柄表示装置26への表示、告知ランプ102の点灯、スピーカ104からの音声出力のいずれかを用いて、抽選結果が大当たりである旨を遊技者に告知する。例えば、図柄表示装置26において、現在変動表示中の図柄が大当たりとなる旨を示唆する告知画像106を表示してもよいし、その表示に合わせて特別な効果音をスピーカ104から出力してもよい。告知ランプ102を点滅させてもよい。告知ランプ102、スピーカ104、告知画像106の3通りの告知手段のうち、いずれか一つをランダムで用いて告知してもよいし、これらのうちいくつかの手段を合わせて告知してもよい。
【0050】
図9は、本実施例のパチンコ遊技機10における遊技を制御する構成を中心とした機能ブロック図である。図3と同一の符号を付した構成は、図3で説明した構成と同一または同様の機能を有する。図3に追加する構成として、パチンコ遊技機10は、入力検出部110、告知設定部93、告知処理部94および保留数取得部95を備える。告知設定部93、告知処理部94および保留数取得部95は、サブ制御部80に含まれる。」

「【0052】
完全先告知モードがオンにされている場合であって、当否決定部61により当否判定された抽選結果が大当たりであった場合、告知処理部94はその大当たりを告知する。告知処理部94は、表示処理部74および表示処理部92により変動表示される図柄が停止するタイミングより一定時間前、例えば5秒前に大当たりを告知する。
【0053】
完全先告知モード以外のモード、例えばノーマルモードが設定されている場合、告知処理部94は原則として大当たりを告知しない。但し、完全先告知モードがオフであっても、抽選結果が大当たりであった場合に、告知処理部94はその大当たりを告知するか否かをランダムに決定し、その決定の結果に応じて大当たりを強制的に告知する。その場合の告知の出現確率は比較的低くてもよい。これにより、ノーマルモードであっても不意の告知が出現し得ることとなり、遊技者の娯楽性を高めることができる。」

上記記載事項を総合すれば、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる(a?i1については本願補正発明のA?I1に対応させて付与した。)。

「a 確率変動遊技時の大当たり確率が、通常遊技時よりも大きくなる(【0037】)パチンコ遊技機10において(【0015】)、
b 始動口28へ遊技球が落入し、
装飾図柄が変動中でなければ、乱数に基づいて、大入賞口29を開放させる特別遊技の抽選当否を判定し、
装飾図柄が変動中であれば、保留されている乱数の数が3個以内であれば、乱数を決定し、図柄変動が終了するのを待って、大入賞口29を開放させる特別遊技の抽選当否を判定する当否決定部61と(【0019】、【0035】、【0039】?【0041】)、
c 大当たりを発生させるか否かを示すための特別図柄に連動して、図柄表示装置26において3つの図柄からなる装飾図柄の変動表示を開始し装飾図柄の停止図柄を表示することにより1回の抽選結果による表示処理を終了するサブ制御部80と(【0019】、【0021】、【0034】)、
d 完全先告知モードのオンオフを遊技者の手動操作を介して行う入力部100と(【0048】)、を備え、
e、g 前記完全先告知モードのオンオフによるモードは【0048】、
完全先告知モードと、完全先告知モード以外のモードであるノーマルモードと、を含み(【0052】、【0053】)、
f、i1 前記図柄表示装置26において、現在変動表示中の図柄が大当たりとなる旨を示唆する告知画像106を表示し、その表示に合わせて特別な効果音をスピーカ104から出力し、告知ランプ102を点滅させる、3通りの告知手段のうちいくつかの手段を合わせて、抽選結果が大当たりである旨を遊技者に告知し(【0049】)、
h 前記サブ制御部80は(【0050】)、
h1、h2 完全先告知モードがオンにされている場合であって、当否決定部61により当否判定された抽選結果が大当たりであった場合、その大当たりを告知し(【0052】)、完全先告知モードがオフであっても、抽選結果が大当たりであった場合に、その大当たりを告知するか否かをランダムに決定し、その決定の結果に応じて大当たりを強制的に告知するものである(【0053】)、
パチンコ遊技機10。」

イ 当審による平成29年12月26日付けの拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2011-103942号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0024】
<1.構成の概要:図1>
図1は、本発明の実施形態に係るパチンコ遊技機の遊技盤3を示す。図1に示すように、遊技盤3の略中央部には、3つ(左、中、右)の表示エリアにおいて、独立して数字やキャラクタや記号などによる図柄(装飾図柄)の変動表示が可能である画像表示装置としての液晶表示装置36(LCD:Liquid Crystal Display)が配設されている。この液晶表示装置36の真下には、第1の特別図柄始動口である上始動口34と、第2の特別図柄始動口である下始動口35とが上下に配設され、それぞれの内部には、入賞球を検出する特別図柄始動口センサ34a、35a(図2参照)が設けられている。下始動口35には、左右一対の可動翼片47が下始動口35を開閉可能に設けられ、いわゆるチューリップ型の電動役物(普通変動入賞装置41)を構成している。」

「【0030】
この大当たり変動中に確変大当り確定予告(いわゆる一発告知)をなす場合は、特別図柄の変動開始と同時に告知音が発生されるとともに、特別図柄の変動開始から変動停止までの長い変動期間中(たとえば5分間)にわたって回転灯52が作動される。すなわち、回転灯52のランプ52aが点灯され続けると共に、ステッピングモータ53により反射鏡52bが回転され続ける。これにより遊技者は、上記の特別図柄変動表示ゲームの結果が液晶表示装置36に表示される前に、確変大当りに当選したことを衝撃的に知ることができる。」

「【0039】
図4は、通常遊技から特別遊技へ移行する過程を示すフローチャートである。まず始動入賞検出部51が始動口28への遊技球の落入を検出すると(S10のY)、乱数決定部72が、図柄変動中であるか否かを判定する(S12)。図柄が変動中でなければ(S12のN)、乱数決定部72が乱数を決定し(S14)、当否決定部61が、乱数に基づいて抽選当否を判定する(S28)。一方、図柄が変動中であれば(S12のY)、乱数決定部72が、特別図柄保留記憶部63に乱数を保留可能であるか否かを判定する(S16)。図柄変動中、例えば4個の乱数が特別図柄保留記憶部63に保留されていれば、それ以上の乱数を保留することができないため(S16のN)、特別図柄保留記憶部63はその乱数を取得しない。なお、乱数を保留できない場合は、乱数決定部72が、入賞を無視して乱数自体を生成しなくてもよい。一方、保留されている乱数の数が3個以内であれば、乱数を保留する記憶領域が空いていると判定される(S16のY)。この場合、乱数決定部72は乱数を決定し(S18)、特別図柄保留記憶部63の空き領域に乱数を記憶させる(S20)。なお、S16において、乱数を保留できない場合は(S16のN)、S18、S20のステップをスキップする。
【0040】
またS10において、始動口28への入賞がなければ(S10のN)、当否決定部61が、特別図柄保留記憶部63に乱数が保留されているか否かを判定する(S22)。保留されていない場合(S22のN)、本フローを終了し、保留されている場合は(S22のY)、その時点で行われている図柄変動が終了するのを待つ。なお乱数が保留されている場合とは、入賞が以前に発生し且つその入賞の抽選結果についての図柄変動が未だ行われていない状態を示す。このとき、図柄表示装置26では、保留球以前の入賞の抽選結果についての特別図柄および装飾図柄の変動表示がなされている。なお、S12における図柄変動と、S22の判定時点で表示されている図柄変動を、本フローでは説明の便宜上、「前回の図柄変動」と呼び、これに続く図柄変動のことを「当回の図柄変動」と呼ぶことにする。」

「【0043】
特別図柄時短機能は、大当りの抽選結果を導出する特別図柄変動表示ゲームにおける特別図柄の変動時間が短縮された特別図柄時短状態を付与する機能である。特別図柄時短機能が動作中の遊技状態下では、1回の特別図柄変動表示ゲームの時間(特別図柄が変動を開始してから確定表示される迄の時間)が、たとえば、平均時間もしくはリーチなしハズレ変動において、30秒(時短状態が付与されていないとき)から5秒(時短状態が付与されているとき)に短縮され、単位時間当りの大当り抽選回数が向上する抽選回数向上状態となる。」

上記記載事項を総合すれば、引用文献2には以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる(i2は本願補正発明のI2に対応させて付与した。)。

「i2 大当たり変動中に確変大当り確定予告(いわゆる一発告知)をなす場合は、特別図柄の変動開始と同時に告知音が発生されるとともに、特別図柄の変動開始から変動停止までの長い変動期間中(たとえば5分間)にわたって回転灯52が作動される
パチンコ遊技機。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。なお、見出し(a)?(i1)は、本願補正発明のA?I1に対応させている。

(a)引用発明1の「a 確率変動遊技時の大当たり確率が、通常遊技時よりも大きくなるパチンコ遊技機10」は、通常遊技状態又は通常遊技状態より遊技者に有利な確率変動遊技状態の何れかの遊技状態に制御されることは明らかであるから、本願補正発明の「A 通常遊技状態又は通常遊技状態より遊技者に有利な有利遊技状態の何れかの遊技状態に制御される遊技機」に相当する。

(b)引用発明1の「b 始動口28へ遊技球が落入し、図柄が変動中でなければ、乱数に基づいて、大入賞口29を開放させる特別遊技の抽選当否を判定し、図柄が変動中であれば、保留されている乱数の数が3個以内であれば、乱数を決定し、図柄変動が終了するのを待って、大入賞口29を開放させる特別遊技の抽選当否を判定する当否決定部61」は、本願補正発明の「B 判定条件の成立に基づき遊技者に所定の利益を付与する特別遊技を行うか否かの特別遊技判定を実行する特別遊技判定手段」に相当する。

(c)引用発明1の「c 大当たりを発生させるか否かを示すための特別図柄に連動して、図柄表示装置26において3つの図柄からなる装飾図柄の変動表示を開始し装飾図柄の停止図柄を表示することにより1回の抽選結果による表示処理を終了するサブ制御部80」は、本願補正発明の「C 表示手段において複数の識別図柄の変動表示を行った後に当該特別遊技判定の判定結果を示す停止態様で当該複数の識別図柄を停止表示させる変動演出を行う演出制御手段」に相当する。

(d)引用発明1の「e、g 完全先告知モードのオンオフによるモード」は、本願補正発明の「D 演出モード」に相当する。
したがって、引用発明1の「d 完全先告知モードのオンオフを遊技者の手動操作を介して行う入力部100」は、本願補正発明の「D 演出モードを設定する演出モード設定手段」に相当する。

(e)引用発明1の「e、g 完全先告知モードのオンオフによるモード」は、本願補正発明の「前記演出モード」に相当する。
また、引用発明1において、dの「入力部100」において「遊技者の手動操作を介して行」われる「完全先告知モードのオンオフ」の選択により、「e、g 完全先告知モードと、完全先告知モード以外のモードであるノーマルモードと」が選択されることは明らかである。
したがって、引用発明1の「e、g 前記完全先告知モードのオンオフによるモードは、完全先告知モードと、完全先告知モード以外のモードであるノーマルモードと、を含」むことは、本願補正発明の「E 前記演出モードは、第1演出モードと、当該第1演出モードとは異なる第2演出モードと、を含」むことに相当する。

(f)引用発明1の「f、i1 前記図柄表示装置26において、現在変動表示中の図柄が大当たりとなる旨を示唆する告知画像106を表示し、その表示に合わせて特別な効果音をスピーカ104から出力し、告知ランプ102を点滅させる、3通りの告知手段のうち幾つかの手段を合わせて、抽選結果が大当たりである旨を遊技者に告知する」ことは、本願補正発明の「F 前記変動演出中に実行される演出には、前記識別図柄の停止表示を行う前に実行する前記特別遊技の実行の確定を告知する確定演出が含まれ」ることに相当する。

(g)引用文献1には、「a 確率変動遊技時」及び「通常遊技時」とe、gの「完全先告知モードと、完全先告知モード以外のモードであるノーマルモードと」の関係についての記載はないが、仮に「a 確率変動遊技時」及び「通常遊技時」とe、gの「完全先告知モードと、完全先告知モード以外のモードであるノーマルモードと」に1対1対応の関係があるとすると、dの「入力部100」において「遊技者の手動操作を介して行」われる「完全先告知モードのオンオフ」の選択によりe、gの「完全先告知モードと、完全先告知モード以外のモードであるノーマルモードと」を選択することが無意味となりこの仮定は背理であるから、少なくとも、「a 確率変動遊技時」または「通常遊技時」のいずれかの遊技状態のときに、e、gの「完全先告知モードと、完全先告知モード以外のモードであるノーマルモードと」が選択可能であることは明らかである。
したがって、引用発明1のe、gの「完全先告知モードと、完全先告知モード以外のモードであるノーマルモードと」は、本願補正発明の「G 前記第1演出モードと前記第2演出モードとは、同一の遊技状態であ」るという機能を有するといえる。

(h)引用発明1の「h 前記サブ制御部80」は、本願補正発明の「H 前記演出制御手段」に相当する。

(h1)引用発明1の「h1、h2 完全先告知モードがオンにされている場合であって、当否決定部61により当否判定された抽選結果が大当たりであった場合、その大当たりを告知し、完全先告知モードがオフであっても、抽選結果が大当たりであった場合に、その大当たりを告知するか否かをランダムに決定し、その決定の結果に応じて大当たりを強制的に告知する」ことは、本願補正発明の「H1 前記演出モード設定手段によって前記第1演出モードに設定されている場合、及び、前記第2演出モードに設定されている場合の何れにおいても前記確定演出を実行可能であ」ることに相当する。

(h2)引用発明1の「h1、h2 完全先告知モードがオンにされている場合であって、当否決定部61により当否判定された抽選結果が大当たりであった場合、その大当たりを告知」することは、大当たりを100%の割合で告知することであるのに対し、「完全先告知モードがオフであっても、抽選結果が大当たりであった場合に、その大当たりを告知するか否かをランダムに決定し、その決定の結果に応じて大当たりを強制的に告知する」ことは、大当たりを100%より低い割合で告知することといえ、両者は異なる実行割合で告知演出を実行可能であるといえる。
したがって、引用発明1は、本願補正発明の「H2 前記演出モード設定手段によって前記第1演出モードに設定されている場合と、前記第2演出モードに設定されている場合とで異なる実行割合で前記確定演出を実行可能であ」る機能を有するといえる。

(i1)引用発明1の「f、i1 前記図柄表示装置26において、現在変動表示中の図柄が大当たりとなる旨を示唆する告知画像106を表示し、その表示に合わせて特別な効果音をスピーカ104から出力し、告知ランプ102を点滅させる、3通りの告知手段」は、互いに異なる演出といえるから、これらのうちの2つの告知手段は、本願補正発明の「I1 第1確定演出と、当該第1確定演出とは異なる第2確定演出」に相当する。
したがって、引用発明1の「f、i1 前記図柄表示装置26において、現在変動表示中の図柄が大当たりとなる旨を示唆する告知画像106を表示し、その表示に合わせて特別な効果音をスピーカ104から出力し、告知ランプ102を点滅させる、3通りの告知手段のうちいくつかの手段を合わせて、抽選結果が大当たりである旨を遊技者に告知する」ことは、本願補正発明の「I1 第1確定演出と、当該第1確定演出とは異なる第2確定演出と、を含」むことに相当する。

そうすると、両者は、
「A 通常遊技状態又は通常遊技状態より遊技者に有利な有利遊技状態の何れかの遊技状態に制御される遊技機において、
B 判定条件の成立に基づき遊技者に所定の利益を付与する特別遊技を行うか否かの特別遊技判定を実行する特別遊技判定手段と、
C 表示手段において複数の識別図柄の変動表示を行った後に当該特別遊技判定の判定結果を示す停止態様で当該複数の識別図柄を停止表示させる変動演出を行う演出制御手段と、
D 演出モードを設定する演出モード設定手段と、を備え、
E 前記演出モードは、
第1演出モードと、当該第1演出モードとは異なる第2演出モードと、を含み、
F 前記変動演出中に実行される演出には、前記識別図柄の停止表示を行う前に実行する前記特別遊技の実行の確定を告知する確定演出が含まれ、
G 前記第1演出モードと前記第2演出モードとは、同一の遊技状態であり、
H 前記演出制御手段は、
H1 前記演出モード設定手段によって前記第1演出モードに設定されている場合、及び、前記第2演出モードに設定されている場合の何れにおいても前記確定演出を実行可能であり、
H2 前記演出モード設定手段によって前記第1演出モードに設定されている場合と、前記第2演出モードに設定されている場合とで異なる実行割合で前記確定演出を実行可能であり、
I 前記確定演出は、
I1 第1確定演出と、当該第1確定演出とは異なる第2確定演出と、を含む、
遊技機。」
である点で一致し、以下の相違点で相違する。

(相違点)
本願補正発明は
「I2 所定のリーチ演出の実行前は、前記第1確定演出および前記第2確定演出を実行することが可能である一方、所定のリーチ演出の実行中は、前記第1確定演出を実行することが不可能であるが前記第2確定演出を実行することが可能である」のに対し、引用発明1はそのように特定されていない点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。
(相違点について)
引用発明2の「特別図柄の変動開始と同時に」「発生される」「告知音」が、リーチ演出の実行中まで続かないか否か特定されていないが、パチンコ遊技機において、大当り確定予告(いわゆる一発予告)の告知音の発生時間が図柄の変動期間に比して極短時間であることは、例えば、

ア 本願の出願前に頒布された刊行物である特開2013-202390号公報
「【0008】
以下、本発明の第一実施例に係る遊技機であるぱちんこ遊技機について説明する。」
「【0355】
一方、聴覚的要素である上記音響演出においては、主には、画像演出に対するBGMとして設定された音楽、アニメーションや装飾図柄190a?190cの表示態様に応じた効果音、登場人物の台詞や、光装飾演出及び可動体演出に連動する効果音が、各種スピーカ19から出力される。また、特定の光装飾演出と、特徴的な音響演出とを組み合わせた演出を、高期待度の演出として実行する場合もある。さらに、音響演出には、相対的に極めて高い期待度で大当りを予告する機種特有、或いは製造業者特有の識別性の高い効果音(プレミアム音など)を、短時間(例えば1秒程度)だけ出力するような演出もある。このような演出に用いられる音は、「一発告知音」等と称される。」

イ 本願の出願前に頒布された刊行物である特開2012-139532号公報
「【0029】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、遊技機の一例としてパチンコ遊技機を示すが、本実施の形態に示す遊技機は、遊技者にとって有利な状態に制御する遊技機であれば、どのような遊技機であってもよい。」
「【0471】
前述したように、一発告知は、一発告知を実行する旨を決定した後直ちに実行する場合と、変動表示開始時まで待って実行する場合とがあり、変動表示開始時まで待って実行するときの例が図47?図50に示されている。図47の(B)、図48の(B)、図49の(B)、および、図50の(B)のそれぞれに示すように、第1予告演出としての当り予告、ボタン予告、ステップアップ予告、および、群予告のそれぞれが実行される場合であっても、一発告知を実行する旨の決定がされたときには、変動表示の開始時において、スピーカ27から特定効果音が出力されることにより、一発告知が実行される。」

【図47】の(B)、【図48】の(B)、【図49】の(B)、および、【図50】の(B)のいずれからも、スピーカ27からの「ピーコン!ピーコン!」という音の出力時間は、すべての図柄が変動中である時間のうちの変動開始直後の極短時間であることがみてとれる。

に記載されているように技術常識であり、また、図柄の変動開始から一つ目の図柄が停止した後に2つ目の図柄が停止してリーチとなるまでにある程度の時間を要することも技術常識であることに鑑みれば、引用発明2の「特別図柄の変動開始と同時に」「発生される」「告知音」はリーチ演出の実行中まで続かないものと解するのが自然である。
そうすると、引用発明2の「確変大当り確定予告(いわゆる一発告知)」、「特別図柄の変動開始と同時に」なされる「告知音」及び「特別図柄の変動開始から変動停止までの長い変動期間中(たとえば5分間)にわたって」「作動される」「回転灯52」は、それぞれ、本願補正発明の「確定演出」、「所定のリーチ演出の実行前は」「実行することが可能である一方、所定のリーチ演出の実行中は」「実行することが不可能である」「第1確定演出」及び「所定のリーチ演出の実行前は」「実行することが可能で」「所定のリーチ演出の実行中」も「実行することが可能である」「第2確定演出」に相当する。
したがって、引用発明2は、相違点に係る本願補正発明の構成I2を備えるものといえる。

そして、告知手段の態様は遊技機の趣向に合わせて当業者が適宜選択し得るものであって、告知音ともに回転灯を採用して遊技者に与える視覚効果を高めて遊技の興趣を向上させるために、引用発明1のf、i1の「告知手段」に代えて引用発明2を適用して、相違点に係る本願補正発明の構成I2に想到することは当業者が容易になし得るものである。

(効果について)
本願補正発明の奏する作用効果は、引用発明1及び引用発明2の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(まとめ)
したがって、本願補正発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(請求人の主張について)
請求人は、平成30年3月5日の意見書において、本願補正発明では、所定のリーチ演出の実行前は、第1確定演出および第2確定演出を実行することが可能である一方、所定のリーチ演出の実行中は、第1確定演出を実行することが不可能であるが第2確定演出を実行することが可能であるのに対し、引用文献1には、「遊技者が完全先告知モードをオンした場合、パチンコ遊技機10は、図柄表示装置26への表示、告知ランプ102の点灯、スピーカ104からの音声出力のいずれかを用いて、抽選結果が大当たりである旨を遊技者に告知する。」と記載されていることから、確定演出が複数ある点では、本願補正発明と一致しているが、複数ある確定演出の一方が実行不可能であり、他方が実行可能であるタイミング等の記載がなく、この相違点を有する本願補正発明は、遊技者が注目する演出であるリーチ演出において複数の確定演出を実行しないようにすることで、演出が乱雑になってしまうことを防止することができると共に、単調になりがちなリーチ演出の実行前において複数の確定演出を実行可能とすることで、適度に演出を盛り上げることができ、遊技の興趣が向上するとの効果を奏するから、本願補正発明は、拒絶理由を解消したものであり、引用文献1を参照した当業者であっても容易に想到できない旨主張する。
しかしながら、上記(相違点について)で検討したように、告知手段の態様は遊技機の趣向に合わせて当業者が適宜選択し得るものであって、告知音ともに回転灯を採用して遊技者に与える視覚効果を高めて遊技の興趣を向上させるために、引用発明1のf、i1の「告知手段」に代えて引用発明2を適用して、相違点に係る本願補正発明の構成I2に想到することは当業者が容易になし得るものである。
したがって、請求人の主張は採用できない。

(5)本件補正についてのむすび
以上より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成29年12月14日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1の(本件補正前)に記載のとおりのものである。

2 当審による拒絶の理由
当審による平成29年12月26日付けの最後の拒絶の理由は、
1.(新規性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に頒布された以下のいずれかの引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に頒布された以下のいずれかの引用例に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、
というものである。

引用例1:特開2005-131297号公報
引用例2:特開2012-115354号公報
引用例3:特開2015-54197号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1(引用例1)の記載事項は、前記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本願補正発明の発明特定事項である「確定演出」に関して、「I 前記確定演出は、I1 第1確定演出と、当該第1確定演出とは異なる第2確定演出と、を含み、I2 所定のリーチ演出の実行前は、前記第1確定演出および前記第2確定演出を実行することが可能である一方、所定のリーチ演出の実行中は、前記第1確定演出を実行することが不可能であるが前記第2確定演出を実行することが可能である」という限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明と引用発明1を対比すると、前記第2[理由]2(3)に記載した(相違点)は生じず、本願発明と引用発明とは一致する。
したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
仮に、本願発明と引用発明1とに相違点があったとしても、本願発明は、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第1項第3号または同条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-03-27 
結審通知日 2018-04-03 
審決日 2018-04-16 
出願番号 特願2015-180954(P2015-180954)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
P 1 8・ 575- WZ (A63F)
P 1 8・ 113- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永田 美佐小河 俊弥  
特許庁審判長 石井 哲
特許庁審判官 樋口 宗彦
藤田 年彦
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人 エビス国際特許事務所  

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