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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1340847
審判番号 不服2017-5753  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-21 
確定日 2018-05-31 
事件の表示 特願2015- 69658「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月 4日出願公開、特開2016-187518〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年3月30日の出願であって、平成28年3月2日付けで拒絶の理由が通知され、平成28年4月19日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年10月13日付けで最後の拒絶の理由が通知され、平成28年12月8日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成29年1月20日付け(発送日:1月31日)で、平成28年12月8日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、それに対して、平成29年4月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、これに対し、当審において、平成29年10月19日付けで拒絶の理由が通知され、平成29年12月13日に意見書及び手続補正書が提出され、平成30年1月9日付けで最後の拒絶の理由が通知され、平成30年3月5日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 平成30年3月5日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成30年3月5日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の概要
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、平成29年12月13日付けの手続補正書における、

「【請求項1】
始動条件の成立を契機に、始動情報を取得する始動情報取得手段と、前記始動情報取得手段により前記始動情報を取得した後、判定条件が成立したことを契機に、当該始動情報に基づいて遊技者に有利な特別遊技を実行するか否かの特別遊技判定を行う特別遊技判定手段とを備えるメイン制御手段と、
前記メイン制御手段からの制御情報に基づいて、画像表示装置において変動演出を実行するサブ制御手段と、を備える遊技機において、
前記メイン制御手段は、
前記始動条件が成立したが前記判定条件が成立していない場合は、前記始動情報取得手段により取得された前記始動情報を保留記憶として所定数まで記憶する第1保留記憶手段と、
前記第1保留記憶手段に記憶されている前記保留記憶の数を保留記憶数情報として前記サブ制御手段に送信する保留記憶数情報送信手段と、をさらに備え、
前記第1保留記憶手段に記憶されている前記保留記憶の数に対応する保留表示を第1保留表示装置に表示させ、
前記サブ制御手段は、
前記保留記憶数情報送信手段により送信された前記保留記憶数情報が示す前記保留記憶の数を記憶する第2保留記憶手段と、をさらに備え、
前記第2保留記憶手段に記憶されている前記保留記憶の数に対応する保留表示を第2保留表示装置及び前記画像表示装置に表示させ、
前記変動演出において、前記特別遊技判定の判定結果が前記特別遊技を実行するとの判定結果である可能性があることを示唆する第1リーチ演出と、当該第1リーチ演出よりも前記特別遊技判定の判定結果が前記特別遊技を実行するとの判定結果である可能性が高いことを示唆する第2リーチ演出を実行可能であり、
前記変動演出において前記第2リーチ演出が行われる場合、当該第2リーチ演出が行われているときは前記画像表示装置に表示させている前記保留表示の表示を規制し、
前記変動演出において前記第1リーチ演出が行われる場合、当該第1リーチ演出が行われているときは前記画像表示装置に表示させている前記保留表示の表示を規制せず、
前記画像表示装置に表示させている前記保留表示を前記特別遊技判定の判定結果が前記特別遊技を実行するとの判定結果である可能性があることを示唆する特定表示態様に変化することがある一方、
前記画像表示装置に表示させている前記保留表示を前記特定表示態様に変化させた場合であっても、前記第2保留表示装置に表示させている前記保留表示の表示態様は変化させることがなく、
バックアップ電源が供給されている前記第1保留記憶手段に前記保留記憶が記憶されているときに前記遊技機への電力の供給が停止されてから当該遊技機への電力の供給が再開された場合、前記メイン制御手段によって前記第1保留表示装置に前記保留表示が表示された後に、前記保留表示を前記画像表示装置に表示させる、
ことを特徴とする遊技機。」

から、平成30年3月5日付けの手続補正書における、

「【請求項1】
A 始動条件の成立を契機に、始動情報を取得する始動情報取得手段と、前記始動情報取得手段により前記始動情報を取得した後、判定条件が成立したことを契機に、当該始動情報に基づいて遊技者に有利な特別遊技を実行するか否かの特別遊技判定を行う特別遊技判定手段とを備えるメイン制御手段と、
B 前記メイン制御手段からの制御情報に基づいて、画像表示装置において変動演出を実行するサブ制御手段と、を備える遊技機において、
C 前記メイン制御手段は、
前記始動条件が成立したが前記判定条件が成立していない場合は、前記始動情報取得手段により取得された前記始動情報を保留記憶として所定数まで記憶する第1保留記憶手段と、
D 前記第1保留記憶手段に記憶されている前記保留記憶の数を保留記憶数情報として前記サブ制御手段に送信する保留記憶数情報送信手段と、をさらに備え、
E 前記第1保留記憶手段に記憶されている前記保留記憶の数に対応する保留表示を第1保留表示装置に表示させ、
F 前記サブ制御手段は、
前記保留記憶数情報送信手段により送信された前記保留記憶数情報が示す前記保留記憶の数を記憶する第2保留記憶手段と、をさらに備え、
G 前記第2保留記憶手段に記憶されている前記保留記憶の数に対応する保留表示を第2保留表示装置及び前記画像表示装置に表示させ、
H 前記変動演出において、前記特別遊技判定の判定結果が前記特別遊技を実行するとの判定結果である可能性があることを示唆する第1リーチ演出と、当該第1リーチ演出よりも前記特別遊技判定の判定結果が前記特別遊技を実行するとの判定結果である可能性が高いことを示唆する第2リーチ演出を実行可能であり、
I 前記変動演出において前記第2リーチ演出が行われているときは前記画像表示装置に表示させている前記保留表示の表示を規制するが、前記第2保留表示装置に表示させている前記保留表示の表示を規制しない一方、
J 前記変動演出において前記第1リーチ演出が行われているときは前記画像表示装置及び前記第2保留表示装置に表示させている前記保留表示の表示を規制せず、
K 前記画像表示装置に表示させている前記保留表示を前記特別遊技判定の判定結果が前記特別遊技を実行するとの判定結果である可能性があることを示唆する特定表示態様に変化することがある一方、
L 前記画像表示装置に表示させている前記保留表示を前記特定表示態様に変化させた場合であっても、前記第2保留表示装置に表示させている前記保留表示の表示態様は変化させることがなく、
M バックアップ電源が供給されている前記第1保留記憶手段に前記保留記憶が記憶されているときに前記遊技機への電力の供給が停止されてから当該遊技機への電力の供給が再開された場合、前記メイン制御手段によって前記第1保留表示装置に前記保留表示が表示された後に、前記保留表示を前記画像表示装置に表示させる、
ことを特徴とする遊技機。」

に補正された(下線部は補正箇所を示す。また、A?Mは、分説するために当審にて付した。)。

2 補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記変動演出において前記第2リーチ演出が行われる場合、当該第2リーチ演出が行われているときは前記画像表示装置に表示させている前記保留表示の表示を規制」するとの事項を、「前記第2リーチ演出が行われているときは」「前記第2保留表示装置に表示させている前記保留表示の表示を規制しない」点を限定して、「前記変動演出において前記第2リーチ演出が行われているときは前記画像表示装置に表示させている前記保留表示の表示を規制するが、前記第2保留表示装置に表示させている前記保留表示の表示を規制しない」とするとともに、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記変動演出において前記第1リーチ演出が行われる場合、当該第1リーチ演出が行われているときは前記画像表示装置に表示させている前記保留表示の表示を規制」しないとの事項を、「前記第1リーチ演出が行われているときは」「前記第2保留表示装置に表示させている前記保留表示の表示を規制」しない点を限定して「前記変動演出において前記第1リーチ演出が行われているときは前記画像表示装置及び前記第2保留表示装置に表示させている前記保留表示の表示を規制」しないとしたものである。
また、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。

3 独立特許要件について
本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1の本件補正の概要において示したとおりのものである。

(2)刊行物
(2-1)刊行物1に記載された発明
平成30年1月9日付け拒絶理由通知に刊行物1として引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2015-172号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。

(1-a) 「【0015】
図1は、本発明の実施の形態における遊技機を適用して構成した遊技機1の装置構成図の一例であって、図2は、本発明のガラス枠を開放させた状態の遊技機1の斜視図であり、図3は、1つの遊技機1の裏面側の斜視図である。」

(1-b) 「【0037】
第1液晶表示装置31には、演出が行われていない待機中にデモ画像を表示したり、遊技の進行に応じた画像を表示したりする。中でも、後述する大当たりの抽選結果を報知するための3個の演出図柄38が表示され、特定の演出図柄38の組合せ(例えば、777等)が停止表示されることにより、大当たりの抽選の結果として大当たりが報知される。
【0038】
より具体的には、第1始動口14または第2始動口15に遊技球が入球したときには、3個の演出図柄38をそれぞれスクロール表示(回転表示)による変動表示を行うとともに、所定時間経過後に当該スクロールを停止させて、演出図柄38を停止表示するものである。また、この演出図柄38の変動表示中に、キャラクタ等によって構成される演出画像を表示することによって、大当たりに当選するかもしれないという高い期待感を遊技者に与えるようにもしている。」

(1-c) 「【0054】
より詳細には、第1始動口14に遊技球が入球したときに取得された特別図柄判定用乱数値を第1保留として記憶し、第2始動口15に遊技球が入球したときに取得された特別図柄判定用乱数値を第2保留として記憶する。
【0055】
これら両保留(第1保留および第2保留)は、それぞれ上限保留個数を4個に設定し、その保留個数は、それぞれ第1特別図柄保留表示器23と第2特別図柄保留表示器24とに表示される。」

(1-d) 「【0076】
図4に示すように、第1特別図柄表示装置20、第2特別図柄表示装置21、普通図柄表示装置22、第1特別図柄保留表示器23、第2特別図柄保留表示器24、普通図柄保留表示器25、右打ち表示器26は、何れも主制御基板110に接続される。
また、第1特別図柄表示装置50、第2特別図柄表示装置51、普通図柄表示装置52、第1特別図柄保留表示器53、第2特別図柄保留表示器54、普通図柄保留表示器55、右打ち表示器56は、何れも演出制御基板120に接続される。
・・・
【0078】
このように、遊技機1は、主制御基板110で管理するLED(第1特別図柄表示装置20、第2特別図柄表示装置21、普通図柄表示装置22、第1特別図柄保留表示器23、第2特別図柄保留表示器24、普通図柄保留表示器25、右打ち表示器26)の点灯タイミングと同期させて、演出制御基板120の管理によるLED(第1特別図柄表示装置50、第2特別図柄表示装置51、普通図柄表示装置52、第1特別図柄保留表示器53、第2特別図柄保留表示器54、普通図柄保留表示器55、右打ち表示器56)を点灯させる。」

(1-e) 「【0188】
例えば、演出制御基板120におけるサブCPU120aは、主制御基板110から特別図柄の変動態様を示す変動パターン指定コマンドを受信すると、受信した変動パターン指定コマンドの内容を解析して、第1液晶表示装置31、音声出力装置32、演出用駆動装置33、演出用照明装置34、第2液晶表示装置37に所定の演出を実行させるためのデータ(後述する演出パターン指定コマンド等)を特定する。そして、特定したデータ(演出パターン指定コマンド等)を画像制御基板150やランプ制御基板140へ送信する。」

(1-f) 「【0378】
図19は、本実施の形態における遊技機1の主制御基板110で行われるタイマ割込処理の詳細な流れを示すフローチャートの一例である。
・・・
【0388】
さらに、第1始動口検出スイッチ14aから検出信号を入力した場合には、第1特別図柄保留数(U1)記憶領域にセットされているデータが4未満であれば、第1特別図柄保留数(U1)記憶領域に1を加算し、特別図柄判定用乱数値、大当たり図柄用乱数値、小当たり図柄用乱数値、リーチ判定用乱数値および特図変動用乱数値を取得して、取得した各種乱数値を第1特別図柄乱数値記憶領域にある所定の記憶部(第0記憶部?第4記憶部)に記憶する。」

(1-g) 「【0408】
図20は、本実施の形態における遊技機1の主制御基板110で行われる特図特電制御処理の詳細な流れを示すフローチャートの一例である。
・・・
【0410】
このとき、特図特電処理データが「0(ゼロ)」であれば、主制御基板110は、特別図柄記憶判定処理を行い(S2003)、また、特図特電処理データが「1」であれば、特別図柄変動処理を行い(S2004)、さらに、特図特電処理データが「2」であれば、特別図柄停止処理を行う(S2005)。」

(1-h) 「【0414】
図21は、本実施の形態における遊技機1の主制御基板110で行われる特別図柄記憶判定処理の詳細な流れを示すフローチャートの一例である。
・・・
【0419】
また、第2特別図柄保留数(U2)記憶領域に1以上のデータがセットされておらず、第1特別図柄保留数(U1)記憶領域に1以上のデータがセットされている場合には、第1特別図柄保留数(U1)記憶領域に記憶されている値から1を減算した後、第1特別図柄乱数値記憶領域にある第1記憶部?第4記憶部に記憶された各種乱数値を1つ前の記憶部にシフトさせる。このときにも、既に第0記憶部に書き込まれていた各種乱数値は上書きされて消去されることとなる。そして、第1特別図柄乱数値記憶領域の第0記憶部に記憶された特別図柄判定用乱数値が「大当たり」に対応する乱数値であるか、「小当たり」に対応する乱数値であるかの判定を行う。」

(1-i) 「【0449】
図23は、本実施の形態における遊技機1の演出制御基板120で行われるタイマ割込処理の詳細な流れを示すフローチャートの一例である。
・・・
【0453】
このコマンド解析処理において、サブCPU120aは、サブRAM120cの受信バッファに格納されているコマンドを解析する処理を行う。コマンド解析処理の具体的な説明は、図24および図25を用いて後述する。なお、演出制御基板120は、主制御基板110から送信されたコマンドを受信すると、図示しない演出制御基板120のコマンド受信割込処理が発生し、受信したコマンドを受信バッファに格納する。その後、受信したコマンドの解析処理が行われる。」

(1-j) 「 【0456】
図24は、本実施の形態における遊技機1の演出制御基板120で行われるコマンド解析処理の詳細な流れを示すフローチャートの一例であって、図24は、図23に示すコマンド解析処理の続きを示すフローチャートである。
・・・
【0462】
受信バッファに格納されているコマンドが特別図柄記憶指定コマンドであれば(S2404でYES)、その特別図柄記憶指定コマンドを解析して第1液晶表示装置31及び/又は第2液晶表示装置37に表示させる特図保留画像の表示個数を決定するとともに、決定した特図保留画像の表示個数に対応する特図表示個数指定コマンドを画像制御基板150とランプ制御基板140に送信する特別図柄記憶数決定処理を行う(S2405)。
・・・
【0468】
受信バッファに格納されているコマンドが変動パターン指定コマンドであれば(S2409でYES)、サブCPU120aは、更新されている演出用乱数値1から1つの乱数値を取得し、取得した演出用乱数値1、受信した変動パターン指定コマンド及び演出モード記憶領域にセットされている演出モードに基づいて、複数の変動演出パターンの中から1つの変動演出パターンを決定する変動演出パターン決定処理を行う(S2410)。
【0469】
その後、かかる演出パターンに基づいて、第1液晶表示装置31、音声出力装置32、装飾装置33a、演出用照明装置34、第2液晶表示装置37が制御されることになる。なお、ここで決定した変動演出パターンに基づいて、演出図柄38の変動態様が決定されることとなる。」

上記(1-a)?(1-j)の記載事項及び図面から、以下(1-k)?(1-n)の事項が導かれる。

(1-k)刊行物1には、「主制御基板110で行われるタイマ割込処理の詳細な流れを示すフローチャート」(段落【0378】)、「第1始動口検出スイッチ14aから検出信号を入力した場合には、第1特別図柄保留数(U1)記憶領域にセットされているデータが4未満であれば、・・・特別図柄判定用乱数値・・・を取得して、取得した各種乱数値を第1特別図柄乱数値記憶領域にある所定の記憶部(第0記憶部?第4記憶部)に記憶する。」(段落【0388】)と記載されているから、刊行物1には、第1始動口検出スイッチ14aから検出信号を入力した場合に、第1特別図柄保留数(U1)記憶領域にセットされているデータが4未満であれば、特別図柄判定用乱数値を取得して第1特別図柄乱数値記憶領域の第0記憶部?第4記憶部に記憶する主制御基板110が記載されているといえる。
また、刊行物1には、「特図特電処理データが「0(ゼロ)」であれば、主制御基板110は、特別図柄記憶判定処理を行い(S2003)」(段落【0410】)、「主制御基板110で行われる特別図柄記憶判定処理の詳細な流れを示すフローチャート」(段落【0414】)、「第1特別図柄乱数値記憶領域にある第1記憶部?第4記憶部に記憶された各種乱数値を1つ前の記憶部にシフトさせる。・・・第1特別図柄乱数値記憶領域の第0記憶部に記憶された特別図柄判定用乱数値が「大当たり」に対応する乱数値であるか、「小当たり」に対応する乱数値であるかの判定を行う。」(段落【0419】)と記載されているから、刊行物1には、主制御基板110は、特図特電処理データが「0」であれば、特別図柄記憶判定処理において、第1記憶部?第4記憶部に記憶された特別図柄判定用乱数値を1つ前の記憶部にシフトさせ、第0記憶部に記憶された特別図柄判定用乱数値が「大当たり」に対応する乱数値であるかの判定を行う点が記載されているといえる。
以上より、刊行物1には、第1始動口検出スイッチ14aから検出信号を入力した場合に、第1特別図柄保留数(U1)記憶領域にセットされているデータが4未満であれば、特別図柄判定用乱数値を取得して第1特別図柄乱数値記憶領域の第0記憶部?第4記憶部に記憶し、特図特電処理データが「0」であれば、特別図柄記憶判定処理において、第1記憶部?第4記憶部に記憶された特別図柄判定用乱数値を1つ前の記憶部にシフトさせ、第0記憶部に記憶された特別図柄判定用乱数値が「大当たり」に対応する乱数値であるかの判定を行う主制御基板110が記載されているといえる。

(1-l)刊行物1には、「演出制御基板120におけるサブCPU120aは、主制御基板110から特別図柄の変動態様を示す変動パターン指定コマンドを受信すると、受信した変動パターン指定コマンドの内容を解析して、第1液晶表示装置31、音声出力装置32、演出用駆動装置33、演出用照明装置34、第2液晶表示装置37に所定の演出を実行させるためのデータ(後述する演出パターン指定コマンド等)を特定する。」(段落【0188】)、「演出制御基板120で行われるコマンド解析処理の詳細な流れを示すフローチャート」(段落【0456】)、「受信バッファに格納されているコマンドが変動パターン指定コマンドであれば(S2409でYES)、サブCPU120aは、・・・複数の変動演出パターンの中から1つの変動演出パターンを決定する」(段落【0468】)、「かかる演出パターンに基づいて、第1液晶表示装置31、音声出力装置32、装飾装置33a、演出用照明装置34、第2液晶表示装置37が制御されることになる。なお、ここで決定した変動演出パターンに基づいて、演出図柄38の変動態様が決定されることとなる。」(段落【0469】)と記載されているから、刊行物1には、主制御基板110から受信した特別図柄の変動態様を示す変動パターン指定コマンドの内容を解析して変動演出パターンを決定し、変動演出パターンに基づいて演出図柄38の変動態様を決定し、第1液晶表示装置31を制御する演出制御基板120が記載されているといえる。
また、刊行物1には、「第1液晶表示装置31には」(段落【0037】)「3個の演出図柄38をそれぞれスクロール表示(回転表示)による変動表示を行う」(段落【0038】)と記載されているから、刊行物1の第1液晶表示装置31は、演出図柄38の変動表示を行うものといえる。
以上より、刊行物1には、主制御基板110から受信した特別図柄の変動態様を示す変動パターン指定コマンドの内容を解析して変動演出パターンを決定し、変動演出パターンに基づいて演出図柄38の変動態様を決定し、演出図柄38の変動表示を行う第1液晶表示装置31を制御する演出制御基板120が記載されているといえる。

(1-m)刊行物1には、「特別図柄判定用乱数値を第1保留として記憶し」(段落【0054】)、「その保留個数は、それぞれ第1特別図柄保留表示器23と第2特別図柄保留表示器24とに表示される。」(段落【0055】)と記載されているから、刊行物1には、記憶された特別図柄判定用乱数値である第1保留の保留個数を、第1特別図柄保留表示器23に表示させる点が記載されているといえる。
また、刊行物1には、「第1特別図柄保留表示器23・・・は、何れも主制御基板110に接続される。」(段落【0076】)、「主制御基板110で管理するLED(・・・第1特別図柄保留表示器23」(段落【0078】)と記載されているから、主制御基板110が保留個数の第1特別図柄保留表示器23への表示を行うことは、明らかである。
以上より、刊行物1には、主制御基板110は、記憶された特別図柄判定用乱数値である第1保留の保留個数を、第1特別図柄保留表示器23に表示させる点が記載されているといえる。

(1-n)図1には、53の符号が付された長円と、その内部の2つの円が図示されている。また、刊行物1には、「演出制御基板120の管理によるLED(・・・第1特別図柄保留表示器53」(段落【0078】)と記載されているから、図1の上記53の符号が付された長円が第1特別図柄保留表示器53であり、その内部の2つの円が、第1特別図柄保留表示器53を構成する2つのLEDを示すことは、明らかである。
以上より、刊行物1には、2つのLEDからなる第1特別図柄保留表示器53が記載されているといえる。

上記(1-a)?(1-j)の記載事項及び(1-k)?(1-n)の認定事項を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。(a?gは、本願補正発明のA?Gに対応させて付した。)

「a 第1始動口検出スイッチ14aから検出信号を入力した場合に、第1特別図柄保留数(U1)記憶領域にセットされているデータが4未満であれば、特別図柄判定用乱数値を取得して第1特別図柄乱数値記憶領域の第0記憶部?第4記憶部に記憶し、特図特電処理データが「0」であれば、特別図柄記憶判定処理において、第1記憶部?第4記憶部に記憶された特別図柄判定用乱数値を1つ前の記憶部にシフトさせ、第0記憶部に記憶された特別図柄判定用乱数値が「大当たり」に対応する乱数値であるかの判定を行う主制御基板110と、(認定事項(1-k))
b 主制御基板110から受信した特別図柄の変動態様を示す変動パターン指定コマンドの内容を解析して変動演出パターンを決定し、変動演出パターンに基づいて演出図柄38の変動態様を決定し、演出図柄38の変動表示を行う第1液晶表示装置31を制御する演出制御基板120と、を備える遊技機1において、(段落【0015】、認定事項(1-l))
c 主制御基板110は、
第1始動口検出スイッチ14aから検出信号を入力した場合に、第1特別図柄保留数(U1)記憶領域にセットされているデータが4未満であれば、取得した特別図柄判定用乱数値を記憶する第1特別図柄乱数値記憶領域と、(段落【0378】、【0388】)
d 演出制御基板120が解析して第1液晶表示装置31に表示させる特図保留画像の表示個数を決定するための特別図柄記憶指定コマンドを演出制御基板120に送信する機能と、をさらに備え、(段落【0453】、【0462】)
e 記憶された特別図柄判定用乱数値である第1保留の保留個数を、第1特別図柄保留表示器23に表示させ、(認定事項(1-m))
f 演出制御基板120は、
主制御基板110から送信された特別図柄記憶指定コマンドを受信し、解析して第1液晶表示装置31に表示させる特図保留画像の表示個数を決定する機能と、をさらに備え、(段落【0453】、【0462】)
g 演出制御基板120は、第1特別図柄保留表示器23の点灯タイミングと同期させて、2つのLEDからなる第1特別図柄保留表示器53を点灯させ、第1液晶表示装置31に特図保留画像を表示させる、(段落【0078】、【0462】、認定事項(1-n))
遊技機。(段落【0015】)」

(2-2)刊行物2に記載された事項
平成30年1月9日付け拒絶理由通知に刊行物2として引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2014-200257号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。

(2-a) 「【0010】
以下、図面を用いて、本発明の第一の遊技台(例えば、パチンコ機100等の弾球遊技機やスロット機等の回胴遊技機)の実施形態(第1実施形態)について詳細に説明する。
[実施形態1]
<全体構成>
まず、図1を用いて、本発明の第1実施形態に係るパチンコ機100の全体構成について説明する。なお、同図はパチンコ機100を正面側(遊技者側)から見た外観斜視図である。」

(2-b) 「【0145】
テーブル1?5の各テーブルは、変動時間と、特図2変動時間決定用乱数値の乱数選択範囲との対応関係が規定されている。また、この図9(a)に示す各テーブルには、各変動時間に対応した装飾図柄表示装置208における演出態様を表す変動パターンの名称も参考までに示されている。本実施形態では、特図の変動時間と装飾図柄表示装置208の演出態様は、1対1に対応付けられている。主制御部300が、特図の変動時間に対応した装飾図柄表示装置208の演出態様まで決定してもよいが、本実施形態では、ここで決定された変動時間を表す情報を、第1副制御部400に送信し、第1副制御部400が、変動時間に対応した装飾図柄表示装置208における演出態様を決定する。本実施形態では、10種類の変動パターンが用意されている。これらの変動パターンには、リーチ演出を伴う変動パターンと、リーチ演出を伴わない変動パターンとがある。本実施形態では、リーチ演出として、ノーマルリーチ、スーパーリーチA、およびスーパーリーチBが用意されている。ノーマルリーチとは、一般に2つの図柄表示領域(例えば、図3に示す左右図柄表示領域208a、208c)が等しい装飾図柄を停止表示し、残りの1つの図柄表示領域(例えば中図柄表示領域208b)が変動表示している状態(リーチ状態)のこと、すなわち、変動表示している図柄表示領域が特定の図柄(停止表示している図柄表示領域と等しい図柄)を停止表示すれば所定の大当り図柄の組合せ(図5(b)に示す“装飾図柄の組合せ1”や“装飾図柄の組合せ2”)を停止表示することとなる状態のことである。
【0146】
スーパーリーチA(以下、単に“リーチA”と称する場合がある)やスーパーリーチB(以下、単に“リーチB”と称する場合がある)は、ノーマルリーチにさらに特殊な変動表示等を加味して演出効果を向上させたリーチの一種である。
【0147】
なお、スーパーリーチとしては、ロングリーチ、ノーマル逆転リーチ、ダブルラインリーチ等が知られており、さらには、特別マルチラインリーチ、全回転リーチ、特別全回転リーチ等のスペシャルリーチも知られている。本明細書で単にリーチというときには、ノーマルリーチとスーパーリーチとスペシャルリーチを含んだ装飾図柄の変動態様を意味する。このリーチは、特図の当否判定(抽選)の結果が当りの判定結果になることを、その当否判定を行った後であってその当否判定の結果を報知する前に遊技者に予告する演出であり、リーチを行うか否かは、その当否判定を行った後に決定される。リーチなしは、特図の変動時間が相対的に短く、スーパーリーチは特図の変動時間が相対的に長く、ノーマルリーチは特図の変動時間がリーチなしとスーパーリーチの間の時間になる。
【0148】
特図2決定結果が特図Aあるいは特図Bであった場合(テーブル1参照)には、ともに電サポ付きの15Rの大当り図柄であり、テーブル1に示すように、65秒の最長変動時間が最も選ばれやすく、15秒の変動時間が最も選ばれにくい。なお、この場合には、装飾図柄表示装置208ではリーチ演出が行われ、装飾図柄表示装置208で、スーパーリーチBに発展すると15R大当りの可能性が高くなり、スーパーリーチAに発展しても15R大当りの可能性があることになる。すなわち、スーパーリーチBやスーパーリーチAは15R大当りの信頼度が他のリーチ態様よりも高いリーチ態様である。」

(2-c) 「【0478】
この図39に示す例では、装飾図柄表示装置208における特図1保留表示領域を図示省略し、特図2保留表示領域のみを示している。図39に示す特図2保留表示領域には、RAM308の特図2保留記憶部に始動情報が記憶された順(入賞順)に古いものから順番に左側から並べて表示される。
・・・
【0481】
図39(b)では、第一保留表示291が表す保留1に基づく図柄変動表示が開始され、同図(b)に示す装飾図柄表示装置208では、装飾図柄の変動表示が開始されている。また、第一保留表示291が消化保留表示領域2085にシフト表示された様子が示されている。なお、図39(a)に示す第一保留表示291が表示されていた位置には、図39(a)に示す第二保留表示292が表示されている。消化保留表示領域2085にシフト表示された保留表示(変動中アイコン290)は、表示態様がキャラクタの顔の予告表示態様に変化し、予告演出が行われている。消化保留表示領域2085における予告演出は、先読み予告の一種であるが、予告対象は、現在行われている図柄変動表示(当該図柄変動表示)になる。なお、消化保留表示領域2085内に保留表示が表示されている時間は、図柄変動表示開始後数秒であるが、図柄変動表示終了前、あるいは図柄変動表示終了時まで表示するようにしてもよい。
【0482】
図39(b)で開始された装飾図柄の変動表示では、同図(c)に示すようにリーチ演出が開始され、次いで、スーパーリーチ演出に発展する。図39(c)に示す装飾図柄表示装置208では、スーパーリーチ演出の開始画面として、画面が真っ暗になっている(以下、暗転演出と称する)。この暗転演出が行われると、装飾図柄表示装置208にこれまで表示されていた、装飾図柄の変動表示や、保留表示、および消化保留表示領域2085総てが見えなくなる。
【0483】
暗転演出の後、装飾図柄表示装置208では、図39(e)に示すように、左側の主人公と右側の敵役の決闘シーンに画面が切り替わり、装飾図柄の変動表示は画面右上に縮小して表示されている。なお、保留表示や消化保留表示領域2085は消えている。
【0484】
やがて、図39(f)に示すように、スーパーリーチ演出の終了画面が表示され、敵役が逃亡し、画面右上に表示された装飾図柄の変動表示は、「装飾7」-「装飾8」-「装飾7」の組み合わせで揺れ停止表示が開始されている。なお、この場面でも保留表示や消化保留表示領域2085は非表示である。ここで、スーパーリーチ演出が終了する。このように、スーパーリーチ演出の開始(図39(d))から終了(図39(e))までの間、保留表示や消化保留表示領域2085は、非表示になる。すなわち、スーパーリーチ演出中には、先読み予告が行われない。また、スーパーリーチ演出中に、電チュー(第2特図始動口232の羽根部材2321)は開放し、1球の入球があるが、増加した保留を表す保留表示も非表示である。」

上記(2-a)?(2-c)の記載事項及び図面から、以下(2-d)、(2-e)の事項が導かれる。

(2-d)刊行物2には、「リーチ演出として、ノーマルリーチ、スーパーリーチA、およびスーパーリーチBが用意されている。」(段落【0145】)と記載されている。また、刊行物2には、「スーパーリーチとしては、ロングリーチ、ノーマル逆転リーチ、ダブルラインリーチ等が知られており、」(段落【0147】)と記載されており、当該記載のスーパーリーチが、スーパーリーチA、およびスーパーリーチBを含むものであることは、明らかである。さらに、刊行物2には、「スーパーリーチBやスーパーリーチAは15R大当りの信頼度が他のリーチ態様よりも高いリーチ態様である。」(段落【0148】)と記載されているから、刊行物1には、リーチ演出として、ノーマルリーチと、大当りの信頼度がノーマルリーチを含む他のリーチ態様よりも高いスーパーリーチとを実行可能である点が記載されているといえる。
さらに、刊行物2には、「ノーマルリーチとは、一般に2つの図柄表示領域(例えば、図3に示す左右図柄表示領域208a、208c)が等しい装飾図柄を停止表示し、残りの1つの図柄表示領域(例えば中図柄表示領域208b)が変動表示している状態」(段落【0145】)と記載されているから、刊行物2には、リーチ演出として、左右図柄表示領域208a、208cが等しい装飾図柄を停止表示し、残りの1つの中図柄表示領域208bが変動表示するノーマルリーチと、大当りの信頼度がノーマルリーチよりも高いスーパーリーチとを実行可能である点が記載されているといえる。

(2-e)刊行物2には、「図39に示す特図2保留表示領域には、RAM308の特図2保留記憶部に始動情報が記憶された順(入賞順)に古いものから順番に左側から並べて表示される。」(段落【0478】)、「同図(c)に示すようにリーチ演出が開始され、次いで、スーパーリーチ演出に発展する。」(段落【0482】)と記載されている。
また、図39(c)には、画面中央に7、下向きの矢印、7の図柄が表示され、画面の下部に、4つの丸が図示されており、また、図39(b)には上記4つの丸と同じ位置にいおいて291、292との符号が図示されており、段落【0481】には、「第一保留表示291」及び「第二保留表示292」との記載があるから、上記図39(c)の下部の丸が、保留表示を意味することは、明らかである。
したがって、刊行物2には、リーチ演出が行われ、スーパーリーチ演出に発展する前までにおいては、保留表示がされる点が記載されているといえる。
また、刊行物2には、「スーパーリーチ演出の開始画面として、画面が真っ暗になっている(以下、暗転演出と称する)。この暗転演出が行われると、装飾図柄表示装置208にこれまで表示されていた、装飾図柄の変動表示や、保留表示、および消化保留表示領域2085総てが見えなくなる。」(段落【0482】)、「暗転演出の後、・・・なお、保留表示や消化保留表示領域2085は消えている。」(段落【0483】)、「スーパーリーチ演出の終了画面が表示され、・・・なお、この場面でも保留表示や消化保留表示領域2085は非表示である。ここで、スーパーリーチ演出が終了する。」(段落【0484】)と記載されているから、刊行物2には、スーパーリーチでは、保留表示が消える点が記載されているといえる。
以上より、刊行物2には、リーチ演出が行われる時には、保留表示がされ、スーパーリーチに発展すると、保留表示が消える点が記載されているといえる。

上記(2-a)?(2-c)の記載事項及び(2-d)?(2-e)の認定事項を総合すると、刊行物2には、次の事項が記載されていると認められる(以下「刊行物2記載の事項」という。)。

「パチンコ機100において、(段落【0010】)
リーチ演出として、左右図柄表示領域208a、208cが等しい装飾図柄を停止表示し、残りの1つの中図柄表示領域208bが変動表示するノーマルリーチと、大当りの信頼度がノーマルリーチよりも高いスーパーリーチとを実行可能であり、(認定事項(2-d))
リーチ演出が行われる時には、保留表示がされ、スーパーリーチに発展すると、保留表示が消える点。(認定事項(2-e))」

(2-3)刊行物3に記載された事項
平成30年1月9日付け拒絶理由通知に刊行物3として引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2007-296130号公報(以下「刊行物3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。

(3-a) 「【0027】
実施の形態1.
まず、遊技機の一例であるパチンコ遊技機1の全体の構成について説明する。図1はパチンコ遊技機(弾球遊技機)1を正面からみた正面図である。なお、ここでは、遊技機の一例としてパチンコ遊技機を示すが、本発明による遊技機はパチンコ遊技機に限られず、例えば、画像式の遊技機、コイン遊技機、および、スロット機等であってもよい。」

(3-b) 「【0030】
遊技領域7の中央付近には、各々を識別可能な複数種類の演出用の背景図柄と、各々を識別可能な複数種類の演出用の第1飾り図柄と、各々を識別可能な複数種類の演出用の第2飾り図柄とを可変表示し表示結果を導出表示する可変表示装置9が設置されている。この実施形態では、可変表示装置9は液晶表示装置(LCD)で構成されている。可変表示装置9における表示領域は、背景図柄を可変表示するための背景図柄表示領域(画面中央の領域)9aと、第1飾り図柄を可変表示するための第1飾り図柄表示領域(画面の左隅の小さな領域)9bと、第2飾り図柄を可変表示するための第2飾り図柄表示領域(画面の右隅の小さな領域)9cと、始動入賞口13,14に入った入賞球数すなわち保留記憶(始動記憶または始動入賞記憶ともいう。)数を表示するためのメモリ表示領域(画面下側の領域)9dとに分けられている。図1に示すように、メモリ表示領域9dには、8個の始動記憶表示エリアが設けられ、最大8個の保留記憶数(始動記憶数)を表示することができる。なお、図1に示す例では、背景図柄表示領域9aとメモリ表示領域9dとは、それらの領域が境界線で区切られていないが、境界線で区切られていてもよい。」

(3-c) 「【0041】
第1特別図柄表示器8aの下側には、第1の開始条件の成立していない第1の実行条件の成立数(第1始動入賞口13に入った有効入賞球数すなわち保留記憶(始動記憶または始動入賞記憶ともいう。)数)を表示する4つの表示器からなる第1特別図柄保留記憶表示器18aが設けられている。第1特別図柄保留記憶表示器18aは、第1始動入賞口13に入った有効始動入賞がある毎に、点灯する表示器の数を1増やす。そして、第1特別図柄表示器8aの可変表示が開始される毎に、点灯する表示器の数を1減らす。また、第2特別図柄表示器8bの下側には、第2の開始条件の成立していない第2の実行条件の成立数(第2始動入賞口14に入った有効入賞球数すなわち保留記憶数)を表示する4つの表示器からなる第2特別図柄保留記憶表示器18bが設けられている。第2特別図柄保留記憶表示器18bは、第2始動入賞口14に入った有効始動入賞がある毎に、点灯する表示器の数を1増やす。そして、第2特別図柄表示器8bの可変表示が開始される毎に、点灯する表示器の数を1減らす。なお、この例では、保留記憶数を表示する表示器(特別図柄保留記憶表示器)が可変表示装置9とは別個に設けられているが、例えば、可変表示装置9の表示領域の一部を特別図柄保留記憶表示領域にしてもよい。」

(3-d) 「【0090】
図4は、主基板(遊技制御基板)31における回路構成の一例を示すブロック図である。なお、図4には、払出制御基板37および演出制御基板80等も示されている。主基板31には、プログラムに従ってパチンコ遊技機1を制御する遊技制御用マイクロコンピュータ(遊技制御手段に相当)560が搭載されている。遊技制御用マイクロコンピュータ560は、ゲーム制御(遊技進行制御)用のプログラム等を記憶するROM54、ワークメモリとして使用される記憶手段としてのRAM55、プログラムに従って制御動作を行うCPU56およびI/Oポート部57を含む。この実施の形態では、ROM54およびRAM55は遊技制御用マイクロコンピュータ560に内蔵されている。すなわち、遊技制御用マイクロコンピュータ560は、1チップマイクロコンピュータである。1チップマイクロコンピュータには、CPU56の他に少なくともRAM55が内蔵されていればよく、ROM54は外付けであっても内蔵されていてもよい。また、I/Oポート部57は、外付けであってもよい。
・・・
【0096】
演出制御基板80は、演出制御用CPU101およびRAMを含む演出制御用マイクロコンピュータ100を搭載している。なお、RAMは外付けであってもよい。演出制御基板80において、演出制御用CPU101は、内蔵または外付けのROM(図示せず)に格納されたプログラムに従って動作し、中継基板77を介して入力される主基板31からの取込信号(演出制御INT信号)に応じて、入力ドライバ102および入力ポート103を介して演出制御コマンドを受信する。また、演出制御用CPU101は、演出制御コマンドにもとづいて、VDP(ビデオディスプレイプロセッサ)109に、LCDを用いた可変表示装置9の表示制御を行わせる。」

(3-e) 「【0120】
タイマ割込が発生すると、CPU56は、図7に示すステップS20?S35の遊技制御処理を実行する。遊技制御処理において、まず、電源断信号が出力されたか否か(オン状態になったか否か)を検出する電源断処理を実行する(ステップS20)。電源断信号は、例えば電源基板に搭載されている電源監視回路920が、遊技機に供給される電源の電圧の低下を検出した場合に出力する。そして、電源断処理において、CPU56は、電源断信号が出力されたことを検出したら、必要なデータをバックアップRAM領域に保存するための電力供給停止時処理を実行する。次いで、入力ドライバ回路58を介して、ゲートスイッチ32a、第1始動口スイッチ13a、第2始動口スイッチ14a、およびカウントスイッチ23の検出信号を入力し、それらの状態判定を行う(スイッチ処理:ステップS21)。
【0121】
次に、CPU56は、第1特別図柄表示器8a、第2特別図柄表示器8b、普通図柄表示器10、第1特別図柄保留記憶表示器18a、第1特別図柄保留記憶表示器18bおよび普通図柄始動記憶表示器41の表示制御を行う表示制御処理を実行する(ステップS22)。第1特別図柄表示器8a、第2特別図柄表示器8bおよび普通図柄表示器10については、ステップS33,S34で設定された出力バッファの内容に応じて各表示器に対して駆動信号を出力する制御を実行する。
・・・
【0128】
また、CPU56は、保留記憶処理を行う(ステップS29)。保留記憶処理では、CPU56は、第1特別図柄の保留記憶数(第1保留記憶数)、第2特別図柄の保留記憶数(第2保留記憶数)、および背景図柄の保留記憶数(第1保留記憶数と第2保留記憶数との合計である合計数(合算保留記憶数))をカウントして管理する処理を実行する。」

(3-f) 「【0153】
第1保留記憶数が上限値に達していないときは(ステップS312のN)、CPU56は、ソフトウェア乱数(大当り判定用乱数等を生成するためのカウンタの値等)を抽出し、それらを、抽出した乱数値として第1保留記憶数カウンタの値に対応する第1保留記憶バッファにおける保存領域に格納する処理を実行する(ステップS313)。乱数を抽出するとは、乱数を生成させるためのカウンタからカウント値を読み出して、読み出したカウント値を乱数値とすることである。ステップS313では、図8に示された乱数のうち、ランダム1?ランダム4,ランダム8が抽出される。保留記憶バッファにおいて、保存領域は、第1始動入賞記憶数の上限値と同数確保されている。また、大当り判定用乱数等を生成するためのカウンタや保留記憶バッファは、RAM55に形成されている。「RAMに形成されている」とは、RAM内の領域であることを意味する。」

(3-g) 「【0252】
次に、遊技制御用マイクロコンピュータ560が実行する保留記憶処理(ステップS29)について説明する。図32および図33は、保留記憶処理の一例を示すフローチャートである。保留記憶処理において、CPU56は、まず、始動入賞が発生した場合に、その始動入賞が第1始動入賞口13への入賞であるか、第2始動入賞口14への入賞であるかを判定する(ステップS401,S405)。このような始動入賞の種別の判定は、第1始動入賞口スイッチ13aによる入賞検出であったか、第2始動入賞口スイッチ14aによる入賞検出であったかを確認することによって行うことが可能である。
【0253】
第1始動入賞口13への入賞であったときは(ステップS401のY)、第1保留記憶数カウンタの値(第1保留記憶数)が上限値4であるか否かを判定する(ステップS402)。第1保留記憶数カウンタの値が上限値4に達していない場合は(ステップS402のN)、CPU56は、第1保留記憶数カウンタの値を+1し(ステップS403)、第1保留記憶数(第1始動入賞記憶数)を指定する演出制御コマンド(第1始動入賞記憶指定コマンド)を演出制御用マイクロコンピュータ100に送信する(ステップS404)。そして、ステップS409の処理に移行する。一方、第1保留記憶数が上限値に達して
いる場合は(ステップS402のY)、ステップS412の処理に移行する。」
【0254】
第2始動入賞口14への入賞であったときは(ステップS405のY)、第2保留記憶数カウンタの値(第2保留記憶数)が上限値4であるか否かを判定する(ステップS406)。第2保留記憶数カウンタの値が上限値4に達していない場合は(ステップS406のN)、CPU56は、第2保留記憶数カウンタの値を+1し(ステップS407)、第2保留記憶数(第2始動入賞記憶数)を指定する演出制御コマンド(第2始動入賞記憶指定コマンド)を演出制御用マイクロコンピュータ100に送信する(ステップS408)。そして、ステップS409の処理に移行する。一方、第2保留記憶数が上限値に達している場合は(ステップS406のY)、ステップS412の処理に移行する。」

(3-h) 「【0282】
この実施の形態では、RAM55の全領域がバックアップ電源によって電源バックアップ(遊技機への電力供給が停止しても所定期間はRAM55の内容が保存されこと)されている。従って、ステップS452?S479の処理によって、バックアップ監視タイマの値とともに、電源断信号が出力されたときのRAM55の内容にもとづくチェックサムもRAM55に保存される。遊技機への電力供給が停止した後、所定期間内に電力供給が復旧したら、遊技制御手段は、RAM55に保存されているデータ(電力供給が停止した直前の遊技制御手段による制御状態である遊技状態を示すデータ(例えば、プロセスフラグの状態、大当り中フラグの状態、確変フラグの状態、出力ポートの出力状態等)を含む)に従って、遊技状態を、電力供給が停止した直前の状態に戻すことができる。なお、電力供給停止の期間が所定期間を越えたらバックアップ監視タイマの値とチェックサムとが正規の値とは異なるはずであるから、その場合には、ステップS10?S14の初期化処理が実行される。」

(3-i) 「【0383】
図53に示すように、第1特別図柄および第2特別図柄の変動の途中で電源断が発生すると、電源断の発生が検出され、電力供給停止時処理が実行される(図7のステップS20、図36および図37)。これにより、RAM55の記憶内容が所定期間保持されることになる。その後、電力供給が再開され、所定の復旧条件が成立したときには(ステップS6?S8)、バックアップRAM55の記憶内容にもとづいて遊技状態を電力供給の停止前の状態に復旧するための処理(ステップS41,S42)が実行される。そして、遊技状態復旧処理(ステップS43、図38)において、遊技制御用マイクロコンピュータ560から演出制御用マイクロコンピュータ100に対して、停電復旧表示指定コマンド
が送信され(ステップS501)、第1表示結果指定コマンドが送信され(ステップS503)、第2表示結果指定コマンドが送信される(ステップS505)。
【0384】
演出制御用マイクロコンピュータ100は、停電復旧表示指定コマンドを受信すると(ステップS530のY)、可変表示装置9の背景図柄表示領域9aに停電復旧中画面を表示する(ステップS531)。このときの表示状態は、図54(b)に示すように、第1飾り図柄および第2飾り図柄が変動表示され、背景図柄表示領域9aに「停電復旧中」の文字が表示されている状態である。
・・・
【0389】
図54(b)?(d)に示すように、停電復旧後に直ちにメモリ表示領域9dにおいて背景図柄の保留記憶が表示されず、図54(e)に示すように、停電復旧後における背景図柄の保留記憶数の更新タイミングになったときに背景図柄の保留記憶が表示される。具体的には、後述するように、演出制御用マイクロコンピュータ100が、停電復旧後に遊技制御用マイクロコンピュータ560からの始動入賞記憶指定コマンド(第2始動入賞記憶指定コマンド)を初めて受信すると(ステップS513のY)、そのコマンドにもとづいて背景図柄の保留記憶数を更新表示する(ステップS514、図55のステップS631?635参照)。」

上記(3-a)?(3-i)の記載事項及び図面から、以下(3-j)?(3-l)の事項が導かれる。

(3-j)刊行物3には、「主基板31には、・・・遊技制御用マイクロコンピュータ(遊技制御手段に相当)560が搭載されている。遊技制御用マイクロコンピュータ560は、・・・RAM55・・・を含む。」(段落【0090】)、「抽出した乱数値として第1保留記憶数カウンタの値に対応する第1保留記憶バッファにおける保存領域に格納する・・・大当り判定用乱数等を生成するためのカウンタや保留記憶バッファは、RAM55に形成されている。」(段落【0153】)、「RAM55の全領域がバックアップ電源によって電源バックアップ(遊技機への電力供給が停止しても所定期間はRAM55の内容が保存されこと)されている。」(段落【0282】)と記載されているから、刊行物3には、主基板31は、バックアップ電源によって電源バックアップされ、大当り判定用乱数等を格納するRAM55を備える点が記載されているといえる。

(3-k)刊行物3には、「電源断が発生すると、・・・その後、電力供給が再開され、所定の復旧条件が成立したときには(ステップS6?S8)、バックアップRAM55の記憶内容にもとづいて遊技状態を電力供給の停止前の状態に復旧するための処理(ステップS41,S42)が実行される。」(段落【0383】)と記載されている。また、図6には、S42の後、S43の遊技状態復旧処理、S15のタイマ割り込みの設定を行うフローチャートが図示されており、S15のタイマ割り込みの設定後にタイマ割込処理が実行されることは、明らかである。よって、刊行物3には、電源断が発生し、その後、電力供給が再開されると、バックアップRAM55の記憶内容にもとづいて遊技状態を電力供給の停止前の状態に復旧するための処理を実行し、タイマ割込の設定を実行し、タイマ割込処理を行う点が記載されているといえる。
また、刊行物3には、「タイマ割込が発生すると、」(段落【0120】)、「第1特別図柄表示器8a、第2特別図柄表示器8b、普通図柄表示器10、第1特別図柄保留記憶表示器18a、第1特別図柄保留記憶表示器18bおよび普通図柄始動記憶表示器41の表示制御を行う表示制御処理を実行する(ステップS22)。」(段落【0121】)、「CPU56は、保留記憶処理を行う(ステップS29)。」(段落【0128】)、「遊技制御用マイクロコンピュータ560が実行する保留記憶処理(ステップS29)について説明する。」(段落【0252】)、「第1始動入賞口13への入賞であったときは(ステップS401のY)、・・・第1保留記憶数(第1始動入賞記憶数)を指定する演出制御コマンド(第1始動入賞記憶指定コマンド)を演出制御用マイクロコンピュータ100に送信する(ステップS404)。」(段落【0253】)、「第2始動入賞口14への入賞であったときは(ステップS405のY)、・・・第2保留記憶数(第2始動入賞記憶数)を指定する演出制御コマンド(第2始動入賞記憶指定コマンド)を演出制御用マイクロコンピュータ100に送信する(ステップS408)。」(段落【0254】)と記載されているから、刊行物3には、タイマ割込処理において第1特別図柄保留記憶表示器18aの表示制御を実行した後、始動口に入賞があると始動入賞記憶指定コマンドを送信する保留記憶処理を行う点が記載されているといえる。さらに、第1特別図柄保留記憶表示器18aに関して、「保留記憶(始動記憶または始動入賞記憶ともいう。)数)を表示する4つの表示器からなる第1特別図柄保留記憶表示器18a」(段落【0041】)と記載されているから、タイマ割込処理において行われる上記第1特別図柄保留記憶表示器18aの表示制御が、第1特別図柄保留記憶表示器18aへ保留記憶数を表示する制御を意味することは、明らかである。よって、刊行物3には、タイマ割込処理において第1特別図柄保留記憶表示器18aに保留記憶数を表示した後、始動口に入賞があると始動入賞記憶指定コマンドを送信する保留記憶処理を行う点が記載されているといえる。
以上より、刊行物3には、電源断が発生し、その後、電力供給が再開されると、バックアップRAM55の記憶内容にもとづいて遊技状態を電力供給の停止前の状態に復旧するための処理を実行し、第1特別図柄保留記憶表示器18aに保留記憶数を表示した後、始動口に入賞があると始動入賞記憶指定コマンドを送信する保留記憶処理を行う点が記載されているといえる。

(3-l)刊行物3には、「演出制御基板80は、演出制御用CPU101およびRAMを含む演出制御用マイクロコンピュータ100を搭載している。」(段落【0096】)、「停電復旧後に直ちにメモリ表示領域9dにおいて背景図柄の保留記憶が表示されず、図54(e)に示すように、停電復旧後における背景図柄の保留記憶数の更新タイミングになったときに背景図柄の保留記憶が表示される。具体的には、後述するように、演出制御用マイクロコンピュータ100が、停電復旧後に遊技制御用マイクロコンピュータ560からの始動入賞記憶指定コマンド(第2始動入賞記憶指定コマンド)を初めて受信すると(ステップS513のY)、そのコマンドにもとづいて背景図柄の保留記憶数を更新表示する」(段落【0389】)と記載されており、メモリ表示領域9dに関して、段落【0030】には「可変表示装置9における表示領域は、・・・保留記憶(始動記憶または始動入賞記憶ともいう。)数を表示するためのメモリ表示領域(画面下側の領域)9dとに分けられている。」と記載されているから、刊行物3には、演出制御基板80は停電復旧後に直ちに可変表示装置9のメモリ表示領域9dにおいて保留記憶を表示せず、始動入賞記憶指定コマンドを受信し、保留記憶数の更新タイミングになったときに保留記憶を表示する点が記載されているといえる。

上記(3-a)?(3-i)の記載事項及び(3-j)?(3-l)の認定事項を総合すると、刊行物3には、次の事項が記載されていると認められる(以下「刊行物3記載の事項」という。)。

「パチンコ遊技機1において、(段落【0027】)
主基板31は、バックアップ電源によって電源バックアップされ、大当り判定用乱数等を格納するRAM55を備え、(認定事項(3-j))
電源断が発生し、その後、電力供給が再開されると、バックアップRAM55の記憶内容にもとづいて遊技状態を電力供給の停止前の状態に復旧するための処理を実行し、第1特別図柄保留記憶表示器18aに保留記憶数を表示した後、始動口に入賞があると始動入賞記憶指定コマンドを送信する保留記憶処理を行い、また、演出制御基板80は停電復旧後に直ちに可変表示装置9のメモリ表示領域9dにおいて保留記憶を表示せず、始動入賞記憶指定コマンドを受信することで保留記憶数の更新タイミングになったときに保留記憶を表示する点。(認定事項(3-k)、(3-l))」

(3)対比
本願補正発明と刊行物1発明とを対比する(下記の(a)?(g)は、刊行物1発明の構成a?gに対応している。)。

(a)刊行物1発明の「第1始動口検出スイッチ14aから検出信号を入力した場合に、第1特別図柄保留数(U1)記憶領域にセットされているデータが4未満であ」ること、「特別図柄判定用乱数値」、「第0記憶部に記憶された特別図柄判定用乱数値が「大当たり」に対応する乱数値であるかの判定」及び「主制御基板110」は、それぞれ、本願補正発明の「始動条件の成立」、「始動情報」、「遊技者に有利な特別遊技を実行するか否かの特別遊技判定」及び「メイン制御手段」に相当する。そして、刊行物1発明において、「主制御基板110」の「第1始動口検出スイッチ14aから検出信号を入力した場合に、第1特別図柄保留数(U1)記憶領域にセットされているデータが4未満であれば、特別図柄判定用乱数値を取得して第1特別図柄乱数値記憶領域の第0記憶部?第4記憶部に記憶」する機能は、本願補正発明の「始動条件の成立を契機に、始動情報を取得する始動情報取得手段」の機能に相当する。
また、刊行物1発明において、「特図特電処理データが「0」」となり、「特別図柄記憶判定処理において」「シフト」される「特別図柄判定用乱数値」が「第0記憶部に記憶され」ていることは、本願補正発明の「判定条件が成立した」ことに相当する。そして、刊行物1発明において、「主制御基板110」の「特図特電処理データが「0」であれば、特別図柄記憶判定処理において、第1記憶部?第4記憶部に記憶された特別図柄判定用乱数値を1つ前の記憶部にシフトさせ、第0記憶部に記憶された特別図柄判定用乱数値が「大当たり」に対応する乱数値であるかの判定を行う」機能は、本願補正発明の「前記始動情報取得手段により前記始動情報を取得した後、判定条件が成立したことを契機に、当該始動情報に基づいて遊技者に有利な特別遊技を実行するか否かの特別遊技判定を行う特別遊技判定手段」の機能に相当する。
よって、刊行物1発明の「第1始動口検出スイッチ14aから検出信号を入力した場合に、第1特別図柄保留数(U1)記憶領域にセットされているデータが4未満であれば、特別図柄判定用乱数値を取得して第1特別図柄乱数値記憶領域の第0記憶部?第4記憶部に記憶し、特図特電処理データが「0」であれば、特別図柄記憶判定処理において、第1記憶部?第4記憶部に記憶された特別図柄判定用乱数値を1つ前の記憶部にシフトさせ、第0記憶部に記憶された特別図柄判定用乱数値が「大当たり」に対応する乱数値であるかの判定を行う主制御基板110」は、本願補正発明の「始動条件の成立を契機に、始動情報を取得する始動情報取得手段と、前記始動情報取得手段により前記始動情報を取得した後、判定条件が成立したことを契機に、当該始動情報に基づいて遊技者に有利な特別遊技を実行するか否かの特別遊技判定を行う特別遊技判定手段とを備えるメイン制御手段」に相当する。

(b)刊行物1発明の「変動パターン指定コマンド」、「演出図柄38の変動表示」、「第1液晶表示装置31」及び「演出制御基板120」は、それぞれ、本願補正発明の「制御情報」、「変動演出」、「画像表示装置」及び「サブ制御手段」に相当する。
よって、刊行物1発明の「主制御基板110から受信した特別図柄の変動態様を示す変動パターン指定コマンドの内容を解析して変動演出パターンを決定し、変動演出パターンに基づいて演出図柄38の変動態様を決定し、演出図柄38の変動表示を行う第1液晶表示装置31を制御する演出制御基板120」は、本願補正発明の「前記メイン制御手段からの制御情報に基づいて、画像表示装置において変動演出を実行するサブ制御手段」に相当する。
また、刊行物1発明の「遊技機1」は、本願補正発明の「遊技機」に相当する。

(c)刊行物1発明の「第1特別図柄乱数値記憶領域」は、「第1始動口検出スイッチ14aから検出信号を入力した場合に、第1特別図柄保留数(U1)記憶領域にセットされているデータが4未満であれば、取得した特別図柄判定用乱数値を記憶する」ものであるから、データを4個、すなわち所定数まで記憶するものといえる。
また、刊行物1発明の「第1特別図柄乱数値記憶領域」は、「第1始動口検出スイッチ14aから検出信号を入力した場合に、第1特別図柄保留数(U1)記憶領域にセットされているデータが4未満であれば」(始動条件が成立した場合)、「取得した特別図柄判定用乱数値」(始動情報)がその「第0記憶部?第4記憶部に記憶」(構成a)されるものである。そして、構成aより、記憶された「特別図柄判定用乱数値」は、「特図特電処理データが「0」」となり、「特別図柄記憶判定処理において」「シフト」されて「第0記憶部に記憶され」たとき(判定条件が成立したとき)に、「「大当たり」に対応する乱数値であるかの判定」に用いられるものであるから、「第1始動口検出スイッチ14aから検出信号を入力した場合に、第1特別図柄保留数(U1)記憶領域にセットされているデータが4未満であ」った(始動条件が成立した)時に、「第0記憶部」に既に他の「特別図柄判定用乱数値」が記憶されており、「第0記憶部」より後の記憶部に「特別図柄判定用乱数値」を記憶した場合(判定条件が成立していない場合)には、当該「特別図柄判定用乱数値」は、「特図特電処理データが「0」」となり、「特別図柄記憶判定処理において」「第0記憶部」に「シフト」されて「「大当たり」に対応する乱数値であるかの判定を行う」ときまで「第1特別図柄乱数値記憶領域」に記憶されることは、明らかである。
よって、刊行物1発明の「主制御基板110」が備える「第1始動口検出スイッチ14aから検出信号を入力した場合に、第1特別図柄保留数(U1)記憶領域にセットされているデータが4未満であれば、取得した特別図柄判定用乱数値を記憶する第1特別図柄乱数値記憶領域」は、本願補正発明の「前記メイン制御手段」が備える「前記始動条件が成立したが前記判定条件が成立していない場合は、前記始動情報取得手段により取得された前記始動情報を保留記憶として所定数まで記憶する第1保留記憶手段」に相当する。

(d)刊行物1発明の「特別図柄記憶指定コマンド」は、「演出制御基板120が解析して第1液晶表示装置31に表示させる特図保留画像の表示個数を決定するための」ものであるから、保留記憶の数に関する情報を含むコマンドであることは、明らかである。よって、刊行物1発明の「演出制御基板120が解析して第1液晶表示装置31に表示させる特図保留画像の表示個数を決定するための特別図柄記憶指定コマンドを演出制御基板120に送信する機能」は、本願補正発明の「前記第1保留記憶手段に記憶されている前記保留記憶の数を保留記憶数情報として前記サブ制御手段に送信する保留記憶数情報送信手段」の機能に相当する。

(e)刊行物1発明の「第1特別図柄保留表示器23」は、本願補正発明の「第1保留表示装置」に相当する。また、刊行物1発明の「記憶された特別図柄判定用乱数値」が、「第1特別図柄乱数値記憶領域」に「記憶」された(構成c)ものであることは明らかであるから、刊行物1発明において、「第1特別図柄保留表示器23に表示」される「記憶された特別図柄判定用乱数値である第1保留の保留個数」の表示は、本願補正発明における「前記第1保留記憶手段に記憶されている前記保留記憶の数に対応する保留表示」に相当する。 よって、刊行物1発明において「主制御基板110は」「記憶された特別図柄判定用乱数値である第1保留の保留個数を、第1特別図柄保留表示器23に表示させ」ることは、本願補正発明において「前記メイン制御手段は」、「前記第1保留記憶手段に記憶されている前記保留記憶の数に対応する保留表示を第1保留表示装置に表示させ」ることに相当する。

(f)上記(d)より、刊行物1発明の「主制御基板110から送信された特別図柄記憶指定コマンド」は、本願補正発明の「前記保留記憶数情報送信手段により送信された前記保留記憶数情報」に相当する。また、刊行物1発明の「特別図柄記憶指定コマンド」を「解析して」「決定」される「特図保留画像の表示個数」の数は、本願補正発明の「前記保留記憶数情報が示す前記保留記憶の数」に相当する。
よって、刊行物1発明において「演出制御基板120は」、「主制御基板110から送信された特別図柄記憶指定コマンドを受信し、解析して第1液晶表示装置31に表示させる特図保留画像の表示個数を決定する機能」を備えることと、本願補正発明の構成Fとは、「前記サブ制御手段は」、「前記保留記憶数情報送信手段により送信された前記保留記憶数情報が示す前記保留記憶の数を」用いる手段を備える点で共通する。

(g)刊行物1発明の「第1特別図柄保留表示器53」は、「第1特別図柄保留表示器23の点灯タイミングと同期させて」「点灯」されるものであるから、「記憶された特別図柄判定用乱数値である第1保留の保留個数を」「表示」する「第1特別図柄保留表示器23」(構成e)と同様に保留記憶の数を表示するものであることは明らかである。よって、刊行物1発明の「第1特別図柄保留表示器53」は、本願補正発明の「保留記憶の数に対応する保留表示」が表示される「第2保留表示装置」に相当する。また、刊行物1発明において「演出制御基板120は」、「第1液晶表示装置31に特図保留画像を表示させる」ことは、本願補正発明において「前記サブ制御手段は」、「保留記憶の数に対応する保留表示を」「前記画像表示装置に表示させ」ることに相当する。
よって、刊行物1発明の「演出制御基板120は、第1特別図柄保留表示器23の点灯タイミングと同期させて、2つのLEDからなる第1特別図柄保留表示器53を点灯させ、第1液晶表示装置31に特図保留画像を表示させる」ことは、本願補正発明の構成Gと、「前記サブ制御手段は」、「前記保留記憶の数に対応する保留表示を第2保留表示装置及び前記画像表示装置に表示させ」る点で共通する。

以上、(a)?(g)の対比より、本願補正発明と刊行物1発明とは、

「A 始動条件の成立を契機に、始動情報を取得する始動情報取得手段と、前記始動情報取得手段により前記始動情報を取得した後、判定条件が成立したことを契機に、当該始動情報に基づいて遊技者に有利な特別遊技を実行するか否かの特別遊技判定を行う特別遊技判定手段とを備えるメイン制御手段と、
B 前記メイン制御手段からの制御情報に基づいて、画像表示装置において変動演出を実行するサブ制御手段と、を備える遊技機において、
C 前記メイン制御手段は、
前記始動条件が成立したが前記判定条件が成立していない場合は、前記始動情報取得手段により取得された前記始動情報を保留記憶として所定数まで記憶する第1保留記憶手段と、
D 前記第1保留記憶手段に記憶されている前記保留記憶の数を保留記憶数情報として前記サブ制御手段に送信する保留記憶数情報送信手段と、をさらに備え、
E 前記第1保留記憶手段に記憶されている前記保留記憶の数に対応する保留表示を第1保留表示装置に表示させ、
F’前記サブ制御手段は、
前記保留記憶数情報送信手段により送信された前記保留記憶数情報が示す前記保留記憶の数を用いる手段と、をさらに備え、
G’前記保留記憶の数に対応する保留表示を第2保留表示装置及び前記画像表示装置に表示させる、遊技機。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願補正発明は、「前記サブ制御手段は」、「前記保留記憶数情報送信手段により送信された前記保留記憶数情報が示す前記保留記憶の数を記憶する第2保留記憶手段と、をさらに備え」(構成F)ると特定され、また、「前記第2保留記憶手段に記憶されている前記保留記憶の数に対応する保留表示を第2保留表示装置及び前記画像表示装置に表示させ」(構成G)ると特定されているのに対し、刊行物1発明は「第2保留記憶手段」を備え、「第2保留記憶手段」に記憶されている保留記憶の数に対応する保留表示を「第1特別図柄保留表示器53」(第2保留表示装置)及び「第1液晶表示装置31」(画像表示装置)に表示させるとは特定されていない点。

(相違点2)
本願補正発明は、「前記サブ制御手段は」、「前記変動演出において、前記特別遊技判定の判定結果が前記特別遊技を実行するとの判定結果である可能性があることを示唆する第1リーチ演出と、当該第1リーチ演出よりも前記特別遊技判定の判定結果が前記特別遊技を実行するとの判定結果である可能性が高いことを示唆する第2リーチ演出を実行可能であり」(構成H)、「前記変動演出において前記第2リーチ演出が行われているときは前記画像表示装置に表示させている前記保留表示の表示を規制するが、前記第2保留表示装置に表示させている前記保留表示の表示を規制しない一方」(構成I)、「前記変動演出において前記第1リーチ演出が行われているときは前記画像表示装置及び前記第2保留表示装置に表示させている前記保留表示の表示を規制」(構成J)しないと特定されているのに対し、刊行物1発明はそのように特定されていない点。

(相違点3)
本願補正発明は、「前記画像表示装置に表示させている前記保留表示を前記特別遊技判定の判定結果が前記特別遊技を実行するとの判定結果である可能性があることを示唆する特定表示態様に変化することがある一方」(構成K)、「前記画像表示装置に表示させている前記保留表示を前記特定表示態様に変化させた場合であっても、前記第2保留表示装置に表示させている前記保留表示の表示態様は変化させることがな」(構成L)いと特定されているのに対し、刊行物1発明はそのように特定されていない点。

(相違点4)
本願補正発明は、「バックアップ電源が供給されている前記第1保留記憶手段に前記保留記憶が記憶されているときに前記遊技機への電力の供給が停止されてから当該遊技機への電力の供給が再開された場合、前記メイン制御手段によって前記第1保留表示装置に前記保留表示が表示された後に、前記保留表示を前記画像表示装置に表示させる」(構成M)と特定されているのに対し、刊行物1発明はそのように特定されていない点。

(4)判断
ア 相違点1について
上記相違点1について検討する。
刊行物1発明の「演出制御基板120」は、「主制御基板110から送信された特別図柄記憶指定コマンドを解析して第1液晶表示装置31に表示させる特図保留画像の表示個数を決定する機能」(構成f)を有するものであり、また、「表示個数を決定」してから、「第1液晶表示装置31に表示させる」ために用いるまでの間、決定した表示個数の値が、処理プログラム上の変数としてなど何らかの形で記憶されることは当業者にとって自明であるから、刊行物1発明の「演出制御基板120」が、決定した「特図保留画像の表示個数」(保留記憶の数)を前記記憶するための第2保留記憶手段を備えることは、当業者にとって自明である。また、刊行物1発明において「第1特別図柄保留表示器23の点灯タイミングと同期させて、2つのLEDからなる第1特別図柄保留表示器53を点灯させ、第1液晶表示装置31に特図保留画像を表示させる」(構成g)際にも、前記「第1液晶表示装置31」への「特図保留画像」の「表示」と同様に、前記「表示個数を決定」して得た後に記憶された表示個数の値の情報が必要であることは明らかであるから、第2保留記憶手段に記憶されている「特図保留画像の表示個数」の情報を用いることとし、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について
上記相違点2について検討する。
上記(2)(2-2)で示した通り、刊行物2には、次の事項(刊行物2記載の事項)が記載されていると認められる。
「パチンコ機100において、
リーチ演出として、左右図柄表示領域208a、208cが等しい装飾図柄を停止表示し、残りの1つの中図柄表示領域208bが変動表示するノーマルリーチと、大当りの信頼度がノーマルリーチよりも高いスーパーリーチとを実行可能であり、
リーチ演出が行われる時には、保留表示がされ、スーパーリーチに発展すると、保留表示が消える点。」

刊行物2記載の事項において、「左右図柄表示領域208a、208cが等しい装飾図柄を停止表示し、残りの1つの中図柄表示領域208bが変動表示するノーマルリーチ」が実行された際には、「大当り」となる可能性があることは明らかであるから、「左右図柄表示領域208a、208cが等しい装飾図柄を停止表示し、残りの1つの中図柄表示領域208bが変動表示するノーマルリーチ」は、本願発明の「前記特別遊技判定の判定結果が前記特別遊技を実行するとの判定結果である可能性があることを示唆する第1リーチ演出」に対応するといえる。また、刊行物2記載の事項の「大当りの信頼度がノーマルリーチよりも高いスーパーリーチ」は、本願発明の「当該第1リーチ演出よりも前記特別遊技判定の判定結果が前記特別遊技を実行するとの判定結果である可能性が高いことを示唆する第2リーチ演出」に対応するといえる。
また、刊行物2記載の事項は、「リーチ演出が行われる時には、保留表示がされ、スーパーリーチに発展すると、保留表示が消える」ものであるから、「ノーマルリーチ」は「保留表示がされ」る、すなわち保留表示の表示を規制しないものであり、「スーパーリーチ」は「保留表示が消える」、すなわち保留表示の表示が規制されるものといえる。
そして、刊行物1発明と刊行物2記載の事項とは、画像表示装置において保留表示を表示する点で共通するものであり、刊行物1発明において、リーチ演出による興趣の向上を図るために刊行物2記載の事項を適用し、変動演出において、特別遊技判定の判定結果が特別遊技を実行するとの判定結果である可能性があることを示唆する第1リーチ演出と、当該第1リーチ演出よりも特別遊技判定の判定結果が特別遊技を実行するとの判定結果である可能性が高いことを示唆する第2リーチ演出を実行可能であり、変動演出において第2リーチ演出が行われているときは、画像表示装置に表示させている保留表示の表示を規制するし、変動演出において第1リーチ演出が行われているときは画像表示装置に表示させている保留表示の表示を規制しないものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、刊行物1発明の「第1特別図柄保留表示器53」は、演出が行われる「第1液晶表示装置31」とは別体のものであるし、「第1特別図柄保留表示器23の点灯タイミングと同期させて」「点灯」されることのみが特定されるものであり、刊行物1には、「第1液晶表示装置31」の演出に応じてその点灯形態を変化させることを示唆する記載もないから、少なくとも刊行物1発明には、リーチ演出の際に「第1特別図柄保留表示器53」の保留表示を点灯したままとする態様が含まれると言える。そして、第1リーチ演出及び第2リーチ演出を行う際にも、当該保留表示を点灯したままとする態様を選択し、「第1特別図柄保留表示器53」(第2保留表示装置)に表示させている保留表示の表示を規制しない構成とすることは、当業者が適宜になし得る事項にすぎない。
よって、刊行物1発明に刊行物2記載の事項を適用し、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

ウ 相違点3について
上記相違点3について検討する。
遊技機において、画像表示装置に表示させている保留表示を特別遊技判定の判定結果が特別遊技を実行するとの判定結果である可能性があることを示唆する特定表示態様に変化させることは、周知技術に過ぎない(刊行物2(段落【0222】、【0229】)、特開2010-162357号公報(段落【0244】)、特開2012-24270号公報(段落【0116】、【0121】)等参照)。
そして、刊行物1発明と上記周知技術とは、画像表示装置に保留表示を表示させる点で共通するものであるから、刊行物1発明において上記周知技術を適用し、「第1液晶表示装置31」(画像表示装置)に「表示させる」「特図保留画像」(保留表示)を、特別遊技判定の判定結果が特別遊技を実行するとの判定結果である可能性があることを示唆する特定表示態様に変化させるものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、刊行物1には「第1特別図柄保留表示器53」に表示させている保留表示の表示態様を「大当たり」である可能性があることを示唆する態様に変化させる旨を示唆する記載はないし、刊行物1発明の「第1特別図柄保留表示器53」は「2つのLEDからなる」ものであって、4つの各保留表示ごとに複数の表示態様による表示を行い得るものとはなっていないことを考慮すれば、「第1液晶表示装置31」に「表示させる」「特図保留画像」を、特別遊技判定の判定結果が特別遊技を実行するとの判定結果である可能性があることを示唆する特定表示態様に変化させるものとした際には、「第1特別図柄保留表示器53」(第2保留表示装置)に表示させている保留表示の表示態様は変化させることがないものとする構成を、刊行物1発明は実質的に備えるといえる。
また、仮にそのようにいえないとしても、「第1液晶表示装置31」に既に特定表示態様として各保留毎の特別遊技を実行する可能性の情報を表示していることに加えて、あえて「第1特別図柄保留表示器53」において同様の情報を重複して表示しないようにすることは、当業者が適宜選択し得ることにすぎない。

よって、刊行物1発明に上記周知技術を適用し、上記相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

エ 相違点4について
上記相違点4について検討する。
上記(2)(2-3)で示した通り、刊行物3には、次の事項(刊行物3記載の事項)が記載されていると認められる。
「パチンコ遊技機1において、
主基板31は、バックアップ電源によって電源バックアップされ、大当り判定用乱数等を格納するRAM55を備え、
電源断が発生し、その後、電力供給が再開されると、バックアップRAM55の記憶内容にもとづいて遊技状態を電力供給の停止前の状態に復旧するための処理を実行し、第1特別図柄保留記憶表示器18aに保留記憶数を表示した後、始動口に入賞があると始動入賞記憶指定コマンドを送信する保留記憶処理を行い、また、演出制御基板80は停電復旧後に直ちに可変表示装置9のメモリ表示領域9dにおいて保留記憶を表示せず、始動入賞記憶指定コマンドを受信することで保留記憶数の更新タイミングになったときに保留記憶を表示する点。」

刊行物3記載の事項の「主基板31」、「バックアップ電源によって電源バックアップされ、大当り判定用乱数等を格納するRAM55」、「電源断が発生し、その後、電力供給が再開される」こと、「第1特別図柄保留記憶表示器18a」、「演出制御基板80」及び「可変表示装置9」は、それぞれ、本願補正発明の「メイン制御手段」、「バックアップ電源が供給されている前記第1保留記憶手段」、「前記遊技機への電力の供給が停止されてから当該遊技機への電力の供給が再開され」ること、「第1保留表示装置」、「サブ制御手段」及び「画像表示装置」に対応するものといえる。
また、刊行物3記載の事項の「主基板31」は、「電源断が発生し、その後、電力供給が再開されると」、「第1特別図柄保留記憶表示器18aに保留記憶数を表示した後、始動口に入賞があると始動入賞記憶指定コマンドを送信する保留記憶処理を行」うものであり、また、「演出制御基板80は停電復旧後に直ちに可変表示装置9のメモリ表示領域9dにおいて保留記憶を表示せず」、さらに、「第1特別図柄保留記憶表示器18aに保留記憶数を表示した後」に「始動口に入賞があると」「送信」されるものである「始動入賞記憶指定コマンドを受信することで保留記憶数の更新タイミングになったときに保留記憶を表示する」ものであるから、「電源断が発生し、その後、電力供給が再開され」る際には、「主基板31」によって「第1特別図柄保留記憶表示器18aに保留記憶数を表示」した後に、「演出制御基板80」は「可変表示装置9のメモリ表示領域9dにおいて」「保留記憶を表示する」といえる。
よって、刊行物3記載の事項は、本願補正発明の「バックアップ電源が供給されている前記第1保留記憶手段に前記保留記憶が記憶されているときに前記遊技機への電力の供給が停止されてから当該遊技機への電力の供給が再開された場合、前記メイン制御手段によって前記第1保留表示装置に前記保留表示が表示された後に、前記保留表示を前記画像表示装置に表示させる」との事項に対応する構成を有しているといえる。
そして、刊行物1発明と刊行物3記載の事項とは、遊技機において、第1保留表示装置と画像表示装置とにおいて保留表示を表示する点で共通するものであり、また、電力の供給の再開時における制御を設定しておくことは、一般的に行われることであるから、刊行物1発明において、電力の供給が停止されてから電力供給が再開された際の制御に関して刊行物3記載の事項を適用し、上記相違点4に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(5)請求人の主張について
請求人は、平成30年3月5日付けの意見書の【意見の内容】、「2.[3](4)」において、「ここで、相違点について検討すると、・・・次に、刊行物2、及び、刊行物3には、本願発明の第2保留表示装置に相当する装置の記載がありません。・・・刊行物1に上記刊行物2の記載を適用したとしても、刊行物2には第2保留表示装置に相当する装置の記載がないので、スーパーリーチが実行されているとき第2保留表示装置の保留表示を規制しないとは容易に想到し得ないと思料致します。
寧ろ、刊行物2では、スーパーリーチが実行されているとき保留表示を消去しているので、刊行物1に上記刊行物2の記載を適用すると、第2保留表示装置の保留表示も消去すると想到すると思料致します。」との主張をしている。
しかしながら、上記(4)イで示したとおり、刊行物1発明に刊行物2記載の事項を適用した際に、第2保留表示装置の保留表示を規制しないことは、当業者が容易に想到し得たことであるから、請求人の上記主張は採用することができない。

(6)まとめ
以上のように、本願補正発明は、当業者が刊行物1発明、刊行物2記載の事項、刊行物3記載の事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 補正却下の決定についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年12月13日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである(A?Mは、分説するために当審にて付した。)。

「【請求項1】
A 始動条件の成立を契機に、始動情報を取得する始動情報取得手段と、前記始動情報取得手段により前記始動情報を取得した後、判定条件が成立したことを契機に、当該始動情報に基づいて遊技者に有利な特別遊技を実行するか否かの特別遊技判定を行う特別遊技判定手段とを備えるメイン制御手段と、
B 前記メイン制御手段からの制御情報に基づいて、画像表示装置において変動演出を実行するサブ制御手段と、を備える遊技機において、
C 前記メイン制御手段は、
前記始動条件が成立したが前記判定条件が成立していない場合は、前記始動情報取得手段により取得された前記始動情報を保留記憶として所定数まで記憶する第1保留記憶手段と、
D 前記第1保留記憶手段に記憶されている前記保留記憶の数を保留記憶数情報として前記サブ制御手段に送信する保留記憶数情報送信手段と、をさらに備え、
E 前記第1保留記憶手段に記憶されている前記保留記憶の数に対応する保留表示を第1保留表示装置に表示させ、
F 前記サブ制御手段は、
前記保留記憶数情報送信手段により送信された前記保留記憶数情報が示す前記保留記憶の数を記憶する第2保留記憶手段と、をさらに備え、
G 前記第2保留記憶手段に記憶されている前記保留記憶の数に対応する保留表示を第2保留表示装置及び前記画像表示装置に表示させ、
H 前記変動演出において、前記特別遊技判定の判定結果が前記特別遊技を実行するとの判定結果である可能性があることを示唆する第1リーチ演出と、当該第1リーチ演出よりも前記特別遊技判定の判定結果が前記特別遊技を実行するとの判定結果である可能性が高いことを示唆する第2リーチ演出を実行可能であり、
I”前記変動演出において前記第2リーチ演出が行われる場合、当該第2リーチ演出が行われているときは前記画像表示装置に表示させている前記保留表示の表示を規制し、
J”前記変動演出において前記第1リーチ演出が行われる場合、当該第1リーチ演出が行われているときは前記画像表示装置に表示させている前記保留表示の表示を規制せず、
K 前記画像表示装置に表示させている前記保留表示を前記特別遊技判定の判定結果が前記特別遊技を実行するとの判定結果である可能性があることを示唆する特定表示態様に変化することがある一方、
L 前記画像表示装置に表示させている前記保留表示を前記特定表示態様に変化させた場合であっても、前記第2保留表示装置に表示させている前記保留表示の表示態様は変化させることがなく、
M バックアップ電源が供給されている前記第1保留記憶手段に前記保留記憶が記憶されているときに前記遊技機への電力の供給が停止されてから当該遊技機への電力の供給が再開された場合、前記メイン制御手段によって前記第1保留表示装置に前記保留表示が表示された後に、前記保留表示を前記画像表示装置に表示させる、
ことを特徴とする遊技機。」

2 拒絶理由通知の概要
平成30年1月9日付け拒絶理由通知は、本願発明は、当業者が特開2015-172号公報(刊行物1)に記載された発明、特開2014-200257号公報(刊行物2)に記載された事項、特開2007-296130号公報(刊行物3)に記載された事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

3 刊行物
刊行物1及びその記載事項並びに刊行物1発明、刊行物2及びその記載事項並びに刊行物2記載の事項、刊行物3及びその記載事項並びに刊行物3記載の事項は、それぞれ、上記「第2 3(2)(2-1)」、「第2 3(2)(2-2)」、「第2 3(2)(2-3)」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、本願補正発明を特定するために必要な事項である「前記変動演出において前記第2リーチ演出が行われているときは前記画像表示装置に表示させている前記保留表示の表示を規制するが、前記第2保留表示装置に表示させている前記保留表示の表示を規制しない」との事項に関して、「前記第2リーチ演出が行われているときは」「前記第2保留表示装置に表示させている前記保留表示の表示を規制しない」との限定を実質的に省き、「前記変動演出において前記第2リーチ演出が行われる場合、当該第2リーチ演出が行われているときは前記画像表示装置に表示させている前記保留表示の表示を規制」するとし、また、本願補正発明を特定するために必要な事項である「前記変動演出において前記第1リーチ演出が行われているときは前記画像表示装置及び前記第2保留表示装置に表示させている前記保留表示の表示を規制」しないとの事項に関して、「前記第1リーチ演出が行われているときは」「前記第2保留表示装置に表示させている前記保留表示の表示を規制」しないとの限定を実質的に省き、「前記変動演出において前記第1リーチ演出が行われる場合、当該第1リーチ演出が行われているときは前記画像表示装置に表示させている前記保留表示の表示を規制」しないとしたものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 3(4)」に記載したとおり、刊行物1発明、刊行物2記載の事項、刊行物3記載の事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであることから、本願発明も、同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願発明は当業者が刊行物1発明、刊行物2記載の事項、刊行物3記載の事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-03-28 
結審通知日 2018-04-03 
審決日 2018-04-16 
出願番号 特願2015-69658(P2015-69658)
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (A63F)
P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永田 美佐小河 俊弥  
特許庁審判長 服部 和男
特許庁審判官 萩田 裕介
樋口 宗彦
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人 エビス国際特許事務所  

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