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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1340947
審判番号 不服2017-5183  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-12 
確定日 2018-06-07 
事件の表示 特願2013- 25424「秘密情報送信装置、秘密情報送信装置のプログラム、秘密情報送信システム、及び、秘密情報送信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月25日出願公開、特開2014-155153〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年2月13日の特許出願であって、平成28年8月1日付けの拒絶理由の通知に対し、平成28年10月7日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成29年1月12日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成29年4月12日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成29年4月12日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[結論]
平成29年4月12日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、次のとおり補正することを含むものである。(以下、この記載事項により特定される発明を「本願補正発明」という。)
「 秘密情報を送信する秘密情報送信装置であって、
他の通信機器との間で通信を行う通信手段と、
前記通信手段が前記他の通信機器との間で通信を行う電波強度を調整する電波強度調整手段と、
前記電波強度調整手段によって調整された電波強度によって要求を前記通信手段から送信したことに応じ、前記通信手段が他の通信機器から応答を受信したか否かを判定して、前記他の通信機器と通信可能な最も低い電波強度を検査する応答検査手段と、
前記他の通信機器と当該他の通信機器と通信可能な最も低い電波強度とを対応づけて格納したネットワークテーブルを記憶するテーブル記憶手段と、
前記応答検査手段により検査された前記他の通信機器と通信可能な最も低い電波強度と当該最も低い電波強度により通信可能な前記他の通信機器とを対応づけて前記ネットワークテーブルに格納するよう当該ネットワークテーブルを更新するテーブル更新手段とを有し、
前記通信手段によって前記秘密情報を送信する場合に、前記ネットワークテーブルに格納された前記他の通信機器と通信可能な最も低い電波強度によって前記他の通信機器に秘密情報を送信し、
前記電波強度調整手段は、前記通信手段から送信する電波強度を低くしながら、前記応答検査手段は、前記他の通信機器から応答を受信したか否かを判定し、前記他の通信機器と通信可能な最も低い電波強度を検査すること
を特徴とする秘密情報送信装置。」(下線は、手続補正書の記載のとおり。)

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の平成28年10月7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「秘密情報を送信する秘密情報送信装置であって、
他の通信機器との間で通信を行う通信手段と、
前記通信手段が他の通信機器との間で通信を行う電波強度を調整する電波強度調整手段と、
前記電波強度調整手段によって調整された電波強度によって要求を前記通信手段から送信したことに応じ、前記通信手段が他の通信機器から応答を受信したか否かを判定して、前記他の通信機器と通信可能な最も低い電波強度を検査する応答検査手段と、
前記他の通信機器と当該他の通信機器と通信可能な最も低い電波強度とを対応づけて格納したネットワークテーブルを記憶するテーブル記憶手段と、
前記応答検査手段により検査された前記他の通信機器と通信可能な最も低い電波強度と当該最も低い電波強度により通信可能な前記他の通信機器とを対応づけて前記ネットワークテーブルに格納するよう当該ネットワークテーブルを更新するテーブル更新手段とを有し、
前記通信手段によって前記秘密情報を送信する場合に、前記ネットワークテーブルに格納された前記他の通信機器と通信可能な最も低い電波強度によって前記他の通信機器に秘密情報を送信すること
を特徴とする秘密情報送信装置。」

2 補正の適否
上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である、「前記通信手段が他の通信機器との間で通信を行う電波強度を調整する電波強度調整手段」の「他の通信機器」を「前記他の通信機器」と限定し、また、「前記電波強度調整手段によって調整された電波強度によって要求を前記通信手段から送信したことに応じ、前記通信手段が他の通信機器から応答を受信したか否かを判定して、前記他の通信機器と通信可能な最も低い電波強度を検査する」との応答検査手段の動作について、「前記電波強度調整手段は、前記通信手段から送信する電波強度を低くしながら」と限定する補正であり、特許法17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、本件補正は特許法第17条の2第3項、及び第4項の規定に違反するものではない。
そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1) 引用例
原査定の拒絶の理由で引用された特開2005-217783号公報(以下、「引用例」という。)には次の事項が記載されている。(下線は、当審にて付与。)
ア 「【請求項1】
少なくとも通常感度受信モード、該通常感度受信モードより高い受信感度の高感度受信モード、通常送信電力モード及び該通常送信電力モードより低い送信電力の低送信電力モードの4つのモードを有し、相互に無線通信を行う第1及び第2の無線通信装置を備え、
前記第1及び第2の無線通信装置は、両者間で通信リンクが確立している状態で、データ送信時にデータ受信側に対して前記高感度受信モードへの遷移要求を行う高感度受信モード遷移要求手段と、データ受信時にデータ送信側の前記高感度受信モード遷移要求手段からの高感度受信モードへの遷移要求を受けたときに高感度受信モードに遷移する高感度受信モード遷移手段と、データ送信時にデータ受信側の前記高感度受信モード遷移手段から高感度受信モードへの遷移通知を受けたときに低送信電力モードに遷移して送信データを送信する低送信電力モード遷移手段とを備えている高セキュリティ無線通信システム。
【請求項2】
前記第1及び第2の無線通信装置は、暗号化キーをデータ受信側に送信するデータ送信時に、前記高感度受信モード遷移要求手段で前記高感度受信モードへの遷移要求を行う請求項1に記載の高セキュリティ無線通信システム。
【請求項3】 (省略)
【請求項4】
前記低送信電力モード遷移手段は、データ送信時に、送信電力を所定電力分下げた状態で、受信確認データをデータ受信側に送信することを繰り返し、データ受信側からの送達確認データの受信が可能な最小送信電力まで送信電力を低下させるように構成されている請求項1又は2に記載の高セキュリティ無線通信システム。」

イ 「【0048】
上述の第1の実施の形態においては、秘匿通信要求側の無線通信装置は、(1)“受信感度増加要求LMPメッセージ”を送信するとともに、その了解メッセージを受け取ると低送信電力モードに遷移する。この動作に関して、本実施の形態は、低送信電力モードとなった秘匿通信要求側の無線通信装置は自らの送信出力を、以下の方法によって、秘匿通信要求側の無線通信装置の受信感度の下限まで下げる。この動作を図10のフローチャートに沿って説明する。なお、フローチャートは、低送信電力モードの端末のもののみを示す。まず、低送信電力モードとなった端末が、自己の送信電力を1ステップ分減少させ(ステップS51)、その後、確認メッセージを送信する(ステップS51)。
【0049】
これに対して、了解メッセージを受け取った(ステップS52)低送信電力モードの端末は、さらに、自己の送信電力を1ステップ分減少させ(ステップS51)、その後、確認メッセージを送信する(ステップS51)。そして、このループを1回以上繰り返す。
【0050】
そして、このループの中で、所定の時間、了解メッセージが戻ってこない場合(ステップS53)、低送信電力モードの端末は、自己の送信電力を1ステップ分増加させ(ステップS54)処理を終了する。
【0051】
このように、図5の(2)“了解LMPメッセージ(LMP_accepted)”を受信した秘匿通信要求側は、低送信電力モードに遷移する際に、本実施形態の動作を行って、高感度電力モードとなった相手端末に対して、相手の送信電力を自己の受信感度の下限となるまで下げてもよい。
【0052】
このように、低送信電力モードに遷移するときに、相手端末とネゴシエーションを行うことで自己の送信電力を下げることにより、自端末は、高感度受信モードとなった相手端末の受信感度の下限まで送信出力を下げることができる。これにより、最も秘匿性を向上させることができる。」

ウ 図10


(2) 引用発明
ア 上記(1)アの請求項2の記載によると、第1の無線通信装置は、「暗号化キーをデータ受信側に送信する」ものといえる。
イ 上記(1)アの請求項1及び2の記載によると、「通常感度受信モード、該通常感度受信モードより高い受信感度の高感度受信モード、通常送信電力モード及び該通常送信電力モードより低い送信電力の低送信電力モードの4つのモードを有」する第1の無線通信装置は、「暗号化キーをデータ受信側に送信するデータ送信時に、前記高感度受信モード遷移要求手段で前記高感度受信モードへの遷移要求を行」い、「データ送信時にデータ受信側の前記高感度受信モード遷移手段から高感度受信モードへの遷移通知を受けたときに低送信電力モードに遷移して送信データを送信する低送信電力モード遷移手段」を有している。
そして、通常送信電力モードより低い送信電力の上記低送信電力モードは暗号化キーをデータ受信側に送信するデータ送信時に用いられるモードであるから、第1の無線通信装置は、「暗号化キーをデータ受信側に送信するデータ送信時に、通常送信電力モードより低い送信電力の低送信電力モードに遷移して送信データを送信する低送信電力モード遷移手段」を有しているといえる。
ウ 上記(1)アの請求項4の記載によると、第1の無線通信装置の低送信電力モード遷移手段は、データ送信時に、送信電力を所定電力分下げた状態で、受信確認データをデータ受信側に送信することを繰り返し、データ受信側からの送達確認データの受信が可能な最小送信電力まで送信電力を低下させるように構成されている。
また、請求項4に対応する発明の詳細な説明の上記(1)イの段落0048?0050には、「まず、低送信電力モードとなった端末が、自己の送信電力を1ステップ分減少させ(ステップS51)、その後、確認メッセージを送信し(ステップS51)、
これに対して、了解メッセージを受け取った(ステップS52)低送信電力モードの端末は、さらに、自己の送信電力を1ステップ分減少させ(ステップS51)、その後、確認メッセージを送信し(ステップS51)、
そして、このループを1回以上繰り返し、
そして、このループの中で、所定の時間、了解メッセージが戻ってこない場合(ステップS53)、低送信電力モードの端末は、自己の送信電力を1ステップ分増加させ(ステップS54)処理を終了する」ことが記載されている。

以上を踏まえると、引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「暗号化キーをデータ受信側に送信する第1の無線通信装置であって、
暗号化キーをデータ受信側に送信するデータ送信時に、通常送信電力モードより低い送信電力の低送信電力モードに遷移して送信データを送信する低送信電力モード遷移手段を有し、
前記低送信電力モード遷移手段は、データ送信時に、送信電力を所定電力分下げた状態で、受信確認データをデータ受信側に送信することを繰り返し、データ受信側からの送達確認データの受信が可能な最小送信電力まで送信電力を低下させるように構成され、
まず、低送信電力モードとなった端末が、自己の送信電力を1ステップ分減少させ(ステップS51)、その後、確認メッセージを送信し(ステップS51)、
これに対して、了解メッセージを受け取った(ステップS52)低送信電力モードの端末は、さらに、自己の送信電力を1ステップ分減少させ(ステップS51)、その後、確認メッセージを送信し(ステップS51)、
そして、このループを1回以上繰り返し、
そして、このループの中で、所定の時間、了解メッセージが戻ってこない場合(ステップS53)、低送信電力モードの端末は、自己の送信電力を1ステップ分増加させ(ステップS54)処理を終了する
第1の無線通信装置。」

(3) 対比
ア 暗号化キーは秘密情報といえるから、「暗号化キーをデータ受信側に送信する第1の無線通信装置」である引用発明は、「秘密情報を送信する秘密情報送信装置」といえる点で本願補正発明と一致する。
イ 「暗号化キーをデータ受信側に送信する第1の無線通信装置」である引用発明が、データ受信側である「他の通信機器」との間で通信を行う手段を備えていることは当然であるから、引用発明と本願補正発明とは「他の通信機器との間で通信を行う通信手段」を有している点で一致する。
ウ 「暗号化キーをデータ受信側に送信するデータ送信時に、通常送信電力モードより低い送信電力の低送信電力モードに遷移して送信データを送信する低送信電力モード遷移手段」を有する引用発明は、暗号化キーをデータ受信側に送信する場合に、電波強度を通常送信電力モードより低く調整して送信データを送信するから、データ受信側の他の通信機器との間で通信を行う電波強度を調整する手段を有しているといえ、引用発明と本願補正発明とは、「通信手段が他の通信機器との間で通信を行う電波強度を調整する電波強度調整手段」を有している点で一致する。
エ 引用発明の「前記低送信電力モード遷移手段は、データ送信時に、送信電力を所定電力分下げた状態で、受信確認データをデータ受信側に送信することを繰り返し、データ受信側からの送達確認データの受信が可能な最小送信電力まで送信電力を低下させるように構成され」る低送信電力モード遷移手段の「まず、低送信電力モードとなった端末が、自己の送信電力を1ステップ分減少させ(ステップS51)、その後、確認メッセージを送信し(ステップS51)、
これに対して、了解メッセージを受け取った(ステップS52)低送信電力モードの端末は、さらに、自己の送信電力を1ステップ分減少させ(ステップS51)、その後、確認メッセージを送信し(ステップS51)、
そして、このループを1回以上繰り返し、
そして、このループの中で、所定の時間、了解メッセージが戻ってこない場合(ステップS53)、低送信電力モードの端末は、自己の送信電力を1ステップ分増加させ(ステップS54)処理を終了する」との最小送信電力決定処理は、「調整された電波強度によって要求を通信手段から送信したことに応じ、前記通信手段が他の通信機器から応答を受信したか否かを判定して、前記他の通信機器と通信可能な最も低い電波強度を検査する」処理であるから、引用発明は当該処理を行う手段を有しているといえ、また、上記ウに記載したとおり、引用発明は電波強度調整手段によって電波強度を調整していることから、引用発明と本願補正発明とは「電波強度調整手段によって調整された電波強度によって要求を通信手段から送信したことに応じ、前記通信手段が他の通信機器から応答を受信したか否かを判定して、前記他の通信機器と通信可能な最も低い電波強度を検査する応答検査手段」を有している点で一致する。
また、ループの中のステップS51で自己の送信電力を1ステップずつ減少させながら行われる上記最小送信電力決定処理は、「通信手段から送信する電波強度を低くしながら、」行われる「前記他の通信機器から応答を受信したか否かを判定し、前記他の通信機器と通信可能な最も低い電波強度を検査する」処理といえる。そして、引用発明は、電波強度調整手段が電波強度を調整し、応答検査手段が最も低い電波強度を検査することから、引用発明と本願補正発明とは、「電波強度調整手段は、通信手段から送信する電波強度を低くしながら、応答検査手段は、前記他の通信機器から応答を受信したか否かを判定し、前記他の通信機器と通信可能な最も低い電波強度を検査する」点で一致している。
オ 引用発明は「暗号化キーをデータ受信側に送信するデータ送信時に、通常送信電力モードより低い送信電力の低送信電力モードに遷移して送信データを送信する低送信電力モード遷移手段を有し、
前記低送信電力モード遷移手段は、データ送信時に、送信電力を所定電力分下げた状態で、受信確認データをデータ受信側に送信することを繰り返し、データ受信側からの送達確認データの受信が可能な最小送信電力まで送信電力を低下させるように構成」されており、上記イに記載したとおり通信手段によって送信が行われる引用発明と本願補正発明とは、「通信手段によって秘密情報を送信する場合に、」「他の通信機器と通信可能な最も低い電波強度によって前記他の通信機器に秘密情報を送信」する点で一致する。

以上を踏まえると、本願補正発明と引用発明とは以下の点で一致し、また、相違している。
(一致点)
「秘密情報を送信する秘密情報送信装置であって、
他の通信機器との間で通信を行う通信手段と、
前記通信手段が前記他の通信機器との間で通信を行う電波強度を調整する電波強度調整手段と、
前記電波強度調整手段によって調整された電波強度によって要求を前記通信手段から送信したことに応じ、前記通信手段が他の通信機器から応答を受信したか否かを判定して、前記他の通信機器と通信可能な最も低い電波強度を検査する応答検査手段と、
を有し、
前記通信手段によって前記秘密情報を送信する場合に、前記他の通信機器と通信可能な最も低い電波強度によって前記他の通信機器に秘密情報を送信し、
前記電波強度調整手段は、前記通信手段から送信する電波強度を低くしながら、前記応答検査手段は、前記他の通信機器から応答を受信したか否かを判定し、前記他の通信機器と通信可能な最も低い電波強度を検査する
秘密情報送信装置。」

(相違点)
本願補正発明は、「前記他の通信機器と当該他の通信機器と通信可能な最も低い電波強度とを対応づけて格納したネットワークテーブルを記憶するテーブル記憶手段と、
前記応答検査手段により検査された前記他の通信機器と通信可能な最も低い電波強度と当該最も低い電波強度により通信可能な前記他の通信機器とを対応づけて前記ネットワークテーブルに格納するよう当該ネットワークテーブルを更新するテーブル更新手段とを有し、」秘密情報を送信する場合に、「前記ネットワークテーブルに格納された」前記他の通信機器と通信可能な最も低い電波強度によって前記他の通信機器に秘密情報を送信するのに対し、
引用発明は、ネットワークテーブルを記憶するテーブル記憶手段、テーブル更新手段を有していると特定されておらず、秘密情報を送信する場合の、他の通信機器と通信可能な最も低い電波強度が「ネットワークテーブルに格納された」ものと特定されていない点。

(4) 判断
一般に、決定されたパラメータを確保された記憶領域に一度格納し、当該記憶領域に格納されたパラメータを読み出して利用すること、及び、通信に用いるパラメータを通信相手と対応させてネットワークテーブルとして格納することはいずれも常套手段であるから、引用発明を実施する際に、低送信電力モード遷移手段の上記(3)エ記載の上記最小送信電力決定処理により決定される「データ受信側からの送達確認データの受信が可能な最小送信電力」を、確保された記憶領域にネットワークテーブルとして一度格納し、ネットワークテーブルに格納された上記最小送信電力を低送信電力モードに遷移して秘密情報といえる暗号化キーを送信する際の送信電力を制御するためのパラメータとして利用することは当業者が容易に想到し得る事項といえる。
そして、引用発明において、上記最小送信電力をネットワークテーブルとして格納するための確保された記憶領域を「他の通信機器と当該他の通信機器と通信可能な最も低い電波強度とを対応づけて格納したネットワークテーブルを記憶するテーブル記憶手段」とし、また、上記最小送信電力決定処理により決定される上記「最小送信電力」を当該ネットワークテーブルの「当該他の通信機器と通信可能な最も低い電波強度」として格納、すなわち、当該ネットワークテーブルを更新するように構成することは、当業者が適宜なし得る事項といえる。
したがって、引用発明において、「前記他の通信機器と当該他の通信機器と通信可能な最も低い電波強度とを対応づけて格納したネットワークテーブルを記憶するテーブル記憶手段と、
前記応答検査手段により検査された前記他の通信機器と通信可能な最も低い電波強度と当該最も低い電波強度により通信可能な前記他の通信機器とを対応づけて前記ネットワークテーブルに格納するよう当該ネットワークテーブルを更新するテーブル更新手段とを有し、」秘密情報を送信する場合に、「前記ネットワークテーブルに格納された」前記他の通信機器と通信可能な最も低い電波強度によって前記他の通信機器に秘密情報を送信することは、当業者が容易に想到し得る事項といえる。

よって、本願補正発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3 結論
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年4月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成28年10月7日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。
この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1. 特開2005-217783号公報

3 引用例・引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用例、その記載事項、及び引用発明は、前記「第2」2(1)及び(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、本願補正発明の「前記通信手段が前記他の通信機器との間で通信を行う電波強度を調整する電波強度調整手段」の「前記他の通信機器」との限定、また、応答検査手段の動作についての「前記電波強度調整手段は、前記通信手段から送信する電波強度を低くしながら」との限定するを省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、更に他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2で判断したとおり、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-04-02 
結審通知日 2018-04-03 
審決日 2018-04-16 
出願番号 特願2013-25424(P2013-25424)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04W)
P 1 8・ 121- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼橋 真之  
特許庁審判長 中木 努
特許庁審判官 海江田 章裕
松永 稔
発明の名称 秘密情報送信装置、秘密情報送信装置のプログラム、秘密情報送信システム、及び、秘密情報送信方法  
代理人 伊藤 正和  

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