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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B |
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管理番号 | 1341001 |
審判番号 | 不服2016-15144 |
総通号数 | 223 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-10-07 |
確定日 | 2018-06-06 |
事件の表示 | 特願2013-542135「内視鏡用の使い捨て可能な空気/水弁」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 6月 7日国際公開、WO2012/075131、平成25年12月26日国内公表、特表2013-545555〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2011年(平成23年)11月30日(パリ条約による優先権主張 2010年11月30日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成27年8月27日付けで拒絶理由が通知され、同年12月1日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成28年5月30日付けで拒絶査定されたところ、同年10月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされた。 その後当審において平成29年8月2日付けで拒絶理由が通知され、同年12月8日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願請求項1ないし18に係る発明は、平成29年12月8日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載の事項により特定される発明であると認める。 そのうち、請求項6に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、分説してA)ないしC)の符号を付けると、以下の事項により特定される発明である。 「【請求項6】 A) 空気/水弁アセンブリであって、 B) 一体型の部品であり近位端を有する主ステムを含み、 B-1) 前記主ステムは、該主ステムと一体になっている該主ステムの周囲に配置される複数の隆起部及び溝を含み、 B-2) 該主ステムは少なくとも2つの隆起部を含んでおり、前記溝の少なくとも1つは前記少なくとも2つの隆起部の間に配置され、該2つの隆起部それぞれは直径を有し、該2つの隆起部のうちの一つの隆起部は他の一つの隆起部よりも大きな直径を有し、 B-3) 前記主ステムは、該主ステムの少なくとも一部を通じて空気及び/又は流体の通過を可能にするように構成される、前記近位端に配置されて前記主ステムの長手方向軸に沿って延びる第1の開口および該第1の開口を横切って配置される第2の開口と、 B-4) 前記複数の溝の少なくとも1つに設けられた少なくとも1つのオーバーモールドされたシールと、 B-5) 前記近位端に設けられたボタンキャップと、前記主ステムの周りに配置される保持リングと、該保持リングの周りに設けられたオーバーモールドされたブートと、 B-6) 該保持リングの内面に接触する弾力性部材と、を備え、 C) 前記保持リングは、ダイヤフラムと、前記主ステムを受け入れる開口と、前記保持リングの開口の半径に沿う切抜きと、を備える、 A) 空気/水弁アセンブリ。」 第3 平成29年8月2日付け拒絶理由の概要 当審による平成29年8月2日付け拒絶理由の概要は、請求項6に係る発明に対する拒絶理由を含むものであって、請求項6に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものを含むものである。 記 刊行物1:特開2002-306405号公報 第4 刊行物1記載の事項及び引用発明 1 刊行物1記載の事項 刊行物1には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審が付した。) (1)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 内視鏡の外表面または内視鏡の内部に配設された流体流路に連通する空間内に設けられた硬質部材と、この硬質部材の表面に付設される軟質部材とからなる組立体を有する内視鏡装置において、 前記硬質部材を硬質の熱可塑性樹脂で形成すると共に、 前記軟質部材を前記硬質部材より軟質な熱可塑性弾性体組成物で形成し、 前記硬質部材と軟質部材の何れか一方を射出成形によって一次成形し、 これをインサート物とするインサート成形によって他方を二次成形することにより、これら部材を一体に形成したことを特徴とする内視鏡装置。」 (2)「【0003】 【発明が解決しようとする課題】前記従来の内視鏡にあって、内視鏡の外表面又は内部に配設された流体管路に連通する空間内に設けられた、例えば送気・送水ボタンのピストン上部部材、ピストン下部部材、押しボタンのボタン固定部材、スイッチ押圧部材等の硬質部材と、例えばシール部材、シート部材、押しボタンの弾性支持部材等の軟質部材とからなる組立体である、送気・送水ボタンや押しボタン等は、組立費が高価で、製造コストが高くなっていた。」 (3)「【0086】次に、カバー式内視鏡の操作部に設けられる送気・送水操作を行うための送気・送水操作手段の構成を説明する。図26は操作部51に設けられる送気・送水ボタン55及び送気・送水シリンダ52の構成を示したものである。なお図26において、左側は送気・送水ボタン55の自然状態、右側は送気・送水ボタン55の押し込み状態を示している。 【0087】操作部51の本体に設けられた送気・送水シリンダ52には、送気・送水ボタン55が着脱自在に嵌挿されている。送気・送水シリンダ52は段差を有する略円筒状に形成されており、側壁には開口側から底部側に向って順に、内視鏡カバー3に設けられた前記送気管路18と連通する気体流出路41、図示しない送気源と連通する気体流入路42、前記送水管路19と連通する液体流出路43、図示しない送水源と連通する液体流入路44が設けられている。 【0088】送気・送水ボタン55は、送気・送水シリンダ52に嵌挿される略円筒状のピストン部56を有して構成されている。ピストン部56は、図26において外周側上方に位置するピストン上部部材57と内周側下方に位置するピストン下部部材58とを有している。これらの部材は接着等の手段によって接合され、一体化されている。また、ピストン部56の内部には、長手軸方向に連通路47が設けられている。この連通路47の下端には側方に開口する開口部48が設けられている。 【0089】ピストン上部部材57及びピストン下部部材58は、ポリサルホン、変性PPO、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン等の剛性を有する硬質の熱可塑性樹脂から形成されている。 【0090】ピストン上部部材57の外周には、シール部材60aが設けられており、シール部材60aより下側のピストン上部部材57の下端部には、送気・送水シリンダ52の内径と略同一の外径を有するすべり部材61aが設けられている。ピストン下部部材58の外周には、上から順に逆止弁59、シール部材60b、シール部材60cが設けられており、シール部材60bとシール部材60cの間には、送気・送水シリンダ52の内径と略同一の外径を有するすべり部材61bが設けられている。前記シール部材60a,シール部材60b,シール部材60cの外周部は送気・送水シリンダ52の内周面に密接している。」 (4)「【0095】前記ピストン下部部材58と逆止弁59、シール部材60b、シール部材60cは、インサート成形の一種である二色成形による射出成形によって一体に形成されている。 【0096】まず、図27に示すように、雄金型68と一次雌金型69とによって形成される一次キャビティ70に、前述の硬質樹脂を射出してピストン下部部材58を二色成形の一次成形工程によって射出成形する。次いで、一次雌金型69を雄金型68と分離する。この際、ピストン下部部材58は雄金型68に留置されたままである。 【0097】次に、図28に示すように、二次雌金型71を雄金型68にセットする。ここで、雄金型68、二次雌金型71及び一次成形されたピストン下部部材58によって形成される空間が二次キャビティ72となる。そして、二次キャビティ72に前述の熱可塑性弾性組成物を射出して逆止弁59、シール部材60b、シール部材60cを二色成形の二次成形工程によって射出成形する。 【0098】このとき、加熱溶融した熱可塑性弾性体組成物は、それ自身の熱で一次成形されたピストン下部部材58の接する部分の表面を一部溶かして、両者は混合または凝着して、ピストン下部部材58との当接部に融着面を形成する。 【0099】以上説明した二色成形による射出成形の工程によって、ピストン下部部材58と逆止弁59、シール部材60b、シール部材60cとは一体化されて形成され、組み立てが完了する。 【0100】また、前記ピストン上部部材57とシール部材60aは、ピストン下部部材58と逆止弁59、シール部材60b、シール部材60cとの製造方法と同様にして、ピストン上部部材57を一次成形する工程と、シール部材60aを二次成形する工程とを有する二色成形による射出成形の工程によって、一体化され組み立てられる。 【0101】前記ピストン上部部材57の上部の外側には、円筒状のピストンストッパ53が設けられており、ピストン上部部材57のシール部材60aの上側に設けられたフランジ部54とピストンストッパ53の内面のストッパ側フランジ部49とが当接するようになっている。 【0102】ピストン上部部材57及びピストン下部部材58の上端部には、ピストン部56を上下動させる際に手指をかける指当て部66がピストン上部部材57に嵌着して設けられている。指当て部66の内周側には、外表面に露出した円筒状の識別指標46が設けられている。 【0103】ストッパ側フランジ部49の上面と指当て部66の下面との間には、コイルスプリング62が係入されて設けられている。このコイルスプリング62の付勢力によって、ピストン部56は上方に、ピストンストッパ53は下方にそれぞれ付勢されており、自然状態において、フランジ部54とストッパ側フランジ部49とが当接してピストン部56が係止されている。 【0104】ピストンストッパ53の外周には、弾性部材で形成されたボタン固定部材50が一体に設けられ、ピストンストッパ53下部の送気・送水シリンダ52の開口部には、固定口金64が設けられており、ボタン固定部材50の内面の突出部63と固定口金64の口金フランジ部45とが係合している。 【0105】前記ピストンストッパ53は、前記ピストン上部部材57及びピストン下部部材58と同様の剛性を有する硬質の熱可塑性樹脂から形成されている。また、前記ボタン固定部材50は、前記逆止弁59、シール部材60a、シール部材60b、シール部材60cと同様のゴム弾性に優れた熱可塑性弾性体組成物から形成されている。このピストンストッパ53とボタン固定部材50は、前述のピストン下部部材58と逆止弁59、シール部材60b、シール部材60cとの製造方法と同様にして、ピストンストッパ53を一次成形しボタン固定部材50を二次成形する二色成形による射出成形の工程によって一体化され組み立てられている。」 (5)図26 「 」 2 刊行物1に記載された発明の認定 (1) 送気・送水ボタン55は、送気・送水シリンダ52に嵌挿され(段落【0087】)、また、送気・送水ボタン55は、送気・送水シリンダ52に嵌挿される略円筒状のピストン部56を有し(段落【0088】)、コイルスプリング62の付勢力によって、ピストン部56は上方に、ピストンストッパ53は下方にそれぞれ付勢され(段落【0103】)、ピストンストッパ53の外周には、弾性部材で形成されたボタン固定部材50が一体に設けられ、ボタン固定部材50は、送気・送水シリンダ52の固定口金64に係合している(段落【0104】)ことから、「送気・送水ボタン55」が、「ピストン部56」、「コイルスプリング62」、「ピストンストッパ53」、及び、「ボタン固定部材50」により構成されたものであることがわかる。 (2) 上記1(3)の記載、及び、上記1(5)に示した図26を参酌すると、「ピストン部56の内部」に設けられた「連通路47」が、上端開口部を有することが見て取れる。 (3) 上記1(3)の記載、及び、上記1(5)に示した図26を参酌すると、「ピストン上部部材57の下端部」の「送気・送水シリンダ52の内径と略同一の外径を有するすべり部材61a」は、ピストン上部部材57の下端部に一体的に形成されており、「送気・送水シリンダ52の内径と略同一の外径を有するすべり部材61b」は、ピストン下部部材58に一体的に形成されている点が見て取れ、「すべり部材61a」と「すべり部材61b」は、いずれも突状で「外径を有する」ものであり、「すべり部材61a」は、「すべり部材61b」よりも大きな外径を有する点が見て取れる。 (4) 上記1(5)に示した図26を参酌すると、「ピストン上部部材57」に形成された「すべり部材61a」の下に、「ピストン下部部材58」に設けられた「シール部材60b」が位置する点が見て取れる。また、「ピストン上部部材57」及び「ピストン下部部材58」の外周において、「シール部材60a」、「シール部材60b」及び「シール部材60c」が設けられた部位には、それぞれ溝が形成され、該溝に、各々のシール部材が設けられた点が見て取れる。 よって、上記1(1)ないし(5)の記載事項、及び、上記(1)ないし(4)の認定事項を含む刊行物1全体の記載を総合すると、刊行物1には、 「送気・送水シリンダ52に嵌挿される略円筒状のピストン部56を有する送気・送水ボタン55であり、該ピストン部56は、外周側上方に位置するピストン上部部材57と内周側下方に位置するピストン下部部材58とを有し、これらの部材は接着等の手段によって接合され、一体化され、該ピストン部56の内部には、長手軸方向に、上端開口部を有する連通路47が設けられ、この連通路47の下端には側方に開口する開口部48が設けられ、 ピストン上部部材57の外周には、溝が形成され、該溝に、シール部材60aが設けられており、シール部材60aより下側のピストン上部部材57の下端部には、送気・送水シリンダ52の内径と略同一の外径を有する突状のすべり部材61aが一体的に形成され、 ピストン下部部材58の外周の、ピストン上部部材57の下端部に形成されたすべり部材61aの下には、複数の溝が形成され、それぞれの溝に上から順に逆止弁59、シール部材60b、シール部材60cが設けられており、シール部材60bとシール部材60cの間には、送気・送水シリンダ52の内径と略同一の外径を有する突状のすべり部材61bが一体的に形成され、 ピストン下部部材58は、一次成形工程によって射出成形され、シール部材60b、シール部材60cは、二次成形工程によって射出成形されるものであり、 すべり部材61aの外径は、すべり部材61bの外径よりも大きいものであり、 前記ピストン上部部材57の上部の外側には、円筒状のピストンストッパ53が設けられており、 ピストン上部部材57のフランジ部54とピストンストッパ53の内面のストッパ側フランジ部49とが当接するようになっており、 ピストン上部部材57及びピストン下部部材58の上端部には、ピストン部56を上下動させる際に手指をかける指当て部66がピストン上部部材57に嵌着して設けられ、 ストッパ側フランジ部49の上面と指当て部66の下面との間には、コイルスプリング62が係入されて設けられ、 ピストンストッパ53の外周には、弾性部材で形成され、二次成形する射出成形の工程により一体化されたボタン固定部材50が設けられた、 送気・送水ボタン55。」 の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 第5 対比 引用発明と本願発明とを対比する。 1 本願発明のA)の特定事項について 引用発明は「送気・送水シリンダ52に嵌挿される略円筒状のピストン部56」を含む「送気・送水ボタン55」であるから、引用発明の「送気・送水ボタン55」は、本願発明の「空気/水弁アセンブリ」に相当する。 2 本願発明のB)の特定事項について (1) 引用発明の「ピストン部56」は、「外周側上方に位置するピストン上部部材57と内周側下方に位置するピストン下部部材58とを有し、これらの部材は接着等の手段によって接合され、一体化され」たものであるから、引用発明の「ピストン部56」は、本願発明の「主ステム」に相当する。 (2) 引用発明の「ピストン部56」の「指当て部66」が設けられる「上端部」は、「ピストン部56」に対する操作が行われるものであるから、「ピストン部56」の「上端部」は、本願発明の「主ステム」の「近位端」に相当する。 (3) よって、本願発明と引用発明は、「近位端を有する主ステムを含」む点で共通する。 3 本願発明のB-1)の特定事項について (1) 引用発明の「ピストン部56」を構成する「ピストン上部部材57」は、「外周」に「溝が形成され」、「突状のすべり部材61aが一体的に形成され」たものであり、また、同じく「ピストン部56」を構成する「ピストン下部部材58」は、「外周」に「複数の溝が形成され」、「突状のすべり部材61bが一体的に形成され」たものである。 (2) 引用発明の、「突状のすべり部材61a」と「突状のすべり部材61b」、「溝」と「複数の溝」は、それぞれ、本願発明の「複数の隆起部」、「溝」に相当する。 (3) よって、引用発明の「ピストン上部部材57の外周には、溝が形成され、」「突状のすべり部材61aが一体的に形成され、」「ピストン下部部材58の外周」「には、複数の溝が形成され、」「突状のすべり部材61bが一体的に形成され」たことは、本願発明の「前記主ステムは、該主ステムと一体になっている該主ステムの周囲に配置される複数の隆起部及び溝を含」むことに相当する。 4 本願発明のB-2)の特定事項について (1) 引用発明の「ピストン上部部材57」に「突状のすべり部材61aが一体的に形成され」、「ピストン下部部材58」に「突状のすべり部材61bが一体的に形成され」たことは、本願発明の「主ステムは少なくとも2つの隆起部を含んで」いることに相当する。 (2) 引用発明は、「ピストン上部部材57の下端部に形成されたすべり部材61aの下には、」「逆止弁59、シール部材60b、シール部材60cが設けられており、」「シール部材60bとシール部材60cの間には、」「すべり部材61bが一体的に形成され」ていることから、「シール部材60b」は、「すべり部材61a」と「すべり部材61b」の間に設けられることは明らかである。 (3) また、引用発明の「シール部材60b」は、「溝に」「設けられ」たものであることから、引用発明は、「すべり部材61a」と「すべり部材61b」の間に「シール部材60b」が「設けられ」る「溝」が形成されたものである。 (4) そして、引用発明の「すべり部材61a」と「すべり部材61b」の間に「溝」が形成されたことは、本願発明の「前記溝の少なくとも1つは前記少なくとも2つの隆起部の間に配置され」たことに相当する。 (5) 引用発明の「すべり部材61a」及び「すべり部材61b」の「外径」は、本願発明の「隆起部」の「直径」に相当し、引用発明の「すべり部材61aの外径は、すべり部材61bの外径よりも大きい」ことは、本願発明の「該2つの隆起部のうちの一つの隆起部は他の一つの隆起部よりも大きな直径を有」することに相当する。 (6) 以上のことから、引用発明の「ピストン上部部材57」に「突状のすべり部材61aが一体的に形成され」、「ピストン下部部材58」に「突状のすべり部材61bが一体的に形成され」、「すべり部材61a」と「すべり部材61b」の間に「溝」が形成され、「すべり部材61aの外径は、すべり部材61bの外径よりも大きい」ことは、本願発明の「該主ステムは少なくとも2つの隆起部を含んでおり、前記溝の少なくとも1つは前記少なくとも2つの隆起部の間に配置され、該2つの隆起部それぞれは直径を有し、該2つの隆起部のうちの一つの隆起部は他の一つの隆起部よりも大きな直径を有」することに相当する。 5 本願発明のB-3)の特定事項について (1) 引用発明の「ピストン部56の内部に」「設けられ」た「長手軸方向に」「設けられ」た「上端開口部を有する連通路47」は、本願発明の「前記近位端に配置されて前記主ステムの長手方向軸に沿って延びる第1の開口」に相当し、引用発明の「この連通路47の下端」の「側方に開口する開口部48」は、本願発明の「該第1の開口を横切って配置される第2の開口」に相当する。 (2) 引用発明の「連通路47」及び「開口部48」が、空気及び/又は流体の通過を可能とするものであることは、当業者にとって明らかである。 (3) よって、引用発明の「ピストン部56の内部には、長手軸方向に連通路47が設けられ、この連通路47の下端には側方に開口する開口部48が設けられ」た点は、本願発明の「前記主ステムは、該主ステムの少なくとも一部を通じて空気及び/又は流体の通過を可能にするように構成される、前記近位端に配置されて前記主ステムの長手方向軸に沿って延びる第1の開口および該第1の開口を横切って配置される第2の開口」を備える点に相当する。 6 本願発明のB-4)の特定事項について (1) 引用発明の「シール部材60b」及び「シール部材60c」は、「それぞれの溝に」「設けられ」たものであり、「二次成形工程によって射出成形されるものであ」る。 (2) 引用発明の「シール部材60b」及び「シール部材60c」、「二次成形工程によって射出成形され」ることは、それぞれ、本願発明の「少なくとも1つのシール」、「オーバーモールドされ」ることに相当する。 (3) よって、引用発明の、「複数の溝が形成され、それぞれの溝に」「二次成形工程によって射出成形され」て「設けられ」た「シール部材60b、シール部材60c」は、本願発明の「前記複数の溝の少なくとも1つに設けられた少なくとも1つのオーバーモールドされたシール」に相当する。 7 本願発明のB-5)の特定事項について (1) 引用発明の「ピストン上部部材57及びピストン下部部材58の上端部」の「指当て部66」は、本願発明の「前記近位端に設けられたボタンキャップ」に相当する。 (2) 引用発明の「ピストン上部部材57の上部の外側に」「設けられ」た「円筒状のピストンストッパ53」は、本願発明の「前記主ステムの周りに配置される保持リング」に相当する。 (3) 引用発明の「ピストンストッパ53の外周に」「弾性部材で形成され、二次成形する射出成形の工程により一体化されたボタン固定部材50」は、本願発明の「該保持リングの周りに設けられたオーバーモールドされたブート」に相当する。 8 本願発明のB-6)の特定事項について (1) 引用発明の「ストッパ側フランジ部49」は「ピストンストッパ53の内面」に設けられたものである。 (2) よって、引用発明の「ストッパ側フランジ部49の上面」に「係入されて設けられ」る「コイルスプリング62」は、本願発明の「保持リングの内面に接触する弾力性部材」に相当する。 9 本願発明のC)の特定事項について (1) 引用発明の「ピストンストッパ53」は、その内側に「ピストン上部部材57の上部」が設けられるものであるから、開口を備えることは明らかである。 (2) 引用発明の「ストッパ側フランジ部49」は、「ピストンストッパ53の内面」に設けられたものであり、引用発明の「ストッパ側フランジ部49」と本願発明の「ダイヤフラム」は、ともにフランジ状の部材であるから、引用発明の「ストッパ側フランジ部49」は、本願発明の「ダイヤフラム」に相当する。 (3) よって、引用発明と本願発明とは、「保持リングは、」「ダイヤフラムと、前記主ステムを受け入れる開口」「を備える」点で共通する。 そうすると、本願発明と引用発明は、以下の点で一致する。 <一致点> 「A) 空気/水弁アセンブリであって、 B') 近位端を有する主ステムを含み、 B-1) 前記主ステムは、該主ステムと一体になっている該主ステムの周囲に配置される複数の隆起部及び溝を含み、 B-2) 該主ステムは少なくとも2つの隆起部を含んでおり、前記溝の少なくとも1つは前記少なくとも2つの隆起部の間に配置され、該2つの隆起部それぞれは直径を有し、該2つの隆起部のうちの一つの隆起部は他の一つの隆起部よりも大きな直径を有し、 B-3) 前記主ステムは、該主ステムの少なくとも一部を通じて空気及び/又は流体の通過を可能にするように構成される、前記近位端に配置されて前記主ステムの長手方向軸に沿って延びる第1の開口および該第1の開口を横切って配置される第2の開口と、 B-4) 前記複数の溝の少なくとも1つに設けられた少なくとも1つのオーバーモールドされたシールと、 B-5) 前記近位端に設けられたボタンキャップと、前記主ステムの周りに配置される保持リングと、該保持リングの周りに設けられたオーバーモールドされたブートと、 B-6) 該保持リングの内面に接触する弾力性部材と、 を備え、 C') 前記保持リングは、ダイヤフラムと、前記主ステムを受け入れる開口を備える、 A) 空気/水弁アセンブリ。」 また、両者は、以下の点で相違している。 <相違点1> 主ステムが、本願発明は、一体型の部品であるのに対して、引用発明は、ピストン上部部材57とピストン下部部材58を接着等の手段によって接合され一体化されたものである点。 <相違点2> 保持リングに関して、本願発明は、主ステムを受け入れる開口の半径に沿う切抜きを備えるのに対して、引用発明は、そのような構成を有さない点。 第6 検討・判断 上記各相違点について以下に検討する。 <相違点1について> 主ステムを、一体型の部品とするか、2つの部材で成形し、各部材を接合して一体化するかは、当該部品の細部の形状、モールド成形に用いられる金型の形状、生産性等を勘案し、当業者が適宜選択し得る程度の事項である。 したがって、引用発明において、ピストン部材56を一体型の部品とし、本願発明の上記相違点1に係る構成を成すことは、当業者が容易に想到し得ることである。 <相違点2について> 本願発明の相違点2に係る構成は、平成29年12月8日になされた手続補正により限定された構成であり、同日付けの意見書において、請求人は、「さらに、本願明細書の段落0036および図6の記載に基づき、『前記保持リングは、ダイヤフラムと、前記主ステムを受け入れる開口と、前記保持リングの開口の半径に沿う切抜きと、を備える』という事項を追加しました。」と主張している。 そこで、本願明細書の段落【0036】を参照すると、当該段落には、「(図4の)保持リング230は、図6に示すように、主ステム225の端部270を受け入れる開口285を有するダイヤフラム280を提供する。開口285は、三つの半円切抜き(281として示す)を有する大きな直径の円として成形されるが、他の好適に成形される開口285(例えば、四角形、三角形等)が使用されてもよいことが理解されるべきである。・・・(略)・・・」と記載されている。 しかしながら、本願明細書には、上記の構成を採用した理由は何ら記載されておらず、上記意見書においても、「保持リングの切抜きに関しまして、参考図2に示します。」との記載が存在するのみで、上記の構成を採用したことの理由が何ら示されていない。 そして、段落【0041】を参照すると、ダイヤフラムは、ボタンキャップとの間に弾力性部材を保持するものであるから、弾力性部材と当接し、該弾力性部材を保持可能な形状であれば事足りるものであり、上記の構成を採用したことは、単なる設計的事項といわざるを得ず、また、本願明細書の記載、及び、上記意見書の記載を参酌しても、上記の構成を採用したことによる格別な作用効果は認められない。 <本願発明の作用効果について> 本願発明の作用効果は、引用発明に基づいて当業者が予測し得る範囲内のものにすぎず、格別なものではない。 よって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 結語 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-01-05 |
結審通知日 | 2018-01-09 |
審決日 | 2018-01-22 |
出願番号 | 特願2013-542135(P2013-542135) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A61B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小田倉 直人 |
特許庁審判長 |
福島 浩司 |
特許庁審判官 |
▲高▼橋 祐介 渡戸 正義 |
発明の名称 | 内視鏡用の使い捨て可能な空気/水弁 |
代理人 | 藤田 和子 |