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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A01K
管理番号 1341008
審判番号 不服2017-2502  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-21 
確定日 2018-06-08 
事件の表示 特願2014-263711「動物排泄物用粒状処理材」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 7月11日出願公開、特開2016-123277〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年12月26日の出願であって、平成28年5月17日付けで拒絶理由が通知され、同年7月21日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出され、さらに、同年7月22日付けで意見書が提出されたが、同年12月26日付けで拒絶査定がなされた。
本件は、これに対して、平成29年2月21日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。その後、平成29年3月23日付けで前置報告がなされ、同年5月19日付けで請求人から上申書が提出された。


第2 平成29年2月21日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年2月21日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成29年2月21日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、本願の特許請求の範囲の請求項1は、本件補正前の(平成28年7月21日付けの手続補正により補正された)特許請求の範囲の請求項1である、

「 【請求項1】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(c)を含む単量体組成物を重合して得られる架橋重合体であって、前記(c)の重量割合が前記(a1)及び前記(a2)の合計重量に対して0.05?2重量%であり、前記(c)に由来する構造単位がアルカリ性条件下で加水分解する基を有する架橋重合体(A)並びに水不溶性基材(B)を含んでなる動物排泄物用粒状処理材。」
から、次のように補正されたものと認める。
「 【請求項1】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(c)を含む単量体組成物を重合して得られる架橋重合体であって、前記(c)の重量割合が前記(a1)及び前記(a2)の合計重量に対して0.09?0.6重量%であり、前記(c)に由来する構造単位がアルカリ性条件下で加水分解する基を有する架橋重合体(A)並びに水不溶性基材(B)を含んでなる動物排泄物用粒状処理材。」
(下線は、請求人が付したものである。)

2 補正の目的
本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1の、「0.05?2重量%」が「0.09?0.6重量%」に補正されたものであるから、本件補正の請求項1についての補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するか否か)について、以下に検討する。

3 本願補正発明
本願補正発明は、本件補正後の請求項1に記載された事項(上記「1」で、本件補正後の請求項1として記載した事項)により特定されるものと認められる。

4 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2004-305141号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審で付したものである。)

(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ペット等の動物の排泄物用処理材、製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、猫、犬等のペットの排泄物用処理材としては、ゼオライト粒子等の無機質粉末や有機質短繊維、セルロース質粉砕物等の有機質の表面に吸水性樹脂微粉末がまぶされたものが使用されてきた(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】
特開平4-335841号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記排泄物用処理材は、排泄物の吸収が速いが、吸収後に処理剤の表面に排泄物が滲み出ることがあり、そのためヌメリ感がでたり、かたまりが取り扱いにくくなったり、犬等の動物の毛に排泄物が付着するという問題があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の問題点を改善すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、粉末状、多孔体、ペレット状、繊維状及び発泡体からなる群から選ばれる1種以上の水不溶性の排泄物処理用基材(B)及び下記吸水性樹脂(A)からなる動物の排泄物用処理材;及びその製造法である。
吸水性樹脂(A):平均粒径が1?840μm、吸水量が20?1,000g/g、保水量/吸水量の比が0.55?1.00、水可溶性成分含量が10重量%以下、残存水溶性単量体量が100ppm以下である吸水性樹脂。
【0006】
本発明において吸水性樹脂(A)としては、平均粒径が1?840μm、吸水量が20?1,000g/g、保水量/吸水量の比が0.55?1.00、水可溶性成分含量が10重量%以下、残存水溶性単量体量が100ppm以下であればアニオン系、ノニオン系、カチオン系吸水性樹脂であれ特に限定はないが、具体的には例えば下記の(1)?(5)の吸水性樹脂(a)を上記範囲に調整したものが挙げられる。
(1)デンプン又はセルロース等の多糖類(イ-1)及び/若しくは単糖類(イ-2)と水溶性単量体及び/若しくは加水分解により水溶性となる単量体から選ばれる1種以上の単量体(ロ)と、架橋剤(ハ)とを必須成分として重合させ、必要により加水分解を行うことにより得られる吸水性樹脂。
(イ-1)としてはショ糖、セルロース、CMC、デンプン等が挙げられ、(イ-2)としてはペンタエリスリトール、ジグリセリン、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、ジペンタエリスリトール、グルコース、フルクトース等が挙げられる。
【0007】
(ロ)としては例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基を有するラジカル重合性水溶性単量体及びそれらの塩、及び水酸基、アミド基、3級アミノ基、第4級アンモニウム塩基を有するラジカル重合性水溶性単量体等が挙げられる。
カルボキシル基を有するラジカル重合性水溶性単量体としては、例えば不飽和モノ又はポリ(2価?6価)カルボン酸[(メタ)アクリル酸(アクリル酸及び/又はメタクリル酸をいう。以下同様の記載を用いる)、マレイン酸、マレイン酸モノアルキル(炭素数1?9)エステル、フマル酸、フマル酸モノアルキル(炭素数1?9)エステル、クロトン酸、ソルビン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキル(炭素数1?9)エステル、イタコン酸グリコールモノエーテル、ケイ皮酸、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキル(炭素数1?9)エステル等]及びそれらの無水物[無水マレイン酸等]等が挙げられる。
【0008】
スルホン酸基を有するラジカル重合性水溶性単量体としては、例えば、脂肪族又は芳香族ビニルスルホン酸(ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸等)、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロキシプロピルスルホン酸、(メタ)アクリルアルキルスルホン酸[(メタ)アクリル酸スルホエチル、(メタ)アクリル酸スルホプロピル等]、(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸[2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等]等が挙げられる。
リン酸基を有するラジカル重合性水溶性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルリン酸モノエステル[2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート、フェニル-2-アクリロイルロキシエチルホスフェート等]等が挙げられる。
上記カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基を含有する水溶性単量体の塩[例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アミン塩若しくはアンモニウム塩等]等が挙げられる。」

(2)「【0012】
架橋剤(ハ)としては、例えば、ラジカル重合性不飽和基を2個以上有する架橋剤、ラジカル重合性不飽和基と反応性官能基とを有する架橋剤、反応性官能基を2個以上有する架橋剤等が挙げられる。ラジカル重合性不飽和基を2個以上有する化合物の具体例としては、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリン(ジ又はトリ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、テトラアリロキシエタン及びペンタエリスリトールトリアリルエーテル等が挙げられる。
【0013】
(イ)、(ロ)の官能基と反応し得る官能基を少なくとも1個有し、且つ少なくとも1個のラジカル重合性不飽和基を有する化合物[例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート等]が挙げられる。
(イ)、(ロ)の官能基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物の具体例としては、多価アルコール(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン等)、アルカノールアミン(例えば、ジエタノールアミン等)、及びポリアミン(例えば、ポリエチレンイミン等)等が挙げられる。
これらの架橋剤は2種類以上を併用しても良い。これらのうち好ましいものは、ラジカル重合性不飽和基を2個以上有する共重合性の架橋剤であり、より好ましくはN,N’-メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラアリロキシエタン、ペンタエリスルトールトリアリルエーテル、トリアリルアミンである。
(イ)、(ロ)及び(ハ)の割合、吸水性樹脂の製造法は特に限定されない。
【0014】
吸水性樹脂の製造法としては、例えば水溶液重合法、逆相懸濁重合法、噴霧重合法、光開始重合法、放射線重合法等が例示される。好ましい重合方法は、ラジカル重合開始剤を使用して水溶液重合する方法である。この場合のラジカル重合開始剤の種類と使用量、ラジカル重合条件についても特に限定はなく、通常と同様にできる。なお、これらの重合系に、必要により各種添加剤、連鎖移動剤(例えばチオール化合物等)等を添加しても差し支えない。
上記架橋剤の量は(イ)(ロ)の合計量に対して、好ましくは0.001?5重量%である。架橋剤の量が0.001%以上であると、吸水時にゲル状になり、吸水性樹脂の機能である吸水・保水能力が良好となる。また、乾燥性が良好で、生産性も非効率的である。一方5%以下であると、架橋が強くなりすぎず、十分な吸水・保水能力を発揮する。これらの重合系に、必要により各種添加剤、連鎖移動剤(例えば、チオール化合物等)、界面活性剤等を添加しても差し支えない。」

(3)「【0018】
(2)上記(イ)と(ロ)とを重合させたもの(デンプン-アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、セルロース-アクリロニトリルグラフト重合物の加水分解物等);
(3)上記(イ)の架橋物(カルボキシメチルセルロースの架橋物等);
(4)上記(ロ)と(ハ)との共重合体(架橋されたポリアクリルアミドの部分加水分解物、架橋されたアクリル酸-アクリルアミド共重合体、架橋されたポリスルホン酸塩(架橋されたスルホン化ポリスチレン等)、架橋されたポリアクリル酸塩/ポリスルホン酸塩共重合体、ビニルエステル-不飽和カルボン酸共重合体ケン化物(特開昭52-14689号及び特開昭52-27455号公報に記載されているもの等)、架橋されたポリアクリル酸(塩)、架橋されたアクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、架橋されたイソブチレン-無水マレイン酸共重合体、架橋されたポリビニルピロリドン、及び架橋されたカルボン酸変性ポリビニルアルコール);並びに、
(5)自己架橋性を有する上記(ロ)の重合物(自己架橋型ポリアクリル酸塩等);
が挙げられる。以上例示した吸水性樹脂は2種以上併用してもよい。
中和塩の形態の吸水性樹脂である場合の塩の種類及び中和度については特に限定はないが、塩の種類としては好ましくはアルカリ金属塩であり、より好ましくはナトリウム塩及びカリウム塩であり、酸基に対する中和度は好ましくは50?90モル%であり、より好ましくは60?80モル%である。
以上例示した吸水性樹脂(a)は2種以上併用してもよい。
【0019】
これらの吸水性樹脂(aA)のうち、好ましいものは架橋ポリアクリルアミド共重合体等のノニオン系吸水性樹脂;架橋されたポリアクリル酸(塩)、架橋されたアクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、架橋されたイソブチレン-無水マレイン酸共重合体、及び架橋されたカルボン酸変性ポリビニルアルコール等のアニオン系吸水性樹脂であり、る。より好ましくは架橋ポリアクリルアミド共重合体及び架橋されたポリアクリル酸(塩)であり、特に好ましくは架橋されたポリアクリル酸(塩)である。
(aA)の吸水倍率は、上記の架橋構造、特に架橋密度に依存し、一般に架橋密度が低い程、吸水倍率が大きくなる傾向がある。(aA)の架橋密度は、全単量体に対する分岐点のモル%で、好ましくは0.01?10mol%、より好ましくは0.05?5mol%である。架橋剤により架橋構造を導入する場合、架橋剤の全単量体(該架橋剤自体をも含む)に対する共重合重量比は、好ましくは0.005?3wt.%、好ましくは0.01?2wt.%である。
【0020】
(aA)の架橋密度が10mol%以下の場合には、(aA)の吸水倍率が大きくなるために、吸水性樹脂の吸水・保水効果が大きくなる。一方、架橋密度が0.01mol%以上の場合には、該(aA)の機械的強度が強くなり、取扱いが良好となる。・・・」

(4)「【0024】
前記吸水性樹脂(A)は、上記物性に加えて更にその生理食塩水吸液ゲル強度が好ましくは10,000?50,000ダイン/cm^(2)、より好ましくは20,000?45,000ダイン/cm^(2)であるとき、凝集した排泄物用処理剤がボール状に固まり、弾力性が発現して砕けにくくなるので好ましい。ゲル強度は例えば粒子を表面架橋することによって向上することができる。ゲル強度の測定法は後記する。
前記吸水性樹脂は、上記物性に加えて更にクリープメーターによるその生理食塩水吸液ゲル弾性率が好ましくは5×10^(3)?20×10^(3)N/m^(2)、より好ましくは6×10^(3)?15×10^(3)N/m^(2)であるとき、凝集した排泄物用処理剤に弾性があるため凝集した排泄物用処理剤を扱いやすくなる。ゲル弾性率は例えば重合条件(分子量と架橋度のバランス)等によって達成することができる。ゲル弾性率は吸水性樹脂の膨潤ゲルに一定の荷重(応力)をかけたときの瞬間圧縮変形量によって決められる弾性率のことであり、測定法は後記する。」

(5)「【0026】
本発明において、該排泄物処理用基材(B)としては、排泄物処理用基材として一般的に使用されているものでよく特に制限されないが、排泄物処理用基材に適する物質としては、例えば無機物質及び/又は有機物質の粉末状、多孔体、ペレット状、繊維状及び発泡体からなる群から選ばれる1種以上の水不溶性の固状のものが使用できる。
具体的には、無機質基材としては例えば無機質粉体(土壌、砂、フライアッシュ、珪藻土、クレー、タルク、カオリン、ベントナイト、ドロマイト、炭酸カルシウム、アルミナ、硅砂等);無機質繊維(ロックウール、ガラス繊維等);無機質多孔体[フィルトン(多孔質セラミック、くんたん)、焼成バーミキュライト、軽石、火山灰、ゼオライト、シラスバルーン等];無機質発泡体(パーライト等)等が挙げられる。
有機質基材としては、例えば有機質粉末[ヤシガラ、モミガラ、オガクズ、ピーナッツの殻、ミカンの殻、木くず、木粉、ヤシの実乾燥粉体、合成樹脂又はゴムの粉末(ポリエチレン粉末、ポリプロピレン粉末、エチレン-酢酸ビニル共重合体粉末等)等];有機質短繊維[天然繊維〔セルロース系のもの(木綿、オガクズ、ワラ等)及びその他、草炭、ピートモス、羊毛等〕、人造繊維(レーヨン、アセテート等のセルロース系等)、合成繊維(ポリアミド、ポリエステル、アクリル等)、パルプ〔メカニカルパルプ(丸太からの砕木パルプ、アスプルンド法砕木パルプ等)、ケミカルパルプ(亜硫酸パルプ、ソーダパルプ、硫酸塩パルプ、硝酸パルプ、塩素パルプ等)、セミケミカルパルプ、再生パルプ(例えばパルプを一旦製紙して作った紙の機械的破砕又は粉砕物、又は故紙の機械的破砕又は粉砕物である再生故紙パルプ等)等〕;紙(新聞紙、段ボール紙、雑誌等)等のセルロース質の粉砕物;有機質多孔体(ヤシ殻活性炭等);有機質発泡体[穀物、合成樹脂又はゴムの発泡体(ポリスチレン発泡体、ポリビニルアセタール系スポンジ、ゴムスポンジ、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、ウレタンフォーム等)等];有機質ペレット[ゴム及び合成樹脂のペレット等]等が挙げられる。
【0027】
これらの内、好ましくは無機質粉体、無機質多孔体、無機質発泡体、有機質粉体、有機質短繊維、セルロース質の粉砕物、有機質発泡体であり、特に好ましくは、無機質粉体、無機質多孔体、無機質発泡体、有機質粉体、有機質短繊維、セルロース質の粉砕物であり、最も好ましくは無機質粉体、有機質短繊維、セルロース質の粉砕物である。大きさについては、粉末の粒子径(長径)は好ましくは1?1000μm、より好ましくは10?500μmであり、多孔体、繊維及び発泡体の大きさは好ましくは0.001?20mm、さらに好ましくは0.01?10mmである。ペレットは好ましくは1?30mmである。また、これらの排泄物処理用基材は単独、若しくは2種以上混合して用いることができる。発泡体の密度は好ましくは0.01?1g/cm^(3)である。
排泄物処理用基材としては上記の粉末状、多孔体、ペレット状、繊維状及び発泡体からなる群から選ばれる1種以上の水不溶性の固状のものをそのまま用いてもよいが、好ましくはこれらの造粒物である。」

(6)「【0033】
本発明の処理材は、粉末状、多孔体、ペレット状、繊維状及び発泡体からなる群から選ばれる1種以上の水不溶性の排泄物処理用基材(B)及び上記吸水性樹脂(A)からなり、(B)及び(A)を単に混合してもよいし、(B)の内部に(A)を内蔵させてもよいし、(B)に(A)をまぶしてもよいし、(B)に(A)を結合させてもよい。好ましくは、(B)の表面に(A)をまぶした排泄物用処理材である。(B)の表面に(A)をまぶすときには、必要に応じて、バインダー、吸水促進材、及び(A)以外の吸水材を使用することができる。バインダーとしては、特に限定はないが、排泄物用処理基材で使用するものが挙げられる。特に好ましいものは、澱粉、CMC、グアーガム等の増粘剤である。吸水促進材としては、毛細管現象で液体をすばやく保持することができる無機や有機の繊維状物質等が挙げられる。例えば、排泄物用処理基材で挙げたような繊維状のものがある。(A)以外の吸水材としては特に限定はないが、排泄物用処理基材で挙げたような無機や有機の粉末状物質等が挙げられる。ここで用いられるバインダー、吸水促進材、及び(A)以外の吸水材の大きさは好ましくは1?500μmである。
(B)と(A)の配合量は特に限定はないが、(A)の重量は好ましくは(B)の重量に対して1?50重量%、より好ましくは3?30重量%である。1重量%以上であると、動物の尿等の排泄物の吸収速度が速くなり又処理剤同士が凝集してボール状に固まりやすい、50重量以下であると経済的である。
【0034】
本発明において、該造粒物に吸水性樹脂微粉末をまぶす(造粒物の表面に付着又は固着させる)方法としては、該造粒物と吸水性樹脂微粉末を機械的にブレンドすることによって容易に行うことができる。該造粒物表面に存在する少量の水分がバインダーとなって、吸水性樹脂微粒子が造粒物表面に固着する。したがって、造粒物表面の水分量が少なすぎると十分に接着できず、逆に多すぎると造粒物の表面に接着した吸水性樹脂粒子がゲル状になって接着力が低下する。適正な水分量は基材の種類、性状や、該造粒物の形状、粒度や、吸水性樹脂の種類、性状等によって異なるが、好ましくは1?100重量%、より好ましくは2?50重量%である。
また、該造粒物に吸水性樹脂微粉末をまぶす場合、造粒工程が完了した後直ちに吸水性樹脂粉末を添加して同じ造粒設備の中でまぶしてもよいし、造粒後別の容器に一旦造粒物を移してそこで吸水性樹脂微粉末をまぶしてもよい。」

(7)「【0036】
本発明の処理材は、例えば容器中に本発明の処理材の粒子を敷き詰めて、簡易トイレの形で用いることができる。このトイレにて猫、犬等の動物が排泄すると、排泄物の水分を素早く吸収し、また吸水した部分の処理材粒子同士が互いにくっついて一つのゴム状のかたまりを呈するため、その部分を容易に摘まみとることができ、廃棄する上で好便である。」


上記記載事項(3)の「これらの吸水性樹脂(aA)のうち、・・・特に好ましくは架橋されたポリアクリル酸(塩)である。」(段落【0019】)と記載される「架橋されたポリアクリル酸」は、同(3)の「(4)上記(ロ)と(ハ)との共重合体・・・架橋されたポリアクリル酸」と記載される「架橋されたポリアクリル酸」であって、「上記(ロ)と(ハ)との共重合体」の「(ロ)」として、上記記載事項(1)の
「(ロ)としては例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基を有するラジカル重合性水溶性単量体及びそれらの塩、・・を有するラジカル重合性水溶性単量体等が挙げられる。
カルボキシル基を有するラジカル重合性水溶性単量体としては、例えば不飽和モノ又はポリ(2価?6価)カルボン酸[(メタ)アクリル酸(アクリル酸及び/又はメタクリル酸をいう。以下同様の記載を用いる)、・・が挙げられる。」(段落【0007】)
と記載される、「アクリル酸」を使用したものであることは明らかである。
また、(架橋剤)「(ハ)」として、上記記載事項(2)の
「架橋剤(ハ)としては、例えば、ラジカル重合性不飽和基を2個以上有する架橋剤・・・が挙げられる。ラジカル重合性不飽和基を2個以上有する化合物の具体例としては、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、・・・トリメチロールプロパントリアクリレート・・が挙げられる。
・・・より好ましくはN,N’-メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラアリロキシエタン、ペンタエリスルトールトリアリルエーテル、トリアリルアミンである。」(段落【0012】?【0013】)
と記載される「N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド」、「トリメチロールプロパントリアクリレート」を使用したものが開示されていると認められる。
すると、引用文献1には、吸水性樹脂として、アクリル酸及びN,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド及び/又はトリメチロールプロパントリアクリレートを共重合して得られる架橋されたポリアクリル酸を使用することが記載されていると認められる。

以上のことから、上記引用文献1の記載事項から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「アクリル酸並びにN,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド及び/又はトリメチロールプロパントリアクリレートを共重合して得られる吸水性樹脂である架橋されたポリアクリル酸と、無機物質及び/又は有機物質の粉末状、多孔体、ペレット状、繊維状及び発泡体からなる群から選ばれる1種以上の水不溶性の固状の排泄物用処理基材からなり、
上記排泄物用処理基材の造粒物に上記吸水性樹脂の微粉末をまぶした、
ペット等の動物の排泄物用処理材。」

5 対比
(1)本願補正発明と引用発明との対比
ア 引用発明の「アクリル酸」は、本願補正発明の「水溶性ビニルモノマー(a1)」に相当する。

イ 引用発明の「N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド及び/又はトリメチロールプロパントリアクリレート」は、本願補正発明の「架橋剤(c)」であって、「アルカリ性条件下で加水分解する基を有する」ものに相当する。

ウ 上記ア及びイから、引用発明の「アクリル酸並びにN,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド及び/又はトリメチロールプロパントリアクリレートを共重合して得られる吸水性樹脂である架橋されたポリアクリル酸」は、本願補正発明の「水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(c)を含む単量体組成物を重合して得られる架橋重合体であって、」「前記(c)に由来する構造単位がアルカリ性条件下で加水分解する基を有する架橋重合体(A)」に相当する。

エ 引用発明の「無機物質及び/又は有機物質の粉末状、多孔体、ペレット状、繊維状及び発泡体からなる群から選ばれる1種以上の水不溶性の固状の排泄物用処理基材」は、本願補正発明の「水不溶性基材(B)」に相当する。

オ 引用発明において、「上記排泄物用処理基材の造粒物に上記吸水性樹脂の微粉末をまぶした」ものが、粒状になることは自明であるから、引用発明の「上記排泄物用処理基材の造粒物に上記吸水性樹脂の微粉末をまぶした、ペット等の動物の排泄物用処理材」は、本願補正発明の「動物排泄物用粒状処理材」に相当する。

(2)一致点
してみると、両者は、
「水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(c)を含む単量体組成物を重合して得られる架橋重合体であって、前記(c)に由来する構造単位がアルカリ性条件下で加水分解する基を有する架橋重合体(A)並びに水不溶性基材(B)を含んでなる動物排泄物用粒状処理材。」
で一致し、次の点で相違する。

(3)相違点
本願発明は、「前記(c)の重量割合が前記(a1)及び前記(a2)の合計重量に対して0.09?0.6重量%であ」るのに対して、引用発明では、「アクリル酸」の重量に対する「N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド及び/又はトリメチロールプロパントリアクリレート」の重量割合が明らかでない点。

6 判断
(1)相違点について
ア 引用文献1には、吸水性樹脂について、「(aA)の吸水倍率は、上記の架橋構造、特に架橋密度に依存し、一般に架橋密度が低い程、吸水倍率が大きくなる傾向がある。(aA)の架橋密度は、全単量体に対する分岐点のモル%で、好ましくは0.01?10mol%、より好ましくは0.05?5mol%である。架橋剤により架橋構造を導入する場合、架橋剤の全単量体(該架橋剤自体をも含む)に対する共重合重量比は、好ましくは0.005?3wt.%、好ましくは0.01?2wt.%である。」(上記4(3)段落【0019】)、
また、引用発明の吸水性樹脂にさらに糖類が添加されている、「(1)デンプン又はセルロース等の多糖類(イ-1)及び/若しくは単糖類(イ-2)と水溶性単量体及び/若しくは加水分解により水溶性となる単量体から選ばれる1種以上の単量体(ロ)と、架橋剤(ハ)とを必須成分として重合させ、必要により加水分解を行うことにより得られる吸水性樹脂」について、「上記架橋剤の量は(イ)(ロ)の合計量に対して、好ましくは0.001?5重量%である。架橋剤の量が0.001%以上であると、吸水時にゲル状になり、吸水性樹脂の機能である吸水・保水能力が良好となる。また、乾燥性が良好で、生産性も非効率的である。一方5%以下であると、架橋が強くなりすぎず、十分な吸水・保水能力を発揮する。」(上記4(2)段落【0014】)と記載されている。
これらの記載事項から、引用文献1には、吸水性樹脂の、水溶性単量体と架橋剤の重量割合について、吸水・保水能力の観点から、最適化することが開示されている。

イ また、引用文献1には、「前記吸水性樹脂(A)は、上記物性に加えて更にその生理食塩水吸液ゲル強度が好ましくは10,000?50,000ダイン/cm^(2)、より好ましくは20,000?45,000ダイン/cm^(2)であるとき、凝集した排泄物用処理剤がボール状に固まり、弾力性が発現して砕けにくくなるので好ましい。ゲル強度は例えば粒子を表面架橋することによって向上することができる。ゲル強度の測定法は後記する。
前記吸水性樹脂は、上記物性に加えて更にクリープメーターによるその生理食塩水吸液ゲル弾性率が好ましくは5×10^(3)?20×10^(3)N/m^(2)、より好ましくは6×10^(3)?15×10^(3)N/m^(2)であるとき、凝集した排泄物用処理剤に弾性があるため凝集した排泄物用処理剤を扱いやすくなる。ゲル弾性率は例えば重合条件(分子量と架橋度のバランス)等によって達成することができる。」(上記4(4)段落【0024】)と記載されており、架橋の状態によって、凝集した排泄物用処理剤がボール状に固まり、弾力性が発現して砕けにくくなることや、凝集した排泄物用処理剤を扱いやすくなることが開示されている。

ウ してみると、上記ア、イで指摘した引用文献1の開示事項を考慮すれば、引用発明において、吸水・保水能力の観点や、凝集した排泄物用処理剤がボール状に固まり、砕けにくくなって、取り扱いやすくなるという観点から、架橋の状態に密接に関連する数値である、「アクリル酸」の重量に対する「N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド及び/又はトリメチロールプロパントリアクリレート」の重量割合を最適化することは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、本願補正発明の「0.09?0.6重量%」という数値は、上記した引用発明の吸水性樹脂にさらに糖類が添加されている、「(1)・・吸水性樹脂」についての「0.001?5重量%」という数値や、「架橋剤の全単量体(該架橋剤自体をも含む)に対する共重合重量比」(本願補正発明の重量%とは、分母が架橋剤自体も含まれる点で異なる)の「0.01?2wt.%」という数値(上記4(3)段落【0019】)と大きく異なるものではないことから、格別特異な数値であるとも認められない。

エ したがって、引用発明において、「アクリル酸」の重量に対する「N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド及び/又はトリメチロールプロパントリアクリレート」の重量割合を最適化することにより、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得ることである。

(2)効果について
本願補正発明が奏し得る効果は、引用発明及び引用文献1に記載された事項から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。

(3)請求人の主張について
ア 請求人は、審判請求書【請求の理由】1.(3)で、「一方、本願明細書には、動物排泄用粒状処理材の形状保持性(まとまり性及び凝集体の強度)の観点から、架橋剤(c)の重量割合を調整することが好ましいことが記載されており(0028段落)、本願明細書の実施例1?7と参考例1との比較から、「0.09?0.6重量%」とすることにより形状保持性について顕著な効果があることが明らかです。」と主張している。
しかし、本願の明細書段落【0028】には、「前記(a1)及び前記(a2)並びに前記(c)を含む単量体組成物中の前記(d)の含有量(重量%)は、吸収性能等の観点から、0?1.99重量%が好ましく、更に好ましくは0?0.95重量%である。」と記載されるのみで、請求人が主張する上記のような事項が記載されていないことは明らかである。
また、上記主張中で、「動物排泄用粒状処理材の形状保持性(まとまり性及び凝集体の強度)」としているが、「動物排泄用粒状処理材の形状保持性」は、本願の明細書には、段落【0023】の、「架橋剤(c)の単量体組成物中の重量割合(重量%)は、動物排泄用粒状処理材の形状保持性等の観点から、前記(a1)及び前記(a2)の合計重量に対して、0.05?2重量%が好ましく、更に好ましくは0.05?1重量%、特に好ましくは0.1?0.8重量%、最も好ましくは0.2?0.6重量%である。」との記載に含まれており、本願補正発明の「?0.6重量%」が、「動物排泄用粒状処理材の形状保持性」の観点から最適化されたものであることが記載されている。そして、この「動物排泄用粒状処理材の形状保持性」は、「動物排泄用粒状処理材」の「粒状」を保持する性能を示すと解するのが相当である。
すると、上記請求人の主張は、本願の明細書の誤認に基づくものであって、採用し得るものではない。

イ 請求人は、「0.09」重量%という数値の根拠として、審判請求書【請求の理由】2.(2)で、「請求項1の補正は、平成28年7月21日付け手続補正書における請求項(以下、補正前請求項と記載します)1において、本願実施例1?7の記載を根拠として、架橋剤(c)の重量割合を「前記(a1)及び前記(a2)の合計重量に対して0.09?0.6重量%」に限定する補正です。」、また、上申書2.で、「本願実施例1?7(製造例1?7)において、該架橋剤(c)の重量割合(重量%)は、小さいものから順に、それぞれ0.09(実施例7)、0.15(実施例6)・・・0.6(実施例5)です。」と説明し、更に、審判請求書【請求の理由】2.(3)で、「0.09」重量%という数値に、まとまり性及び凝集体の強度において顕著な効果があり、臨界的意義があると主張している。
しかし、実施例7(製造例7)は、「製造例6において、トリメチロールプロパントリアクリレートの添加量「0.3g(対アクリル酸0.1%)」を「0.15g(対アクリル酸0.05%)」に、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルの添加量「0.15g(対アクリル酸0.05%)」を「0.12g(対アクリル酸0.04%)」に変更した」ものであって、架橋剤はトリメチロールプロパントリアクリレート(対アクリル酸0.05%)とペンタエリスリトールトリアリルエーテル(対アクリル酸0.04%)であって、このうち、トリメチロールプロパントリアクリレートはアルカリ性条件下で加水分解する基を有する架橋剤(c)であるが、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルは加水分解性基を有さず、かつ、ビニルモノマーと反応して加水分解性基を生成しない架橋剤(d)である(本願の明細書段落【0024】?【0026】)から、実施例7の「前記(a1)及び前記(a2)の合計重量に対」する「前記(c)の重量割合」は、0.05重量%であって、請求人の「0.09」重量%という数値の根拠についての上記主張は、本願の明細書の誤認に基づくものであることは明らかである。(なお、実施例6(製造例6)についても、同様に、0.15ではなく、0.1重量%が正しい数値である。)
すると、0.09重量%という数値自体が誤っているのであるから、その臨界的意義もないことは明らかであって、請求人の主張する0.09重量%には臨界的意義があるという主張は、採用し得るものではない。

ウ 請求人は、「0.6重量%」という数値の臨界的意義について、審判請求書【請求の理由】2.(3)本願の明細書の【表1】、審判請求書に添付された【表1】から臨界的意義があることが明らかであると主張している。
しかし、本願の明細書の【表1】の実施例(製造例)5(0.6重量%)と実施例(製造例)8(3.0重量%)の比較だけでは、0.6重量%に臨界的意義があるとまでは認められない。
また、審判請求書に添付された【表1】は、架橋剤がトリメチロールプロパントリアクリレート、体積平均粒子径が300μmのものであって、まず、0.6重量%、1.5重量%の比較だけでは、0.6重量%に臨界的意義があるか否かは明らかではなく、かつ、架橋剤、体積平均粒子径に加え、中和度も統一された実験であるから、この審判請求書に添付された【表1】を参照しても、「アルカリ性条件下で加水分解する基を有する」とのみ限定された架橋剤(c)全般において、かつ、体積平均粒子径と中和度が限定されない本願補正発明において、0.6重量%という数値に臨界的意義があるとまでは認められない。
すると、請求人の主張する0.6重量%には臨界的意義があるという主張は、採用し得るものではない。

(4)結論
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明及び引用文献1に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

7 小括
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年2月21日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成28年7月21日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「第2」「[理由]」「1」の本件補正前の請求項1として記載した事項を参照。)

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1?5に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献1に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2004-305141号公報

3 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された引用文献1、その記載内容及び引用発明は、上記「第2」「[理由]」「4」に記載したとおりである。

4 対比・判断
(1)本願発明は、前記「第2」「[理由]」「5」及び「6」で検討した本願補正発明の「0.09?0.6重量%」が、「0.05?2重量%」になったものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、更に限定したものに相当する本願補正発明は、前記「第2」「[理由]」「5」及び「6」に記載したとおり、引用発明及び引用文献1に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同様に、本願発明も、引用発明及び引用文献1に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)「0.05?2重量%」の臨界的意義について
ア 0.05重量%について
本願の明細書の【表1】の実施例(製造例)7(0.05重量%)だけでは、0.05重量%に臨界的意義があるとまでは認められない。
また、審判請求書に添付された【表1】の比較実験1(0.04重量%)を参酌しても、実施例7の架橋剤がトリメチロールプロパントリアクリレート(0.05重量%)とペンタエリスリトールトリアリルエーテル(0.04重量%)であり、比較実験1の架橋剤がトリメチロールプロパントリアクリレート(0.04重量%)であるから、両者を単純に比較することはできず、審判請求書に添付された【表1】を併せて参照しても、本願発明において、0.05重量%という数値に臨界的意義があるとまでは認められない。

イ 2重量%について
本願の明細書の【表1】の実施例(製造例)5(0.6重量%)と実施例(製造例)8(3.0重量%)の比較だけでは、2重量%に臨界的意義があるとまでは認められない。
また、審判請求書に添付された【表1】の比較実験2(1.5重量%)を参酌しても、2重量%に臨界的意義があるとまでは認められない。

ウ すると、0.05?2重量%には臨界的意義があるとは認められない。

(3)してみると、本願発明は、引用発明及び引用文献1に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第4 上申書で提示された補正案について
請求人は、上申書で、「上記出願人の主張をさらに明確にするために、本願請求項1を下記のように補正すれば、拒絶理由は解消すると思料します」として、補正案を提示しているので、この補正案についての当合議体の見解を簡潔に示す。

補正案は、請求項1を、「水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(c)を含む単量体組成物を重合して得られる該(a1)の中和度が50?90モル%である架橋重合体であって、・・・」と下線部を追加するものである。
これに対して、引用文献1には、「架橋されたポリアクリル酸(塩)」(上記第2 4 記載事項(3)段落【0018】、【0019】)と記載され、更に、「中和塩の形態の吸水性樹脂である場合の塩の種類及び中和度については特に限定はないが、塩の種類としては好ましくはアルカリ金属塩であり、より好ましくはナトリウム塩及びカリウム塩であり、酸基に対する中和度は好ましくは50?90モル%であり、より好ましくは60?80モル%である。」(上記第2 4 記載事項(3)段落【0018】)と記載されており、吸水性樹脂として、中和度を50?90モル%とした架橋されたポリアクリル酸塩を使用することも開示されている。
すると、上記補正案によっても、拒絶理由が解消しないことが明らかである。


第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-03-20 
結審通知日 2018-03-27 
審決日 2018-04-10 
出願番号 特願2014-263711(P2014-263711)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A01K)
P 1 8・ 121- Z (A01K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 門 良成川野 汐音  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 伊藤 昌哉
松岡 智也
発明の名称 動物排泄物用粒状処理材  

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