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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B65D
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B65D
管理番号 1341044
異議申立番号 異議2017-700466  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-07-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-05-12 
確定日 2018-04-20 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6061357号発明「キャップおよびキャップ付き容器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6061357号の明細書及び特許請求の範囲を平成29年12月13日付け訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1ないし4]について訂正することを認める。 特許第6061357号の請求項2ないし4に係る特許を維持する。 特許第6061357号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6061357号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成27年7月8日に特許出願され、平成28年12月22日にその特許権の設定登録がされた。
その後、平成29年5月12日に、請求項1ないし4に係る特許について、特許異議申立人水口研二(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成29年10月25日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年12月13日付けで特許権者より意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。)があり、平成29年12月21日付けで申立人に対し訂正請求があった旨の通知がされたが、その指定期間内に申立人からの意見書の提出はなかった。

2.本件訂正の適否についての判断
(1)本件訂正の内容
本件訂正の内容(訂正箇所に下線を付す。)は以下のとおりである。
ア.訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1を削除する。

イ.訂正事項2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2に、「前記姿勢維持片は、前記フラップ本体の周方向両端にそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1に記載のキャップ。」とあるのを、
「キャップ本体と、前記キャップ本体の下端に弱化部を介して接続されるTEバンドとを備えたキャップであって、
前記TEバンドは、前記キャップ本体の下端に接続される環状のバンド本体部と、前記バンド本体部の下端に連設され前記バンド本体部の内周側に折り返されるフラップとを有し、
前記フラップは、前記バンド本体部の下端に連設されたフラップ本体と、前記フラップ本体の内周壁に突出形成され、容器装着時に容器フランジの下側に係合可能なフランジ用係合部と、前記フラップ本体の上端側に形成され、容器装着時に前記容器フランジの外周側に配置される姿勢維持片とを有し、
前記バンド本体部の内周壁には、容器装着時に、前記姿勢維持片の外周壁と前記バンド本体部の内周壁との間に間隙を形成する逃げ部が形成され、
前記姿勢維持片および前記フランジ用係合部の周方向幅は、それぞれ、前記フラップ本体の周方向幅よりも狭く形成され、
前記フランジ用係合部は、前記フラップ本体のキャップ周方向の中央部に形成され、
前記姿勢維持片は、前記フラップ本体の周方向の両端にそれぞれ形成され、
前記姿勢維持片および前記フランジ用係合部は、互いに周方向に重ならないように形成されていることを特徴とするキャップ。」に訂正する。

ウ.訂正事項3
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3に、「前記姿勢維持片の厚みは、前記フラップ本体の最薄箇所の厚みよりも薄く形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のキャップ。」とあるのを、「前記姿勢維持片の厚みは、前記フラップ本体の最薄箇所の厚みよりも薄く形成されていることを特徴とする請求項2に記載のキャップ。」に訂正する。

エ.訂正事項4
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項4に、
「請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のキャップと、容器とを備えるキャップ付き容器であって、
前記容器は、容器口筒部と、前記容器口筒部の外周に形成された容器側ネジ部と、前記容器側ネジ部の下方において前記容器口筒部の外周に形成された前記容器フランジとを有し、
前記キャップを前記容器に装着した状態で、前記姿勢維持片の外周壁と前記バンド本体部の内周壁との間に間隙が形成されることを特徴とするキャップ付き容器。」とあるのを、
「請求項2または請求項3に記載のキャップと、容器とを備えるキャップ付き容器であって、
前記容器は、容器口筒部と、前記容器口筒部の外周に形成された容器側ネジ部と、前記容器側ネジ部の下方において前記容器口筒部の外周に形成された前記容器フランジとを有し、
前記キャップを前記容器に装着した状態で、前記姿勢維持片の外周壁と前記バンド本体部の内周壁との間に間隙が形成されることを特徴とするキャップ付き容器。」に訂正する。

オ.訂正事項5
本件訂正前の明細書の段落【0010】に、
「本発明のキャップは、キャップ本体と、前記キャップ本体の下端に弱化部を介して接続されるTEバンドとを備えたキャップであって、前記TEバンドは、前記キャップ本体の下端に接続される環状のバンド本体部と、前記バンド本体部の下端に連設され前記バンド本体部の内周側に折り返されるフラップとを有し、前記フラップは、前記バンド本体部の下端に連設されたフラップ本体と、前記フラップ本体の内周側に形成され、容器装着時に容器フランジの下側に係合可能なフランジ用係合部と、前記フラップ本体の上端側に形成され、容器装着時に前記容器フランジの外周側に配置される姿勢維持片とを有し、前記バンド本体部の内周壁には、容器装着時に、前記姿勢維持片の外周壁と前記バンド本体部の内周壁との間に間隙を形成する逃げ部が形成され、前記姿勢維持片の周方向幅は、前記フラップ本体の周方向幅よりも狭く形成されていることにより、前記課題を解決するものである。」とあるのを、
「本発明のキャップは、キャップ本体と、前記キャップ本体の下端に弱化部を介して接続されるTEバンドとを備えたキャップであって、前記TEバンドは、前記キャップ本体の下端に接続される環状のバンド本体部と、前記バンド本体部の下端に連設され前記バンド本体部の内周側に折り返されるフラップとを有し、前記フラップは、前記バンド本体部の下端に連設されたフラップ本体と、前記フラップ本体の内周壁に突出形成され、容器装着時に容器フランジの下側に係合可能なフランジ用係合部と、前記フラップ本体の上端側に形成され、容器装着時に前記容器フランジの外周側に配置される姿勢維持片とを有し、前記バンド本体部の内周壁には、容器装着時に、前記姿勢維持片の外周壁と前記バンド本体部の内周壁との間に間隙を形成する逃げ部が形成され、前記姿勢維持片および前記フランジ用係合部の周方向幅は、それぞれ、前記フラップ本体の周方向幅よりも狭く形成され、前記フランジ用係合部は、前記フラップ本体のキャップ周方向の中央部に形成され、前記姿勢維持片は、前記フラップ本体の周方向の両端にそれぞれ形成され、前記姿勢維持片および前記フランジ用係合部は、互いに周方向に重ならないように形成されていることにより、前記課題を解決するものである。」に訂正する。

カ.訂正事項6
本件訂正前の明細書の段落【0011】に、「本請求項1、4に係る発明によれば」とあるのを、「本請求項2、4に係る発明によれば」に訂正する。

キ.訂正事項7
本件訂正前の明細書の段落【0024】の「例えば、フランジ用係合部や姿勢維持片の具体的配置や個数や寸法については、如何なるものであってもよい。例えば、フランジ用係合部および姿勢維持片のキャップ周方向における幅を、フラップ本体の周方向幅と同じに設計してもよく、また、フランジ用係合部を、フラップ本体における離間した2箇所に形成したり、姿勢維持片を、フラップ本体における離間した3箇所に形成してもよい。」との記載を削除する。

(2)一群の請求項
本件訂正前の請求項1及び同請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし4は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、訂正事項1ないし4による訂正は当該一群の請求項1ないし4に対して請求されたものである。
また、訂正事項5ないし7による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第4項に規定する一群の請求項の全てについて行われたものである。

(3)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア.訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

イ.訂正事項2について
訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるとともに、訂正前の請求項1の「前記フラップ本体の内周側に形成され」との記載を「前記フラップ本体の内周壁に突出形成され」と限定し、訂正前の請求項1の「前記姿勢維持片の周方向幅は、前記フラップ本体の周方向幅よりも狭く形成されている」との記載を「前記姿勢維持片および前記フランジ用係合部の周方向幅は、それぞれ、前記フラップ本体の周方向幅よりも狭く形成され、」と限定し、さらに、訂正前の請求項1の「フランジ用係合部」及び「姿勢維持片」について、「前記フランジ用係合部は、前記フラップ本体のキャップ周方向の中央部に形成され」、「前記姿勢維持片および前記フランジ用係合部は、互いに周方向に重ならないように形成されている」との記載を追加することで、フランジ用係合部の態様を具体的に特定して限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項2による訂正の「前記フラップ本体の内周壁に突出形成され」との記載、「前記姿勢維持片および前記フランジ用係合部の周方向幅は、それぞれ、前記フラップ本体の周方向幅よりも狭く形成され」との記載、「前記フランジ用係合部は、前記フラップ本体のキャップ周方向の中央部に形成され」との記載及び「前記姿勢維持片および前記フランジ用係合部は、互いに周方向に重ならないように形成されている」との記載は、それぞれ、本件特許明細書の段落【0020】の「各フラップ32は、図1や図2に示すように、バンド本体部31の下端に連設されたフラップ本体32aと、フラップ本体32aの内周壁に突出形成され・・・フランジ用係合部32bと」との記載、【0021】の「また、フランジ用係合部32bおよび姿勢維持片32cのキャップ周方向における幅は、フラップ本体32aの周方向幅よりも狭く形成されている。」との記載、【0021】の「フランジ用係合部32bは、図1に示すように、フラップ本体32aのキャップ周方向の中央部に形成され」との記載及び【0021】の「また、フランジ用係合部32bおよび姿勢維持片32cは、キャップ周方向に重ならないように形成され」との記載に基づくものであるから、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ウ.訂正事項3について
訂正事項3による訂正は、訂正前の請求項3が、請求項1または請求項2を引用するものであったところ、上記訂正事項1による訂正により削除する訂正前の請求項1を引用しないものとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

エ.訂正事項4について
訂正事項4による訂正は、訂正前の請求項4が、請求項1乃至請求項3のいずれかを引用するものであったところ、上記訂正事項1による訂正により削除する訂正前の請求項1を引用しないものとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

オ.訂正事項5ないし7について
訂正事項5ないし7による訂正は、明細書の段落【0010】、【0011】及び【0024】の記載を、上記訂正事項1及び2に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載とを整合させ、より明瞭に記載しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定された明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項[1ないし4]について訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求が認められたことにより、本件特許の請求項2ないし4に係る発明(以下、「本件発明2ないし4」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項2ないし4に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
【請求項1】(削除)
【請求項2】
キャップ本体と、前記キャップ本体の下端に弱化部を介して接続されるTEバンドとを備えたキャップであって、
前記TEバンドは、前記キャップ本体の下端に接続される環状のバンド本体部と、前記バンド本体部の下端に連設され前記バンド本体部の内周側に折り返されるフラップとを有し、
前記フラップは、前記バンド本体部の下端に連設されたフラップ本体と、前記フラップ本体の内周壁に突出形成され、容器装着時に容器フランジの下側に係合可能なフランジ用係合部と、前記フラップ本体の上端側に形成され、容器装着時に前記容器フランジの外周側に配置される姿勢維持片とを有し、
前記バンド本体部の内周壁には、容器装着時に、前記姿勢維持片の外周壁と前記バンド本体部の内周壁との間に間隙を形成する逃げ部が形成され、
前記姿勢維持片および前記フランジ用係合部の周方向幅は、それぞれ、前記フラップ本体の周方向幅よりも狭く形成され、
前記フランジ用係合部は、前記フラップ本体のキャップ周方向の中央部に形成され、
前記姿勢維持片は、前記フラップ本体の周方向の両端にそれぞれ形成され、
前記姿勢維持片および前記フランジ用係合部は、互いに周方向に重ならないように形成されていることを特徴とするキャップ。
【請求項3】
前記姿勢維持片の厚みは、前記フラップ本体の最薄箇所の厚みよりも薄く形成されていることを特徴とする請求項2に記載のキャップ。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のキャップと、容器とを備えるキャップ付き容器であって、
前記容器は、容器口筒部と、前記容器口筒部の外周に形成された容器側ネジ部と、前記容器側ネジ部の下方において前記容器口筒部の外周に形成された前記容器フランジとを有し、
前記キャップを前記容器に装着した状態で、前記姿勢維持片の外周壁と前記バンド本体部の内周壁との間に間隙が形成されることを特徴とするキャップ付き容器。

(2)取消理由の概要
取消理由通知書に記載した本件発明2ないし4に係る特許に対する取消理由の概要は、以下のとおりである。
なお、申立人が申立てたすべての理由が通知された。
甲1ないし甲4は、特許異議申立書に添付された甲第1号証ないし甲第4号証であり、甲1ないし甲4のそれぞれに記載された発明を甲1発明ないし甲4発明という。

理由1.本件発明2ないし4は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された甲1発明であるから、特許法第29条第1項3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2.本件発明2ないし4は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された甲1、2及び4発明の何れかのみに基いて、あるいは、甲1ないし甲4発明の何れかと甲1ないし甲4の記載事項又は周知技術とに基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


甲1.米国特許第7344039号明細書
甲2.実願平4-78002号(実開平7-21553号)のCD-ROM
甲3.実公平5-13735号公報
甲4.特表2007-534559号公報

(3)判断
ア.理由1.について
(ア)甲1発明
甲1の5欄38ないし47行、5欄49ないし52行、5欄58ないし61行、6欄4ないし13行、6欄19ないし21行、6欄52ないし64行、6欄65行ないし7欄55行、FIG.1、FIG.5、FIG.6、FIG.7、FIG.14及びFIG.16の記載からみて、甲1には、以下の甲1発明が記載されている。

《甲1発明》
頂壁22及びスカート24と、前記スカート24の下端に脆弱線28に沿って接続されている不正開封表示バンド30とを備えた蓋20であって、
前記不正開封表示バンド30は、前記スカート24の下端に接続される環状のリング32と、その基部40において前記リング32に接続され、互いに向かって内側に傾斜する延長部材36を含むタブ40とを有し、
前記タブ40は、その基部40において比較的薄く、先端42に向かうに連れて徐々に厚くなっており、容器10の装着時に容器10の肩16の下にロックされ得るものであるとともに、その先端42から離れるように延びており、容器装着時に容器の肩16の外周側に配置されるタブ延長部34aを有し、
容器10の装着時に、前記タブ延長部34aの外周壁と前記リング32の内周壁との間に空間が形成され、
前記延長部34aの周方向幅は、前記タブ40の周方向幅よりも狭く形成され、
前記延長部34aは、前記タブ40の周方向の両端にそれぞれ形成されている、蓋20。

(イ)対比、相違点
甲1発明の「頂壁22及びスカート24」、「脆弱線28」、「不正開封表示バンド30」、「リング32」、「タブ40」、「タブ延長部34a」、「蓋20」は、各々、本件発明2の「キャップ本体」、「弱化部」、「TEバンド」、「バンド本体部」、「フラップ」、「姿勢維持片」、「キャップ」に相当する。
そして、本件発明2と甲1発明とは、少なくとも以下の点で相違する。

《相違点1-1》
本件発明2は、「フラップ」が「フラップ本体の内周壁に突出形成され、容器装着時に容器フランジの下側に係合可能なフランジ用係合部」を有し、「姿勢維持片および前記フランジ用係合部は、互いに周方向に重ならないように形成されている」のに対し、甲1発明は、本件発明2の「フランジ用係合部」に相当する部材を有していない点。

(ウ)相違点の判断
上記《相違点1-1》は、フラップ及び姿勢維持片の構造や配置に関するものであり、単に表現が異なるだけの一応の相違点ではなく、実質的な相違点であるから、本件発明2は甲1発明ではない。
また、本件発明2の発明特定事項の全てを含み、さらに、技術的な限定を加える事項を発明特定事項として備える、本件発明3及び4も、上記と同様の理由により、甲1発明ではない。

(エ)小括
上記のとおり、本件発明2ないし4は、特許法第29条第1項第3号の規定に該当しないから、理由1には理由がない。

イ.理由2.について
(ア)甲2発明ないし甲4発明
a.甲2発明
甲2の段落【0012】ないし【0014】、【図1】及び【図5】の記載からみて、甲2には、以下の甲2発明が記載されている。

《甲2発明》
キャップ本体4と、前記キャップ本体4の下端に弱化リブ17を介して接続されるピルファープルーフバンド5とを備えたねじキャップ3であって、
前記ピルファープルーフバンド5は、前記キャップ本体4の下端に接続されるスカート部15と、前記スカート部15の下端に連続し、前記スカート部15の内周側に折り返される係合壁16とを有し、
前記係合壁16は、前記スカート部15の下端に連続する部分と、前記連続する部分の内周壁に突出形成され、PETボトル1の装着時にびん口2の係止段部14の下側に係合可能な部分と、前記係合壁16の上端側であって、PETボトル1の装着時に前記係止段部14の外周側に配置される部分とを有し、
PETボトル1の装着時に、前記係合壁16の上端側であって、PETボトル1の装着時に前記係止段部14の外周側に配置される部分の外周壁と前記スカート部15の内周壁との間に空間が形成されている、ねじキャップ3。

b.甲3発明
甲3の4欄23行ないし5欄9行、第1図ないし第3図の記載からみて、甲3には、以下の甲3発明が記載されている。

《甲3発明》
キャップ本体2と、前記キャップ本体2の下端に捩切り可能部3を介して一体的に形成されるバンド部4とを備えたピルフアープルーフキャップ1であって、
前記バンド4は、その下端から折曲して連設される舌片8を有し、
前記舌片8は、その内周壁に突出形成され、瓶口5着装時に瓶口5の膨出部6の下周面に係止するように設けられたヒール部9を有するとともに、その先端部分が、瓶口5着装時に前記膨出部6と前記バンド部4に挟まれるようになっており、
前記ヒール部9は、前記舌片8のキャップ周方向の中央部に形成されている、ピルフアープルーフキャップ1。

c.甲4発明
甲4の段落【0061】ないし【0076】及び【図1】の記載からみて、甲4には、以下の甲4発明が記載されている。

《甲4発明》
本体4と、前記本体4の下端に複数の貫通切り口あるいは開封部が作られる公称開封線13を介して接続される開封表示環5を備えた蓋1であって、
前記開封表示環5は、その外縁11から遠ざかるひれ部10を有し、
前記ひれ部10は、その内周壁に突出形成され、容器9の装着時に容器9の首部8に作られる突起部21の下側に係合可能な部分と、その上端側に設けられ、容器9の装着時に前記突起部21の外周側に配置される付属物18とを有し、
容器9の装着時に、前記付属物18の外周壁と前記開封表示環5の内周壁との間に空間が形成され、
前記バンド本体部の内周壁には、容器装着時に、前記姿勢維持片の外周壁と前記バンド本体部の内周壁との間に間隙を形成する逃げ部が形成されている、蓋1。

(イ)甲1発明を主たる引用発明とした場合
a.甲1発明、対比、相違点
甲1発明、本件発明2と甲1発明の対比、相違点については、上記3.(3)ア.(ア)及び(イ)に示したとおりである。

b.相違点の判断
甲1には、フラップ40が、容器10の装着時に容器10の肩16の下にロックされ得るものとするために、フラップ40の内周壁に突出形成される部分を有するようにすること、すなわち、本件発明2の「フランジ用係合部」に相当する部材を有するようにすることが、記載されておらず、またそのような部材を有するようにすべきことを示唆する記載もない。
そして、甲2には、本件発明2の「フランジ用係合部」に相当する部材である「前記連続する部分の内周壁に突出形成され、PETボトル1の装着時にびん口2の係止段部14の下側に係合可能な部分」をその構成の一部とする甲2発明が記載されているものの、「前記連続する部分の内周壁に突出形成され、PETボトル1の装着時にびん口2の係止段部14の下側に係合可能な部分」と「前記係合壁16の上端側であって、PETボトル1の装着時に前記係止段部14の外周側に配置される部分」とが互いに周方向に重ならないように形成されることは、記載されていないし、これを示唆する記載もない。
また、甲3には、本件発明2の「フランジ用係合部」に相当する部材である「ヒール部9」をその構成の一部とする甲3発明が記載されているものの、「ヒール部9」と「舌片8」の「先端部分」とが互いに周方向に重ならないように形成されることは、記載されていないし、これを示唆する記載もない。
また、甲4には、本件発明2の「フランジ用係合部」に相当する部材である「その内周壁に突出形成され、容器9の装着時に容器9の首部8に作られる突起部21の下側に係合可能な部分」をその構成の一部とする甲4発明が記載されているものの、「フランジ用係合部」に相当する部材である「その内周壁に突出形成され、容器9の装着時に容器9の首部8に作られる突起部21の下側に係合可能な部分」と「付属物18」とが互いに周方向に重ならないように形成されることは、記載されていないし、これを示唆する記載もない。
さらに、甲1ないし甲4の他に、上記《相違点1-1》に係る本件発明2の構成を甲1発明が備えることは容易想到であるとすべき周知技術等を示す証拠は見あたらない。
ゆえに、甲1発明において、フラップ40の内周壁に突出形成される部分を設け、さらに、前記突出形成される部分と「タブ延長部34a」とが互いに周方向に重ならないようにこれらを形成することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえないから、本件発明2は、甲1発明、甲2ないし甲4に記載された事項又は周知技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
また、本件発明2の発明特定事項の全てを含み、さらに、技術的な限定を加える事項を発明特定事項として備える、本件発明3及び4も、上記と同様の理由により、甲1発明、甲2ないし甲4に記載された事項又は周知技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(ウ)甲2発明を主たる引用例とした場合
a.甲2発明
甲2発明については、上記3.(3)イ.(ア)a.に示したとおりである。

b.対比、相違点
甲2発明の「キャップ本体4」、「脆弱リブ17」、「ピルファープルーフバンド5」、「スカート部15」、「係合壁16」、「前記連続する部分の内周壁に突出形成され、PETボトル1の装着時にびん口2の係止段部14の下側に係合可能な部分」、「前記係合壁16の上端側であって、PETボトル1の装着時に前記係止段部14の外周側に配置される部分」、「ねじキャップ3」は、各々、本件発明2の「キャップ本体」、「弱化部」、「TEバンド」、「バンド本体部」、「フラップ」、「フランジ用係合部」、「姿勢維持片」、「キャップ」に相当する。
そして、本件発明2と甲2発明とは、少なくとも以下の点で相違する。

《相違点1-2》
本件発明2は、「姿勢維持片および前記フランジ用係合部は、互いに周方向に重ならないように形成されている」のに対し、甲2発明は、「前記連続する部分の内周壁に突出形成され、PETボトル1の装着時にびん口2の係止段部14の下側に係合可能な部分」と「前記係合壁16の上端側であって、PETボトル1の装着時に前記係止段部14の外周側に配置される部分」とが互いに周方向に重ならないように形成されるかが不明である点。

c.相違点の判断
甲2には、「前記連続する部分の内周壁に突出形成され、PETボトル1の装着時にびん口2の係止段部14の下側に係合可能な部分」と「前記係合壁16の上端側であって、PETボトル1の装着時に前記係止段部14の外周側に配置される部分」とが互いに周方向に重ならないように形成されることは、記載されていないし、これを示唆する記載もない。
そして、上記3.(3)イ.(イ)b.で述べたように、甲1には、フラップ40の内周壁に突出形成される部分を有するようにすること、すなわち、本件発明2の「フランジ用係合部」に相当する部材を有するようにすることが、記載されておらず、またそのような部材を有するようにすべきことを示唆する記載もなく、甲3には、「ヒール部9」と「舌片8」の「先端部分」とが互いに周方向に重ならないように形成されることは、記載されていないし、これを示唆する記載もなく、甲4には、「その内周壁に突出形成され、容器9の装着時に容器9の首部8に作られる突起部21の下側に係合可能な部分」と「付属物18」とが互いに周方向に重ならないように形成されることは、記載されていないし、これを示唆する記載もない。
さらに、甲1ないし甲4の他に、上記《相違点1-2》に係る本件発明2の構成を甲2発明が備えることは容易想到であるとすべき周知技術等を示す証拠は見あたらない。
ゆえに、甲2発明において、「前記連続する部分の内周壁に突出形成され、PETボトル1の装着時にびん口2の係止段部14の下側に係合可能な部分」と「前記係合壁16の上端側であって、PETボトル1の装着時に前記係止段部14の外周側に配置される部分」とが互いに周方向に重ならないようにこれらを形成することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえないから、本件発明2は、甲2発明、甲1、甲3及び甲4に記載された事項又は周知技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
また、本件発明2の発明特定事項の全てを含み、さらに、技術的な限定を加える事項を発明特定事項として備える、本件発明3及び4も、上記と同様の理由により、甲2発明、甲1、甲3及び甲4に記載された事項又は周知技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(エ)甲3発明を主たる引用例とした場合
a.甲3発明
甲3発明については、上記3.(3)イ.(ア)b.に示したとおりである。

b.対比、相違点
甲3発明の「キャップ本体2」、「捩切り可能部3」、「バンド部4」、「舌片8」、「ヒール部9」、「舌片8」の「先端部分」、「ピルフアープルーフキャップ1」は、各々、本件発明2の「キャップ本体」、「弱化部」、「TEバンド」、「フラップ」、「フランジ用係合部」、「姿勢維持片」、「キャップ」に相当する。
そして、本件発明2と甲3発明とは、少なくとも以下の点で相違する。

《相違点1-3》
本件発明2は、「姿勢維持片および前記フランジ用係合部は、互いに周方向に重ならないように形成されている」のに対し、甲3発明は、「ヒール部9」と「舌片8」の「先端部分」とが互いに周方向に重ならないように形成されるかが不明である点。

c.相違点の判断
甲3には、「ヒール部9」と「舌片8」の「先端部分」とが互いに周方向に重ならないように形成されることは、記載されていないし、これを示唆する記載もない。
そして、上記3.(3)イ.(イ)b.で述べたように、甲1には、フラップ40の内周壁に突出形成される部分を有するようにすること、すなわち、本件発明2の「フランジ用係合部」に相当する部材を有するようにすることが、記載されておらず、またそのような部材を有するようにすべきことを示唆する記載もなく、甲2には、「前記連続する部分の内周壁に突出形成され、PETボトル1の装着時にびん口2の係止段部14の下側に係合可能な部分」と「前記係合壁16の上端側であって、PETボトル1の装着時に前記係止段部14の外周側に配置される部分」とが互いに周方向に重ならないように形成されることは、記載されていないし、これを示唆する記載もなく、甲4には、「その内周壁に突出形成され、容器9の装着時に容器9の首部8に作られる突起部21の下側に係合可能な部分」と「付属物18」とが互いに周方向に重ならないように形成されることは、記載されていないし、これを示唆する記載もない。
さらに、甲1ないし甲4の他に、上記《相違点1-3》に係る本件発明2の構成を甲3発明が備えることは容易想到であるとすべき周知技術等を示す証拠は見あたらない。
ゆえに、甲3発明において、「ヒール部9」と「舌片8」の「先端部分」とが互いに周方向に重ならないようにこれらを形成することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえないから、本件発明2は、甲3発明、甲1、甲2及び甲4に記載された事項又は周知技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
また、本件発明2の発明特定事項の全てを含み、さらに、技術的な限定を加える事項を発明特定事項として備える、本件発明3及び4も、上記と同様の理由により、甲3発明、甲1、甲2及び甲4に記載された事項又は周知技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(オ)甲4発明を主たる引用例とした場合
a.甲4発明
甲4発明については、上記3.(3)イ.(ア)c.に示したとおりである。

b.対比、相違点
甲4発明の「本体4」、「公称開封線13」、「開封表示環5」、「ひれ部10」、「その内周壁に突出形成され、容器9の装着時に容器9の首部8に作られる突起部21の下側に係合可能な部分」、「付属物18」、「蓋1」は、各々、本件発明2の「キャップ本体」、「弱化部」、「TEバンド」、「フラップ」、「フランジ用係合部」、「姿勢維持片」、「キャップ」に相当する。
そして、本件発明2と甲4発明とは、少なくとも以下の点で相違する。

《相違点1-4》
本件発明2は、「姿勢維持片および前記フランジ用係合部は、互いに周方向に重ならないように形成されている」のに対し、甲4発明は、「その内周壁に突出形成され、容器9の装着時に容器9の首部8に作られる突起部21の下側に係合可能な部分」と「付属物18」とが互いに周方向に重ならないように形成されるかが不明である点。

c.相違点の判断
甲4には、「その内周壁に突出形成され、容器9の装着時に容器9の首部8に作られる突起部21の下側に係合可能な部分」と「付属物18」とが互いに周方向に重ならないように形成されることは、記載されていないし、これを示唆する記載もない。
そして、上記3.(3)イ.(イ)b.で述べたように、甲1には、フラップ40の内周壁に突出形成される部分を有するようにすること、すなわち、本件発明2の「フランジ用係合部」に相当する部材を有するようにすることが、記載されておらず、またそのような部材を有するようにすべきことを示唆する記載もなく、甲2には、「前記連続する部分の内周壁に突出形成され、PETボトル1の装着時にびん口2の係止段部14の下側に係合可能な部分」と「前記係合壁16の上端側であって、PETボトル1の装着時に前記係止段部14の外周側に配置される部分」とが互いに周方向に重ならないように形成されることは、記載されていないし、これを示唆する記載もなく、甲3には、「ヒール部9」と「舌片8」の「先端部分」とが互いに周方向に重ならないように形成されることは、記載されていないし、これを示唆する記載もない。
さらに、甲1ないし甲4の他に、上記《相違点1-4》に係る本件発明2の構成を甲4発明が備えることは容易想到であるとすべき周知技術等を示す証拠は見あたらない。
ゆえに、甲4発明において、「その内周壁に突出形成され、容器9の装着時に容器9の首部8に作られる突起部21の下側に係合可能な部分」と「付属物18」とが互いに周方向に重ならないようにこれらを形成することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえないから、本件発明2は、甲4発明、甲1ないし甲3に記載された事項又は周知技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
また、本件発明2の発明特定事項の全てを含み、さらに、技術的な限定を加える事項を発明特定事項として備える、本件発明3及び4も、上記と同様の理由により、甲4発明、甲1ないし甲3に記載された事項又は周知技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(カ)小括
以上を踏まえると、本件発明2ないし4は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないというものではないから、理由2には理由がない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件発明2ないし4は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、本件発明2ないし4に係る特許は、同条第2項の規定に違反してされたものでもないから、同法第113条第2号の規定に該当することを理由に取り消されるべきものとすることはできない。

4.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件発明2ないし4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明2ないし4に係る特許を取り消すべき理由も発見しない。
そして、本件特許の請求項1は、本件訂正が認められることにより、削除されたため、本件特許の請求項1についての特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなった。
よって、本件特許の請求項1についての特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。
したがって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
キャップおよびキャップ付き容器
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップ本体の下端に弱化部を介して接続されるTEバンドを備えた容器用のキャップおよびキャップ付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、流通過程等においてキャップが不正に開封されることを防止するために、キャップ本体の下端に弱化部を介して接続されるTEバンド(タンパーエビデントバンド)を有したキャップが、飲料用容器等の幅広い分野で採用されている。
【0003】
このようなTEバンドを有したキャップとして、従来、図4に示すように、キャップ本体120の下端に弱化部140を介して接続されたTEバンド130を備え、TEバンド130の下端に、TEバンド130の内周側に折り返されるフラップ132を連設することにより、キャップ開封時に、容器150に対してキャップ110を回転させ、容器150に対してキャップ110を上方に移動させた際に、フラップ132を容器フランジ153の下側に係合させて弱化部140を破断するキャップ110が知られている。
【0004】
ところが、このようなキャップ110では、TEバンド130の下端に形成されたフラップ132がTEバンド130の内周側の上方に向けて折り返されていることから、容器フランジ153の下方の容器口筒部151の外径が小さい場合には、フラップ132がその弾性によって容器口筒部151側に向けて倒れこみ、フラップ132とTEバンド130との間の角度αが大きくなるため、キャップ開封時に、図5に示すように、フラップ132と容器フランジ153との係合によってフラップ132が弾性変形して下方に倒れ、フラップ132が反転を生じてしまう場合がある。この様なフラップ132の反転が生じた場合、弱化部140が破断することなく、TEバンド130が容器口筒部151からすっぽ抜けることになり、不正開栓したことがわからなくなる。
【0005】
そこで、フラップ132の反転を防止する機能を付加したキャップ110として、図6に示すように、フラップ132の内周壁に容器フランジ153の下側に係合可能なフランジ用係合部132bを形成するとともに、容器装着時に、フラップ132の先端部分である姿勢維持片132cを容器フランジ153の外周壁とTEバンド130の内周壁との間で挟むことにより、フラップ132とTEバンド130との間の角度αを維持するキャップ110が提案されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公平5-13735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1に記載のキャップ110では、姿勢維持片132cが容器フランジ153の外周壁とTEバンド130の内周壁との間で挟まれ、姿勢維持片132cの外周側がTEバンド130によって支持されていることから、姿勢維持片132cの内周壁と容器フランジ153の外周壁との間の接触圧が大きくなり、容器150に対してキャップ110を回転させる際の姿勢維持片132cの内周壁と容器フランジ153の外周壁との間の摩擦が大きくなる。
【0008】
その結果、図4や図5に示すような通常のキャップ110、すなわち、TEバンド130の内周壁と容器フランジ153の外周壁との間に姿勢維持片132c等が介在していない通常のキャップ110と比較して、キャップ開封時においてキャップ110の回転を開始させる際に必要とされる所謂ファーストトルクが大きくなるため、キャップ開封時のトルクに関する違和感を使用者に覚えさせてしまう場合があるという問題があった。
上述した問題は、特に、フラップ132の厚み寸法、容器フランジ153の外径寸法、TEバンド130の内径寸法等の、各寸法に製造誤差が生じた場合には更に顕著になる。
【0009】
そこで、本発明は、これらの問題点を解決するものであり、キャップ開封時におけるフラップの反転を確実に防止しつつも、キャップ開封時のトルクに関する違和感を使用者に覚えさせることを抑制するキャップおよびキャップ付き容器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のキャップは、キャップ本体と、前記キャップ本体の下端に弱化部を介して接続されるTEバンドとを備えたキャップであって、前記TEバンドは、前記キャップ本体の下端に接続される環状のバンド本体部と、前記バンド本体部の下端に連設され前記バンド本体部の内周側に折り返されるフラップとを有し、前記フラップは、前記バンド本体部の下端に連設されたフラップ本体と、前記フラップ本体の内周壁に突出形成され、容器装着時に容器フランジの下側に係合可能なフランジ用係合部と、前記フラップ本体の上端側に形成され、容器装着時に前記容器フランジの外周側に配置される姿勢維持片とを有し、前記バンド本体部の内周壁には、容器装着時に、前記姿勢維持片の外周壁と前記バンド本体部の内周壁との間に間隙を形成する逃げ部が形成され、前記姿勢維持片および前記フランジ用係合部の周方向幅は、それぞれ、前記フラップ本体の周方向幅よりも狭く形成され、前記フランジ用係合部は、前記フラップ本体のキャップ周方向の中央部に形成され、前記姿勢維持片は、前記フラップ本体のキャップ周方向の両端にそれぞれ形成され、前記姿勢維持片および前記フランジ用係合部は、互いに周方向に重ならないように形成されていることにより、前記課題を解決するものである。
本発明のキャップ付き容器は、前記キャップと、容器とを備えるキャップ付き容器であって、前記容器は、容器口筒部と、前記容器口筒部の外周に形成された容器側ネジ部と、前記容器側ネジ部の下方において前記容器口筒部の外周に形成された前記容器フランジとを有し、前記キャップを前記容器に装着した状態で、前記姿勢維持片の外周壁と前記バンド本体部の内周壁との間に間隙が形成されることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0011】
本請求項2、4に係る発明によれば、TEバンドのバンド本体部の内周壁に、容器装着時に容器フランジの外周側に配置されるフラップの姿勢維持片の外周壁とバンド本体部の内周壁との間に間隙を形成する逃げ部が形成されていることにより、容器にキャップを装着した状態で、姿勢維持片の外周壁とバンド本体部の内周壁との間に間隙が形成され、姿勢維持片の外周側がバンド本体部によって支持されることを回避するとともに、姿勢維持片を外周側に撓ませることが可能になるため、姿勢維持片の内周壁と容器フランジの外周壁との間の接触圧が大きくなることを回避して、容器に対してキャップを回転させる際の姿勢維持片の内周壁と容器フランジの外周壁との間の摩擦が大きくなることを回避することができる。これにより、容器フランジに対する姿勢維持片の接触によってフラップとTEバンドとの間の角度を維持して、キャップ開封時におけるフラップの反転を確実に防止しつつも、キャップ開封時のトルクに関する違和感を使用者に覚えさせることを抑制することができる。
また、姿勢維持片の周方向幅が、フラップ本体の周方向幅よりも狭く形成されていることにより、フラップ本体の周方向幅と同じ幅で姿勢維持片を形成した場合と比較して、材料コストを低減することができるばかりでなく、フラップの姿勢維持片の内周壁と容器フランジの外周壁との間の摩擦を更に低減することができ、キャップ開封時に必要とされるトルクを通常のキャップにより近づけることができる。
【0012】
本請求項2に係る発明によれば、姿勢維持片が、フラップ本体の周方向両端にそれぞれ形成されていることにより、両端に形成された姿勢維持片によって、フラップとTEバンドとの間の角度を確実に維持しつつも、姿勢維持片の内周壁と容器フランジの外周壁との間の摩擦を低減することができる。
本請求項3に係る発明によれば、姿勢維持片の厚みが、フラップ本体の最薄箇所の厚みよりも薄く形成されていることにより、姿勢維持片の可撓性が向上し、キャップ開封時に、姿勢維持片が外周側に向けて撓み易くなるため、容器フランジとフランジ用係合部との係合を良好に維持しつつも、フラップの姿勢維持片の内周壁と容器フランジの外周壁との間の摩擦を一段と低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るキャップを示す説明図。
【図2】図1に示すキャップの開栓前の状態を部分的に示す断面図。
【図3】図1に示すキャップの開栓後の状態を部分的に示す断面図。
【図4】従来のキャップの開栓前の状態を部分的に示す断面図。
【図5】従来のキャップの開栓後の状態を部分的に示す断面図。
【図6】他の従来のキャップを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の一実施形態に係るキャップ10について、図面に基づいて説明する。
【0015】
まず、キャップ10は、合成樹脂等から形成され、図1や図2に示すように、キャップ本体20と、キャップ本体20の下端に弱化部40を介して接続されるTEバンド30とを備えている。
【0016】
キャップ本体20は、図1や図2に示すように、円板状の天面壁21と、天面壁21の外周縁から垂下する円筒状のスカート壁22とを有している。
【0017】
天面壁21には、図1や図2に示すように、天面壁21の下面から下方に突出するインナーリング21aと、インナーリング21aの外周側において天面壁21の下面から下方に突出するアウターリング21bとが形成されている。インナーリング21aは、容器50に対してキャップ10を取り付けた状態で、容器口筒部51の内周側に密着し、また、アウターリング21bは、容器口筒部51の外周側に密着する。
また、スカート壁22の外周壁には、ナール部22aが形成され、また、スカート壁22の内周壁には、容器50の容器口筒部51の外周壁に形成された容器側ネジ部52と螺合するキャップ側ネジ部22bが形成されている。
【0018】
弱化部40は、図1や図2に示すように、キャップ本体20のスカート壁22の下端とTEバンド30のバンド本体部31の上端とを接続する破断可能な環状の部位である。本実施形態においては、弱化部40は、キャップ周方向に交互に形成された複数のブリッジおよびスリットから構成されている。なお、弱化部40の具体的態様については、破断可能に設けられていれば如何なるものでもよい。
【0019】
TEバンド30は、図1や図2に示すように、環状のバンド本体部31と、バンド本体部31の下端に連設されバンド本体部31の内周側の上方に向けて折り返されるフラップ32とを有している。フラップ32は、相互間に間隔を置いて、キャップ周方向に沿って複数形成されている。
【0020】
バンド本体部31は、図2に示すように、その内周側が下端に向かうほど内周側に厚肉となるテーパ状に形成されており、バンド本体部31とフラップ32とがなす折れ曲がり起点が、バンド本体部31の上端側の内周面よりも内周側に位置するように形成されている。これにより、キャップ装着時に、フラップ32の姿勢を垂直に維持した状態で容器フランジ53に対してフラップ32を接触させることが可能であるため、開栓時のTEバンド30のすっぽ抜けを防止することができる。
各フラップ32は、図1や図2に示すように、バンド本体部31の下端に連設されたフラップ本体32aと、フラップ本体32aの内周壁に突出形成され、容器50に対してキャップ10を装着した状態で、容器側ネジ部52の下方において容器口筒部51の外周に形成された容器フランジ(カブラ)53の下側に係合可能なフランジ用係合部32bと、フラップ本体32aの上端に突出形成され、容器50に対してキャップ10を装着した状態で、容器フランジ53の外周側に配置される複数の姿勢維持片32cとを有している。
フラップ本体32aは、図2に示すように、その内周側が下端に向かうほど薄肉となるテーパ状に形成されており、これにより、キャップ装着時のフラップ32の折り曲げ抵抗を軽減できる。
また、図2に示すように、容器50に対してキャップ10を装着した状態では、フランジ用係合部32bと容器フランジ53との間には、上下方向の間隙が形成されている。
この上下方向の間隙は、開栓工程において、インナーリング21aおよびアウターリング21bと容器口筒部51との間の密着状態が解除されるよりも先に、フランジ用係合部32bの上面と容器フランジ53の下面とが係合し、弱化部40が破断するような大きさで形成されている。
【0021】
フランジ用係合部32bは、図1に示すように、フラップ本体32aのキャップ周方向の中央部に形成され、姿勢維持片32cは、フラップ本体32aのキャップ周方向の両端にそれぞれ形成されている。
本実施形態においては、フランジ用係合部32bは、図2に示すように、その上面が略水平に形成され、また、その内周側が下端に向かうほど薄肉となるテーパ状(すなわち、断面形状が下方に向けて先細る略三角形)に形成されている。
なお、フランジ用係合部32bの具体的形状については、上記に限定されないが、開栓時のTEバンド30のすっぽ抜けなどを考慮すると、その上面を略水平に形成し、図3に示すように、容器フランジ53の下面とフランジ用係合部32bの上面とを水平に接触させることが好ましい。
また、フランジ用係合部32bおよび姿勢維持片32cは、キャップ周方向に重ならないように形成され、これにより、射出成形によるキャップ10の成形性、特に、フラップ32の成形性を向上させることができる。
また、フランジ用係合部32bおよび姿勢維持片32cのキャップ周方向における幅は、フラップ本体32aの周方向幅よりも狭く形成されている。
また、姿勢維持片32cのキャップ径方向における厚みは、フラップ本体32aの最薄箇所の厚みよりも薄く形成されている。
なお、本実施形態では、姿勢維持片32cは、図1や図2に示すように、その断面形状が矩形状に形成されているが、姿勢維持片32cの具体的態様についてはこれに限定されず、例えば、その断面形状を三角形や円弧状に形成してもよく、また、容器フランジ53と接触する姿勢維持片32cの内周面に、梨地加工等の、接触による抵抗の軽減を図る加工を施してもよい。
【0022】
バンド本体部31の内周壁の上端側およびスカート壁22の内周壁の下端側には、図2に示すように、容器50に対してキャップ10を装着した状態で、姿勢維持片32cの外周壁とバンド本体部31の内周壁との間に間隙を形成する凹部状の逃げ部22c、31aが形成されている。これら逃げ部22c、31aを形成することにより、姿勢維持片32cが外周側に向けて撓むことができる。
なお、逃げ部22c、31aの具体的態様については、容器50に対してキャップ10を装着した状態で、姿勢維持片32cの外周壁とバンド本体部31の内周壁との間に間隙を形成するものであれば、如何なるものでもよい。
また、姿勢維持片32cの長さが短い場合には、スカート壁22の内周壁の下端側に逃げ部22cを形成することなく、バンド本体部31の内周壁の上端側のみに逃げ部31aを形成してもよい。
【0023】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
【0024】
また、各姿勢維持片の外周側に一体に形成され、キャップ周方向に複数配置された姿勢維持片をキャップ周方向に繋げる環状の接続部を追加形成することも考えられる。
【符号の説明】
【0025】
10 ・・・ キャップ
20 ・・・ キャップ本体
21 ・・・ 天面壁
21a ・・・ インナーリング
21b ・・・ アウターリング
22 ・・・ スカート壁
22a ・・・ ナール部
22b ・・・ キャップ側ネジ部
22c ・・・ 逃げ部
30 ・・・ TEバンド
31 ・・・ バンド本体部
31a ・・・ 逃げ部
32 ・・・ フラップ
32a ・・・ フラップ本体
32b ・・・ フランジ用係合部
32c ・・・ 姿勢維持片
40 ・・・ 弱化部
50 ・・・ 容器
51 ・・・ 容器口筒部
52 ・・・ 容器側ネジ部
53 ・・・ 容器フランジ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
キャップ本体と、前記キャップ本体の下端に弱化部を介して接続されるTEバンドとを備えたキャップであって、
前記TEバンドは、前記キャップ本体の下端に接続される環状のバンド本体部と、前記バンド本体部の下端に連設され前記バンド本体部の内周側に折り返されるフラップとを有し、
前記フラップは、前記バンド本体部の下端に連設されたフラップ本体と、前記フラップ本体の内周壁に突出形成され、容器装着時に容器フランジの下側に係合可能なフランジ用係合部と、前記フラップ本体の上端側に形成され、容器装着時に前記容器フランジの外周側に配置される姿勢維持片とを有し、
前記バンド本体部の内周壁には、容器装着時に、前記姿勢維持片の外周壁と前記バンド本体部の内周壁との間に間隙を形成する逃げ部が形成され、
前記姿勢維持片および前記フランジ用係合部の周方向幅は、それぞれ、前記フラップ本体の周方向幅よりも狭く形成され、
前記フランジ用係合部は、前記フラップ本体のキャップ周方向の中央部に形成され、
前記姿勢維持片は、前記フラップ本体のキャップ周方向の両端にそれぞれ形成され、
前記姿勢維持片および前記フランジ用係合部は、互いに周方向に重ならないように形成されていることを特徴とするキャップ。
【請求項3】
前記姿勢維持片の厚みは、前記フラップ本体の最薄箇所の厚みよりも薄く形成されていることを特徴とする請求項2に記載のキャップ。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のキャップと、容器とを備えるキャップ付き容器であって、
前記容器は、容器口筒部と、前記容器口筒部の外周に形成された容器側ネジ部と、前記容器側ネジ部の下方において前記容器口筒部の外周に形成された前記容器フランジとを有し、
前記キャップを前記容器に装着した状態で、前記姿勢維持片の外周壁と前記バンド本体部の内周壁との間に間隙が形成されることを特徴とするキャップ付き容器。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-04-12 
出願番号 特願2015-136839(P2015-136839)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (B65D)
P 1 651・ 121- YAA (B65D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 吉澤 秀明  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 井上 茂夫
渡邊 豊英
登録日 2016-12-22 
登録番号 特許第6061357号(P6061357)
権利者 日本クロージャー株式会社
発明の名称 キャップおよびキャップ付き容器  
代理人 大城 重信  
代理人 藤本 信男  
代理人 重信 圭介  
代理人 山田 益男  
代理人 重信 圭介  
代理人 大城 重信  
代理人 藤本 信男  
代理人 山田 益男  

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