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審決分類 |
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 H05K 審判 全部申し立て 判示事項別分類コード:857 H05K 審判 全部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) H05K 審判 全部申し立て 2項進歩性 H05K 審判 全部申し立て 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 H05K 審判 全部申し立て 特許請求の範囲の実質的変更 H05K |
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管理番号 | 1341059 |
異議申立番号 | 異議2017-700185 |
総通号数 | 223 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-07-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-02-24 |
確定日 | 2018-04-09 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5981404号発明「多層プリント配線板の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5981404号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?9]、[10、11]について訂正することを認める。 特許第5981404号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5981404号の請求項1ないし11に係る特許についての出願は、2008年9月11日(優先権主張2007年9月11日、日本国、2007年9月14日、日本国)を国際出願日とする特願2009-532204号の一部を平成25年9月3日に新たな特許出願としたものであって、平成28年8月5日にその特許権の設定登録がされ、その後、その請求項1ないし11に係る特許について、特許異議申立人金山愼一(以下、「異議申立人」という。)により特許異議申立てがされ、当審において平成29年5月23日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年7月25日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して異議申立人から平成29年10月18日付けで意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否の判断 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は以下の(1)ないし(3)のとおりである。 (下線は特許権者が付したものである。) (1)請求項1の「該接着シートの熱硬化前のプリプレグからの支持体フィルムの剥離強度が180度ピール強度で1.5gf/50mm以上、5gf/50mm以下である、ロール状接着シート。」を 「該接着シートの熱硬化前のプリプレグからの支持体フィルムの剥離強度が180度ピール強度で1.5gf/50mm以上、5gf/50mm以下であり、 オートカッターにセットされ、多層プリント配線板の製造に供される、ロール状接着シート。」に訂正する。 (2)請求項10の「多層プリント配線板の絶縁層形成用である、請求項1?9のいずれか1項に記載のロール状接着シート」を 「支持体フィルム上にプリプレグが形成された接着シートがロール状に巻き取られたロール状接着シートであって、 該接着シートが保護フィルム/プリプレグ/支持体フィルムの層構成を有し、かつ、支持体フィルムがプリプレグと接する面側に離型層を有し、 該プリプレグが、シート状繊維基材と熱硬化性樹脂組成物を含み、該離型層が、アルキッド樹脂系離型剤を主成分とする離型層であるか、または、シリコーン系離型剤にセルロース誘導体を配合してなる離型層であり、 該接着シートの熱硬化前のプリプレグからの支持体フィルムの剥離強度が180度ピール強度で1.5gf/50mm以上、5gf/50mm以下である、多層プリント配線板の絶縁層形成用ロール状接着シート」に訂正する。 (3)請求項11の「請求項1?10のいずれか1項に記載」を「請求項10記載」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記(1)の訂正は、本件の訂正前の特許請求の範囲の請求項11の「オートカッターにセットされ、多層プリント配線板の製造に供される、請求項1?10のいずれか1項に記載のロール状接着シート。」との記載に基いたものである。 そうすると、上記(1)の訂正は、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内においてロール状接着シートを限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 上記(2)の訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 上記(3)の訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 そして、上記(1)ないし(3)の訂正は、一群の請求項ごとに請求されたものである。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項[1?9]、[10、11]についての訂正を認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1ないし11に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明11」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 (1)本件発明1 「支持体フィルム上にプリプレグが形成された接着シートがロール状に巻き取られたロール状接着シートであって、 該接着シートが保護フィルム/プリプレグ/支持体フィルムの層構成を有し、かつ、支持体フィルムがプリプレグと接する面側に離型層を有し、 該プリプレグが、シート状繊維基材と熱硬化性樹脂組成物を含み、該離型層が、アルキッド樹脂系離型剤を主成分とする離型層であるか、または、シリコーン系離型剤にセルロース誘導体を配合してなる離型層であり、 該接着シートの熱硬化前のプリプレグからの支持体フィルムの剥離強度が180度ピール強度で1.5gf/50mm以上、5gf/50mm以下であり、 オートカッターにセットされ、多層プリント配線板の製造に供される、ロール状接着シート。」 (2)本件発明10 「支持体フィルム上にプリプレグが形成された接着シートがロール状に巻き取られたロール状接着シートであって、 該接着シートが保護フィルム/プリプレグ/支持体フィルムの層構成を有し、かつ、支持体フィルムがプリプレグと接する面側に離型層を有し、 該プリプレグが、シート状繊維基材と熱硬化性樹脂組成物を含み、該離型層が、アルキッド樹脂系離型剤を主成分とする離型層であるか、または、シリコーン系離型剤にセルロース誘導体を配合してなる離型層であり、 該接着シートの熱硬化前のプリプレグからの支持体フィルムの剥離強度が180度ピール強度で1.5gf/50mm以上、5gf/50mm以下である、多層プリント配線板の絶縁層形成用ロール状接着シート。」 (3)本件発明2?9、11 本件発明2?9は、本件発明1を更に減縮したものである。 本件発明11は、本件発明10を更に減縮したものである。 2 取消理由の概要 訂正前の請求項1ないし11に係る発明に対して平成29年5月23日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 請求項1ないし11に係る発明は、刊行物2に記載された発明及び刊行物1ないし6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 刊行物1:特開2005-154727号公報(甲第1号証) 刊行物2:特開昭59-159332号公報 (甲第2号証) 刊行物3:特開2006-281481号公報(甲第3号証) 刊行物4:特開2003-53896号公報 (甲第4号証) 刊行物5:特開2000-332375号公報(甲第5号証) 刊行物6:特開2005-340594号公報(甲第6号証) 3 甲号証の記載 (1)甲第2号証の記載・甲2発明 甲第2号証(特開昭59-159332号公報)には、プリプレグ材料およびその製造方法に関し、図面とともに、次の事項が記載されている。 ア「しかして、上記プリプレグ材料を使用したFRPの成形は、プリプレグ材料を、成形したいFRPの形状や寸法に応じて裁断し、離型紙を剥ぎ取った後、プリプレグをマンドレルに巻き付けて加圧加熱したり、成形用の型の中に積み重ねて加圧加熱することによって行っている。」(第2ページ左上欄第2?7行) イ「上記目的を達成するための本発明は、少なくとも一面に離型加工を施した合成樹脂フイルムと、この合成樹脂フイルムの前記一面に担持した、互に並行かつシート状に配列した補強繊維にB-ステージ(たとえば、「プラスチック工業辞典」、第107頁、1973年9月25日、株式会社工業調査会刊)の熱硬化性樹脂を含浸してなるプリプレグとを有するプリプレグ材料を特徴とするものである。」(第2ページ右上欄第9?17行) ウ「本発明の一実施例を説明するに、図面において、ロール体から引き出した、一面にB-ステージの熱硬化性樹脂を塗布した帯状の下側離型紙1を連続的に走行させながら、上記一面、つまり樹脂塗布面に、多数のパッケージ(図示せず)から引き出したストランド形態(単糸数数百本?数万本)の補強繊維2をその繊維軸が離型紙1の走行方向、つまり長手方向になるように互に並行かつシート状に引き揃えて並べる。 次に、離型紙1上に並べた補強繊維2の上に、ロール体から引き出した、上記離型紙1と同様の、一面にB-ステージの熱硬化性樹脂を塗布した帯状の上側離型紙3を、上記一面、つまり樹脂塗布面が補強繊維2のほうを向くように重ね合わせる。 次に、補強繊維2を挟持した離型紙1、3を、多段に設置され、加熱された含浸ロール4に通し、ストランド形態の補強繊維2を押し拡げるとともに、離型紙1、3に塗布されている樹脂を軟化させ、流動性を与えて補強繊維2に含浸する。これにより、一方向に互に並行かつシート状に並んだ補強繊維にB-ステージの熱硬化性樹脂を含浸してなる、いわゆる一方向性プリプレグが得られる。そのようなプリプレグは、通常、0.02?1mm、好ましくは0.03?0.5mmの厚みを有している。 次に、上記プリプレグから、上側離型紙3を剥ぎ取り、ロール状に巻き取って回収する。 次に、上側離型紙3を剥ぎ取ったプリプレグ面に、ロール体から引き出した、一面を離型加工した合成樹脂フィルム5をその一面がプリプレグのほうを向くように重ね合わせ、プレスロール6で加圧して貼り合わせる。 次に、下側離型紙1を剥離して回収した後、プリプレグを合成樹脂フイルム5とともに紙管などの巻芯7に巻き取る。」(第2ページ左下欄第9行?第3ページ左上欄第3行) エ「これら合成樹脂フイルムの表面には、たとえば、コロナ放電処理、プラズマ処理などの物理的処理またはアクリル系、塩化ビニリデン系、ポリエステル系接着剤などの接着剤の塗布による離型加工が施されている。このような離型加工は、合成樹脂フイルムの一面のみに施すことであってもよいし、両面に施すことであってもよい。両面に施す場合、表裏で離型差を付け、離型度の大きい面をプリプレグに貼り合わせるようにする。」(第4ページ左上欄第1?10行) オ「次に、上記2枚の離型紙の一方を剥ぎ取って回収した後、離型紙を剥ぎ取ったプリプレグ面に、一面のみコロナ放電処理した厚み0.075mmのポリプロピレンフィルムをその一面が上記プリプレグ面を向くように重ね合わせ、ブレスロールで加圧して貼り合わせた。 次に、残りのもう1枚の離型紙を剥ぎ取って回収した後、プリプレグをポリプロピレンフイルムごと紙管に巻き取った。なお、上記プリプレグの厚みは約0.12mmであり、“トレカ”の含有率は約63重量%であった。」(第4ページ左下欄第6?16行) カ 上記記載事項イの「合成樹脂フイルムの前記一面に担持した(省略)プリプレグとを有するプリプレグ材料」との記載及び上記記載事項ウの「プリプレグを合成樹脂フイルム5とともに紙管などの巻芯7に巻き取る。」との記載並びに図面の符号7からみて、プリプレグ材料がロール体であることが理解できる。 上記記載事項及び図示内容を総合し、本件発明1の記載振りに則って整理すると、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。 「合成樹脂フィルム5上にプリプレグが形成されたプリプレグ材料が巻芯7に巻き取られたロール体のプリプレグ材料であって、 合成樹脂フィルム5がプリプレグのほうを向く一面に離型加工した表面の層を有し、 該プリプレグが、シート状に並んだ補強繊維と熱硬化性樹脂を含む、ロール体のプリプレグ材料。」 (2)甲第1号証の記載 甲第1号証(特開2005-154727号公報)には、多層プリント配線板の層間絶縁用樹脂組成物、接着フィルム及びプリプレグに関し、次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。 ア「【請求項9】 請求項1乃至8記載の樹脂組成物からなる樹脂組成物層が支持フィルム上に形成されている多層プリント配線板用の接着フィルム。 【請求項10】 (省略) 【請求項11】 請求項1乃至8記載の樹脂組成物が繊維からなるシート状補強基材中に含浸されていることを特徴とする多層プリント配線板用のプリプレグ。 【請求項12】 (省略) 【請求項13】 請求項11記載のプリプレグの硬化物により絶縁層が形成されている多層プリント配線板。」 イ「【0001】 本発明は、回路形成された導体層と絶縁層とを交互に積み上げたビルドアップ方式の多層プリント配線板の層間絶縁材料として有用な樹脂組成物、並びに該樹脂組成物により調製される多層プリント配線板用の接着フィルムおよびプリプレグに関する。本発明は、更に、該樹脂組成物またはプリプレグの硬化物により絶縁層が形成されている多層プリント配線板および該多層プリント配線板の製造方法に関する。」 ウ「【0032】 本発明の接着フィルムは、当業者に公知の方法、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、支持フィルムを支持体として、この樹脂ワニスを塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。」 エ「【0036】 なお、本発明における樹脂組成物層は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。 【0037】 本発明における支持フィルム及び保護フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。 【0038】 支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10?150μmであり、好ましくは25?50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1?40μmとするのが好ましい。なお、後述するように、接着フィルムの製造工程で支持体として用いる支持フィルムを樹脂組成物層表面を保護する保護フィルムとして使用することもできる。 【0039】 本発明における支持フィルムは、回路基板にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。接着フィルムを加熱硬化した後に支持フィルムを剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。なお、支持フィルム上に形成される樹脂組成物層は、層の面積が支持フィルムの面積より小さくなるように形成するのが好ましい。また接着フィルムは、ロール状に巻き取って、保存、貯蔵することができる。 【0040】 次に、本発明の接着フィルムを用いて本発明の多層プリント配線板を製造する方法について説明する。樹脂組成物層が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、樹脂組成物層を回路基板に直接接するように、回路基板の片面又は両面にラミネートする。本発明の接着フィルムにおいては真空ラミネート法により減圧下で回路基板にラミネートする方法が好適に用いられる。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。またラミネートを行う前に接着フィルム及び回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。」 オ「【0049】 本発明のプリプレグは、本発明の樹脂組成物を繊維からなるシート状補強基材にホットメルト法又はソルベント法により含浸させ、加熱により半硬化させることにより製造することができる。すなわち、本発明の樹脂組成物が繊維からなるシート状補強基材に含浸した状態となるプリプレグとすることができる。 【0050】 繊維からなるシート状補強基材としては、例えばガラスクロスやアラミド繊維等、プリプレグ用繊維として常用されているものを用いることができる。 【0051】 ホットメルト法は、樹脂を有機溶剤に溶解することなく、樹脂を樹脂と剥離性の良い塗工紙に一旦コーティングし、それをシート状補強基材にラミネートする、あるいはダイコーターにより直接塗工するなどして、プリプレグを製造する方法である。またソルベント法は、接着フィルムと同様、樹脂を有機溶剤に溶解した樹脂ワニスにシート状補強基材を浸漬し、樹脂ワニスをシート状補強基材に含浸させ、その後乾燥させる方法である。 【0052】 次に本発明のプリプレグを用いて本発明の多層プリント配線板を製造する方法について説明する。回路基板に本発明のプリプレグを1枚あるいは必要により数枚重ね、離型フィルムを介して金属プレートを挟み加圧・加熱条件下でプレス積層する。圧力は好ましくは5?40kgf/cm^(2)、温度は好ましくは120?200℃で20?100分の範囲で成型するのが好ましい。また接着フィルムと同様に真空ラミネート法により回路基板にラミネートした後、加熱硬化することによっても製造可能である。その後、前に記載した方法と同様、酸化剤により硬化したプリプレグ表面を粗化した後、導体層をめっきにより形成して多層プリント配線板を製造することができる。」 カ「【実施例4】 【0057】 実施例1の樹脂ワニスをガラスクロスに含浸し、80?120℃(平均100℃)で6分間乾燥させ、樹脂含量45重量%で厚みが0.1mmのプリプレグを得た。」 キ「【0062】 実施例4で得られたプリプレグを実施例5と同じ回路基板上に枚葉し、離型フィルムを介して金属プレートで挟み、120℃、10kgf/cm^(2)で15分間真空積層プレスした後、更に180℃、40kgf/cm^(2)で60分間真空積層プレスした。その後、実施例5と同様にして4層プリント配線板を得た。得られた導体層のピール強度は0.8kgf/cmであった。」 (3)甲第3号証の記載 甲第3号証(特開2006-281481号公報)には、積層回路基板製造用工程フィルムに関し、図面とともに、次の事項が記載されている。 ア「【請求項1】 基材フィルムと、その両面に形成された樹脂層を有することを特徴とする積層回路基板製造用工程フィルム。 【請求項2】 両面に形成された樹脂層の厚さが、それぞれ0.1?10μmである請求項1に記載の積層回路基板製造用工程フィルム。 【請求項3】 基材フィルムに形成された両面の樹脂層が、共に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物からなる層、あるいはアルキド樹脂及び/又はアクリル系樹脂からなる層である請求項1又は2に記載の積層回路基板製造用工程フィルム。」 イ「【請求項7】 基材フィルムの厚さが10?60μmである請求項1ないし6のいずれかに記載の積層回路基板製造用工程フィルム。」 ウ「【0019】 (省略) このビアホール加工工程においては、前記の導電性ペーストを充填するに際し、該導電性ペーストの不必要な部分への付着を避けるためにマスキング用として、本発明の工程フィルムが用いられる。具体的には、プリプレグに、本発明の工程フィルムを通常50?150℃の温度で加熱ラミネートしたのち、炭酸ガスレーザーなどを用いてビアホール加工を行う。 本発明の工程フィルムは、ビアホール加工時に良好なホールを形成し得ると共に、該ホールへの導電性ペースト充填時における浮きや剥がれによる不具合を起こさず、基板からの剥離性に優れる特性を有し、前記用途に好適に用いられる。 ここで、プリプレグから本発明の工程フィルムを引き剥がすのに要する剥離力は、好ましくは1?50mN/50mm、より好ましくは5?45mN/50mmである。なお、剥離力は、下記に示す方法で測定した値である。 【実施例】 【0020】 次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。 なお、各例で得られた工程フィルムの評価は、以下に示す方法に従って行った。 (1)レーザー加工適性 まず、各工程フィルムを用いて、図1に示す試験用サンプルを作製する。図1は試験用サンプルの概略断面図であって、基材フィルム1の一方の面に樹脂層A2、他方の面に樹脂層B3が設けられた工程フィルム4を、プリプレグ5に樹脂層B3が対面するように、120℃、0.5m/分の条件で熱ラミネートすることにより、試験用サンプル10を作製し、レーザー加工性を評価する。 試験用サンプルにおける工程フィルムの樹脂層A2側から、炭酸ガスレーザーを用いてレーザー光の照射を行って貫通孔を設け、樹脂層A2側及び樹脂層B3側の貫通孔表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察する。 貫通孔周辺部の樹脂の盛り上がり、貫通孔の後退現象(樹脂層A2の貫通孔に比べて樹脂層B3の貫通孔の径が明らかに小さくなる現象)がないものを合格○とし、実用上問題ないが前記樹脂の盛り上がりや貫通孔の後退現象が僅かに見られるものを△、明確に見られるものを不合格×とする。 なお、プリプレグとして、下記組成の樹脂ワニスを、アラミド不織布[デュポン帝人アドバンスドペーパー社製、商品名「サーマウントN-718#100」]からなる基材に含浸させ、150℃で5分間加熱乾燥して得られた樹脂含有率58質量%のプリプレグを使用した。(省略)」 エ「【0021】 実施例1 ステアリル変性アルキド樹脂とメチル化メラミン樹脂の混合物[日立化成ポリマー社製、商品名「テスファイン303」、固形分20質量%]100質量部に、p-トルエンスルホン酸3質量部を添加混合して熱硬化性樹脂溶液を調製した。 次いで、この熱硬化性樹脂溶液を、厚さ19μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム[三菱化学ポリエステルフィルム社製、商品名「ダイアホイルR310」]にマイヤバー#4を用いて塗布し、130℃で1分間乾燥させて、厚さ1.0μmの熱硬化樹脂層(樹脂層A)を形成した。 続いて、多官能アクリル樹脂[日本化薬社製、商品名「カヤラッドDPHA」]100質量部と光重合開始剤[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア651」]5質量部を混合し、メチルエチルケトン及びトルエンにて固形分が12.5質量%になるように希釈し、紫外線硬化型樹脂溶液を調製した。 次に、上記熱硬化樹脂層を形成したPETフィルムの反対面に、マイヤバー#4を用いて前記紫外線硬化型樹脂溶液を塗布し、80℃で1分間乾燥したのち、これに紫外線を300mJ/cm^(2)の照射量で照射して、厚さ1.0μmの紫外線硬化樹脂層(樹脂層B)を形成した。このようにして基材フィルムの両面に樹脂層が形成された積層回路基板製造用工程フィルムを作製し、その性能の評価を行った。結果を第1表に示す。 実施例2 実施例1において、基材フィルムとして厚さ38μmのPETフィルム[三菱化学ポリエステルフィルム社製、商品名「ダイアホイルT100-38」]を用いた以外は、実施例1と同様にして積層回路基板製造用工程フィルムを作製し、その性能の評価を行った。結果を第1表に示す。 実施例3 実施例1において、樹脂層Aとして紫外線硬化樹脂層を、樹脂層Bとして熱硬化樹脂層を設けた以外は、実施例1と同様にして積層回路基板製造用工程フィルムを作製し、その性能を評価した。結果を第1表に示す。 実施例4 厚さ19μmのPETフィルム[三菱化学ポリエステルフィルム社製、商品名「ダイアホイルR310」]の片面に、実施例1と同様にして、紫外線硬化型樹脂溶液を塗布、乾燥し、紫外線を照射して厚さ1.0μmの紫外線硬化樹脂層を形成した。次いで、基材フィルムの反対面に、上記と同様にして厚さ1.0μmの紫外線硬化樹脂層を形成し、両面に紫外線硬化樹脂層を有する積層回路基板製造用工程フィルムを作製した。 この工程フィルムの評価結果を第1表に示す。 実施例5 厚さ19μmのPETフィルム[三菱化学ポリエステルフィルム社製、商品名「ダイアホイルR310」]の片面に、実施例1と同様にして、熱硬化性樹脂溶液を塗布し、130℃で1分間乾燥させて、厚さ1.0μmの熱硬化樹脂層を形成した。次いで、基材フィルムの反対面に、上記と同様にして厚さ1.0μmの熱硬化樹脂層を形成し、両面に熱硬化樹脂層を有する積層回路基板製造用工程フィルムを作製した。 この工程フィルムの評価結果を第1表に示す。」 オ 【表1】には、実施例3の欄に「樹脂層A種類:UV硬化型(1.0μm)、基材フィルム種類:PET(19μm)、樹脂層B種類:熱硬化型(1.0μm)、レーザー加工適正:○、剥離性:○、剥離力24.0mN/50mm」との記載があり、実施例5の欄に「樹脂層A種類:UV硬化型(1.0μm)、基材フィルム種類:PET(19μm)、樹脂層B種類:熱硬化型(1.0μm)、レーザー加工適正:○、剥離性:○、剥離力24.0mN/50mm」との記載がある。 (4)甲第4号証の記載 甲第4号証(特開2003-53896号公報)には、離型フィルムに関し、次の事項が記載されている。 ア「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、導体箔積層板製造時のプリプレグプレス工程において使用される離型フィルムに関し、詳細には、電子機器などに広範に使用される積層配線基板の製造に好適に用いられる離型フィルムに関する。」 イ「【0019】本発明はポリエステル系フィルムの少なくとも片面の離型剤が上記のようなシリコーン系離型剤とセルロース誘導体の混合物からなる離型剤を用いることを特徴としている。 (省略) 通常はシリコーン系離型剤/セルロース誘導体の混合比率が固形分換算で1/100?100/1程度である。この混合比率は、組合せて用いられるシリコーン系離型剤とセルロース誘導体それぞれの特性に応じて、前記物性を考慮しながら、適宜、選択される。具体的には、セルロース誘導体の混合比率が向上するにつれて離型剤の移行抑制効果は向上するが、多すぎると離型性が低下する傾向がある。例えば、シリコーン系離型剤として汎用の溶剤型付加反応タイプのシリコーンとエチルセルロースの混合物の場合、両者の混合比率は固形分換算で、100/30?100/200の範囲が好ましい。」 ウ「【0023】 (省略) 離型剤層の厚みは、必要な離型効果を得られる限りにおいては特に制限はないが、適切な離型性を得る観点から0.02?1.0μm程度であることが好ましい。」 (5)甲第5号証の記載 甲第5号証(特開2000-332375号公報)には、マスクフィルムとその製造方法およびそれを用いた回路基板の製造方法に関し、図面(特に【図8】参照。)とともに、次の事項が記載されている。 ア「【請求項1】 ベース材の片面に離型層が塗布形成された離型層部と、離型層が形成されていない非離型層部とで構成されたマスクフィルム。」 イ「【0005】図8において、21は300mm×500mm、厚さ約150μmのプリプレグシートであり、例えば不織布の全芳香族ポリアミド繊維に熱硬化性エポキシ樹脂を含浸させた複合材からなる基材が用いられる。22a,22bはマスクフィルムであり、図7に示すようにベース材11のマスクフィルム22a,22bと接着する面に0.01μm以下の厚みでSi系の離型剤を塗布した離型層部12を形成した厚さ約16μm、幅300mmのプラスチックフィルム、例えばポリエチレンテレフタレートが用いられる。 【0006】プリプレグシート21とマスクフィルム22a,22bの張り合わせは、ラミネート装置を用いてプリプレグシート21の樹脂成分を溶融させてマスクフィルム22a,22bを連続的に接着する方法(特開平7-106760)が提案されている。」 ウ「【0012】 【発明の実施の形態】本発明の請求項1記載の発明は、ベース材の片面に離型層が塗布形成された離型層部と、離型層が形成されていない非離型層部とで構成されたマスクフィルムとしたものであり、マスクフィルムとプリプレグシートと張り合わせた場合、離型層部で離型性能を有し、かつ非離型層部で接着補強によりマスクフィルムとプリプレグシートの剥がれを防止するという作用を有する。」 エ「【0039】実際に測定した接着強度は離型層部2が180度ピール、測定速度60mm/minで約0.5g/10mm、非離型層部3が100g/10mm以上である。」 オ「【0042】さらに、接着強度の改善を図るには、コロナ処理などの表面処理によって離型層の表面改質をしてやればよい。コロナ処理を施さない離型層面の表面張力は32dyneレベルであるが、たとえば35kVの電圧で数秒間、望ましくは1?5秒間のコロナ処理を行うと、40dyneとプリプレグシート中の樹脂成分の濡れ性などが改善される。ちなみに32dyne時の接着強度は180度ピール、測定速度60mm/minで約0.5g/10mmに対して、40dyne時の接着強度が約4g/10mmと改善されて、より剥がれが防止できることを確認した。」 (6)甲第6号証の記載 甲第6号証(特開2005-340594号公報)には、プリント配線板用絶縁樹脂フィルム及びこれを用いた絶縁層の形成方法に関し、図面(特に【図3】、【図4】及び【図8】参照。)とともに、次の事項が記載されている。 「【0023】 次に、予め配線層等が形成された有効領域21を有する配線回路基板20(図3(a)及び(b)参照)がローラーコンベアー121によりオートカットラミネーターユニット110へ搬送される。 オートカットラミネーターユニット110では、前述の支持ベースフィルム11に絶縁樹脂層12及び接着層13を設けた絶縁樹脂フィルムの巻取りロール111を上下に装填し、保護フィルムが保護フィルム巻き取りロール113にて巻き取られた後、プリント配線板用絶縁樹脂フィルム10の先端がエアー吸着ロール112に吸着される。 さらに、エアー吸着ロール112が回転してプリント配線板用絶縁樹脂フィルム10の絶縁樹脂層12と配線回路基板20が接触する。その際、配線回路基板20の有効領域21外の所定部分に絶縁樹脂層12の端部を加熱、圧着して仮貼りする。次に、ローラーコンベアー121とエアー吸着ロール112が連動して配線回路基板20を送り、所定の位置でプリント配線板用絶縁樹脂フィルム10をカットし、所定サイズにカットされたプリント配線板用絶縁樹脂フィルム10が仮貼りされた配線回路基板20aが作製される(図4参照)。 【0024】 次に、両面にプリント配線板用絶縁樹脂フィルム10が仮貼りされた配線回路基板20aはローラーコンベアー121によりローダーユニット120へ搬送される。配線回路基板20aはローダーユニット120上をローラーコンベアー121と連動した搬送フィルム送り出しユニット130へ送られる。搬送フィルム送り出しユニット130では、搬送フィルム送り出しロール131より送り出された搬送フィルム31はガイドローラー132にて配線回路基板20aの接着層13と重ね合わされ、真空加圧ラミネーターユニット140及び平面プレスユニット150へ搬送される。 【0025】 次に、真空加圧ラミネーターユニット140及び平面プレスユニット150では、プリント配線板用絶縁樹脂フィルム10の絶縁樹脂層12が配線回路基板に所定の温度(ホットメルト型接着剤の軟化点プラス30℃以下、マイナス30℃未満の範囲の温度)で積層され、配線回路基板20の両面に形成された絶縁樹脂層12の平滑化処理が行われ、平面プレスユニット150より送り出された配線回路基板は数十秒間冷却ファンにより冷却され、絶縁樹脂層12が硬化し、搬送フィルム巻取りユニット160に送られる。 【0026】 次に、搬送フィルム巻取りユニット160では、搬送フィルム31と接着層13と支持ベースフィルム11とを搬送フィルム巻取りガイドローラー163を介して配線回路基板より剥離し(図6参照)、巻取りロール161に巻き取り、配線回路基板20の両面に絶縁層12aが形成された配線回路基板20cを得る(図7参照)。 【0027】 さらに、配線回路基板20cの絶縁層12a上に配線層、ビア形成及び上記絶縁層形成を所望回数繰り返すことにより、多層配線回路基板及びインターポーザ等を容易に得ることができる。」 4 判断 (1)取消理由通知に記載した取消理由(特許法第29条第2項)について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明の「合成樹脂フィルム5」は、本件発明1の「支持体フィルム」に相当し、以下同様に、「プリプレグ材料」は「接着シート」に、「巻芯7に巻き取られた」ことは「ロール状に巻き取られた」ことに、「ロール体のプリプレグ材料」は「ロール状接着シート」に、「プリプレグのほうを向く一面」は「プリプレグと接する面側」に、「離型加工した表面の層」は「離型層」に、「シート状に並んだ補強繊維」は「シート状繊維基材」に、「熱硬化性樹脂」は「熱硬化性樹脂組成物」に、それぞれ相当する。 したがって、本件発明1と甲2発明とは、 「支持体フィルム上にプリプレグが形成された接着シートがロール状に巻き取られたロール状接着シートであって、 支持体フィルムがプリプレグと接する面側に離型層を有し、 該プリプレグが、シート状繊維基材と熱硬化性樹脂組成物を含む、ロール状接着シート。」の点で一致し、次の相違点1及び2で相違する。 [相違点1]本件発明1は、「該接着シートが保護フィルム/プリプレグ/支持体フィルムの層構成を有し」、「オートカッターにセットされ、多層プリント配線板の製造に供される、ロール状接着シート」であるのに対し、甲2発明の「ロール体のプリプレグ材料」は、このような構成を有しない点。 [相違点2]本件発明1は「該離型層が、アルキッド樹脂系離型剤を主成分とする離型層であるか、または、シリコーン系離型剤にセルロース誘導体を配合してなる剥離層であり、」「該接着シートの熱硬化前のプリプレグからの支持体フィルムの剥離強度が180度ピール強度で1.5gf/50mm以上、5gf/50mm以下」であるのに対し、甲2発明の「離型加工した表面の層」は、このような構成を有しない点。 (イ)判断 上記相違点1及び2について検討する。 甲第2号証の第2ページ左上欄第2?7行に「プリプレグ材料を使用したFRPの成形は、(省略)プリプレグをマンドレルに巻き付けて加圧加熱したり、成形用の型の中に積み重ねて加圧加熱することによって行っている。」と記載されているものの、甲第2号証には、プリプレグを多層プリント配線板に用いることについての記載ないし示唆はない。そうすると、甲2発明に多層プリント配線板に関する技術を組み合わせる動機付けはない。 甲第1号証の段落【0032】には、「支持フィルムを支持体として、この樹脂ワニスを塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて樹脂組成物層を形成させる」と記載されており、段落【0036】には「本発明における樹脂組成物層は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい」と記載されており、段落【0039】には「接着フィルムは、ロール状に巻き取って」と記載されている。 これらの記載からみて、甲第1号証には、「保護フィルム/樹脂組成物層/支持フィルムの層構造を有するロール状の接着フィルム」が記載されている。 また、甲第1号証の段落【0049】には、「本発明の樹脂組成物が繊維からなるシート状補強基材に含浸した状態となるプリプレグとすること」と記載されており、段落【0052】には「本発明のプリプレグを用いて本発明の多層プリント配線板を製造する方法について説明する。回路基板に本発明のプリプレグを1枚あるいは必要により数枚重ね」、「プレス積層する」と記載されており、段落【0062】には「4層プリント配線板を得た。」と記載されており、これらの記載からみて、甲第1号証には、「多層プリント配線板の製造に供されるプリプレグ」が記載されている。 しかしながら、甲第1号証には、保護フィルム/樹脂組成物層/支持体フィルムの層構成を有するロール状の接着フィルムと、多層プリント配線板の製造に供されるプリプレグが記載されているにすぎず、相違点1に係る本件発明1の「該接着シートが保護フィルム/プリプレグ/支持体フィルムの層構成を有」する「多層プリント配線板の製造に供される」「ロール状接着シート」は記載も示唆もされていない。 次に、甲第6号証の段落【0023】には「予め配線層等が形成された有効領域21を有する配線回路基板20(図3(a)及び(b)参照)がローラーコンベアー121によりオートカットラミネーターユニット110へ搬送される」及び「前述の支持ベースフィルム11に絶縁樹脂層12及び接着層13を設けた絶縁樹脂フィルムの巻取りロール111を上下に装填し、保護フィルムが保護フィルム巻き取りロール113にて巻き取られ」と記載され、段落【0026】に「配線回路基板20の両面に絶縁層12aが形成された配線回路基板20cを得る」と記載され、段落【0027】に「配線回路基板20cの絶縁層12a上に配線層、ビア形成及び上記絶縁層形成を所望回数繰り返すことにより、多層配線回路基板及びインターポーザ等を容易に得ることができる」と記載されているから、甲第6号証には、保護フィルム(本件発明1の保護フィルムに相当)/絶縁樹脂層12/支持ベースフィルム11(本件発明1の支持体フィルムに相当)の層構成を有する、巻き取られた絶縁樹脂フィルムが、オートカットラミネーターユニット110(本件発明1のオートカッターに相当)に装填され、多層プリント配線板の製造に供されることが記載されている。 しかしながら、甲第6号証には、接着樹脂フィルムが保護フィルム/樹脂組成物層12/支持体フィルムの層構成を有し、オートカッターにセットされ、多層プリント配線板の製造に供される接着樹脂フィルムが記載されているにすぎず、相違点1に係る本件発明1の「該接着シートが保護フィルム/プリプレグ/支持体フィルムの層構成を有」する「多層プリント配線板の製造に供されるロール状接着シート」は記載も示唆もされていない。 甲第3号証の段落【0019】には、剥離力が5?45mN/50mmのマスキング用の工程フィルが記載されているが、このマスキング用の工程フィルムは、ロール状接着シートの支持体フィルムに相当するものとは認められない。 甲第4号証の段落【0019】には、シリコーン系離型剤にセルロース誘導体を配合した離型層が記載されているが、この離型層を、ロール状接着シートの支持体フィルムに適用することについての記載はない。 甲第5号証の段落【0005】には、Si系の離型剤を配合した離型層を有するマスクフィルムが記載されているが、このマスクフィルムは、ロール状接着シートの支持体フィルムに相当するものとは認められない。 そうすると、甲第3?5号証には、相違点2に係る本件発明1のロール状接着シートにおいて「該離型層がアルキッド樹脂系離型剤を主成分とする離型層であるか、または、シリコーン系離型剤にセルロース誘導体を配合してなる剥離層であり、」「該接着シートの熱硬化前のプリプレグからの支持体フィルムの剥離強度が180度ピール強度で1.5gf/50mm以上、5gf/50mm以下」である点が記載も示唆もされていない。 そして、本件発明1は、上記相違点1及び2に係る構成によって、「プリプレグで多層プリント配線板の絶縁層を形成する場合に、枚葉によらずに、連続的生産を可能とする」(本件明細書の段落【0004】)及び「熱硬化前のプリプレグからの支持体フィルムの剥離強度を一定値以上に設定することで、安定的に連続生産が可能となる」(本件明細書の段落【0008】)という顕著な効果を奏すると認められる。 (ウ)小括 以上のとおり、本件発明1は、甲2発明及び甲第1ないし6号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 イ 本件発明2ないし9について 本件発明2ないし9は、本件発明1を更に減縮したものであるから、本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2ないし9は、甲2発明及び甲第1ないし6号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 ウ 本件発明10について (ア)対比 本件発明10と甲2発明とを対比すると、本件発明10と甲2発明とは、 「支持体フィルム上にプリプレグが形成された接着シートがロール状に巻き取られたロール状接着シートであって、 支持体フィルムがプリプレグと接する面側に離型層を有し、 該プリプレグが、シート状繊維基材と熱硬化性樹脂組成物を含む、ロール状接着シート。」の点で一致し、次の相違点3及び4で相違する。 [相違点3]本件発明10は、「該接着シートが保護フィルム/プリプレグ/支持体フィルムの層構成を有し」、「多層プリント配線板の絶縁層形成用ロール状接着シート」であるのに対し、甲2発明の「ロール体のプリプレグ材料」は、このような構成を有しない点。 [相違点4]本件発明10は、「該離型層が、アルキッド樹脂系離型剤を主成分とする離型層であるか、または、シリコーン系離型剤にセルロース誘導体を配合してなる剥離層であり、該接着シートの熱硬化前のプリプレグからの支持体フィルムの剥離強度が180度ピール強度で1.5gf/50mm以上、5gf/50mm以下」であるのに対し、甲2発明の「離型加工した表面の層」は、このような構成を有しない点。 (イ)判断 上記相違点3及び4について検討する。 上記ア(イ)に記載したとおりであるから、甲2発明に多層プリント配線板に関する技術を組み合わせる動機付けはない。 そして、甲第1号証には、保護フィルム/樹脂組成物層/支持体フィルムの層構成を有するロール状の接着フィルムと、多層プリント配線板の製造に供されるプリプレグが記載されているにすぎず、相違点3に係る本件発明10の「該接着シートが保護フィルム/プリプレグ/支持体フィルムの層構成を有」する「多層プリント配線板の絶縁層形成用ロール状接着シート」は記載も示唆もされていない。 また、甲第6号証には、接着樹脂フィルムが保護フィルム/樹脂組成物層12/支持体フィルムの層構成を有し、多層プリント配線板の製造に供される接着樹脂フィルムが記載されているにすぎず、相違点3に係る本件発明10の「該接着シートが保護フィルム/プリプレグ/支持体フィルムの層構成を有」する「多層プリント配線板の絶縁層形成用ロール状接着シート」は記載も示唆もされていない。 さらに、甲第3?5号証には、相違点4に係る本件発明10の多層プリント配線板の絶縁層形成用ロール状接着シートにおいて「該離型層がアルキッド樹脂系離型剤を主成分とする離型層であるか、または、シリコーン系離型剤にセルロース誘導体を配合してなる剥離層であり、該接着シートの熱硬化前のプリプレグからの支持体フィルムの剥離強度が180度ピール強度で1.5gf/50mm以上、5gf/50mm以下」である点が記載も示唆もされていない。 そして、本件発明10は、上記相違点3及び4に係る構成によって、「プリプレグで多層プリント配線板の絶縁層を形成する場合に、枚葉によらず に、連続的生産を可能とする」(本件明細書の段落【0004】)及び「熱硬化前のプリプレグからの支持体フィルムの剥離強度を一定値以上に設定することで、安定的に連続生産が可能となる」(本件明細書の段落【0008】)という顕著な効果を奏すると認められる。 (ウ)小括 以上のとおり、本件発明10は、甲2発明及び甲第1ないし6号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 エ 本件発明11について 本件発明11は、本件発明10を更に減縮したものであるから、本件発明10についての判断と同様の理由により、本件発明11は、甲2発明及び甲第1ないし6号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (2)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 異議申立人は、特許異議申立書において、甲第1号証には「プリプレグからなる、回路基板にラミネートされるシート。」という甲1発明が記載されており、甲第1号証の段落【0049】?【0052】には、甲1発明を「ロール状」とすることについて記載されており、訂正前の特許請求の範囲の請求項1ないし11に係る発明は、甲1発明及び甲第1ないし6号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたから、請求項1ないし11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである旨、主張する。 しかしながら、甲第1号証の段落【0049】?【0052】には、甲1発明を「ロール状」とすることについて記載されていない。 段落【0052】に「また接着フィルムと同様に真空ラミネート法により回路基板にラミネートした後、加熱硬化することによっても製造可能である。」との記載の「同様に」とは、段落【0040】の「本発明の接着フィルムにおいては真空ラミネート法により減圧下で回路基板にラミネートする方法が好適に用いられる。」との記載の「減圧下で回路基板にラミネートする方法」を指すもの認められ、その記載の後の「ロールでの連続式であってもよい。」との記載までをも指すとは認められない。 この他、甲第2ないし6号証にも、ロール状の多層プリント配線板用のプリプレグが記載ないし示唆されていない。 そうすると、本件発明1?11は、甲1発明及び甲第2ないし6号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないので、上記の主張は採用できない。 第4 むすび したがって、請求項1ないし11に係る特許は、取消理由に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に請求項1ないし11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 支持体フィルム上にプリプレグが形成された接着シートがロール状に巻き取られたロール状接着シートであって、 該接着シートが保護フィルム/プリプレグ/支持体フィルムの層構成を有し、かつ、支持体フィルムがプリプレグと接する面側に離型層を有し、 該プリプレグが、シート状繊維基材と熱硬化性樹脂組成物を含み、該離型層が、アルキッド樹脂系離型剤を主成分とする離型層であるか、または、シリコーン系離型剤にセルロース誘導体を配合してなる離型層であり、 該接着シートの熱硬化前のプリプレグからの支持体フィルムの剥離強度が180度ピール強度で1.5gf/50mm以上、5gf/50mm以下であり、 オートカッターにセットされ、多層プリント配線板の製造に供される、ロール状接着シート。 【請求項2】 支持体フィルムの厚みが20?50μmである、請求項1に記載のロール状接着シート。 【請求項3】 支持体フィルムの厚みが20?50μmおよびプリプレグの厚みが20?100μmである、請求項1又は2に記載のロール状接着シート。 【請求項4】 保護フィルムの厚みが5?30μmである、請求項1?3のいずれか1項に記載のロール状接着シート。 【請求項5】 支持体フィルムがポリエチレンテレフタレートフィルムである、請求項1?4のいずれか1項に記載のロール状接着シート。 【請求項6】 離型層の厚みが0.01?1μmである、請求項1?5のいずれか1項に記載のロール状接着シート。 【請求項7】 シート状繊維基材が、ガラスクロスである、請求項1?6のいずれか1項に記載のロール状接着シート。 【請求項8】 プリプレグの熱硬化性樹脂組成物中の残留溶剤の含有割合が5質量%以下である、請求項6又は7記載のロール状接着シート。 【請求項9】 シート状繊維基材の厚みが50μm以下である、請求項1記載のロール状接着シート。 【請求項10】 支持体フィルム上にプリプレグが形成された接着シートがロール状に巻き取られたロール状接着シートであって、 該接着シートが保護フィルム/プリプレグ/支持体フィルムの層構成を有し、かつ、支持体フィルムがプリプレグと接する面側に離型層を有し、 該プリプレグが、シート状繊維基材と熱硬化性樹脂組成物を含み、該離型層が、アルキッド樹脂系離型剤を主成分とする離型層であるか、または、シリコーン系離型剤にセルロース誘導体を配合してなる離型層であり、 該接着シートの熱硬化前のプリプレグからの支持体フィルムの剥離強度が180度ピール強度で1.5gf/50mm以上、5gf/50mm以下である、多層プリント配線板の絶縁層形成用ロール状接着シート。 【請求項11】 オートカッターにセットされ、多層プリント配線板の製造に供される、請求項10記載のロール状接着シート。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2018-03-28 |
出願番号 | 特願2013-182505(P2013-182505) |
審決分類 |
P
1
651・
841-
YAA
(H05K)
P 1 651・ 857- YAA (H05K) P 1 651・ 854- YAA (H05K) P 1 651・ 855- YAA (H05K) P 1 651・ 121- YAA (H05K) P 1 651・ 851- YAA (H05K) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 佐々木 正章、遠藤 秀明 |
特許庁審判長 |
冨岡 和人 |
特許庁審判官 |
小関 峰夫 内田 博之 |
登録日 | 2016-08-05 |
登録番号 | 特許第5981404号(P5981404) |
権利者 | 味の素株式会社 |
発明の名称 | 多層プリント配線板の製造方法 |
代理人 | 鎌田 光宜 |
代理人 | 田村 弥栄子 |
代理人 | 高島 一 |
代理人 | 當麻 博文 |
代理人 | 田村 弥栄子 |
代理人 | 鎌田 光宜 |
代理人 | 高島 一 |
代理人 | 土井 京子 |
代理人 | 土井 京子 |
代理人 | 當麻 博文 |