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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 特123条1項5号  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
管理番号 1341080
異議申立番号 異議2017-700143  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-07-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-02-16 
確定日 2018-05-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5970474号発明「マイクロ波利用可能な衣付食品の製造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5970474号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?12〕について訂正することを認める。 特許第5970474号の請求項1、3?12に係る特許を維持する。 特許第5970474号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5970474号(以下「本件特許」という。)の請求項1?12に係る特許についての出願は、平成28年7月15日にその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議の申立て期間内である平成29年2月16日に特許異議申立人加藤純子(以下「申立人」という。)より特許異議の申立てがされ、平成29年4月26日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年7月28日に意見書の提出及び訂正の請求がされ、平成29年9月1日に申立人より意見書の提出がされ、平成29年11月14日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である平成30年2月15日に意見書の提出及び訂正の請求がされ、平成30年3月27日に申立人より意見書が提出されたものである。
なお、平成29年7月28日付け訂正請求書による訂正の請求は、特許法120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。

第2 訂正の請求
1 訂正の内容
平成30年2月15日付け訂正請求書による訂正の請求は、「特許第5970474号の明細書及び特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の明細書及び請求項1?12について訂正することを求める」ものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、本件特許に係る願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を、次のように訂正するものである(下線は、訂正箇所を示す)。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「マイクロ波利用可能な冷凍衣付食品の製造方法であって、
前記方法は、
固形又は固化した基材片を準備する工程と、
前記片を水性プレコーティング液でコーティングし、プレコーティング片を形成する工程と、
前記プレコーティング片に結合用パン粉のコーティングを施し、パン粉コーティング片を形成する工程と、
前記パン粉コーティング片にバッターを施し、バッターコーティング片を形成する工程と、
前記バッターコーティング片に被覆用パン粉のコーティングを施し、衣付片を形成する工程と、
前記衣付片を、100秒以上、150℃以上の温度を有する熱い油に接触させて揚げ、70℃を超える中心温度を有するフライコーティング片を生成する工程と、
前記フライコーティング片を凍結装置中に導入し、前記フライコーティング片を凍結する工程と、を含み、
前記凍結する工程は、凍結装置中に導入される際に、前記フライコーティング片の中心温度が50℃以上であり、前記中心温度は、低温凍結によって-15℃未満に下げられる
ことを特徴とする方法。」
と記載されているのを、
「マイクロ波利用可能な冷凍衣付食品の製造方法であって、
前記方法は、
固形又は固化した基材片を準備する工程と、
前記片を水性プレコーティング液でコーティングし、プレコーティング片を形成する工程と、
前記プレコーティング片に結合用パン粉のコーティングを施し、パン粉コーティング片を形成する工程と、
前記パン粉コーティング片にバッター(ただし、冷凍フライ類に用いるバッター液であって、食用油脂と、水と、2000Gの条件下における遠心法による保水量が100g/100g以上となる保水性を有する食用保水性物質と、ロスマイルス法により25℃の条件下における0.1重量%含有水溶液として測定した際の起泡力が50mm以上を示す起泡剤と、乳化安定剤とを含むエマルジョンからなることを特徴とするバッター液を除く)を施し、バッターコーティング片を形成する工程と、
前記バッターコーティング片に被覆用パン粉のコーティングを施し、衣付片を形成する工程と、
前記衣付片を、フライ装置で、100秒以上、150℃以上の温度を有する熱い油に接触させて揚げ、70℃を超える中心温度を有するフライコーティング片を生成する工程と、
前記フライコーティング片を、前記フライ装置から出されてから2分未満に極低温凍結装置中に導入し、前記フライコーティング片を凍結する工程と、を含み、
前記凍結する工程は、極低温凍結装置中に導入される際に、前記フライコーティング片の中心温度が70℃以上であり、前記中心温度は、極低温凍結によって-30℃以下に下げられる
ことを特徴とする方法。」
に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項4?12も同様に訂正する)。

(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を、独立項の形式に書き改めたうえで、更に以下のように訂正する。
「マイクロ波利用可能な冷凍衣付食品の製造方法であって、
前記方法は、
固形又は固化した基材片を準備する工程と、
前記片を水性プレコーティング液でコーティングし、プレコーティング片を形成する工程と、
前記プレコーティング片に結合用パン粉のコーティングを施し、パン粉コーティング片を形成する工程と、
前記パン粉コーティング片にバッターを施し、バッターコーティング片を形成する工程と、
前記バッターコーティング片に被覆用パン粉のコーティングを施し、衣付片を形成する工程と、
前記衣付片を、フライ装置で、100秒以上、150℃以上の温度を有する熱い油中に入れて揚げ、70℃を超える中心温度を有するフライコーティング片を生成する工程と、
前記フライコーティング片を前記フライ装置の前記熱い油から出された後2分未満に極低温凍結装置中に導入し、前記フライコーティング片を液体ガスに接触させることを含む極低温凍結により凍結する工程と、を含み、
前記凍結する工程は、前記フライコーティング片の中心温度が前記液体ガスに接触させる際に70℃以上であり、前記中心温度は、前記液体ガスとの接触によって-30℃以下に下げられる
ことを特徴とする方法。」
に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4?12も同様に訂正する)。

(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に
「請求項1から3の何れか一項に記載の方法であって、
前記フライコーティング片は、当該片の前記中心温度が-15℃未満となるまで、凍結剤に接する
ことを特徴とする方法。」
と記載されているのを、
「請求項1または3に記載の方法であって、
前記フライコーティング片は、極低温凍結装置中で当該片の前記中心温度が-30℃以下となるまで、液体窒素に接する
ことを特徴とする方法。」
に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5?12も同様に訂正する)。

(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に
「請求項1から4の何れか一項に記載の方法であって、
前記フライコーティング片の前記中心温度は、凍結装置に入れられるより前に25℃を超えて大きくは減少しない
ことを特徴とする方法。」
と記載されているのを、
「請求項1、3および4の何れか一項に記載の方法であって、
前記フライコーティング片の前記中心温度は、極低温凍結装置に入れられるより前に25℃を超えて大きくは減少しない
ことを特徴とする方法。」
に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項6?12も同様に訂正する)。

(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に
「請求項1から5の何れか一項に記載の方法であって、」
と記載されているのを、
「請求項1および3から5の何れか一項に記載の方法であって、」
に訂正する。

(7) 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に
「請求項1から6の何れか一項に記載の方法であって、」
と記載されているのを、
「請求項1および3から6の何れか一項に記載の方法であって、」
に訂正する。

(8) 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項9に
「請求項1から8の何れか一項に記載の方法であって、」
と記載されているのを、
「請求項1および3から8の何れか一項に記載の方法であって、」
に訂正する。

(9) 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項10に
「請求項1から9の何れか一項に記載の方法であって、」
と記載されているのを、
「請求項1および3から9の何れか一項に記載の方法であって、」
に訂正する。

(10) 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項11に
「請求項1から10の何れか一項に記載の方法であって、」
と記載されているのを、
「請求項1および3から10の何れか一項に記載の方法であって、」
に訂正する。

(11) 訂正事項11
特許請求の範囲の請求項12に
「請求項1から11の何れか一項に記載の方法を使用した、冷凍衣付食品を製造するための装置であって、
前記装置は、
固形又は固化した基材片を形成するよう構成された基材形成装置と、
前記片を受けて、当該片を粘稿の水性コーティング組成物中に入れ、プレコーティング片を生成するよう構成されたコーティング装置と、
前記プレコーティング片を受けて、当該プレコーティング片の上にパン粉層を施し、パン粉コーティング片を形成するよう構成された第一のパン粉塗布装置と、
前記パン粉コーティング片を受けて、当該パン粉コーティング片をバッター中に入れ、バッターコーティング片を形成するよう構成されたバッターコーティング塗布装置と、
前記バッターコーティング片を受けて、当該バッターコーティング片の上にパン粉層を施し、多重コーティング片を形成するよう構成された第二のパン粉塗布装置と、
前記多重コーティング片を受けて、当該多重コーティング片を熱い油中に入れ、熱いフライコーティング片を形成するよう構成されたフライ装置と、
前記熱いフライコーティング片を受けて、当該熱いフライコーティング片を低温で凍結するよう構成された低温凍結装置と、を含む
ことを特徴とする装置。」
と記載されているのを、
「請求項1および3から11の何れか一項に記載の方法を使用した、冷凍衣付食品を製造するための装置であって、
前記装置は、
固形又は固化した基材片を形成するよう構成された基材形成装置と、
前記片を受けて、当該片を粘積の水性コーティング組成物中に入れ、プレコーティング片を生成するよう構成されたコーティング装置と、
前記プレコーティング片を受けて、当該プレコーティング片の上にパン粉層を施し、パン粉コーティング片を形成するよう構成された第一のパン粉塗布装置と、
前記パン粉コーティング片を受けて、当該パン粉コーティング片をバッター中に入れ、バッターコーティング片を形成するよう構成されたバッターコーティング塗布装置と、
前記バッターコーティング片を受けて、当該バッターコーティング片の上にパン粉層を施し、多重コーティング片を形成するよう構成された第二のパン粉塗布装置と、
前記多重コーティング片を受けて、当該多重コーティング片を熱い油中に入れ、熱いフライコーティング片を形成するよう構成されたフライ装置と、
前記熱いフライコーティング片を受けて、当該熱いフライコーティング片を極低温で凍結するよう構成された極低温凍結装置と、を含む
ことを特徴とする装置。」
に訂正する。

(12) 訂正事項12
明細書の段落【0010】、【0011】、【0013】、【0021】、【0064】、【0076】、【0106】、【0107】に「低温…」と記載されているのを「極低温…」に訂正し、明細書の段落【0011】に「低温で…」と記載されているのを「極低温で…」に訂正する。
具体的には、段落【0010】中の「低温凍結によって」を「極低温凍結によって」に、段落【0011】中の「低温で凍結するよう」を「極低温で凍結するよう」に、段落【0011】中の「低温凍結装置」を「極低温凍結装置」に、段落【0013】中の「低温凍結によって」を「極低温凍結によって」に、段落【0021】中の「本方法でのフライコーティング片の低温凍結は」を「本方法でのフライコーティング片の極低温凍結は」に、段落【0064】中の「低温凍結装置」を「極低温凍結装置」に、段落【0076】中の「低温凍結装置」を「極低温凍結装置」に、段落【0106】中の「低温凍結装置」を「極低温凍結装置」に、段落【0107】中の「低温凍結装置」を「極低温凍結装置」に、それぞれ訂正する。

(13) 訂正事項13
明細書の段落【0076】に「-30℃?35℃以下」と記載されているのを、「-30℃?-35℃以下」に訂正する。

(14) 訂正事項14
明細書の段落【0081】に「ボウルチョッパーを2?3分にわたって稼働させた」と記載されているのを、「ボウルチョッパーを2?3分にわたって稼働させた」に訂正する。

2 訂正の適否
(1) 訂正事項1について
ア 訂正の目的について
(ア) 訂正事項1は、訂正前の請求項1の「バッター」について、
「ただし、冷凍フライ類に用いるバッター液であって、食用油脂と、水と、2000Gの条件下における遠心法による保水量が100g/100g以上となる保水性をを有する食用保水性物質と、ロスマイルス法により25℃の条件下における0.1重量%含有水溶液として測定した際の起泡力が50mm以上を示す起泡剤と、乳化安定剤とを含むエマルジョンからなることを特徴とするバッター液を除く」との限定を付すことで、特定の組成のバッターを除くものであって、特許請求の範囲を減縮するものである。
(イ) さらに、訂正事項1は、訂正前の請求項1の「前記衣付片を、100秒以上、150℃以上の温度を有する熱い油に接触させて揚げ、70℃を超える中心温度を有するフライコーティング片を生成する工程」について、「フライ装置」で行うことを特定し、また、訂正前の請求項1の「前記フライコーティング片を凍結装置中に導入し、前記フライコーティング片を凍結する工程」における「凍結装置」について、「極低温凍結装置」であることを特定し、さらに、訂正前の請求項1の「前記フライコーティング片を凍結装置中に導入し、前記フライコーティング片を凍結する工程」が「凍結装置中に導入される際に、前記フライコーティング片の中心温度が50℃以上であり、前記中心温度は、凍結によって-15℃以下に下げられる」ことについて、「前記フライコーティング片」を「極低温凍結装置中に導入される際に、前記フライコーティング片の中心温度が70℃以上であ」るように、「前記フライ装置から出されてから2分未満に極低温凍結装置中に導入し」、「前記中心温度」が「極低温凍結によって-30℃以下に下げられる」ことを特定するものであって、特許請求の範囲を減縮するものである。
(ウ) また、訂正事項1は、訂正前の請求項1の「低温凍結」という語について、特許法第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の請求の範囲における「cryogenic freezing」という語に基づいて、「極低温凍結」という適切な訳語に訂正するものである。
(エ) そして、訂正事項1は、訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項4?12についても、同様に特許請求の範囲を減縮し、また、誤訳を訂正するものである。
(オ) よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第2号に規定する特許請求の範囲の減縮及び誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項1は、訂正前の請求項1の「バッター」について特定の組成のものを除くように減縮し、かつ、訂正前の請求項1の「フライコーティング片を生成する工程」及び「フライコーティング片を凍結する工程」について減縮し、また、誤訳を訂正するものであるところ、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項4?12についてもカテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。
よって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載の「バッター」から、特定の組成のバッターを、いわゆる「除くクレーム」により除くものであって、新たな技術的事項を導入するものではないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
また、訂正事項1は、願書に添付した明細書の「前記第二のパン粉塗布装置の下流に位置し、加熱フライコーティング片を形成するために前記多重コーティング片を熱い油中に入れるよう構成されたフライ装置」(【0064】)という記載、「本方法でのフライコーティング片の低温凍結は、好適には、上記のフライ片を液体ガスか、気化した液体ガス、より望ましくは凍結剤、特に液体窒素に接触させることを含む。」(【0021】)という記載、「前記フライ装置の下流に位置し、前記加熱フライコーティング片を受けて急速に凍結するよう構成された低温凍結装置」(【0064】)という記載、「フライに続いて、加熱フライ製品は、そのまま即刻、30分以内の時間でその中心温度が最大で-25℃以下、通常は-30℃?35℃以下まで低下させられるように、コンベアを用いて低温凍結装置へと入れられる。」(【0076】)という記載、及び、「特に好適な態様においては、フライコーティング片は、凍結装置に導入される際、65℃を超える、望ましくは70℃を超える中心温度を有する。」(【0017】)という記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるし、これら【0021】、【0064】、【0076】、【0106】中の「低温凍結」、「低温凍結装置」という語は、適切な訳語としては「極低温凍結」、「極低温凍結装置」であること(後記「(8)訂正事項12について」参照)に基づくものであるから、国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項(同法184条の19の規定により読み替える括弧書きの規定を含む)に適合する。

(2) 訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、訂正前の請求項2の記載を削除するのみであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものには該当しないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項2は、訂正前の請求項2の記載を削除するものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。

(3) 訂正事項3について
ア 訂正の目的について
(ア) まず、訂正事項3は、訂正前は請求項1または2を引用していた形式の請求項を独立形式にあらためるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
(イ) 次に、訂正事項3は、訂正前の請求項1または2を引用する請求項3の「フライコーティング片を生成する工程」について、「フライ装置」で「熱い油中に入れて揚げ」ることを特定し、また、「前記フライコーティング片を凍結装置中に導入し、前記フライコーティング片を凍結する工程」について、「凍結装置」が「極低温凍結装置」であることを特定するとともに、「前記フライコーティング片を前記フライ装置の前記熱い油から出された後2分未満に極低温凍結装置に導入」すること、「前記フライコーティング片を液体ガスに接触させることを含む極低温凍結により凍結する」こと、及び「前記フライコーティング片の中心温度が前記液体ガスに接触させる際に70℃以上であり、前記中心温度は、前記液体ガスとの接触によって-30℃以下に下げられる」ことを特定するものであって、特許請求の範囲を減縮するものである。
(ウ) また、訂正事項3は、訂正前の請求項1または2を引用する請求項3の「低温凍結」という語について、特許法第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の請求の範囲における「cryogenic freezing」という語に基づいて、「極低温凍結」という適切な訳語に訂正するものである。
(エ) そして、訂正事項3は、訂正後の請求項3を引用する訂正後の請求項4?12についても、同様に特許請求の範囲を減縮し、また、誤訳を訂正するものである。
(オ) よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第4号に規定する、特許請求の範囲の減縮、誤記又は誤訳の訂正及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項3は、訂正前の請求項3の「フライコーティング片を生成する工程」及び「フライコーティング片を凍結装置中に導入し、フライコーティング片を凍結する工程」について減縮し、また、誤訳を訂正するものであるところ、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、訂正後の請求項3を引用する訂正後の請求項4?12についてもカテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。
よって、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項3は、願書に添付した明細書の「前記第二のパン粉塗布装置の下流に位置し、加熱フライコーティング片を形成するために前記多重コーティング片を熱い油中に入れるよう構成されたフライ装置」(【0064】)という記載、「本方法でのフライコーティング片の低温凍結は、好適には、上記のフライ片を液体ガスか、気化した液体ガス、より望ましくは凍結剤、特に液体窒素に接触させることを含む。」(【0021】)という記載、「前記フライ装置の下流に位置し、前記加熱フライコーティング片を受けて急速に凍結するよう構成された低温凍結装置」(【0064】)という記載、「フライに続いて、加熱フライ製品は、そのまま即刻、30分以内の時間でその中心温度が最大で-25℃以下、通常は-30℃?35℃以下まで低下させられるように、コンベアを用いて低温凍結装置へと入れられる。」(【0076】)という記載、「加熱油から出された際、フライ製品は、およそ180℃の外部温度と、およそ90℃の中心温度を有する。この製品は、2分未満の期間で、コンベアによって低温凍結装置に搬送された。」(【0106】)という記載、及び、「特に好適な態様においては、フライコーティング片は、凍結装置に導入される際、65℃を超える、望ましくは70℃を超える中心温度を有する。」(【0017】)という記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるし、これら【0021】、【0064】、【0076】、【0106】中の「低温凍結」、「低温凍結装置」という語が、適切な訳語としては「極低温凍結」、「極低温凍結装置」であること(後記「(8)訂正事項12について」参照)に基づくものであるから、国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項(同法184条の19の規定により読み替える括弧書きを含む)に適合する。

(4) 訂正事項4について
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項4の「請求項1から3の何れか一項に記載の方法」について、「請求項1または3に記載の方法」とし、上記訂正事項2に係る訂正により請求項2が削除されたことに伴う請求項の引用関係の整合を図るものである。
また、訂正事項4は、訂正前の請求項4の「当該片の前記中心温度が-15℃未満となるまで、凍結剤に接する」ことについて、「極低温凍結装置中で当該片の前記中心温度が-30℃以下となるまで、液体窒素に接する」こととし、中心温度の温度範囲を減縮し、凍結剤を特定するものである。
そして、訂正事項4は、訂正後の請求項4を引用する訂正後の請求項5?12についても、同様に明瞭でない記載を釈明し、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に規定する特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項4は、請求項の削除に伴う請求項の引用関係の整合を図り、請求項4の中心温度の温度範囲を減縮し、凍結剤を特定するものであるところ、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、訂正後の請求項4を引用する訂正後の請求項5?12についてもカテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。
よって、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4は、願書に添付した明細書の「フライに続いて、加熱フライ製品は、そのまま即刻、30分以内の時間でその中心温度が最大で-25℃以下、通常は-30℃?35℃以下まで低下させられるように、コンベアを用いて低温凍結装置へと入れられる。」(【0076】。なお、「35℃」は「-35℃」の明らかな誤記と認める(後記「(9)訂正事項13について」参照))という記載及び「本方法でのフライコーティング片の低温凍結は、好適には、上記のフライ片を液体ガスか、気化した液体ガス、より望ましくは凍結剤、特に液体窒素に接触させることを含む。」(【0021】)という記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるし、これら【0021】、【0076】中の「低温凍結」、「低温凍結装置」という語が、適切な訳語としては「極低温凍結」、「極低温凍結装置」であること(後記「(8)訂正事項12について」参照)に基づくものであるから、国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項(同法184条の19の規定により読み替える括弧書きの規定を含む)に適合する。

(5) 訂正事項5について
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項5の「請求項1から4の何れか一項に記載の方法」について、「請求項1及び3から4の何れか一項に記載の方法」とし、上記訂正事項2に係る訂正により請求項2が削除されたことに伴う請求項の引用関係の整合を図るものである。
また、訂正事項5は、訂正前の請求項5の「凍結装置」について、「極低温凍結装置」であることを特定するものであって、特許請求の範囲を減縮するものである。
そして、訂正事項5は、訂正後の請求項5を引用する訂正後の請求項6?12についても、同様に明瞭でない記載を釈明し、特許請求の範囲を減縮するものである。
よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に規定する特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項5は、請求項の削除に伴う請求項の引用関係の整合を図り、請求項5の凍結装置について減縮するものであるところ、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、訂正後の請求項5を引用する訂正後の請求項6?12についてもカテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。
よって、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項5は、願書に添付した明細書の「本方法でのフライコーティング片の低温凍結は、好適には、上記のフライ片を液体ガスか、気化した液体ガス、より望ましくは凍結剤、特に液体窒素に接触させることを含む」(【0021】)という記載、「フライに続いて、加熱フライ製品は、そのまま即刻、30分以内の時間でその中心温度が最大で-25℃以下、通常は-30℃?35℃以下まで低下させられるように、コンベアを用いて低温凍結装置へと入れられる。」(【0076】)という記載、「この製品は、2分未満の期間で、コンベアによって低温凍結装置に搬送された。」(【0106】)という記載、「ステージ9のフライ製品は直ちに、その中心温度を最高でも-25℃、望ましくは-30℃まで低下させるステージ10の低温凍結装置に輸送される。」(【0107】)という記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるし、これら【0021】、【0076】、【0106】、【0107】中の「低温凍結」、「低温凍結装置」という語が、適切な訳語としては「極低温凍結」、「極低温凍結装置」であること(後記「(8)訂正事項12について」参照)に基づくものであるから、国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項(同法184条の19の規定により読み替える括弧書きの規定を含む)に適合する。

(6) 訂正事項6?10について
ア 訂正の目的について
訂正事項6?10は、訂正前の請求項6、7、9、10及び11について、上記訂正事項2に係る訂正により請求項2が削除されたことに伴う請求項の引用関係の整合を図るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項6?10は、請求項の削除に伴う請求項の引用関係の整合を図るものであるところ、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
よって、訂正事項6?10は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記アの理由から明らかなように、訂正事項6?10は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。

(7) 訂正事項11について
ア 訂正の目的について
訂正事項11は、訂正前の請求項12の「請求項1から11の何れか一項に記載の方法」について、「請求項1および3から11の何れか一項に記載の方法」とし、上記訂正事項2に係る訂正により請求項2が削除されたことに伴う請求項の引用関係の整合を図るものである。
また、訂正事項11は、訂正前の請求項12の「低温」及び「低温凍結装置」について、特許法第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の請求の範囲における「cryogenically」、「cryogenic freezer」という語に基づいて、「極低温」、「極低温凍結装置」という適切な訳語に訂正するものである。
よって、訂正事項11は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号及び第3号に規定する誤記又は誤訳の訂正及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項11は、請求項の削除に伴う請求項の引用関係の整合を図り、誤訳を訂正するものであるところ、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
よって、訂正事項11は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項11は、願書に添付した明細書の「本方法でのフライコーティング片の低温凍結は、好適には、上記のフライ片を液体ガスか、気化した液体ガス、より望ましくは凍結剤、特に液体窒素に接触させることを含む」(【0021】)という記載、「フライに続いて、加熱フライ製品は、そのまま即刻、30分以内の時間でその中心温度が最大で-25℃以下、通常は-30℃?35℃以下まで低下させられるように、コンベアを用いて低温凍結装置へと入れられる。」(【0076】)という記載、「この製品は、2分未満の期間で、コンベアによって低温凍結装置に搬送された。」(【0106】)という記載、「ステージ9のフライ製品は直ちに、その中心温度を最高でも-25℃、望ましくは-30℃まで低下させるステージ10の低温凍結装置に輸送される。」(【0107】)という記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるし、これら【0021】、【0076】、【0106】、【0107】中の「低温凍結」、「低温凍結装置」という語が、適切な訳語としては「極低温凍結」、「極低温凍結装置」であること(後記「(8)訂正事項12について」参照)に基づくものであるから、国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
よって、訂正事項11は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項(同法184条の19の規定により読み替える括弧書きの規定を含む)に適合する。

(8) 訂正事項12について
ア 訂正の目的について
訂正事項12は、訂正前の明細書の【0010】、【0011】、【0013】、【0021】、【0064】、【0076】、【0106】、【0107】中の「低温」及び「低温で」という記載について、特許法第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の請求の範囲における「cryogenic」、「cryogenically」という語に基づいて、それぞれ「極低温」、「極低温で」という適切な訳語に訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項12は、明細書中の誤訳を訂正するものであるところ、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
よって、訂正事項12は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項12は、「極低温」及び「極低温で」という記載が特許法第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の請求の範囲における「cryogenic」、「cryogenically」という語の適切な訳語であることを踏まえれば、国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
よって、訂正事項12は、特許法184条の19の規定により読み替える同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項括弧書きの規定に適合する。

(9) 訂正事項13について
ア 訂正の目的について
訂正事項13について、訂正前の明細書の「30分以内の時間でその中心温度が最大で-25℃以下、通常は-30℃?35℃以下まで低下させられるように」(【0076】)という記載中の「-30℃?35℃以下まで」という記載は、その直前「最大で-25℃以下」という記載と明らかに矛盾した記載であり、また、特許法第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の明細書の「the core temperature of the fried products is reduced to a maximum of -25℃, usually -30℃ to -35℃ or lower during a period of 30 minutes or less.」という記載からみると、「-30℃?-35℃以下まで」の明らかな誤訳である。
よって、訂正事項13は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アから明らかなように、訂正事項13は、明細書中の誤訳を訂正するものであるところ、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
よって、訂正事項13は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項13は、特許法第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の明細書に基づいて明らかな誤記を訂正するものであるから、特許法184条の19の規定により読み替える同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項括弧書きの規定に適合する。

(10) 訂正事項14について
ア 訂正の目的について
訂正事項14について、訂正前の明細書の「ボウルチョッパーを2?3分にわたって稼働させた」(【0081】)という記載中の「2?3分」は、日本語として意味を成しておらず、また、特許法第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の明細書の「The bowl chopper was then run for two to three minutes」という記載からみると、「2?3分」の明らかな誤記又は誤訳である。
よって、訂正事項14は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アから明らかなように、訂正事項14は、明細書中の誤記又は誤訳を訂正するものであるところ、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
よって、訂正事項14は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項14は、特許法第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の明細書に基づいて明らかな誤記又は誤訳を訂正するものであるから、特許法184条の19の規定により読み替える同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項括弧書きの規定に適合する。

(11) 一群の請求項、及び、願書に添付した明細書の訂正に係る請求項について
訂正前の請求項1?12について、請求項2?12はそれぞれ請求項1を直接又は間接に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1?12は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
また、訂正事項12?14は、当該一群の請求項を対象とするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項に適合する。

3 まとめ
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号ないし第4号に掲げる事項を目的とし、同条第4項並びに同条第9項の規定によって準用する第126条第4項、第5項(同法184条の19の規定により読み替える括弧書きの規定を含む)及び第6項に適合するので、訂正後の請求項〔1?12〕について訂正を認める。

第3 本件特許発明
上記のとおり本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1、3?12に係る発明(以下「本件発明1、3?12」という。これらをまとめて「本件発明」ということもある。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、3?12に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

【請求項1】
マイクロ波利用可能な冷凍衣付食品の製造方法であって、
前記方法は、
固形又は固化した基材片を準備する工程と、
前記片を水性プレコーティング液でコーティングし、プレコーティング片を形成する工程と、
前記プレコーティング片に結合用パン粉のコーティングを施し、パン粉コーティング片を形成する工程と、
前記パン粉コーティング片にバッター(ただし、冷凍フライ類に用いるバッター液であって、食用油脂と、水と、2000Gの条件下における遠心法による保水量が100g/100g以上となる保水性を有する食用保水性物質と、ロスマイルス法により25℃の条件下における0.1重量%含有水溶液として測定した際の起泡力が50mm以上を示す起泡剤と、乳化安定剤とを含むエマルジョンからなることを特徴とするバッター液を除く)を施し、バッターコーティング片を形成する工程と、
前記バッターコーティング片に被覆用パン粉のコーティングを施し、衣付片を形成する工程と、
前記衣付片を、フライ装置で、100秒以上、150℃以上の温度を有する熱い油に接触させて揚げ、70℃を超える中心温度を有するフライコーティング片を生成する工程と、
前記フライコーティング片を、前記フライ装置から出されてから2分未満に極低温凍結装置中に導入し、前記フライコーティング片を凍結する工程と、を含み、
前記凍結する工程は、極低温凍結装置中に導入される際に、前記フライコーテイング片の中心温度が70℃以上であり、前記中心温度は、極低温凍結によって-30℃以下に下げられる
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
マイクロ波利用可能な冷凍衣付食品の製造方法であって、
前記方法は、
固形又は固化した基材片を準備する工程と、
前記片を水性プレコーティング液でコーティングし、プレコーティング片を形成する工程と、
前記プレコーティング片に結合用パン粉のコーティングを施し、パン粉コーティング片を形成する工程と、
前記パン粉コーティング片にバッターを施し、バッターコーティング片を形成する工程と、
前記バッターコーティング片に被覆用パン粉のコーティングを施し、衣付片を形成する工程と、
前記衣付片を、フライ装置で、100秒以上、150℃以上の温度を有する熱い油中に入れて揚げ、70℃を超える中心温度を有するフライコーティング片を生成する工程と、
前記フライコーティング片を前記フライ装置の前記熱い油から出された後2分未満に極低温凍結装置中に導入し、前記フライコーティング片を液体ガスに接触させることを含む極低温凍結により凍結する工程と、を含み、
前記凍結する工程は、前記フライコーティング片の中心温度が前記液体ガスに接触させる際に70℃以上であり、前記中心温度は、前記液体ガスとの接触によって-30℃以下に下げられる
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1または3に記載の方法であって、
前記フライコーティング片は、極低温凍結装置中で当該片の前記中心温度が-30℃以下となるまで、液体窒素に接する
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1、3および4の何れか一項に記載の方法であって、
前記フライコーティング片の前記中心温度は、極低温凍結装置に入れられるより前に25℃を超えて大きくは減少しない
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1および3から5の何れか一項に記載の方法であって、
前記水性プレコーティング液は、ブルックフィールド型粘度計を用いた3番スピンドル、60rpm、10℃での測定において、300cpの最低粘度を有する
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1および3から6の何れか一項に記載の方法であって、
前記結合用パン粉は、0.05-5重量%の添加親水コロイドを含む、粉砕穀粉生地押出物を80重量%以上含有する
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、
前記親水コロイドは、グアーガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、トラガカントガム、カラヤガム、ガティガム、キサンタンガム、及びこれらの組み合わせを含む一群から選択される
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1および3から8の何れか一項に記載の方法であって、
前記バッターは、乾燥物の重量で計算して、デンプン20?55重量%、小麦粉20?55重量%、固形卵(egg solids)3?20重量%を含有する
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1および3から9の何れか一項に記載の方法であって、
前記バッターは、前記パン粉コーティング片に施された際に、ブルックフィールド型粘度計を用いた3番スピンドル、60rpmでの測定において、200?1000cPの粘度を有する
ことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1および3から10の何れか一項に記載の方法であって、
前記片に施される前記水性プレコーティング液、前記バッター、及び前記パン粉の総量は、フライ後に前記フライコーティング片が、コーティングされていない固形基材片の重量を25?100%上回る重量を有する
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1および3から11の何れか一項に記載の方法を使用した、冷凍衣付食品を製造するための装置であって、
前記装置は、
固形又は固化した基材片を形成するよう構成された基材形成装置と、
前記片を受けて、当該片を粘稠の水性コーティング組成物中に入れ、プレコーティング片を生成するよう構成されたコーティング装置と、
前記プレコーティング片を受けて、当該プレコーティング片の上にパン粉層を施し、パン粉コーティング片を形成するよう構成された第一のパン粉塗布装置と、
前記パン粉コーティング片を受けて、当該パン粉コーティング片をバッター中に入れ、バッターコーティング片を形成するよう構成されたバッターコーティング塗布装置と、
前記バッターコーティング片を受けて、当該バッターコーティング片の上にパン粉層を施し、多重コーティング片を形成するよう構成された第二のパン粉塗布装置と、
前記多重コーティング片を受けて、当該多重コーティング片を熱い油中に入れ、熱いフライコーティング片を形成するよう構成されたフライ装置と、
前記熱いフライコーティング片を受けて、当該熱いフライコーティング片を極低温で凍結するよう構成された極低温凍結装置と、を含む
ことを特徴とする装置。

第4 取消理由の概要
取消理由通知に記載した取消理由の概要は、以下のとおりである。
[理由1]
本件発明1?3、5及び12は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

[理由2]
本件発明1?12は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

[理由3]
本件特許は、特許法第184条の4第1項の外国語特許出願に係る特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が、下記の点で同法第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にないから、同法第184条の18の規定により読み替える同法第113条第5号に該当する。

<刊行物>
甲第1号証:特開平7-255402号公報
甲第2号証:今井博久ほか監修,豊福肇ほか訳,食品をより安全にするための5つの鍵マニュアル 日本語版,国立保健医療科学院疫学部,平成19年3月20日,p.17-19
甲第3号証:一般社団法人日本冷凍食品協会,冷凍食品自主的取扱基準及び急速冷凍食品の加工及び取扱いに関する国際的実施規範(CAC/RCP 8-1976),平成25年12月,p.13-15
甲第4号証:特開平7-31384号公報
甲第5号証:国際公開第2010/001101号
甲第6号証:特開2008-295360号公報
甲第7号証:特開平2-16938号公報
甲第8号証:社団法人日本冷凍空調学会,食品関係者のための食品冷凍技術,社団法人冷凍空調学会,平成12年11月30日,p.149-152

理由1について
本件発明1?3、5及び12は、甲第1号証に記載された発明である。
理由2について
本件発明1?12は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証?甲第8号証に記載された事項ないしは本件優先日前周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
理由3について
本件特許の請求項1に記載した「低温凍結によって」という事項及び請求項12に記載した「低温で凍結するよう構成された」という事項は、特許法第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にないものである。

<参照文献>
甲第11号証:国際公開第2012/101025号
甲第12号証:JOHN L.ROGERSほか,QUICK-FROZEN FOODS The Commerce and Technology of Processing, Packaging and Distribution,1972年,FOOD TRADE PRESS LTD,p.121-125
甲第13号証:Kacey Culliney,CO2 or liquid nitrogen:What should bakers choose for cryogenic freezing?,[online],2013年11月6日(2014年5月12日最終更新),[平成29年2月7日検索],インターネット<URL http://www.bakeryandsnacks.com/Processing-packaging>
甲第14号証:社団法人日本冷凍空調学会冷凍空調便覧改訂委員会編集,新版 第6版 冷凍空調便覧 第II巻 機器編,社団法人日本冷凍空調学会,平成18年3月31日,p.375-379

(以下「甲第1号証」等を「甲1」等という。また、「甲第1号証に記載された発明」、「甲第2号証に記載された事項」等を、それぞれ「甲1発明」、「甲2記載事項」等という。)

第5 取消理由についての判断
1 理由3について
事案に鑑み、まず理由3について検討する。
上記第2のとおり本件訂正が認められることにより、訂正前の本件特許の請求項1の「低温凍結によって」という記載及び本件特許の請求項12の「低温で凍結するよう構成された」という記載は、それぞれ「極低温凍結によって」という記載及び「極低温で凍結するよう構成された」という記載となり、特許法第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものとなったため、理由3は、理由のないものとなった。
よって、本件発明1及び12に係る特許は、特許法第184条の18の規定により読み替える同法第113条第5号に該当せず、取り消されるべきものとすることはできない。

2 理由1について
(1) 甲1発明
甲1には、その比較例2に着目しつつ、甲1の記載全体を総合すると、以下のとおりの甲1発明が記載されている(【請求項2】、【請求項3】、【0001】、【0017】、【0022】?【0026】、【0027】、【0028】、【0032】、【0037】?【0038】、【0044】等参照)。
「 マイクロ波調理用冷凍コロッケの製造方法であって、
じゃがいもと豚挽肉とで作製した野菜コロッケの中種を、
水93重量部及び米澱粉7重量部からなるバッター液(以下「バッター液A」という。)に浸漬させて中種表面にバッター液A層を形成し、
次に、当該バッター液A層上に、ドライパン粉を付着させ、第1のブレッダー層を形成し、
続いて、水50重量部、大豆油50重量部及び2000Gの条件下における遠心法による保水量が200g/100gの食物繊維1重量部の混合液に、乳化粒子径が10μmの大豆蛋白1重量部を添加したo/w型エマルジョンに、ロスマイルス法により25℃の条件下における0.1重量%含有水溶液として測定した際の起泡力が200mmである卵白1重量部を添加混合したバッター液(以下「バッター液B」という。)を塗布し、前記第1のブレッダー層上にバッター液B層を形成し、
当該バッター液B層上に、生パン粉を付着させて第2のブレッダー層を形成して、野菜コロッケのフライ基材を調製し、
得られたフライ基材を180℃のサラダ油で油ちょう処理した後、直ちに-18℃に凍結して冷凍コロッケを調製する、
マイクロ波調理用冷凍コロッケの製造方法。」

(2) 本件発明1について
本件発明1と甲1発明を対比すると、
甲1発明の「マイクロ波調理用冷凍コロッケ」は、本件発明1の「マイクロ波利用可能な冷凍衣付食品」に相当し、
甲1発明の「じゃがいもと豚挽肉とで作製した野菜コロッケの中種」は、本件発明1の「固形又は固化した基材片」に相当し、
甲1発明の「バッター液Aに浸漬させて中種表面にバッター液A層を形成」することは、本件発明1の「前記片を水性プレコーティング液でコーティングし、プレコーティング片を形成する工程」に相当し、
甲1発明の「次に、当該バッター液A層上に、ドライパン粉を付着させ、第1のブレッダー層を形成」することは、本件発明1の「前記プレコーティング片に結合用パン粉のコーティングを施し、パン粉コーティング片を形成する工程」に相当する。
また、甲1発明の「続いて、バッター液Bを塗布し、前記第1のブレッダー層上にバッター液B層を形成」することと、本件発明1の「前記パン粉コーティング片にバッター(ただし、冷凍フライ類に用いるバッター液であって、食用油脂と、水と、2000Gの条件下における遠心法による保水量が100g/100g以上となる保水性を有する食用保水性物質と、ロスマイルス法により25℃の条件下における0.1重量%含有水溶液として測定した際の起泡力が50mm以上を示す起泡剤と、乳化安定剤とを含むエマルジョンからなることを特徴とするバッター液を除く)を施し、バッターコーティング片を形成する工程」とは、「パン粉コーティング片にバッターを施し、バッターコーティング片を形成する工程」という限りにおいて一致し、
同様に、甲1発明の「当該バッター液B層上に、生パン粉を付着させて第2のブレッダー層を形成して、野菜コロッケのフライ基材を調製」することと、本件発明1の「前記バッターコーティング片に被覆用パン粉のコーティングを施し、衣付片を形成する工程」とは、「バッターコーティング片に被覆用パン粉のコーティングを施し、衣付片を形成する工程」という限りにおいて一致する。
そして、甲1発明の「得られたフライ基材を180℃のサラダ油で油ちょう処理」することは、本件発明1の「前記衣付片を」、「150℃以上の温度を有する熱い油に接触させて揚げ」、「フライコーティング片を生成する工程」に相当し、
甲1発明の「凍結して冷凍コロッケを調製する」ことは、本件発明1の「前記フライコーティング片を凍結する工程」に相当する。

よって、本件発明1と甲1発明とは、
「 マイクロ波利用可能な冷凍衣付食品の製造方法であって、
前記方法は、
固形又は固化した基材片を準備する工程と、
前記片を水性プレコーティング液でコーティングし、プレコーティング片を形成する工程と、
前記プレコーティング片に結合用パン粉のコーティングを施し、パン粉コーティング片を形成する工程と、
前記パン粉コーティング片にバッターを施し、バッターコーティング片を形成する工程と、
前記バッターコーティング片に被覆用パン粉のコーティングを施し、衣付片を形成する工程と、
前記衣付片を、150℃以上の温度を有する熱い油に接触させて揚げ、フライコーティング片を生成する工程と、
前記フライコーティング片を凍結する工程と、を含む、
方法。」
である点で一致し、以下の点において相違する。

(相違点1-1)
バッターについて、本件発明1は、「冷凍フライ類に用いるバッター液であって、食用油脂と、水と、2000Gの条件下における遠心法による保水量が100g/100g以上となる保水性を有する食用保水性物質と、ロスマイルス法により25℃の条件下における0.1重量%含有水溶液として測定した際の起泡力が50mm以上を示す起泡剤と、乳化安定剤とを含むエマルジョンからなることを特徴とするバッター液」を除くものであるのに対して、甲1発明は、「バッター液B」(水50重量部、大豆油50重量部及び2000Gの条件下における遠心法による保水量が200g/100gの食物繊維1重量部の混合液に、乳化粒子径が10μmの大豆蛋白1重量部を添加したo/w型エマルジョンに、ロスマイルス法により25℃の条件下における0.1重量%含有水溶液として測定した際の起泡力が200mmである卵白1重量部を添加混合したバッター液)、すなわち、本件発明1において除くとされたバッターに該当するものである点。

(相違点1-2)
フライコーティング片を生成する工程について、本件発明1は、フライ装置で、100秒以上揚げ、70℃を超える中心温度を有するフライコーティング片としているのに対して、甲1発明は、どのような装置を用いているのかは明らかでなく、また、油ちょう処理の時間及び油ちょう処理後のフライ基材の中心温度についても明らかでない点。

(相違点1-3)
フライコーティング片を凍結する工程について、本件発明1は、前記フライコーティング片を、前記フライ装置から出されてから2分未満に極低温凍結装置中に導入し、極低温凍結装置中に導入される際に、前記フライコーテイング片の中心温度が70℃以上であるのに対して、甲1発明は、得られたフライ基材を180℃のサラダ油で油ちょう処理した後、直ちに凍結して冷凍コロッケを調製するものの、凍結して冷凍コロッケを調製するのをどのような装置を用いているのかは明らかでなく、また、油ちょうされたフライ基材の中心温度が、当該フライ基材を装置中に導入する際に何度であるかは明らかでない点。

(相違点1-4)
フライコーティング片が凍結によって下げられる温度について、本件発明1は、フライコーティング片の中心温度が、極低温凍結によって-30℃以下に下げられるのに対して、甲1発明は、-18℃に凍結して冷凍コロッケを調製するものである点。

そうすると、本件発明1は、甲1発明とは、少なくとも上記相違点1-1及び相違点1-4において実質的に相違しているといえるから、本件発明1は、甲1発明ではない。

(3) 本件発明3について
本件発明3と甲1発明を、上記(2)における本件発明1と甲1発明との対比も踏まえて対比すると、本件発明3と甲1発明とは、
「 マイクロ波利用可能な冷凍衣付食品の製造方法であって、
前記方法は、
固形又は固化した基材片を準備する工程と、
前記片を水性プレコーティング液でコーティングし、プレコーティング片を形成する工程と、
前記プレコーティング片に結合用パン粉のコーティングを施し、パン粉コーティング片を形成する工程と、
前記パン粉コーティング片にバッターを施し、バッターコーティング片を形成する工程と、
前記バッターコーティング片に被覆用パン粉のコーティングを施し、衣付片を形成する工程と、
前記衣付片を、150℃以上の温度を有する熱い油中に入れて揚げ、フライコーティング片を生成する工程と、
前記フライコーティング片を凍結する工程と、を含む、
方法。」
である点で一致し、以下の点において相違する。

(相違点3-1)
フライコーティング片を生成する工程について、本件発明3は、フライ装置で、100秒以上揚げ、70℃を超える中心温度を有するフライコーティング片としているのに対して、甲1発明は、どのような装置を用いているのかは明らかでなく、また、油ちょう処理の時間及び油ちょう処理後のフライ基材の中心温度についても明らかでない点。

(相違点3-2)
フライコーティング片を凍結する工程について、本件発明3は、前記フライコーティング片を前記フライ装置の前記熱い油から出された後2分未満に極低温凍結装置中に導入し、液体ガスに接触させることを含む極低温凍結によるものであって、前記フライコーティング片の中心温度が前記液体ガスに接触させる際に70℃以上であるのに対して、甲1発明は、得られたフライ基材を180℃のサラダ油で油ちょう処理した後、直ちに凍結して冷凍コロッケを調製するものの、凍結して冷凍コロッケを調製するのをどのような装置でどのような凍結剤をどのように適用しているのかは明らかでなく、また、油ちょうされたフライ基材の中心温度が、当該フライ基材に凍結剤を適用させる際に何度であるかは明らかでない点。

(相違点3-3)
フライコーティング片が凍結によって下げられる温度について、本件発明3は、フライコーティング片の中心温度が、前記液体ガスとの接触によって-30℃以下に下げられるのに対して、甲1発明は、-18℃に凍結して冷凍コロッケを調製するものである点。

そうすると、本件発明3は、甲1発明とは、少なくとも上記相違点3-2及び相違点3-3において実質的に相違しているといえるから、本件発明3は、甲1発明ではない。

(4) 本件発明5及び12について
本件発明5及び12は、本件発明1又は3の発明特定事項をすべて含むものであるところ、上記(2)及び(3)のとおり、本件発明1及び本件発明3はいずれも甲1発明ではないから、本件発明5及び12も甲1発明ではない。

(5) まとめ
以上のとおり、本件発明1、3、5及び12は、甲1発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当しない。
したがって、本件発明1、3、5及び12に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消されるべきものとすることはできない。

3 理由2について
(1) 本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点
本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点は、上記2(2)に示したとおりである。

イ 相違点についての判断
(ア) 相違点1-1について
上記相違点1-1に示したとおり、本件発明1のバッターは、甲1発明の「バッター液B」を除くものである。一方、甲1発明については、甲1の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載を参照すると、冷凍フライ類に用いるバッター液として上記「バッター液B」を用いることが、甲1発明の課題解決に必要な構成であることが理解される。
よって、甲1に接した当業者にとって、甲4?8及び甲16(特開2007-6770号公報)に「バッター液B」以外のバッター液が示されていたとしても、甲1発明について、バッター液を「バッター液B」以外のものとする動機は生じ得えないし、また、甲1発明のバッター液を「バッター液B」以外のものとすることには阻害要因があるといえる。また、甲2及び3には、バッター液に関して何らの記載も見当たらない。
よって、上記相違点1-1は、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。

(イ) 小括
そうすると、上記相違点1-2?相違点1-4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2?8記載事項ないしは本件優先日前周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2) 本件発明3について
ア 本件発明3と甲1発明の一致点及び相違点
本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点は、上記2(3)に示したとおりである。

イ 相違点についての判断
(ア) 相違点3-2について
甲2、3、7及び8は、食品ないしはフライ食品の冷凍処理についての記載が見受けられるものであるが、当該甲2、3、7及び8には、上記相違点3-2における本件発明3の「前記フライコーティング片を前記フライ装置の前記熱い油から出された後2分未満に極低温凍結装置中に導入し、液体ガスに接触させることを含む極低温凍結によるものであって、前記フライコーティング片の中心温度が前記液体ガスに接触させる際に70℃以上である」点、特に、中心温度が70℃以上のフライコーティング片を液体ガスと接触させて極低温凍結する点は記載されていない。また、甲4?6には、食品ないしはフライ食品の冷凍処理に関して何らの記載も見当たらない。
よって、上記相違点3-2は、当業者が容易に想到し得るものではない。

(イ) なお念のため、申立人の平成30年3月27日付け意見書に添付された甲17(特開2003-102401号公報)について検討する。
甲17発明は、甲17の記載から、
「油チョウ後のフライ類食品の表層部分を、直ちに20cm/hを超える凍結界面前進速度で超急速凍結させた後、凍結条件を変化させて中具部分を0.1?20cm/hの凍結界面前進速度で凍結させることを特徴とする、冷凍フライ類食品の製造方法。」(【請求項1】)であって、
「前記油チョウ後のフライ類食品の表層部分の超急速凍結が液体窒素浸漬法、液体二酸化炭素浸漬法、液体窒素噴霧法及び液体二酸化炭素噴霧法から選ばれたいずれかの方法で行われる」(【請求項3】)ものと把握できる。
そして、甲17発明における「油チョウ後直ちに」とは、油チョウ済みフライ類食品の中具部分の水分が食品の表層部分に移行しない時間を指し、通常、フライ類食品を油チョウした直後例えば5分以内に行うことが好ましい(【0026】)との定義が示されている。
しかしながら、
a 甲17の
「凍結界面前進速度を上述したように2段階とすることにより、食品全体を一度に超急速凍結させた場合に発生する可能性がある身割れを完全に防止することが可能となるし、また、表層部分のみを超急速凍結することで、食品全体を同じ超急速凍結する場合に比べて液体窒素や液体二酸化炭素の使用量を抑えることができ、コストを低減することが可能となる。」(【0030】)という記載、
「本発明の方法におけるフライ類食品の中具部分の凍結方法は、0.1?20cm/h、より好ましくは1?15cm/hの凍結界面前進速度で凍結させることができる凍結手段であれば、特に制限はない。しかし、表層部分の急速凍結手段として有効な液体窒素浸漬法、液体二酸化炭素浸漬法、液体窒素噴霧法及び液体二酸化炭素噴霧法などの手段を採用すると、上記20cm/h以下の凍結界面前進速度を得ることは困難であり、かつコスト的にも好ましくない。中具部分の冷凍手段としては機械式エアブラスト凍結法を採用することがコスト的にも好ましい。」(【0033】)という記載、
「本発明の油チョウ済みフライ類食品における「表層部分」とは、パン粉及びバッターなどの衣形成材料からなることを意味する。また、「中具部分」は、コロッケのようなフライ類食品に使用されている具材部分を意味している。」(【0031】)という記載、
を踏まえると、甲17発明は、フライ類食品の「衣形成材」に相当する「表層部分」のみ超急速凍結させ、具材部分の「中具部分」は「表層部分」と同様の超急速凍結はさせないものであること、すなわち、本件発明3のように、「フライコーティング片を液体ガスに接触させることを含む極低温凍結」によって、「前記フライコーティング片の中心温度が前記液体ガスに接触させる際に70℃以上であり、前記中心温度は、前記液体ガスとの接触によって-30℃以下に下げられる」ものではない。
b また、甲17発明の「油チョウ後直ちに」とは、時間間隔としては「通常、フライ類食品を油チョウした直後例えば5分以内」であるが、「油チョウ済みフライ類食品の中具部分の水分が食品の表層部分に移行しない時間を指」すものであって、本件発明3のように、「フライコーティング片の中心温度が前記液体ガスに接触させる際に70℃以上であ」るようにするための時間間隔であるとはいえない。すなわち、甲17発明には、油チョウ済みフライ類食品の中具中心部の温度を凍結処理の際に70℃以上とする技術思想はない。
このことは、甲17に
「仕上がり20g(中具12g、バッター4g、パン粉4g)の未加熱のポテトコロッケを、170?180℃のサラダ油にてフライ処理した。この油チョウ済みポテトコロッケを、直ちに-30℃にてエアブラスト凍結した群、直ちに別々に液体窒素に10秒間、30秒間、60秒間、それぞれ浸漬し、その後、それぞれの群を-30℃でエアブラスト凍結した群、直ちに液体窒素に2分30秒浸漬凍結した群、として凍結した。それぞれの群についての凍結条件における中具表面及び中具中心の凍結曲線を図2及び図3に、また、表層部分及び中具部分の凍結界面前進速度を表1に示した。」(【0036】)
という実施例等が示されているところ、170?180℃のサラダ油にてフライ処理した油チョウ済みポテトコロッケを直ちに凍結処理をおこなっているものについて、【図3】を参照すると、凍結処理開始時点(経過時間0分)における当該コロッケの中具中心部の温度はいずれも70℃を下回る温度となっていることからも理解される。
c なお、甲17には、「油チョウ済みポテトコロッケを、直ちに液体窒素に2分30秒浸漬凍結した群(液体窒素で全体凍結したもの)」(【0036】)が比較例として示されており、凍結処理の全行程を液体ガスに接触させて行う点において本件発明3に類するものであるが、上述の【図3】のとおり、当該比較例も凍結処理開始時点(経過時間0分)における中具中心部の温度が70℃を下回る温度である点で本件発明3と相違するのはもちろん、当該比較例は、【表2】、【0040】の官能評価結果に示されるように評価の低いものであるところ、甲17に接した当業者であれば、そのような評価の劣る凍結処理を採用しようとする動機は生じ得ない。
d 以上のとおりであるから、甲17の存在は、上記相違点3-2についての上記判断を左右するものではない。

(ウ) 小括
そうすると、上記相違点3-1及び相違点3-3について検討するまでもなく、本件発明3は、甲1発明及び甲2?8記載事項ないしは本件優先日前周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3) 本件発明4?12について
本件発明4?12は、本件発明1又は3の発明特定事項をすべて含むものであるところ、上記(1)及び(2)のとおり、本件発明1及び本件発明3はいずれも甲1発明及び甲2?8記載事項ないしは本件優先日前周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件発明4?12も甲1発明及び甲2?8記載事項ないしは本件優先日前周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4) まとめ
以上のとおり、本件発明1、3?12は、甲1発明及び甲2?8記載事項ないしは本件優先日前周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとすることはできない。
したがって、本件発明1、3?12に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消されるべきものとすることはできない。

第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要
[理由4] 特許法第36条第4項第1号違反(特許異議申立書54頁末行?55頁下から7行)
飲食品の食感は、飲食品の形態・状態や様々な含有成分の複合的な影響により形成されることが通常であることから、当業者といえども、実験結果なしに、飲食品の食感に関する作用効果を予測することは一般的に困難であるところ、本件特許明細書には、電子レンジで再加熱または調理された冷凍衣付食品について、衣の歯応え、食材のジューシーさを確認した実験例は何ら示されていない。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件発明が「優れた食感、特に歯応えの良い衣とジューシーな食材とが組み合わされたインスタント食品を製造するための、電子レンジでの再加熱又は調理が可能な冷凍衣付食品の製造方法を提供する」という発明の課題に有効であることが、当業者が理解できるように記載されているとは認められない。

[理由5] 特許法第36条第6項第1号違反(特許異議申立書55頁下から6行?56頁下から5行)
本件特許の特許請求の範囲の記載は、フライコーティング片を油ちょう後凍結するまでどの程度の時間間隔を置くかを規定しておらず、水分蒸発に起因して衣の食感が大きく低下した態様も包含する、本件発明の作用効果を奏しない態様を含み得るものとなっているから、本件特許の特許請求の範囲の記載まで、本件特許明細書の記載を拡張ないし一般化することはできない。
よって、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。

2 上記特許異議申立理由についての判断
(1) 理由4について
本件発明1及び3は、製造方法の発明であるところ、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、その方法が使用できるように、用いる食材や製造装置の説明、各製造工程の説明が記載されており、当業者が本件発明1及び3の実施をすることができる程度に明確かつ十分な記載がされているものといえる。
そして、本件発明1及び3について、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「優れた食感、特に歯応えの良い衣とジューシーな食材とが組み合わされたインスタント食品を製造するための、電子レンジでの再加熱又は調理が可能な冷凍衣付食品の製造方法を提供する」という本件発明の課題に有効であることを示す具体的な実施例は示されていないものの、本件特許明細書中の、
「水分の多い中心部を包んでいながらも歯応えが良い衣を有する、電子レンジでの加熱が可能なインスタント加熱製品を得ることができる冷凍衣付食品の製造のためには、凍結条件が重要であることが知られている。さらに具体的には、フライコーティング片の中心温度は、フライ後急速に、すなわち、フライ片の中心温度がまだ高いうちに下げられなければならないことが見出されている。理論に束縛されることを望むものではないが、フライ片の急速な凍結は、製品の構造的完全性を高め、氷の結晶の形成を減少させ、製品内で形成されるどのような氷の粒子の大きさをも縮小させるだろうと考えられる。もし、バッターとパン粉が施された製品中に氷の結晶が存在すれば、それらは中心部においてホットスポットとなり、電子レンジ内で過熱状態となる可能性がある。また、保管時における氷の結晶の移動は、加熱中に表面のコーティング付近に過度の水分の発散をもたらしうる、局在する氷の増大につながる可能性もある。」(【0015】)という記載、
「凍結中に形成される氷の結晶を最小にするためには、フライ片は、フライ後にできる限り急速に、凍結装置内に導入されなければならない。従って、フライコーティング片の中心温度は、フライ片が凍結装置に導入されるより前に、特に、液体ガスに接触する前に、望ましくは25℃を超えて、より望ましくは20℃を超えて、最も望ましくは15℃を超えて大きくは減少しないだろう。」【0016】という記載、
「特に好適な態様においては、フライコーティング片は、凍結装置に導入される際、65℃を超える、望ましくは70℃を超える中心温度を有する。」(【0017】)という記載、
を参酌することにより、具体的な実施例の例示がなくとも、本件発明の課題とその解決手段との関係を当業者は理解することができる。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1及び3の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないとまではいえない。
本件発明1又は3の発明特定事項をすべて含む本件発明4?12についても同様である。

(2) 理由5について
本件特許明細書の発明の詳細な説明の上記【0015】、【0016】及び【0017】の記載によって、本件発明の課題とその解決手段との関係を当業者は理解することができるところ、上記第2のとおり本件訂正が認められることにより、本件発明1は、「前記フライコーティング片を、前記フライ装置から出されてから2分未満に極低温凍結装置中に導入し」、「極低温凍結装置中に導入される際に、前記フライコーテイング片の中心温度が70℃以上であ」ることが特定され、同様に、本件発明3は、「前記フライコーティング片を前記フライ装置の前記熱い油から出された後2分未満に極低温凍結装置中に導入し」、「前記フライコーティング片の中心温度が前記液体ガスに接触させる際に70℃以上であ」ることが特定されることにより、いずれも発明の詳細な説明の上記記載により当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものといえる。
本件発明1又は3の発明特定事項をすべて含む本件発明4?12についても同様である。
よって、本件特許の特許請求の範囲の請求項1、3?12の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものでないとすることはできない。

3 小括
以上のとおり、本件発明1、3?12についての発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえず、また、本件特許の請求項1、3?12の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえない。
したがって、本件発明1、3?12に係る特許は、特許法第113条第4号に該当せず、取り消されるべきものとすることはできない。

第7 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1、3?12に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1、3?12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、上記第2のとおり、本件訂正が認められることにより、請求項2は削除され、本件特許の請求項2についての本件特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなった。
よって、本件特許の請求項2についての本件特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであることから、特許法第120条の8で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
マイクロ波利用可能な衣付食品の製造
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジ、又は本明細書において電子レンジと総称されるマイクロ波複合型オーブン(オーブンレンジ)を使用し、調理又は再加熱が可能な衣付食品の製造方法に関する。また、本発明は、方法を実施するための装置、及び、方法又は装置の使用により製造される食品に関する。本発明は、特に限定されないパン粉コーティング製品、特にはチキンナゲットや肉、魚、鶏肉、野菜、果物、きのこ類や乳製品等の基材(substrate)が、バッター(batter)、及び一つ又はそれ以上のパン粉層によりコーティングされた、電子レンジの使用により調理、又は、凍った状態からの再加熱が可能な製品に関する。
【背景技術】
【0002】
衣付製品の調理及び再加熱に電子レンジを使用することは、マイクロ波放射により内側から加熱される基材が発生する蒸気で、バッター及びパン粉コーティングがダメージを受けるという問題がある。よって、従来の衣付製品は、電子レンジを利用することに適さなかった。
【0003】
多くの食材、例えば、天然の鶏肉、魚、赤身肉、野菜や加工食品は、大きな割合の水を含んでいる。大抵の生鮮食品は、60%を超える水を含む。こうした水のいくらかは結合、即ち構成細胞と固くつながっている。残りの水は移動性で利用可能であり、凍らせることができる。-1℃から-30℃、又はそれ以下の中心温度で凍らせた食品を電子レンジ内に置いてマイクロ波を照射すると、マイクロ波のエネルギーは主として利用可能な凍結水によって吸収される。従来の調理熱は外部から加えられるが、マイクロ波による加熱調理においては、調理熱は内部から発生するのである。この加熱プロセスは非常に迅速に起こり、利用可能な水は蒸気に変換される。加熱後に電子レンジ内に食品を放置したままにすると、食品から水分が放出され続けることがある。このことは例えば、凍らせた魚肉を加熱したとき、特に顕著である。このような水の損失は、どのような食品のコーティング、特に、バッター、ペストリー生地やパン粉コーティングをも湿らせ、かつ不快なものとする原因となる。加えて、基材の中心部は、水の損失のせいで乾燥してしまう可能性がある。
【0004】
国際公開第93/03634号は、マイクロ波照射により再加熱可能な衣付食品の製造方法について記載している。この方法は、プレダスト(predust)を食材に施すこと、プレダストを施した食材にバッターを施すこと、バッターを施した食材を揚げること、そして、揚げた食品を冷却することからなる。
【0005】
国際公開第95/30344号は、プレダストを施す工程、バッターを施す工程、パン粉を施す工程、素早く揚げる工程、凍結する工程、そしてパッケージングする工程からなる、マイクロ波を利用可能な衣付食品の製造工程について記載している。
【0006】
国際公開第97/03572号は、プレダストを施す工程、バッターを施す工程、パン粉を施す工程、素早く揚げる工程、凍結する工程、そしてパッケージングする工程からなる、チキンナゲットのようなマイクロ波を利用可能な衣付食品の製造工程について記載している。
【0007】
国際公開第2010/001101号は、以下の工程からなるパン粉衣付食品の製造方法を記載している。即ち、小麦粉、重炭酸ナトリウム、任意の添加物と水からなる水性混合物を形成する工程、この混合物を押出機中に加える工程、水性ゲル化剤を押出機へと加える工程、得られた混合物を、膨張多孔生成物を形成するために100℃を超える温度で押し出す工程、生成物を乾燥させ、得られた乾燥生成物を、製粉してパン粉にする工程である。このようにして得られたパン粉は、特に、電子レンジを使用して凍った状態から調理又は再加熱される衣付食品の製造に使用されるのに適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第93/03634号
【特許文献2】国際公開第95/30344号
【特許文献3】国際公開第97/03572号
【特許文献4】国際公開第2010/001101号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明者らは、優れた食感、特に歯応えの良い衣とジューシーな食材とが組み合わされたインスタント食品を製造するための、電子レンジでの再加熱又は調理が可能な冷凍衣付食品の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第一の態様は、電子レンジにおいて再加熱又は調理が可能な冷凍衣付食品の製造のための方法の提供あって、該方法は、
固形又は固化した基材片を準備する工程と、
前記片を水性プレコーティング液でコーティングし、プレコーティング片を形成する工程と、
前記プレコーティング片に結合用パン粉のコーティングを施し、パン粉コーティング片を形成する工程と、
前記パン粉コーティング片にバッターを施し、バッターコーティング片を形成する工程と、
前記バッターコーティング片に被覆用パン粉のコーティングを施し、衣付片(a breaded portion)を形成する工程と、
前記衣付片を揚げ、70℃を超える中心温度を有するフライコーティング片を生成する工程と、
前記フライコーティング片を凍結装置中に導入し、前記フライコーティング片を凍結する工程と、を含み、
前記凍結する工程は、凍結装置中に導入される際に、前記フライコーティング片の中心温度が50℃以上であり、前記中心温度は、極低温凍結によって-15℃未満に下げられることを特徴とする。
【0011】
本発明の第二の態様は、前述の方法を実行するための装置の提供であって、該装置は、
固形又は固化した基材片を形成するよう構成された基材形成装置と、
前記片を受けて、当該片を粘稠の水性コーティング組成物中に入れ、プレコーティング片を生成するよう構成されたコーティング装置と、
前記プレコーティング片を受けて、当該プレコーティング片の上にパン粉層を施し、パン粉コーティング片を形成するよう構成された第一のパン粉塗布装置(applicator)と、
前記パン粉コーティング片を受けて、当該パン粉コーティング片をバッター中に入れ、バッターコーティング片を形成するよう構成されたバッターコーティング塗布装置と、
前記バッターコーティング片を受けて、当該バッターコーティング片の上にパン粉層を施し、多重コーティング片を形成するよう構成された第二のパン粉塗布装置と、
前記多重コーティング片を受けて、当該多重コーティング片を熱い油中に入れ、熱いフライコーティング片を形成するよう構成されたフライ装置と、
前記熱いフライコーティング片を受けて、当該熱いフライコーティング片を極低温で凍結するよう構成された極低温凍結装置と、を含むことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】方法の工程について示すフローチャートである。
【図2】本発明に基づく装置の側面図である。
【図3】コーティング装置の断面図である。
【図4】パン粉コーティング装置の断面図である。
【図5】フライ装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第一の実施形態は、冷凍され、マイクロ波が利用可能な衣付食品の製造方法に関するものであって、該方法は、
固形又は固化した基材片を準備する工程と、
前記片を水性プレコーティング液でコーティングし、プレコーティング片を形成する工程と、
前記プレコーティング片にパン粉のコーティングを施し、パン粉コーティングされた片を形成する工程と、
前記パン粉コーティング片にバッターを施し、バッターコーティング片を形成する工程と、
前記バッターコーティング片に被覆用パン粉のコーティングを施し、衣付片を形成する工程と、
70℃を超える中心温度を有するフライコーティング片を形成するために、150℃以上に熱した油に、前記衣付片を100秒以上浸けることにより、前記衣付片を揚げる工程と、
前記フライコーティング片を凍結装置中に置くことにより、当該フライコーティング片を凍結する工程と、を含み、
前記凍結する工程は、凍結装置中に入れられた際に中心温度が50℃以上、望ましくは60℃以上の前記フライコーティング片が、極低温凍結によって前記中心温度が-15℃未満に下げられることを特徴とする。
【0014】
本発明は、マイクロ波を利用可能な冷凍製品に関し、当該製品は、冷凍前に調理され、電子レンジまたはオーブンレンジによる再加熱が可能であり、ジューシーな中心部と歯応えの良いパン粉コーティングを満足する製品を提供するものである。なお、本発明の製品は、従来型の熱オーブンによっても再加熱できる。
【0015】
水分の多い中心部を包んでいながらも歯応えが良い衣を有する、電子レンジでの加熱が可能なインスタント加熱製品を得ることができる冷凍衣付食品の製造のためには、凍結条件が重要であることが知られている。さらに具体的には、フライコーティング片の中心温度は、フライ後急速に、すなわち、フライ片の中心温度がまだ高いうちに下げられなければならないことが見出されている。理論に束縛されることを望むものではないが、フライ片の急速な凍結は、製品の構造的完全性を高め、氷の結晶の形成を減少させ、製品内で形成されるどのような氷の粒子の大きさをも縮小させるだろうと考えられる。もし、バッターとパン粉が施された製品中に氷の結晶が存在すれば、それらは中心部においてホットスポットとなり、電子レンジ内で過熱状態となる可能性がある。また、保管時における氷の結晶の移動は、加熱中に表面のコーティング付近に過度の水分の発散をもたらしうる、局在する氷の増大につながる可能性もある。
【0016】
凍結中に形成される氷の結晶を最小にするためには、フライ片は、フライ後にできる限り急速に、凍結装置内に導入されなければならない。従って、フライコーティング片の中心温度は、フライ片が凍結装置に導入されるより前に、特に、液体ガスに接触する前に、望ましくは25℃を超えて、より望ましくは20℃を超えて、最も望ましくは15℃を超えて大きくは減少しないだろう。
【0017】
特に好適な態様においては、フライコーティング片は、凍結装置に導入される際、65℃を超える、望ましくは70℃を超える中心温度を有する。
【0018】
好適な態様において、フライ片の中心温度は、基材が凍結装置に導入される際に、規定された温度を下回ることは許されない。
【0019】
他の好適な態様においては、フライコーティング片の中心温度は、60℃から-15℃まで、非常に高い割合で減少させられる。通常この温度低下は、40分未満、より望ましくは30分未満、最も望ましくは20分未満で実現され、これは片の重さ、片の大きさ、導入時の温度、及び凍結装置を通過する片の数に依存する。
【0020】
本方法で用いられている凍結装置の使用では、フライコーティング片の中心温度は、通常-20℃未満、又は、さらに-22℃未満に減少させられる。
【0021】
本方法でのフライコーティング片の極低温凍結は、好適には、上記のフライ片を液体ガスか、気化した液体ガス、より望ましくは凍結剤、特に液体窒素に接触させることを含む。
【0022】
より好適な態様においては、フライ片は凍結剤に接触する際に、50℃以上、より望ましくは60℃以上、さらにより望ましくは65℃以上、最も望ましくは70℃以上の中心温度を有する。
【0023】
水性プレコーティング液でコーティングされた固形又は固化した基材片は、周囲温度では固体、またあるいはそれらは液体、またはペースト様である場合がある。後者の場合、例えば、基材が固形で無い場合、基材はプレコーティング液を施す前に、固形の状態とするために十分低温に冷却される。
【0024】
本発明の利点は、基材が相当量の水分を含む際に、特に真価が認められる。マイクロ波での再加熱の間に、基材中に含まれる水の一部は蒸気に変わる。本願発明者らは理論に束縛されることを望むものではないが、マイクロ波が利用可能な本製品のフライコーティングにおいては、マイクロ波での再加熱中に発生する蒸気に対して透過性があり、蒸気を殆ど吸収せず、その結果サクサクとした性質を保つと考えられる。通常、基材は15重量%以上、より望ましくは25重量%以上、最も望ましくは30重量%以上の水分を含む。この中心素材の含水量は、通常90重量%以下である。
【0025】
基材片を形成するのに用いることが可能な食材の例としては、魚、肉、鶏、貝、エビ、乳製品(例えばチーズ)、ラグー(ragu)、及びこれらの組み合わせを含む。特に好適な態様によれば、魚、肉、鶏、貝、エビとその組み合わせから選択される動物性の素材では、コーティングされていない基材片の40重量%以上、さらにより望ましくは60重量%以上、最も望ましくは80重量%以上に相当する。
【0026】
本方法は、およそ15?200gの範囲の重量を有する固体の基材片からコーティング食品を製造する際に好適に利用することができる。望ましくは、固体の基材片がおよそ10?50gの範囲、通常およそ25gの重量を有する。
【0027】
望ましくは、基材片は50mm以下、より望ましくは25mm以下、最も望ましくは15mm以下の厚さを有する。これは、通常の家庭用電子レンジにおいて利用できるパワーを用いても、2?3分の時間内に、マイクロ波照射の十分な透過(penetration)を可能にする。より厚い片では部分的に加熱される可能性があるが、必要に応じて完成するまで向きを変えるか、さらに加熱される。
【0028】
基材片は一体の片、例えば、一個のステーキ、ヒレ、又は調理又は再加熱後に個々の片に切り分けられるより大きなピースのような、一体の肉片とすることができる。あるいはこのピースは、刻まれたり粉砕されたりしたピース、例えば、より大きな片に再構成され得るナゲット又はミンチ製品からなってもよい。均一な大きさ及び重量に調整された中心を有するピースの使用が望ましい。
【0029】
固形又は固化した基材は、例えば、型打ち機を使用して金網コンベア上に、片として押出又は放出することができる。押出された片の温度は、後続の処理工程において取り扱いを容易にするため基材を固くする目的で、-6℃?6℃、望ましくは-4℃?-1℃の範囲であればよい。
【0030】
特に、基材が刻まれたり粉砕されたりしたピースからなるのであれば、それは望ましくは、例えば、浸漬、浸透、片を形成する以前に基材への注入{ちゅうにゅう}(バキュームパルス注入)によって、水性の又は粒子状の安定剤組成物を含浸している。好適な安定剤組成物の例は国際公開第97/03572号を参照することができ、その開示の内容をあらゆる目的において本明細書に援用する。少なくとも表面層を成分が浸透する程度まで、安定剤組成物は基材へと含浸し得る。安定剤の含浸領域は、基材全体にわたって、又は少なくとも基材構造の大部分に含浸が広がっている場合、有益である。含浸は、片を形成する前に、浸漬、浸透、又は基材中への注入により実現することができる。真空浸透(Vacuum permeation)は、好適に用いられる。
【0031】
パン粉粒子は乾燥基材に対し、又は相互に、基材を包み込む密着外殻を形成するよう十分に付着しないため、結合用パン粉の利用は、水性プレコーティング液の使用により容易になる。従って、プレコーティング液の使用は、水蒸気の漏出減少と、フライ中の油脂のいくらかの浸入を妨げるために、基材を包囲する完全な被覆又は外殻を提供する基材に付着可能なパン粉層という、さらなる利点を有する。
【0032】
基材片に施される水性プレコーティング液は、通常80重量%以上、望ましくは90重量%以上の水を含む。液だれを最小限に抑え、パン粉の付着を最大にするため、プレコーティング液は望ましくは粘稠であり、ブルックフィールド型粘度計を用いた、3番スピンドル、10℃、60rpmにおける測定では、300cPの最小粘度を有することができる。さらにより望ましくは、当該粘度は完全に水和した状態で、350?450cPの範囲内、最も望ましくは380?420cPの範囲内にある。
【0033】
水性プレコーティング液は、望ましくは0.1?5重量%、より望ましくは0.3?3重量%の乾燥物質を含む。
【0034】
プレコーティング層は、続いて起こるマイクロ波加熱段階中、基材から水分の損失を妨げるさらなる障壁としての機能を果たす。理論に拘束されることを望むものではないが、プレコーティング層は、中心部による油脂の取り込みを妨げる障壁として機能すると考えられ、中心部の風味の低下を回避する。本明細書で上述した、中心部の安定剤組成物への含浸は、調理又は再加熱中、中心部に最適な水分含有量を保持するのに寄与する。
【0035】
水性プレコーティング液は、水性プレコーティング液を含有する浴中に基材を浸漬することにより、又は、プレコーティング液を片に噴霧又は塗布することにより、固形又は固化した基材片へ施すことができる。望ましくは、プレコート液は、プレコート液の浴中に浸漬する、例えば、コンベアベルトを用いて片に浴を通過させることによって施される。用語「浴」は、任意の好適な容器(receptacle)、桶(trough)、又は、液体を保持するのに好適な入れ物(container)を指す。
【0036】
本方法の他の重要な特徴は、バッターを施す前に、結合パン粉層を施すことにある。このパン粉層は、水性プレコート液により基材に結合し、バッター及び任意の外側パン粉コーティングの基礎をなす安定化熱障壁を形成する。これは、長期にわたるフライ段階で水分の損失や油の浸入に対する障壁を提供することができる。このパン粉外殻はまた、フライ中の過度の局所加熱から、基材の表面を保護する役割も果たす。
【0037】
本発明の方法において用いられる結合用パン粉は、添加親水コロイドを乾燥重量において0.05?5重量%、より望ましくは0.1?3重量%含有する粉砕穀粉生地押出物であれば、特に良好な結果が得られる。添加親水コロイド無しでは、一般的にパン粉は水との混合直後に、ふやけた塊を形成する。パン粉に含まれる親水コロイドは、水と混合したときにゾルを形成する任意の親水コロイドであって良い。好適な親水コロイドは、水と接触して60秒間、温度20℃の状態にしたとき、形状を維持するパン粉を生成する。
【0038】
ここでの用語「添加親水コロイド」とは、生地押出物の穀粉成分中に天然には存在せず、添加された水性媒体の粘度を増やすことが可能な親水性ポリマーを指す。これらの親水性ポリマーは、多糖類、変性多糖類、及びタンパク質から適宜選択される。
【0039】
結合用パン粉に用いられる親水コロイドは、天然ガム、変性ガム、ゼラチン、ペクチン、アルギン酸塩、変性デンプン、寒天、カラギーナン、ファーセレラン、アラビノガラクタン、キサンタンガム、及びこれらの組み合わせから選択することができる。望ましくは、親水コロイドは、天然ガム及びそれらの組み合わせから選択される。
【0040】
粉砕穀粉生地押出物に添加親水コロイドとして使用することができる天然ゴムの例としては、グアーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、トラガカントガム、カラヤガム、ガティガム、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0041】
最も望ましくは、添加親水コロイドは、グアーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム及びこれらの組合せから選択することができる。
【0042】
本発明の方法において用いられる結合用パン粉は、通常、2mm未満の質量加重平均粒径を有する。より望ましくは、結合用パン粉は、0.1?1.5mm、さらにより望ましくは0.15?1mm、最も望ましくは0.25?0.9mmの質量加重平均粒径を有する。
【0043】
本発明の方法に従ってパン粉コーティング片に施されるバッターは、望ましくは、乾燥物の重量で計算され、デンプン20?55重量%、小麦粉20?55重量%、固形卵(egg solids)3?20重量%を含有する。好適には、本工程において用いることができるバッター成分の例は、国際公開第96/32026号に記載されている。バッターに含まれるデンプンは、小麦粉の構成要素により提供されてもよく、又は、精製されたデンプン成分、例えば高アミローススターチとして添加されていてもよい。
【0044】
通常バッターは、パン粉コーティング片に施される際のブルックフィールド型粘度計を用いた、3番スピンドル、60rpmにおける測定では、200?1000cP、さらに望ましくは300?800cP、最も望ましくは500?600cPの粘度を有する。
【0045】
バッターは、パン粉コーティング片をコンベア手段により通過させるバッター含有浴を備える装置によって、パン粉コーティング片に施されてもよい。コンベアが通過する循環バッター含有浴、例えばTempuDipper(登録商標)(CFS)のような天ぷらアプリケータは好適であるが、カーテンタイプ、例えばWetCoate(登録商標)(CFS)アプリケータ、又は、類似した仕様の他の好適な装置も利用可能である。
【0046】
有利には、本方法に用いる被覆用パン粉は、結合用パン粉よりも大きな粒径を有する。望ましくは、被覆用パン粉は、結合パン粉の質量加重平均粒径よりも50%以上大きな質量加重平均粒径のサイズを有する。
【0047】
本方法では、第1コンベアと該第1コンベアの端部の下方に位置する第2エンドレスコンベアを備え、片が第1のコンベアから第2のコンベア上の粒子の層の上に落ちるよう、細かなパン粉粒子の流れの真下を通過するパン粉コーティング装置を、好適に用いることができる。第2のコンベアは、片が、水性プレコーティング表面層に付着させるためのパン粉上へ落下し、次いで落下するパン粉粒子のカーテンによりコーティングされるように、コンベア表面に落下する細かいパン粉のカーテンを通過してもよい。この装置は、コンベア上の片の経路を横切って延びる、細かいパン粉のカーテンを提供するために、コンベアを横切って延びる出口を有するディスペンサを含んでもよい。細かいパン粉の付着を増進するためにコーティング片を圧迫するローラーが、出口側のコンベア上方に配置されてもよい。
【0048】
パン粉は、パン粉アプリケータ、例えば、CrumbMaster(登録商標)(CFS)を用いて、片に過多に施してもよい。パン粉コーティング片は、付着を増進するローラーを通過してもよい。
【0049】
本方法において片に施される水性プレコーティング液、バッター、及びパン粉の総量は、フライ後にフライ片がコーティングされていない固形基材片の重量を、25?100%、望ましくは30?60%上回る重さを有するように、好適に選択される。
【0050】
共になされる一以上のパン粉コーティングは、通常フライ片の5?80重量%、望ましくは15?50重量%に相当する。
【0051】
衣付片は、基材とコーティング層を調理するために揚げられる。調理の時間は、冷凍製品が万が一、電子レンジにより凍った状態から不十分に再加熱された場合にも、いかなる健康上のリスクをも防ぐ、基材の完全な調理に十分であることが望ましい。基材は、水分の損失を生じるマイクロ波エネルギーによって内部から加熱されるため、電子レンジによる比較的長時間の再加熱は望ましくない。これは乾燥した中心部と、ダメージを受けたコーティング層の原因となる可能性がある。
【0052】
下地バッター層の露出が全くない均一な外側のパン粉コーティングは、長時間に亘るフライ後、むらのない褐色の外観を提供するためには有利である。これは、従来の熱調理に通例使用される衣付製品における、より短いフライ時間と比較することができる。
【0053】
チキンナゲットのような従来の熱調理される衣付製品では、例えば90秒以下の短時間のフライに続いて、熱風オーブンによるさらなる調理時間がかかる。これは、基材の中心部が、再加熱の間に凍結した状態から完全には調理されない可能性があるため、電子レンジ調理できる製品としては、不都合である。電子レンジによる従来品の長時間加熱は、水分の過度な損失や、それに伴うコーティング層へのダメージにつながる。
【0054】
フライする工程の間、必要に応じて1又は複数の追加パン粉層でコーティングされた後の衣付片は、望ましくは120?300秒、より望ましくは130?240秒、最も望ましくは140?180秒、熱い油に接触させる。
【0055】
衣付片のフライに用いられるこの熱い油は、望ましくは160?200℃、より望ましくは170?195℃、最も望ましく175?190℃の温度を有する。
【0056】
この油に好ましく用いられるのは、植物油である。用語「植物油」とは、非変性植物油、水素添加植物油、植物油のフラクション(例えば、オレイン又はステアリンフラクション)、エステル交換植物油、そしてこれらの組み合わせを含む。純粋な菜種油は好適である。
【0057】
フライ片の中心温度は、望ましくは72℃より大きく、さらに望ましくは74℃よりも大きい。
【0058】
本食品のフライコーティング(全てのコーティング層を含む)は、用いられるパン粉のサイズに依存し、望ましくは8mm、より望ましくは5mm、最も望ましくは3mmの平均厚さを有する。
【0059】
本発明に係るフライは、中心部からの水分を損失することなく、所望の硬さのコーティングを施せない可能性がある後者のように、手短なフライに続いて熱風調理をするのに比べれば有利である。
【0060】
衣付片は、例えば、コンベアベルト手段によって熱油浴を通過させることにより、熱い油中に衣付片を浸漬することによって好適に揚げられる。フライ装置は、望ましくは、両層が油面下を通過する並行なエンドレスベルト二層を含み、下層により運ばれる片は、上層に接触することにより、フライ中の浮き上がりが防止されている。このベルトは、ワイヤスクリーン、又は、他の有孔構造を含んでもよい。
【0061】
この冷凍製品は、保管及び流通のため適切にパッケージングされる。パッケージングは、不活性雰囲気、例えば、窒素雰囲気が好ましい。
【0062】
この冷凍製品は、電子レンジ、従来型のオーブン又はグリル、たっぷりの又は少量の油でのフライ、又は、マイクロ波と従来型の加熱とを組み合わせたオーブンから選択されるオーブンを使用し、使用前の凍結状態から再加熱又は調理することができる。
【0063】
本発明のさらなる態様は、本明細書で定義される上述の方法により得られる、マイクロ波が利用可能な衣付食品にも関する。最も望ましくは、この食品は冷凍衣付食品である。
【0064】
本発明のさらに別の態様は、先に定義した冷凍衣付食品を製造する装置に関し、該装置は、
固形又は固化した基材片を形成するための基材形成装置と、
前記基材形成装置の下流に位置し、プレコーティング片を生成するために、前記片を粘稠の水性コーティング組成物中に入れるよう構成されたコーティング装置と、
前記コーティング装置の下流に位置し、パン粉コーティング片を形成するために前記プレコーティング片の上にパン粉層を施すよう構成された第一のパン粉塗布装置と、
前記パン粉塗布装置の下流に位置し、バッターコーティング片を形成するために前記パン粉コーティング片をバッター中に入れるよう構成されたバッターコーティング塗布装置と、
前記バッターコーティング塗布装置の下流に位置し、多重コーティング片を形成するために前記バッターコーティング片の上にパン粉層を施すよう構成された第二のパン粉塗布装置と、
前記第二のパン粉塗布装置の下流に位置し、加熱フライコーティング片を形成するために前記多重コーティング片を熱い油中に入れるよう構成されたフライ装置と、
前記フライ装置の下流に位置し、前記加熱フライコーティング片を受けて急速に凍結するよう構成された極低温凍結装置と、を含む。
【0065】
図1は、本発明の一態様の方法の工程を示すフローチャートである。この装置は、図2の側面図に示され、構成要素はさらなる詳細な図3から5に示される。
【0066】
前処理工程(1)において、鶏肉、又は他の基材片は、適切なサイズにカットされ、必要に応じて粉砕される。実施例1及び2に記載の基材片では、安定剤組成物を含浸させる。成形機(20)が用いられる。標準的な成形機は、所定の厚さ、及び1又はそれ以上の形状を有する押出鶏肉基材片を準備することができる。この片は、実施例3に記載の水性コーティング組成物を含有する天ぷらディッパーにそれらを運ぶよう配置されたコンベア上に押出される。
【0067】
天ぷらコーティング装置が、図3に示される。これは、水性コーティング組成物、又はプレゲル(31)のための容器(30)を含んでいる。第1の下層コンベア(32)は、水性組成物の表面下で片(35)を運ぶ。第2の上層コンベア(34)は、片(35)の浮き上がりを防止する。これは、片の完全なコーティングを確実にする。上層と下層のコンベアは、片がコーティング中に位置する内経路を形成するために、間隔をあけて並行に配置されている。
【0068】
第二の下層コンベア(33)は、基材片を上層コンベア(34)の下の容器の外へと出す。容器から出てくる基材片は、余分な液体を除去するエアージェット(36)の下を通過する。
【0069】
プレゲル、又は水性コーティングの塗布に続くパン粉細粒のコーティングは、パン粉アプリケータを用いて施される。
【0070】
細粒のパン粉コーティング基材は、その後、バッター塗布に続く外側のパン粉の塗布のため、天ぷらバッターアプリケータに送られる(6)。バッター混合物は、42℃の温度で30分維持するための高剪断ミキサーと、加熱システムとを備えた混合タンクで調整される。混合物は、次いで3℃から4℃に維持される保持タンクに移され、天ぷら型アプリケータにポンプ輸送される前に、必要に応じて水を添加することで粘度が調整される。
【0071】
バッターコーティングは、図3に示すような天ぷらコーティング装置を用いて施すことができる。水性コーティング及びパン粉細粒でコーティングされた基材片は、片の完全な浸漬が達成されるよう、金網コンベアを用いたバッター浴を通過する。
【0072】
重グリストパン粉の第1の層は、バッターコーティング製品に対して施すことができ(7)、その後、重パン粉粒子の間を埋めるための軽グリストパン粉が続く(8)。あるいは、特に大型の外側パン粉を用いる際に、単一の外側パン粉層を用いることができる。
【0073】
二つの外側パン粉層が使用される場合、第1の外側パン粉コーティングは、従来のパン粉アプリケータを用いて施すことができる。パン粉は、望ましくは、細かな及び小さな粒子を除去するために、ふるいにかけられる。バッター基材の完全な被覆を確実にするため、第二の外側パン粉コーティングを施してもよい。
【0074】
このパン粉コーティング製品は、その後、製品を揚げるための加熱油を収容する細長い容器を通過する(9)。
【0075】
フライ時間には2分20秒が適用されるが、これは重量と粒子のサイズによって変更することができる。フライ後の製品の中心温度は、74?85℃の範囲内であった。基材からの水分の損失に起因する重量の僅かな減少が見られたが、これは大部分が油の取り込みにより補われる。
【0076】
フライに続いて、加熱フライ製品は、そのまま即刻、30分以内の時間でその中心温度が最大で-25℃以下、通常は-30℃?-35℃以下まで低下させられるように、コンベアを用いて極低温凍結装置へと入れられる。
【0077】
このフライ装置の構成は、図5に詳細に示される。フライ装置の細長い容器は、180?188℃の一定の温度に加熱された菜種油を収容している。
【0078】
この冷凍製品は、密封されたパッケージにパッケージングされる(12)。パッケージング製品に要する保存可能期間によっては使用できない可能性もあるが、パッキングは窒素により充填することができる(13)。
【0079】
パン粉は国際公開第2010/001101号に開示されているように調製され、その開示の内容は、あらゆる目的において本明細書に援用する。
【実施例】
【0080】
<実施例1?安定剤組成物>
安定剤組成物は、下記の原料を用いて調整された。

【0081】
組成物を水に溶解して、使用する特定の基材を安定化させるのに好適な濃度を有する溶液を生成した。この目的を達成するために、乾燥粉末混合物は槽内においてある程度水和させてから、ボウルチョッパー(bowl chopper)に注いだ。その後、混合物が完全に水和するまで、ボウルチョッパーを2?3分にわたって稼働させた。混合物は必要に応じて、直接ボウルチョッパーで水和させてもよい。またあるいは、安定剤は、汎用ヘッドを備えた高剪断ミキサーを用いて水和してもよい。
【0082】
この汎用の配合は、特定の基材においてその効率を高めるために、変更してもよい。上記の配合は、クエン酸(1%まで)とアスコルビン酸(2%まで)を添加し、それに応じてポリデキストロース(例えばLitesse II(登録商標))を減少させることで変更できる。
【0083】
<実施例2?安定剤組成物の基材への含浸>
チキンディッパー又はナゲットのための鶏肉混合物は、水和安定剤組成物の使用に代わるものとして、以下の組成で乾式混合物として調製した。実施例1の安定剤を使用した。

【0084】
鶏胸肉を-3℃に冷却し、10mmプレートを用いて切り刻んだ。切り刻んだ後の温度は、0?3℃であった。水は混合しながら添加した。以下の原料を含有するチキンエマルジョンを、混合しながら添加した。


【0085】
実施例1に記載の安定剤を添加し、十分に混合した。ラスクを混合しながら添加し、続いてシーズニングを加えた。乾燥粉末香味料が好ましかった。組成物は、その場で水性安定剤溶液を形成するために、基材中に存在した水中で使用時に溶解させた(ステージ1)。
【0086】
混合物は、その構造を強固にするために減圧(vacuum)し、その後-3℃まで冷却して(ステージ2)、成形片を形成した(ステージ3)。
【0087】
同様の手順を、他の挽肉製品にも使用した。大きな粒子状の中心部は、同様の方法を用いて製造することができる。
【0088】
<実施例3?水性コーティング組成物>
以下の混合物を調整した。

【0089】
この混合物を、CFSスキャンブラインミキサー(Scanbrine mixer)を用いてパドル撹拌し、水に溶解して1%溶液を生成した。この溶液を、24時間放置して、完全に水和したゲル又は粘稠の溶液を生成した。
【0090】
装置を稼働するにはポンプが必要であるが、しばらくすると、アプリケータのゲル溶液中に泡が形成されることがある。この問題を防ぐために、食品用の消泡剤を使用することができる。ポリジメチルシロキサンが望ましいが、メチルフェニルポリシロキサン、又はポリエチレングリコールを用いることもできる。
【0091】
<実施例4?バッターコーティング組成物>
バッターコーティング組成物は、以下の原料を混合して調整される。

【0092】
バッターは、溝穴付粉砕ヘッド(slotted disintegrating head)を備えた台上で、シルバーソンDX高剪断ミキサー(Silverson DX high shear mixer)を用いてバッチ毎に混合した。バッチは68cmの直径を有するバット内で、12.5kgの乾燥バッター粉末に、25kgの水の割合で混合した。その後、必要に応じて、例えば水:粉末が2.4:1の比率となるように混合物を希釈した。
【0093】
フルスケールの生産では、ポンプにより連結された2つの200リットルステンレス鋼容器、及び高剪断溝穴付粉砕ヘッドを備えたインライン式のシルバーソンミキサーを使用して、水:粉末が2.4:1の比率でバッター原料を混合した。1つのタンクにはパドルを取付け、15?20℃の水で満たした。乾燥原料を水に加え、パドルを回転させることにより濡らした。第2のタンクには、冷却ジャケット、及び第1の容器への戻り管を取付けた。機械的な熱伝達により42℃の温度に到達するまで、バッター混合物を、高剪断ヘッドを通して循環させた。デンプンの過剰剪断の傾向を回避するために、外部加熱を利用してもよい。42℃に到達した際に、混合及び酵素分解を完了した。バッターを第2の容器に移して冷却した。混合物の冷却には、熱交換器を使用してもよい。冷却後、バッターをてんぷら型バッターアプリケータにポンプで送り込んだ。
【0094】
バッター混合物の粘度は、3番スピンドル、60rpmで測定して、550?650cPの範囲だった。このバッターは、良好な取り込み率、及びフライ後の歯応えあるコーティングをもたらすことが見出された。
【0095】
<実施例5?パン粉の調整>
親水コロイド含有のパン粉は、国際公開第2010/001101号に開示されているような穀粉生地混合物の押出により調製した。小麦粉組成物は下記のように調整した。

ゲル化剤は以下のように調整した。

【0096】
ゲル化剤は、97%の水に3%で水和させた。これは、高剪断ミキサーを用いて行った。水和した混合物を、混合後12時間以上放置した。
【0097】
ハッチンソン(Hutchinsons)ゴールデン薄力粉(150kg/h)を水(35kg/h)と混合し、スラリーを形成した。スラリーを、クレクストラール(Clextral)二軸スクリュー押出機に供給した。水和ゲル化剤は、7.5%(13.88kg/h)の量で、押出機のフラットゾーンに注入した。押出された混合物をピースに細断し、気泡を形成するために膨張させた。2%w/wの水分含量となるまで乾燥させたとき、嵩密度は150g.l^(-1)であった。気泡は乾燥して粉砕され、その結果、パン粉はサクサクとし、パリパリであった。ハードパン粉コーティングを行い、食品基材に塗布した。乾燥包装製品は、12ヶ月を超える保存期限を有していた。
【0098】
押出後、押出物を粉砕し、所望のサイズのパン粉粒子を製造するために4mmのふるいにかけてふるい分けしたが、3mmのふるいによって保持させてもよい。水性コーティングでコーティングされた基材片に施すのに使用されるより大きなパン粉粒子の製粉により、1mmのふるいを通過したパン粉細粒が生ずる。
【0099】
<実施例6?マイクロ波利用可能な冷凍チキンナゲット製品>
実施例2に従って調製した安定化基材を、実施例3に記載の水性コーティング組成物でコーティングした。実施例5に記載したような細粒パン粉コーティングに続いて、実施例4に記載したようなバッターコーティングを施した。
【0100】
次に、実施例5の粗いパン粉(粒径3?4mm)コーティングを、CFS社製(バケル、オランダ)のクラムマスター(CrumbMaster)アプリケータ(24)を使用して施した。このパン粉アプリケータを、図4の断面図に示す。
【0101】
ガイド板(46)上を通過するエンドレスコンベア(40)は、バッター基材片(41)を受ける。貯留槽(43)中に収容される2mmのパン粉(42)の供給は、コンベア(40)の幅方向を横切って延びる出口からなされる。追加のパン粉を、入口(51)から添加してもよい。チェーンリンクコンベア(40)を通過する余分なパン粉(45)は、スクリューリフト(47)によって回収され、貯留槽(43)の上部(48)に排出される。ローラ(44)は、基材片の表面上に、パン粉を押し付ける働きをする。送風機(49)は、コーティング片から余分なパン粉を除去し、続いて、ステージ7で施した大きなパン粉の間を埋めるための軽グリストパン粉を施すため、片(50)は、第二のパン粉塗布ステーションへと移る(ステージ8)。バッタークラムアプリケータ(25)の構成は、第1のクラムアプリケータ(24)と同様である。
【0102】
第一および第二のパン粉層の塗布に続いて、コーティングされた基体は、フライ装置(26)に入る。フライ装置の詳細な構成を、図5に示す。
【0103】
細長い容器(61)内に収容される加熱油(60)は、180?188℃の一定の温度に加熱される。純粋な菜種油が使用される。
【0104】
並行な上下のコンベア(62、63)は、フライ装置を通過する間における基材片の浮き上がりを防ぐ。フライ時間は、片の重量とサイズに依存し変化させることが可能であるが、2分20秒とすることができる。フライ後、片の中心温度は、74?85℃の範囲内であった。基材からの水分の損失に起因する重量の僅かな減少が見られたが、これは大部分が油の取り込みにより補われる。
【0105】
フライに続いて、フライ製品は直接そして即刻、凍結ステーションへと運ばれる。
【0106】
加熱油から出された際、フライ製品は、およそ180℃の外部温度と、およそ90℃の中心温度を有する。この製品は、2分未満の期間で、コンベアによって極低温凍結装置に搬送された。この間、外側のパン粉の温度は大気との接触により減少したが、中心部の温度は、中心部への外側のパン粉層からの熱の移行によって、短期間上昇することがある。凍結装置への侵入時の中心温度は70から100℃の間、通常、約75℃とすることができる。
【0107】
ステージ9のフライ製品は直ちに、その中心温度を最高でも-25℃、望ましくは-30℃まで低下させるステージ10の極低温凍結装置に輸送される。フライ装置から出されてから凍結装置に入るまでの時間は、2分未満であった。
【0108】
フライ装置から凍結装置への輸送は、製品の中心温度が、15分以内の時間内に75℃から-30℃まで減少されるよう構成されている。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波利用可能な冷凍衣付食品の製造方法であって、
前記方法は、
固形又は固化した基材片を準備する工程と、
前記片を水性プレコーティング液でコーティングし、プレコーティング片を形成する工程と、
前記プレコーティング片に結合用パン粉のコーティングを施し、パン粉コーティング片を形成する工程と、
前記パン粉コーティング片にバッター(ただし、冷凍フライ類に用いるバッター液であって、食用油脂と、水と、2000Gの条件下における遠心法による保水量が100g/100g以上となる保水性を有する食用保水性物質と、ロスマイルス法により25℃の条件下における0.1重量%含有水溶液として測定した際の起泡力が50mm以上を示す起泡剤と、乳化安定剤とを含むエマルジョンからなることを特徴とするバッター液を除く)を施し、バッターコーティング片を形成する工程と、
前記バッターコーティング片に被覆用パン粉のコーティングを施し、衣付片を形成する工程と、
前記衣付片を、フライ装置で、100秒以上、150℃以上の温度を有する熱い油に接触させて揚げ、70℃を超える中心温度を有するフライコーティング片を生成する工程と、
前記フライコーティング片を、前記フライ装置から出されてから2分未満に極低温凍結装置中に導入し、前記フライコーティング片を凍結する工程と、を含み、
前記凍結する工程は、極低温凍結装置中に導入される際に、前記フライコーティング片の中心温度が70℃以上であり、前記中心温度は、極低温凍結によって-30℃以下に下げられる
ことを特徴とする方法。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
マイクロ波利用可能な冷凍衣付食品の製造方法であって、
前記方法は、
固形又は固化した基材片を準備する工程と、
前記片を水性プレコーティング液でコーティングし、プレコーティング片を形成する工程と、
前記プレコーティング片に結合用パン粉のコーティングを施し、パン粉コーティング片を形成する工程と、
前記パン粉コーティング片にバッターを施し、バッターコーティング片を形成する工程と、
前記バッターコーティング片に被覆用パン粉のコーティングを施し、衣付片を形成する工程と、
前記衣付片を、フライ装置で、100秒以上、150℃以上の温度を有する熱い油中に入れて揚げ、70℃を超える中心温度を有するフライコーティング片を生成する工程と、
前記フライコーティング片を前記フライ装置の前記熱い油から出された後2分未満に極低温凍結装置中に導入し、前記フライコーティング片を液体ガスに接触させることを含む極低温凍結により凍結する工程と、を含み、
前記凍結する工程は、前記フライコーティング片の中心温度が前記液体ガスに接触させる際に70℃以上であり、前記中心温度は、前記液体ガスとの接触によって-30℃以下に下げられる
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1または3に記載の方法であって、
前記フライコーティング片は、極低温凍結装置中で当該片の前記中心温度が-30℃以下となるまで、液体窒素に接する
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1、3および4の何れか一項に記載の方法であって、
前記フライコーティング片の前記中心温度は、極低温凍結装置に入れられるより前に25℃を超えて大きくは減少しない
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1および3から5の何れか一項に記載の方法であって、
前記水性プレコーティング液は、ブルックフィールド型粘度計を用いた3番スピンドル、60rpm、10℃での測定において、300cpの最低粘度を有する
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1および3から6の何れか一項に記載の方法であって、
前記結合用パン粉は、0.05-5重量%の添加親水コロイドを含む、粉砕穀粉生地押出物を80重量%以上含有する
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、
前記親水コロイドは、グアーガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、トラガカントガム、カラヤガム、ガティガム、キサンタンガム、及びこれらの組み合わせを含む一群から選択される
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1および3から8の何れか一項に記載の方法であって、
前記バッターは、乾燥物の重量で計算して、デンプン20?55重量%、小麦粉20?55重量%、固形卵(egg solids)3?20重量%を含有する
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1および3から9の何れか一項に記載の方法であって、
前記バッターは、前記パン粉コーティング片に施された際に、ブルックフィールド型粘度計を用いた3番スピンドル、60rpmでの測定において、200?1000cPの粘度を有する
ことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1および3から10の何れか一項に記載の方法であって、
前記片に施される前記水性プレコーティング液、前記バッター、及び前記パン粉の総量は、フライ後に前記フライコーティング片が、コーティングされていない固形基材片の重量を25?100%上回る重量を有する
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1および3から11の何れか一項に記載の方法を使用した、冷凍衣付食品を製造するための装置であって、
前記装置は、
固形又は固化した基材片を形成するよう構成された基材形成装置と、
前記片を受けて、当該片を粘稠の水性コーティング組成物中に入れ、プレコーティング片を生成するよう構成されたコーティング装置と、
前記プレコーティング片を受けて、当該プレコーティング片の上にパン粉層を施し、パン粉コーティング片を形成するよう構成された第一のパン粉塗布装置と、
前記パン粉コーティング片を受けて、当該パン粉コーティング片をバッター中に入れ、バッターコーティング片を形成するよう構成されたバッターコーティング塗布装置と、
前記バッターコーティング片を受けて、当該バッターコーティング片の上にパン粉層を施し、多重コーティング片を形成するよう構成された第二のパン粉塗布装置と、
前記多重コーティング片を受けて、当該多重コーティング片を熱い油中に入れ、熱いフライコーティング片を形成するよう構成されたフライ装置と、
前記熱いフライコーティング片を受けて、当該熱いフライコーティング片を極低温で凍結するよう構成された極低温凍結装置と、を含む
ことを特徴とする装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-04-26 
出願番号 特願2013-550829(P2013-550829)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (A23L)
P 1 651・ 537- YAA (A23L)
P 1 651・ 536- YAA (A23L)
P 1 651・ 113- YAA (A23L)
P 1 651・ 54- YAA (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 飯室 里美吉門 沙央里  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 千壽 哲郎
莊司 英史
登録日 2016-07-15 
登録番号 特許第5970474号(P5970474)
権利者 クリスプ センセーション ホールディング エスエー
発明の名称 マイクロ波利用可能な衣付食品の製造  
代理人 特許業務法人湘洋内外特許事務所  
代理人 渡辺 紫保  
代理人 塩澤 寿夫  
代理人 特許業務法人湘洋内外特許事務所  
代理人 塩澤 寿夫  
代理人 渡辺 紫保  

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