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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08G
管理番号 1341089
異議申立番号 異議2017-700940  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-07-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-10-03 
確定日 2018-05-14 
異議申立件数
事件の表示 特許第6111709号発明「硬化性樹脂組成物及び電子部品装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6111709号の請求項1ないし9に係る特許を取り消す。 
理由 第1 主な手続の経緯等

特許第6111709号(設定登録時の請求項の数は9。以下、「本件特許」という。)は、平成25年2月4日にされた特願2013-19772号の出願に係るものであって、平成29年3月24日に設定登録された。
本件特許に対して、平成29年10月3日に特許異議申立人山口誠(以下、「異議申立人」という。)から、特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がなされた。
当合議体において、平成29年12月18日付けで取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは応答がなかった。


第2 本件発明

本件特許の請求項1ないし9に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」ないし「本件特許発明9」といい、総称して「本件特許発明」ともいう。)は、本件特許明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、及び(D)マレイミド化合物を含有し、前記(C)硬化促進剤が下記一般式(I-1)で示される化合物を含有し、以下の少なくとも一方を満たす硬化性樹脂組成物。
(A)エポキシ樹脂がアラルキル型エポキシ樹脂を含む。
(B)フェノール樹脂が、アラルキル型フェノール樹脂を含む。
【化1】

〔式(I-1)中、R^(1)?R^(3)は、それぞれ独立して、炭素数1?18の炭化水素基であり、R^(1)?R^(3)のうち2以上が互いに結合して環状構造を形成してもよく、R^(4)?R^(7)は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、又は炭素数1?18の有機基であり、R^(4)?R^(7)のうち2以上が互いに結合して環状構造を形成してもよい。〕
【請求項2】
(C)硬化促進剤が下記一般式(I-2)で示される化合物を含有する請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【化2】

〔式(I-2)中、R^(1)?R^(3)は、それぞれ独立して、炭素数1?18の炭化水素基であり、R^(1)?R^(3)のうち2以上が互いに結合して環状構造を形成してもよく、R^(4)?R^(7)は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1?18の有機基であり、R^(4)?R^(7)のうち2以上が互いに結合して環状構造を形成してもよい。〕
【請求項3】
(C)硬化促進剤が下記一般式(I-3)で示される化合物を含有する請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【化3】

〔式(I-3)中、R^(1)?R^(3)は、それぞれ独立して、炭素数1?18の脂肪族炭化水素基であり、R^(1)?R^(3)のうち2以上が互いに結合して環状構造を形成してもよく、R^(4)?R^(6)は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1?18の有機基であり、R^(4)?R^(6)のうち2以上が互いに結合して環状構造を形成してもよい。〕
【請求項4】
(D)マレイミド化合物が1分子中に2つ以上のマレイミド基を有する化合物である請求項1?請求項3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
さらに(E)無機充填剤を含有する請求項1?請求項4のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
(A)エポキシ樹脂が、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、及び共重合型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる1以上のエポキシ樹脂を含む請求項1?請求項5のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
(B)フェノール樹脂が、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、サリチルアルデヒド型フェノール樹脂、及びノボラック型フェノール樹脂、からなる群より選ばれる1以上のフェノール樹脂を含む請求項1?請求項6のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
(D)マレイミド化合物が、4,4’-ジフェニルメタンジマレイミド、N,N’-1,3-フェニレンジマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、ポリフェニルメタンマレイミド、2,2’-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、及び1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む請求項1?請求項7のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
素子と、前記素子を封止する請求項1?請求項8のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物と、を備える電子部品装置。」


第3 取消理由の概要
平成29年12月18日付けで通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。

本件特許発明1ないし9は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、その特許は取り消されるべきものである。

甲第1号証:特開2006-299246号公報
(平成29年10月3日に異議申立人より提出された特許異議申立書に 添付された甲第1号証、以下「甲1」という。)
甲第2号証:特開2005-29641号公報
(同上甲第2号証、以下「甲2」という。)
甲第3号証:特開2004-176039号公報
(同上甲第3号証、以下「甲3」という。)
甲第4号証:総説エポキシ樹脂第2巻基礎編 II、139?145頁、 エポキシ樹脂技術協会創立30周年記念出版編集委員会、2003年
11月19日発行(同上甲第4号証、以下「甲4」という。)
甲第5号証:川井宏一、「最近の多官能型エポキシ樹脂」、
ネットワークポリマー、33巻6号(2012)354?360頁
(同上甲第5号証、以下「甲5」という。)

第4 当合議体の判断
当合議体は、以下述べるように、本件特許発明1及び2は、取消理由で通知した甲1及び甲3ないし甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、本件特許発明3ないし9は、取消理由で通知した甲1ないし甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものであると判断する。

1 刊行物の記載と刊行物に記載された発明
(1) 甲1には、以下のとおりの記載がある。
(甲1ア)「【請求項1】
下記(A),(C),(D),(E)及び(F)成分を必須成分とすることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
(A)エポキシ樹脂
(C)無機充填剤
(D)下記一般式(1)で示される硬化促進剤
【化1】

(但し、R^(1)、R^(2)、R^(3)は水素原子、炭素数1?4のアルキル基、アリール基、又はヒドロキシル基、R^(4)?R^(18)は水素原子又は炭素数1?4のアルキル基もしくはアルコキシ基である。)
(E)分子中に2個以上のマレイミド基を有する化合物
(F)分子中に1個以上のアルケニル基を有するフェノール化合物
【請求項2】
(B)成分としてフェノール樹脂硬化剤を含むことを特徴とする請求項1記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物で封止された半導体装置。」(請求項1?3)

(甲1イ)「【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、本発明は、成形性に優れ、ガラス転移温度(Tg)が高く、高温信頼性、耐熱衝撃性及び低誘電性良好な半導体用封止材を提供することを目的とする。」(段落【0006】)

(甲1ウ)「【0010】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
[(A)エポキシ樹脂]
本発明のエポキシ樹脂組成物を構成する(A)エポキシ樹脂は特に限定されない。一般的なエポキシ樹脂としては、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールアルカン型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格含有アラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、スチルベン型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を併用することができる。これらのうちでは、芳香環を含むエポキシ樹脂が好ましい。」(段落【0010】)

(甲1エ)「【0012】
[(B)硬化剤]
(B)硬化剤成分は、本発明では必須成分ではないが、発明の目的を損なわない範囲において、一般的な硬化剤を使用することは差し支えない。かかる硬化剤成分としては、フェノール樹脂が好ましく、フェノールノボラック樹脂、ナフタレン環含有フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂、トリフェノールアルカン型フェノール樹脂、ビフェニル骨格含有アラルキル型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、脂環式フェノール樹脂、複素環型フェノール樹脂、ナフタレン環含有フェノール樹脂、ビスフェノールA、ビスフェノールF等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を併用することができる。」(段落【0012】)

(甲1オ)
「【0018】
[(D)硬化促進剤]
また、本発明において、エポキシ樹脂と硬化剤との硬化反応を促進させるため、(D)下記式(1)で表せる化合物を用いる。
【0019】
【化2】

(但し、R^(1)、R^(2)、R^(3)は水素原子、炭素数1?4のアルキル基、アリール基、又はヒドロキシル基、R^(4)?R^(18)は水素原子又は炭素数1?4のアルキル基もしくはアルコキシ基である。)
【0020】
通常使用されるトリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p-メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン、テトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレートなどのリン系化合物では十分な硬化性が得られず、良好な成形性が得られない。
【0021】
また、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、α-メチルベンジルジメチルアミン、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7などの第3級アミン化合物、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾールなどのイミダゾール化合物等アミン系の硬化促進剤は耐湿信頼性を低下させる。式(1)の化合物を用いた場合、成形性、耐湿信頼性に優れた成形物を与えることができる。」(段落【0018】?【0021】)

(甲1カ)「【0027】
[(E)マレイミド基を有する化合物]
本発明に用いる(E)分子中に2個以上のマレイミド基を有する化合物の構造としては特に限定されるものではなく、N,N’-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’-(3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタン)ビスマレイミド等が挙げられる。かかるマレイミド基含有化合物としては、下記式で示されるビスマレイミド:BMI(ケイアイ化成(株)商品名)が好ましい。」(段落【0027】)

(甲1キ)「段落【0042】
本発明のエポキシ樹脂組成物は連続成形性に優れ、表面実装用パッケージ封止樹脂部が吸湿した状態であっても半田時の耐クラック性に優れた硬化物を与えることができる。」(段落【0042】)

(甲1ク)
「【0044】
[実施例1?5、比較例1?6]
表1,2に示す成分を熱2本ロールにて均一に溶融混合し、冷却、粉砕して半導体封止用エポキシ樹脂組成物を得た。これらの組成物につき、次の(i)?(vi)の諸特性を測定した。結果を表1,2に示す。
【0045】
(i)成形性
各組成物を用いて、温度:175℃、成形圧力:70MPa、及び成形時間:90秒の条件でQFP(Quad Flat Package)(14mm×20mm×2.7mm、5キャビティー)を連続成形機により成形した。パッケージが金型に貼り付く、もしくはカルが金型に貼り付く等の不良が発生するまでのショット数を調べた。
・・・
【0052】
(D)硬化促進剤
硬化促進剤a 下記式(2)で示される化合物
【0053】
【化5】

【0054】
硬化促進剤aの製造方法
トリフェニルホスフィン(北興化学(株)製)832.0gを酢酸ブチル1800.0gに溶解させ、80℃で30分撹拌する。1,4-ベンゾキノン352.0g/酢酸ブチル1800g中溶液を145g/分で滴下し、滴下終了後、1時間撹拌し、熟成する。その後、室温まで冷却し、析出物を濾過、洗浄、減圧乾燥し、トリフェニルホスフィンと1,4-ベンゾキノンの付加物982.7gを得た。
硬化促進剤b トリフェニルホスフィン(TPP:北興化学(株)製商品名)
硬化促進剤c イミダゾール化合物(2ZP:四国化成(株)製商品名)
(E)マレイミド基含有化合物
下記式で示されるビスマレイミド化合物(BMI:ケイアイ化成(株)製商品名)
・・・
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

」(段落【0044】?【0060】)

(2)甲1の(甲1ア)の摘示によれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
(甲1発明)
「下記(A),(B),(C),(D),(E)及び(F)成分を必須成分とすることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
(A)エポキシ樹脂
(B)フェノール樹脂硬化剤
(C)無機充填剤
(D)下記一般式(1)で示される硬化促進剤
【化1】

(但し、R^(1)、R^(2)、R^(3)は水素原子、炭素数1?4のアルキル基、アリール基、又はヒドロキシル基、R^(4)?R^(18)は水素原子又は炭素数1?4のアルキル基もしくはアルコキシ基である。)
(E)分子中に2個以上のマレイミド基を有する化合物
(F)分子中に1個以上のアルケニル基を有するフェノール化合物。」

(3) 甲2には、以下のとおりの記載がある。
(甲2ア)「【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤、(D)無機充てん剤を必須成分とし、(A)成分が一般式(I)及び一般式(II)で示されるエポキシ樹脂を含有し、(B)成分が一般式(III)及び一般式(IV)で示されるフェノール樹脂を含有する封止用エポキシ樹脂成形材料。
【化1】

(ここで、R^(1)?R^(8)は水素原子及び炭素数1?10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。nは0又は1?3の整数を示す。)
【化2】

(ここで、R^(1)?R^(8)は水素原子及び炭素数1?10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。nは0又は1?3の整数を示す。)
【化3】

(ここで、R^(1)?R^(9)は水素原子、炭素数1?12の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、すべてが同一でも異なっていてもよい。iは0又は1?3の整数を示し、nは0又は1?10の整数を示す。)
【化4】

(ここで、Rは水素原子、炭素数1?12の置換又は非置換の一価の炭化水素基及び水酸基から選ばれ、すべてが同一でも異なっていてもよい。nは0又は1?10の整数を示す。)
・・・
【請求項7】
(C)硬化促進剤がトリブチルホスフィンと1,4-ベンゾキノンの付加反応物を含有する請求項6に記載の封止用エポキシ樹脂成形材料。
【請求項8】
(C)硬化促進剤がトリフェニルホスフィンと1,4-ベンゾキノンの付加反応物を含有する請求項6または7に記載の封止用エポキシ樹脂成形材料。・・・
【請求項10】
請求項1?9のいずれかに記載の封止用エポキシ樹脂成形材料で封止された素子を備えた電子部品装置。」(請求項1?10)

(甲2イ)「【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる状況に鑑みなされたもので、流動性や硬化性等の成形性が良好で、一括モールド型の片面封止型パッケージに用いた場合でも反り変形量の低減を図ることができ、さらに臭素化合物やアンチモン化合物を用いずに難燃性の封止用エポキシ樹脂成形材料、及びこれにより封止した素子を備えた電子部品装置を提供するものである。」(段落【0009】)

(甲2ウ)「【0035】
上記一般式(V)で示されるホスフィン化合物と上記一般式(VI)で示されるキノン化合物の付加反応物の構造としては、例えば、下記一般式(XII)で示される化合物が挙げられる。
【化19】

(ここで、R^(1)?R^(3)は、置換又は非置換の炭素数1?12のアルキル基もしくは置換又は非置換の炭素数6?12のアリール基を示し、全て同一でも異なっていてもよい。R^(4)?R^(6)は水素原子又は炭素数1?12の炭化水素基を示し、全て同一でも、異なっていてもよく、R^(4)とR^(5)が結合して環状構造となっていてもよい。)
【0036】
上記一般式(XII)で示されるホスフィン化合物とキノン化合物の付加反応物を例示するとトリフェニルホスフィンと1,4-ベンゾキノンとの付加反応物、ジフェニル-p-トリルホスフィンと1,4-ベンゾキノンとの付加反応物、ジフェニル-p-メトキシフェニルホスフィンと1,4-ベンゾキノンとの付加反応物、シクロヘキシルジフェニルホスフィンと1,4-ベンゾキノンとの付加反応物、ジシクロヘキシルフェニルホスフィンと1,4-ベンゾキノンとの付加反応物、トリシクロヘキシルホスフィンと1,4-ベンゾキノンとの付加反応物、トリオクチルホスフィンと1,4-ベンゾキノンとの付加反応物、トリブチルホスフィンと1,4-ベンゾキノンとの付加反応物、トリオクチルホスフィンと1,4-ベンゾキノンとの付加反応物、トリフェニルホスフィンとメチル-1,4-ベンゾキノンとの付加反応物、ジフェニル-p-トリルホスフィンとメチル-1,4-ベンゾキノンとの付加反応物、ジフェニル-p-メトキシフェニルホスフィンとメチル-1,4-ベンゾキノンとの付加反応物、シクロヘキシルジフェニルホスフィンとメチル-1,4-ベンゾキノンとの付加反応物、ジシクロヘキシルフェニルホスフィンとメチル-1,4-ベンゾキノンとの付加反応物、トリシクロヘキシルホスフィンとメチル-1,4-ベンゾキノンとの付加反応物、トリオクチルホスフィンとメチル-1,4-ベンゾキノンとの付加反応物、トリブチルホスフィンとメチル-1,4-ベンゾキノンとの付加反応物及びトリオクチルホスフィンとメチル-1,4-ベンゾキノンとの付加反応物等が挙げられる。また、流動性と硬化性の観点からは、トリフェニルホスフィンと1,4-ベンゾキノンとの付加反応物またはトリブチルホスフィンと1,4-ベンゾキノンとの付加反応物がさらに好ましい。」(段落【0035】、【0036】)

(甲2エ)「【0050】
本発明で得られる封止用エポキシ樹脂成形材料により封止した素子を備えた電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ等の支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子等の素子を搭載し、必要な部分を本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料で封止した、電子部品装置などが挙げられる。このような電子部品装置としては、たとえば、リードフレーム上に半導体素子を固定し、ボンディングパッド等の素子の端子部とリード部をワイヤボンディングやバンプで接続した後、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料を用いてトランスファ成形等により封止してなる、DIP(Dual Inline Package)、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J-lead package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(Thin Quad Flat Package)等の一般的な樹脂封止型IC、テープキャリアにバンプで接続した半導体チップを、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料で封止したTCP(Tape Carrier Package)、配線板やガラス上に形成した配線に、ワイヤボンディング、フリップチップボンディング、はんだ等で接続した半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子及び/又はコンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子を、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料で封止したCOB(Chip On Board)モジュール、ハイブリッドIC、マルチチップモジュール、マザーボード接続用の端子を形成したインターポーザ基板に半導体チップを搭載し、バンプまたはワイヤボンディングにより半導体チップとインターポーザ基板に形成された配線を接続した後、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料で半導体チップ搭載側を封止したBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)、MCP(Multi Chip Package)などの片面封止パッケージが挙げられる。なかでも本発明で得られる封止用エポキシ樹脂成形材料で封止した素子を備えた片面封止型パッケージは反り量が小さい特徴を有する。さらに、プリント回路板にも本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料は有効に使用できる。」(段落【0050】)

(甲2オ)「【0052】
【実施例】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
(実施例1?11、比較例1?4)
以下の成分をそれぞれ表1?表3に示す重量部で配合し、混練温度80℃、混練時間10分の条件でロール混練を行い、実施例1?11及び比較例1?4の封止用エポキシ樹脂成形材料を作製した。
【0054】
エポキシ樹脂として、エポキシ当量187、融点109℃のビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂1、ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名エピコートYX-4000)、または、エポキシ当量188、融点75℃のビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂2、新日鐵化学株式会社製商品名YSLV-80XY)を使用した。
【0055】
硬化剤として、水酸基当量200、軟化点80℃のフェノール・アラルキル樹脂(硬化剤1、明和化成株式会社製商品名MEH-7851)、または水酸基当量103、軟化点86℃のフェノール樹脂(硬化剤2、明和化成株式会社製商品名MEH-7500)を使用した。
【0056】
硬化促進剤として、トリブチルホスフィンと1,4-ベンゾキノンとの付加反応物(硬化促進剤1)、または、トリフェニルホスフィンと1,4-ベンゾキノンとの付加反応物(硬化促進剤2)、または、トリフェニルホスフィン(硬化促進剤3)を使用した。
【0057】
無機充填剤として平均粒径17.5μm、比表面積3.8m^(2)/gの球状溶融シリカを使用した。カップリング剤としてγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー株式会社製商品名A-187)を使用した。その他の添加剤としてカルナバワックス(クラリアント社製)及びカーボンブラック(三菱化学株式会社製商品名MA-100)を使用した。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
作製した実施例及び比較例の封止用エポキシ樹脂成形材料を、次の各試験により評価した。結果を表4?表6に示した。なお、封止用エポキシ樹脂成形材料の成形は、トランスファ成形機により、金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件で行った。また、後硬化は180℃で5時間行った。
(1)スパイラルフロー(流動性の指標)
EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、封止用エポキシ樹脂成形材料を上記条件で成形し、流動距離(cm)を求めた。
(2)円板フロー(流動性の指標)
200mm(W)×200mm(D)×25mm(H)の上型と200mm(W)×200mm(D)×15mm(H)の下型を有する円板フロー測定用平板金型を用いて、秤量した試料(封止用エポキシ樹脂成形材料)5gを180℃に加熱した下型の中心部にのせ、5秒後に、180℃に加熱した上型を閉じて、荷重78N、硬化時間90秒の条件で圧縮成形し、ノギスで成形品の長径(mm)及び短径(mm)を測定して、その平均値(mm)を円板フローとした。
(3)熱時硬度
封止用エポキシ樹脂成形材料を上記条件で直径50mm×厚さ3mmの円板に成形し、成形後直ちにショアD型硬度計を用いて測定した。
(4)吸湿時熱時硬度
封止用エポキシ樹脂成形材料を25℃/50%RHの条件で72時間放置後、上記(3)と同様に測定した。
(5)反り量及び反り変化量
基板サイズ60mm×90mm×0.4mmのガラス基材エポキシ樹脂基板(日立化成工業株式会社製商品名MCL-E-679)上に、封止用エポキシ樹脂成形材料を用いて40mm×70mm×0.6mmの範囲に片面封止を行い、後硬化後の反り量及び後硬化前後での反り量の変化量を評価した。反り量の測定は封止範囲の長辺方向に、温度可変3次元形状測定機(株式会社ティーテック)を用いて高さ方向の変位を測定し、その最大値と最小値の差を反り量として評価した。
(6)難燃性
厚さ1/16インチの試験片を成形する金型を用いて、封止用エポキシ樹脂成形材料を上記条件で成形して後硬化を行い、UL-94試験法に従って燃焼試験を行い、試験片5本の残炎時間の合計を総残炎時間として評価した。
【0062】
【表4】

【0063】
【表5】

【0064】
【表6】

【0065】
本発明における(A)特定構造の2種類のエポキシ樹脂のいずれかを含まない比較例1及び2のなかで、比較例1は同じ(C)硬化促進剤を用いている実施例1?11と比較した場合に、スパイラルフロー及び円板フローが小さいなど流動性に劣り、比較例2は熱時硬度及び吸湿時熱時硬度が小さいなど硬化性に劣る。また、本発明における(B)特定構造の2種類の硬化剤のいずれかを含まない比較例3及び4のなかで、比較例3は反り量及び反り変化量が大きく、比較例4は総残炎時間が長いなど難燃性に劣っている。これに対して、実施例1?11はいずれもスパイラルフロー及び円板フローで示される流動性、及び吸湿時熱時硬度及び熱時硬度で示される硬化性のバランスに優れ、さらに反り量、反り変化量及び総残炎時間がいずれも良好である。」(段落【0052】?【0065】)

(4) 甲3には、以下のとおりの記載がある。
(甲3ア)「【請求項1】
硬化性樹脂組成物に混合され、該硬化性樹脂組成物の硬化反応を促進し得る硬化促進剤であって、
前記硬化促進剤は、トリ置換ホスホニオフェノラートまたはその塩であることを特徴とする硬化促進剤。
【請求項2】
前記トリ置換ホスホニオフェノラートは、下記一般式(1)で表されるものである請求項1に記載の硬化促進剤。
【化1】

[式中、R^(1)、R^(2)、R^(3)は、それぞれ、芳香族基を含み、置換もしくは無置換の1価の有機基、または、置換もしくは無置換の1価のアルキル基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。Arは、水酸基以外の置換基により置換もしくは無置換の2価の芳香族基を表す。]
・・・
【請求項22】
請求項17ないし21のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物により半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置。」(請求項1?22)

(甲3イ)「【0043】
すなわち、I:特定構造のトリ置換ホスホニオフェノラートまたはその塩が、各種硬化性樹脂組成物の硬化反応を促進する硬化促進剤として極めて有用であることを見出した。
【0044】
II:かかるトリ置換ホスホニオフェノラートまたはその塩を硬化性樹脂組成物、特にエポキシ樹脂組成物に硬化促進剤として混合することにより、エポキシ樹脂組成物が、硬化性、保存性および流動性に優れたものとなることを見出した。
【0045】
III:かかるエポキシ樹脂組成物の硬化物により半導体素子を封止してなる半導体装置が、高温に曝された場合であっても、クラックや剥離等の欠陥が発生し難いことを見出した。」(段落【0043】?【0045】)

(甲3ウ)「【0051】
これらの中でも、化合物(A)は、特に、前記一般式(8)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂および前記一般式(9)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂のいずれか一方または双方を主成分とするものを用いるのが好ましい。これにより、エポキシ樹脂組成物の成形時(例えば半導体装置の製造時等)の流動性が向上するとともに、得られた半導体装置の耐半田クラック性がより向上する。
【0052】
ここで、「耐半田クラック性の向上」とは、得られた半導体装置が、例えば半田浸漬や半田リフロー工程等において、高温に曝された場合であっても、クラックや剥離等の欠陥の発生が生じ難くなることを言う。
【0058】
これらの中でも、化合物(B)は、特に、前記一般式(10)で表されるフェノールアラルキル樹脂および前記一般式(11)で表されるビフェニルアラルキル型フェノール樹脂のいずれか一方または双方を主成分とするものを用いるのが好ましい。これにより、エポキシ樹脂組成物の成形時(例えば半導体装置の製造時等)の流動性が向上するとともに、得られた半導体装置の耐半田クラック性や耐湿信頼性がより向上する。
」(段落【0051】、【0052】、【0058】)

(甲3エ)「【0116】
【実施例】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
・・・
【0118】
1-1.硬化促進剤の合成
各化合物C1?C10は、それぞれ、以下のようにして合成した。
【0119】
(化合物C1の合成)
・・・
【0128】
この化合物をC1とした。化合物C1を、^(1)H-NMR、マススペクトル、元素分析で分析した結果、下記式(14)で表される目的のトリ置換ホスホニオフェノラートであることが確認された。得られた化合物C1の収率は、59%であった。
【0129】
【化25】

・・・
【0145】
(化合物C7の合成)
・・・
【0146】
この化合物をC7とした。化合物C7を、^(1)H-NMR、マススペクトル、元素分析で分析した結果、下記式(20)で表される目的のトリ置換ホスホニオフェノラートであることが確認された。得られた化合物C7の収率は、30%であった。
【0147】
【化31】

・・・
【0154】
(化合物C10の合成)
・・・
【0157】
この化合物をC10とした。化合物C10を、^(1)H-NMR、マススペクトル、元素分析で分析した結果、下記式(13)で表される目的のトリフェニルホスフィンとp-ベンゾキノン付加反応物であることが確認された。得られた化合物C10の収率は、75%であった。
【0158】
【化34】

【0159】
1-2.エポキシ樹脂組成物の調製および半導体装置の製造
以下のようにして、前記化合物C1?C10およびトリフェニルホスフィンを含むエポキシ樹脂組成物を調製し、半導体装置を製造した。
【0160】
(実施例1)
まず、化合物(A)として下記式(23)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂、化合物(B)として下記式(24)で表されるフェノールアラルキル樹脂(ただし、繰り返し単位数:3は、平均値を示す。)、硬化促進剤(C)として化合物C1、無機充填材(D)として溶融球状シリカ(平均粒径15μm)、その他の添加剤としてカーボンブラック、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびカルナバワックスを、それぞれ用意した。
・・・
【0188】
(実施例13)
化合物C1に代わり、化合物C7:1.47重量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例1と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
・・・
【0194】
(比較例1)
化合物C1に代わり、化合物C10:1.85重量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例1と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0199】
I:スパイラルフロー
EMMI-I-66に準じたスパイラルフロー測定用の金型を用い、金型温度175℃、注入圧力6.8MPa、硬化時間2分で測定した。
【0200】
このスパイラルフローは、流動性のパラメータであり、数値が大きい程、流動性が良好であることを示す。
【0201】
II:硬化トルク
キュラストメーター(オリエンテック(株)製、JSRキュラストメーターIV PS型)を用い、175℃、45秒後のトルクを測定した。
この硬化トルクは、数値が大きい程、硬化性が良好であることを示す。
・・・
各特性評価I?Vの結果を、表1に示す。
【0209】
【表1】

」(段落【0116】?【0209】)


(5) 甲4には、以下のとおりの記載がある。
(甲4ア)「4.1.2 自己消化性エポキシ樹脂組成物の構造と難燃化機構
芳香環化合物としてフェニレンやビフェニレンをノボラック構造の主鎖に含む「フェノールアラルキル構造」(図1)のエポキシ樹脂や硬化剤からなるエポキシ樹脂組成物は,これまで一般的に使用されてきたエポキシ樹脂組成物に比べ,高い難燃性を示す。」(139頁の4.1.2項1?3行目)

(甲4イ)「

」(141頁の表1)

(甲4ウ)「4.1.3 半導体封止材への適用
上記の発泡化により自己消化性を発現するフェノールビフェニレン型エポキシ樹脂組成物は,シリカ充填材の添加量や他の添加剤を調整して,環境調和性に優れた半導体用封止材として,実用化されている^(10),13))。この封止材は,難燃剤を一切添加せず,シリカ充填材を極端に高充填しなくても,高度な難燃性を示すとともに,従来品より優れたはんだ耐熱性や耐湿信頼性などの実用特性を達成している。」(142頁4.1.3項の1?5行目)

(甲4エ)「

」(143頁の表3)

(甲4オ)「さらに、この封止材は従来品より高度な半導体パッケージの信頼性を達成している。はんだ耐熱性(吸湿後のはんだ加熱によるパッケージの耐クラック性や半導体素子と樹脂界面の耐剥離性)は,従来のハロゲン系難燃剤を添加した封止材より大幅に優れている。このような優れたはんだ耐熱性は,封止材自体の耐吸湿性に加え,高温弾性率が低いため,高温での素子との密着性を向上できたことが大きく影響している。」(144頁の4?8行目)

(6) 甲5には、以下のとおりの記載がある。
(甲5ア)「このようなフェノールアラルキル型エポキシ樹脂は,耐湿性,接着性等の諸特性に加え,高温時の弾性率が低くなりやすく,鉛フリー半田への耐性が強い。」(358頁右欄21?23行目)

(甲5イ)「この骨格のエポキシ樹脂は,耐熱分解性や難燃性に優れるという面から,半導体封止材料および高信頼性の必要なプリント基板関係の用途に使用され,現在,環境対応型エポキシ樹脂として広く用いられている。」(359頁右欄7?9行目)

2 本件特許発明について
(1)本件特許発明1と甲1発明との対比・判断
甲1発明の「(A)エポキシ樹脂」、「(B)フェノール樹脂硬化剤」、「(E)分子中に2個以上のマレイミド基を有する化合物」は、それぞれ、本件特許発明1の「(A)エポキシ樹脂」、「(B)フェノール樹脂」、「(D)マレイミド化合物」に相当する。
また、甲1発明の一般式(1)で示される硬化促進剤の「置換基R^(4)ないしR^(18)を有する3つのフェニル基」、「OH基、O-、R^(1)ないしR^(3)を有するフェニル基」は、それぞれ、本件特許発明1の一般式(I-1))で示される化合物の「置換基R^(1)ないしR^(3)」、「O-、R^(4)ないしR^(7)を有するフェニル基」と重複一致するから、甲1発明の「一般式(1)で示される硬化促進剤」は、本件特許発明1の「一般式(I-1)で示される化合物を含有」する「(C)硬化促進剤」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明とは、

「(A)エポキシ樹脂と、(B)フェノール樹脂と、(C)硬化促進剤と、(D)マレイミド化合物とを含有し、前記(C)硬化促進剤が下記(I-1)で示される化合物を含有する、硬化性樹脂組成物。

〔式(I-1)中、R^(1)?R^(3)は、それぞれ独立して、炭素数1?18の炭化水素基であり、R^(1)?R^(3)のうち2以上が互いに結合して環状構造を形成してもよく、R^(4)?R^(7)は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、又は炭素数1?18の有機基であり、R^(4)?R^(7)のうち2以上が互いに結合して環状構造を形成してもよい。〕


の点で一致し、次の相違点1で相違する。

なお、甲1発明に係る樹脂組成物は、半導体封止用の用途であるが、本件特許発明1に係る硬化性樹脂組成物の用途も、半導体封止用の用途を含むことは、本件特許の請求項9や、本件特許明細書の段落【0152】等の記載からみて明らかである。

<相違点1>
本件特許発明1では、硬化性樹脂組成物が、以下の(A)、(B)の少なくとも一方を満たすと特定されているのに対し、甲1発明では、その点が特定されていない点。
(A)エポキシ樹脂がアラルキル型エポキシ樹脂を含む。
(B)フェノール樹脂が、アラルキル型フェノール樹脂を含む。

上記相違点1について検討する。

ア 本件特許発明1が解決しようとする課題
本件特許発明1が解決しようとする課題は、本件特許明細書の段落【0007】の「本発明の課題は、硬化後の耐リフロー性及び耐熱性に優れる硬化性樹脂組成物、及び耐熱性に優れる電子部品装置を提供することである。」との記載からみて、硬化後の耐リフロー性及び耐熱性に優れる硬化性樹脂組成物等を提供することにある。ここでいう「耐リフロー性」とは、出願時の技術常識及び段落【0169】の「得られたパッケージを30℃、60%RHの条件で168時間加湿した。その後、245℃、10秒の条件でリフロー処理をそれぞれ行い、パッケージ外部のクラックの有無を目視で、パッケージ内部の剥離発生の有無を超音波探傷装置・・・でそれぞれ観察した。」との記載からみて、封止用成形材料を加湿後にリフロー処理(はんだづけ)を行った際に、クラックや剥離の発生を防止することができる性質という意味であると解される。

イ 甲1発明の用途並びに解決しようとする課題及び甲1の記載
甲1発明は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂硬化剤、無機充填剤及び硬化促進剤を含む半導体封止用エポキシ樹脂組成物に係る発明であり、その用途は半導体封止用である。
また、甲1の摘示(甲1キ)の「本発明のエポキシ樹脂組成物は・・・吸湿した状態であっても半田時の耐クラック性に優れ」との記載や、半導体封止の成形材料の技術分野においては、成形材料に耐リフロー性が求められることは、周知の課題であったと認められる(例えば甲3の摘示(甲3ウ)、甲4の摘示(甲4エ)の「はんだ耐熱性」の項及びの摘示(甲4オ))から、甲1発明に係る半導体封止用の樹脂組成物も、半田時の耐クラック性、すなわち耐リフロー性を向上させることは、自明の課題であったと認められる。
さらに、甲1の摘示(甲1ウ)には、樹脂組成物を構成するエポキシ樹脂として、アラルキル型エポキシ樹脂が記載され、摘示(甲1エ)には、使用されるフェノール樹脂である硬化剤として、アラルキル型フェノール樹脂が記載されている。

ウ 甲3ないし甲5について
一方、甲3の摘示(甲3ウ)には、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂を用いると、半導体装置の耐半田クラック性がより向上することが記載されている。
また、甲4には、フェノールアラルキル型構造のエポキシ樹脂や硬化剤からなるエポキシ樹脂組成物は、これまで一般的に使用されてきたエポキシ樹脂組成物に比べ、高い難燃性を示すこと(摘示(甲4ア))、フェノールビフェニレン型のエポキシ樹脂が、フェノールアラルキル型の1種であること(摘示(甲4イ))、フェノールビフェニレン型エポキシ樹脂組成物は、高度な難燃性を示すと共に、従来品よりはんだ耐熱性や耐湿信頼性に優れること(摘示(甲4ウ))、新封止剤(フェノールビフェニレン型エポキシ樹脂+硬化剤)は、従来のLSI用封止材に比べて、はんだ耐熱性の指標である吸湿後のリフロー時にクラックや剥離の点で優れる旨(摘示(甲4エ)の「はんだ耐熱性」の項及び摘示(甲4オ))が実質的に記載されている。
さらに、甲5には、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂が、耐湿性、接着性等の諸特性に加え、鉛フリー半田への耐性が強いこと(摘示(甲5ア))、半導体封止材料の用途に使用されること(摘示(甲5イ))が記載されている。

エ 甲1発明に係る樹脂組成物がアラルキル型のエポキシ樹脂又はフェノール樹脂を含むことの想到容易性について
以上のように、甲3ないし甲5の上記記載から、半導体封止用材料に、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂やフェノールアラルキル型のフェノール樹脂硬化剤を用いると、難燃性や耐リフロー性等のはんだ耐熱性、耐湿信頼性等の諸特性が向上することが理解できるから、甲3ないし甲5と技術分野を同じくし、耐リフロー性の向上という自明の課題を有する甲1発明において、甲1の摘示(甲1ウ)、(甲1エ)の記載や甲3ないし甲5の上記記載を考慮して、アラルキル型のエポキシ樹脂及びアラルキル型のフェノール樹脂の少なくとも一方を含むようにすることは、当業者が容易になし得たものである。

オ 本件特許発明1の効果について
甲4の摘示(甲4エ)の「はんだ耐熱性」の項及び摘示(甲4オ)から、フェノールビフェニレン型エポキシ樹脂+硬化剤が、従来のLSI用封止材に比べて、はんだ耐熱性の指標である吸湿後のリフロー時にクラックや剥離の点で優れる旨が実質的に記載されているから、本件特許発明1の効果は、甲1、甲3ないし甲5から予測し得る範囲内のものである。

カ 小括
したがって、本件特許発明1は、甲1発明及び甲3ないし甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、その特許は取り消されるべきものである。

(2)本件特許発明2について
本件特許発明2と甲1発明とを対比すると、両者は上記相違点1以外に、以下の相違点2で相違する。

<相違点2>
本件特許発明2では、硬化促進剤が、一般式(I-2)で示される化合物を含有すると特定されているのに対し、甲1発明では、そのような特定はなされていない点。

上記相違点2について検討する。
甲3の摘示(甲3ア)には、硬化性樹脂組成物に混合される硬化促進剤として、一般式(1)で表される、トリ置換ホスホニオフェノラートタイプの硬化促進剤が記載され(請求項1、2)、半導体封止の用途に用いられること(請求項22)、これらの硬化促進剤は、硬化促進剤として有用であり、エポキシ樹脂組成物に硬化促進剤として混合することにより、硬化性、保存性および流動性に優れ、このエポキシ樹脂組成物の硬化物により半導体素子を封止した場合に、高温に曝された場合であってもクラックや剥離等の欠陥が発生し難いこと(摘示(甲3イ))、一般式(1)で表される硬化促進剤の具体例として、C1及びC7を含む、C1?C9の化合物が記載され、比較例とされる化合物C10(フェノラートを有するフェニル基に水酸基を有する、ベンゾキノンタイプのもの)よりも耐半田クラック性等の面で良好であることが記載されている(摘示(甲3エ))。
甲1発明で特定される硬化促進剤は、甲3発明の比較例においてC10として用いられるベンゾキノンタイプのものに相当するから、甲1発明において、硬化性、保存性および流動性をより向上させ、半導体素子を封止時に、高温に曝された場合のクラックや剥離等を防止する目的で、硬化促進剤として、甲1発明の硬化促進剤よりもより好ましいとされる、甲3の一般式(1)に記載の硬化促進剤を用いることは、当業者が容易に想到することができたものである。

その余の点は、上記(1)で検討したとおりである。
また、本件特許発明2の効果も、予測し得た程度のものである。

したがって、本件特許発明2は、甲1発明及び甲3ないし甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、その特許は取り消されるべきものである。

(3)本件特許発明3について
本件特許発明3と甲1発明とを対比すると、両者は上記相違点1以外に、以下の相違点3で相違する。

<相違点3>
本件特許発明3では、硬化促進剤が、一般式(I-3)で示される化合物を含有すると特定されているのに対し、甲1発明では、この化合物とは異なる一般式(1)で示される化合物を用いている点。

上記相違点3について検討する。
ア 甲1発明の用途及び発明が解決しようとする課題
甲1発明は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂硬化剤、無機充填剤及び硬化促進剤を含む半導体封止用エポキシ樹脂組成物に係る発明であり、その用途は半導体封止用である。
また、甲1発明が解決しようとする課題は、摘示(甲1イ)の記載からみて、成形性に優れ、ガラス転移温度(Tg)が高く、高温信頼性、耐熱衝撃性及び低誘電性良好な半導体用封止材を提供することであるといえるが、甲1の摘示(甲1ク)の表1及び表2に記載された、硬化促進剤aとしてトリフェニルホスフィンと1,4-ベンゾキノンの付加物を用いた実施例1と、硬化促進剤bとしてトリフェニルホスフィンを用いた比較例1、硬化促進剤cとしてイミダゾール化合物を用いた比較例2の組成物の特性を比較すると、少なくとも成形性において実施例1の方が比較例1、2よりも優れている点、及び、摘示(甲1オ)において、甲1発明で特定される硬化促進剤を用いる技術的意義の説明の中で、成形性について言及されている点からみて、甲1発明において、式(1)で表される化合物を用いる主要な技術的意義の1つは、硬化性等の成形性を向上させるためであることが、当業者であれば理解できる。

イ 本件特許発明3に係る一般式(I-3)で示される化合物と甲1発明に係る一般式(1)で示される硬化促進剤との構造上の差異について
甲1発明の一般式(1)で示される化合物の「置換基R^(4)ないしR^(18)を有する3つのフェニル基」、「OH基、O-、R^(1)ないしR^(3)を有するフェニル基」は、それぞれ、本件特許発明1の一般式(I-3)で示される化合物の「置換基R^(1)ないしR^(3)」、「OH、O-、R^(4)ないしR^(6)を有するフェニル基」に相当する。
したがって、本件特許発明3に係る一般式(I-3)で示される化合物は、リンに結合する置換基R^(1)?R^(3)が、炭素数1?18の脂肪族の炭化水素基であるのに対し、甲1発明に係る一般式(1)で示される硬化促進剤は、リンに結合する3つの置換基が、いずれもフェニル基を含み、脂肪族の炭化水素基ではない点で相違し、それ以外の置換基については、両者は少なくとも重複一致するものである。

ウ 甲2の記載
一方、甲2には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂を含有する硬化剤、硬化促進剤、無機充てん剤を必須成分とする封止用エポキシ樹脂成形材料が記載され(摘示(甲2ア)の請求項1)、封止される具体的な対象が半導体であること(摘示(甲2エ))が記載されている。
また、甲2が解決しようとする課題は、摘示(甲2イ)の記載から、流動性や硬化性等の成形性が良好で、反り変形量の低減を図ることができ、さらに臭素化合物やアンチモン化合物を用いずに難燃性の封止用エポキシ樹脂成形材料を提供することであるといえる。
さらに、硬化促進剤の具体的な化合物として、一般式(V)で示されるホスフィン化合物と一般式(VI)で示されるキノン化合物の付加反応物である一般式(XII)で示される化合物が挙げられ、一般式(XII)の置換基R^(1)?R^(3)の選択肢として、置換又は非置換の炭素数1?12のアルキル基が記載されている(摘示(甲2ウ)の段落【0035】)。そして、具体的な例示として、同段落【0036】には、シクロヘキシルジフェニルホスフィンと1,4-ベンゾキノンとの付加反応物、ジシクロヘキシルフェニルホスフィンと1,4-ベンゾキノンとの付加反応物、トリシクロヘキシルホスフィンと1,4-ベンゾキノンとの付加反応物、トリオクチルホスフィンと1,4-ベンゾキノンとの付加反応物、トリブチルホスフィンと1,4-ベンゾキノンとの付加反応物、トリオクチルホスフィンと1,4-ベンゾキノンとの付加反応物等の、リンに結合する置換基が、炭素数1?18の脂肪族の炭化水素基である化合物が挙げられ、特に、流動性と硬化性の観点から、トリフェニルホスフィンと1,4-ベンゾキノンとの付加反応物またはトリブチルホスフィンと1,4-ベンゾキノンとの付加反応物が好ましいと記載されている。
そして、摘示(甲2オ)の実施例1?9において、硬化促進剤としてトリブチルホスフィンと1,4-ベンゾキノンとの付加反応物を用いた例が、また実施例10において、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンと1,4-ベンゾキノンとの付加反応物を用いた例が記載されており、硬化促進剤の配合以外の組成は同一である実施例3と実施例10の特性を対比すると、流動性の指標であるスパイラルフローや、成形時の初期硬化の指標である熱時硬度において、ほぼ同程度であることが示されているから、これらの記載から、当業者であれば、両者の流動性・硬化性等の成形性を含む特性は、概ね同程度であることを認識できる。

エ 甲1発明に甲2に記載の硬化促進剤を適用することの想到容易性について
甲1と甲2とは、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、硬化促進剤及び無機充填剤を含有する、半導体封止用のエポキシ樹脂成形材料に関する点で、その技術分野を同じくするものである。
また、甲1と甲2の解決しようとする課題は、硬化性等の成形性を向上させるという点で、解決しようとする課題が共通するものである。
そして、甲1発明では、硬化促進剤として、一般式(1)で表される、3つの置換基が全てフェニル基を有する3級ホスフィンとベンゾキノン類の付加化合物を用いているが、甲2の摘示(甲2ウ)の段落【0035】、【0036】や(甲2オ)の実施例には、3級ホスフィンとベンゾキノン類の付加化合物として、3つの置換基が全てフェニル基を有するもののみならず、炭素数1?18の脂肪族炭化水素基を有するものも並列して記載されており、上記ウで検討したように、上記摘示の記載からみて、これらの化学構造は互いに類似し、硬化促進剤としての作用や機能が概ね共通又は類似の性質を持つことがうかがわれるから、甲1発明に係る硬化促進剤として、一般式(1)で示される化合物を用いる代わりに、甲1と同じ技術分野の材料において使用され、また成形性の向上という課題が共通し、かつ、一般式(1)で示される化合物と、化学構造が類似し、流動性や硬化性等の成形性を含む特性の面で、共通又は類似の性質を持つと考えられる、甲2に記載の、トリブチルホスフィンと1,4-ベンゾキノンとの付加反応物等の炭素数1?18の脂肪族炭化水素基を有する3級ホスフィンとベンゾキノン類の付加化合物を用いることは、当業者であれば容易になし得たものである。

その余の点は、上記(1)で検討したとおりである。
また、本件特許発明3の効果も、予測し得た程度のものである。

したがって、本件特許発明3は、甲1発明及び甲2ないし甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、その特許は取り消されるべきものである。

(4)本件特許発明4について
本件特許発明4は、本件特許発明1ないし3において、「(D)マレイミド化合物が、1分子中に2つ以上のマレイミド基を有する化合物である」ことを特定するものである。
しかしながら、甲1発明も、「(E)分子中に2個以上のマレイミド基を有する化合物」であるから、この点は実質的な相違点ではなく、新たな相違点はない。
したがって、本件特許発明4は、本件特許発明1ないし3と同様の理由により、甲1発明及び甲2ないし甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、その特許は取り消されるべきものである。

(5)本件特許発明5について
本件特許発明5は、本件特許発明1ないし4において、「さらに(E)無機充填剤を含有する」ことを特定するものである。
しかしながら、甲1発明も、「(C)無機充填剤」を含むものであるから、この点は実質的な相違点ではなく、新たな相違点はない。
したがって、本件特許発明5は、本件特許発明1ないし4と同様の理由により、甲1発明及び甲2ないし甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、その特許は取り消されるべきものである。

(6)本件特許発明6について
本件特許発明6は、本件特許発明1ないし5において、「(A)エポキシ樹脂が、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、及び共重合型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる1以上のエポキシ樹脂を含む」ことを特定するものである。
しかしながら、甲1の上記摘示(甲1ウ)には、「本発明のエポキシ樹脂組成物を構成する(A)エポキシ樹脂は特に限定されない。一般的なエポキシ樹脂としては、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールアルカン型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格含有アラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、スチルベン型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を併用することができる。」と記載されており、重複一致するものであるから、新たな相違点はない。
したがって、本件特許発明6は、本件特許発明1ないし5と同様の理由により、甲1発明及び甲2ないし甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、その特許は取り消されるべきものである。

(7)本件特許発明7について
本件特許発明7は、本件特許発明1ないし6において、「(B)フェノール樹脂が、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、サリチルアルデヒド型フェノール樹脂、及びノボラック型フェノール樹脂、からなる群より選ばれる1以上のフェノール樹脂を含む」と特定するものである。
しかしながら、甲1の上記摘示(甲1エ)には、「硬化剤成分としては、フェノール樹脂が好ましく、フェノールノボラック樹脂、ナフタレン環含有フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂、トリフェノールアルカン型フェノール樹脂、ビフェニル骨格含有アラルキル型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、脂環式フェノール樹脂、複素環型フェノール樹脂、ナフタレン環含有フェノール樹脂、ビスフェノールA、ビスフェノールF等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を併用することができる。」と記載されており、重複一致するものであるから、新たな相違点はない。
したがって、本件特許発明7は、本件特許発明1ないし6と同様の理由により、甲1発明及び甲2ないし甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、その特許は取り消されるべきものである。

(8)本件特許発明8について
本件特許発明8は、本件特許発明1ないし7において、「(D)マレイミド化合物が、4,4’-ジフェニルメタンジマレイミド、N,N’-1,3-フェニレンジマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、ポリフェニルメタンマレイミド、2,2’-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン及び1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む」ことを特定するものである。
しかしながら、甲1の上記摘示(甲1カ)には、「本発明に用いる(E)分子中に2個以上のマレイミド基を有する化合物の構造としては特に限定されるものではなく、N,N’-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’-(3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタン)ビスマレイミド等が挙げられる。」と記載されており、重複一致するものであるから、新たな相違点はない。
したがって、本件特許発明8は、本件特許発明1ないし7と同様の理由により、甲1発明及び甲2ないし甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、その特許は取り消されるべきものである。

(9)本件特許発明9について
本件特許発明9は、「素子と、前記素子を封止する請求項1?請求項8のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物と、を備える電子部品装置。」と特定するものである。
そして、甲1の請求項3には、「請求項1又は2記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物で封止された半導体装置。」と記載されており、係る記載における「半導体」、半導体装置」は、それぞれ、本件特許発明9の「素子」、「電子部品装置」に相当するから、甲1の上記記載に基づいて、甲1発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物により、半導体を封止された半導体装置に想到することは、当業者が容易になし得たものである。
したがって、本件特許発明9は、本件特許発明1ないし8と同様の理由により、甲1発明及び甲1ないし甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、その特許は取り消されるべきものである。

3 まとめ
以上のとおり、本件特許発明1及び2は、取消理由で通知した甲1及び甲3ないし甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、本件特許発明3ないし9は、取消理由で通知した甲1ないし甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

第5 むすび
以上のとおり、本件特許発明1及び2は、取消理由で通知した甲1及び甲3ないし甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、本件特許発明3ないし9は、取消理由で通知した甲1ないし甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-04-04 
出願番号 特願2013-19772(P2013-19772)
審決分類 P 1 651・ 121- Z (C08G)
最終処分 取消  
前審関与審査官 岸 智之  
特許庁審判長 岡崎 美穂
特許庁審判官 堀 洋樹
小柳 健悟
登録日 2017-03-24 
登録番号 特許第6111709号(P6111709)
権利者 日立化成株式会社
発明の名称 硬化性樹脂組成物及び電子部品装置  
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