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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 A01G |
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管理番号 | 1341094 |
異議申立番号 | 異議2018-700125 |
総通号数 | 223 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-07-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-02-16 |
確定日 | 2018-06-01 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6179915号発明「燃焼排ガス中の二酸化炭素を利用した園芸用施設への二酸化炭素供給装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6179915号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 |
理由 |
1 手続の経緯 特許第6179915号の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成24年9月12日(優先権主張 平成23年9月13日)に特許出願され、平成29年7月28日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対して、平成30年2月16日に異議申立人徳田あけみ(以下「申立人」という。)より特許異議の申立てがされたものである。 2 本件発明 特許第6179915号の請求項1?4に係る発明(以下「本件発明1」等といい、全体を「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものである。 3 申立理由の概要 申立人は、証拠として甲第1号証?甲第15号証(主引用例は、甲第1号証または甲第2号証)を提出し、請求項1?4に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1?4に係る特許を取り消すべきものである旨、主張している。 〔証拠〕 甲第1号証:特開2008-228622号公報 甲第2号証:特開2006-340683号公報 甲第3号証:特開昭58-220626号公報 甲第4号証:国際公開2009/084632号 甲第5号証:「安価なナノチューブで二酸化炭素をしっかりキャッチ(1)」、[online]、2009年3月12日、[平成30年1月18日検索]、インターネット<URL:http://archive.wiredvision.co.jp/blog/yamaji/200903/200903121101.html> 甲第6号証:「安価なナノチューブで二酸化炭素をしっかりキャッチ(2)」、[online]、2009年3月12日、[平成30年1月18日検索]、インターネット<URL:http://archive.wiredvision.co.jp/blog/yamaji/200903/200903121102.html> 甲第7号証:「安価なナノチューブで二酸化炭素をしっかりキャッチ(3)」、[online]、2009年3月12日、[平成30年1月18日検索]、インターネット<URL:http://archive.wiredvision.co.jp/blog/yamaji/200903/200903121103.html> 甲第8号証:特開2009-173490号公報 甲第9号証:特開2008-179533号公報 甲第10号証:特開2009-214101号公報 甲第11号証:特開昭62-7416号公報 甲第12号証:特開平5-123525号公報 甲第13号証:特開平10-1685号公報 甲第14号証:特開平6-253682号公報 甲第15号証:特開2004-66091号公報 4 証拠の記載事項 (1)甲第1号証 甲第1号証には、 「A 650℃程度に加熱すると逆反応によりCO_(2)を放出するリチウム複合酸化物で構成された二酸化炭素吸収材が充填されたCO_(2)貯留器12と、 B 原動機11とCO_(2)貯留器12とを結ぶラインにより、CO_(2)貯留器12に、原動機11から出た排気ガスを送ることにより、該排気ガス中の二酸化炭素を吸着させる手段と、 C 電動ダンパー17aを閉、電動ダンパー17bを開、電動ダンパー22aを開、電動ダンパー22bを閉として二酸化炭素を吸着したCO_(2)貯留器12に空気を送ると共に、電気ヒータなどで二酸化炭素吸収材を所定の温度まで加熱して吸着した二酸化炭素を脱着させ、該脱着した二酸化炭素を含む空気を温室16に放出させる手段と、 を備えることを特徴とするトリジェネレーションシステム。」の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。(なお、「空気」以外については、申立人の主張のとおりとした。) (2)甲第2号証 甲第2号証には、 「A 650℃程度に加熱すると逆反応によりCO_(2)を放出するリチウム複合酸化物で構成された二酸化炭素吸収材2が充填された二酸化炭素吸収手段3と、 B 送風手段4により、該二酸化炭素吸収手段3に、加温機6からの排気ガスを送ることにより該排気ガス中の二酸化炭素を吸着させる手段と、 C 二酸化炭素を吸着した二酸化炭素吸収手段3に空気を送ると共に、ヒータ5により二酸化炭素吸収材2を加熱することで、吸着した二酸化炭素を脱着させ、該脱着した二酸化炭素を含む空気を温室内に放出させる手段と、 を備えることを特徴とする二酸化炭素供給装置1。」の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。(なお、「空気」以外については、申立人の主張のとおりとした。) (3)甲第3号証 ア 甲第3号証(特に、発明の名称、及び1頁右下欄?2頁左上欄参照。)には、 「ハウス内を暖房するために用いられた重油を燃料とするボイラの燃焼排ガス中のCO_(2)のみを、CO_(2)に対して良好な選択吸着能を有する活性炭に吸着させ、この活性炭に吸着されたCO_(2)は、ハウス内の雰囲気ガスを循環して通過させることによつて脱着され、ハウス内に供給される、炭酸ガス施肥栽培ハウス内の雰囲気調整法。」という技術事項(以下「甲3技術事項」という。)が記載されている。 イ さらに甲第3号証には、「吸着剤からのCO_(2)の脱着は一般には、高濃度で回収しようとするため、減圧あるいは加熱などの補助手段が必要であると考えられているが、本発明者の実験によれば、吸着時と同温、同圧であつても、脱着時に吸着剤に多量のガスを接触させることによつて、吸着されているCO_(2)を炭酸ガス施肥栽培に適した濃度で効率的に脱着させ得ることが確認された。」(3頁左上欄10?17行)こと、「以上のようにこの発明によれば、ハウス内における炭酸ガス施肥に必要な炭酸ガスは、ハウス内の暖房用ボイラから発生した燃焼排ガスから常温吸着によつて分離されたものが使用される。しかも、その脱着には減圧、加熱などの特別な操作を必要としないので、炭酸ガスのコストは著しく低く、炭酸ガス施肥栽培の最大の課題であつた経済性の悪さを解決することができる。」(3頁左下欄8?15行)ことが記載されている。 5 判断 (1)本件発明1について ア 本件発明1と、甲1発明または甲2発明を対比する。 甲1発明及び甲2発明の「空気」について、甲第1号証及び甲第2号証には、「外気」とは明確に記載されていないが、申立人の主張どおり「外気」であるとして対比すると、本件発明1と甲1発明または甲2発明とは、少なくとも、二酸化炭素吸着剤について、本件発明1は、二酸化炭素の濃度差によって吸脱着が可能なものであるのに対し、甲1発明または甲2発明は、650℃程度に加熱すると逆反応によりCO_(2)を放出するリチウム複合酸化物で構成された二酸化炭素吸収材である点(以下「相違点1」という。)、及び、吸着した二酸化炭素を脱着させる際に、本件発明1は、二酸化炭素の回収・貯留手段に、外気を送るのに対し、甲1発明は、CO_(2)貯留器12に外気を送ると共に、電気ヒータなどで二酸化炭素吸収材を所定の温度まで加熱する点で相違し、甲2発明は、二酸化炭素吸収手段3に外気を送ると共に、ヒータ5により二酸化炭素吸収手段3を加熱する点(以下「相違点2」という。)、で相違している。 イ 上記相違点1及び2を合わせて検討する。 a 甲第3号証には、上記4(3)アで示した甲3技術事項が記載されている。 甲3技術事項は、CO_(2)の吸着剤として、本件発明の実施例で挙げられた活性炭を用いており、その作用効果についても、上記4(3)イで挙げた「吸着時と同温、同圧であっても、・・・吸着されているCO_(2)を炭酸ガス施肥栽培に適した濃度で効率的に脱着させる」こと、「その脱着には減圧、加熱などの特別な操作を必要としない」ことであるが、甲1発明または甲2発明の二酸化炭素の吸着に係る主要構成(相違点1及び2に係る構成)を、甲3技術事項の構成に代える動機付けはない。 b 申立人は、甲1、甲2発明に甲3発明を適用する動機付けとして、技術分野、作用、機能及び課題が共通する旨主張するが、甲第1号証、甲第2号証には、二酸化炭素吸着剤として、活性炭等の他の吸着剤を用いることは何ら記載されておらず、また、甲1、甲2発明は、それらの発明の課題を解決するために、二酸化炭素吸着剤としてリチウム複合酸化物を採用し、さらに発明を具現化するものであるから、他の吸着剤に代える動機付けがあるとはいえない。 c しかも、甲3技術事項は、炭酸ガス施肥栽培ハウス内の雰囲気調整法であって、CO_(2)を脱着するガスは、ハウス1内の雰囲気ガスを循環して通過させていることから、当該循環して通過させる事項は、甲3技術事項の必須な構成といえる。よって、甲3技術事項を甲1発明または甲2発明に適用するに際して、当該循環して通過させる事項を省いた上で、活性炭を用いることや加熱しない事項を適用することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 また、上記相違点1及び2に係る本件発明1の構成は、甲第4号証ないし甲第15号証に記載も示唆もされていない。 したがって、本件発明1は、甲第1号証ないし甲第15号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2?4について 本件発明2?4は、本件発明1の構成をすべて含み、さらに減縮したものであるから、上記(1)の判断と同様の理由により、甲第1号証ないし甲第15号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)まとめ 以上のとおり、本件発明1ないし4は、甲第1号証ないし甲第15号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 6 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によって、本件発明1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2018-05-21 |
出願番号 | 特願2012-200204(P2012-200204) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(A01G)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 田辺 義拓 |
特許庁審判長 |
小野 忠悦 |
特許庁審判官 |
西田 秀彦 住田 秀弘 |
登録日 | 2017-07-28 |
登録番号 | 特許第6179915号(P6179915) |
権利者 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 奈良県 大阪瓦斯株式会社 国立研究開発法人産業技術総合研究所 日本軽金属株式会社 |
発明の名称 | 燃焼排ガス中の二酸化炭素を利用した園芸用施設への二酸化炭素供給装置 |
代理人 | 江藤 保子 |
代理人 | 江藤 保子 |
代理人 | 相田 悟 |
代理人 | 江藤 保子 |
代理人 | 江藤 保子 |
代理人 | 相田 悟 |
代理人 | 相田 悟 |
代理人 | 相田 悟 |
代理人 | 相田 悟 |
代理人 | 江藤 保子 |