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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A62C
管理番号 1341097
異議申立番号 異議2018-700200  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-07-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-03-05 
確定日 2018-06-04 
異議申立件数
事件の表示 特許第6193437号発明「消火ガス噴射装置の施工方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6193437号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6193437号の請求項1ないし4に係る特許(以下、「請求項1に係る特許」ないし「請求項4に係る特許」という。)についての出願(以下、「本件出願」という。)は、平成22年7月15日(優先権主張、平成21年10月23日、平成22年2月4日、平成22年4月2日)に出願された特願2010-161096号の一部を新たな特許出願とした特願2011-267400号の一部を、新たな特許出願とした特願2013-210605号の一部を、新たな特許出願とした特願2014-35425号の一部を、新たな特許出願とした特願2014-125348号の一部を、新たな特許出願とした特願2015-136075の一部を、さらに平成28年4月22日に新たな出願としたものであって、平成29年8月18日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成30年3月5日に特許異議申立人 株式会社コーアツ(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
請求項1ないし4の特許に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明4」という。)は、それぞれ、本件特許の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
高圧の消火ガス供給源に接続される枝管に消火ガス噴射装置を取り付ける、消火ガス噴射装置の施工方法であって、
前記消火ガス噴射装置は、消火対象区画内のO_(2)濃度を低下させて消火し、
前記消火ガス噴射装置は、前記枝管に接続され、ノズル部を有する噴射ヘッドと、前記ノズル部から放出される消火ガスが流入する多孔質金属からなる吸音材と、前記吸音材に接触して前記吸音材を固定するリング部材と、前記噴射ヘッドと前記リング部材とを接続する接続部材とを備え、
前記ノズル部にはノズル孔が設けられており、
前記吸音材は消火ガスを放出する一方端面と、前記ノズル孔の開口と対面する他方端面とを有し、前記ノズル孔から放出される消火ガスを前記多孔質金属内へ前記他方端面から直接流入させることができ、消火ガスが前記ノズル孔から放出直後に過膨張して衝撃波を発生させる前に前記吸音材に流入させ、
前記接続部材は、前記噴射ヘッドに螺合することが可能な螺合部を含み、
前記一方端面は、前記リング部材に接する部分を除いて大気開放されており、前記枝管側には消火ガスが前記噴射ヘッドから放出されず、
前記吸音材の前記一方端面から消火ガスが大気へ放出されるとともに、前記吸音材の周面からも消火ガスが大気へ放出され、前記他方端面から前記一方端面まで前記吸音材は隙間なく詰められており、
前記噴射ヘッドに前記枝管を螺合させることで前記枝管に前記噴射ヘッドを取り付ける、消火ガス噴射装置の施工方法。
【請求項2】
前記噴射ヘッドに前記枝管の外周面を螺合させる、請求項1に記載の消火ガス噴射装置の施工方法。
【請求項3】
前記ノズルヘッドには、前記枝管に連通して前記枝管の内径よりも小径の前記ノズル孔が設けられる、請求項1または2に記載の消火ガス噴射装置の施工方法。
【請求項4】
前記消火対象区画の壁面に前記消火ガス噴射装置を取り付ける、請求項1から3のいずれか1項に記載の消火ガス噴射装置の施工方法。」

第3 特許異議申立ての概要
申立人は、証拠方法として甲第1号証ないし甲第12号証(以下、「甲1」ないし「甲12」という。)を提出し、次の申立理由を主張している。

1.申立理由
本件発明1ないし4は、甲1ないし甲12に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1ないし4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

2.各甲号証
甲1:欧州特許出願公開1151800号明細書
甲2:特開平8-173565号公報
甲3:実願昭57-408号(実開昭58-103100号)のマイクロフィルム
甲4:特表2003-530922号公報
甲5:実公平4-33372号公報
甲6:実願昭55-60387号(実開昭56-161110号)のマイクロフィルム
甲7:実願昭60-41317号(実開昭61-157117号)のマイクロフィルム
甲8:国際公開第2008/108538号
甲9:特開2001-246009号公報
甲10:特開平10-272194号公報
甲11:実願平3-41491号(実開平7-44002号)のCD-ROM
甲12:「STPG圧力配管用炭素鋼鋼管」(JIS G3454)
http://www.pipe-nikko.co.jp/about/pdf/stocklist/carbon/P03-09_STPG.pdf#search=%27%E9%AB%98%E5%9C%A7%E3%82%AC%E3%82%B9%E7%AE%A1+%E3%82%B9%E3%82%B1%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%AB%E9%8B%BC%E7%AE%A1%27

第4 甲1ないし甲12の記載等
1.甲1の記載等
(1)甲1の記載
甲1には、「消火ガス放出用消音ノズル」に関して、図面とともに概略以下の記載がある。(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)

1a)甲1段落[0001]の訳文(訳文は申立人による。以下同様。)
「[0001] 本発明は、消火ガス放出用消音ノズルに関し、特に、ガス方式消火用流体で稼働する消火システム式に好適に適用されるためのものである。」

1b)甲1段落[0003]ないし[0005]の訳文
「[0003] 先行技術による消火システムの分配ノズルは、重大な欠点を持っている。これらの公知の分配ノズルは、高圧の消火ガスがそれらを通り抜けて放出される際に、非常に騒々しい。
[0004] 先行技術のノズルによるガスの放出中に、まわりの騒音レベルは、最大で130-140dB、平均で100dBを超える値に到達する。
[0005] 作業環境の中で測定された最大の雑音のしきい値は、90dBであるように勧められている。」

1c)甲1段落[0007]ないし[0011]の訳文
「[0007] 現行の規則によれば、消火システムによって保護された区域への放出時間は、化学ガスの場合は10秒以内に、不活性ガスの場合は60秒以内に保つ必要がある。これらの放出時間を保証するために、従来技術によるノズルは特定の形状を有する。
[0008] 図5は、参照番号100で全体として示される、従来技術によるノズルを示す。ノズル100は、実質的に円筒形の金属材料の単一の本体によって形成される。ノズル100は上部101を有し、上部101に、テーパする中間体103が続き、中間部103は、上部101よりも小さな直径を有する、より低い円筒部104で終る。
[0009] 上部101には、消火ガスの流入のための軸方向に配置:された円形の孔102が設けられている。孔102の直径は約30mmである。
[0010] 次に、軸方向孔102は、中間部103で狭くなり、下部104においては約24mmの直径を取る。径方向ガス出口孔105が、テーパ状中間部103及び下側円筒部分104に形成される。孔105は2?15mmまでの範囲であり得る直径を有し、好ましくは5mmの直径を有し、90°から360°までの円周の円弧に沿ってノズルの側面に配置することができる。図5に示すように、ノズル100は、消火ガス用に15個の出口孔105を有する。
[0011] 孔102に入ると、消火ガスは706mm^(2)の侵入面積に遭遇する。ガスが中間部103及び下部104に伝播すると、ガスは入口領域に対してより小さい領域に遭遇する。ガスがノズル100内に伝播する際にガスが遭遇する空気の断面積が小さくなることにより、ガスが圧力上昇し、その結果ガスが孔105を通って放出される間に高い騒音レベルが生じる。」

1d)甲1段落[0013]の訳文
「[0013] 発明の目的は、雑音を低減し、特に、消火ガスの放出中の騒音レベルを90dB以下に維することができる、消火ガス放出用消音ノズルを提供して、従来技術の欠点を除去することにある。」

1e)甲1段落[0019]の訳文
「[0019] 本発明によるノズルの特定の構造は、従来技術のノズルよりも実質的に大きい消火ガスのための出口孔の形成に利用可能な表面を有する可能性をさらに提供する。さらに、ガス出口孔は、本発明によるノズルの下面及び上面の両方に配置することができる。」

1f)甲1段落[0034]ないし[0037]の訳文
「[0034] フィルタ組立体4は、亜鉛メッキを施した金属ワイヤーを、カバー3の穴8の直径と等しいか、それよりわずかに小さな直径の円盤状のフィルタ本体を得るために適切に押圧成型されることによって作られた、2つの焼結フィルタ31及び32からなる。フィルタ31及び32は、高圧及び高温(約500℃)で使用されたときでさえ、寿命を保証する高い機械抵抗を達成することができるために熱拡散処理にさらされる。フィルタ31及び32は、さらに、消火ガスを放出することによって引き起こされる空気の変動による騒音を相当に減ずることができることを保証するために、非常に高い濾過フィールド(10-50ミクロン)を有している。
[0035] 金属製バッフルが、消火ガスの流れを偏向させるために、2つのフィルタ31と32の間に設けられる。
[0036] バッフル33を間に置いて、焼結フィルタ31及び32を含むフィルタ組立体4は、カバーの穴の内部に収容される。また、フィルタ31の下端部は基体の座部20に収容される。そして、ボルト11をそれぞれの穴10及び22に挿通し、基体2から下方へ出るボルト11の終端部に螺合するナット25によって締結される。
[0037] フィルタ組立体4の高さは、フランジの下面6と基体2の上面の間の少なくとも20mmの高さがあるように設計され、フィルタ部材4の外側面は約20mmに亘って覆いがない状態にされている。」

1g)甲1段落[0040]ないし[0048]の訳文
「[0040] さらに、本発明によるノズル1の特定の構造は、従来技術のノズルと比較して、ガス出口孔を形成するために、より大きな表面を与える。実際には、本発明によるノズルでは、下面に17個の孔があり、上面に8個の孔があり、合計25個の孔があり得る。さらに、ガスは、覆われていないままであるフィルタ部材4の側面によって表されるさらなる出口領域を有する。
[0041] 図6-図8を参照することによって、本発明のノズル200の別の実施例は記述される。その中で、同様のあるいは対応する部材は、最初の実施例に記述したのと同じ参照数字によって示される。
[0042] ノズル200は基体202、カバー203及び最初の実施例に記述されたそれと本質的に同一のフィルタ組立体4を含む。
[0043] カバー203は、内部にフィルタ組立体4を含んでいる部屋208が位置する凹んだ円筒状部材205を含む。この円筒状部材は、内部の部屋208に連通する長方形のスロット230を持っている。好ましくは、4つのスロット230が、円筒状部材205の上部の部分をそれより低い部分に接続する4つのカラム(図6において3つが見えている。)を形成するために提供される。円筒状部材205は、カラム231によって、上部の円筒状部に下部の円筒状部を接続、一体化して形成することができる。
[0044] ガス分配ラインを受け取るために外方へ開いた座234を有するコップ形状の入口233は、円筒状部材205の上部の表面上に設けられる。座234は、部屋208に連通する開口207を有している。
[0045] 部屋208に連通する複数の軸方向の孔9は、入口233に関しての外側で、円筒状部材205の上部の表面に形成される。最初の実施例のように、孔9は8個設けられる。
[0046] 円筒状部材205の下部には、底面部材202に形成した外ねじ241と螺合する内ねじ240を形成する。底面部材202は、複数の軸方向の孔21,例えば、最初の実施例のように17個を有する円形のプレートである。
[0047] ノズル200の組み立ては、カバー203の部屋208にフィルタ部材4を挿入し、カバー203の下端へ底面部材202をねじで留めることで達成される。
[0048] ガス分配ラインは、入口233の座234に収容され、開口207を通って、部屋208内に広がり、フィルタ4によって空気の変動が減じられる。そして、最初の実施例と同様に、消火ガスは、孔9から上方向、スロット230から横方向、孔21から下方向へ放出される。」

1h)段落[0003]の記載から、消火システムは、高圧の消火ガスを使用することが理解できるので、段落[0048]の「ガス分配ライン」は、「高圧の消火ガス供給源に接続されている」と解される。

1i)段落[0007]の記載から、消火システムは、不活性ガスを放出するものであることを前提としていると理解できる。この場合、消火システムは、消火対象区画内のO_(2)濃度を低下させて消火するものであることは、当業者にとって自明である。

1j)段落[0036]及び[0047]、図1,4,6,8の記載から、基体202は、焼結フィルタ31に接して、フィルタ組立体4を固定しているものと解される。

1k)段落[0034]の記載及び技術常識から「焼結フィルタ31及び焼結フィルタ32」は、「多孔質金属」であることが理解できる。

1l)段落[0046]の「円筒状部材205の下部には、底面部材202に形成した外ねじ241と螺合する内ねじ240を形成する。」及び段落[0047]の「カバー203の下端へ底面部材202をねじで留めることで達成される。」の記載から、底面部材202(基体202)に形成された外ねじ241及びカバー203に形成された内ねじ240は、カバー203と底面部材202(基体202)とを接続する接続手段であると認められる。

(2)甲1発明
上記(1)の記載事項及び認定事項並びに図1ないし8の記載を総合すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。

「高圧の消火ガス供給源に接続されるガス分配ラインにノズル200を取り付ける、ノズル200の取り付け方法であって、
前記ノズル200は、消火対象区画内のO_(2)濃度を低下させて消火し、
前記ノズル200は、前記ガス分配ラインに接続され、コップ形状の入口233を有するカバー203と、前記コップ形状の入口233から放出される消火ガスが流入する、バッフル33を間に置いた、多孔質金属である焼結フィルタ31及び焼結フィルタ32を含むフィルタ組立体4と、前記フィルタ組立体4に接触して前記フィルタ組立体4を固定する基体202と、前記カバー203と前記基体202とを接続する接続手段とを備え、
前記コップ形状の入口233には開口207が設けられており、
前記フィルタ組立体4は消火ガスを放出する一方端面と、前記開口207と対面する他方端面とを有し、前記開口207から放出される消火ガスを前記焼結フィルタ32内へ前記他方端面から流入させることができ、
前記接続手段は、基体202に形成された外ねじ241及びカバー203に形成された内ねじ240であり、
前記一方端面は、前記基体202に設けられた孔21以外の部分に接する部分を除いて大気開放されており、前記ガス分配ライン側に消火ガスが前記カバー203の孔9から放出され、
前記フィルタ組立体4の前記一方端面から消火ガスが大気へ放出されるとともに、前記フィルタ組立体4の周面からも消火ガスが大気へ放出され、前記他方端面から前記一方端面まで前記フィルタ組立体4は存在しており、
前記コップ形状の入口233の座234にガス分配ラインを収容することで前記ガス分配ラインに前記カバー203を取り付ける、ノズル200の取り付け方法。」

2.甲2の記載
甲2には、消火ガスを用いる消火設備において、高圧ガス容器に接続される枝管に、消火ガスを放出する噴射ヘッドを接続することが記載されている(特に、段落【0002】ないし【0003】、図5)。

3.甲3の記載等
(1)甲3の記載
甲3には、「空気パージ用消音器」に関して、図面とともに以下の記載がある。なお、拗音、促音は小文字で表記した。

3a)「一端にはパージ用の空気の入力部が設けられ他端には内部に入力された空気の出力部が設けられた筒状のケースと、少なくとも透孔あるいは切欠部のいずれかが形成され空気が屈折して流れるようにケース内に一定の間隔で配置された複数の仕切板と、通気性を有しこれら仕切板間に充填された吸音材とで構成されたことを特徴とする空気パージ用消音器。」(実用新案登録請求の範囲)

3b)「ケース1は筒状に形成されていて、一端にはパージ用の空気の入力部が設けられ、他端には内部に入力された空気の出力部が設けられている。本実施例では、入力部としてノズル2が設けられ、出力部として環状に形成されたキャップ4が設けられている。これらノズル2およびキャップ4は、それぞれケース1の端部内周にねじ結合されている。スペーサ3は、各仕切板5,6の間隔を保つためのものであって、ケース1内周に嵌め合うように環状に形成されている。仕切板5,6に、ケース1内で空気が屈折して流れるようにするためのものであって、少なくとも透孔あるいは切欠部のいずれかが形成されたものを用いる。」(明細書第3ページ第2ないし14行)

3c)「吸音材7は、通気性を有するものであって、仕切板5,6間に充填されている。このような吸音材7としては、ガラス繊維や石綿等が好適である。整流板8は、キャップ4から出力される空気の流れを平均化するものであって、多数の径の等しい透孔が形成されている。取付部材9は、機器本体10に消音器を取り付けるためのものである。
このように構成された装置の動作について、第3図を用いて説明する。
第3図は、第1図の構成における空気の流れを実線で示し、音の流れを破線で示した動作説明図である。第3図に示すように、ノズル2から入力されたパージ用の空気は、仕切板5の切欠部および仕切板6の透孔を通り、ケース1内で屈折しながらキャップ4から送出される。一方、音は、仕切板5,6間で反射を繰り返しながらキャップ4に向かって進行するが、その音波エネルギーはその過程で吸音材7に吸収されて熱エネルギーに変換されてしまい、外部にはほとんど送出されることはない。」(第3ページ第20行ないし第4ページ第19行)

3d)「また、スペーサおよび整流板は、必要に応じて用いればよい。」(明細書第5ページ第10ないし11行)

(2)甲3記載事項
上記(1)及び図1の記載を総合すると、甲3には次の事項(以下、「甲3記載事項」という。)が記載されている。

「一端にはパージ用の空気の入力部が設けられ他端には内部に入力された空気の出力部が設けられた筒状のケース1と、少なくとも透孔あるいは切欠部のいずれかが形成され空気が屈折して流れるようにケース内にスペーサ3によって一定の間隔で配置された複数の仕切板5,6と、通気性を有しこれら仕切板間に充填された吸音材7と、前記出力部として環状に形成されたキャップ4と、前記キャップ4から出力される空気の流れを平均化する整流板8と、で構成された空気パージ用消音器であって、前記スペーサ3及び前記整流板8は必要に応じて設けられたものであること。」

4.甲4の記載
甲4には、排出ノズル106は、高圧火災抑制剤の放出により生じる騒音を減少させる消音器を備えていることが記載されている(特に、【請求項12】、段落【0091】ないし【0095】、図10)。

5.甲5の記載
甲5には、排気マフラーにおいて、多孔性金属体17を、大きな出口孔25を備えた環状の押さえ板18により押さえつけるようにすることが記載されている(特に、第3欄第31ないし37行、第4欄第9ないし11行、第3及び4図)。

6.甲6の記載
甲6には、空気制御器に使用される消音器において、筒状の本体11により形成される空間に繊維状の消音部材14を充填することが記載されている(特に、明細書第2ページ第8ないし14行、第2図)。

7.甲7の記載
甲7には、空気圧縮機等の排気口に取り付けられる消音器において、本体1内に本体1の空間内を充たす円柱状の吸音体35を組み込むことが記載されている(特に、明細書第7ページ第10ないし13行、第3図)。

8.甲8の記載
甲8には、空圧装置の出口に接続される消音器において、側壁に複数の孔を有する円筒状の本体2内に多孔性の音の吸収性物質3を充填することが記載されている(特に、段落[3]、図1)。

9.甲9の記載
甲9には、消火対象区画の壁面に、消火ノズル6を取り付けることが記載されている(特に、段落【0006】ないし【0010】、図1及び2)。

10.甲10の記載
甲10には、消火対象区画の壁面に、消火ノズル15を取り付けることが記載されている(特に、段落【0010】、図1)。

11.甲11の記載
甲11には、消火対象区画の壁面に、消化剤の噴射ヘッド16-1?16-Nを取り付けることが記載されている(特に、段落【0008】、図2)。

12.甲12の記載
甲12には、圧力配管用炭素鋼鋼管(呼び径:10A?150A、呼び厚さ:Sch40?Sch80)の仕様が記載されている。

第5 判断
1.本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「ガス分配ライン」は、その機能、構成又は技術的意義から、本件発明1における「枝管」に相当し、以下同様に、「ノズル200」は「消火ガス噴射装置」に、「取り付け方法」は「施工方法」に、「コップ形状の入口233」は「ノズル部」に、「カバー203」は「噴射ヘッド」に、それぞれ相当する。
さらに、甲1発明における「バッフル33を間に置いた、多孔質金属からなる焼結フィルタ31及び焼結フィルタ32を含むフィルタ組立体4」と、本件発明1における「多孔質金属からなる吸音材」とは、「多孔質金属を含む吸音材」という限りにおいて一致し、以下同様に、「基体202」と「リング部材」とは、「固定部材」という限りにおいて、「接続手段」と「接続部材」とは、「接続手段」という限りにおいて、「開口207」と「ノズル孔」とは、「消火ガス放出孔」という限りにおいて、「基体202に設けられた孔21以外の部分に接する部分」と「リング部材に接する部分」とは、「固定部材に接する部分」という限りにおいて、「存在しており」と「隙間なく詰められており」とは、「存在しており」という限りにおいて、それぞれ一致している。

よって、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「高圧の消火ガス供給源に接続される枝管に消火ガス噴射装置を取り付ける、消火ガス噴射装置の施工方法であって、
前記消火ガス噴射装置は、消火対象区画内のO_(2)濃度を低下させて消火し、
前記消火ガス噴射装置は、前記枝管に接続され、ノズル部を有する噴射ヘッドと、前記ノズル部から放出される消火ガスが流入する多孔質金属を含む吸音材と、前記吸音材に接触して前記吸音材を固定する固定部材と、前記噴射ヘッドと前記固定部材とを接続する接続手段とを備え、
前記ノズル部には消火ガス放出孔が設けられており、
前記吸音材は消火ガスを放出する一方端面と、前記消火ガス放出孔の開口と対面する他方端面とを有し、前記消火ガス放出孔から放出される消火ガスを前記多孔質金属内へ前記他方端面から流入させることができ、
前記一方端面は、前記固定部材に接する部分を除いて大気開放されており、
前記吸音材の前記一方端面から消火ガスが大気へ放出されるとともに、前記吸音材の周面からも消火ガスが大気へ放出され、前記他方端面から前記一方端面まで前記吸音材は存在しており、
前記枝管に前記噴射ヘッドを取り付ける、消火ガス噴射装置の施工方法。」

[相違点1]
本件発明1においては、「吸音材」が「多孔質金属からなる吸音材」であって「他方端面から前記一方端面まで前記吸音材は隙間なく詰められて」いるものであり、「枝管側には消火ガスが前記噴射ヘッドから放出され」ないものであるのに対して、甲1発明においては「吸音材」が「バッフル33を間に置いた、多孔質金属からなる焼結フィルタ31及び焼結フィルタ32を含むフィルタ組立体4」であって「他方端面から前記一方端面まで前記フィルタ組立体4は存在して」いるが、焼結フィルタ31及び焼結フィルタ32の間にバッフル33があるため「隙間なく詰められて」いるとはいえないものであり、「ガス分配ライン側に消火ガスが前記カバー203の孔9から放出され」るものである点。
[相違点2]
「吸音材に接触して吸音材を固定する固定部材」に関して、本件発明1においては「リング部材」であるのに対して、甲1発明においては「基体202」である点。
[相違点3]
「消火ガス放出孔」に関して、本件発明1においては「ノズル孔」であるのに対して、甲1発明においては「開口207」である点。
[相違点4]
「吸音材」に関して、本件発明1においてはノズル孔から放出される消火ガスを前記多孔質金属内へ前記他方端面から「直接」流入させることができ、「消火ガスが前記ノズル孔から放出直後に過膨張して衝撃波を発生させる前に前記吸音材に流入させ」るものであるのに対して、甲1発明においては消火ガスを前記焼結フィルタ32内へ前記他方端面から「直接」流入させることができるのか、及び「消火ガスが前記開口207から放出直後に過膨張して衝撃波を発生させる前に前記吸音材に流入させ」るのか不明な点。
[相違点5]
「噴射ヘッドと固定部材とを接続する接続手段」に関して、本件発明1においては「接続部材」であって「接続部材は、前記噴射ヘッドに螺合することが可能な螺合部を含む」ものであるのに対して、甲1発明においては「接続手段」であって「基体202に形成された外ねじ241及びカバー203に形成された内ねじ240」である点。
[相違点6]
「枝管に噴射ヘッドを取り付ける」ことに関して、本件発明1においては「前記噴射ヘッドに前記枝管を螺合させることで」枝管に噴射ヘッドを取り付けるのに対して、甲1発明においては、「コップ形状の入口233の座234にガス分配ラインを収容することで」ガス分配ラインにカバー203を取り付けるものである点。

以下、上記相違点について検討する。

[相違点1]について
甲1には「バッフル33(金属製バッフル)」について、「金属製バッフルが、消火ガスの流れを偏向させるために、2つのフィルタ31と32の間に設けられる。」(段落[0035])との記載があり、「消火ガス」について、「ガス分配ラインは、入口233の座234に収容され、開口207を通って、部屋208内に広がり、フィルタ4によって空気の変動が減じられる。・・・消火ガスは、孔9から上方向、スロット230から横方向、孔21から下方向へ放出される。」(段落[0048])との記載がある。
これらの記載及び図6及び8の図示内容並びに技術常識を勘案すると、甲1発明における「バッフル33」の役割は、消火ガスの流れを偏向させ、消火ガスを、孔9から上方向、スロット230から横方向及び孔21から下方向へ放出させることにあるものと理解できる。
一方、甲3記載事項は、「一端にはパージ用の空気の入力部が設けられ他端には内部に入力された空気の出力部が設けられた筒状のケース1と、少なくとも透孔あるいは切欠部のいずれかが形成され空気が屈折して流れるようにケース内に一定の間隔で配置された複数の仕切板5,6と、前記各仕切板5,6の間隔を保つスペーサ3と、通気性を有しこれら仕切板間に充填された吸音材7と、前記出力部として環状に形成されたキャップ4と、前記キャップ4から出力される空気の流れを平均化する整流板8と、で構成された空気パージ用消音器であって、前記スペーサ3及び整流板8は必要に応じて設けられたものであること」であって、甲1発明の「バッフル33」は、甲3記載事項の「スペーサ3」、「整流板8」とは、機能・作用が異なるから、甲1発明に甲3記載事項を適用したとしても、甲1発明から「バッフル33」をなくして、「他方端面から一方端面まで吸音材は隙間なく詰められた」構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
また、甲6ないし甲8には、消音器において、筒状の本体により形成される空間に吸音材を充填することが記載されている。
しかしながら、甲6ないし甲8に記載の消音器は、専ら空気制御器や空気圧縮機等の空気排出口に接続されるものであって、空気を上方向、横方向及び下方向に排出させる必要のないものであるから、甲6ないし甲8の記載から、消音器において、筒状の本体により形成される空間に吸音材を充填することは周知の技術であるといえるとしても、このことから、甲1発明において、「バッフル33」をなくして、「他方端面から一方端面まで吸音材は隙間なく詰められた」構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
さらに、申立人が述べるように、枝管側には消火ガスが放出されないようにすることが一般的な消火設備において当業者が通常採用する消火ガスの放出構造であり、また、甲1の図5に、ガス分配ライン側には消火ガスが放出されないようにしたノズル100が記載されていたとしても、甲1発明のような構造の「ノズル200」において、「孔9」を省略して、ガス分配ライン側には消火ガスが放出されないようにする積極的な動機付けとはならないし、また「孔9」を省略したとしても、甲1発明は、スロット230から横方向に消火ガスを放出させるものであるから、「バッフル33」をなくして、「他方端面から一方端面まで吸音材は隙間なく詰められた」構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
また、他の証拠の記載事項においても、「バッフル33」をなくして、「他方端面から一方端面まで吸音材は隙間なく詰められた」構成とすることについて開示や示唆するものではない。
よって、甲1発明及び甲3記載事項並びに甲2及び甲4ないし甲12に記載の事項に基いて上記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たことではない。
そうすると、上記相違点2ないし6について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲3記載事項並びに甲2及び甲4ないし甲12に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2.本件発明2ないし4について
本件特許の特許請求の範囲における請求項2ないし4は、請求項1の記載を直接的又は間接的に、かつ、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、本件発明2ないし4は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、本件発明2ないし4は、本件発明1と同様の理由により、甲1発明及び甲3記載事項並びに甲2及び甲4ないし甲12に記載の事項に記載の事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。

第6 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-05-24 
出願番号 特願2016-86327(P2016-86327)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A62C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 石川 貴志  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 鈴木 充
松下 聡
登録日 2017-08-18 
登録番号 特許第6193437号(P6193437)
権利者 エア・ウォーター防災株式会社
発明の名称 消火ガス噴射装置の施工方法  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
代理人 森 治  

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