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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B21D
審判 全部申し立て 2項進歩性  B21D
管理番号 1341106
異議申立番号 異議2018-700139  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-07-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-02-21 
確定日 2018-06-07 
異議申立件数
事件の表示 特許第6185104号発明「プレス機械のワーク搬送装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6185104号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6185104号の請求項1?3に係る特許についての出願は、平成28年3月14日に特許出願され、平成29年8月4日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成30年2月21日に特許異議申立人土田修史(以下「特許異議申立人」という)により特許異議の申立てがされたものである。

2.本件発明
特許第6185104号の請求項1?3の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものである。

3.申立理由の概要
特許異議申立人は、証拠として特開2009-208080号公報(以下「引用例1」という)を提出し、請求項1?3に係る特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから、請求項1?3に係る特許を取り消すべきものである旨主張し、また、主たる証拠として引用例1を、従たる証拠として国際公開第2014/171064号(以下「引用例2」という)及び特開2014-184467号公報(以下「引用例3」という)を提出し、請求項1?3に係る特許は同法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1?3に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

4.引用例の記載
(1)引用例1
引用例1には、「タンデムプレスラインにおいてプレスステージ間でワークを搬送するワーク搬送装置」の発明が記載されている(段落【0001】参照)。
引用例1に記載された発明である「ワーク搬送装置」は、昇降ユニットにより昇降させられる第1アームユニット15A及び第2アームユニット15Bを有している(段落【0019】参照)。
引用例1に記載された第1アームユニット15Aは、回動可能に取り付けられた第1アームバー23A及び第2アームバー24Aを含み、第2アームユニット15Bは、回動可能に取り付けられた第1アームバー23B及び第2アームバー24Bを含んでいる(段落【0023】参照)。
引用例1に記載された第2アームバー24Aの端部には第1スライドアーム25Aが回動可能に結合し、第2アームバー24Bの端部には第2スライドアーム25Bが回動可能に結合し、第1スライドアーム25Aと第2スライドアーム25Bとは相互にスライド可能に結合している(段落【0024】参照)。
引用例1に記載された第1スライドアーム25Aには、ワークWを把持する第1ワーク把持部26Aが、第2スライドアーム25Bには、ワークWを把持する第2ワーク把持部26Bが、それぞれ取り付けられている(段落【0025】参照)。
引用例1に記載された第1アームバー23A、第1アームバー23B、第2アームバー24A、第2アームバー24Bを、それぞれ回転駆動させる駆動モータ29A、29B、30A、30Bが搭載されている(段落【0027】参照)。

(2)引用例2
引用例2には、「2枚のワークを同時にプレス機に搬送するワーク搬送装置」が記載されている(段落[0024]参照)。
引用例2に記載された「ワーク搬送装置100」は、「右アーム21」及び「左アーム22」を有し、右アーム21は「クロスバー3」に連結し、左アーム22には「シフター5」が取り付けられている。また、「シフター5」はクロスバー3の長さ方向に沿って移動可能となるように「クロスバー3」に取り付けられている。さらに、「クロスバー3」には「第1吸着手段3a」が取り付けられ、「シフター5」には「第2吸着手段7a」が取り付けられており、2枚のワークを同時に吸着することができる。(段落[0029]、[0031]、[0039]参照)

(3)引用例3
引用例3には、「ワークをプレス機に搬入するワーク搬入装置」が記載されており、プレス機100に固定されたシートローダ20のアーム21に、複数の吸着部31を有する吸着ユニット30が支持されているという技術的事項が記載されている(段落【0024】-【0025】参照)。

5.判断
(1)特許法第29条第1項第3号
ア 請求項1に係る発明について
(ア)対比・判断
請求項1に係る発明と引用例1に記載された発明の「ワーク搬送装置」とを対比すると、引用例1に記載されたワーク搬送装置の「第1アームバー23A及び23B」は、請求項1に係る発明の「第1アーム」に、同様に「第2アームバー24A及び24B」が「第2アーム」に、「第1スライドアーム25A及び第2スライドアーム25B」が「クロスアーム」に、それぞれ相当する。
また、引用例1に記載された「第1ワーク把持部26A及び第2ワーク把持部26B」は、ワークを解放可能に保持する機能を有する点で、請求項1に係る発明の「ワーク保持ユニット」に相当する。
しかし、引用例1に記載された「ワーク搬送装置」は、以下a、bに示すように請求項1に係る発明の特定事項を有していない。

a 請求項1に係る発明の「ワーク保持ユニット」は、「クロスアームに着脱可能に接続される」構成であるが、引用例1に記載された「第1ワーク把持部26A及び第2ワーク把持部26B」は、「第1スライドアーム25A及び第2スライドアーム25B」に着脱可能に接続されているかは明示されておらず、不明である点。
b 請求項1に係る発明は、「前記クロスアームに搭載されるシフト装置であって、前記クロスアームの長軸方向に沿って駆動側シフト部材をシフト動作用駆動源により当該クロスアームに対して相対移動させるシフト装置と、前記ワーク保持ユニットに搭載されるスライド装置であって、ワーク保持ユニットがクロスアームに接続された状態にて、前記駆動側シフト部材に対応する被駆動側シフト部材が前記駆動側シフト部材により従動されることで前記ツールホルダーをY軸方向に移動させるスライド装置」が備えられているのに対し、引用例1に記載された「ワーク搬送装置」は、請求項1に係る発明の「クロスアームに搭載されるシフト装置」及び「ワーク保持ユニットに搭載されるスライド装置」に相当する部材は備えられていない点。

そうすると、結局、上記a、bは、請求項1に係る発明と引用例1に記載された発明との相違点になるから、請求項1に係る発明と引用例1に記載された発明とは一致しないことになる。
したがって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものとはいえない。

(イ)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、上記相違点aの構成が、引用例1の段落【0025】、図1等に記載されているとしている(3ページ、「申立ての理由の要約」の表の証拠の欄(e)についてを参照)。しかし、引用例1の当該箇所に記載されているのは、第1スライドアーム25A又は第2スライドアーム25Bに、第1ワーク把持部26A又は第2ワーク把持部26Bが「取り付けられている」ことしか明示されてなく、図1や明細書の他の箇所を見ても、当該スライドアームに当該ワーク把持部が「着脱可能に接続」されていることを示唆する記載はない。
また、引用例1の段落【0025】には、他に「着脱自在に取り付けられて」という記載もあるが、これは「ワーク把持手段28」の「ハンドバー27」への取り付けについての説明であり、相違点aとは無関係の事項である。

また、特許異議申立人は、特許異議申立書において、上記相違点bの構成について、「本件特許発明においては、シフト装置及びスライド装置が別部材のように記載されているが、スライド装置はシフト装置に従動するものであるから、一体のクロスバーユニット103であるといえ、これは、甲第1号証のスライドアームに相当する。」(14ページ8?11行)と主張する。
しかし、請求項1に係る発明において、「シフト装置」及び「スライド装置」は、「クロスアーム」に対して「駆動側シフト部材及び被駆動側シフト部材」を相対移動させる機能を有するもので、「クロスアーム」とは別の部材である。また、引用例1に記載された「スライドアーム」は、スライド可能に結合した「第1スライドアーム25A」と「第2スライドアーム25B」を相対移動させるものであり、スライドアームとワーク把持部とを相対移動させるものではない。
よって、請求項1に係る発明の「シフト装置及びスライド装置」は、引用例1の「スライドアーム」に相当するものではないから、上記主張は理由がない。

イ 請求項2及び3に係る発明について
請求項2及び3に係る発明は、請求項1に係る発明を引用する関係にあるから、請求項1に係る発明と同様に、引用例1に記載された発明とは一致しない。
したがって、請求項2および3に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものとはいえない。

(2)特許法第29条第2項
ア 請求項1に係る発明について
請求項1に係る発明と引用例1に記載された発明とを対比した結果、上記(1)ア(ア)で示された相違点a、bが認められた。
そこで、これら相違点a、bについて検討すると、相違点a、bに係る構成は、引用例2及び引用例3にも記載されていない。
引用例2に記載されたワーク搬送装置も、クロスバー3及びシフター5と、第1吸着手段3a及び第2吸着手段7aとが、着脱可能に接続されているかは不明であるし、請求項1に係る発明の「クロスアームに搭載されるシフト装置」及び「ワーク保持ユニットに搭載されるスライド装置」に相当する部材は備えられていない。
引用例3に記載されたワーク搬送装置も、アーム21に支持される吸着ユニット30の具体的構造は不明である。
また、上記相違点a、bに係る構成が周知慣用技術であることの根拠も不明であり、引用例1に記載されたワーク搬送装置において、当該構成を設けることが単なる設計変更ということもできない。
そして、請求項1に係る発明は、上記相違点a、bに係る構成を有することにより、比較的簡単かつ低コストで、かつ、軽量・コンパクトな構成でありながら、ワークの搬送姿勢を自由度高く変更することができるプレス機械のワーク搬送装置を提供できるという効果を奏するものである。
したがって、請求項1に係る発明は、上記引用例1に記載された発明、引用例2及び引用例3に記載された事項から、当業者が容易に想到し得るものではない。
よって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。

イ 請求項2及び3に係る発明について
請求項2及び3に係る発明は、請求項1に係る発明を更に減縮したものであるから、上記請求項1に係る発明についての判断と同様の理由により、上記引用例1に記載された発明、引用例2及び引用例3に記載された事項から、当業者が容易に想到し得るものではない。
よって、請求項2及び3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。

6.むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-05-28 
出願番号 特願2016-49466(P2016-49466)
審決分類 P 1 651・ 113- Y (B21D)
P 1 651・ 121- Y (B21D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 塩治 雅也飯田 義久  
特許庁審判長 平岩 正一
特許庁審判官 栗田 雅弘
中川 隆司
登録日 2017-08-04 
登録番号 特許第6185104号(P6185104)
権利者 アイダエンジニアリング株式会社
発明の名称 プレス機械のワーク搬送装置  
代理人 提中 清彦  

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