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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  B64F
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  B64F
管理番号 1341116
異議申立番号 異議2018-700186  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-07-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-02-28 
確定日 2018-06-06 
異議申立件数
事件の表示 特許第6193528号発明「移動式搭乗橋の雨どい」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6193528号の請求項1、4、6?8に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6193528号の請求項1?8に係る特許についての出願は、2015年4月27日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2014年4月30日 (KR)韓国)を国際出願日とする出願であって、平成29年8月18日に特許権の設定登録がされ、その後、その請求項1、4、6?8に係る特許に対し、平成30年2月28日に、特許異議申立人日高賢治(以下「申立人」という。)より特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第6193528号の請求項1、4、6?8に係る発明(以下「本件発明1、4、6?8」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1、4、6?8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
外部トンネルと、
前記外部トンネル内に配置される内部トンネルと、
前記内部トンネルに設けられ、乗客が往来するように歩行路の形態に構成された内部トンネル歩行路と、
前記内部トンネル歩行路の下端部に配置され複層形態に構成される外部トンネル歩行路と、
前記外部トンネル歩行路の下端部に設けられる雨どいと、
を含み、
乗客が通行する前記外部トンネル歩行路と前記雨どいとが分離して、前記外部トンネル歩行路で前記雨どいが見えないように構成されたことを特徴とする移動式搭乗橋の雨どい。
【請求項4】
前記内部トンネルと前記外部トンネルとの間の隙間が形成された部位に安全カバーが備えられることを特徴とする請求項1に記載の移動式搭乗橋の雨どい。
【請求項6】
前記安全カバーは、取り外し可能であることを特徴とする請求項4に記載の移動式搭乗橋の雨どい。
【請求項7】
前記外部トンネルに段差を形成し、雨水の流動を変更させる外部側面フレームをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の移動式搭乗橋の雨どい。
【請求項8】
前記外部側面フレームは、「┐」字の形状であることを特徴とする請求項7に記載の移動式搭乗橋の雨どい。」

第3 申立理由の概要
申立人は、証拠として、次の甲第1?3号証を提出し、以下の申立理由1及び2により、本件発明1、4、6?8に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

甲第1号証:中国実用新案第202244103号明細書
甲第2号証:特開2005-193830号公報
甲第3号証:中国実用新案第2727050号明細書

1 申立理由1(特許法第29条第1項第3号)
本件発明1及び4は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。したがって、本件発明1及び4に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
2 申立理由2(特許法第29条第2項)
本件発明1及び4は、甲第1号証に記載された発明に基いて、本件発明6は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて、本件発明7及び8は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本件発明1、4、6?8に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

第4 各甲号証の記載事項等
1 甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明
ア 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。
なお、申立人が提出した甲第1号証の全文訳文を参考にした訳文で示す。 また、下線は当審で付した。以下同様。
(1a)「[0001] 本考案はボーディングブリッジに関し、特に構造を改善した伸縮式ボーディングブリッジに関する。」
(1b)「[0048] 本考案が提供する伸縮式ボーディングブリッジは、従来の伸縮式ボーディングブリッジへの改善であって、図1に示すように、その主な構造は、少なくとも2つの互いに入れ子で設けられる内側通路11と外側通路12とからなる伸縮通路装置を備えていることから、伸縮通路装置の長さを変更することで伸縮を実現することができ、その多見される係合構造は、図2ないし図8を参考することができるものであって、内側通路11および外側通路12の下部両側には通路伸縮ローラ装置14が設けられている。例えば従来のボーディングブリッジ構造では、伸縮通路装置は伸長した後、内側通路11と外側通路12との係合関係により、内側通路11内部の人が歩行するための廊下床面は必然的に外側通路12の廊下床面よりも高くなるが、本考案でこの問題を解決するために採用する態様とは、歩道装置2を増設することで外側通路12の廊下床面を持ち上げて、ちょうど内側通路11の廊下床面と面一とすることで、歩行の安全、安定の目的を達成するというものである。具体的には図1を参照することができ、本考案では内側通路11と外側通路12との間に底部空間15を確保している。その歩道装置2は共に連結されている複数の床板21を備えており、該歩道装置2の第1端は底部空間15内に位置し、通常は外側通路12の底部に固定されており、該歩道装置2の第2端は外側通路12の前端または近傍に固定されており、このうち歩道装置2の第2端の取付位置の高さは該第1端の取付位置よりも高いうえ、概ね内側通路11の底部廊下と面一となっている。該構造にて、伸縮通路装置が伸長する、つまり内側通路11と外側通路12とが相対的に移動して伸長するとき、例えば図5に示すように、歩道装置2内の元々は底部空間15内に位置していた床板21が内側通路11の相対的な移動により引き出されるとともに外側通路12内に露出するものであり、該構造的動作を基礎として、支持装置3を増設することで外側通路12に引き出された床板21を支持し、該床板21の高さが歩道装置2の第2端と面一となって、この部分の引き出されて支持される床板21は基本的に内側通路11の廊下床面と面一となって、内側通路11の廊下床面と共同して乗客が歩行する一本の平坦な廊下を構成する。伸縮通路装置が収縮する、つまり内側通路11と外側通路12とが相対的に移動して収縮したとき、外側通路12に位置する床板21は内側通路11の相対的な移動により底部空間15内に回収されるので、伸縮通路装置の収縮動作に干渉することはない。歩道装置2の底部空間15への移出、移入時に一定高さの昇降動作を有することから、本考案は、内側通路12寄りの端部に、通過する床板21を昇降させるための案内装置4を配設してもよい。図5および図6に示すように、支持装置3の上方には、支持装置3およびその対応する支持構造を遮蔽する遮蔽装置32を追加することで、機械構造および通過する乗客を保護する目的を達成するとともに、廊下を簡素にして美観を高めている。
・・・
[0058] ボーディングブリッジの使用環境には変化が多く、雨天に対応するために、ボーディングブリッジには対応する排水構造が必要となる。通常雨水は外側通路12の外壁に沿って流れ落ち、雨水の一部は外側通路12と内側通路11との間に流れ込み、通路の壁面に沿って流れ落ちる可能性があるが、本考案においては、通路伸縮ローラ装置14の上方に排水シールド16を設けるとともに、排水シールド16には外側に向けて傾斜する斜面を持たせており、外側通路12の下端側には位置が排水シールド16の斜面に対応する排水孔17が設けられて、通路壁面に沿って流れ落ちた水は、排水シールド16の傾斜を経て、排水孔17に流れ込み、排水孔17から流れ出すが、より優れた排水効果のために、内側通路11の前端側壁に排水パイプ18を設けることができ、該排水パイプ18の上端は内側通路11の上部に位置しており、該排水パイプの下端は排水シールド16の上方に位置することで、排水パイプ18から流れ落ちた水は上記排水シールド16の構造に沿って排出することができる。また、遮蔽装置32と内側通路11の側壁との間に一定の間隔を有することで、内側通路11の側壁上の水が遮蔽装置32に流れ込むのを回避することができる。」
(1c)甲第1号証には、以下の図1、5及び7が示されている。




(1d)また、上記図7において、申立人が符号100を付記して作成した図(特許異議申立書6頁)を以下に示す。

イ 甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、伸縮式ボーディングブリッジに関する技術について開示されているところ(摘示(1a))、甲第1号証の段落[0048]及び[0058](摘示(1b))の記載によれば、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「少なくとも2つの互いに入れ子で設けられる内側通路11と外側通路12とからなる伸縮通路装置を備え、
内側通路11と外側通路12との間に底部空間15を確保し、その歩道装置2は共に連結されている複数の床板21を備えており、該歩道装置2の第1端は底部空間15内に位置し、外側通路12の底部に固定されており、該歩道装置2の第2端は外側通路12の前端または近傍に固定されており、
内側通路11と外側通路12とが相対的に移動して伸長するとき、歩道装置2内の元々は底部空間15内に位置していた床板21が内側通路11の相対的な移動により引き出されるとともに外側通路12内に露出するものであり、支持装置3を増設することで外側通路12に引き出された床板21を支持し、該床板21の高さが歩道装置2の第2端と面一となって、この部分の引き出されて支持される床板21は内側通路11の廊下床面と面一となって、内側通路11の廊下床面と共同して乗客が歩行する一本の平坦な廊下を構成し、
通路伸縮ローラ装置14の上方に排水シールド16を設けるとともに、排水シールド16には外側に向けて傾斜する斜面を持たせており、外側通路12の下端側には位置が排水シールド16の斜面に対応する排水孔17が設けられて、通路壁面に沿って流れ落ちた水は、排水シールド16の傾斜を経て、排水孔17に流れ込み、排水孔17から流れ出す、
伸縮式ボーディングブリッジの構造。」

2 甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
(2a)「【0001】
本発明は、ボーディングブリッジに関し、特に、通路幅を広げることができ、さらに雨水排水を良好としたボーディングブリッジに関するものである。」
(2b)「【0013】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明すると、図1は本発明にかかるボーディングブリッジの内側トンネル体と外側トンネル体の接続部の片側断面図(図3中のB-B断面に対応)、図2は他の例を示す接続部の片側断面図である。
図1において、1は内側トンネル体の側壁、2はトンネル床、2aはトンネル床に敷いたカーペット、3は前記側壁1と前記トンネル床2とを結合する補強部材(本例ではアングル材)、4は水止部材、5は外側トンネル体、6は外側トンネルのトンネル床、6aは前記トンネル床6aに敷いたカーペット、7はガーターパンである。
前記補強部材3は本例ではアングル材等の型鋼で構成され、さらにその外側は、図1に示すように側壁1の外側1aより少し張出し(ΔW)て形成されており、その張り出し部の端部に、水止部材4が取り付けられている。水止部材4は補強部材3に溶接等の適宜固定手段により取り付けるが、図2に示すように側壁の外側1aに接着あるいはネジ止め等の適宜固定手段によって別部材41を取り付けて構成することも可能である。・・・
・・・
【0016】
上記水止部材は、補強部材に溶接等により一体化して構成しているが、水止部材は後付けも可能であり、また固定手段もネジ、接着等種々の手段を採用することができる。・・・」
(2c)甲第2号証には、以下の図1が示されている。


3 甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
(3a)3頁6行
「本実用新案は、排水装置、特に搭乗ブリッジの排水装置に関する。」
(3b)5頁28行?6頁1行
「このように、排水溝13と第一通路1との間に上下両端のみにそれぞれ入水口と出水口を有する排水通路が構成されている。雨天に第一通路1の頂部に雨水が前端に流れた場合、雨水は前止板14で堰き止められ、且つ両側の止めプレート15に向かって流れ、その後止めプレート15上の漏れ水口151から排水溝13に流入し、排水溝13に沿って第二通路2の溝21内に入ることによりボーディングブリッジから排出される。」
(3c)甲第3号証には、以下の図2及び5が示されている。

第5 当審の判断
1 申立理由1について
1-1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「外側通路12」は、本件発明1の「外部トンネル」に相当する。
イ 甲1発明の「内側通路11」は、本件発明1の「内部トンネル」に相当する。
また、上記「内側通路11」と「外側通路12」とは、「互いに入れ子で設けられる」ものであり、内部通路11は、外側通路12内に配置されることが明らかであるから、甲1発明の「内側通路11」は、本件発明1の「前記外部トンネル内に配置される内部トンネル」に相当するものといえる。
ウ 甲1発明は、「内側通路11と外側通路12との間に底部空間15を確保し、その歩道装置2は共に連結されている複数の床板21を備えており、該歩道装置2の第1端は底部空間15内に位置し、外側通路12の底部に固定されており、該歩道装置2の第2端は外側通路12の前端または近傍に固定されており、内側通路11と外側通路12とが相対的に移動して伸長するとき、歩道装置2内の元々は底部空間15内に位置していた床板21が内側通路11の相対的な移動により引き出されるとともに外側通路12内に露出するものであり、支持装置3を増設することで外側通路12に引き出された床板21を支持し、該床板21の高さが歩道装置2の第2端と面一となって、この部分の引き出されて支持される床板21は内側通路11の廊下床面と面一となって、内側通路11の廊下床面と共同して乗客が歩行する一本の平坦な廊下を構成」するものである。
ここで、甲1発明の上記「内側通路11の廊下床面」は、「乗客が歩行する一本の平坦な廊下を構成」するものであるから、本件発明1の「前記内部トンネルに設けられ、乗客が往来するように歩行路の形態に構成された内部トンネル歩行路」に相当するものといえる。
また、甲1発明の上記「内側通路11の相対的な移動により引き出されるとともに外側通路12内に露出する」「床板21」は、「支持装置3を増設することで」「支持」され、「該床板21の高さが歩道装置2の第2端と面一となって、この部分の引き出されて支持される床板21は内側通路11の廊下床面と面一となって、内側通路11の廊下床面と共同して乗客が歩行する一本の平坦な廊下を構成」するものであるから、本件発明1の「前記内部トンネル歩行路の下端部に配置され複層形態に構成される外部トンネル歩行路」とは、「外部トンネル歩行路」の限度で共通するものといえる。
エ 甲1発明の「伸縮式ボーディングブリッジの構造」は、少なくとも、移動式搭乗橋の構造を具備することが明らかであるから、本件発明1の「移動式搭乗橋の雨どい」とは、「移動式搭乗橋の構造」の限度で共通するものといえる。

以上によれば、本件発明1と甲1発明とは、
「外部トンネルと、
前記外部トンネル内に配置される内部トンネルと、
前記内部トンネルに設けられ、乗客が往来するように歩行路の形態に構成された内部トンネル歩行路と、
外部トンネル歩行路と、
を含む移動式搭乗橋の構造。」の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
「外部トンネル歩行路」について、本件発明1は、「前記内部トンネル歩行路の下端部に配置され複層形態に構成される」ものであるのに対し、甲1発明は、「内側通路11と外側通路12との間に底部空間15を確保し、その歩道装置2は共に連結されている複数の床板21を備えており、該歩道装置2の第1端は底部空間15内に位置し、外側通路12の底部に固定されており、該歩道装置2の第2端は外側通路12の前端または近傍に固定されており、内側通路11と外側通路12とが相対的に移動して伸長するとき、歩道装置2内の元々は底部空間15内に位置していた床板21が内側通路11の相対的な移動により引き出されるとともに外側通路12内に露出するものであり、支持装置3を増設することで外側通路12に引き出された床板21を支持し、該床板21の高さが歩道装置2の第2端と面一となって、この部分の引き出されて支持される床板21は内側通路11の廊下床面と面一となって、内側通路11の廊下床面と共同して乗客が歩行する一本の平坦な廊下を構成」するものである点。

<相違点2>
「移動式搭乗橋の構造」について、本件発明1は、「移動式搭乗橋の雨どい」であって、「前記外部トンネル歩行路の下端部に設けられる雨どいと、を含み、乗客が通行する前記外部トンネル歩行路と前記雨どいとが分離して、前記外部トンネル歩行路で前記雨どいが見えないように構成され」ているのに対し、甲1発明は、「伸縮式ボーディングブリッジの構造」であって、「通路伸縮ローラ装置14の上方に排水シールド16を設けるとともに、排水シールド16には外側に向けて傾斜する斜面を持たせており、外側通路12の下端側には位置が排水シールド16の斜面に対応する排水孔17が設けられて、通路壁面に沿って流れ落ちた水は、排水シールド16の傾斜を経て、排水孔17に流れ込み、排水孔17から流れ出す」構成を備えるものではあるものの、「雨どい」に係る構成は特定されていない点。

(2)判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
ア 本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の「雨どい50は取り外し式の構成であってもよく、「U」字状の構成又は「□」字状の上端部に通孔が形成され得る。・・・内部トンネルの雨水は安全カバー40の間に流れ、内部トンネルと外部トンネルとの隙間に流動して雨どいに雨水を捕集することができる。内部トンネルの歩行通路下端部に雨水が流れるようにすることで、歩行通路では雨どいが見えることなく外観が良好である長所がある。」(段落【0027】?【0028】)との記載によれば、本件発明1の「雨どい」を配設することの意義は、少なくとも、内部トンネルと外部トンネルとの隙間に流動した雨水を捕集し排水することと理解することができる。
ここで、甲1発明は、「通路伸縮ローラ装置14の上方に排水シールド16を設けるとともに、排水シールド16には外側に向けて傾斜する斜面を持たせており、外側通路12の下端側には位置が排水シールド16の斜面に対応する排水孔17が設けられて、通路壁面に沿って流れ落ちた水は、排水シールド16の傾斜を経て、排水孔17に流れ込み、排水孔17から流れ出す」構成を備えるものであるから、確かに、内部トンネル(内側通路11)と外部トンネル(外側通路12)との隙間に流動した雨水を排水する構成は備えるものの、かかる構成は、あくまでも、「外側通路12の下端側」であって、「排水シールド16の斜面に対応する」「位置」に「排水孔17が設けられて」、「通路壁面に沿って流れ落ちた水は、排水シールド16の傾斜を経て、排水孔17に流れ込み、排水孔17から流れ出す」ように構成したものであるから、雨どいのように、雨水を捕集して排出するような構成ということはできない。
イ ここで、申立人は、上記相違点2に関し、甲第1号証の段落[0058](摘示(1b))及び図7(摘示(1d))によれば、符号100の部材(なお、符号100は申立人が付したものである。)が、排水シールド16に沿って落下した雨水を排水孔17から排水する際の雨どいの役目を果たしていることを看取することができる旨主張するので(特許異議申立書7頁14?16行)、以下検討する。
甲第1号証の図7(摘示(1c))には、確かに、申立人が指摘する「符号100の部材」(摘示(1d))が記載されている。
しかし、図7は、ボーディングブリッジの横断面であるから、「符号100の部材」について、その横断面の形状を看取することはできても、その機能が、排水シールド16に沿って落下した雨水を排水孔17から排水する際の雨どいの役目を果たしているとまで断ずることはできない。
補足すれば、「雨どい」としての「とい(樋)」とは、字義的に「1.屋根を流れる雨水を受けて地上に流す溝状・筒状の装置。金属薄板・竹などを用いる。軒に渡すものを軒樋(横樋)といい、その端に竪たてに渡すものを竪樋という。とゆ。とよ。雨樋。→呼樋よびどい。2.水を送るためにかけわたした管。ひ。」(広辞苑第六版)を意味するものであり、また、本件明細書にも「雨どい」について、「雨どい50は・・・「U」字状の構成又は「□」字状の上端部に通孔が形成され得る。・・・内部トンネルと外部トンネルとの隙間に流動して雨どいに雨水を捕集することができる。」(段落【0027】?【0028】)と記載されているように、本件発明1の「雨どい」は、雨水を捕集して排出するような溝状あるいは筒状に構成されるものと解するのが相当であるところ、申立人が指摘する図7に示される「符号100の部材」は、その横断面の形状が、溝状あるいは筒状に構成されたものということはできないし、まして雨水を捕集して排出するような構成ということもできない。
また、甲第1号証の段落[0058](摘示(1b))には、「通路伸縮ローラ装置14の上方に排水シールド16を設けるとともに、排水シールド16には外側に向けて傾斜する斜面を持たせており、外側通路12の下端側には位置が排水シールド16の斜面に対応する排水孔17が設けられて、通路壁面に沿って流れ落ちた水は、排水シールド16の傾斜を経て、排水孔17に流れ込み、排水孔17から流れ出す」と記載されているが、かかる記載は、上記アで述べたとおり、「外側通路12の下端側」であって、「排水シールド16の斜面に対応する」「位置」に「排水孔17が設けられて」、「通路壁面に沿って流れ落ちた水は、排水シールド16の傾斜を経て、排水孔17に流れ込み、排水孔17から流れ出す」ように構成することが記載されているのであって、雨水を捕集して排出するような雨どいの構成を記載ないし示唆するものではない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
ウ 以上のとおり、本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者は、少なくとも上記相違点2で相違することが明らかであるから、本件発明1は、甲1発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当しない。

1-2 本件発明4について
本件発明4は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに減縮したものである。
そして、上記「1-1(2)」で述べたとおり、本件発明1は、甲1発明であるとはいえないことから、本件発明4も、本件発明1と同様に甲1発明でないことは明らかである。

2 申立理由2について
2-1 本件発明1について
上記「1 1-1(1)」で述べたとおり、本件発明1と甲1発明とは、上記相違点1及び相違点2で相違し、その余の点で一致する。
ここで、上記相違点2について検討すると、上記「1 1-1(2)」で述べたとおり、甲第1号証には、上記相違点2に係る本件発明1の構成は記載されていない。
また、上記相違点2に係る本件発明1の構成が当業者にとって容易に想到し得るとする合理的な理由もない。
したがって、少なくとも、上記相違点2に係る本件発明1の構成は容易想到とはいえないものであるから、その余の相違点1を検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2-2 本件発明4について
本件発明4は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに減縮したものであるから、本件発明1と同様に、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2-3 本件発明6について
申立人は、甲第2号証には、ボーディングブリッジ(移動式搭乗橋)の内部トンネルと外部トンネルとの間に設けられる部材の一例である水止部材41について、ネジ等の固定手段で取り外し可能であることが記載されているから、本件発明6は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する(特許異議申立書11頁22行?12頁8行)。
確かに、甲第2号証には、申立人が指摘する水止部材に係る構成について記載されているが(摘示(2a)?(2c))、上記相違点2に係る本件発明1の構成は記載も示唆もなされていない。
したがって、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに減縮した本件発明6も、本件発明1と同様に、甲1発明及び甲第2号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2-4 本件発明7及び8について
申立人は、甲第3号証には、逆L型の外部側面フレームにより雨水の流動を変更させることが記載されているから、本件発明7及び8は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する(特許異議申立書12頁9行?13頁14行)。
確かに、甲第3号証には、申立人が指摘する外部側面フレームに係る構成について記載されているが(摘示(3a)?(3c))、上記相違点2に係る本件発明1の構成は記載も示唆もなされていない。
したがって、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに減縮した本件発明7及び8も、本件発明1と同様に、甲1発明及び甲第3号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、4、6?8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、4、6?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-05-25 
出願番号 特願2017-502556(P2017-502556)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (B64F)
P 1 652・ 113- Y (B64F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 前原 義明  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 氏原 康宏
中田 善邦
登録日 2017-08-18 
登録番号 特許第6193528号(P6193528)
権利者 コリア エアポーツ コーポレーション
発明の名称 移動式搭乗橋の雨どい  
代理人 中村 哲平  
代理人 白鹿 智久  
代理人 大森 純一  
代理人 折居 章  
代理人 関根 正好  
代理人 金山 慎太郎  
代理人 高橋 満  
代理人 金子 彩子  
代理人 千葉 絢子  

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