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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  H04M
審判 一部申し立て 2項進歩性  H04M
管理番号 1341122
異議申立番号 異議2018-700183  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-07-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-02-28 
確定日 2018-06-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第6187052号発明「情報管理システム,無線端末及び周囲環境管理方法」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第6187052号の請求項1,2,3,7及び8に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6187052号の請求項1-8に係る特許についての出願は,平成25年9月3日(国内優先権主張 平成24年9月12日)に特許出願され,平成29年8月10日にその特許権の設定登録がされ,その後,その請求項1,2,3,7及び8に係る特許に対し,特許異議申立人三重野正博(以下,「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第6187052号の請求項1,2,3,7及び8の特許に係る発明(以下,それぞれ「本件発明1」等といい,総称して「本件発明」ということがある。)は,それぞれその特許請求の範囲の請求項1,2,3,7及び8に記載された,以下のとおりのものである。

【請求項1】
自端末の識別情報を記憶した無線端末と,自装置の位置情報を送信する配信装置と,前記無線端末の位置を管理する管理サーバとを含む情報管理システムであって,
前記無線端末は,
自端末の周囲環境状況を示す周囲環境情報を検出する周囲環境検出手段と,
前記配信装置から,前記位置情報を受信する位置情報受信手段と,
自端末の前記識別情報と,前記配信装置から受信した前記位置情報と,前記周囲環境情報とを,前記配信装置を介して,前記管理サーバに送信する端末情報送信手段とを有すること,
を特徴とする情報管理システム。

【請求項2】
前記配信装置は,
前記無線端末の前記端末情報送信手段から,前記識別情報と,前記位置情報と,前記周囲環境情報とを受信する端末情報受信手段と,
前記端末情報受信手段により受信した前記識別情報と,前記位置情報と,前記周囲環境情報とを,前記管理サーバへ送信する端末情報送信手段とを有し,
前記管理サーバは,
前記配信装置の前記端末情報送信手段から,前記識別情報と,前記位置情報と,前記周囲環境情報とを受信する端末情報受信手段と,
前記端末情報受信手段により受信した前記識別情報と前記位置情報に基づいて前記無線端末の位置と,前記周囲環境情報に基づいて前記無線端末の周囲環境状況とを管理する管理手段とを有すること,
を特徴とする請求項1記載の情報管理システム。

【請求項3】
前記無線端末は,
前記周囲環境情報を表示する表示手段と,
を有することを特徴とする請求項1又は2記載の情報管理システム。

【請求項7】
自装置の位置情報を送信する配信装置と通信し,自端末の識別情報を記憶した無線端末であって,
自端末の周囲環境状況を示す周囲環境情報を検出する周囲環境検出手段と,
自装置の位置情報を送信する配信装置から,当該位置情報を受信する位置情報受信手段と,
自端末の識別情報と,前記配信装置から受信した前記位置情報と,前記周囲環境情報とを,前記配信装置を介して,管理サーバに送信する端末情報送信手段と,
を有することを特徴とする無線端末。

【請求項8】
自端末の識別情報を記憶した無線端末と,自装置の位置情報を送信する配信装置と,前記無線端末の位置を管理する管理サーバとを含む情報管理システムにおける前記無線端末の周囲環境管理方法であって,
前記無線端末は,
自端末の周囲環境状況を示す周囲環境情報を検出する周囲環境検出手順と,
前記配信装置から,前記位置情報を受信する位置情報受信手順と,
自端末の前記識別情報と,前記配信装置から受信した前記位置情報と,前記周囲環境情報とを,前記配信装置を介して,前記管理サーバに送信する端末情報送信手順と,
を実行することを特徴とする周囲環境管理方法。

第3 申立ての理由の概要
異議申立人は,証拠としてそれぞれ刊行物である,特表2008-504185号公報を甲第1号証として,特開2011-35438号公報を甲第2号証として,特開2007-334582号公報を甲第3号証として提出し,本件特許の請求項1,2,7及び8に係る発明は,甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号の規定に該当し,特許を取り消すべきものであり,さらに,本件特許の請求項1,2,3,7及び8に係る発明は,特許出願前に当業者が甲第1号証から甲第3号証に記載された発明に基いて容易に発明することができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を取り消すべきものである旨主張している。

第4 刊行物の記載
1 甲第1号証について
(1)甲第1号証の記載
異議申立人は,甲第1号証(特表2008-504185号公報)に記載の発明は,以下の摘記事項に記載されたものである旨主張している。なお,下線部は,異議申立人が本件特許発明と対応する箇所として示した部分,又は,合議体が強調する部分を表す。

「【請求項1】
識別データと,位置データと,環境状態センサーとを無線周波数タグから送信するステップを包含する方法。」
「【請求項26】
読み取り装置において前記無線周波数タグから識別データ,位置データ,および環境状態センサーデータを受信するステップと,識別データ,位置データ,および環境状態センサーデータを該読み取り装置からデータ蓄積および分析を実行するサイトサーバーへ再送信するステップとをさらに包含する,請求項1に記載の方法。」
「【請求項40】
識別データ,位置データ,および環境状態センサーを送信する無線周波数タグを備える装置。」
「【請求項57】
前記無線周波数タグにワイヤレスで接続された読み取り装置であって,該読取装置は該無線周波数タグから識別データ,位置データ,および環境状態センサーデータを受信し,識別データ,位置データ,および環境状態センサーデータを該読み取り装置からデータ蓄積および分析を実行するサイトサーバーへ再送信する,読み取り装置をさらに備える,請求項40に記載の装置。」
「【請求項65】
前記読み取り装置にワイヤレスで接続されたサイトサーバーであって,該サイトサーバーは該読み取り装置から識別データ,位置データ,および環境状態センサーデータを受信し,識別データ,位置データ,および環境状態センサーデータを該サイトサーバーから分析,比較,およびトラッキングを行う共通データベースの少なくとも一つのサーバーへ再送信する,サイトサーバーをさらに備える,請求項57に記載の装置。」
「【0013】
本発明の実施形態に従って,方法は,無線周波数タグからの識別データ,位置データ,および環境状態センサーデータを送信することを包含する。本発明の別の実施形態に従って,装置は,識別データ,位置データ,および環境状態センサーデータを送信する無線周波数タグを備える。」
「【0024】
堅密に積層されたスチール輸送コンテナ内およびその周囲のRF伝播の問題は,個々のコンテナRFタグから船舶受信機(読み取り装置)へと遠隔測定シグナルを正常に送信するための非常に安定したデータ通信技術(例えば,高度なスペクトラム拡散変調およびダイバーシティ受信システム)の使用に影響を与える。特に船舶の船倉におけるこうした大型の堅密にパッキングされた積層コンテナの非常に正確な電波探知目標は,多くの受信機(読み取り装置)をヤード施設および各船舶のデッキおよび船倉に分散していない限り,達成しにくい。通常のオペレーションにおいて位置分解能の喪失が許容されている場合,たいてい,特定の環境(つまり,ヤードまたは船舶)で利用されることを想定した綿密に設計されたコンテナRFタグおよびインフラストラクチャーコンポーネントを利用することにより,コンテナIDおよびステータスデータ(例えば,ドアの安全性,温度)の効果的な遠隔測定,および特定の環境の大部分の場合における適度に正確なコンテナ位置情報(つまり,一つの積層位置内)が得られる。」
「【0027】
(1.概要)
図1を参照すると,コンテナ105に接続された一つ以上の無線周波数識別タグ101は,船舶110の読み取り装置107によって双方向無線周波数通信を行う。船舶110はさらに,サイトサーバー(図1には図示せず)も含むが,低地球軌道衛星120と双方向無線周波数通信を行う。低地球軌道衛星120は,地上局125と双方向無線周波数通信を行う。」
「【0030】
図1に示す海上資産のセキュリティおよびトラッキング(MAST)システムは,港湾側ドック施設における積荷時,陸揚げ時,および移送作業における海運業界で標準の約6.9メートルおよび約13.9メートルの輸送コンテナ,さらに,コンテナの海外輸送時における搭載船舶のトラッキングおよびモニタリングのための,ワイヤレス(RF)ベースの通信および感知/遠隔測定システムである。このシステムは,衛星および/または移動体/PCSを含むローカルターミナル通信システムおよびその他のワイドエリア商用通信システムの両方を利用する,船舶,鉄道,飛行機,長距離輸送トラックおよびその関連のターミナル施設内で運用可能な,真のインターモダルトラッキングおよびモニタリングシステムを実現可能である。このRFIDタグ付けシステムは,各輸送コンテナに取り付けられたRFIDタグ,船舶上および輸送ターミナル内に配置されるローカルサイト読み取り装置,各船舶上または各ターミナル内のある中央サイトサーバー,および全てのデータを収集,集約,保存,分析および逆アセンブル可能なネットワークオペレーションセンター(NOC)を含むことが可能である。輸送コンテナは冷蔵貨物輸送コンテナ(リーファー)およびドライ貨物輸送コンテナ(ドライボックス)の両方にすることができる。コンテナまたはRFIDタグの一つに装備されたその他の装置の位置の識別およびトラッキングに加え,各タグを,コンテナ貨物またはその他のタグ付けされた装置の状態をモニターするためのRFIDタグへの広範囲のセンサーの接続を許可するための(例えば,IEEE1451)センサーインターフェースおよびオプションの追加シリアルインターフェースに装備することが可能である。RFIDタグに接続可能なセンサーは温度,圧力,相対湿度,加速度計,放射線,およびGPS(グローバルな位置決定システム)を含む(しかしこれに限定されない)。さらなるセンサーを冷蔵コンプレッサーなどの機器の状態モニタリング,またはいくつかの冷蔵貨物コンテナにおける診断用データポートからの読み取りのために含めることが可能である。」
「【0035】
引き続き図2を参照すると,船上またはターミナル通信RFIDタグは,RFIDタグ読み取り装置と通信するためにRF通信を利用可能である。好適なRF通信は,2.45GHZ帯域で実行されるハイブリッド型拡散スペクトル(HSS)RFデータリンクである。各タグからのRFシグナルの電波探知または三角測量は,各RFIDタグの位置を決定するために利用可能である。」
「【0042】
(2.RFIDタグの説明)
各RFIDタグは,四つの機能ブロック,(1)マイクロプロセッサコントロールサブシステム,(2)センサーサブシステム,(3)通信サブシステム,および(4)電力供給サブシステムを含むことができる。図5は,RFIDタグのブロック図を示す。」
「【0046】
センサーサブシステム530は,ライン532によってマイクロプロセッサコントロールサブシステム510の入力/出力インターフェース回路511に接続されるシリアルインターフェース531を含む。温度センサー533は,シリアルインターフェース531に接続される。相対湿度センサー534は,シリアルインターフェース531に接続される。ドア開放センサー535はシリアルインターフェース531に接続される。その他のセンサー536(例えば,イオン化放射線センサー)は,シリアルインターフェース531に接続される。センサーサブシステム530は,マイクロプロセッサコントロールサブシステム510の入力/出力インターフェース回路511に接続されるGPSモジュール537を含む。センサーサブシステム530は,インターフェースコンバーター回路539によってマイクロプロセッサコントロールサブシステム510の入力/出力インターフェース回路511に接続される参照ユニットデータポート538を含む。
【0047】
通信サブシステム540は,全てライン545によってマイクロプロセッサコントロールサブシステム510の入力/出力インターフェース回路511に接続される,ローカル/シリアル通信回路541,移動体モデムモジュール542,ハイブリッド型拡散スペクトル無線周波数モジュール543および衛星モジュール544を含む。一つ以上のアンテナ546は,移動体モデムモジュール542,ハイブリッド型拡散スペクトル無線周波数モジュール543および/または衛星モジュール544に接続される。」
「【0049】
センサーサブシステム:センサーサブシステムは,一つ以上のセンサーモジュールとの通信のために,IEEE1451準拠プロトコルを利用可能である。これにより,1451プロトコルに準拠していることを条件にいずれかのセンサーでも将来的に追加可能である。GPSおよびリーファーデータポート読み取り装置などの基本的なセンサーのいくつかは,マイクロプロセッサにおいてシリアル通信ポートを利用可能である。RFIDタグの一部にできるセンサーの種類には,温度,相対湿度,放射線,生物学的,科学的,加速度計,ドアスイッチ,侵入などがある。」
「【0057】
(3.RFIDタグ読み取り装置)
RFIDタグ読み取り装置は,RFIDタグの通信をサイトサーバーに(およびサイトサーバーから)中継する。RFIDタグ読み取り装置はRFIDタグと同様にすることができるが,異なる通信モジュールを用い,またセンサーをなしにすることもできる。RFIDタグ読み取り装置は,ローカルのRF通信モジュールによって(好適にはHSSプロトコルを利用して)RFIDタグと通信することが可能である。RFIDタグ読み取り装置は,いくつかの考えられる技術の一つ,つまり,ワイヤレスRF通信(好適には5.8GHzなどのRFIDタグ通信以外の周波数のHSS通信),(電力ライン通信,イーサネット(登録商標)またはシリアルなどの)有線通信,および/または(光ファイバーまたは視線方向レーザー通信などの)光通信によって,サイトサーバーと通信可能である。」
「【0062】
(4.サイトサーバー)
サイトサーバーは,RFIDタグ読み取り装置からRFIDタグのデータを受信可能である。サイトサーバーはRFIDタグデータをNOCに送信可能である。サイトサーバーはRFIDタグのデータのローカル分析を実行し,何万ものタグをターミナルまたは船舶上に設置することを可能にする,本発明のマルチアクセスという面を管理可能である。サイトサーバーは,三つのメインサブシステム,(1)コンピュータベースのサーバーおよびシステムコントローラ,(2)RFIDタグ読み取り装置との通信に関してRFIDタグ読み取り装置と同じ通信モジュールを含むRFIDタグ読み取り装置通信サブシステム[つまり,ワイヤレスRF通信(好適には5.8GHzなどのRFIDタグ通信以外の周波数のHS通信),(電力ライン通信,イーサネット(登録商標)またはシリアルなどの)有線通信,または(光ファイバーまたは視野方向レーザー通信などの)光通信にすることができる],および(3)有線の,移動体,光通信または衛星通信モジュールを利用可能なNOC通信サブシステムを含むことが可能である。
【0063】
(5.ネットワークオペレーションセンター)
ネットワークオペレーションセンター(NOC)は,世界的な海上輸送コントロールシステムの情報センターとすることが可能である。世界中に設置されている全てのRFIDタグからの全てのRFIDタグデータは,地方のサイトサーバーまたは直接移動体または衛星通信によってNOCに中継可能である。NOCは,位置,センサーデータ,およびRFIDタグステータスを含むRFIDタグデータを収集,保存,逆アセンブルする。」

(2)甲1発明
上記(1)の摘記事項及び対応する図面の記載からみて,甲第1号証には,「無線周波数識別タグ(RFIDタグ)」と「読み取り装置」と「ネットワークオペレーションセンター」とを含む「セキュリティおよびトラッキング(MAST)システム」に関し,以下の発明(以下,「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
ここで,前記「MASTシステム」は,段落【0030】より,各輸送コンテナに取り付けられたRFIDタグを利用して,コンテナの位置のトラッキング,すなわち位置の管理を可能とするものである。そうすると,【請求項1】,【請求項26】,【請求項40】及び段落【0013】等に記載された無線周波数タグ(RFIDタグ)が送信する「識別データ」は,コンテナを識別するためのものといえ,段落【0024】に記載された「コンテナID」のことと解される。この場合,該「コンテナID」は,無線周波数タグ(RFIDタグ)に記憶されたものと解するのが自然である。
また,前記「MASTシステム」は,同様にコンテナのステータスのモニタリングをするものであり,そのためにRFIDタグはセンサーサブシステムを備え(段落【0042】,【0049】,図5),該センサーサブシステムは,温度センサー,相対湿度センサー,ドア開放センサー,イオン化放射センサー,GPSモジュール等を含む(段落【0046】)。そして,センサーサブシステムの各センサーは,コンテナのステータスをモニタするものであるが,センサーサブシステムを備えるRFIDタグからみれば,該RFIDタグの周囲環境状況をモニタしたものといえる。そうすると,【請求項1】,【請求項26】,【請求項40】及び段落【0013】等に記載された無線周波数タグ(RFIDタグ)が送信する「環境状態センサーデータ」(当審注:【請求項1】,【請求項40】に記載された「環境状態センサー」は,「環境状態センサーデータ」の誤記と認める。)は,「センサーサブシステム」が「RFIDタグの周囲環境状況をモニタ(検出)したデータ」といえる。
また,図5に示されるRFIDタグは,「GPSモジュール」(段落【0046】)を利用して位置を検出すること,及び,位置の検出に「各タグからのRFシグナルの電波探知または三角測量」が利用可能であること(段落【0035】)から,「RFIDタグ」には,「RFIDタグの位置を示す位置データを検出する位置検出手段」が備えられているといえる。
なお,「無線周波数識別タグ」と「RFIDタグ」は同義であるから,以下「無線周波数識別タグ」の記載に統一する。

(甲1発明)
「コンテナIDを記憶した無線周波数識別タグと,読み取り装置と,前記無線周波数識別タグの位置を管理するネットワークオペレーションセンターとを含むMASTシステムであって,
前記無線周波数識別タグは,
自身の周囲の環境状態を示す環境状態センサーデータを検出するセンサーサブシステムと,
自身の位置を示す位置データを検出する位置検出手段と,
前記コンテナIDと,前記位置データと,前記環境状態センサーデータとを,前記読み取り装置を介して,前記ネットワークオペレーションセンターに送信する手段と,有する
MASTシステム。」

2 甲第2号証について
(1)甲第2号証の記載
ア 異議申立人は,甲第2号証(特開2011-35438号公報)に記載の発明は,以下の摘記事項に記載されたものである旨主張している。なお,下線部は,異議申立人が本件特許発明と対応する箇所として示した部分,又は,合議体が強調する部分を表す。

「【0010】
次に,本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の無線端末機器101を利用するシステム全体を示す。無線端末機器101は無線ネットワークの一部を構成する無線基地局105を介し通信網104に接続され,無線端末機器101が得た自端末のセンサの情報を通信網104を介してサーバ装置103に送信する。サーバ装置103は無線端末101から収集した情報を解析処理する。また,ネットワーク側のユーザ端末102はサーバ装置10をアクセスし,処理された情報を参照する。
【0011】
図2は無線センサ端末101の最良の実施の形態を示す。無線端末機器101はCPU201と,サーバ装置103などの外部装置との通信を行なう無線通信機能202と,自端末の位置情報を取得する位置情報取得機能203と,自端末の状態や周辺環境などの情報を取得するセンサ機能204と,センサ機能204を駆動するエリア情報を格納するメモリ205とから成る。」
「【0013】
無線通信機能202としては,特定小電力無線,RFID,Zigbee,Bluetooth,無線LANなど,様々な無線通信システムが利用できる。
【0014】
位置情報取得機能203としては,GPSなどの衛星を使う方法,無線通信相手の基地局情報を使う方法,無線周波数を用いて測量を行なう方法,超音波を用いて測量を行なう方法,赤外線やRFIDを用いて位置を特定する方法など様々な方法が利用できる。外部のネットワーク上に端末位置管理機能が存在する場合には,無線通信を用いて外部の位置管理機能から自端末の位置情報を取得することも考えられる。例えば,入退場管理システムなどによって無線端末を保持するユーザの特定エリアへの入退出が管理されている場合には,入退管理システムから無線センサ端末の位置情報を取得することも考えられる。また,センサ機能としては,加速度センサ,温度センサ,照度センサ,などさまざまなセンサが利用できる。」

イ さらに,甲第2号証には,以下の事項も記載されている。
「【0009】
本発明の無線端末機器の省電力化方法は(a)無線端末機器の位置情報を取得する処理と,(b)該位置情報が所定の駆動圏内情報に該当するか否かを判定する処理と,(c)該処理(b)の判定結果に基づき前記端末機器の環境を監視しその結果を表す情報を出力する処理と,(d)該出力情報を外部に送信する処理とからなる。」
「【0012】
CPU201は,無線通信機能202が得た情報に基づいて自端末が無線通信圏内にいるか否かを判別する無線圏内判定機能211と,位置情報取得機能203が取得した位置情報とメモリ205が保持するエリア情報とに基づいて無線端末機器101がセンサ機能204を駆動するエリア内であるか否かを判定するセンサ駆動圏内判定機能213と,無線圏内判定機能211と駆動圏内判定機能213の判定結果に基づいてセンサ機能204を駆動する省電力制御機能212とから成る。」

(2)甲2発明
上記(1)のアの摘記事項及び対応する図面の記載からみて,甲第2号証には,「無線端末機器」と「無線基地局」と「サーバ装置」とを含む「システム」に関し,以下の発明(以下,「甲2発明」という。)が記載されていると認める。
ここで,前記「無線端末機器」は,段落【0014】より,該無線端末機器の位置情報を取得する位置情報取得機能として,「無線通信相手の基地局情報を使う方法」が示唆されている。
また,前記「無線端末機器」で検出した「自端末の状態や周辺環境などの情報」は,無線基地局を介してサーバ装置に送信されているといえる。

(甲2発明)
「無線端末機器と,無線基地局と,サーバ装置を含むシステムであって,
前記無線端末機器は,
自端末の状態や周辺環境などの情報を取得するセンサ機能と,
無線通信相手の基地局情報を使って前記無線端末機器の位置情報を取得する位置情報取得機能と,
前記情報を前記無線基地局を介してサーバ装置に送信する無線通信機能と,を有する
システム。」

3 甲第3号証について
(1)甲第3号証の記載
異議申立人は,甲第3号証(特開2007-334582号公報)に記載の発明は,以下の摘記事項に記載されたものである旨主張している。なお,下線部は,異議申立人が,本件特許発明と対応する箇所として示した部分を表す。

「【請求項1】
住宅内における各所に設置され,それぞれの設置箇所固有の位置情報を発信する発信手段と,
居住者によって携帯され,前記発信手段から発信される位置情報を受信し,その位置情報を端末固有の端末IDと共に送信する携帯端末と,
前記携帯端末から送信された前記位置情報及び端末IDに基づいて,住宅内における前記携帯端末の位置を認識する端末位置認識手段と,
前記端末位置認識手段によって認識された前記携帯端末の位置を表示する表示手段と
を備えたことを特徴とする住宅内監視システム。」
「【0029】
赤外線ビーコン17は,住宅内の天井の各所に設置されている。なお,図1ではその一部の部屋A,Bに設置されたものを示しているが,死角を極力又は完全になくすように全ての室に少なくとも1個は設けられている。赤外線ビーコン17は,それぞれの場所(部屋A,B,・・・,玄関,トイレ等)に対応する固有の場所ID(場所固有の識別コード)により変調された赤外線信号を常時発信する。また,人感知機能を有しており,赤外線信号が発信される範囲で人の存在を検知すると,その検知信号を自身の場所IDと共に管理サーバ20に送信する。一方,ユビキタスコミュニケータ19は,赤外線信号受信機能を備えており,赤外線ビーコン17から発信される赤外線信号を,アンテナ19bを介して受信し,自己が存在する場所を認識する。ユビキタスコミュニケータ19はそれぞれ固有の識別コード(以下,C-IDという)を有しており,住宅内に1又は複数設けられた無線アクセスポイント18に対して,自身のC-IDと,認識した場所の場所IDとを送信する。また,通信ネットワーク12を介して送られてきた情報を,無線アクセスポイント18から受信することもできる。受信した情報は表示部19aで表示される。」

(2)甲第3号証に記載された事項
上記(1)の摘記事項及び図面の記載からすると,甲第3号証には,携帯端末,すなわち無線端末が,自身の位置情報を外部から受信するとともに,外部にその位置情報を送信する態様として,以下の事項(以下,「甲3記載の事項」という。)が記載されていると認める。

(甲3記載の事項)
「無線端末は,設置箇所固有の位置情報を発信する発信手段から発信される位置情報を受信し,その位置情報を端末固有の端末IDと共に無線アクセスポイントに送信すること。」

第5 申立ての理由についての判断
1 特許法第29条第1項第3号について
(1)甲1発明と同一か否かの判断
ア 本件発明1について
本件発明1は,上記「第2 本件発明」の項に記載した,以下のとおりのものである。
「自端末の識別情報を記憶した無線端末と,自装置の位置情報を送信する配信装置と,前記無線端末の位置を管理する管理サーバとを含む情報管理システムであって,
前記無線端末は,
自端末の周囲環境状況を示す周囲環境情報を検出する周囲環境検出手段と,
前記配信装置から,前記位置情報を受信する位置情報受信手段と,
自端末の前記識別情報と,前記配信装置から受信した前記位置情報と,前記周囲環境情報とを,前記配信装置を介して,前記管理サーバに送信する端末情報送信手段とを有すること,
を特徴とする情報管理システム。」

甲1発明は,上記「第4 1 (2)甲1発明」の項に記載した,以下のとおりのものである。
「コンテナIDを記憶した無線周波数識別タグと,読み取り装置と,前記無線周波数識別タグの位置を管理するネットワークオペレーションセンターとを含むMASTシステムであって,
前記無線周波数識別タグは,
自身の周囲の環境状態を示す環境状態センサーデータを検出するセンサーサブシステムと,
自身の位置を示す位置データを検出する位置検出手段と,
前記コンテナIDと,前記位置データと,前記環境状態センサーデータとを,前記読み取り装置を介して,前記ネットワークオペレーションセンターに送信する手段と,有する
MASTシステム。」

本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「無線周波数識別タグ」,「読み取り装置」,「ネットワークオペレーションセンター」及び「MASTシステム」は,それぞれ後述の相違点を除いて,本件発明1の「無線端末」,「配信装置」,「管理サーバ」及び「情報管理システム」に相当する。
ここで,甲1発明の「コンテナID」と本件発明の「自端末の識別情報」は,識別する対象を除き「識別情報」である点で共通する。
また,甲1発明の「位置データ」と本件発明1の「位置情報」を対比すると,両者は,「位置を表す情報」である点で共通するものの,甲1発明の「位置データ」は,「無線周波数識別タグ」の位置を表すのに対し,本件発明1の「位置情報」は,「配信装置」の位置を表す情報である点で相違する。
また,甲1発明の「環境状態センサーデータ」は,本件発明1の「周囲環境情報」に相当する。
以上を踏まえると,本件発明1と甲1発明とは,以下の各点で相違する。

(相違点1-1)
共通事項である「識別情報」が,本件発明1では「無線端末」の「識別情報」であるのに対し,甲1発明では「コンテナID」である点。

(相違点1-2)
共通事項である「位置を表す情報」に関し,本件発明1では,「配信装置」は,「自装置の位置情報を送信」するものであり,「無線端末」は,前記「配信装置」から前記「位置情報」を受信し,受信した「位置情報」を前記「配信装置」に送信するものであるのに対し,甲1発明では,「読み取り装置」が「自装置の位置情報を送信」することは記載されておらず,「無線周波数タグ」が「自身の位置を示す位置データを検出し」,検出した「位置データ」を「読み取り装置」に送信するものである点。

そうすると,特許発明1と甲1発明とは,上記相違点1-1及び相違点1-2を有するから,同一ではない。

ここで,異議申立人は,異議申立の理由において,以下のとおり主張している。
「c 「C 前記配信装置から,前記位置情報を受信する位置情報受信手段と,」
甲1発明に係るシステムにおいて,無線周波数識別タグと,読み取り装置とは双方向通信を行う(段落0027等)ことから,無線周波数識別タグは,読み取り装置に対し情報を送信するのみならず,読み取り装置からその位置情報を受信することが予定されている。
また,無線周波数識別タグのセンサーサブシステムは,マイクロプロセッサコントロールサブシステムの入力/出力インターフェース回路に接続されるGPSモジュールを含む(段落0046,図5)。
また,各タグからのRFシグナルの電波探知または三角測量は,各RFIDタグの位置を決定するために利用可能であるとされている(段落0035,図2)。
したがって,本件特許発明1における「配信装置」に相当する読み取り装置が,本件特許発明1における「無線端末」に相当する無線周波数識別タグから位置情報を受信する手段を有することから,甲第1号証には,構成Cにつき記載されているものといえる。」(特許異議申立書25頁3行から18行)
この主張について検討すると,上記「GPSモジュール」から得られる位置データ,又は,「各タグからのRFシグナルの電波探知または三角測量」に基づいて得られる位置データは,上述のとおりいずれも無線周波数識別タグ自身の位置を表す位置データであって,読み取り装置の位置を表すものとはいえない。また,甲第1号証には,読み取り装置が自装置の位置を表す位置データを無線周波数識別タグに送信することは記載されていない。そうすると,無線周波数識別タグと読み取り装置とが双方向通信するとしても,甲第1号証には,読み取り装置から,自装置の位置データを無線周波数識別タグが受信することは記載されていないから,上記主張を採用することはできない。

イ 本件発明2,7及び8について
本件発明2は,本件発明1をさらに限定した発明であるから,甲1発明とは上記相違点1-1及び相違点1-2の点で相違する。よって,本件発明2は,甲第1号証に記載された発明ではない。
本件発明7は,「無線端末」の発明であり,該「無線端末」は,前記「配信装置」から前記「配信装置」の「位置情報」を受信し,受信した「位置情報」を前記「配信装置」を介して「管理サーバ」に送信するという構成を備え,該構成は,上記アで述べたとおり甲第1号証には記載されていない事項であるから,甲第1号証に記載された発明ではない。
本件発明8は,本件発明1のカテゴリーを「方法」に変更した発明であるから,本件発明1に対する理由と同様の理由により,甲第1号証に記載された発明ではない。

(2)甲2発明と同一か否かの判断
ア 本件発明1について
本件発明1は,上記「第2 本件発明」の項に記載した,以下のとおりのものである。
「自端末の識別情報を記憶した無線端末と,自装置の位置情報を送信する配信装置と,前記無線端末の位置を管理する管理サーバとを含む情報管理システムであって,
前記無線端末は,
自端末の周囲環境状況を示す周囲環境情報を検出する周囲環境検出手段と,
前記配信装置から,前記位置情報を受信する位置情報受信手段と,
自端末の前記識別情報と,前記配信装置から受信した前記位置情報と,前記周囲環境情報とを,前記配信装置を介して,前記管理サーバに送信する端末情報送信手段とを有すること,
を特徴とする情報管理システム。」

甲1発明は,上記「第4 2 (1)甲2発明」の項に記載した,以下のとおりのものである。
「無線端末機器と,無線基地局と,サーバ装置を含むシステムであって,
前記無線端末機器は,
自端末の状態や周辺環境などの情報を取得するセンサ機能と,
無線通信相手の基地局情報を使って前記無線端末機器の位置情報を取得する位置情報取得機能と,
前記情報を前記無線基地局を介してサーバ装置に送信する無線通信機能と,を有する
システム。」

本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「無線端末機器」,「無線基地局」,「サーバ装置」及び「システム」は,それぞれ後述の相違点を除いて本件発明1の「無線端末」,「配信装置」,「管理サーバ」及び「情報管理システム」に相当する。
ここで,本件発明1の「識別情報」に関し,甲2発明では,「無線端末機器」を識別するための「識別情報」について,記載がない。
また,本件発明1の「位置情報」は,「配信装置の位置」を表す情報である一方,甲2発明の「位置情報」は, 無線通信相手の基地局情報を使って前記無線端末機器が自身の位置として取得したものである点で相違し,甲2発明では,甲第2号証の段落【0009】,【0012】の記載からみて,前記無線端末機器は,取得した位置情報を前記無線端末機器がセンサ機能を駆動するエリア内であるか否かを判定するために用いるものではあって,「自端末の状態や周辺環境などの情報」を送信することは記載されているが,前記無線端末機器が前記位置情報を無線基地局を介してサーバ装置に送信することまでは記載がない。そうすると,甲2発明は,「サーバ装置」は,「無線端末機器」の位置を受信するかどうか不明であるから,「無線端末機器の位置を管理する」ものということもできない。
また,甲2発明の「自端末の状態や周辺環境などの情報」は,本件発明1の「自端末の周囲環境状況を示す周囲環境情報」に相当する。
以上を踏まえると,本件発明1と甲2発明とは以下の各点で相違する。

(相違点2-1)
本件発明1では,「無線端末機器」が自端末の識別情報を記憶し,該識別情報を前記「配信装置」を介して「管理サーバ」に送信するのに対し,甲2発明では,この点が不明である点。

(相違点2-2)
「位置情報」に関し,本件発明1は,「配信装置」が「自装置の位置情報を送信」し,「無線端末」が前記「配信装置」から前記「位置情報」を受信し,受信した「位置情報」を前記「配信装置」を介して「管理サーバ」に送信するものであるのに対し,甲2発明では,「位置情報取得機能」が「無線通信相手の基地局情報を使って前記無線端末機器の位置情報を取得する」するものであり,前記「無線端末機器」が取得した前記「位置情報」を「無線基地局」を介して「サーバ装置」に送信することについては記載がない点。

(相違点2-3)
本件発明1では,「管理サーバ」が,「前記無線端末の位置を管理する」のに対し,甲2発明では,この点が不明である点。

そうすると,特許発明1と甲2発明とは,前記相違点2-1,相違点2-2及び相違点2-3を有するから,同一ではない。

イ 本件発明2,7及び8について
本件発明2は,本件発明1をさらに限定した発明であるから,甲1発明とは上記各相違点で相違する。よって,本件発明2は,甲第2号証に記載された発明ではない。
本件発明7は,「無線端末」の発明であり,該「無線端末」は,前記「配信装置」から前記「配信装置」の「位置情報」を受信し,受信した「位置情報」を前記「配信装置」を介して「管理サーバ」に送信するという構成を備え,該構成は,上記アで述べたとおり甲第2号証には記載されていない事項であるから,甲第2号証に記載された発明ではない。
本件発明8は,本件発明1のカテゴリーを「方法」に変更した発明であるから,本件発明1に対する理由と同様の理由により,甲第2号証に記載された発明ではない。

(3)まとめ
本件発明1,2,7及び8は,甲第1号証に記載された発明ではなく,甲第2号証に記載された発明でもないから,特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当しない。

2 特許法第29条第2項について
(1)甲1発明を主引例とした場合の判断
ア 本件発明1について
異議申立人は、本件発明1について、甲1発明に基づいて,又は,甲1発明と甲3記載の事項に基づいて,容易に発明することができたものと主張しているので、以下検討する。
本件発明1と甲1発明は,上記「1(1)ア 本件発明1について」の項で述べたとおり,少なくとも次の相違点1-2で相違するので、該相違点1-2について以下検討する。

(相違点1-2)
共通事項である「位置を表す情報」に関し,本件発明1では,「配信装置」は,「自装置の位置情報を送信」するものであり,「無線端末」は,前記「配信装置」から前記「位置情報」を受信し,受信した「位置情報」を前記「配信装置」を介して「管理サーバ」に送信するものであるのに対し,甲1発明では,「読み取り装置」が「自装置の位置情報を送信」することは記載されておらず,「無線周波数タグ」が「自身の位置を示す位置データを検出し」,検出した「位置データ」を「読み取り装置」に送信するものである点。

(ア)甲1発明に基づく判断
甲1発明には,相違点1-2に係る本件発明1の構成が記載されておらず、前記構成は当業者に自明なものでもないので、甲1発明から前記構成を導出することはできない。
よって,本件発明1は,当業者が甲1発明に基づいて容易に発明することができたものとはいえない。

(イ)甲1発明と甲3記載の事項に基づく判断
上記「第4 3(2)甲第3号証に記載された事項」の項で述べたとおり,甲第3号証に記載された以下の事項は,公知である。

(甲3記載の事項)
「無線端末は,設置箇所固有の位置情報を発信する発信手段から発信される位置情報を受信し,その位置情報を端末固有の端末IDと共に無線アクセスポイントに送信すること。」

甲3記載の事項について検討すると,位置情報を発信する「発信手段」と,前記位置情報を受信した無線端末が前記位置情報を送信する対象である「無線アクセスポイント」とが異なっているから,甲3記載の事項は,上記相違点1-2に係る本件発明1の構成を充足しない。
よって,本件発明1は,甲1発明と甲3記載の事項に基づいて,容易に発明することができたものとはいえない。

イ 本件発明2,3,7及び8について
本件発明2及び本件発明3は,本件発明1をさらに限定した発明であるから,本件発明1に対する理由と同様の理由により,甲1発明に基づいて,又は,甲1発明と甲3記載の事項に基づいて,容易に発明することができたものとはいえない。
本件発明7は,「無線端末」の発明であり,該「無線端末」は,前記「配信装置」から前記「配信装置」の「位置情報」を受信し,受信した「位置情報」を前記「配信装置」を介して「管理サーバ」に送信するという構成を備えるから,本件発明1に対する理由と同様の理由により,甲1発明に基づいて,又は,甲1発明と甲3記載の事項に基づいて,容易に発明することができたものとはいえない。
本件発明8は,本件発明1のカテゴリーを「方法」に変更した発明であるから,本件発明1に対する理由と同様の理由により,甲1発明に基づいて,又は,甲1発明と甲3記載の事項に基づいて,容易に発明することができたものとはいえない。

(2)甲2発明を主引例とした場合の判断
ア 本件発明1について
異議申立人は、本件発明1について、甲2発明に基づいて,又は,甲2発明と甲3記載の事項に基づいて,容易に発明することができたものと主張しているので、以下検討する。
本件発明1と甲2発明は,上記「1(2)ア 本件発明1について」の項で述べたとおり,少なくとも次の相違点2-2で相違するので、該相違点2-2について以下検討する。

(相違点2-2)
「位置情報」に関し,本件発明1は,「配信装置」が「自装置の位置情報を送信」し,「無線端末」が前記「配信装置」から前記「位置情報」を受信し,受信した「位置情報」を前記「配信装置」を介して「管理サーバ」に送信するものであるのに対し,甲2発明では,「位置情報取得機能」が「無線通信相手の基地局情報を使って前記無線端末機器の位置情報を取得する」するものであり,前記「無線端末機器」が取得した前記「位置情報」を「無線基地局」を介して「サーバ装置」に送信することについては記載がない点。

(ア)甲2発明に基づく判断
甲2発明の「位置情報」について検討すると,無線端末機器の位置情報取得機能では,無線通信相手の基地局情報を使って前記無線端末機器の位置情報を取得しているが,甲第2号証には,基地局情報に基地局の位置情報が含まれていることの記載はない。
そうすると,甲2発明には,相違点2-2に係る本件発明1の構成が記載されておらず,前記構成は当業者に自明なものでもないので,甲2発明から前記構成を導出することはできない。
よって,本件発明1は,上述の相違点2-1及び相違点2-3について検討するまでもなく,当業者が甲2発明に基づいて容易に発明することができたものとはいえない。

(イ)甲2発明と甲3記載の事項に基づく判断
上記「第4 3(2)甲第3号証に記載された事項」の項で述べたとおり,甲第3号証に記載された以下の事項は,公知である。

(甲3記載の事項)
「無線端末は,設置箇所固有の位置情報を発信する発信手段から発信される位置情報を受信し,その位置情報を端末固有の端末IDと共に無線アクセスポイントに送信すること。」

甲3記載の事項について検討すると,位置情報を発信する「発信手段」と,前記位置情報を受信した無線端末が前記位置情報を送信する対象である「無線アクセスポイント」とが異なっているから,甲3記載の事項は,上記相違点2-2に係る本件発明1の構成を充足しない。
よって,本件発明1は,甲2発明と甲3記載の事項に基づいて,容易に発明することができたものとはいえない。

イ 本件発明2,3,7及び8について
本件発明2及び本件発明3は,本件発明1をさらに限定した発明であるから,本件発明1に対する理由と同様の理由により,甲2発明に基づいて,又は,甲2発明と甲3記載の事項に基づいて,容易に発明することができたものとはいえない。
本件発明7は,「無線端末」の発明であり,該「無線端末」は,前記「配信装置」から前記「配信装置」の「位置情報」を受信し,受信した「位置情報」を前記「配信装置」を介して「管理サーバ」に送信するという構成を備えるから,本件発明1に対する理由と同様の理由により,甲2発明に基づいて,又は,甲2発明と甲3記載の事項に基づいて,容易に発明することができたものとはいえない。
本件発明8は,本件発明1のカテゴリーを「方法」に変更した発明であるから,本件発明1に対する理由と同様の理由により,甲2発明に基づいて,又は,甲2発明と甲3記載の事項に基づいて,容易に発明することができたものとはいえない。

(3)まとめ
本件発明1,2,3,7及び8は,甲第1号証に記載された発明に基づいて,甲第1号証に記載された発明と甲第3号証に記載された事項に基づいて,甲第2号証に記載された発明に基づいて,又は,甲第2号証に記載された発明と甲第3号証に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明することができたものとはいえないから,特許法第29条第2項の規定には該当しない。

第6 むすび
したがって,特許異議の申立ての理由及び証拠によっては,請求項1,2,3,7及び8係る特許を取り消すことはできない。
また,他に請求項1,2,3,7及び8係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-06-07 
出願番号 特願2013-182176(P2013-182176)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (H04M)
P 1 652・ 113- Y (H04M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山岸 登  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 吉田 隆之
中野 浩昌
登録日 2017-08-10 
登録番号 特許第6187052号(P6187052)
権利者 株式会社リコー
発明の名称 情報管理システム、無線端末及び周囲環境管理方法  
代理人 伊東 忠重  
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