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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) B60P
管理番号 1341127
判定請求番号 判定2017-600030  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2018-07-27 
種別 判定 
判定請求日 2017-08-04 
確定日 2018-06-11 
事件の表示 上記当事者間の特許第3397309号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「テールゲートリフター」は、特許第3397309号の請求項1に係る発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、イ号物件の図面及び図面の説明に示す「テールゲートリフター」(甲第3号証)は、特許第3397309号の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

第2 手続の経緯等
本件特許発明に係る出願は、平成12年4月27日の出願であって、平成15年2月14日に特許権の設定登録がなされたものである。
その後、平成29年8月4日に本件判定が請求され、これに対し、同年8月23日付けで当審は請求人に対し審尋を行い、同年9月13日に請求人から回答書(以下「請求人回答書(1)」という。)が提出され、同年10月24日に被請求人より判定請求答弁書(以下「答弁書」という。)が提出され、同年12月25日に当審は被請求人に対し審尋を行い、平成30年1月23日に被請求人から回答書(以下「被請求人回答書(1)」という。)が提出され、同年1月25日に被請求人から同年1月23日付け回答書の一部訂正をする旨の回答書(以下「被請求人回答書(2)」という。)が提出され、同年4月2日に当審は請求人に対し審尋を行い、同年5月2日に請求人から回答書(以下「請求人回答書(2)」という。)が提出されたものである。
また、請求人より判定請求書と共に甲第1?3号証、請求人回答書(1)と共に添付資料1、2が提出され、請求人回答書(2)と共に甲第4号証の1、2(動作検証の動画)が提出され、被請求人より、被請求人回答書(1)と共に乙第1号証の1、2(実験動画)及び乙第2号証が提出されている。

第3 本件特許発明
本件特許発明は、特許第3397309号に係る願書に添付した特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(判定請求書の第3?4ページの「6(3)」に倣い、構成要件ごとに分説し、記号A?Eを付した。以下「構成要件A」等という。なお、判定請求書にページ番号が付されていないが、表紙を第1ページとした。以下同。)
「A ゲート板を開閉する開閉用油圧シリンダと油タンクとの間に開閉用ソレノイド弁を介して結んだ管路と、前記開閉用油圧シリンダと前記油タンクとの間にチェック弁を介し結んだ管路とを有するテールゲートリフターであって、
B 前記開閉用ソレノイド弁は導通位置と油の流れを阻止する位置とに切換え可能であり、
C 前記チェック弁はモーターの動作時で前記ゲート板をモーターにより格納位置に閉じる時には『閉』状態に保持され、
D モーターが回っていない状態でゲート板を手動で格納しようとする時には『開』状態になって前記油タンク内のオイルを前記開閉用油圧シリンダに供給し、前記開閉用油圧シリンダ内の真空化を防止する
E ことを特徴とするテールゲートリフター。」

第4 当事者の主張
1 請求人の主張の概要
請求人は、判定請求書、請求人回答書(1)及び請求人回答書(2)において、概略、以下のとおり主張している。
(1)甲第3号証(以下「甲3」と表記する。他の証拠についても同様に簡略表記とする。)の図8は架装要領書「RAM10-1050」に記載された油圧回路に基づき、請求人が図面に起こした。被請求人が製造するモデル名「RAM10-1355」のテールゲートリフター(イ号物件)の油圧回路は、架装要領書「RAM10-1050」に記載された油圧回路と同一である。(甲3第9ページ17行?第10ページ第1行及び請求人回答書(1))

(2)イ号物件を特定する部品名及び符号等を甲3の図8等のものを用いて、本件特許発明の分説した構成要件に即してイ号物件を特定すると、以下のとおり認定できる。(以下、分説した構成を「構成a」等という。)
「a テールゲート(1)を開閉するチルトシリンダ(2)と油タンク(4)との間に開閉用のソレノイド(5、6)を介して結んだ管路(7)と、前記チルトシリンダ(2)と前記油タンク(4)との間にチェック弁(9)を介し結んだ管路(8、10)とを有するテールゲートリフターであって、
b 前記開閉用のソレノイド(5、6)は導通位置と油の流れを阻止する位置とに切換え可能であり、
c 前記チェック弁(9)はモーター(M)の動作時で前記テールゲート(1)をモーター(M)により格納位置に閉じる時には『閉』状態に保持され、
d 前記モーター(M)が回っていない状態でテールゲート(1)を手動で格納しようとする時には『開』状態になって前記油タンク(4)内のオイルを前記チルトシリンダ(2)に供給し、前記チルトシリンダ(2)内の真空化を防止する
e テールゲートリフター。」(判定請求書第5ページ第15行?末行,なお、構成cにおいて「モーター」に対し1箇所符号が付されていなかったので当審で「(M)」を付した。)

(3)イ号物件の構成a?c、eは、本件特許発明の構成要件A?C、Eを充足する。(判定請求書第6ページ第1行?下から2行、第7ページ第8?10行)

(4)チェック弁9は、モーターMが回っていない状態でテールゲート1を手動で格納しようとうとする時には「開」の状態となる。これにより、油タンク4内のオイルがチルトシリンダ2に供給され、チルトシリンダ2内の真空化を防止する。このようにイ号物件のdは本件特許発明の構成要件Dに相当し、イ号物件は、本件特許発明の構成要件Dも充足する。(判定請求書第6ページ末行?第7ページ第7行)
また、甲3の「2.図面の説明」の「<イ号物件の動作、作用について>」の「・モーターMが回っていない状態でテールゲート1を手動で格納する場合」において、イ号物件においても本件特許発明の構成要件Dによるものと同じ現象が生じることが図11、12に示す写真から明らかである。(甲3第11ページ第4?25行)

(5)甲4の1、2から、甲3の図9?12の写真のものが、図3、4の写真に示される「RAM10-1355」のものと同一であることが明らかである。また、甲4の1、2のから、イ号物件において、「手動による押し上げ動作を停止しても、テールゲート1の急激な開き動作が発生しない事実」が確認できることも明らかである。(請求人回答書(2)第5ページ下から3行?第6ページ第10行)

2 被請求人の主張の概要
被請求人は、答弁書、被請求人回答書(1)及び被請求人回答書(2)において、概略、以下のとおり主張している。
(1)イ号物件(モデル名「RAM10-1355」)の油圧回路が、「RAM10-1050」の架装要領書に記載された油圧回路と同一の構造であることは認める。(答弁書第3ページ第20?22行)

(2)イ号物件は、少なくとも本件特許発明の構成要件Dを充足しない。請求人は、甲3の図10ないし図12を示し、手動による押上げ動作を停止しても、テールゲート1の急激な開き動作が発生しないと主張するが、手動で格納したテールゲートが、手を離しても急激な開き動作を防止できているのかこれらの写真だけからは不明である。(答弁書第3ページ第22行?第4ページ第4行、被請求人回答書(1)第8ページ第1?9行)

(3)イ号物件と同一の油圧回路を搭載した「RAM10-1355」シリーズのテールゲートリフターについて、手動で格納したテールゲートが、手を離しても急激な開き動作を防止できているどうかを検証するため、実験動画を撮影したので乙1の1、乙1の2として提出し、動画から明らかなように、手動で格納したテールゲートが、手を離すと急激に倒れてくる。すなわち、手動でテールゲートを格納しようとした場合、シリンダ内が真空化している状態であることが明らかである。したがって、イ号物件は、少なくとも構成要件Dを充足しない。(回答書(1)第8ページ第10行?第9ページ第7行、被請求人回答書(2))

(4)イ号物件の「マルチゲート取扱説明書 架装形式 RAM10-1□□□」(乙2。請求人回答書第3ページ「B.」及び添付資料2のとおり、□の部分は複数の数字が挿入される変数を意味し、イ号物件にも適用される。2016年3月発行。)の第7ページ「1.安全にお使い頂くために」の3段目に「警告 油圧開閉タイプの場合、テールゲートを手動で閉じますとゲートロック等を外した時にテールゲートが一気に水平状態まで開き、事故につながる恐れがありますので、手動によるテールゲート『閉』操作は絶対に行わないでください。」との警告表示がなされており、また、乙2の第23ページにも「5.操作方法」「5-3-9.テールゲート『閉』操作」「(イ)油圧開閉タイプ(RAM10-13□□ RAM10-14□□)」にも警告表示がなされており、構成要件Dを充足しない。(被請求人回答書(1)第9ページ第8行?第10ページ第1行)

第5 当審の判断
1 イ号物件について
(1)当事者間の争いについて
上記「第4 1(1)」及び「第4 2(1)」のとおり、イ号物件(モデル名「RAM10-1355」)の油圧回路が、「RAM10-1050」の架装要領書に記載された油圧回路と同一の構造であることについては当事者間に争いはない。
しかし、上記「第4 1(4)、(5)」及び「第4 2(2)?(4)」のとおり、イ号物件が「構成d」を有するかについては争いがあり、請求人と被請求人の証拠において、テールゲート(1)の挙動が異なることから、構成dについては、当審で以下のとおり認定する。
ア 甲4の1から把握される構成d-1
甲4の1の内容及び請求人回答書(2)第3ページ第1行?第5ページ第22行の記載からみて、請求人の証拠に基づくもの(「MODEL」欄が「RAM10-1355」、「MFG.NO」欄が「S70101968」)は、次に示す構成d-1を備えているといえる。
d-1 前記モーター(M)が回っていない状態でテールゲート(1)を手動で格納したときに、テールゲート(1)から手を離すとテールゲート(1)が開方向にある程度回動した後に回動が停止する

イ 乙1の1、2から把握される構成d-2
被請求人回答書(1)第8ページ第10?11行において「請求人主張のイ号物件と同一の油圧回路を搭載した『RAM10-1355』シリーズ」(下線は当審で付加。以下同様。)と記載され、同ページの写真から「MODEL」欄が「RAM10-1355N」、「MFG.NO」欄が「S81104217A」と看取できるものの実験動画である乙1の1、2の内容及び被請求人回答書(1)第8ページ第10行?第9ページ第1行の記載からみて、被請求人の証拠に基づくものは次に示す構成d-2を備えているといえる。
d-2 前記モーター(M)が回っていない状態でテールゲート(1)を手動で格納したときに、テールゲート(1)から手を離すとテールゲート(1)が開方向に急激に倒れてくる

(2)構成aについて
ア 請求人が主張するイ号物件の「構成a」は、「テールゲート(1)を開閉するチルトシリンダ(2)と油タンク(4)との間に開閉用のソレノイド(5、6)を介して結んだ管路(7)と、前記チルトシリンダ(2)と前記油タンク(4)との間にチェック弁(9)を介し結んだ管路(8、10)とを有するテールゲートリフターであって」というものであり、この点について当事者間に争いはない。

イ そして、請求人回答書(2)の第6ページ第29?32行において、「管路(7)」が「チルトシリンダ(2)と、油タンク(4)との間にソレノイド(5)を介して結んだ管路、及びソレノイド(5)とソレノイド(6)を結ぶ管路」である旨主張し、同ページ第32?33行において、「管路(8)」が「油タンク(4)とソレノイド(6)とを結んだ管路」である旨主張し、同ページ第33?37行において、「管路(10)」が「チルトシリンダ(2)と油タンク(4)との間にチェック弁(9)を介し結んだ管路」であり、管路(7)の油タンク(4)側の一部、及び管路(8)のチルトシリンダ(2)側の一部を共用している旨主張し、さらに、同第6ページ末行?第7ページ第3行において、「ソレノイド(5)」及び「ソレノイド(6)」は、チルトシリンダ(2)を動作させてテールゲート(1)を開閉する際に協働することで「開閉用のソレノイド」として機能するものであり、一体不可分な構成である旨主張し、同第7ページに甲3の図8に管路及び開閉用のソレノイドの説明を加筆した次の【図1】を示している。


ウ しかしながら、「ソレノイド(6)」については、「管路(7)」だけでは、チルトシリンダ(2)と油タンク(4)との間にソレノイド(6)を「介して結んだ」ものとはいえないものであるから、「ソレノイド(5)」及び「ソレノイド(6)」の両者を併せたものについても、チルトシリンダ(2)と油タンク(4)との間にソレノイド(5)及びソレノイド(6)を「介して結んだ」ものとはいえない。そして、チルトシリンダ(2)を引込む際にはチルトシリンダ(2)内の油を油タンク(4)へ排出するために「管路(8)」を要することは技術的に明らかである。
また、上記イの「管路(8)」及び「管路(10)」に係る主張を踏まえれば、「管路(8)」は「チェック弁(9)」を介してチルトシリンダ(2)と油タンク(4)を結んでいないことから、「チルトシリンダ(2)と油タンク(4)との間にチェック弁(9)を介し結んだ管路」については、「管路(10)」であることも明らかといえる。

エ 以上のことから、「構成a」は、技術的にみれば「テールゲート(1)を開閉するチルトシリンダ(2)と油タンク(4)との間に開閉用のソレノイド(5、6)を介して結んだ管路(7、8)と、前記チルトシリンダ(2)と前記油タンク(4)との間にチェック弁(9)を介し結んだ管路(10)とを有するテールゲートリフターであって」(下線が変更箇所。以下「構成a’」という。)とするのが相当である。

(3)請求人の証拠等から把握されるイ号物件の認定
上記(1)ア、(2)を踏まえると、甲4の1の動画に示される挙動を行うものとして把握されるもの(以下「イ号-1」という。)は以下のとおりである。
「a’ テールゲート(1)を開閉するチルトシリンダ(2)と油タンク(4)との間に開閉用のソレノイド(5、6)を介して結んだ管路(7、8)と、前記チルトシリンダ(2)と前記油タンク(4)との間にチェック弁(9)を介し結んだ管路(10)とを有するテールゲートリフターであって、
b 前記開閉用のソレノイド(5、6)は導通位置と油の流れを阻止する位置とに切換え可能であり、
c 前記チェック弁(9)はモーター(M)の動作時で前記テールゲート(1)をモーター(M)により格納位置に閉じる時には『閉』状態に保持され、
d-1 前記モーター(M)が回っていない状態でテールゲート(1)を手動で格納したときに、テールゲート(1)から手を離すとテールゲート(1)が開方向にある程度回動した後に回動が停止する
e テールゲートリフター。」

(4)被請求人の証拠等から把握されるイ号物件の認定
上記(1)イ、(2)を踏まえると、乙1の1、2の動画に示される挙動を行うものとして把握されるもの(以下「イ号-2」という。)は以下のとおりである。
「a’ テールゲート(1)を開閉するチルトシリンダ(2)と油タンク(4)との間に開閉用のソレノイド(5、6)を介して結んだ管路(7、8)と、前記チルトシリンダ(2)と前記油タンク(4)との間にチェック弁(9)を介し結んだ管路(10)とを有するテールゲートリフターであって、
b 前記開閉用のソレノイド(5、6)は導通位置と油の流れを阻止する位置とに切換え可能であり、
c 前記チェック弁(9)はモーター(M)の動作時で前記テールゲート(1)をモーター(M)により格納位置に閉じる時には『閉』状態に保持され、
d-2 前記モーター(M)が回っていない状態でテールゲート(1)を手動で格納したときに、テールゲート(1)から手を離すとテールゲート(1)が開方向に急激に倒れてくる
e テールゲートリフター。」

2 構成要件A?C、Eについて
イ号-1、イ号-2が本件特許発明の構成要件A?C、Eを充足することについて当事者間に特段争いはないが、以下、改めて検討する。
(1)対比
本件特許発明とイ号-1、イ号-2とを対比する。
イ号-1、イ号-2の「テールゲート(1)」は本件特許発明の「ゲート板」に相当し、以下同様に、「チルトシリンダ(2)」は「開閉用油圧シリンダ」に、「油タンク(4)」は「油タンク」に、「チェック弁(9)」は「チェック弁」に、「油」は「油」に、「モーター(M)」は「モーター」に、「テールゲートリフター」は「テールゲートリフター」にそれぞれ相当する。

(2)構成要件Aについて
ア イ号-1、イ号-2の構成a’は、「テールゲート(1)を開閉するチルトシリンダ(2)と油タンク(4)との間に開閉用のソレノイド(5、6)を介して結んだ管路(7、8)と、前記チルトシリンダと前記油タンク(4)との間にチェック弁(9)を介し結んだ管路(10)とを有するテールゲートリフターであって」というものである。

イ ここで、本件特許発明の「開閉用ソレノイド弁」について検討するに、本件特許の請求項1にも発明の詳細な説明にもその数を特定する記載はない。
本件特許発明の技術的特徴は、発明の詳細な説明全体の記載からみて、その請求項1に特定されるとおり「前記開閉用油圧シリンダと前記油タンクとの間にチェック弁を介し結んだ管路」の「チェック弁」により「モーターが回っていない状態でゲート板を手動で格納しようとする時には「開」状態になって前記油タンク内のオイルを前記開閉用油圧シリンダに供給し、前記開閉用油圧シリンダ内の真空化を防止すること」にあるものであるから、本件特許発明において、「開閉用ソレノイド弁」の数を特定するものではなく、その機能を有するという前提のもと任意に選択可能なものと解するのが相当である。
そうすると、イ号-1、イ号-2の「開閉用のソレノイド(5)、(6)」は、本件特許発明の「開閉用ソレノイド弁」を充足するといえる。

ウ また、「油圧シリンダと油タンクとの間に開閉用ソレノイド弁を介して結んだ管路」及び「前記開閉用油圧シリンダと前記油タンクとの間にチェック弁を介し結んだ管路」について検討するに、本件特許の請求項1にも発明の詳細な説明にも両者の「管路」が完全に別個のものであることを特定する記載はない。
そして、【図3】?【図5】に係る各実施例においては、「管路d」より開閉用シリンダ15側の管路が共用されているし、原理回路図である【図1】、【図2】においても同様の構成となっている(なお、【図5】において、開閉用シリンダに相当する部材に符号13が付されているが符号15の誤記であることは明らかである。)。また、【図3】に係る実施例においては、「管路c」は「管路e」と合流していることから、開閉用シリンダ15から戻り流量制御弁7を介してオイルタンク1に戻る油は、上記合流の箇所からオイルタンク1側の「管路e」を通って戻ることは明らかであり、【図4】に係る実施例においても同様の構成となっている。
そうすると、本件特許発明の「油圧シリンダと油タンクとの間に開閉用ソレノイド弁を介して結んだ管路」と「前記開閉用油圧シリンダと前記油タンクとの間にチェック弁を介し結んだ管路」は、それぞれが完全に独立した別個の管路であることを特定するものではないことが明らかである。

エ してみると、イ号-1、イ号-2の構成a’は、本件特許発明の構成要件Aを充足するといえる。

(3)構成要件Bについて
イ号-1、イ号-2の構成bは、「前記開閉用のソレノイド(5、6)は導通位置と油の流れを阻止する位置とに切換え可能であり」というものであるから、上記(2)イを踏まえると、本件特許発明の構成要件Bを充足するといえる。

(4)構成要件Cについて
イ号-1、イ号-2の構成cは、「前記チェック弁(9)はモーター(M)の動作時で前記テールゲート(1)をモーター(M)により格納位置に閉じる時には『閉』状態に保持され」というものであるから、本件特許発明の構成要件Cを充足するといえる。

(5)構成要件Eについて
イ号-1、イ号-2の構成eは、「テールゲートリフター」というものであるから、本件特許発明の構成要件Eを充足するといえる。

3 構成要件Dについて
本件特許発明の構成要件Dは、チェック弁は「モーターが回っていない状態でゲート板を手動で格納しようとする時には『開』状態になって前記油タンク内のオイルを前記開閉用油圧シリンダに供給し、前記開閉用油圧シリンダ内の真空化を防止する」というものであるところ、イ号物件が対応する構成を備えているかどうかについて、当事者間に争いがあるので、以下検討する。
(1)イ号-1について
ア イ号-1の構成d-1は、「前記モーター(M)が回っていない状態でテールゲート(1)を手動で格納したときに、テールゲート(1)から手を離すとテールゲート(1)が開方向にある程度回動した後に回動が停止する」というものである。

イ ここで、イ号-1において、「モーター(M)が回っていない状態」とは、油タンク(4)内の油が油圧ポンプ(11)によりチルトシリンダ(2)内に供給されることがない状態であり、そのような状態で「テールゲート(1)を手動で格納した」場合、チルトシリンダ(2)のピストンは、強制的に繰出側(上記1(2)イの図面における上側)に移動させられることになるが、油圧ポンプ(11)による油の供給がないため、チルトシリンダ(2)内に負圧(真空状態)が生じることが技術的に明らかである。そして、構成a’の一部として「前記チルトシリンダ(2)と前記油タンク(4)との間にチェック弁(9)を介し結んだ管路(10)」を有するものであるが、上記の負圧が生じるときに「チェック弁(9)」が「開」状態になっているかどうかは外形的には明らかでない。しかしながら、モーター(M)による開閉時には必ずしも必要とはいえない「管路(10)」をあえて備えていること、さらに、「テールゲート(1)から手を離すとテールゲート(1)が開方向にある程度回動した後に回動が停止する」という事象が生じていることを鑑みると、上記負圧に応じて、管路(10)のチェック弁(9)が「開」状態になって、油タンク(4)の油(オイル)が「チルトシリンダ(2)」内に供給されていることは、技術的に明らかといえる。(なお、テールゲート(1)が当初開方向にある程度回動するのは、上述した供給によってはチルトシリンダ(2)の内部が完全に油で満たされていないことによるものと解される。)
そして、そのようなものであるなら「チルトシリンダ(2)」内の真空化を防止するといえる。

ウ そうすると、イ号-1(「MODEL」欄が「RAM10-1355」、「MFG.NO」欄が「S70101968」)の構成d-1は、本件特許発明の構成要件Dを充足するといえる。

(2)イ号-2について
ア イ号-2の構成d-2は、「前記モーター(M)が回っていない状態でテールゲート(1)を手動で格納したときに、テールゲート(1)から手を離すとテールゲート(1)が開方向に急激に倒れてくる」というものである。

イ ここで、イ号-2において、「モーター(M)が回っていない状態でテールゲート(1)を手動で格納したとき」には、上記(1)イと同様に、チルトシリンダ(2)内に負圧(真空状態)が生じることが技術的に明らかである。そして、構成a’の一部として「前記チルトシリンダ(2)と前記油タンク(4)との間にチェック弁(9)を介し結んだ管路(10)」を有するものであるが、上記の負圧が生じるときに「チェック弁(9)」が「開」状態になっているかどうかは外形的には明らかでない。しかしながら、「テールゲート(1)から手を離すとテールゲート(1)が開方向に急激に倒れてくる」という事象が生じていることを鑑みると、「チェック弁(9)」は「開」状態になっていないか、あるいは、ある程度「開」状態になっていたとしても「チルトシリンダ(2)」内の真空化を防止する程度に油タンク(4)内の油(オイル)を「チルトシリンダ(2)」に供給しているものでないことは明らかといえる。

ウ そうすると、イ号-2(「MODEL」欄が「RAM10-1355N」、「MFG.NO」欄が「S81104217A」)の構成d-2は、本件特許発明の構成要件Dを充足するとはいえない。

(3)クラッキング圧について
ここで、甲3の図8(上記1(2)イの図1も参照。)に示される「チェック弁(9)」は、「チルトシリンダ(2)」と「油タンク(4)」を結んだ「管路(10)」に設けられているが、一般的な油圧回路において、チェック弁のクラッキング圧は、例えば、「新・知りたい油圧/基礎編第10刷」(不二越ハイドロニクスチーム著,株式会社ジャパンマシニスト社,平成5年4月10日初版発行 平成23年7月20日第10刷発行)の第115ページ第15?17行に「0.02〔MPa〕(≒0.2〔kgf/cm^(2)〕から1〔MPa〕(≒10〔kgf/cm^(2)〕以下で作られています。」と記載されるように、どのような時に開口させるかといった目的や配置される油圧回路の構成等の条件により、幅広い範囲のものから選択されるものであるのが技術常識であるところ、「イ号物件の図面及び図面の説明」とする甲3には、どのような時に開口され得るのか、クラッキング圧がどの程度であるのかといったことを直接的に明示するような記載は見当たらない。

「新・知りたい油圧/基礎編第10刷」第115ページから抜粋


そうすると、クラッキング圧の設定によっては、「テールゲート(1)」を手動で強制的に格納位置に閉じてチルトシリンダ(2)内に負圧(真空状態)が生じたとしても、「チェック弁(9)」が「開」状態になる場合もならない場合もあり得るものであり、また、「開」状態になるとしてもテールゲート(1)をどの程度閉じたとき(チルトシリンダ(2)内がどの程度負圧になったとき)に「開」状態になるかも種々とり得るものであるから、単に「チェック弁(9)」が存在することをもって、チェック弁(9)を通過して油タンク(1)内の油(オイル)がチルトシリンダ(2)内に供給して、チルトシリンダ(2)内の真空化を防止するとまではいえないことが明らかであって、このことは上記(1)、(2)で検討したことと整合するものである。

(4)まとめ
本件判定の請求でイ号物件としているのは、モデル名「RAM10-1355」のテールゲートリフターであるところ、乙2の「新明和マルチゲート取扱説明書 架装形式RAM10-1□□□(1000Kgモデル」(□の部分は複数の数字が挿入される変数を意味しており、この点において請求人回答書(1)第3?4ページの「B.添付資料1、2の記載内容の説明」及び被請求人回答書(1)の第9ページ第8?11行に示されるように、当事者間の争いはない。)において、油圧開閉タイプの「RAM10-13□□」の操作方法を示す第23ページに「警告」として「油圧開閉タイプの場合、テールゲートを手動で閉じますとゲートロック等を外した時にテールゲートが一気に水平状態まで開き、事故につながる恐れがありますので、手動によるテールゲート『閉』操作は絶対に行わないでください。」との記載が警告イラストと共に示されていることから、同一の構造の油圧回路を有するものであったとしても、クラッキング圧の設定が異なる仕様のものが存在し、イ号-1のような事象が生じない場合があることが推察できる。
そして、上記(1)?(3)の検討結果と併せると、請求人が示すイ号-1(「MODEL」欄が「RAM10-1355」、「MFG.NO」欄が「S70101968」)に限っては構成要件Dを充足するといえるが、被請求人が示すイ号-2(「MODEL」欄が「RAM10-1355N」、「MFG.NO」欄が「S81104217A」)のように構成要件Dを充足しない場合もあり、上記の乙2の開示内容も考慮すると、モデル名「RAM10-1355」のテールゲートリフターが構成要件Dを充足するといえるための証拠が足りない。
したがって、請求人の主張及び証拠方法では、モデル名「RAM10-1355」のテールゲートリフターなら全て構成要件Dを充足することが立証されているとはいえない。
よって、イ号物件(モデル名「RAM10-1355」のテールゲートリフター)は、本件特許発明の構成要件Dを充足するということはできないといわざるをえない。

第6 むすび
以上のとおり、イ号物件は、本件特許発明の構成要件Dを充足するとはいえないから、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
 
判定日 2018-06-01 
出願番号 特願2000-127546(P2000-127546)
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (B60P)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 氏原 康宏
一ノ瀬 覚
登録日 2003-02-14 
登録番号 特許第3397309号(P3397309)
発明の名称 テールゲートリフターの油圧回路  
代理人 小松 陽一郎  
代理人 小野 尚純  
代理人 山崎 道雄  
代理人 大住 洋  
代理人 鹿角 剛二  
代理人 飯田 隆  
代理人 奥貫 佐知子  
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