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審決分類 |
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する B62D 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する B62D |
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管理番号 | 1341322 |
審判番号 | 訂正2018-390026 |
総通号数 | 224 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-08-31 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2018-02-06 |
確定日 | 2018-05-21 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第4179049号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第4179049号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許第4179049号は、平成15年5月22日(優先権主張 平成14年7月16日)を出願日として出願された特願2003-144845号の請求項1?5に係る発明について、平成20年9月5日に特許権の設定登録がされ、その後、平成30年2月6日に本件訂正審判が請求されたものである。 第2 請求の趣旨 本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第4179049号の明細書及び特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものであり、請求人が求めている訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。(審決注:下線部分は訂正箇所であり、請求人が訂正明細書及び特許請求の範囲において示したとおりである。) 1 訂正事項1 以下のとおり、特許請求の範囲の訂正前の請求項1の記載を訂正後の請求項1の記載のとおり訂正し、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2及び3についても、同様に訂正する。 (訂正前) 「【請求項1】 一対の鉛直板部を有する、車体取付け用ブラケットと、前記ブラケットの一対の鉛直板部によって挟持される膨出部を有する、ステアリングコラムと、前記ステアリングコラム内に回転自在に設けられたステアリングシャフトと、前記ステアリングコラムの膨出部および前記ブラケットの一対の鉛直板部を挿通して設けられた軸杆部材と、前記軸杆部材に設けられ、対峙する前記一対の鉛直板部の間の距離を調整して前記ステアリングコラムを緊締する締付け機構とを備える位置調整式ステアリングコラム装置において、前記膨出部は前記ブラケットの一対の鉛直板部と対向して形成される一対の平面部、前記一対の平面部から対向する前記鉛直板部に向かって突出して形成される凸部および前記凸部内に穿たれ、前記軸杆部材が挿通する貫通孔を備えることを特徴とする位置調整式ステアリングコラム装置。」 (訂正後) 「【請求項1】 一対の鉛直板部を有する、車体取付け用ブラケットと、前記ブラケットの一対の鉛直板部によって挟持される膨出部を有する、ステアリングコラムと、前記ステアリングコラム内に回転自在に設けられたステアリングシャフトと、前記ステアリングコラムの膨出部および前記ブラケットの一対の鉛直板部を挿通して設けられた軸杆部材と、前記軸杆部材に設けられ、対峙する前記一対の鉛直板部の間の距離を調整して前記ステアリングコラムを緊締する締付け機構とを備える位置調整式ステアリングコラム装置において、前記膨出部は前記ブラケットの一対の鉛直板部と対向して形成される一対の平面部、前記一対の平面部から対向する前記鉛直板部に向かって突出して形成される凸部および前記凸部内に穿たれ、前記軸杆部材が挿通する貫通孔を備え、前記膨出部の貫通孔が長孔であることを特徴とする位置調整式ステアリングコラム装置。」 2 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 3 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 4 訂正事項4 明細書の段落【0012】の「膨出部は前記ブラケットの一対の鉛直板部と対向して形成される一対の平面部、一対の平面部から対向する鉛直板部に向かって突出して形成される凸部および凸部内に穿たれ、軸杆部材が挿通する貫通孔を備えるものである。」との記載を、「膨出部は前記ブラケットの一対の鉛直板部と対向して形成される一対の平面部、一対の平面部から対向する鉛直板部に向かって突出して形成される凸部および凸部内に穿たれ、軸杆部材が挿通する貫通孔を備え、前記膨出部の貫通孔が長孔であるものである。」に訂正する。 5 訂正事項5 明細書の段落【0024】の「平面部20の直径D」との記載を、「凸部21の直径D」に訂正する。 6 訂正事項6 明細書の段落【0038】の「平面部39の幅W」との記載を、「凸部40の幅W」に訂正する。 第3 当審の判断 1 訂正事項1について (1)訂正の目的について 訂正事項1は、訂正前の請求項1の発明特定事項である「膨出部」が備える「貫通孔」について、その形状を「長孔」に特定し、「前記膨出部の貫通孔が長孔である」とするものであり、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2及び3についても、同様に「貫通孔」の形状は「長孔」に特定されるものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 よって、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。 (2)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更について 訂正事項1に関して、訂正後の請求項1の発明特定事項は、訂正前の請求項1を引用する請求項5の発明特定事項と同じであり、訂正後の請求項2の発明特定事項は、訂正前の請求項2を引用する請求項5の発明特定事項と同じであり、訂正後の請求項3の発明特定事項は、訂正前の請求項3を引用する請求項5の発明特定事項と同じであるから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。 また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 よって、訂正事項1は、特許法第126条第5項ないし第6項の規定に適合する。 (3)独立特許要件について 上記(2)のとおり、訂正後の請求項1?3に係る発明は、実質的に訂正前の請求項5に係る発明と同じといえるから、訂正後の請求項1?3に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでないとする理由は見出せない。 よって、訂正事項1は、特許法第126条第7項の規定に適合する。 2 訂正事項2について (1)訂正の目的について 訂正事項2は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 よって、訂正事項2は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。 (2)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更について 訂正事項2は、請求項の削除であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。 また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 よって、訂正事項2は、特許法第126条第5項ないし第6項の規定に適合する。 (3)独立特許要件について 本件訂正は、訂正事項2に関して、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とする訂正であるが、請求項が削除されているので、独立特許要件の判断の対象となる請求項が存在しない。 3 訂正事項3について (1)訂正の目的について 訂正事項3は、訂正前の請求項5を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 よって、訂正事項3は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。 (2)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更について 訂正事項3は、請求項の削除であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。 また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 よって、訂正事項3は、特許法第126条第5項ないし第6項の規定に適合する。 (3)独立特許要件について 本件訂正は、訂正事項3に関して、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とする訂正であるが、請求項が削除されているので、独立特許要件の判断の対象となる請求項が存在しない。 4 訂正事項4について (1)訂正の目的について 訂正事項4は、特許請求の範囲の記載と、発明の詳細な説明の記載との整合を図るために訂正するものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 よって、訂正事項4は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものに該当する。 (2)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更について 訂正事項4は、特許請求の範囲の記載と、発明の詳細な説明の記載との整合を図る訂正にすぎないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。 また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 よって、訂正事項4は、特許法第126条第5項ないし第6項の規定に適合する。 5 訂正事項5について (1)訂正の目的について ア 訂正前の明細書の段落【0023】には、「平面部20に形成される凸部21は平面部20からステアリングコラム1の外方向にΔAだけ突出している。」と記載され、段落【0024】には、「図5に示すように、凸部21は平面部20に沿う基準平面Iに対してステアリングコラム1の外方向にΔAだけ突出している。」と記載されていること、図5において、平面部「20」として示されている部分が「D」の範囲の外にありかつ基準平面「I」と一致していことが看取できること、図5において、凸部「21」として示されている部分が「D」の範囲にあることが看取できること、図5における「ΔA」に関する基準平面「I」などを示す引き出し線の位置、及び、図4の凸部「21」の形状を総合すると、図5における「D」は、「凸部21の直径」を示していることが明らかである。 イ 一方、訂正前の明細書の段落【0024】には、「平面部20の直径D」と記載されているところ、かかる記載は、上記アと矛盾し明確でない。 ウ したがって、「平面部20の直径D」を「凸部21の直径D」に訂正すること、すなわち訂正事項5は、訂正前の明細書における明確でない記載(上記イ)を明確にした(上記ア)ものと認められるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 よって、訂正事項5は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものに該当する。 (2)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更について 訂正事項5は、上記のとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。 また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 よって、訂正事項5は、特許法第126条第5項ないし第6項の規定に適合する。 6 訂正事項6について (1)訂正の目的について ア 訂正前の明細書の段落【0037】には、「平面部39に形成される凸部40は平面部39からステアリングコラム35の外方向にΔAだけ突出している。」と記載され、段落【0038】には、「図10に示すように、凸部40は平面部39に沿う基準平面Iに対してステアリングコラム35の外方向にΔAだけ突出している。」と記載されていること、図10において、平面部「39」として示されている部分が「W」の範囲の外にありかつ基準平面「I」と一致していることが看取できること、図10において、凸部「40」として示されている部分が「W」の範囲にあることが看取できること、図10における「ΔA」に関する基準平面「I」などを示す引き出し線の位置、及び、図9の凸部「40」の形状を総合すると、図10における「W」は、「凸部40の幅」を示していることが明らかである。 イ 一方、訂正前の明細書の段落【0038】には、「平面部39の幅W」と記載されているところ、かかる記載は、上記アと矛盾しており、明確でない。 ウ したがって、「平面部39の幅W」を「凸部40の幅W」に訂正すること、すなわち訂正事項6は、訂正前の明細書における明確でない記載(上記イ)を明確にした(上記ア)ものと認められるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 よって、訂正事項6は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものに該当する。 (2)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更について 訂正事項6は、上記のとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。 また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 よって、訂正事項6は、特許法第126条第5項ないし第6項の規定に適合する。 第4 むすび 以上のとおり、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項までの規定に適合する。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 位置調整式ステアリングコラム装置 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明はステアリングコラムに、たとえば、バルジ成形法で膨出部を成形する際にパンチ穿孔で膨出部の平面部に反りが生じたとしても、チルトあるいはテレスコピック調整操作でステアリングコラムの締付け保持力が低下するのを防ぐようにした位置調整式ステアリングコラム装置に関する。 【0002】 【従来の技術】 車輌用ステアリングコラムには運転者が好ましいドライビングポジションを取ることができるようにステアリングホイールの上下方向の位置調整を可能にするチルト機構が備えられる。同じ目的でステアリングホイールの前後方向の位置調整を可能にするテレスコピック機構、上下方向および前後方向の双方の位置調整を可能にするチルト・テレスコピック機構が備えられる。 【0003】 このチルト機構のチルトピボットを中心としたチルト揺動あるいはステアリングコラム軸方向に沿うテレスコピック摺動のためにステアリングコラムは車体側支持部材に対する相対変位をなし得るのと同時に、選定された位置ではステアリングコラムの拘束状態を保持するために車体側支持部材に固定できるように構成される。 【0004】 このような車体側支持部材に対するステアリングコラムの相対変位と固定とを果たすのに円筒状のステアリングコラムに固着される、コラム側支持部材として、たとえば、平坦な側面を備えたディスタンスブラケットが使用される。通常、このディスタンスブラケットの側面には丸孔あるいは長孔が穿たれており、チルト機構では丸孔に、テレスコピック機構では長孔に軸杆部材を通し、チルトピボットを中心としたチルト揺動あるいはステアリングコラム軸方向に沿うテレスコピック摺動が可能なようになっている。ステアリングコラムとディスタンスブラケットとは別々に製作される部材であって、両者は多くの場合、溶接によって部材同士が固着される。 【0005】 ところで、このような溶接で固着されるディスタンスブラケットを使用しない、新たなステアリングコラムが提案されている。これは管状の素材からその一部を膨出させた膨出部によって代用するもので、液圧バルジ成形法を用いて製作することができる。この種のステアリングコラムは、たとえば、図11に示すように、ステアリングコラム51の一部を膨出させて膨出部52を形成するものが知られている。 【0006】 この膨出部52は車体側支持部材(図示せず)に当接させる、背中合わせの一対の平面部53を備える。この平面部53には軸杆部材を通すための丸孔54が穿たれる。この膨出部52を形成したステアリングコラム51によれば、たとえば、チルト機構を構成する部品の幾つかを省略することが可能で、ステアリング装置の製造コストを削減できるなどのメリットがある。 【0007】 本出願の発明と関連する先行技術文献には次のものがある。 【0008】 【特許文献1】 特開平8-276852号公報、(第3頁、図3) 【0009】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、液圧バルジ成形法を用いて製作する場合、特に丸孔54の穿孔時に平面部53にパンチ穿孔に伴う加圧力が作用することから、平面部53の穿孔部を中心に幾分狂いが生じ、平面部53が平坦な面に仕上がらないことがある。すなわち、液圧バルジ成形法ではプレス工程でのパンチ打ち抜き時のように、ダイによって打ち抜き荷重を受けるのではなく、図12に示すように、パンチPの加圧力と対向するワークWと接する、非剛体である圧油Oで受け止めることを求められる。この場合、穿孔自体は支障がないものの、穿孔部を中心として平面部53に反りが発生し、結果として、平面部53は平坦な面に仕上がらない。 【0010】 このような平面部53に生じる反りは、たとえば、図13に示すように、基準平面Iに対してΔDだけ誤差を生じさせる。この平面部53の反りが大きくなると、チルトあるいはテレスコピック調整操作において、接触面が不安定となり、本来生じるべき締付け力を得られず、ステアリングコラムを強固に保持できない。 【0011】 本発明の目的はバルジ成形法でステアリングコラムの膨出部を成形する際にパンチ穿孔で反りが生じたとしても、ステアリングコラム締付け保持力が低下するのを防止できる、位置調整式ステアリングコラム装置を提供することにある。 【0012】 【課題を解決するための手段】 本発明は一対の鉛直板部を有する、車体取付け用ブラケットと、このブラケットの一対の鉛直板部によって挟持される膨出部を有する、ステアリングコラムと、ステアリングコラム内に回転自在に設けられたステアリングシャフトと、ステアリングコラムの膨出部およびブラケットの一対の鉛直板部を挿通して設けられた軸杆部材と、軸杆部材に設けられ、対峙する一対の鉛直板部の間の距離を調整してステアリングコラムを緊締する締付け機構とを備える位置調整式ステアリングコラム装置において、膨出部は前記ブラケットの一対の鉛直板部と対向して形成される一対の平面部、一対の平面部から対向する鉛直板部に向かって突出して形成される凸部および凸部内に穿たれ、軸杆部材が挿通する貫通孔を備え、前記膨出部の貫通孔が長孔であるものである。 【0013】 本発明の膨出部に形成される凸部は平面部からステアリングコラムの外方向に突出している。これはパンチ穿孔で平面部に生じる加工誤差に応じて突出させるもので、このような凸部により穿孔時に平面部に反りが生じたとしても、それを相殺することができる。 【0014】 この結果、たとえば、チルトあるいはテレスコピック調整操作で、たとえば、カム機構を用いて締め上げる場合に車体取付け用ブラケットの締付け用鉛直板部と平面部の凸部とが軸杆部材周囲全域で接触し、締付けに対して安定した反力が得られるので、ステアリングコラムを強固に保持することができる。 【0015】 本発明において、凸部は平面部に対して規定値だけ外方向に突出するのが望ましい。 【0016】 また、本発明において、膨出部の平面部スパンはステアリングコラムの外径と同等か、それよりも大きいことが望ましい。 【0017】 【発明の実施の形態】 本発明のステアリングコラム装置の一実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1において、本発明のステアリングコラム装置はステアリングコラム1と、このステアリングコラム1内に配置されるステアリングシャフト2とを備える。このステアリングコラム1は、たとえば、管状の軟鋼素材からなり、液圧バルジ成形法で膨出部を形成している。ステアリングシャフト2はステアリングコラム1の各端部に配置される軸受3、4によってステアリングコラム1内に回転自在に支承されている。ステアリングシャフト2にはその一端に操舵力を付与するステアリングホイール5が取付けられている。 【0018】 一方、このステアリングコラム1はアッパ側車体取付け用ブラケット6によって中間部を保持されると共に、ステアリングホイール5から遠い一端がロア側車体取付け用ブラケット7によって支持される。 【0019】 図2に示すように、ロア側車体取付け用ブラケット7は車体に締結部材よって取付けられる車体取付け板部8およびこの車体取付け板部8と一体に形成され、鉛直下方向に延在する左右一対の板部を有する鉛直板部9a、9bから構成される。一方、コラム側にはロア側コラム取付け用ブラケット10がステアリングコラム1に溶接によって取付けられている。ロア側コラム取付け用ブラケット10はロア側車体取付け用ブラケット7の左右一対の鉛直板部9a、9bの間に挟まれ、ロア側車体取付け用ブラケット7の鉛直板部9a、9bと対峙するように左右一対の板部11a、11bを有しており、断面コ字状に形成されている。 【0020】 ロア側車体取付け用ブラケット7の左右一対の鉛直板部9a、9bには前方に向かって開放した貫通孔12(図1参照)が形成され、ロア側コラム取付け用ブラケット10の左右一対の板部11a、11bには円形の貫通孔13が形成されており、この貫通孔12、13にチルトボルト14が貫通して配置され、ナット15と螺合することによって固定されている。このチルトボルト14はステアリングホイール5側からの荷重が働いた場合、車体前方に向かって変位し、開放した貫通孔12から離脱する。また、これはステアリングコラム1のチルトピボットとして機能し、ステアリングコラム1のチルト位置調整時にはチルトピンを中心に揺動自在となる。 【0021】 アッパ側車体取付け用ブラケット6は、図3に示すように、車体に取付けられる車体取付け板部16および左右一対の締付け用鉛直板部17a、17bを備える。この締付け用鉛直板部17a、17bは共に車体取付け板部16に連結され、鉛直上下方向に延在しており、対峙する鉛直板部17a、17bの間でステアリングコラム1を挟持する。鉛直板部17a、17bにはそれぞれ円弧状溝18が形成され、チルト調整操作によってステアリングコラム1の上下方向の揺動を自在にする。 【0022】 このアッパ側車体取付け用ブラケット6の車体取付け部と車体との間には図示しない離脱部材(たとえば、カプセルやコーティングプレート)が装着される。これにより、ステアリングホイール側から過大な荷重が働いた場合、上述したチルトボルト14の離脱と共に車体取付け用ブラケット6が滑りながら、前方に変位し、車体から離脱する。 【0023】 図4(a)に示すように、アッパ側車体取付け用ブラケット6の鉛直板部17a、17bの間に挟持される、ステアリングコラム1の膨出部19は長手方向のほぼ中間部に成形される。この膨出部19は、図4(b)(c)に示すように、背中合わせの一対の平面部20を備える。この平面部20はスパンSがステアリングコラム直径D_(S)と同等か、またはそれも大きく構成される。この背中合わせの一対の平面部20はいずれもステアリングコラム1の外方向(鉛直板部に向かう方向)に突出している、円形の凸部21を備える。一対の凸部21にはそれぞれ軸杆部材を通すための丸孔22を穿っている。この丸孔22は液圧バルジ成形工程でステアリングコラム1の外側から内側に向ってパンチによって穿孔したものである。平面部20に形成される凸部21は平面部20からステアリングコラム1の外方向にΔAだけ突出している。 【0024】 図5に示すように、凸部21は平面部20に沿う基準平面Iに対してステアリングコラム1の外方向にΔAだけ突出している。ΔAについて試験した結果によれば、管状素材の肉厚tが1.6?2.3mmであるとき、望ましい値は0.5?2.0mmの範囲内である。より望ましくは、0.8?1.6mmの範囲内がよい。一方、試験によれば、凸部21の大きさに関係する、次の望ましい値を得た。凸部21の直径Dは12?30mmの範囲内がよく、また、試験結果から丸孔22の直径dは6?10mmの範囲内が望ましい。 【0025】 チルト調整位置を固定するコラム締付け機構について図6を参照して説明する。頭部23を有する軸杆部材24はアッパ側車体取付け用ブラケット6の鉛直板部17aの円弧状溝18、ステアリングコラム1の一対の平面部20の丸孔22および鉛直板部17bの円弧状溝18を貫通している。軸杆部材24の頭部23のうち、鉛直板部17bと接する箇所は略長方形断面となって溝18と係合し、回転不能となっている。 【0026】 一方、鉛直板部17aから突出した軸杆部材24の先端には固定カム部材25および可動カム部材26ならびにレバー27、スラスト軸受28が配置され、さらにその先端には軸杆部材24に形成されたねじ部に螺合するナット部材29によって締付け固定されている。固定カム部材25の鉛直板部17aと接する面は略長方形断面となって溝18と係合しており、回転不能となっている。可動カム部材26とレバー27とは相対回転不能に結合されており、レバー27の操作と可動カム部材26の回転とが連動するようになっている。 【0027】 固定カム部材25および可動カム部材26には相手カム部材と対向する面にカム山が各々形成されており、カム同士が相対回転すると、固定カム部材25と可動カム部材26との軸間距離が変化する。ステアリングコラムの位置を調整しようとする場合、レバー27を一方に回転させると、可動カム部材26が回転することで、固定カム部材25と可動カム部材26との軸方向距離が縮まり、それに伴って鉛直板部17a、17b間の距離が広がることによってステアリングコラム1の締付けが解除され、ステアリングコラム1が位置調整自在となる。 【0028】 ステアリングコラム1の位置調整を完了し、ステアリングコラムの位置を固定しようとする場合、レバー27を逆方向に回転させる。このとき、レバー27の回転と連動して可動カム部材26が回転し、それに伴って固定カム部材25と可動カム部材26との軸方向距離が広がる。それに伴い鉛直板部17a、17b間の距離が縮まり、ステアリングコラム1の膨出部19が締付けられることによってステアリングコラム1の位置が固定される。 【0029】 本実施の形態においては、上記構成からチルト調整操作時には車体取付け用ブラケット6の鉛直板部17a、17bが最初に凸部21と接し、鉛直板部17a、17bのステアリングコラム中心方向への変位と共に鉛直板部17a、17bと凸部21とが軸杆部材24の周りで効果的に密着することで、ステアリングコラム1を強固に保持することができる。 【0030】 本発明の上記と異なる実施の形態を説明する。図7に示すように、本実施の形態では異なるコラム締付け機構によって構成される。このコラム締付け機構は以下の構成からなる。頭部23を有する軸杆部材24はアッパ側車体取付け用ブラケット6の鉛直板部17aの円弧状溝18、ステアリングコラム1の一対の平面部20の丸孔22および鉛直板部17bの円弧状溝18を貫通している。軸杆部材24の頭部23のうち、鉛直板部17bと接する箇所は略長方形断面となって溝18と係合しており、回転不能となっている。 【0031】 一方、鉛直板部17aから突出した軸杆部材24の先端部には雄ねじが形成されている。雄ねじと螺合するナット部材30は一方の面は鉛直部材17aと接しており、他方の面はテーパ面31となっている。ナット部材30のテーパ面31と嵌合するようにレバー32の先端にもテーパ面が形成されており、それらが嵌合している。ナット部材30には雌ねじが貫通して形成されている。ナット部材30の雌ねじの一方の側は上述の通り軸杆部材24と螺合しており、雌ねじの他方の側には固定ボルト33が螺合されている。この固定ボルト33の締付けによってナット部材30とレバー32のテーパ面が相対回転不能に固定される。 【0032】 ステアリングコラムの位置を調整しようとする場合、レバー32を一方に回転させると、ナット部材30が同じ方向に回転することによって鉛直板部17a、17b間の距離が広がる。これにより、ステアリングコラム1の締付けが解除され、ステアリングコラム1が位置調整自在となる。 【0033】 ステアリングコラム1の位置調整を完了し、ステアリングコラムの位置を固定しようとする場合、レバー32を逆方向に回転させる。このとき、レバー32の回転に従ってナット部材30が回転することで、鉛直板部17a、17b間の距離が縮まり、ステアリングコラム1の膨出部19が締付けられることによってステアリングコラム1の位置が固定される。 【0034】 本実施の形態においても、先に述べた実施の形態と同様に、チルト調整操作時にはブラケット6の鉛直板部17a、17bが最初に凸部21と接し、鉛直板部17a、17bのステアリングコラム中心方向への変位と共に鉛直板部17a、17bと凸部21とが軸杆部材24の周りで効果的に密着することによりステアリングコラム1を強固に保持することができる。 【0035】 なお、上記各実施の形態において、平面部20に形成される円形の凸部21に代えて、図8(a)(b)に示す四角形、六角形などの多角形の凸部34、または図8(c)に示す楕円形の凸部34、あるいは図8(d)に示す長円形の凸部34で構成してもよい。 【0036】 本発明の上記と異なる実施の形態について説明する。構成は前述の第1の実施の形態とほぼ同じである。アウターチューブのロア側の構成も第1の実施の形態と同じである。テレスコピック式ステアリングコラム装置に適用する本実施の形態のステアリングコラム35は、図9(a)に示すように、インナーチューブ36とアウターチューブ37とを備える。このインナーチューブ36はアウターチューブ37内に嵌入されており、ステアリングコラム軸方向に摺動自在に構成される。インナーチューブ36およびアウターチューブ37は共に管状の軟鋼素材から製作される。 【0037】 このステアリングコラム35はインナーチューブ36にアッパ側車体取付け用ブラケットの一対の鉛直板部の間に挟持される膨出部38を形成している。この膨出部38は、図9(b)(c)に示すように、背中合わせの一対の平面部39を備える。この背中合わせの一対の平面部39はスパンSがステアリングコラム直径D_(S)と同等か、またはそれも大きく構成される。一対の平面部39はいずれもステアリングコラム35の外方向(鉛直板部に向かう方向)に突出している、長円形の凸部40を備える。一対の凸部40にはそれぞれ軸杆部材を通すための長孔41を穿っている。この長孔41は液圧バルジ成形工程でステアリングコラム35の外側から内側に向ってパンチによって穿孔したものである。平面部39に形成される凸部40は平面部39からステアリングコラム35の外方向にΔAだけ突出している。 【0038】 図10に示すように、凸部40は平面部39に沿う基準平面Iに対してステアリングコラム35の外方向にΔAだけ突出している。ΔAについて試験した結果によれば、管状素材の肉厚tが1.6?2.3mmであるとき、望ましい値は0.5?2.0mmの範囲内である。より望ましくは、0.8?1.6mmの範囲内がよい。一方、試験によれば、凸部40の大きさに関係する、次の望ましい値を得た。凸部40の幅Wは12?30mmの範囲内がよい。また、長孔41の幅wは6?10mmの範囲内が望ましい。 【0039】 本実施の形態においては、テレスコピックまたはチルト・テレスコピック調整操作で、たとえば、カム機構で締め上げる場合にはブラケットの鉛直板部が最初に凸部40と接し、鉛直板部のステアリングコラム中心方向への変位と共に鉛直板部と凸部40とが軸杆部材の周りで効果的に密着することで、ステアリングコラム1を強固に保持することができる。 【0040】 なお、2つのチューブの結合はアッパ側にインナーチューブ、ロア側にアウターチューブを配置するものに代えて、逆の配置によって構成してもよい。 【0041】 また、上記したステアリングコラムの膨出部の成形は液圧バルジ成形法に限られず、爆発バルジ成形法、ゴムバルジ成形法を用いてもよい。バルジ成形法に限られず、プレス成形法によって成形してもよい。 【0042】 さらに、ステアリングコラムは軟鋼素材に代えて、アルミニウム合金素材を使用することができる。 【0043】 【発明の効果】 本発明においてはステアリングコラムの膨出部に平面部から外方向に突出している凸部を備えるもので、穿孔時に平面部に反りが生じたとしても、それを相殺することができる。したがって、チルトあるいはテレスコピック調整操作においてカム機構で締め上げる場合には車体取付け用ブラケットの鉛直板部と平面部の凸部とが軸杆部材周囲全域で接触し、締付けに有効な反力を安定して得られることで、ステアリングコラムを強固に保持することができ、これにより、ステアリングコラム締付け保持力が低下するのを防止することが可能になる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明によるステアリングコラム装置の一実施の形態を示す側面図である。 【図2】図1に示されるチルト調整ピボットの詳細を示す断面図である。 【図3】図1に示されるアッパ側車体取付け用ブラケットを示す断面図である。 【図4】図1に示されるステアリングコラムの要部を示す図であり、(a)はステアリングコラムの斜視図、(b)はステアリングコラムの側面図、(c)はステアリングコラムの断面図である。 【図5】図4に示されるステアリングコラムの部分断面図である。 【図6】本発明に係るステアリングコラム装置に使用されるコラム締付け機構の断面図である。 【図7】本発明に係るコラム締付け機構の他の実施の形態を示す断面図である。 【図8】本発明に係るステアリングコラムの膨出部に形成される、凸部のそれぞれ異なる変形例を示す平面図である。 【図9】本発明の他の実施の形態に係るステアリングコラムの要部を示す図であり、(a)はステアリングコラムの斜視図、(b)はステアリングコラムの断面図である。 【図10】図9に示されるステアリングコラムの部分断面図である。 【図11】従来の膨出部を有するステアリングコラムの斜視図である。 【図12】一般的な液圧バルジ成形法によるパンチ穿孔法を示す模式図である。 【図13】従来技術によるパンチ穿孔法で生じる平面部の反りを示す、ステアリングコラムの部分断面図である。 【符号の説明】 1、35… ステアリングコラム 2… ステアリングシャフト 6… アッパ側車体取付け用ブラケット 7… ロア側車体取付け用ブラケット 17a、17b… 締付け用鉛直板部 19、38… 膨出部 20、39… 平面部 21、40… 凸部 24… 軸杆部材 25… 固定カム部材 26… 可動カム部材 30… ナット部材 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 一対の鉛直板部を有する、車体取付け用ブラケットと、前記ブラケットの一対の鉛直板部によって挟持される膨出部を有する、ステアリングコラムと、前記ステアリングコラム内に回転自在に設けられたステアリングシャフトと、前記ステアリングコラムの膨出部および前記ブラケットの一対の鉛直板部を挿通して設けられた軸杆部材と、前記軸杆部材に設けられ、対峙する前記一対の鉛直板部の間の距離を調整して前記ステアリングコラムを緊締する締付け機構とを備える位置調整式ステアリングコラム装置において、前記膨出部は前記ブラケットの一対の鉛直板部と対向して形成される一対の平面部、前記一対の平面部から対向する前記鉛直板部に向かって突出して形成される凸部および前記凸部内に穿たれ、前記軸杆部材が挿通する貫通孔を備え、前記膨出部の貫通孔が長孔であることを特徴とする位置調整式ステアリングコラム装置。 【請求項2】 前記凸部が前記平面部に対して規定値だけ外方向に突出することを特徴とする請求項1記載の位置調整式ステアリングコラム装置。 【請求項3】 前記膨出部の平面部スパンが前記ステアリングコラムの外径と同等か、またはそれよりも大きく構成されることを特徴とする請求項1または2記載の位置調整式ステアリングコラム装置。 【請求項4】(削除) 【請求項5】(削除) |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2018-04-25 |
結審通知日 | 2018-04-27 |
審決日 | 2018-05-11 |
出願番号 | 特願2003-144845(P2003-144845) |
審決分類 |
P
1
41・
851-
Y
(B62D)
P 1 41・ 853- Y (B62D) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 山内 康明 |
特許庁審判長 |
島田 信一 |
特許庁審判官 |
一ノ瀬 覚 出口 昌哉 |
登録日 | 2008-09-05 |
登録番号 | 特許第4179049号(P4179049) |
発明の名称 | 位置調整式ステアリングコラム装置 |
代理人 | 松山 美奈子 |
代理人 | 松山 美奈子 |