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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61F
管理番号 1341384
審判番号 不服2016-7664  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-25 
確定日 2018-06-13 
事件の表示 特願2013-522084「3曲面腰椎前弯リカバリーパッド」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 2月 9日国際公開、WO2012/016493、平成25年 8月22日国内公表、特表2013-533059〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年7月26日(パリ条約による優先権主張 平成22年8月4日 中華人民共和国)を国際出願日とする特許出願であって、平成28年1月18日付けで拒絶すべき旨の査定がされた。
これに対し、平成28年5月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出され、特許請求の範囲について補正された。その後、平成29年2月8日付けで当審より拒絶の理由が通知され、同年8月10日に意見書とともに手続補正書が提出され、特許請求の範囲についてさらに補正されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?4に係る発明は、上記平成29年8月10日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「腰椎のリカバリーのための、ベッド上で使用するためのバックサポートであって、
該バックサポートは、人体の下部脊椎の自然の健常な生理学的曲率に適合する連続的に方向を転換する三曲面を備え、
該バックサポートの単一の及び連続した上面は、腰椎を支持するための凸面、仙椎を支持するための凹面、及び下部胸椎を支持するための凹面を含む3つのカーブを有する中高の面である、前記バックサポート。」

第3 当審が通知した拒絶の理由
平成29年2月8日付けで当審が通知した拒絶の理由のうち、理由3は概略以下のとおりである。
本願発明は、その優先権主張の日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、以下の引用文献に記載された発明に基いて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献 実願平5-876号(実開平6-57325号)のCD-ROM

第4 引用文献の記載及び引用発明
引用文献には、「脊椎校正装置」について、図1?6とともに、以下の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は一種の脊椎校正装置であって、重点としては、脊椎骨S形の円弧曲度に合せて、その円弧の頂点及び窪んだ円弧低点とで一本の支持の定点を構成し、二高点間に設けた窪んだ円弧曲線で、二つのはち枕を連結した窪んだ円弧曲線を形成させ、又、二高点の相対のはち枕の中央位置に於いて、各々突き出た肋骨を設置し、横たわった時に脊椎が連結したはち枕の上にピッタリする様にし、はち枕内の空気注入室で、注入空気の豊満な圧力に依り、校正時、各人の背部円弧曲率に合せて密着度の調整を行い、緩圧校正の安全使用目的に達する様にした脊椎校正装置に係る。
【0002】
【従来の技術】
脊椎は昔から人間の「龍骨」と言われ、その重要性は脳部に劣らないもので、図1に示す様に、医学上の記録によると、脊椎は7節の頸椎、12節の胸椎、5節の腰椎及び、3?5節の尾椎より成り、尾てい骨と尾椎は退化による原因で、てい骨と尾骨を形成し、各脊椎と椎骨の間に膠原質と繊維で組成された椎間盤、合計23個である。骨と骨の間は靱帯で繋がれて脊椎を形成している。整った一本の脊椎の正常な状態は、脊椎の側面から見て、一つのS形状の生理性湾曲を呈していなければならず、脊椎の内部には、一本の頭部から尾骨まで延伸している帯状神経組織がある。」

(イ)
「【0004】
ところで、脊椎に曲がり又は真っ直ぐでない状況が現われた時、その治療が極めて面倒である。西洋医学の医者は、大抵手術して正しく支える方法をとっているが、脊椎と関連する神経が多く、且つ、複雑な上に、少しの誤りで其の他の部門の効能に影響を及ぼす可能性があり、一般的によく見かける例としては、下半身不随であり、その手術の効果は実に心配なものである。逆に漢方医の按摩が比較的に効果があり、又、副作用の発生が割に少なく、脊椎が一旦問題を起こすと現代医学の方式では治療しにくいことがよく分る。只漢方医の按摩方法だけが曲った椎骨を元の組織位置へおし戻すことができ、それが曲った為に、神経を圧迫し痛みをひき起こすことがない様にすることができる。
【0005】
ところで、漢方医の按摩技術は往々にして、極く熟練した技術を持って始めて、有効的に実施でき、且つ、これも漸進的な按摩方法で進めていくので、かかる時間が極めて長く、そして、この方法だと熟練な技術に頼らなければならず、先ずこれらの技術習得者を物色するのが容易でなく、特に傷が痛み出した時、はたして適当な按摩者がみつかるのか、否か、実に疑問がある。尚、その上、一人の既に傷ついた人、或いは、平常姿勢の不正確が原因で痛みが発生した人に対し、如何にして自家治療や校正ができる脊椎校正装置の開発は、実に極めて期待される事である。
【0006】
【考案が解決しようとする課題】
本考案者は、一般的に脊椎病の根本治療が難しく、又、校正治療時の按摩技術者の熟練と物色が容易でない欠点を鑑み、長年の研究開発での結果に、一般によく見られる護腰敷き物等の設計に合せ、遂にこの考案である一種の脊椎校正装置なる物を開発し、脊椎の組合わせのS形曲線で連結した敷ばち面曲線設計をし、内部の空気注入室の設計と取り組み、敷きばち全体の使用が更に使用者の体の背部曲線に合致する様にし、漸進的な脊椎校正をする。
【0007】
本考案の主要目的は、靱帯脊椎のS形曲線にかこつけ、連結式の多片敷きばち構造で以て、脊椎骨の曲線に基づき、その湾曲の高低点に対し、定位式な寄り掛りを進行させ、敷きばち内部の空気飽満度に合せて、校正時の曲線の正確程度を調整し、校正操作を漸進式に操作できる様にし、更に一般受傷者の実施に合う様にして、安全に使用することにある。」

(ウ)
「【0009】
【課題を解決するための手段】
本考案は、頭受けと腰受けとからなり・・・腰受けは外観は一つの山丘状になっていて、両端の底辺面上に各々粘性かけ帯で組合わされた張り合せ縁を設け、中央の突出た脊線の中段にも、両側から中央に段々と低くなる窪んだ弧曲線を設け、その窪んだ処が丁度腰鉢中のL3節と対称して張り合わせて置き、腰鉢は脊線の両側より突出ていて、其の中片側が頭受けと繋がる弧面の中央で、脊線の窪んだ丸い低点から両側に向けて拡張し、逆三角形状の低い窪んだ丸鉢に似ていて、そして、脊線の他の一方は脊線がだんだんと高くなっている両端に削り落とした深い窪んだ丸鉢を設け、両臀部の貼り合わせ置きに便利であり、二つの敷台の粘性かけ帯面により、お互いに粘接してなる脊椎校正装置に係る。
【0010】
【実施例】
本考案の脊椎校正装置の設計は、その主要点として、軟硬度適当なスポンジ材質で多片的なしきばち連結体を製作することである。図1,3及び4を参照するに、主として、人体脊椎のS形状湾曲の三つの主要湾曲点に基づき、即ち、図中に示す頸ばち部分のC3,胸ばち部分のT6,及び腰ばち部分のL3等三つの湾曲点で、頭受け10,腰受け20が結合する敷きばち湾曲設計であり、各敷きばち間の内部には、すべて空気注入調整に供する気室構造が設計されてある。・・・
【0011】
又、腰受け20は、外観が一つの山丘状に似ていて、両端の低い辺面上に粘性かけ帯21からなる粘着面があり、中央の突出た脊線22の中央にも、又、両側から中央に向かって徐々に下った窪んだ湾曲線を設け、その窪んだ曲率とその低い処の位置が丁度、一般脊椎S形湾曲のもう一つの頂点腰ばち中のL3と対称になり、横になった後に丁度ピッタリとなる位置である。そして、更に重要で、且つ、一般によく見かける敷物と違うのが腰受け20で、突出た脊線22により両側に分けられ、その中の片側は頭受け10にもたれ、その連接する片側の弧面中央は、脊線22の窪んだ丸みの低点から両側に向けて拡張している類似逆三角形状の低い窪んだ丸鉢23,腰ばちに対する圧迫の防止に供し、L3高点の結合に便利ならしめる。そして、脊線22の他の片側は脊線が段々と高くなっている両端に深く削った窪んだ丸鉢24を設けると、両臀部を入れることができ、臀部の頂きの高さが腰鉢をして、腰受け20に貼合せになる様な困難なことはない。しかも、体の大きさや程度が違う人が受傷し、校正の必要上、腰受け20の隆起の内部にも中空の空気注入室25を設け、空気注入中の圧力の調整に供する。そして、漸進式の緩慢な椎骨校正の使用効果に達する様にし、痛みを感じない様にする。・・・敷台の柔軟性を調整する為、この装置を組合せた後、床上に置いて人を寝かせて校正することもできる。・・・」

(エ)「【0012】
【考案の効果】
上述の如く、本考案の脊椎校正装置は、長時間にわたる按摩効果を提供する事ができ、更に確実に脊椎の湾曲変形を防止することができる。」

(オ)上記摘記事項(ア)の「脊椎は・・・図1に示す様に、医学上の記録によると、脊椎は7節の頸椎、12節の胸椎、5節の腰椎及び、3?5節の尾椎より成」ることをふまえ、図1、3及び5を対照すると、腰受け20は、図1に図示された「腰彎曲」部分に位置する5節の腰椎の下部に配置されることが理解できる。

(カ)上記認定事項(オ)をふまえ、上記摘記事項(ウ)の「腰受け20は、外観が一つの山丘状に似ていて、両端の低い辺面上に粘性かけ帯21からなる粘着面があり、中央の突出た脊線22の中央にも、又、両側から中央に向かって徐々に下った窪んだ湾曲線を設け、その窪んだ曲率とその低い処の位置が丁度、一般脊椎S形湾曲のもう一つの頂点腰ばち中のL3と対称になり、横になった後に丁度ピッタリとなる位置である。・・・体の大きさや程度が違う人が受傷し、校正の必要上、腰受け20の隆起の内部にも中空の空気注入室25を設け、空気注入中の圧力の調整に供する。そして、漸進式の緩慢な椎骨校正の使用効果に達する様にし、痛みを感じない様にする。・・・この装置を組合せた後、床上に置いて人を寝かせて校正することもできる。」との記載をみると、腰受け20は、脊椎の一部である腰椎の下部に配置され腰椎を校正するための、床上に置いて人を寝かせて使用するためのものであることが理解できる。

そこで、引用文献の上記摘記事項(ア)ないし(エ)及び上記認定事項(オ)及び(カ)を図面を参照しつつ技術常識を踏まえて整理すると、引用文献には以下の発明が記載されていると認められる。(以下、「引用発明」という。)

「脊椎の一部である腰椎の下部に配置され腰椎を校正するための、床上に置いて人を寝かせて使用するための腰受け20であって、該腰受け20は外観は一つの山丘状になっていて、両端の底辺面上に各々粘性かけ帯で組合わされた張り合せ縁を設け、中央の突出た脊線の中段にも、両側から中央に段々と低くなる窪んだ弧曲線を設け、その窪んだ処が丁度腰鉢中のL3節と対称して張り合わせて置き、腰鉢は脊線の両側より突出ていて、其の中片側が頭受けと繋がる弧面の中央で、脊線の窪んだ丸い低点から両側に向けて拡張し、逆三角形状の低い窪んだ丸鉢に似ていて、そして、脊線の他の一方は脊線がだんだんと高くなっている両端に削り落とした深い窪んだ丸鉢を設け、両臀部の貼り合わせ置きに便利である、前記腰受け20。」

第5 対比
本願発明と引用発明を比較する。
引用発明の「腰受け20」は、腰椎の下部に配置され腰を支持するものであるから、本願発明の「バックサポート」ということができる。また、引用発明の「腰椎を校正するため」は本願発明の「腰椎のリカバリーのため」といえることも明らかである。
また、引用発明の「腰受け20は」、「外観は一つの山丘状になってい」るのであるから、その上面は、本願発明の「中高の面」といえる。

そうすると、両者は、
(一致点)
「腰椎のリカバリーのための、バックサポートであって、該バックサポートの上面は中高の面である、前記バックサポート。」の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願発明のバックサポートは「ベッド上で使用するための」ものであるのに対して、引用発明の腰受け20は「床上に置いて人を寝かせて使用するための」ものである点。

(相違点2)
本願発明のバックサポートは「人体の下部脊椎の自然の健常な生理学的曲率に適合する連続的に方向を転換する三曲面を備え、該バックサポートの単一の及び連続した上面は、腰椎を支持するための凸面、仙椎を支持するための凹面、及び下部胸椎を支持するための凹面を含む3つのカーブを有する」のに対して、引用発明の腰受け20はそのような構成を備えているか明らかでない点。

第6 相違点の検討
相違点1について検討する。
引用発明は、人を寝かせて使用するためのものであるから、人を寝かせるための設備であるベッド上で使用するものとすることは、当業者であればごく普通に想到し得る事項である。
よって、引用発明を相違点1における本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到できたことである。

相違点2について検討する。
引用文献の図1を参酌しつつ、摘記事項アの「図1に示す様に、医学上の記録によると、脊椎は7節の頸椎、12節の胸椎、5節の腰椎及び、3?5節の尾椎より成り、尾てい骨と尾椎は退化による原因で、てい骨と尾骨を形成し、各脊椎と椎骨の間に膠原質と繊維で組成された椎間盤、合計23個である。骨と骨の間は靱帯で繋がれて脊椎を形成している。整った一本の脊椎の正常な状態は、脊椎の側面から見て、一つのS形状の生理性湾曲を呈していなければならず・・・」との記載をみると、図1は脊椎の正常な状態、すなわち脊椎の自然の健常な生理学的曲率を有する状態を示し、その側面から見た形状は、図示された脊椎後面における下部胸椎に該当する部分の前面方向に凹状のカーブ、腰椎に該当する部分の前面方向に凸状のカーブ及び仙椎に該当する部分の前面方向に凹状のカーブからなる、連続した3つのカーブを有する形状であることが理解できる。
そして、引用発明は腰椎を「校正」するためのものであるところ、当該「校正」とは、「脊椎に曲がり又は真っ直ぐでない状況が現われた時」(摘記事項(イ))に、脊椎をその正常な状態に戻すことであることが明らかであるから、当該脊椎の一部である腰椎を正常な状態に戻すために、腰受け20の上面を、脊椎の自然の健常な生理学的曲率に適合する形状、すなわち腰椎を支持するための凸面、仙椎を支持するための凹面、及び下部胸椎を支持するための凹面を含む連続した3つのカーブを有する形状であって、平面的に表現すれば、連続的に方向を転換する三曲面を備え、しかも単一の及び連続した面として構成することは、当業者であれば容易に想到することができたものというべきである。
よって、引用発明において、相違点2における本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得る事項である。

そして、本願明細書に記載された効果をみても、引用文献記載の事項から十分予測し得る範囲のものであって、格別顕著なものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-12-28 
結審通知日 2018-01-09 
審決日 2018-01-30 
出願番号 特願2013-522084(P2013-522084)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久郷 明義金丸 治之  
特許庁審判長 高木 彰
特許庁審判官 根本 徳子
内藤 真徳
発明の名称 3曲面腰椎前弯リカバリーパッド  
代理人 石川 徹  

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